「問題行動」の理解と解決のための特別活動の研究
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(2) 目 次 目. 次 1. はじめに. 第1章. 「問題行動」の理解. 第1節 1 2. 現象としての問題行動と法的処置. 2. 現象としての問題行動. 2. 問題行動の種別. 2. (1) 反社会的問題行動. 3. (2) 非社会的問題行動. 7. 3. 学校における法的処置の可能性と指導の限界. 8. 4. 問題行動に対する法的処遇. 8. 第2節 逸脱とアノミー. 11. 1. 規範の存在. 11. 2. 逸脱の概念. 11. 3. アノミーの概念. 12. 第3節 「問題行動」のとらえ方. 14. 1. 「問題行動」とは何か. !4. 2. 「問題行動」と教師の生徒理解. 15. 第4節 「問題行動」発生のメカニズム. 16. 1. f問題行動」発生のメカニズム. 16. 2. 「問題行動」発生の要因. 17. (1) 個人の要因. 17. (2) 学校の要因. 17. (3) 家庭の要因. 18. (4) 地域・社会の要因. 18. 第2章 生徒指導と特別活動. 第1節 生徒指導. 21. 1. 生徒指導の概念. 21. 2. 生徒指導の意義. 23. 3. 生徒指導の課題. 24.
(3) 第2節 特別活動. 25. 1. 特別活動の意義. 25. 2. 集団とは. 27. 3. 生徒指導と特別活動の関連. 28. (1> 生徒指導と学級活動. 28. (2) 生徒指導と生徒会活動. 29. (3) 生徒指導とクラブ活動. 29−. (4) 生徒指導と学校行事. 29. 第3章 教師・生徒の意識調査. 第1節 調査の目的と方法 1. 目 的. 2 方 法.. 第2節 調査の結果 1 2. 31 31 31. 31. 教師アンケ←ト. 31. 生徒アンケv・一一ト. 35. 第3飾 考 察. 43. 第4章 生徒指導としての特別活動の取り組み. 第1節 取り組みの背景. 44. 1. 「荒れ」の状況. 44. 2. 教師の姿勢. 44. 第2節 取り組みの具体策とその視点. 45. 1. 取り組みの具体策. 45. 2. 視点と考察. 47. 3. 解決のメカニズム. 49. おわりに. 52. 参考文献. 53. 資料. 55.
(4) はじめに 現代の中学校における問題行動は、反社会的行動、非社会的行動が複雑に絡み 合ったさまざまな様態を呈している。学校内外を問わず大きな問題が発生するた びに、マスコミや行政機関がその指導や対処についで論議し、学校にいっそうの 生徒指導の充実が求められるのである。生徒指導とは、単に、問題行動を起こす 生徒に対する指導ではなく、すべての生徒の人格的発達を援助しようとするもの であることは、周知のことである。しかし、教師はこのような日常的な生徒指導 の充実のために日々努力はしているが、問題の処理に追われてなかなか明るい展 望を持つことができないのが現状である。 また、現代の教育は、教科中心、受験中心であり、学校は熾烈な受験戦争の渦 中に巻き込まれている。このような状態において、学校行事の精選という名のも とに、教科授業時間の確保のために学校行事が削減されることに象徴されるよう に、特別活動の軽視もみられる。しかしながら、特別活動はこのような状態にあ るからこそ、学校における集団形成、子どもの人間形成のために重視されなけれ ばならないのである。. 本研究は、このような問題意識に立って、中学校における特別活動の生徒指導 上の意義を探る試みである。 一. 第1章では、現象としての問題行動を、反社会的問題行動と非社会的問題行動 に大別し、その現象を探る。次に、コーヘン(A.K. Cohen)の規範に関する概念を. 参考にしながら規範の存在の必然性を明らかにする。また、集団生活をいとなん でいる学校においても、規範は存在し、規範が存在するがゆえに逸脱への可能性 もつくりだしていることを探る。さらに、本研究の目的の一つでもある「問題行 動」の理解について、デュルケム(E.Durkheim)の説をさらに発展させたマー トン(R.K. Merton)の「アノミー」の概念を手がかりにして、逸脱行動の類型を. 説明し、学校の中で起こる逸脱行動との対比を行い考察をする。そのうえで、本 研究における「問題行動」を定義し、その「問題行動」の発生のメカニズムと発 生要因について分析する。. 第2章では、生徒指導の意義と課題を示し、生徒指導と特別活動の関連を明ら かにしたうえで、生徒指導上の問題行動を解決する特別活動の意義を考察する。 第3章では、教師と生徒を対象に行った、生徒指導および特別活動に関する意 識調査を分析し考察する。. 第4章では、筆者が以前勤務していた中学校(反社会的問題行動が頻発してい た)の状況をまとめ、その状態からの立ち直りにつながった実践を、生徒指導上 の具体策としての視点から分析し、解決のメカニズムを明らかにする。. 一1一.
(5) 第1章. 「問題行動」の理解. 第1節. 現象としての「問題行動」とその処置. 1 現象としての問題行動 現在、学校では、社会問題化している登校拒否やいじめをはじめとして、さま ざまな問題が起こっている。これらの問題は、教師の日々の努力にもかかわらず、. なかなか解決にはいたらない。そして教師は、生徒たちの問題行動にふりまわさ れているのが現状である。しかし、これらの問題行動は、あくまでも表れすなわ ち現象であって、必ずそれらを生起させる原因があるはずである。つまり、社会 の成員である生徒たちは、家庭や社会の諸問題に影響を受けており、それらが生 徒の心の中にあるいらだちや欲求不満とあいまって現象として表出されるのであ る。. 問題行動がこのようなものであるならば、その問題行動の理解と解決のために は、それを生起させる要因と発生のメカニズムを解明することが必要である。次 に、問題行動を理解するために、どのようなものが問題行動として表れるのかを 述べよう。. 2 問題行動の種別 問題行動は、一般的には反社会的問題行動と非社会的問題行動とに大別するこ とができる。反社会的問題行動とは、法律や社会慣習などの社会規範に違反する 行為、対人的に迷惑を及ぼす行為のことで、一般的に非行と呼ばれるものである。. その反社会的問題行動に当たる主な行為には、喫煙、飲酒、深夜俳徊、怠学、薬 物乱用、暴力、恐喝、窃盗、家出、性非行、暴走行為、過度のいじめなどがある。. また、非社会的問題行動とは、社会や集団に積極的に適応できなかったり、そ の努力を避けたりする逃避的な行為のことで、個人的な行為としてとらえること ができる。その非社会的問題行動に当たる主な行為には、絨黙、極度のひきこも り、集団からの孤立、登校拒否、自殺、怠学、家出などがある。. しかし、この反社会的問題行動と非社会的問題行動には、厳密に区分しにくい. 一2一.
(6) ところがある。つまり、非社会的問題行動が、反杜会的問題行動へと移行する場 合がある。たとえば、生徒の家出という行為自体は、法律に違反する行為でも他 に迷惑をかける行為でもない。したがって、非社会的問題行動としてとらえるこ とができる。ところが、生徒が家出をすることによって犯罪行為を犯すおそれが 出てくるとしたならば、その行為は、反社会的問題行動であるといえる。. 以上のことをまとめてみると、次の表1−1のようになる。『. 表1−1 主な反社会的問題行動と非社会的問題行動 非社会的問題行動. 反社会的問題行動 虞犯行為. 犯罪・触法行為 喫煙 飲酒. 物乱用 暴力. ー喝 窃盗 ォ非行 暴走行為. 深夜三三. 絨黙 極度のひきこもり. s良交友. W団からの孤立 登校拒否. モ学 ニ出. ’. モ学. 出. ゚度のいじめ. @. 自殺. (注)←は反社会的問題行動. への移行があることを 示す。. 次に、これらの問題行動が、中学校においてどのような形をとるのかというこ とをみることにしよう。. (1) 反社会的問題行動. ① 喫煙. 中学生の非行化の第一の兆候は、喫煙である。生徒の中には、小学生の時に 初めて喫煙をしたという者もいるが、中学生の喫煙の常習者や経験者の大半が 中学校に入学してから吸い始めるといった場合が多い。未成年者喫煙禁止法第 1条(明治33年)(、)により、未成年者の喫煙は法律で禁止されている。このこ. とは中学生自身も知っていることである。しかしながら、自動販売機などの普 及によって、中学生でも簡単にタバコを手に入れることができ、さらに場所を 問わず喫煙することができることから、中学生の好奇心の対象になりやすい現 状がある。実際、生徒が学校内で喫煙しているため、教師が毎日のように、出 勤後すぐに、学校内に落ちているタバコの吸い殻集めを行っている学校もある。. また、学校内では、休憩時間中はおろか授業中でさえも、トイレや校舎の陰な ど目の行き届きにくい場所で喫煙を行っている生徒もいる。学校外における喫 煙行為は、自宅あるいは登下校中や友達の家に行ったときなどによくみられる。. 一3一.
(7) 岡山県岡山市岡山青少年補導センタS一一・一(以下、 「補導センター」)によれば、. 平成8年中に喫煙で補導された中学生は17人であったが(、)、これは氷山の一角 であると考えられる。. ② 飲酒. …般的には、喫煙に比べると、中学生による飲酒行為は少ない。しかし、そ れでも修学旅行等、宿泊を伴う行事に際しては、飲酒の行為があるので、飲酒 についての指導を行うことが多い。また、中学生でも自動販売機でアルコール 類を買い求めることができるため、手軽に飲酒行為をしてしまう状況があるこ とは否定できない。その結果、生徒は酩酊状態になり、抑制心を失い、思わぬ 問題を引き起こす場合もある。. ③ 薬物乱用. …般に我が国では、覚醒剤とシンナー類が二大乱用薬物であるが、そのシン ナー等有機溶剤乱用で検挙、補導される中学生は年々減少しているとはいうも のの後を絶たない。警察庁によると、平成6年の覚醒剤乱用による中学生の補 導人員は13人で、前年より4人減少している。また、シンナー等乱用による中 学生の補導人員は812人で、前年より109人減少している。しかし、この薬物乱 用は有害性が強く、意識が薄れ、酩酊状態が犯罪行為を誘発する場合がある。 ④ 暴力. 学校内で起こる暴力事件には、生徒間暴力と対教師暴力および器物破損があ る。数年来、減少傾向にあったが、警察庁の調べによると、事件として警察が 処理した、平成6年の校内暴力事件は494件で、前年より24件増えている。その 内、対教師暴力事件は302件で、前年に比べ33件増加している。また、文部省に よれば、平成6年度の公立中学校における校内暴力発生学校数は1,477校で、前 年より192校増えている。生徒間暴力の発生件数は2,976件で、前年より586件増. 加。対教師暴力の発生件数は797件で、前年より78件増加している。さらに、そ れぞれの加害生徒数は、生徒間暴力が6,264人、対教師暴力が931人、器物破損 が1,136人であった。. その校内暴力の発生状況については、生徒間暴力は、教師の目の行き届きに くい場所などで行われることが多い。さらに最近では、一人に対して数人で暴 力を振るうケースが多くみられる。対教師暴力については、教師が授業逃避や 授業妨害を注意し、指導しようとした際に暴力を振るわれたなど、生徒に対す る指導場面において発生することが多い。.器物破損については、おもしろ半分. で教室やトイレのドアなどを壊したり、教師の指導に反発してガラスを割った 一4一.
(8) りする行為が多い。. ⑤ 恐喝. 集団で、あるいは一人で、体力のなさそうな生徒に対して、金品を強要する 場合が最も多い。これは、学校内で行われる場合もあるし、学校外で行われる 場合もある。顔見知りの者に対して強要することも、繁華街などでまったく面 識のない者に対して強要する場合もある。 ⑥ 窃盗. 中学生の窃盗行為の多くは、一般的に初発型非行といわれる万引きと自転車 盗である。それも生活に困っての盗みではなく、遊び半分の盗みである場合が ほとんどである。生徒が一人で行う場合もあるし、学校の仲間集団で行う場合 もある。集団万引きの場合、学校内で盗みの打ち合わせをしたり、万引きしゃ すい店などの情報を集めたりしている場合もある。また、生徒同士が盗品を学 校内で売買したり交換したりする行為も認められる。 ⑦ 性非行. 一般に性非行といわれるものの中には、強姦や強制わいせつのような攻撃型 性非行、不純異性交遊などに代表される遊び型性非行、お金を代償として得る 売春などのような利欲型性非行、性器露出や痴漢行為などのような倒錯型性非 行に分類することができる。また、男子と女子によってその形態も異なる場合 が多い。特に、大都市在学の最近の女子中学生の中には、援助交際という名の もとに売春を行っている生徒が存在し、マスコミなどにも取り上げられている。 ⑧ 暴走行為. 一般に暴走族といわれるグループに属し、集団で、整備不良や改造された自 動車や自動二輪車を運転し、最高速度違反や信号無視をしながら暴走する行為 である。中学生が、自ら車両の運転をすることは少ないが、車両に同乗したり. 集会に参加したりする行為はよく見られる。これは、同じ中学校の先輩と後輩 という関係から、暴走族に憧れたり勧誘されたりすることによってグループに 加わるケースが多い。. ⑨過度のいじめ 今日、社会問題化しているいじめも、その内容によっては、その行動を反社 会的問題行動としてとらえることができる。暴力や恐喝、金品や行動の強要、 集団による性的嫌がらせなどは、いじめの行為の中でよくみられる現象である。. 文部省によれば、平成6年度の中学校におけるいじめの発生件数は26,828件で あった。. 一5一.
(9) ⑩深夜俳徊・不良交友 深夜に繁華街をうろついたり、駅や24時間営業のコンビニエンスストアの 前に集まって周辺をうろついたりしている中学生の姿をよく見かける。補導セ ンターによれば、平成8年中に不良交友で補導された中学生は、12人であった が〔,)、かれら は、通常一一人ではなく、必ずグループで行動している。かれら. は、放課後どこかで他校の生徒や先輩などと出会い、そのまま帰宅せずに行動 をともにする場合が多い。あるいはまた、最近の中学生は、自宅に自分専用の 部屋をもち、あまり親から干渉されずに生活しているため、自宅を深夜に抜け 出して俳徊する場合もある。 ⑪ 怠学. 心身共に健康であり、学校へ行くことが可能であるにもかかわらず、登校せ ず、繁華街などをうろつく生徒がいる。補導センターによれば、平成8年中に 怠学で補導された中学生は22人であったが(、)、こういつた生徒の場合は、生活. に困っているというわけではないが、恐喝などの金銭にかかわる問題を引き起 こすことが多い。. ⑫ 家出. 中学生に限らず未成年者の家出ということは、特に違法行為ではないが、家 出をすることによって犯罪行為を行うおそれが十分にある。家出をしたときの 所持金がいつまでも続くことはないし、犯罪性のある人との交友機会が増える 可能性も高くなる。警察庁によれば、平成4年に警察が保護した家出中学生の 人数は11,612人であった。家出の時期としては、夏から秋にかけてが最も多い。. 家出がこの時期に頻発するということは、夏休み中の生活態度が、新学期にお ける学校生活への対応の失敗となっている場合が多いとみることができる。ま た、最近の家出の形態の一つに、女子中学生のテレクラ遊び(テレフォンクラ ブを媒介にした)による家出があり、社会問題化している。. 以上述べたように、反社会的間題行動とは、犯罪行為、触法行為、虞犯行為に あたる行為のことである。そして、これらの行為の多くは学校外で行われること ではあるが、中学校に在籍する生徒である以上は、まったく学校に関わりのない こととして処理することはできず、必ず学校にも関わってくることなのである。 というのは、学校外でさまざまな行為をする生徒も、学校の一員だからである。. 一6一.
(10) (2) 非社会的問題行動. ① 絨黙. 肉体的あるいは知能的に健康であるにもかかわらず、日常的な学校生活にお いて、周囲に対して必要な受け応えができず、集団生活ができにくい状態にな る場合がある。. ②極度のひきこもり 口数が少なく、引っ込み思案で劣等感を強く感じたり悲観的であったりする こと自体を問題としてとらえることはできないが、それが極端な場合、集団と のかかわりを拒否したり、自分の殻にひきこもってしまったりする生徒がいる。 ③ 集団からの孤立. 学習や係りの仕事についてはその責務を果たそうとするし、規範に反する行 為を行うわけでもないが、学校における集団生活を自ら拒み、周囲と協調しな がら生活していこうとしない場合がある。. ④ 登校拒否. 何らかの理由で、登校することを拒む、あるいは登校できない生徒が年々増 えている。文部省によれば、平成6年に「学校ぎらい」を理由として50日以上 欠席している生徒は5万人を越えている。 ⑤ 自殺. 何らかの理由で、社会からの逃避をめざして自殺を図る生徒がいる。警察庁 によれば、平成6年中に自殺した中学生は87人であったが、近年、いじめによ る自殺がマスコミにも大きく取り上げられ、社会問題となっている。 ⑥ 怠学. 前にも述べたが、心身共に健康であり、学校に行くことが可能であるにもか かわらず、登校せず、自宅でコンピュータゲームをしたり漫画や雑誌を読んだ りして、時間を過ごす生徒がいる。いわゆる「ずる休み」している状態のこと であり、他に迷惑をかける行為ではないが、中学生である以上問題となる。 ⑦ 家出. 家出の行為自体は、違法行為ではない。前にも述べたが、犯罪行為につなが るおそれがない状況であれば、それは反社会的問題行動ではない。個人的な逃 避行動として家出をする場合がある。その家出のきっかけも、最近では、衝動 的に行うのでなく、あらかじめ計画をしておいて決行する場合が多い。. 以上述べたように、非社会的問題行動とは、他人に迷惑をかけたり危害を加え 一7一.
(11) たりすることはないが、生徒の健全な成長からみると、その正常な発達が妨げら れている行為のことである。ただ、問題行動は、反社会的なものと非社会的なも のに大別できるが、非社:会的問題行動である怠学や家出が、反社会的問題行動に. 移ることがある点にみられるように、厳密な区分ができないことに注意しなけれ ばならない。 (注「薬物乱用」「一山「いじめjr登校拒否」「鰍」については資料を参照). 3 学校における法的処置の可能性と指導の限界 性行不良であって他の生徒の教育に妨げがあると判断された場合には、その生 徒に対して、学校教育法第26条による「出席停止」(,)の適用を行うことができる. が、実際に「出席停止」が適用されることは希である。その背景には、出席停止 を受けた生徒への心的影響、保護者や地域の理解、子どもの権利の保障などの問 題がある。そこで実際には、学校における問題行動に対する処置の方法は、問題 を起こした生徒を登校させながら指導するのが一般的である。具体的には、問題 行動を起こした生徒に対して、登校はさせるが所属学級の教室には入れず別室で 授業を行うとか、何らかの罰を与えるとかの指導を行うことは、その生徒の人権 にかかわるので行うことができず、通常、その生徒に対して「なぜその行動をと ったのか」という理由を尋ねるところがら始まり、 「なぜその行動がよくないの か」 「今後の生活をどうするのか」を諭すにいたるまでの指導が行われる。指導. の形態としては、生徒と保護者と教師を交えての話し合いが主である。また、基 本的な学校側の姿勢としては、生徒に処罰を与えようとするものではなく、生徒 の人間的成長を支援しようとする立場で生徒や保護者に接する。そして、その都 度同じような指導を行うため、生徒と学校(教師)との信頼関係がなければ、教 師の指導には抑止力はないのが現実である。そこに指導の限界が存在するのであ る。そこで、関係諸機関との連携が重要になってくるのである。. 4 問題行動に対する法的処置 反三会的問題行動の場合も非社会的問題行動の場合も、その行動の状態、行為 者の生活環境や人間性などに照らし合わせて、学校では処置できない最悪の場合、 法的処置がとられることがある。次に、その処置の体系について述べよう。. 問題行動を起こした少年に対する処置は、処罰という意味よりも教育保護的な 意味合いが強いところが成人の場合と異なるところである。年齢では14歳を区切 一8一.
(12) りとして、犯罪少年と触法少年に分けられる。. 犯罪少年の場合、警察の捜査活動の後、検察庁を経て事件として家庭裁判所に 送致される。家庭裁判所では、少年法第17条により、調査官が問題行動の原因や 本人の健全な成長のためにどのような処置が必要かを明らかにするための調査や 検査を行う。少年についてのより詳しい鑑別が必要であると判断された場合には、 4週間を限度として少年鑑別所に身柄を送られ(・)、鑑別の結果が家庭裁判所に通. 知される。家庭裁判所の処分は、不処分、児童相談所送致、保護処分、検察官送 致などが審判により決定される。検察官送致の場合、刑事裁判所を経てその処遇 が決定され、少年刑務所(16∼20歳)に収容される場合がある。保護処分の場合、. 少年法第24条により、少年院送致、保護観察、教護院・養護施設に送致の3つに その処遇が分けられる(・)。送致される少年院は、初等(14∼15歳)、中等(16∼. 20歳)、特別(犯罪性の進んだ16∼23歳)、医療(心身に障害のある14∼26歳) の4つに分けられている(,)。保護観察は、保護観察所の保護観察官や民間の保護 司の指導によって更正を図るものである(,)。. 触法少年および要保護少年の場合は、児童の育成や福祉に関しての相談機関で ある児童相談所に相談する。相談内容には、非行相談、養護相談、心身障害相談、. 育成相談などがある。相談を受け受理した児童相談所では、児童福祉司や心理判 定員などにより調査・判定が行われ、児童福祉法第33条により、必要と認められ たときには、一時保護を行う(、。)。その後、処遇会議によって指導・援助の仕方 が決定される。児童福祉施設入所となった場合には、教護院(、、)あるいは養護施 設(、2)に入所して指導・援助を受けることとなる。. 以上の法的処置の体系を図に示すと、次の図1−1のようになる。. 一9一.
(13) 犯罪少年. 触法少年. 虞犯少年. 虞犯少年. (14歳以上). 要保護少年. (14歳未満). 検察庁. 児童相談所. 家庭裁判所 (受理) [. (受付)ニーE亙亜司 1. (相談・受理). (調査)一調館 観護措置. 1. (調査・判定). 少年鑑別所. 児童福祉司 心理判定員等. 審判不開始. 審判開始. 1. (処遇会議). ・助言・鱒. (審判). ・通所継続指導. ・児童福祉司指導 ・保護受託者委託 ・里親委託、等 検察官送致 児相相談 不処分 保護処分. 児童福祉施設入所. 所送致 刑事裁判所. 保護観察 少年院送致. 教護院. 教護院又は. 養護施設に送致 養護施設 罰金・. 保護観察官. 執行猶予等. 保護司. 少年刑務所. 医療少年院 図1−1. 特別少年院. 中等少年院. 初等少年院. 「問題行動」に対する法的処置体系. 一10一.
(14) 第2節逸脱とアノミー 1 規範の存在 社会が維持されるためには、秩序と統合が必要であって、そこには行動基準が 要るのである。たとえば、溢れんばかりの車社会となった現代において、人は、 あるいは車は、右側通行をするのか左側通行をするのか、行動基準がなければ混 乱を引き起こしてしまう。集団生活をいとなんでいる以上、 「人は、組織化され. た複雑な社会、つまり、家族、学校、地域、国家などにおいて地位を占めなけれ ばならない。それぞれのいとなみは、その分野の仕事が成就されるために、多く の人の多種多様な行為を結集する一つの方法として考えられる。しかし、もし多 くの人の行為が結集されるのであれば、その場合には、誰が何をいかなる環境の もとで行うかについて、相互の約定がなければならない。」(、3)とコーヘン (A.K. Cohen)は述べているが、組織化された人間の活動において、必要な第一. の条件は、なんらかの規範が存在すべきであるということである。ここでは、法、 規則、慣習、習慣をまとめて規範ととらえることとする。. 集団生活を営んでいる学校に、規範は存在するのである。しかしながら、規範 にそって行動すれば、すべてがうまくいくとは限らない。規範に従うことで満足 感を得ることができるとは限らないし、ある生徒が、自分の願望である活動をし たいがために、現在すべき活動に対して手を抜いたり、しなかったりすることも あるだろう。つまり、いかなる規範といえども、逸脱への可能性をつくりだすこ とになるのである。. 2 逸脱の概念 逸脱(deviance)あるいは逸脱行動(deviant behavior)という概念は、漠然とし. た意味内容を含んでいる。その理由は、逸脱がどのような判断基準を当てるかに よって決まってくるからに他ならない。法規範を判断基準にすれば、殺人者など 犯罪を犯した場合は逸脱となる。社会的な評価を判断基準にすれば、ゴミを戸外 に投げ捨てた場合も逸脱となるであろう。しかし、社会的な評価は時代や地域に よってもかなり異なり流動的であるから、逸脱の概念も不明瞭になる。この点に ついて、マートン(R.K. Merton)は、 「同じ行動でも、その行動を示す人びとの. 社会的地位のいかんによって、逸脱的とも解釈されるしまた同調的とも解釈され. 一11一.
(15) る。」(、、)と述べている。. 社会学的には、逸脱は、社会規範を判断基準にして規範をおかす行動ととらえ られている。この点についてコーヘンは、「規範的規則を犯す行動である」価) と規定している。つまり、逸脱が問題となるのは、その行動が社会秩序にとって 脅威となる場合であり、ゆえに、社会秩序の要である規範をおかす行動は非難さ れるのである。要するに、逸脱は、種々の社会的な評価のなかから秩序にとって 重要とみなされ規範化された価値評価に深くかかわっているのである。. 3 アノミーの概念 デュルケム(E.Durkheim>によれば、アノミー(anomie)は、幸福や安楽の配 分、職務への市民の配分についての伝統的基準が権威をたもてなくなり、欲望の 限界が見失われた状態、ととらえられた。(、6) つまり、社会の分業においてさ. まざまに分化した機能を遂行する人びとが、相互に十分に親密で持続的な相互作 用をいとなまないために、共通の規範や体系を発展させることができない場合に 生じた状態である。つまり、アノミーとは、 「無規範」の状態を指し示している のである。. デュルケムの理論をさらに発展させたのは、マートンである。マートンによれ ば、すべての社会構造には共通する二つの特性がある。第一は、社会のすべての 成員の望むところの「目標」であり、第二は、目標を達成するために承認された 「方法」または「手段」である。そして、すべての人びとが社会的に承認された 目標と、社会的に承認された目標達成の手段をうけいれるかぎり、すべての行動 は同調行動である。しかし、目標が拒絶されるか、あるいは目標達成の手段が拒 絶されるかすると、非同調行動が結果として表出するのである。つまり、このよ うな文化目標と制度化された手段との乖離や朗酷によってアノミー的状況が生じ るのである。したがって、逸脱行動が生まれている状態がアノミーの状態なので ある。さらにマートンは、アノミーに連続する逸脱行動を、文化的目標と制度的 手段への個人の適応様式によって類型化した。それが次の表である。. 一12..
(16) 表1−2 個人の適応様式の類型論 文化的目標. 制度的手段. 同 調. 十. 十. 刷 新(革新). 十. 適応の様式. 儀礼主義. 十. 逃避主義 反 抗. ±. ±. 『社会理論と社会構造』みすず書房. ここでは、 (+)は「受容」を、 (一)は「拒否」を、 (±)は、 「代替」を. 意味する。そして、これらの結果からひきだせる第一の型は「同調」である。そ の他の型は逸脱行動の諸変型である。刷新者は、目標に執着してはいるが規範的 に規定された手段を拒否する。儀礼主義者は、文化的に規定された目標には同調 しないで、制度化された規範に過度に同調することをもって徳ある行為とする。. 逃避主義者は、目標も手段も放棄することによって生存競争から身をひく。反抗. 者は、かれらが不正とみなす文化体系や社会体系にも忠誠を誓うことをやめ、新 しい目標とそれに到達するための規定をもって新たに社会を再構成しようとする のである。c、7). 逸脱に対するこのアプローチは、社会としての学校にも当てはまることである。 たとえば、刷新者の場合、よい成績をあげることが望まれた文化的目標であると 受容している生徒が、そこに至る制度的手段である学習に対して拒否を起こして いるとするならば、結果、カンニング行為などに表される逸脱行動が表出してく るのである。このことについて、麻生は、 「学校アノミr病」の蔓延として、日 本のような高学歴社会では、 「学校では、よりよい上級学校への進学という成功. 目標が賞賛されるから、一方ではこれらの目標に到達するための是認された手段 を獲得するチャンスが大部分の生徒にとって能力上または社会構造上厳格に制限 されてしまっている時、学校の教育規範に対する逸脱行動が大量に発生するよう になるのである。」(、8)と指摘している。. 一13一.
(17) 第3節 1. 「問題行動」のとらえ方. 「問題行動」とは何か. 「間題行動」を定義しようとすると、人によってそのとらえ方は異なり、一義 的な定義は困難である。それは、ある行動が問題行動であるかどうかということ はかなり相対的なことであるからである。つまり、問題行動は集団及び社会の中 においてのみ起こり得るのである。例えば、世界の中にたった一人だけの人間が 存在していたとしよう。その場合、その一人の人間のあらゆる行動は問題にはな り得ないということである。その行動を解釈する者がいてはじめて問題行動は認 識されるのである。さらにその問題行動も、時代や法律、社会的慣習などによっ てとらえられ方が異なる。デュルケムが、 「それが犯罪だからある行為を非難 するのではなく、私たちがそれを非難するから犯罪なのである。」(、g)と述べて. いるが、犯罪行為ですら、解釈の仕方によって成立するのである。. 以上のように考えるならば、教育の場においてとらえられるべき問題行動も非 常にその定義は曖昧なものになってしまう。その点について、文部省は「親や教 師や仲間が迷惑を被っている行動、法に触れ、当局が統制の対象とする行動、当 人が悩み、困惑している行動などは、すべて問題行動とされる可能性がある。し たがって、問題行動という概念を用いる場合には、その行動を問題視する者の立 場や判断の基準を明確にする必要がある。」(、・)とした上で、 「生徒指導の観点. からは、生徒の発達にとって障害となるかどうかを第一の判断基準として、問題 行動をとらえていく必要がある。」(。1)としている。しかしながら、これは、視. 点としては非常に不明瞭である。確かに、問題視する者の立場や判断の基準を明 確にすることは必要であるが、個人の内面に潜む、問題行動につながる準備状態 (ストレス)をどうとらえるかという点に関しては、明らかではない。この点に ついて筆者は、個人の内面に潜む問題については、問題行動としてはとらえてい ない。なぜなら、学校内においてその問題行動を解釈するのは教師であり、現象 として問題行動が表出しない限り、それは問題行動としては認知できないからで ある。つまり、現象として出現した場合に、教師の目は問題行動としてとらえる のである。. 生徒のの内面にあるストレスは、生徒自身の個人内の活動によって解消される. 場合と、ストレスが負荷となって、そのストレスをもったまま生活している場合 とがある。そして、後者の場合、それが潜在的問題となって、何らかのきっかけ 一14一.
(18) によって反社会的問題行動、非社会的問題行動として顕在化するのである。つま. り、図1−2に示したように、生徒の潜在的問題が顕在的問題に移行したとき、 教師の目によって、問題行動として判断される。. 潜在的問題. 顕在的問題. 問題行動としてとらえる. 図1−2 問題行動をとらえる過程 以上のような問題行動のとらえ方の中で、本研究では「問題行動」を、主に学 校における逸脱行動、つまり、規範に反したり他に迷惑を及ぼしたりする行動や 行為、反社会的な行動に限定してとらえることとする。 2. 「問題行動」と教師の生徒理解. 学校における問題行動をとらえる場合、既述のごとく、解釈者としての教師が そこに存在しているのである。したがって、教師が、問題行動を問題行動として 解釈しない以上、そこには問題行動はないのである。この観点は、社会学的にみ ると、従来の統制される側に焦点が当てられていた問題のとらえ方から、統制す る側に焦点を当てて問題をとらえてみようとする、ラベリング理論につながるも のであるが、実際に学校現場において、個々の教師によって問題行動のとらえ方 は一定ではない。また、その問題行動を解釈していくときには、必ず教師の生徒 理解の目が注がれていることになる。つまり、どのような生徒理解をするかが、 その問題行動をどう解釈するかにかかわってくるということである。たとえば、 授業中に居眠りをしている生徒がいるとしよう。その生徒をみた教師は、どのよ うに考えるであろうか。 「勉強が嫌いなのか」 「教師に対する反抗なのか」と分. 析された場合、その行動は許し難い問題行動として理解される。その上、 「勉強 嫌い」 「教師に対する反抗者」などとレッテルを貼られ、叱責を受けることもあ. る。ところが実際には、その生徒は、家庭的に何らかの理由で(親の病気など) 夜、眠ることができない状況にある生徒で、その点において教師が生徒理解をし たならば、決して許し難い問題行動としては理解しないであろう。. このことは、問題行動の解釈には、生徒理解が大きく関与していることを示し .15パ.
(19) ている。生徒理解の仕方によって、その後の指導のあり方も変わってくるのであ る。. 第4節 「問題行動」発生のメカニズム 1 「問題行動」発生のメカニズム 「問題行動」発生のメカニズムについて、まず、学校環境、家庭環境、地域・ 社会環境など、生徒を取り巻く「環境的要因」と身体疾患、精神疾患、知能障害、. 情緒障害など、生徒自身の素質や性格にかかわる「個人的要因」とが、複雑に絡 み合ってストレスが発生する。そして、既述のとおり、そのストレスも生徒の個 人内で解消される場合と、ストレスが負荷:となって、そのストレスをもったまま. 生活している場合とがあり、後者の場合、そこに何かのきっかけがあって、問題 が表出する。その問題は、反社会的問題行動あるいは非社会的問題行動という形 で表れるのであるが、その表出された問題に対して、教師は分析し、生徒理解を 図ろうとするのである。. 以上が「問題行動」発生のメカニズムであるが、それを図に示すと次の図1− 3のようになる。. 社会的要因 家庭的要因 学校の要因. 解. 個人的要因. ストレス (持. 消. (持続). 続). きっかけ. 問題の分析. 匝i亟互卜一一一生鯉解 ・反社会的問題行動 ・非社会的問題行動 教師の目. 図1−3 「問題行動」発生のメカニズム. 一16一.
(20) また、 『生徒の問題行動に関する基礎資料』では、 「生徒の問題行動は、個人. の内側にその要因があると同時に、生徒を取り巻く人間関係や文化的な条件、更 には、社会全体の風潮などの外側からも影響される。特に、発達途上にある青少 年の行動は、社会的、文化的な環境に左右されやすい。問題行動の場合も同様で、 仲間から非行に誘われ、それに同調して起こす場合が多い。」(22)と問題行動の. 発生要因について分析している。つまり、多くの澗題行動は、生徒を取り巻く社 会的、文化的な環境に大きく関わっているということである。ここでは、その問 題行動発生の要因について、 「個人」 「学校」 「家庭」 「地域・社会」に視点を. 当て分析を試みることとする。. 2. 「問題行動」発生の要因. (1)個人の要因. 既述のごとく、問題行動の発生の要因として、生徒自身の素質や性格にかかわ る個人的なものが考えられる。それらは、先天的に何らかの欠陥または障害をも っていて、つまり、身体疾患、精神疾患、知能障害、情緒障害などであるが、そ れらが基礎にあるために、精神面に問題性が生じ、問題行動の出現につながる場 合がある。. (2)学校の要因. 問題行動の発生に関わる学校の要因は、学校教育全般のあり方に関わるもので ある。学校教育は、調和のとれた人格形成を目標としてきたが、現実は、学歴社 会の影響を受け熾烈な受験競争の渦中にある。教科授業に重点が置かれるあまり、 点数主義に陥る生徒が多数存在することは否めないことである。そういった中で 学習についてゆけない生徒が出てくることも否定できない。そういう状況が問題 行動の発生につながっている。また、周囲の友達は蹴落としていくべきライバル であり、人間関係を希薄にしていることはいうまでもない。次に、教師と生徒と の信頼関係の喪失をあげることができる。教師の指導が画一的、あるいは不適切 であったり、その場しのぎの思いつきであったりすると、瞬く間に生徒からの信. 頼はなくなる。また、第1章第1節で述べたように、教師間の共通理解の不足や 指導体制の不備、親和的ではない教師同士の人間関係なども問題行動の発生の要 因となっているということができる。さらに、教育活動の中で生徒一人一人が自 己存在感を味わうことができる活動、自己決定のできる場が少ないこともその要 因となる。なぜなら、生徒の成長にとって、自分が人間として認められ、周囲に. 一17一.
(21) 受け入れられているという体験や実感は、彼が社会に生き、そこで適応していく うえで必要不可欠なものであるからである。. (3)家庭の要因. 家庭環境は、人間としての人格形成に大きく関与している。その家庭環境も、 時代や社会の変化に伴って、少子化、核家族化が進み、物質的な豊かさは際だっ ているが、精神的な豊かさは逆に貧困化している。たとえば、一家に一台であっ たテレビが、一家に数台になり、子どもの部屋にテレビがあるといった状況やコ ードレス電話の普及に伴い、子どもは自分の部屋から出てこない。あるいは家の 中で過ごす子どもは、漫画雑誌をみているか、コンピュータゲームをしているか といった姿が多くなってきたと指摘されてから久しい。さらに加えて、通塾率の 増加による生活の変化などが、家族の人間関係を希薄なものにしているといって も過言ではない。そしてこういつた状況が、ストレスを生む土壌となっていると 考えられるのである。. また、親の子供に対する接し方も、過保護であったり放任であったり、父親が その養育を母親任せにしてしまう状況なども問題行動の発生の要因となる。過保 護的養育は、自己の行為を相手や社会の立場でみることができず、しかも、欲求 不満に対する耐性の弱い未熟で衝動性の強い人格をもたらす。放任的養育は、基 本的な生活習慣がなおざりになるばかりでなく、自己中心的な人格をつくる。父 親の権威喪失と父親不在は、社会性や規範意識の欠如につながる。. (4)地域・社会の要因 時代や文化など社会全般の動向は、多かれ少なかれ教育に影響を与えている。 まず第一に考えられるのは、学歴社会といわれるように競争原理が深く浸透して おり、それがそのまま学校社会に反映していることである。子どもたちの間に早 くから競争意識が強まり、序列化が進み、子どもたちは孤立化に伴う疎外感を味 わうことになる。第二に、高度経済成長以降急激な都市化が進み、子どもの遊び の空間が著しく減少したことがあげられるであろう。遊びの喪失につながる空間 の減少は、子ども同士のかかわり合い、共同性の喪失を招くことになる。第三に、 テレビ、漫画、雑誌などのマスコミの影響が考えられる。次から次に映し出され る暴力シーンや性の描写は、子どもたちに大きな影響を与えている。第四に、近. 隣には、24時間たまり場となり得るコンビニエンスストアが存在し、問題行動 を容認するような行動様式をもった人や集団との接触によって、自分の中にその 行動様式を取り込み、その行動が問題行動の表出として学校の中で具現化される のである。こういつた地域や社会の状況が、問題行動の発生の要因となっている。. 一18一.
(22) 以上のことから、問題行動発生の要因の第一として捉えなければならないのは、 子どもの生活環境における人間関係の希薄さである。したがって、少なくとも学 校教育において、人間関係を豊かにしていく方法に取り組んでいくことは重要か つ必要なことである。. 【註】. (1)未成年者喫煙禁止法第1条. 「満二十二二至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」. (2)少年補導の概要(平成8年中)岡山県岡山市岡山青少年補導センターの資料より抜粋. 1 不良行為少年の補導状況 ア 行為別補導状況 怠. 学. 年別\行為別. 総 数. 平成8年. 1, 616. 1, 174. 平成7年. 1, 194. 1, 027. 喫 煙. 不良交友. 飲 酒. 360 120. 79. 3. 36. 0. イ 主たる行為別・学識別補導状況 行為別\学識別. 小学生. 中学生. 高校生. 有職・無職少年. その他. 怠. 学. 3. 22. 1, 149. 0. 0. 喫. 煙. 0. 17. 302. 38. 3. 0. 12. 60. 7. 0. 不良交友. (3)前掲資料 (4)前掲資料 (5)学校教育法第26条. 〔児童の出席停止〕 「市町村の教育委員会は、性行不良であって他の児童の. 教育に妨げがあると認める児童があるときは、その保護者に対して、児童の出席停止を命ずること ができる。」 (6)少年法第17条. (観護の措置) 「家庭裁判所は、審判を行うために必要があるときは、決定をも. つて、次に掲げる観護の措置をとることができる。」. 一19一.
(23) (7)少年法第24条. (保護処分の決定) 「家庭裁判所は、 (中略)審判を開始した事件につき、決定. をもって、次に掲げる保護処分をしなければならない。一 保護観察所の保護観察に賦すること。 二 教護院又は養護施設に送致すること。三 引少年院に送致すること。」. (8)少年院法第2条 ・初等少年院は、心身に著しい故障のない、14歳以上おおむね16歳未満の者を収容する。 ・中等少年院は、心身に著しい故障のない、おおむね16歳以上20歳未満の者を収容する。 ・特別少年院は、心身に著しい故障はないが、犯罪性の進んだ、おおむね16歳以上23歳未満の者 を収容する。 ・医療少年院は、心身に著しい故障のある、14歳以上26歳未満の者を収容する。 (9)犯罪予防更正法第34条. 「保護観察は、保護観察に付されている者を(中略)補導援護すること. によって、その改善及び更:正を図ることを目的とする。」 (10)児童福祉法第33条. 「児童相談所長は、必要があると認めるときは、 (中略)児童に一時保護を. 加え、又は適当な者に委託して、一一時保護を加えることができる。」 (11)児童福祉法第44条. 「教護院は、不良行為をなし、又はなす虞のある児童を入院させて、これを. 教護することを目的とする施設とする。」 (12)児童福祉法第4正条. 「養護施設は、乳児を除いて、保護者のいない児童、虐待されている児童、. その他環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護することを目的とする施設とする。」 (13)A.K.コーヘン著 細井洋子訳. (14)R.K.マートン著. 『逸脱と統制』 至誠堂 1968 5頁. 森東吾 森好夫 金沢実訳. 『社会理論と機能分析』 現代社会学大系. 第13巻 青木書店 1969 446頁。 (15)A.K。コーヘン著 細井洋子訳 『逸脱と統制』 至誠堂 1968 2t頁。 (16)直.デュルケム著 宮島口訳 『自殺論一社会学的研究』 世界の名著47 中央公論社: 1968。. (17)R。K.マートン著 森東吾 森好夫 金沢実 中島竜太郎訳. 『社会理論と社会構造』 みすず. 書房 1961。 (18)麻生誠 松本良夫 秦政春編著. 『教科外指導の課題』 学文社 1995 4頁。. (19)直.デュルケム著 田原音和訳 『社会分業論』 青木書店 197182頁。 (20) 『生徒の問題行動に関する基礎資料』一中学校・高等学校編一 生徒指導資料第14集 文部省. 1982 1頁 (21)同書 1頁 (22)同書 6頁. 一20一.
(24) 第2章. 生徒指導と特別活動. 第■節生徒指導 1 生徒指導の概念 生徒指導とは、一人一人の児童生徒の個性の伸長を図りながら、同時に社会的 な資質や能力・態度を育成し、さらに将来において社会的に自己実現ができるよ うな資質・態度を形成していくための指導・援助であり、個々の児童生徒の自己 指導能力の育成をめざすものである。ここでいう自己指導能力について、坂本は、 「自己指導能力には、自己をありのままに認め(自己受容)、自己に対する洞察 を深めること(自己理解)、これらを基盤に自らの追求しっっある目標を確立し、. また明確にしていくこと、そしてこの目標の達成のため、自発的、自律的に自ら の行動を決断し、実行することなどが含まれる。」(、)と述べているが、つまりは、. 自己指導能力とは、そのとき、その場で、どのような行動が正しいか自分で判断 して実行する力を意味する。そして、選択する行動が正しいかどうか判断する根 拠は、自己実現と他の人の主体性の尊重である。すなわち「自分も喜び、みんな も喜ぶ」ということを基準にして、自分の行動の決定をすることができる力のこ とである。. この自己指導能力は、児童生徒が、ダイナミックな日常生活のそれぞれの場で、. どのような選択が適切であるか、自分で判断して実行し、またそれらについて責 任をとるという経験を広くもっことの積み重ねを通じて育成される。この観点に 立って、自己指導能力の育成を図るための指導の在り方について、坂本は次の三 点にまとめた。 (、). ①児童生徒に自己存在感を与えること 人間は、その人に代わる人が存在しないという意味でかけがえのない存在であ る。したがって、一人一人の存在を大切にすることが指導の基本となる。また、. 人間は他者とのかかわりの中で生きており、そのかかわりの中で自己の存在感を 見いだせるとき、いきいきと活動できるのであり、児童生徒が自己存在感を得る ことなしに、その自己実現は図れない。その意味で、一人一人の児童生徒が例外 なくあらゆる学校生活の場で自己存在感をもつことができるように配慮すること. 一21一.
(25) が重要なのである。. ②共感的人間関係を育成すること 人間が自分の人生の目標を立て、それに向かって全力を投球しても、その目標 の達成は容易なことではない。その過程には多くの障害が横たわっている。この 過程において、同じような人間的な弱さや不安を自覚した人間同士が出会い、そ れぞれの経験をありのままに語り合うことは、自分の経験をはっきりと意識化さ せ、現実に向かって心を開放させる役割を果たす。このような経験を通じて、自 分についての認知の仕方や行動の変化がもたらされるようになるのである。相互 に人間として無条件に尊重し合う態度で、ありのままに自分を語り、共感的に理 解し合う人間関係を育てることはきわめて大切であり、このような共感的な人間 関係の中にあってこそ児童生徒の自己受容、自己理解はいっそう促進される。 また、個別の指導にあたっては、 「共感的な人間関係」は生徒指導を進めるう. えでの基盤としても重要である。児童生徒は、日常の教師の姿をみて育つ。した がって、日々の教師と児童生徒のかかわりにおいて、児童生徒は、教師の人間性、. 人と人との人間的なふれあいを感じ取り、よりいっそう親密な人間関係を結ぶこ とができるのである。. さらに、人は孤立して社会生活を営むことはありえず、つねに特定の社会の一 員として生活していかねばならないという意味においても、共感的な人間関係の 育成は重要な課題である。自ら行動を決断し、実行する場面は、しばしば児童生 徒にとって葛藤の場となる。すなわち、児童生徒は相手の主体性を大切にしなが ら自己実現するにはどうしたらよいかということを学習するのである。したがっ て、生徒指導にあたっては、つねに相手とのかかわりの中で行動するよう指導す ることが大切であり、このような指導を通じて集団としての連帯感が育成され、 学級や三富の一員としての自覚やモラールも高められるのである。. ③ 自己決定の場を与え自己の可能性の開発を援助すること 児童生徒が、自らの行動を決断し、実行し、責任を持つという経験を通して自 己教育力は育成されることはすでに述べたが、学校教育においても、児童生徒に 自己決定の場をできるだけ多く用意し、児童生徒が決断と責任のある行動をとれ るように援助することが重要となる。そのためには、まず、できるだけ児童生徒 に自らの行動を自分で選択する自由を与えることが大切である。そして、そのう えで自ら決断した行動に対して責任を・とるよう指導することが必要である。. 児童生徒の自己決定に際しては、どのようなことを根拠にして自らの行動を決 定するかはその児童生徒自身が決めるものであるが、行動選択の基本については 一22一.
(26) 教師の側で指導することが必要である。積極的に他の人の主体性や人格を尊重し、. かつ、自己の能力・発達の可能性を最大限に発揮する。すなわち、自他のそれぞ れの社会的な自己実現を図ることをめざして自己の行動を決定することが、その 基本となる。. 2 生徒指導の意義 文部省『生徒指導の手引き』 (改訂版)には、生徒指導の意義について次のよ うに示されている(3)。. 1 生徒指導は、個別的かつ発達的な教育を基礎とするものである。. 2 生徒指導は、一人一人の生徒の人格の価値を尊重し、個性の伸長 を図りながら、同時に社会的な資質や行動を高めようとするもので ある。. 3 生徒指導は、生徒の現在の生活に即しながら㍉具体的、実際的な 活動として進められるべきである。. 4 生徒指導は、すべての生徒を対象とするものである。 5 生徒指導は、統合的な活動である。. このことから考えて、生徒指導とは、 「一人一人の生徒を大切にし、個性を伸. 長させるとともに、社会の成員としての資質や能力、態度を発達させる」ことを 目的としていることがわかる。さらに、その指導・援助にいたってはすべての教 師の統合的な活動であるといえる。生徒一人一人は、それぞれの能力、適性、興 味、関心、環境、生育歴、進路希望において違いがある。したがって、一人一人 の個人的な特性の差や個性に十分配慮した指導が必要となる。また、個人の人格 や行動における弱点、問題行動や非行などの矯正や処理に第一の目的がおかれる のではなく、現状を基盤にしながらも、より正常な、より健康な発達をめざす指 導や援助に重点が置かれていることは当然のことである。つまり、生徒指導の意 義とは、上述の目的達成のために、生徒一人一人の自己実現につながる指導にお ける教師の統合的な関わりであるといえる。. 一23一.
(27) 3 生徒指導の課題 様々な問題が日々起こっている学校現場に、さらにいっそうの生徒指導の充実 が求められている。ここでは、『生徒指導の手引き』 (改訂版)(。)に掲げられて. いる項目からその課題を探る。. ① 現代の学校教育や社会において、人間関係の改善と望ましい人間関 係の促進が強く望まれている。. ②生徒の学校生活への適応や自己実現に関する問題が増大し、その解 決についての援助や指導が必要とされてきている。. ③ 望ましい習慣形成に、学校教育も積極的な努力をすることが求めら れている。. ④道徳教育の基盤を培うために生徒指導の充実強化が必要とされる。 ⑤ 青少年の健全育成や保護育成の活動に関して、学校も果たす役割を もっている。. 特に、課題の第一に述べられている「人間関係の改善と望ましい人間関係の促 進」に着目し、考察することとする。. 学校、それを構成しているのは教職員と生徒である。学校が望ましい教育の場 として役立つためには、教職員と生徒および生徒同士の間に、望ましい人間関係 が促進される必要がある。人間関係が構築されていない状態においては、教育の 多大な効果を期待することはできない。ボルノー(0.F. Bollnow)は、教育が成功. するための前提条件を「教育的雰囲気」(,)という概念で説明したが、これは、教. 師と子どもの間に成立し、あらゆる教育的なふるまいの背景をなす情感的な条件 と人間的な態度の全体を意味し、そこには、信頼関係が存在するのである。そし て、これらの条件や態度は、単に教育にとって都合のよいもの、教育を容易にす るものであり、あるいは逆に、それらが欠けている場合には、教育を困難にする ものであるという意味ばかりでなく、、ボルノーは、 「教育がなにほどかの成功を. おさめるためには、それが(情感的条件、人間的態度)不可欠の前提として存在 していなければならない。」(,)(括弧内筆者)と述べている。. ここで問題としなければならないのは、問題行動の発生の大きな要因として、 一24一.
(28) 第1章で述べたように、 「人間関係の希薄さ」が考えられる点である。これは、. 生徒指導の課題である「人間関係の改善と望ましい人間関係の促進」に合致する ものであり、人間関係づくりに大きな効果を期待できる特別活動の実践に頼ると ころが大きい。. 第2節. 二男lJ 7舌動. 1 特別活動の意義 学習指導要領第4章「特別活動」では、その目標を次のように示している。 (7). 第1 目標 望ましい集団活動を通して、心身の調和のとれた発達と個性の伸長 を図り、 集団の一員としてよりよい生活を築こうとする自主的、実 践的な態度を育てるとともに、人間としての生き方についての自覚を 深め、自己生かす能力を養う。. この特別活動の目標は、特別活動の性格及び方法原理としての特質、個人とし て、また集団の成員としての資質を身につける自主的、実践的な態度を育てると いう目標や人間としての生き方についての自覚を深めるとともに、現在及び将来 にわたって自己実現を図る能力、即ち自己を生かす能力を養うという目標を表し ている。特に、特別活動の意義を考える上で、冒頭部分の「望ましい集団活動を 通して」に注目せざるを三まい。それは、特別活動の性格を明確にするものであ るからである。. 集団について佐々木は、 「個人としての人間は、集団と密接に関わっており、. その所属する集団、特に社会集団に大きな影響を受ける。さらにいうならば、人 間の存在そのものも集団によって成立し、また規定されているのである。」(、)と. 述べているが、つまり、人間の成長に集団は欠かすことのできないものなのであ る。さらに蜂屋は、 「われわれは、毎日、集団生活をしている。集団というもの. があって、その中へ入って行って生活しているのではなくて、生きているという ことが、『集団を』生きていることであり、集団生活そのものである。」(・)と述. 一25一.
(29) べている。学校の中における集団には、学級、班、あるいは学級の枠を越えて組 織される様々な集団がある。生徒は、その様々な集団に属している。そしてその 中で生徒同士の相互作用が行われると同時に、人間関係がつくられていくのであ る。その点について、高旗は「集団活動を積極的におこない、協力や協同の機会 をつくって入間関係をよりよいものに形成していく指導こそは、特別活動の指導 である。」q・)と述べている。したがって、生徒一人一人の成長と人間関係づく. りには、望ましい集団が必要とされる。さらに、その活動においては、集団の各 成員が互いに人格を尊重し合い、個人を集団に埋没させることなく、それぞれの 個性を認め合い、伸ばしていくような活動でなければならない。 また、宇留多は、特別活動の意義について、次のように述べている。{、、). ①特別活動は子どもたちが「生きること」を学ぶための教育活動であり、 人間らしい人間として自己を伸ばしている教育活動である。. ② 特別活動は人間が自ら学び、自己指導を行い、自己実現を図っていくと いう人間の本質を生かす教育活動でなければならない。. ③特別活動は子どもたちが生きることを学ぶために、学校において子ども たちが協働する集団(社会)を築き、集団を発展させていく教育活動でな ければならない。. ④特別活動においては、上のような経験を通して子どもたちが生きるため の態度や能力を身につけていくことが大切である。それは知識を与えるこ とによって生きることを学ぶことをすべて否定しないが、生きることの教 育は知識を与えることでは不可能な態度を育成することを目指している。. ⑤特別活動は子どもたちが、それぞれの発達段階において、発達課題を達 成するために必要な経験をつみ重ねるための教育活動である。いいかえれ ば、発達段階を無視しておとなのまねをさせる教育であってはならない。. ⑥特別活動において子どもたちが上のような経験を十分につみ重ね、自己 指導を行っていくためには、学校の計画的な援助が必要である。また以上 のような特別活動の本質と結びついた教師の教育観や子ども観を前提とし た教育である。. 以上のことから、特別活動が人間としての発達、人間関係づくりに大きく影響 していることがわかる。特に集団のあり方、つくり方において、教師の適切な指 導が必要であることはいうまでもない。. 一26一.
(30) 2 集団とは 学校には、いろいろなインフォーマルやフォーマルな集団が存在し、盛んに集 団活動が行われている。遊び集団のように自然発生的につくられるインフォーマ ルな集団に対して、教育的に意図的に組織されたフォーマルな集団は、大きくは 「全校集団」と「学級集団」の二つに分けられる。前者には、生徒会などの集団 がある。後者には、生活(学習)班集団や係活動集団などの小集団も含まれる。特. 別活動の特質である「集団活動」は、フォーマルな「集団」を対象としたもので ある。. 「集団の定義」について、蜂屋は、集団を「共通の目的をもつ複数の人たちの 集まりであって、組織をもち、コミュニケーションを行うもの」と規定し、条件 として、①複数の成員 ②共通の目的 ③組織 ④コミュニケーションを挙げ、 「集団指導の第一歩は、集合の状態を集団にまですることにある」(、2)と述べて. いる。また、田中も、 「単に人が集合しているという物理的現象ではなく、個人. が集団に所属すると、ものの感じ方や考え方あるいは行動を変容するという事実 があり、個に対する集団の影響力を認めないわけにはいかず、むしろ社会的心理 的現象として存在する」といった意味のことを述べた上で、集団を「二人以上の 個人の集合であって、その個人の心理的相互関係の集合体系である。」(、3)と心. 理学的に定義している。つまり、集団が存在するということは、個に対し所属す る集団が何らかの機能を果たし影響を及ぼすようになった心理的な状態をいうと いうのである。. これは、学級集団を例にとるならば、学級編成当初は、便宜的・機械的に振り 分けられた一つの集まりにしかすぎず、生徒が偶然に一隻の船に乗り合わせたよ うな「集合」の状態であり、共通の目標もなく、個々の願いや欲求もばらばらで あって、 「集団」とは呼べない。しかし、その「一つの集まり」には、やがて個. 人間の心理的な相互作用が生まれ、一人一人に目標が意識され、役割が分化され 「学級集団」と呼べる集団へと移行していくということを意味している。. その「集団」がより望ましいものになるための条件として、佐々木は次の6点 を挙げている。(、4). ①個人の尊重(個人の優位). ②個人の主張が積極的にできる. ③人間としての平等に基づく人間関係 ⑤合理的なリーダーや役割決定. ④仕事を介しての協力と仕事の優位. ⑥コミュニケーションの自由. この条件には、課題解決機能と集団維持機能が含まれている。課題解決機能と 一27一.
(31) は課題解決に対して直接役に立つアイディアや考えなどを意味する。集団維持機 能とは、集団の人間関係の調整と統合に関わる機能である。集団が集団として存 続するためには、課題解決機能だけでなく集団維持機能が必要なのである。そし て、その中で行われる集団活動が人間関係づくりの訓練になるのであり、まさに 特別活動の領域なのである。. 3 生徒指導と特別活動の関連 特別活動の教育的特質といえば,まず,前節で述べたとおり、望ましい集団活 動によって子ども自身が実践的に展開する教育活動であるという点が考えられる。. 子どもたちはさまざまな集団の中で相互にかかわり合い,自分自身を成長させて いく。そしてそういった活動を通して自己実現を図る活動であるといえる。. 既述のごとく、生徒指導の意義は、一人一人の生徒を大切にし、個性を伸長さ せるとともに、社会の成員としての資質や能力、態度を発達させることを目的と して、さらに、その指導・援助にいたってはすべての教師の統合的な活動である ということである。特別活動は、個々の生徒や生徒集団のあらゆる生活や活動の 場面において、その自発性や自主性を尊重しながら展開されるものであるから、 この点から考えても、生徒指導と特別活動は深く関わっていることが認められる。. また,特別活動と生徒指導のかかわりについては,文部省『生徒指導の手引 き』 (改訂版)には,次のように示されているq5)。. ①自分たちの集団を自分たちの力によって,円滑に規律正しく運営 することを学ぶ。. ②集団生活の中で,それを構成する個々の成員の,それぞれの特色 や個性が生かされ,人格が尊:重されるような生き方を学ぶ。. ③集団としての連帯意識を高め,集団の一員として,ひいては社会 人としてのふさわしい態度や行動を学ぶ。. (1)生徒指導と学級活動. 学級を単位として行われる自主的、実践的な活動である「学級活動」において、. 学級という集団の生活を円滑に進めていくためには、それぞれの生徒の意見や立 一28一.
(32) 場を尊重し合いながら、集団としての凝集性をいかに高めるか、集団の運営にど のような係りや役割を持って参加するか、自分の興味、能力、適性を集団のため にどのように生かしていくか、など成員が積極的に活動していくことが大切であ る。これには、教師と生徒、生徒と生徒の人間関係をよりょくしていこうとする 生徒指導の基本的な理念があってこそ成り立つものである。 (2)生徒指導と生徒会活動. 生徒会は、全校の生徒によって組織され、学校全体の生活の改善や向上に向け ての活動、諸活動の調整、学校行事への協力に関する活動を行うが、すべてが集 団によっての活動あり、集団生活の諸経験を学ぶという点から考えても、生徒指 導と関わりが深い。自己実現を図りながら、よき社会人に成長していくために様 々な集団活動の場において経験を重ねていくことは重要なことである。 (3)生徒指導とクラブ活動. クラブ活動においては、生徒が自己の希望や興味、関心、能力、適性などをよ りょく伸長させる場であるだけではなく、学年を越えた異年齢の集団生活が経験 できる活動である。学校の中においては特色のある集団であり、その集団の中に おける役割分担からくる責任感、協力性、仲間意識(同じ興味や関心で集まって いる)などが自己実現につながるものである。 (4)生徒指導と学校行事. 学校行:事の特質は、学年以上の集団の活動であり、その活動を通して成就感や. 充実感が得られ、集団としての凝集性も高まりやすい、他の教育活動では得がた い教育的な意義を持っている。大集団における活動の経験は、学校生活に秩序や 変化を与えることができるとともに、社会的な資質や行動を高めるために有効で ある。. 一29一.
(33) 【註】. /t. (/)坂本昇一著. (2)同書. 『生徒指導の機能と方法』文教書院 1994 17頁. 16頁∼20頁. (3) 『生徒指導の手引き』 (改訂版) 文部省 1981 1頁∼6頁. (4)同書. 7頁∼10頁. (5)O.F.ボルノー著 森昭・岡田渥美訳 『教育を支えるもの』 黎明書房 1993 31頁 (6)同書. 31頁. (7) 『中学校指導書』 (特別活動編) 文部省 1989 8頁. (8)佐々木正昭著 『集団と教育』 兵庫教育大学研究紀要 第15巻 第1分冊 抜刷 1995 57頁 (9)蜂屋慶著. 『生活指導の本質』明治図書 1966 104頁∼105頁. (10)高旗正人・倉田侃司編著 『教職専門シリーズ 特別活動』 ミネルヴァ書房一一1994 117頁 (U)宇留多敬一著 (12)蜂屋慶著. 『特別活動論』教育学大全集32 第一法規出版 1981. 『生活指導における集団指導の基礎理論』 明治図書 1983 113頁. (13)田中熊次郎著. 『教育的集団心理療法』 日本文化科学社 1973 60頁. (14)前掲書 佐々木正昭著 『集団と教育』 66頁∼67頁 (15) 『生徒指導の手引き』 (改訂版) 文部省 1981 82頁. 一30一.
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