イネの遺伝子発現と系統分化
著者
東北大学遺伝生態研究センター
雑誌名
IGEシリーズ
巻
8
ページ
1-80
発行年
1990-03
URL
http://hdl.handle.net/10097/49094
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イネの遺伝子発現と系統分化
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東北大学遺伝生態研究センター
I GEシリーズの発刊にあたって
地球上の環境は,今,かってない大きな問題に当
面しております。世界各地で進行している生態系の
急速な変化のなかには,人間生活に深刻な影響をも
たらす可能性のあるものが,多数含まれています。一方,人間の活動が宇宙空間へと拡がるにつれ,地球
外生態系の構築が,新しい課題として登場しつつあ
ります。生態系の崩壊を防ぎ,より豊かな環境を創
造するための科学的努力が,今日ほど強く求められ
ている時はありません。本研究センターは, DNA分子技術を中心に遺伝
子的段階にまで到達した生物研究の諸成果を生か
し,生態系における生物の生活を一層深く解明し,節
たな人間環境の創造に貢献することを目指しており
ます。いうまでもなく,この課題はきわめて学際的であり,多分野の研究者との相互交流と協力によっ
て,はじめて達成されるものであります。本研究セ ンターでは,ワークショップによる研究者間の討論と意見交換を重視するとともに,その成果をより多
くの方々にご利用いただく出版活動にとり組んでお
り ます。ここに発刊しますIGE(Institute of Genetic Ecologyの略)シリーズも,こうした努力の一環であります。
本シリーズの内容は,多岐にわたる可能性をもっ
ておりますが, 3つのタイプに大きく類別されるだ ろうと考えております。すなわち, (i)特定のテー マ,又はトピックについての解明に関するもの(* 印を付します), (ii)特定のテープ又はトピックに関する最新の文献,実験法の紹介に重点をおくもの
(**印),そして(iii)新しい可能性を求める学際的 交流,対話を試みるもの(***印)であります。 このIGEシリーズが,多方面の方々のお役に少し でも立つことを願って,発刊の辞とします。 1989年3月東北大学遺伝生態研究センター
⑳目 次⑳ はじめに 亀谷 寿昭-・-・-日日-・・・----・ 1 イネ培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現 石川 隆二 イネ植物再体分化にともなう遺伝子発現の変動 阿部 利徳,笹原 健夫・-・--・---・・ 17 イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現 平井 篤志,菅野 明---27 イネ生態型分化と環境適応に関わる発現形質 佐藤 雅志,上埜 喜八----・-・--- 39 イネの粒大および粒形に係わる主働遺伝子 高牟頑逸朗,木下 俊郎----・--・・--- 53 Multi-locus associationとしてのイネの進化 佐藤洋一郎
は じ め に 亀 谷 寿 昭 イネは世界の20億人の主食となっている重要な栽培植物である。北 緯53度のアムール河流域から南緯40度のアルゼンチン中央部まで栽 培されており,多様な環境に適応し,生態的にも著しく分化している。 日本においても,イネは重要な穀物であるとともに,多くの人々によっ て,遺伝,生理,栽培等において貴重な実験材料として研究されてき た。これらの研究のなかでも,野生,栽培イネの系統分化に関する研 究は,集団,個体レベルから細胞レベルさらにDNAレベルの研究がお こなわれるようになってきた。一方,細胞工学的,遺伝子工学的手法
の導入により,体細胞雑種や遺伝子組換え植物の作出とその遺伝子発
現に関する研究も進展してきている。このような現状において,イネ の研究をさらに発展させるうえで,それぞれのレベルでの研究者が研 究を紹介しあう機会をもつことが重要であると考えられる。本書は,イ ネの系統分化上,重要とされてきた形質および遺伝解析が進んでいる 形質の発現の研究,と本センターの共同利用研究課題である「遺伝子組換え植物の遺伝子発現」との接点を探り,新たな研究の糸口,方向
を見出すためにおこなわれたワークショップ「集団,個体,細胞にお ける遺伝子発現」をとりまとめたものである。 本ワークショップを通じて,集団,個体,細胞の各レベルにおける遺伝子発現を解析するうえで各レベルの研究が有機的なつながりを持
つことが重要であり,そのためにも各レベルの研究の情報交換が一層 必要であること,また,イネの系統分化の研究において,細胞工学的,遺伝子工学的に育成された新植物は有用な素材となり得ることの共通
2
認識にいたった。本ワークショップの参加者は異なるレベルの材料を
対象として研究しているが,そのことが,各参加者にとって,膏意義 なワークショップとなったと考えられる。
イネ培養細胞におけるアイソザイム
遺伝子の発現
石 川 隆 二 1.はじめに アイソザイムの研究は,組織特異的発現を利用した発育遺伝学から始ま り,電気泳動の発達に伴いアイソザイム遺伝子としての基礎的な遺伝解析 が進み,遺伝学および生態遺伝学の各分野で用いられてきた。 1980年代に なるとTanksleyらにより植物の遺伝標識としての有効性が報告された9)。 それらの研究はアイソザイム遺伝子の次の 1)遺伝子の直接産物である 2)共優性を示すため遺伝情報が多くなる 3)環境に対して安定的に発現する 4)対立遺伝子の相違が個体に与える影響がほとんどなく,栽培品種お よび野生種においてその遺伝資源が豊富である 5)比較的遠縁の品種間交雑により, F2集団では複数の遺伝子の分離が 認められるなどの特徴を利用した点にある 従来の標識遺伝子に比較して,アイソザイム遺伝子が有するこれらの優 位性を利用した研究はRFLP標識の研究に発展している。 イネではChuのPeroxidaseに関する研究1)以来,野生稲の生態遺伝学 的研究,東南アジアにおける栽培稲の分化に関する研究およびアイソザイ ム遺伝子の遺伝学的研究に発展している2・3・4,5・6,7・8・10).本ワークショップで は,アイソザイムの概要について述べた後,細胞レベルにおける標識遺伝 子として用いるために必要な遺伝子分析と培養細胞におけるアイソザイム 遺伝子の発現について報告する。蓑1アイソザイムの遺伝子記号とその座乗連鎖群
遺伝子記号 酵素種 トリソミック 所属連鎖群 A4,- 1 Acid phosphatase
Act-2 (E・C・3・1・312)
Atp-3
:ll.p II
A d-33 A d-33
Adh- 1 AIcohol dehydrogenase G Adh-2 (EIC・1・1・1・1) AmpII Aminopeptidase Amp-2 Amp-3 Amp-4 (E.C. 3.4.ll,-) N D B D Call 1 Catalase (E.C. 1.ll.1.6) Enp - 1 Endopeptidase (E.C. 3.4.22∴〕 ′ TJ I-・ィ 与..h rJ ,(.り, l l 1 一 l 一 J 一 一 ---////
広hju)EijCn&hjv)&Eijtn EijV)瓜 Esterase
(E.C. 3.1.1.-)
B I H VII
0 III
F IV Gdh- I Glutamate dehydrogenase M XI + XII
(E.C. 1.4.1.2) Got I 1 Asparate Got I 2 aminotranspherase Got-3 (E・C・ 2・6・1 1) 0 ⅠⅠI B I Icd- 1 Isocitrate dehydrogenase (E.C. 1 1.1.37) 0 ⅠⅠⅠ Mdh- 1 Malate dehydrogenase (E.C. 1,1.1.37)
イネ培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現 5 遺伝子記号 酵素種 トリソミック 所属連鎖群 Pgd- 1 Phophogluconate Pad-2 dehydrogenase (E.C. 1.1.1.43) G VIII B I Pgil 1 Phophoglucose PglL 2 Fyi- 3 lSOmeraSe (E.C. 5.3.1.9) M XI+ⅩⅠI B I
Pox- 1 Perox idase
pox12 (E・C・1・11・117) A d-33 Pox13 Pox14 pxo15 B I sdh- 1 Shikimate dehydrogenase A d-33 (E.C. 1.1.1.25)
2.アイソザイム遺伝子の多型性
北海道から沖縄にいたる日本の70在来品種を用いて14遺伝子座におけ る遺伝子型頻度を調査して表2に示した。日本,中国,台湾,ー東南アジア 各地から収集されたテスター系統の一部, 60系統の在来品種を同時に調査 して比較に用いた。日本の在来品種のうち九州の鹿児島と沖縄の在来種の アイソザイム遺伝子型が他の日本在来種に比べてまったく異なっているこ とがわかり,本州の品種ではAmp11およびAmp-2遺伝子座に多型が認 められた。テスター系統のAdh-1遺伝子座に関してはわずかな変異しか 認められなかったが, Acp-1などの遺伝子座では多型に富んでいることが わかった。したがって,テスター系統と比較して日本の在来品種群はアイ ソザイム遺伝子に関しては単一にちかいことがわかった。 表3に典型的な2種類のアイソザイム遺伝子型と,形態的にインド型と 分類された品種が日本型品種に対して各対立遺伝子を有する場合の相対頻 度(佐野・森島5))について括弧内に示した。その相対頻度から形態的形質 に関するインド型品種はほぼ単一の遺伝子型で表され,日本型品種は異な る遺伝子型で表されることが推定された。したがって,アイソザイム遺伝表2 東南アジアの在来品種(テスター系統)と日本在 来品種群の遺伝子型頻度 遺伝子座 遺伝子型 テスター系統 日本在来品種 Act-1 +9 -4 +4 Adh-1 Amp-I Amp-2 Amp13 I. Catll Est-2 Esl19 Pgd- 1 Pgi-1 Pgi- 2 Pgi1 3 Pox-2 0 4C Sdh1 1 31(.52) 68(.96) 29(.48) 2(.03) 0(.00) 1(.01) 3(.05) 0(.00) 56(.93) 71(1.00) 0(.00) 0(.00) 53(.88) 69(.97) 2( 03) 2(.03) 5(.08) 0(.00) 30(.50) 30(.50) 0(.00) ) \-ノ \ー。ノ 3 6 1 9 0 0 ( ′し ( 6 4 1 6 41(.68) 69(.97) 18(.30) 2(.03) 1し02) 0(.00) 30(,50) 69(.97) 30(.50) 2(.03) 32し53) 70し99) 13(.22) 1(.01) 15(.23) 0(.00) 52(.87) 70( 99) 8( 13) 1(,01) 37( 62) 69(.97) 15(.25) 2(.03) 8(.13) 0(.00) 25(.42) 69(.97) 35(.58) 2(.03) 38( 63) 69(.03) 22(,37) 2(.03) 28(.47) 70( 99) 32(.53) 1(.01) 38(.63) 70(.99) 22(.37) 1(.01) 8(.13) 0(.00) 51(,85) 71(1.00) 1し02) 0(.00)
イネ培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現 7
蓑3 7種のアイソザイムの組合せにみられる典型的な遺伝子型
遺伝子型 AcP-1 Amp-2 Cal11 Est-2 PgilI Pgi-2 Pox 2
A +9 1 2 (.04) ( .00) (.02) Gid 5 1 9 ( \ノ 0 2.0 l n川旧p Eiii1 4 8 一.9 ( 2 1 0 17) (.26) ( .23) 4C (1.00) ( )内は形態形質からインド型品種と分摸される品種が日本型 品種に対して各対立遺伝子を有する場合の相対頻度(文献5から 一部改変) 子の多型を得るためにはインド型と日本型品種間の交雑を行わなければな らず,その交雑により同時に複数の遺伝子分離の得られることが予想され る。 栽培品種内の遠縁品種間交雑においても遺伝子分離の得られないときに は, Oryza rujipogonなどの野生稲との種間交雑が必要となる。また,それ らの交雑が,遺伝子分析や培養細胞系における実験において様々な支障を もたらすこともある。
3.遺伝子分析
イネのアイソザイム遺伝子は既に品種分化などへの利用が進んでいた が,染色体上の位置が明らかにされたものはわずかである。そのため実験 に用いる前に形態形質,もしくは他のアイソザイム遺伝子との連鎖分析を 行い,それぞれのアイソザイム遺伝子の染色体上の位置を明らかにした(義 4,図1)0 1)第1連鎖群 Pgd-2は栽培品種内においては単一の遺伝子型を有しているため,野生 イネを遺伝変異の供給源として遺伝子分析を行った。 W120 (Oryza rujPogon)との雑種一代目はF2種子が多く得られないため,日本型品種 Acc504との交雑後代のF4個体で出穂日が早く稔性の高い個体を選抜し て交配に用いた。このF4個体と日本型およびインド型品種との交雑後代 を用いて遺伝子分析したところ,表に示したような連鎖関係が得られた。3 遺伝子間において組換価を算出できたため,連鎖地図上にその位置が与え(卜0>d>9.0)sl机 (6.0>d>8.0〕MSM 〔∞o>d>ト.0)SL.寸 (9.0>d>C.0)∞C.6 (ト0>d>9.0〕mt9 (anltZA uO!Tt:u!quJOUa1) anttzANX (so>dvc.o)cvs (C.〇>d>Z.0)NS.9 (9.0>d>cd)lps 〔d>6.0)OVO (sod>d>NO.0),I_(.NT (LOでd>9.0)6T.廿 (9.O>d>Ld)8L.∼ 寸9 LN St ≡ ト寸 gf. 卜0.N7:94ト 可Z.C≠Z.LN 卜N.S¶8'9Z r,I().I;+I..(.∴ 6∞.寸¶Z'ヨ C6rC≠Z.6N 69'M¶6'CZ 7・・r(I,I [・JIYJ T-yPV T・PBJ T・PEJ FJfJ P ヽ・ZyJ EiZt4 5-a DZ SMt,UUVxLNlh 9Ct[lxOCClh 卜Mf70UVxOgNlh 9CtEZ×0∞Nlh SMf73UVxLZlh (anltZAuO!ttZUTqu10Ual) qqtZtZ anTtZA NX qgt2t: ggt:I: qq・v qq・v gg・v qqtZt: ・gtZtZ qq・V -ETV (o/o)草薮惑 NM.C¶寸 6T 8S lj=f7 ∞ 69.N≠96 0T 寸TN 寸N 69 寸≠96N ・.∼ T・PEJ2T P V T・lBJ‥T・yPD E・.1EJ:Z-7SH E⊥SH‥E・PEJ EJRJ‥E・PEJ Lf79UUVx寸NNUUV 69NUUVxTOOUUV 9gtZlx'h qqtZtZ qgYtZ ggtZt: qqtZV qgtZV ggt:V qqVV q凹VV ggVV 叢由Nh 恒良!WJ.,巨・)..I.[塔・, J jt\.i LI.i蔽JLJ.:TJ招rri十Tf・「.三TJb Ill t・Jt
イネ培善細胞におけるアイソザイム遺伝f・の発現 9
Llnkage group I
vIP 辿二呈 Est12 AnlP-3 也L呈
(L)y San° and鮎rbler)
Llnkage 9rOUp VIII
_■ト-・・一一- :ら a - -一一一一一一一一一一-二= 11. 2 二一 二 9.0 = 二 6.1ニ ー 18.1 =ー 132 巴旦 巳由」 冬型二1 Llrdtage group d 33 d-33 Sdh- 1 (by Vu et al)
LLnkage group Xl l XIl 一一一d J→←-egij 昼型± Egii 呈吐± 図1 11種のアイソザイム遺伝子に関する連鎖地図 られた。 Est-2および鞄i-2が第I連鎖群に所属するので, Pgd-2も同連 鎖群に属すること,またPgd-2がwx座の近傍に位置することなどがわ かった。 2)第ⅤⅠⅠⅠ連鎖群 一 Pgd-1は石川(1989)のトリソミック分析により第VIII連鎖群に属する ことがわかり,同連鎖群上の標識遺伝子との連鎖分析が行われた。形態形 質であるhZ (lazyhabitat)とu-4 (virescentleaf)を有する標識遺伝子 系統, FL280とIR36のF2集団より, Pgd-1が両標識遺伝子と連鎖してい ることが明らかとなった。これらの遺伝子は互いに連鎖しているため, PgdJの染色体上の位置関係が明らかとなった。 Adh-)の変異体
10 (Acc224,Ac437)がPgd-1と連鎖していることがわかったので,全遺伝子 の染色体上の位置関係は図1のように求められた。 3) d-33連鎖群 石川(1989)のトリソミック分析により, Acp-1および乃)X12がd-33 連鎖群に座乗していることがわかり,同連鎖群上の標識遺伝子と連鎖分析 が進められた。わい性遺伝子, d33を有するFL27とインド型品種 (Acc435)との交雑により, Acp-1,Pox-2とdJ33遺伝子が連鎖している ことが明らかと■なった。 AcpJ-Pox-2の組換価がWulO)らの報告よりも 低い値となったことは, F2分離でインド型由来対立遺伝子の頻度が期待値 より高くなったことに原因すると考えられた。 4)第ⅩⅠ+ⅩⅠⅠ連鎖群 栽培品種内ではグルタミン酸脱水素酵素(GDH)のアイソザイムは単一 に近いが,フィリピンの在来品種Acc259において泳動の遅いバンドがみ られた。Acc259をインド型品種,AccOOlと交配したところFl雑種では両 親のバンド間に幅の広いバンドが現れた。同Fl由来のF2集団では親(Pl およびP2)とFlのバンド型がPl:Fl:P2-1:2:1となったので,1遺伝子 支配を受ける3量体以上の酵素であることがわかりGdh-1と命名した。 F2集団で同時に分離したアイソザイム遺伝子との連鎖分析の結果, Pgill との間において組換価が計算された。また, Pgi-1が第XI+ⅩII連鎖群の 形態形質の標識遺伝子であるchl-)と連鎖を示したため, GdhllとPgi-1 は共に同連鎖群に所属することが確認された。 これら遺伝子を含めて,他の研究者の最近の結果2・3,4・6・7・8,10)も併せると24 遺伝子が9つの染色体上に座乗していることが確認された。これらのアイ ソザイム遺伝子と従来の地図,およびRFLPの地図との対応が進んでいる ため,近い将来に全ての遺伝子で構成される詳細な連鎖地図が完成するこ とであろう。
4.培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現
アイソザイム遺伝子を培養細胞での標識として用いるため,継代中にお きる発現様式の変化を調査した。カルスは日本型およびインド型品種の種イネ培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現 11 子およびそれらのFl雑種種子から誘導した。 2月後に種子から切り放し1 月毎に25oC,明条件で継代した。そして, 15種のアイソザイム遺伝子の発 現を1月毎1年にわたり調査した。 親系統を用いた結果,発現様式はおよそ次の3タイプに分類された。 1)安定した発現を示すタイプ 2)発現が修飾されるタイプ 3)発現が消失するか,もしくは不安定なタイプ 1に分類されるAdh-2は幼芽や成葉での発現はみられず,種子根や嫌気 条件下で発芽させた幼芽でのみ発現が認められたo Adh-1は個体並びに培 養細胞において安定した発現を示し,特に培養下で強い活性を示した。ま た,この遺伝子も嫌気条件では比較的強い発現を示したため,アルコール 脱水素酵素は培養細胞のおかれている嫌気的条件に影響を受けて強く発現 されているものと考えられた。 1に分類された遺伝子の各発育段階での発 現様式は異なっているのだが,培養細胞においては非常に安定した発現を P P C C P P C C く=> く=> く=> く=⊃ - - こコ ← 「 コ H H r= H 図2 幼芽(P)および培養細胞(C)におけるアイソザイム遺伝子の発現 ●○は同種の酸素内にみられた異なる遺伝子座の発現を示す ○は異なる遺伝子座間の雑種バンドを示す
12 示したため,細胞レベルにおける遺伝標識としての利用が可能であると考 えられた。 2に分類されたAmp-2, Amp-3の培養細胞での発現は,主要バンドの 近傍に複数のバンドを伴う"修飾"型であった。 Amp-2では一極側に活 性の低いバンドを伴い, Amp13では主要バンドが2本になりさらに1本 のバンドを伴って発現した。しかし,これらの遺伝子は遺伝子型の異なる 個体由来の培養細胞での発現が明瞭に識別されたため, 1と同様に遺伝標 識として用いることが可能であろう。3に含まれるAcp-lはカルス誘導直 後には,成業と同様に3本の主要バンドが出現した。継代期間が長くなる ことでその発現が不明瞭になる傾向が認められたため,標識としては不適 当であると考えられた。 Est-5は2本発現するバンドの片方が継代中に消 表5 各発育段階および器官におけるア イソザイム遺伝子の発現様式 個 体 カルス 幼芽 成業 初期 後期 Acp-1 Adh-1 Adh-2 Ampll Amp12 Amp-3 Cat-1 Est-2 Est-5 Est19 Pgd1 1 Pgd12 Pgil 1 Pgi- 2 Sdh-1 m m * + 十 + + + 十 十 + + + 一 + + + + * + 十 l + 一 十 1 + + 一 t + 十 十 + + 十 一 + 十 十 十 + + + + + + + + m m * l + + + + + + + + L 十 十 十 十 + :バンドが認められるもの +m:バンドが修飾されているもの +*:2本のバンドのうち片方のバンド が消失したもの - :バンドの発現が認められないもの
イネ培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現 13 失した。 Est-9は培養初期に発現が認められたが,継代車にその発現が消 失した。 PgdJは培養初期からその発現を示さなかった。 Est12および Pud-2が培養細胞において安定した発現を示したことを考えると,同一酵 素種のアイソザイム間で発現様式が異なることは非常に興味深い現象であ る。そのために個々の遺伝子毎にその発現様式を調べなければ,培養細胞 での遺伝標識として用いることができないことがわかった。以上の結果は, 要約して表5,図2に示した。
5.培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の変異
培養中に生じる各対立遺伝子の変異を調査するために,日本型・インド 型品種間のFl雑種由来のカルスを用いた。Fl雑種を用いることで,遺伝的 にホモ型である品種では識別できなかった各相同染色体上の対立遺伝子の 消長を調べることが可能となった。 カルス誘導後, 1月毎に各細胞系統から20-40mgのカルスを切り出し て, 6つの染色体上の9遺伝子座におけるアイソザイム遺伝子が調査され た。これらのアイソザイム遺伝子は共優性を示すため,各対立遺伝子の発 現がそれに対応するバンドとして認められることが期待された♂ 1年にわたる調査では, 3)に分類されるAc9-1, Pgdll,Esi-9では親品 表6 雑種由来のカルスに認められたアイソザイム遺伝子の発現変異 組合せ 調査系統数変異系統数霊芝諾警去完型.変異系統名 IR36×KL609 108 5 Cat11 (インド型) Cat-i (インド型) Cat-1 (インド型) Amz'-2 (日本型) Sdh-1 (インド型) FL47×IR36 98 2 Sdhl (日本型) Amp-2 (インド型) Silewah x IR36 99 0 IR36 × Silewah 112 0 V V V V V V V インド型,日本型はそれぞれの品種由来の対立遺伝子の表現型を示す14 表7 変異系統にみられたアイソザイム表現型の変異 分割系統の表現型 日 本型 -テロ型 インド型 日本型 インド型 日本型 インド型 ':日本型,インド型はそれぞれの品種由来の対立遺伝子の表 現型を示す 種の場合と同様に発現が認められなかったが, 1)および2)のグループに
分類された遺伝子Amp-2, Catll, Fyi-1, Pgi-2およびSdh-1は安定し
た対立遺伝子の発現を示した(表6)。 さらに,それぞれのFl,由来の培養細胞を100以上の細胞系統に分割し て増殖さ、せた後にアイソザイム遺伝子を調査したところ,IR36×KL609の Fl組合せでは5つの変異系統が得られ, FL47×IR36のF.組合せでは2 つの変異系統が得られ,その他のFl組合せから変異系統は得られなかっ た。このように培養細胞ではFl組合せによって変異率に差が存在し,遺伝 子座毎に変異率が異なる傾向が認められた。IR36×KL609の3つの変異系 統を更に分割して調べたところ, V3系統において変異細胞と正常細胞が 混在していることが予想された。 VlとV4系統では,日本型親品種由来の 対立遺伝子のみ発現している変異体しか観察されなかった。 FL47×IR36 のV6系統について調べたところほとんどの分割カルスは日本型親品種由 来の表現型を示したが,わずかにヘテロ型およびインド型親品種由来の表 現型も見られた(表7)。原因はおそらくランダムな分割により正常型およ び変異型細胞が混在している細胞塊を継代し,変異細胞のみ切り出してア イソザイムを調査し,その次に正常細胞並びに変異細胞を切り出して調査 したために表現型が分離したものと考えられる。 変異の原因としては突然変異,メチレーションによる一時的変異,体細 胞組換え,もしくは染色体および断片の欠矢などが考えられる。今後,い つどの様な原因によってこれらの変異が生じるかを明らかにしなければな
イネ培養細胞におけるアイソザイム遺伝子の発現 15 らない。特に,1細胞由来のクローンを用いることで変異体の固定系統を作 出することや,それらを用いて再分化,交配実験,核型分析など行う必要 があるが,インド型品種がプロトプラスト作出や再分化しにくいなどの欠 点を有しており,今後解決しなければならない問題点が数多く残されてい る。 謝 辞 本実験をすすめていく上で,有用な助言を頂き,データの解析に際しては快く 相談にのって頂いた弘前大学の斎藤,新関博士,北海道大学の木下博士,並びに 遺伝学研究所の森島博士に心から感謝いたします。 参考文献
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イネ植物体再分化に伴う
遺伝子発現の変動
阿部 利徳・笹原 健夫
1)はじめに 培養細胞由来の変異体の作出や,細胞融合あるいは組換えDNAによっ て交雑ではなかなか得られない有用な形質を付与したりすることはこれか らの作物育種の一つの方向であろう。しかしながら,たとえ組換えDNAに よって細胞を形質転換したとしても,植物体にまで再生させなければ,実 際の育種には供し得ない。組換えDNAによって優良な作物を育種するた めには,数多くの形質転換体を得て,その後の有望系統の選抜に提供して いく必要がある。ところがイネの遺伝子操作ではアグロバクテリウムを用 いるのが困難なので培養細胞を用いて遺伝子導入を図るのが一般的になっ ている。しかしながらin vitroの培養で良く増殖する細胞は再分化能力を 消失している場合が多く,再分化するかどうかが問題となる。そこで再分 化能力の高い細胞とはどのような細胞であるのか,再分化と前後してどの ような生理生化学的変化が生じるのか。それらのことを理解することは再 現性のある効率的な再分化をもたらす基礎となる。 懸濁培養細胞あるいはカルスからの植物体の再分化に伴って変動する酵 素を調べればその解決の糸口がつかめるのではないかということで一部の 酵素について調べられている.ト-モロコシや大麦ではエステラーゼ1)・2), Vl'gna属のunguicakltaでは酸性ホスフアタ-ゼ3),シロイヌナズナやタ バコなどではパーオキシターゼ4)・5)などが器官分化に特異的に関係してい るという報告がある.イネでも器官分化に先行してα-アミラーゼの活性 が増大し,還元糖が増加するということが知られている6)。また二次元電気18 泳動分析によってニンジンやイネで不定腔の分化やembryogenicなカル スに特有なタンパク質が同定されている7)・8)。イネではembryogenicなカ ルスには54DKと24KDの2つの特有なタンパク質が存在し, non-em-bryogenicなカルスに特有な27KDのタンパク質が消失するということが 報告されている8)。しかしながらこれらの研究では複数の酵素を調べた報 告は少なく,培養細胞からの個体再生に関して総合的な把握がなされてい ない。そこで筆者らはイネカルスからの再分化能力を向上させることを目 指して,その基礎となるカルス中の諸酵素の変動について調べた。
2)高頻度再分化カルスの選抜と遺伝子発現
一般に懸濁培養細胞またはカルスをオーキシンを除いた培地に移すと, 不定腔や不定器官の分化が誘導されるが分化能力は品種間で著しい差異が ある9)Ilo)。さらに同一品種,同一組織由来のものでも継代培養の期間によっ て異なり;長期間培養を継続すると能力は低下し,場合によっては消失す る。再分化能力は染色体異常などによって低下することが報告されている が12),再分化能力が低下するような変異が起こるならば,その反対に向上す るような変異も起こるのではないかと考え細胞選抜を試みた11)。インド型 品種Tadukanのカルスを誘導してから1.5-2.0mg/Jの2,4-Dを含む MS培地で継代培養を行うと培地に置床後30日以降に高濃度のオーキシ ンを含むにもかかわらず,まれに緑点が分化することがある。一般にこの 縁点は伸長することはないが,オーキシン濃度の低い培地に移すとShoot が伸長してくる。この縁点の部分のみを切り取り新しい継代培養培地に移 すとカルスとして生長するが,カルスの表面にまた縁点が出現してくる。こ のような操作を約2年続けて高頻度再分化系統を確立した。この選抜カル ス系統は, 2mg/Jの2,4-Dを含む培地でも50%以上のカルスから茎葉原 基を分化させるが, 2,4-Dを低下させた培地(0-0.1mg/l)に移すと約 90%の割合で旺盛に茎葉原基を分化し(表1),根の分化を伴わず典型的な Organogenesisを起こす。茎葉原基は多芽体状を呈し旺盛に分けつする (microtellerring)。根は茎葉がある程度発達してから節部位から不定的に 発生する。この選抜カルス系統を用いて4年の継代培養の後で再分化を試イネ植物体再分化に伴う遺伝子発現の変動 19 第1表 選抜カルスと非選抜カルスの茎葉原基分化能の比較 2, 4-D漬度 非選抜カルス 選抜カルス (ppm) 茎葉原基分化/全カルス(%) 茎葉原基分化/全カルス(%) 0 3 9 0 3 3 5 8 8 8 8 日H HH : / ′′′ / / 0 6 7 9 3 2 5 7/ / / ′/1 1 2 18 8 0 8 7 6 7 92 7 4 4 み, 18個のカルスより2ケ月後には424個体の植物を分化させた。現在こ の高頻度再分化のカルス系統について様々な角度から調べているが再分化 した当代の植物でも形態的な変異の認められる個体の頻度も高く(約 10%)またカルスのオルガネラDNAの分析から,その変異も認められてい る。ここでは遺伝子の産物であるタンパク質の変化について触れたい。ま ず,カルス中のタンパク質の分析をSDS-PAGEおよびNative-PAGEと SDS-PAGEの二次元電気泳動によって行った。その結果, 24KDと42KD のポリペプチドの消失と34KDの新たなポリペプチドの出現が観察され 第1図 イネカルスのSDSポリアタリ 第2図 高頻度再分化カルスにおける ルアミドゲルの電気泳動 -パーオキシダーゼアイソザイム 1: Tadukanの選抜カルス 1:選抜カルス 2: Tadukanの原品種カルス 2:非選抜カルス
20 第2表 器官分化率とパーオキシダーゼ活性の品種間差異
品種 茎驚基 驚(賢,パー(ち.+,.t>5.9iIme,活性
藤坂5号 日本晴 AllorioGaiya °han Tosar
Tadukan 0 0 0 5 5 3 た(図1)。このことは選抜した変異カルスにおいて非選抜のカルスとは異 なるタンパク質の生合成が行われていることを示している。さらに酵素の アイソザイムに変化をきたしている可能性を考え,パーオキシダーゼ,エ ステラーゼ,ロイシンアミノペプチダーゼなどのアイソザイムパターンを 比較したところ,パーオキーシダーゼザイモグラムに違いが認められ,選抜 カルスは非選抜カルスにみられる2本のバンドの消失と, 3本の新たなバ ンドの出現が認められた(図2)。このようなことからカルスからの再分化 能力とパーオキシダーゼのパターンやその活性との間に関係のあることが 推定されたので次に再分化能力の異なるいくつかの品種を用いて,さらに 詳しく調べた。
4)イネカルスにおけるパーオキシダーゼ活性の差異と再分化
能力
種子よりカルスを誘導後, 2mg/∫ 2,4-Dを含むN6培地で培養を行い, 約45日毎に継代を行った。植物体再分化には2,4-Dを0.02mg/Jに減じ, カイネテンを1mg/J加えて用いた。パーオキシダーゼ活性はグアイヤ コールを使用する定法によって行い,ザイモグラムパターンはポリアクリ ルアミドゲル電気泳動を行ってから0.030/. 3-3ジアミノベンジンおよび 0.03%の過酸化水素を含む酢酸ナトリウム緩衝液に浸し発色させた。 8ケ 月の継代培養後には,日本型の藤坂5号や日本晴のカルスはほとんど再分 化を示さなかったが,インド型のTadukanやGDTおよびジャワ型の AHorioは再分化能を有し, TadukanとAllorioはそれぞれ特徴的な再分イネ植物体再分化に伴う遺伝子発現の変動 21 (JtI Oo∽.EE.0) II想AIjiJ{叶★-.V 9] 'L † 拝甘組のEl救 第3図 再分化培地へ移植後のパーオキシダーゼ活性の変化 化の徴候を示した。 Tadukanは茎葉の分化が最も良好であり, Allorioは 緑点と根の分化が旺盛であった。パーオキシダーゼ活性は茎葉または根の 分化の旺盛なTadukanとAllorioで高く,再分化をほとんど示さなかっ た藤坂5号と日本晴では著しく低かった。再分化培地に移してからパーオ キシダーゼ活性の推移をみるとAllorioはTadukanと比較して日数が経 過するにつれて上昇した(図3)。また再分化培地に移す前後でザイモグラ ムパターンには変化はみられないことから,パーオキシダーゼほ,再分化 能力と関係し,パーオキシダーゼの活性上昇と根の分化との間に何らかの 関係のあることが示唆された。 パーオキシダーゼの一般的な作用として, Q)シンナミルアルコールの 重合によるリグニンの合成, ②フェノーリックモノマーの重合によるス ベリンの合成とコルク化,そして③インドール酢酸の好気的酸化分解な どがあり,活性の強いカルスでは特に③の作用によってオーキシンが分解 され,相対的にサイトカイニンの量比が高くなり,植物体再分化に都合良 くなっていることが考えられる。また再分化能力がどうかを調べるのに再 分化培地に移さなくともパーオキシダーゼ活性を測定することにより推定 できると筆者らは考えている。
5)イネカルスにおけるエステラーゼザイモグラムの変動
7品種(日本型4,インド型2,ジャワ型1)の種子より上記培地でカルス22 を誘導し, 2ケ月の培養後にN6の再分化培地に移した。一部,インド型品 種Tadukanたぉいて1-4年の長期間継代培養したカルスも実験に供試 した。継代培養カルスおよび再分化に移したカルスは置床20日後に18% グリセロールを含む0.625Mトリス塩酸緩衝液で抽出し, Native-PAGE によりタンパク質を分離し,0.03% α-ナフテル酢酸,0.06% β-ナフチル酢 酸および1%ファーストブルーRR塩を含む50mMトリス塩酸緩衝液に ゲルを浸し,活性染色を行った。 第4図に継代培養カルスと再分化カルスのエステラーゼアイソザイムパ ターンを示した。いずれの品種でも両カルスともに見られる活性の高い1 本のバンドが存在したが, 7品種のうち5品種において再分化培地のカル スに特徴的な2本のバンドが出現もしくはより鮮明になった。この2本の バンドは高頻度再分化カルス系統では継代培養培地においても認められ, また菓身においても弱いをがら認められた。以上のことからカルスからの 再分化に伴ってカルス組織内で新たに発現するキステラーゼアイソザイム の存在が示唆されたが,エステラーゼは種類が多く,イネかレス中にどの 種類のエステラーゼが存在するのかは不明であるが,リパーゼのように細 第4図 再分化カルスにおけるエステラーゼアイソザイムの変化 1:継代培養カルス 2:再分化カルス
イネ植物体再分化に伴う遺伝子発現の変動 23 胞内の脂肪酸の加水分解やアリルエステラーゼのようにフェノールとのエ ステルに作用し,細胞壁成分の変化に関係している可能性が考えられる。
6)イネカルスにおける酸性ホスフアターゼの変動
エステラーゼの分析に用いた同一の試料を酸性ホスプアタ-ゼの分析に も供試した。上記と同様のNative-PAGEでタンパク質を分離後0.25%の α-ナフチルリン酸と0.15% β-ナフチルリン酸および1%のファースト ガーネットGBC塩を含む0.05M酢酸ナトリウム緩衝液に浸し活性染色 を行った。用いた7品種の継代培養カルスおよび再分化カルス共に2本の バンドが共通して認められたが,一般に再分化培地に於てバンドの活性が高く,さらにインド型品種のGaiya °han TosarとTadukanでは移動度
の低い新たな一本のバンドが出現した(第5図)。酸性ホスフアタ-ゼは細 胞内容物の自己分解とリグニンの合成に関与しており,この働きにより管 束細胞に分化することが知られている。再分化培地に移して20日では茎葉
第5図 再分化カルスにおける酸性ホスフアタナゼアイソザイムの変化
G: Gaiya D九an Tosar T: Tadukan
24 分化には至らないものの茎葉原基は分化し始めるので,茎葉原基の分化と 平行してカルス内では維管束の分化も起こるという組織学的な知見とも一 致している10)0 7)おわりに これまでイネカルス中のパーオキシダーゼ,エステラーゼ,酸性ホスフア タ-ゼなどの諸酵素のザイモグラムや活性の差異について,再分化培地に 移したときにどのように変動するのか,また再分化能力の高いカルスとは どのような生理生化学的特徴を持つのかなどについてみてきた。その結果, パーオキシダーゼは再分化能力を持つカルスで活性が大で再分化能力をほ とんど示さないカルスでは活性がほとんどみられないことから,再分化能 力と関係していることが推測され,エステラーゼや酸性ホスフアタ-ゼは オーキシンを低下させた再分化培地に移すと活性の増大と新たなバンドの 出現が起こることから,器官分化に伴う分化特異的タンパク質の一種であ ることが示唆された。以上のことから,これらの酵素は分化能力や分化そ のものの生化学的マーカーになり得るのではないかと考えられるが,全く 別の酵素・タンパク質が密接に関係していることも考えられ,さらなる研 究が必要である。最近ニンジンの培養細胞からの不定腔形成に特異的なタ ンパク質の遺伝子をクローニングして塩基配列を決定したという報告13) も出ているが,そういうアプローチも必要かも知れない。 また最近筆者らはin vitroの培養中に起こる遺伝的変異について調べて いるが, DNAレベルでも多型(RFLP)が認められる。図6にその一例を 示した。カ)レスの全DNAをHindIIIで切断し,葉緑体DNAをプローブ としてサザンハイブリダイゼ-ションを行ったものであるが,同じ品種で もCelllineや培養の長短によって多型を示す。このような変異が,再分化 に関わる諸酵素の遺伝子領域で起これば再分化能が低下または消失したり あるいは増大することが考えられる。脱分化した培養細胞からの再分化に 関する生理生化学的情報はまだまだ十分ではないが,その全体像が明らか になれば,遺伝子組換え後の形質転換植物を効率良く再生することが可能 になるだろうと考えている。
イネ植物体再分化に伴う遺伝子発現の変動 25 第6区l イネカルスにおける葉緑体DNAのRFLPの1例 (プローブは葉緑体DNAのBam5断片) 1-9: Tadukanのカルス系統 10: Tadukanの葉(コントローJt/) 参考文献
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イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現
平井 篤志・菅野 明
1)はじめに 高等植物の細胞では遺伝情報がDNAとして,細胞核,葉緑体,ミトコン ドリアに納められており,それらがお互いに協調して発現することにより, 発芽・成長・子孫維持などの植物体の生命現象を支えている。このうち葉 緑体ゲノムには光合成に関与する遺伝子群が,ミトコンドリアのゲノムに はエネルギー産生や雄性不稔に関する遺伝子群が含まれている。これらの ゲノムは細胞質遺伝をするといわれ,通常母親である一方の親の遺伝情報 がそのまま子に伝わる。したがって作物の細胞質ゲノムにある遺伝子は現 在までの育種の主流である交雑育種により改良することができなかったの で改良の余地が十分にあると思われる。そのために細胞工学や遺伝子工学 の新しい技術による"育種"が注目されている。遺伝子工学により細胞質 ゲノムを改良するには,その構造と機能,遺伝子の発現様式を詳しく知ら なければならない。一方細胞質ゲノムは細胞核のゲノムに比べてサイズが 小さく構造解析が比較的容易であるoこのため私たちはイーネの細胞質ゲノ ムの構造と遺伝子発現の解析を行なっているのでそれを紹介したい。2)葉緑体DNAの構造と遺伝子発現
イネの幼苗を液体窒素中で磨砕し,その粉末から葉緑体を抽出し,低速 の蕉糖密度勾配遠心法で純化し,さらにそれからDNAを抽出した。こうし 名古屋大学農学部28
て得られたイネ葉緑体DNAを種々の制限酵素で切断し,アガロース電気
泳動して分析したが, EcoRI, BamHI, HindIIIで切断した場合は断片の
数が多くなり,同じ6塩基認識の制限酵素でもSalI,PstI,PvuIIで切断 した場合は断片数が少なくなった。これは他の葉緑体DNAと同じ傾向で
ある。またSalI, PstI, PvuIIの断片の長さの合計はいずれも130kbで
イネ葉緑体DNAの大きさが約130kbであることを示した。他の葉緑体 DNAでも同じ方法で大きさが推定されているが単子葉植物のトウモロコ
シの139kbや小麦の135kbは,双子葉植物のタバコ,大豆,ホウレンソウ
などより30kbほど小さい。
つぎに制限酵素Sal I, Pst I, Pvu IIの断片が実際の葉緑体DNAでどの
ように並んでいるかを示す制限酵素断片の物理地図を作成した。これによ ると他の植物の場合と同じように,環状で約20kbの逆位反復配列を持っ ていた。さらに各遺伝子の位置を特定するために,タバコの遺伝子を含む DNA断片をプローブにして,サザンハイブリダイゼ-ションを行った。そ の結果RuBisCOの大サブユニット(rbcL)とATPaseのβサブユニット (atpB)の遺伝子を含むDNA断片は共にイネのPs卜14の断片と相補性を 持っていた。またチトクロームf (petA)の情報を含む断片はイネ葉緑体
DNAのPst-1, Pvu-2, Bam-1といずれも大きな断片とハイプリグイズす る。またATPSynthaseのαサブユニット(atpA)の場合も同様にして 決定した。この他にもヒトのミトコンドリア遺伝子として発見されたndh 遺伝子や光化学系ⅠⅠの32KDタンパク質の遺伝子の位置も明らかにした。 細菌と葉緑体でリボソームRNAの塩基配列がよく似ていることは知られ ているが,私たちは32Pでラベルした大腸菌のリボソームRNAを用いて イネ葉緑体DNA上でのrDNAの位置を決定した。 ほとんどの植物から葉緑体DNAを抽出することは可能ではあるが,莱 験に必要な童を十分得ることは容易ではない。特に硬い組織から抽出する 場合は核や葉緑体を傷つけずに単離する必要があるため,液体窒素などを 使用して破砕効率を下げなければならない。これは葉緑体DNAの抽出効 率を非常に低下させる。DNAのより詳細な構造解析のためには,純化した DNAが多量に必要になるので,バクテリアの系に葉緑体DNAの全断片
イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現 29 をクローニングし,培養したバクテリアから均一な葉緑体DNA断片を単 離できるようにすることが望まれる。 そこでイネ葉緑体DNAを制限酵素BamHIとPstIで切断しプラスミ ドへクローニングした。これらはお互いに重なり合っているので,オーバー ラップクローンバンクを得ることができた。 前述のように葉緑体DNAには光合成に重要な働きをする遺伝子が多数 含まれている。それらの遺伝子の合成の制御機構や,構造と機能の関係を 調べることは興味有ることである。遺伝子の塩基配列が明らかになればア ミノ酸配列を知ることができ,それからタンパク質の構造を推定すること が出来る。いくつかの種の植物からある酵素を取りその酵素活性と構造を 比べれば両者の関係が明らかになるであろう。 また葉緑体は原核生物の遺伝情報発現系に良く似たシステムを持ってい るが, promoterやterminatorの構造から発現の制御機構がやがて解明さ れるであろう。そうすればある種のタンパク質を多量に発現させることも いずれ可能になるであろう。このようなことから遺伝子の塩基配列の決定 は非常に重要な仕事である。 =l LJ lJIO III0 -71ご
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6AT.BAA.GCT.AGC.AC6.AAA.CCT.ATA.AAC.TTA.BAA.GAG.GAG.AAC.AAA.TTG.AAG.AAA.TGAAA・TTAIAAT・CTT JAC・6TA・CTG・ACT・CCT・AAG・CGA
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喜悦は淵二駅.,二既ここ‡3ニ馴拭二E…3二E王3二は二王笠放‡発二王;t:iG,二流二肌E諾ニ‡篤忠節端二代‥馴ミニGviT :岩三
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イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現 31 そこで葉緑体DNAに含まれる遺伝子のうち光合成に重要な働きをする 遺伝子の塩基配列を決定することを試みた。 RuBisCOの大サブユニット (LS)遺伝子と,プロトン輸送性ATP合成酵素複合体(ATP Synthase) のβおよびeサブユニット遺伝子のうち, β遺伝子はC3植物でもC4植 物でも発現されるが, LS遺伝子は, C4植物の葉肉細胞では発現されない。 また,LS遺伝子とβ遺伝子のプロモーターは隣あって存在するが,その発 現量は全く異なる。そこで,イネ葉緑体遺伝子の発現機構の解明のためLS 遺伝子と, βおよびeサブユニット遺伝子の構造と発現を解析した. まずLS,β・e遺伝子の存在するクローン, B-1/pBR322/HBIOlおよび P-14/pUC8/JM83から, 500bp前後の断片をM13 RF DNAにサブク ローニングを行い,ジデオキシ法によりDNAの塩基配列を決定した。図1 にLS遺伝子の塩基配列,図2にβ・e遺伝子の塩基配列を示してある。ま た幼苗より,RNAを調製し,Slマッピング法によりmRNAの転写開始領 域を同定した。 その結果, LS遺伝子とβ遺伝子は,互いに異なるDNA鎖上に, 784bp 離れて存在しているが,その間はタンパク質をコードしていない領域にも 関わらずイネとトウモロコシで非常に高いホモロジーを示したこ またLS 遺伝子は477個, β遺伝子は498個のアミノ酸残基をコードしていること が明らかになった。 β遺伝子の翻訳終止部と£遺伝子の翻訳開始部は,他 の高等植物と同様, 4b重なっていた。各遺伝子の翻訳開始コドンの5-15b 上流には, 16SrRNAの3′末端付近と相補的である, SD配列が存在して いた。また,トウモロコシのLSとの相同性は,アミノ酸レベルで92%,β サブユニットでは,トウモロコシと97%,小麦と96%,大麦と97%であ り,LSよりもβサブユニ、;卜のアミノ酸配列の方が,植物間で保存されて いることがわかった。 LS遺伝子, β遺伝子,共にそのプロモーター配列は,トウモロコシや小 麦,大麦とほとんど同じであったが, LS遺伝子の5′flankingregionを比 較すると,トウモロコシにのみ,他の3植物と異なる配列が見つかり, C3 植物とC4植物のLS遺伝子発現機構の差異を考える上で興味深い結果が 得られた。
32
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タバコ(Nicotiana tabacum)のPsbAと相同性比較したところ, DNA塩
基配列では91.7%,アミノ酸配列では98.6%という非常に高い相同性が あった。またイネのPsbAをホウレンソウ(Spinaciaoleracea)のPsbAと
イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現 33 相同性比較したところ, DNA塩基配列では92.5%,アミノ酸配列では 98.9%とタバコと同様に非常に高い相同性がみられた。また,タバコとホ ウレンソウのPsbAを比較すると, DNA塩基配列では95.5%.,アミノ酸配 列では99.7%の相同性を示し,単子葉植物と双子葉植物の比較よりも双子 葉植物同士の比較の方が相同性が高いことが示された。またコーディング 領域から約90bp, 120bp上流にはPribnow配列, -35領域がみられ,コー ディング領域の6-9bp, 9-11bp上流にはSD配列が推定された。 SD配列 はmRNA上の翻訳開始部位の近傍に存在するプリンの多い配列部分で, この配列と16S rRNAの3′末端部分にあるピリミジンの多い配列との間 の相補的な塩基対合によって,リボソームがmRNAの翻訳開始部位を識 別してそこに結合すると考えられている。イネの16SrRNAはHiratsuka らによってその全塩基配列が決定されており,その3′末端領域とPsbAの コーディング領域の上流域の塩基配列を比較したところSD配列が2カ所 推定された。 次にPsbAの転写開始部位の正確な位置を調べるためにプライマーイク ステンション実験を行った。コーディング領域の5′末端付近の数十bpの DNA断片のうちのアンチコーディング鎖と同じ塩基配列をもう一本鎖 DNAの5′末端を32Pで標識し,それをプライマーにしてmRNAとハイ ブリダイズさせ逆転写酵素でよませることによりプライマーを転写開始部 位まで延ばしてやり,その長さを調べることで転写開始部位の正確な位置 を決定するものである。本実験では20bpのDNA断片をプライマーに用 い,そのプライマーを使ってシークエンスしたものをプライマーイクステ ンション生成物と同時に電気泳動することにより長さを測定した。プライ マーイクステンション実験の結果,psbAの転写開始部位はコーディング領 域の77bp上流のAであることが解った。転写開始部位がこの位置である とすると,さきほど推定したPribnow配列と-35領域は転写開始点から それぞれ7-13, 32-37bp上流に位置し,この位置と転写開始点の位置は矛 盾していない。 次にPsbAのmRNAの大きさを調べるためにノーザン-イブリダイゼ イションを行った。葉緑体DNAにのっている発現童の低い遺伝子の
34 (bG G C - - AA cG t 。……弼錯描錯描描描鰐川ーo AG AA-・5 G AGATT t ● ● ■ ■ TCTAA C+G T♯A C+G T〝C G★c c*G TtA C★G A★T A+T A*T T+A T+A CA人 ATA l う19 atpB/E rbcL G CGTTCTATAACCCATAAAGA 4 S T T-・4 hU C G -17.4 kcal/mol l31.0 kcal/mol -40.2 図4 mRNAの3′末端のステムループ構造 O m T / T A App叫指叫叩叫E・HS)PPE・叫叩叩叩謁T bAk C mRNAの大きさを調べるときには,植物体からまず葉緑体を単離して,そ の葉緑体分画から抽出した全RNA (葉緑体RNA)を用いて実験を行わな ければならないが, ♪sbAは非常に発現量が多いので,本実験では葉緑体を 単離せず直接植物体から全RNAを抽出したoプローブは, psbA遺伝子の みを含むように1189bpのBglIトEcoRI断片を用いた。ノーザンハイブリ ダイゼイションの結果は約1.2kbのところにバンドが1本検出された。バ ンドがあまりスメア一になっていないことからRNA抽出の段階でRNA があまり分解されることなく抽出できたと考えられる。 転写開始部位とmRNAの大きさが決まったので, PsbAの転写開始部位 から約1.2kbの位置にターミネータ一様構造の存在が推定されたので,図 3に示したDNA塩基配列から解析したところ,コーディング領域の下流 45bpから88bpまでの領域に逆位反復配列が存在し,図4に示すような ターミネーター特有のステムアンドループ構造をとりうることが解った。 このステムアンドループ構造の自由エネルギーは, Tinocoらの計算方法 によると, 』Gニー40.2kcal/molとなり非常に安定な構造をとりうること が解った。またこの構造はLS遺伝子では比較的安定であるが, β・占遺伝
イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現 35 図5 イネ葉緑体DNAの遺伝子地図と物理地図 子の場合は余り安定ではなかった。 本学の遺伝子実験施設の杉浦教授の研究グループは私たちのクローンバ ンクを用いてイネの葉緑体DNAの全塩基配列を決定した。ぞれによると このDNAは134,525kbからなり,さきに全塩基配列が決定されたタバコ より20kb程小さかった。しかし光合成に関連する遺伝子や,葉緑体DNA の遺伝子発現に必要な遺伝子でタバコに存在していたものはすべてイネに も存在していた。この遺伝子地図と物理地図を図5に示す。 3)ミトコンドリアDNAの構造 ミトコンドリアは細胞呼吸に関係する多数の酵素を含み,エネルギーの 変換・産生に重要な働きをする細胞内器官である。ミトコンドリアにも葉 緑体と同様に独自のDNAがあり,その遺伝情報を発現する系がある。また ミトコンドリアにある遺伝情報はこのオルガネラを支えるのに十分ではな く,細胞核の遺伝情報に助けられて初めて自分自身を維持している。これ も葉緑体の場合と同様である。一方ミトコンドリアは周知の通り動物細胞 にも存在するので,これに関する報告が多い。それによると,晴乳動物で
36 は16kb前後の1種類の環状DNAが存在し,全塩基配列が決定された結 果から22種のtRNAのほか14個の遺伝子が効率よく納められているこ とが明らかになっている。 植物細胞のミトコンドリアDNAは,これに比べてはるかに大きくかつ 複雑である。電子顕微鏡により観察されたDNAのサイズと,制限酵素パ ターンから計算されたDNAのサイズの矛盾が説明されたのはごく最近の ことである。物理地図が発表されているトウモロコシを見るとミトコンド リアDNAは約`570kbのマスターコピーとその内部の相同な塩基配列で 組み替えを起こした種々の環状DNAからなっていることが明らかになっ た。なおナタネにおいても同様な組み替えが報告されている。このように 大きさは晴乳動物のミトコンドリアDNAの30倍以上であるが, codeさ れている遺伝子の数は現在明らかになっている限りではそれほどではな い。この他高等植物のミトコンドリアDNAには,葉緑体DNAの塩基配列 が含まれていることが示されている。これは植物のミトコンドリアDNA が大きいことの説明にはなるが,その意味,役割については何も知られて いない。また植物のミトコンドリアDNAには雄性不稔の遺伝子が含まれ ているといわれているが,その実態はまだまだ不明の点が多い。トウモロ コシなどの雄性不稔系統には小環状のDNAをはじめとするプラスミド様 のDNA分子が存在し,それらと雄性不稔との関係が論議されている。 ミトコンドリアDNA本体は前述の通りサイズが大きく複雑な構造を とっているので解析が遅れている。特にイネは葉に珪酸化合物を集積し,莱 が硬くオルガネラを単離するのは困難である。そのためイネのミトコンド リアDNAの制限酵素パターンが示されたのは1986年になってからであ る。示されたパターンを見るとトウモロコシのDNAと比べてバンドの数 が少なくサイズが小さいことを示している。 そこで私たちはイネの緑葉からミトコンドリアDNAを単離し,制限酵 素Sau3Aで部分分解した後, 14kbから18kbの断片を分画しこれを ADNAにクローニングした。このミトコンドリアライブラリーからエンド
ウやそのほかの植物のatpA, atp6, atp9, COXI, COXII, COB, 26S/18S
イネ細胞質ゲノムの遺伝子発現 37 図6 イネミトコンドリアDNAの遺伝f-地図 cloneを選抜し,各遺伝子付近の物理地図を作成した。さらにそれらの断片 の両端をprobeにして"genomewalking"を行い,図6のよう を遺伝子地 図を得た。これは基本的な4環状DNAからなり,それぞれはお互いに同じ 塩基配列を持つ部分を共有している。そのため同じ塩基配列部分で組み替 えを起こせば新しい環状DNAができるために多様なミトコンドリア DNAが存在するようになっている。この複雑な構造を持つミトコンドリ アDNAがどのように複製をするかは疑問な点が多いが,もし他の植物と 同じようにマスターサークルで複製するとすると,イネでは528kbのマス ターサークルになるo Lb,ゝし本研究に用いた緑葉は全長20cm程度であ り,もしこの緑葉でミトコンドリアDNAの合成が非常に低いとすればも う少し小さなマスターコピーの存在も考えられる。 高等植物のミトコンドリアDNAが非常に大きなサイズを持つ理由の1 つはその中に葉緑体DNAの塩基配列を持っていることにある。イネの場 令,葉緑体DNAを2.5kbから15kbの19断片に分け,それをprobeにし てミトコンドリアDNAのクローンとサザンハイブリダイゼ-ションを