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未来社会をプロデュースするICT : 9.学びと教えを豊かにする-身につく電子メディアの誕生を目指して-

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Academic year: 2021

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(1)特集. 未来社会をプロデュースする. 9. 【若手プロデューサ. ICT. 10 】. 学びと教えを豊かにする.  ∼身につく電子メディアの誕生を目指して∼ 市村 哲 学びと教えが抱える課題. 東京工科大学 コンピュータサイエンス学部. チェック記入欄. 学籍番号記入欄.  主に私立大学では,数百人の学生を抱える大規模 講義が行われているが,小規模講義のような細やか な教育が難しく,学生の満足度や理解度が低下する 傾向がある.大規模講義ではその人数の多さゆえに,. 2次元コード. 講義と期末テストの実施で手一杯になってしまうこ とが多いが,学生は「演習やミニテストがあり自分 の理解度を確認できる」,「講師からフィードバック. 図 -1 答案用紙. が受けられる」 講義を求めている. く,学生に対して個別フィードバックなどの情報伝 達を行いやすいという特徴がある.. 学びと教えを豊かにする ICT.  この産学共同プロジェクトでは,実際の大規模講. ■. 紙と電子メディアの融合. 義において,作成したシステムを複数年にわたり実.  電子メディアを利用した学習支援サービスが増え. 運用した.この講義は私立大学の必修科目のため,. てきている.しかしながら,数百人の大規模講義の. 受講学生数は約 480 名である.システム導入前は,. 場合,PC がフリーズする・無線 LAN がつながら. 毎週ミニテストの答案を紙で集め,講師と TA(テ. ない・ノート PC を持参し忘れるなどの問題が発生. ィーチングアシスタント)とによって評価結果およ. することがしばしばあり,電子メディアだけに頼る. びコメントを手書きで記入し,次週以降に紙で返却. ことができないのが実情である.筆者は,紙と電子. していた.システム導入前は平均 156 分かかって. メディアのそれぞれの長所を融合する講義支援シス. いたスタッフ作業時間は,システム導入後は平均. 1). テムを開発する産学共同プロジェクトに携わった .. 25 分に短縮され,限られた講義時間をより有効に. 2 次元バーコードと文字認識技術を利用したシステ. 使えるようになった.. ムであり,紙の答案に書かれた学籍番号や成績評価 を文字認識およびマーク認識し,結果を PC に自動. ■. 板書と e- ラーニングの融合. 入力する機能を備えている(図 -1).さらに,成績.  筆者の研究室では,黒板の板書を用いた講義を. 評価やコメントが書かれた答案を高速複合機で一括. e- ラーニング教材に変換できる講義自動収録システ. スキャンして PDF データとして Web サーバに蓄積. ムの開発プロジェクトが進行している.講師が板書. し,この PDF の URL を各学生に電子メールで自動. をしながら黒板の前を歩き回るような状況でも,講. 送信しフィードバックできるようになっている.紙. 師の姿を自動追尾して無人撮影できる.ハイビジョ. にはリスクに対する耐性があり,かつ,読みやすく,. ンカメラ 1 台を教室の後方に設置するだけで自動撮. また,記述内容を証拠として残せるというメリット. 影が可能である.講師近辺の映像は動画として配信. がある.一方,電子メディアには情報を整理しやす. し,板書全体は静止画として配信できる.板書静止. 48 情報処理 Vol.52 No.1 Jan. 2011.

(2) 9. 学びと教えを豊かにする. ∼身につく電子メディアの誕生を目指して∼. ︻ 若手プロデューサ . 画は,板書内容に変化があったときのみ作成され静. 記憶への定着が促進されたと推測できる.. 止画アニメーションとして表示される.加えて,画 像処理を施すことで板書静止画から講師の姿を消去 し,講師の陰のない全体板書画像を常に学習者に配. 10 ︼  . 信できるようになっている.映像の再生は Web ブ. ICT によって学びと教えを どう変えてゆくべきか. ラウザまたはモバイルゲーム機で行えるようにした..  小学校や塾においても IC タグを使って登下校確. 学習者の学習意欲を継続させるために,収録映像の. 認を行ったり,電子黒板を使って授業したりとい. 途中に演習問題スライドを挿入できる機能を有して. った ICT の本格導入が始まっている.10 年後には. いる.. 教室のキャビネットからタブレット PC を取り出し, クラウド上の電子教科書を閲覧する小学生の姿を見. ■. 身体性と教育効果の関係. ることも珍しくないに違いない..  前述した講義支援にかかわる両プロジェクトに.  しかし,前述した議論に基づけば,教材や通信手. おいて,学生がノートテイクするなどの 身体的動. 段を電子化すれば教育の問題が解決してゆくという. 作 を伴った行動の教育的効果の高さに着目する実. ようには楽観視できないことは明らかであり,筆者. 2). 験を実施した .まず,情報系大学学生に対し,講. はこの問題に対しては電子メディアに身体性を取り. 義映像をノートテイキングしながら視聴させた.タ. 入れることが必須であると主張したい.現在は教材. イピングにより筆記するグループと,手書きにより. をいかに電子化するかに議論が集中しているが,今. 筆記するグループに分け,一週間後,自分で作成し. 後は電子化された教材をいかに効果的・効率的に. たノートの見返しをさせた後に講義内容に関する理. 吸収 できるようにするかが議論の中心となるは. 解度テストを行った.この結果,手書きの方がタイ. ずである. 紙の上に鉛筆で文字を書く 以上に頭. ピングより有意に得点が高かった.. に入りやすいノートテイクのやり方が,電子メディ.  タッチタイピングに熟達している学生は,手書き. アで可能となる可能性は十分にある.10 年以内に,. よりタイピングの方がはるかに入力が早い.しかし. 手書きより身体性に優れた電子メディアを誕生させ. ながら,正確にノートをとることや仮名漢字変換操. ることが筆者のチャレンジである.. 作に集中しているあまり,話の内容を理解すること に注意のリソースが向けられていない可能性が高く, 後から見返したときに 使えるノート になってい ないことが多かった.一方,手書きの場合,話の内. 参考文献 1) 市村他:紙答案と電子フィードバックを併用した講義支援シ ステム,情報処理学会論文誌,Vol.49, No.1, pp.525-533(2008). 2)中村他:ノートテイキングにおける要約の重要性,東京工科大 学研究報告論文,No.5, pp.3-13(2010). (平成 22 年 10 月 28 日受付). 容やスライドの記述をそのまま書き写すことは不可 能であり,重要なポイントや話に登場するキーワー ドに絞ってノートテイキングを行う必要がある.こ のため,聞いたり見たりした内容を一度頭の中で要 約するという認知プロセスを経ることが必須となり,. 市村 哲(正会員)[email protected]  慶應義塾大学卒業.博士(工学).富士ゼロックス研究員,米国 FXPAL 駐在研究員を経て 2002 年より東京工科大学准教授.ACM, 電子情報通信学会各会員.. 情報処理 Vol.52 No.1 Jan. 2011. 49.

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