自然言語処理技術の現状と展望 -エラー分析プロジェクトを通して-:[基礎技術]3.3 述語項構造解析
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(2) 3.3 述語項構造解析. の単語間にある文法上の主従関係. 機能動詞 機能動詞 . のうち,項候補と述語の間を結ぶ 主従関係の系列を取り出したもの で,特定の文法構造が項とその役 割を決めることを捉えるために用 いられる.述語と項の共起情報は, たとえば「食べる」のヲ格(目的 語)には食べ物がきやすいといっ た,項になりやすい単語の種類を 捉えるための情報で,表層文字列 や単語クラスタの共起に関する統 計量が使われる.分類器の学習は 一般に人手により述語項構造が注. A . D . P . (a) 会長は、 [党首ガ] を事務所に訪ね、改革 推進 への協力を要請した。 並列 . 1. 2. 3. 4. 5. . 「党首を訪ね」「要請した」が並列 常識的知識:「Aを訪ね、要請した」は「Aに要請するためにAを訪ねた」 「Aに協力を要請する」は「Aが協力する」 「推進への協力」は「推進に協力する」 「Aが推進に協力する」は「Aが推進する」 . A . D . P . (b) ストロボの光が [鳥ニ] に集光して、 [スポットライトガ] が当たったようになった。 並列 . 「光が集光」、「スポットライトが当たる」という類似する表現から、「集光」と「当た る」が同一の出来事を別の言い方で表現していることを読み取る必要がある。 図 -3 解析対象述語 P に対して省略された項 A を見つけるための手がかりの一例. D は A と直接係り受け関係にある語で,解析の起点となる.. 釈付けられたコーパスに基づく教 師つき学習で行われるが,近年では大規模データか. ある場合は,既存の解析器においても先の調和平均. らの教師なし学習の手法も研究されている.. で 65% 前後と相対的に高い性能を示しており,項. 課題点と分析・展望. の共有に関する一部の特徴はとらえられていると考. 述語項構造解析における当面の課題は,省略され. うに並列構造や機能動詞構文などの局所的パターン. た項の補完にある(図 -1 の「踊る」に対して「次郎ガ」. の多重な重ね合わせによって最終的な関係が導かれ. を補う処理) .既存の解析器では述語と項の間に文. る複雑な事例が一定数存在することも分かっている.. 法上の直接的な主従関係がある比較的容易な事例に. そのほか,図 -3(a) の手がかり 2 や (b) の例のよう. おいては適合率と再現率の調和平均で 90% 弱と高. に文脈や世界知識に基づく推論が必要なものも多く. い性能が得られているものの,省略を伴う事例にお. 存在している.. いては,省略された項が同一文内に出現している場. 加えて,述語項構造解析の文脈ではあまり取り組. 合で 50% 弱,文をまたいで補わなければならない. まれていない世界知識や文脈を読み解く必要がある. 場合は 20% 前後と低い水準にとどまっている.こ. 事例や,その他のいまだ一般化されていない雑多な. の現状は日本語の省略解析の難易度の高さを物語っ. 手がかりを用いる事例の解析は低い性能にとどまっ. ているが,一方で,日本語において省略の現象は全. ており,省略解析で高精度を実現するためには,世. 述語 - 項ペアの約 40% を占めるため,きわめて重. 界知識を用いた推論や談話解析などの技術を取り込. 要な課題となっている.. むか,もしくはそのような後段の処理につなげるた. 省略された項が同一文内に出現している事例に焦. めの適切な問題設定やインタフェースを今後模索し. 点を当て詳細に分析した結果からは,省略された項. ていく必要がある.. A を含む述語 P と,A と直接的に係り受け関係を. えられる.一方で,P と D の間には,図 -3(a) のよ. (2015 年 10 月 31 日受付). 持つ述語 D との間で A を項として共有している事 例が項省略事例全体の 58% を占めることが分かっ ており,項の共有関係の特定が重要な手がかりとな ることが示唆されている.P と D の間に並列構造 や機能動詞構文などの構文構造上の強い手がかりが. 松林 優一郎(正会員)[email protected] 2010 年東京大学大学院情報理工学系研究科博士課程修了.博士(情 報理工学).同年より国立情報学研究所・特任研究員.2012 年より東 北大学大学院情報科学研究科・特任助教.意味解析の研究に従事.言 語処理学会,人工知能学会,ACL 各会員.. 情報処理 Vol.57 No.1 Jan. 2016. 15.
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