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第三セクター鉄道の効率性に関する研究

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Academic year: 2021

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第三ゼクター鉄道の効率性に関する研究

坂元 純一

1研究の目的及び棍戚 1980年に成立した「国鉄再建法」.により特定地方交 通線(いわゆる「赤字ローカル線」)の存続及び地方 鉄道新線建設のため、「第三セクター鉄道」が誕生し た。一方、1989年から92年にかけて相次いで着エされ 工事が進められている東北、北陸、九州の整備新幹線 については、在来線の一部が新幹線と競合することか ら、開業時にJRから経営分離することとされた。九 州新幹線・鹿児島ルートの場合には八代(やつしろ)一川内 (せんだ川間がその対象となり、鹿児島∴熊本両県が中心 となって設立する予定の第三セクター鉄道が引き受け ることとなった。 これまでの第三セクター鉄道に関する研究は、個別 の鉄道の事例研究や全社を対象としたアンケート調査 ・経営概況の記述統計的な分析は行われているものの、 第三セクター鉄道全社を客観的かつ数量的指標を用い た効率性により一覧化し、相対的な効率性を比較する ことは行われていない。 そこで本研究は、第三セクター鉄道の今後について 筋道立った議論を行う基盤を整えるため、「国鉄再建 法」により誕生した第三セクター鉄道34社(平成6年 3月束現在)について、客観的基準による分類を行う とともに、その事業運営の効率性を数理的手法を用い て表し改善案を示すことを試みるものである。 併せて、将来設立される鹿児島県初の第三セクター 鉄道である八代一川内間を運営する鉄道(以下、仮に、 「八代川内鉄道」という。)の事業運営が効率的に行 われるための条件を検討することとする。 図1研究の進め方 2 第三セクター鉄道の定義・分類 2.1定 轟 広義には公私共同出資による鉄道事業を指すが、狭 義には「国鉄再建法」により誕生した「転換線」「地 方鉄道新線」を意味する。【1] 整備新幹線の並行在来線から生まれる第三セクター 鉄道も狭義のものに含められる。 2.2設立状況別分類 特定地方交通線からの転換線(24社)、転換線+新 線(7社)、新線(3社)の3つの種類がある。 2.3練主横成別分類 株主構成の違いを中心に、どの主体が主導権を握っ ているかに着目すると、自治体主導型(31社)、民間 主導型(2社)、その他(1社)に分類することがで きる。 2.4性質別分類 運輸収入の構成比(貨物収入のあるもの)、クラス さかもと じゆんいち 鹿児島県企画部交通政策課 〒892 鹿児島市山下町1ト川 −40−

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タ一分析(沿線人口、定期外収入の割合、通勤定期収 入の割合)により、次のように分類できる。 表1第三セクター鉄道の6つの類型 3.3営業損益に関する分析 平成元年度から4年度について類型ごと’の営業損益 に関する分析を行ったところ、次のことが分かった。 ①近年、生活型、観光型の赤字が急増している。② 生活・観光型の赤字は高い水準で微増している。③赤 字が横ばいなのは都市型、減少傾向なのは通勤型だけ である。 類 型 鉄 道 名 都市型(3社) 天竜 愛知 伊勢 産業型(4社) 鹿島 樽見 神岡 筑豊 通勤型(5社) 阿武隈 北条 三木 若桜 甘木 生活型(6社) 由利 山形 いすみ 明知 信楽 くま川 生活・観光型 ちほく 三陸 秋田 真岡 (11社) わたらせ のと 長良川 錦川 阿佐 ■松浦 南阿蘇 観光型(5社) 会津 野岩 タンゴ 土佐 高千穂 50 0 づ0 −100 −150 −!(旧 3 第三セクター鉄道の現状分析 3.1沿線人口と営業キロに関する分析 沿線人口と輸送人員の関係を見ると、沿線人口の多 い鉄道は輸送人員も多い傾向にある。 営業キロと職員数の関係では、営業キロの長い鉄道 は職員数が多い傾向にある。 営業キロと沿線人口について分類別に見ると、都市 型の沿線人口が一番多いこと、生活・観光型の営業キ ロが一番長いことが分かる。

… 蔓 蔓 重

量 貢 図4 営業損益(分類別) 4 DEAによる効率性分析 4.1効率性の定義 政策評価の分野における「能率」概念を援用し、第 三セクター鉄道の活動局面を4つに区分する。【2】 人件費・経費 (金馴データ) 傲量的データ) 傲量的データ) (金掛テー一夕) 職員数・車両数 棚 卸 棚 加 給抜人口︵千人︶ 走行キロ・軸送人員 営業収益 図5 効率性と測定対象 以上の区分により、第三セクター鉄道は、入力(人、 物、金などの資源)を出力(輸送人員、収益などの数 量的、金銭的産出)に変換する事業体と考えることが できる。費用を入力とし作業量を出力とするものをコ ストに関する効率性、以下同じ要領で生産性、パフォ ーマンス、企業性に関する効率性を定義する。 4.2DEA分析の結果 昭和83年度から平成4年度の効率性を測定した。 ウェイトの下限を4/5、上限を5/4とする領域限定法 を使用し、「隣接する2期」を計算対象としたウイン ドー分析を行った。【3] 都市型は、コストの効率性は低いが、生産性・パフ ォーマンスの効率性が高いため、企業性が高くなって いる。この類型は、もともと沿線人口が多い上に現在 一打 0 ∝〉 音素キロ(キロ) 図2 沿線人口と営業キロ(分類別) 3.2沿線人口増滅率(横軸)と輸送人員増滅率(縦軸) の由係 全体としては正の相関が観察される。都市型は全て 人口増・輸送人員増であること、通勤型は人口増で輸 送人員増のところとそうでないところに二極分化して いることが分かる。 全 体 都市型 産業型 通勤型

−ヤ ー距 一辞

生活型 生活・脚 観光型

7拝 一軒.」牛

図3 沿線人口増減率と輸送人員増減率 −41−

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いる。高コスト・低生産性なのに企業性が高いことか ら、この頬型は経営環境には恵まれている。 4.3改春寒の一例 DEA分析により事業体の効率値が計測されると同 時に、効率値を1にするための改善案の一例が示され る。 改善案が当該鉄道にとって不可能に近いような厳し いものになっているということは、当該鉄道を効率的 に運営することが困難であることが示唆されているも のである。 5 組合的効率性評価法の考察 5.1「損益一生塵性マトリックス」の紹介 DEAを用いて企業の支店などの総合的効率性を判 定する手法として、次のような「損益一生産性マトリ ックス」川が用いられている。 打IG打 EFFICIEⅣCY 表2 効率性の比較 期間 分 類 コスト 生産性ハ○フォーマンス企業性 63一打1 都市型 △ 0 0 ◎ H卜H2 △ 0 0 ◎ H2−H3 △ ◎ △ ◎ H3−H4 △ ◎ ○ ◎ 63−Hl 産業型 0 0 0 ◎ 打1−H2 0 0 0 ◎ 椚−H3 0 0 0 ◎ H3−H4 0 0 0 ◎ $3−Hl 通勤型 △ ○ △ △ HトH2 △ ○ △ △ H2−H3 △ ○ △ △ H3−H4 △ ○ △ △ 63−Hl 生活型 0 0 △ ◎ Hl−H2 0 0 △ ○ H2−H3 0 0 △ △ H3一肌 △ ○ △ △ 63−Hl 蛸瀾光型 ○ △ △ △ HトH2 ○ △ △ △ H2−H3 ○ △ △ △ 椚−H4 ○ △ △ △ 83一班l 観元璽 △ △ ○ ◎ Hl−H2 △ △ 0 0 H2−H3 △ △ ○ ◎ H3−H4 △ △ 0 0 i ̄ ̄ ̄蕎 ̄・ ̄ ̄ ̄ Starperformers,b 凹 §managedbut best−praCtice Hovprofit,1imited COmparlSOn grOup q §growthpotential 田 凹 §伽derperforming 田 伽derperformingら 琶 branches star branches a

苫鼠..=hh。,.ロ.ク.8.∂..=り。=,. .ク.ロ.∂.β..=h。R,.p.卯適

(注)◎は効率値が0.8以上、○は平均以上0.さ未満、 △は平均未満を表わす。 も増加を続け、それにつれて輸送人員も増えているな ど、鉄道にとって:哩想的な経営環境の下にあると考え ちれる。 産業型は、全ての効率性が高くなっているが、これ は貨物という安定した収入源を有しているためと思わ れる。 通勤型は、生産性の効率性は高いが、コスト・パフ ォーマンスの効率性が低いため、企業性も低くなって いる。生産性と企業性に関して観光型と対称的である 点が特徴である。 生活型は、生産性の効率性は高いが、近年コストの 効率性が低くなり、パフォーマンスの効率性も低いた め、企業性も低下してきている。平成3年度にあった 信楽高原銭道の事故の影響が大きいが、同社を除いて も同様の傾向となっており、鉄道経営が年々厳しくな ってきているものと考えられる。 生活・観光型は、コストの効率性は高いが、生産性 ・パフォーマンスの効率性が低いため、企業性も低く なっている。この類型は、営業キロが長いため職員数 が多くなる傾向があり、そのため生産性が低くなって いるものと思われる。 観光型は、コスト・生産性の効率性は低いが、パフ ォーマンスの効率性が高いため、企業性も高くなって LOW EFFICIENCY 図$ 損益一生産性マトリックス 第Ⅰ象限にプロットされる事業体は花形選手、第Ⅳ 象限では花形になる可能性がある、第ⅠⅠ象限では成長 力に限界がある、第ⅠⅠⅠ象限では非効率的と評価される。 ところで、「営業損益」は営利企業の評価には適し ていても、赤字を覚悟で設立されたものがほとんどで ある第三セクター鉄道を評価する指樟としては、必ず しも適切でない。 −4(旧 −3(D 一三の −1∝I 馳鋸脚点(百万円l■ 図7 営業損益と企業性 ー42 −

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表3 企業性一生産性マトリックスに桝るプロット位置 営業損益は、営業収益から営業費(人件費、経費) を引いた残りであり、両者の関係を「差」と■いう結果 で表す「結果重視型」の評価手準である。 第三セクター鉄道は利益を目指して営業されている ものでないことから、営業費(人件費、経費)と営業 収益の関嘩を「比」で表す●「効率性重視型」の評価手 法が適している。これについては、既に「企業性」と して計測している。 営業損益と企業性の関係を示した図において、第ⅠⅠ 象限に位置する4社は営業キロが非常に長く、第Ⅳ象 限に位置する5社は20kmにも満たない短さである。 これによれば、営業損益を用いた場合、規模が大き い鉄道は、企業性は高くても赤字が多いために総合的 効率性の評価では低く位置づけられていたことになり、 正当な評価とは言えないものと思われる。 5.2 r企業性一生産性マトリックス」の提唱 本研究においては、第三セクター鉄道に適した総合 的効率性評価の手法として「企業性一生産性マトリッ クス」を提唱する。 企業性は費用と効果量、生産性は作業量と事業量を 入出力項目に用いてい■る。この2つの効率性で費用、 作業量、事業量、効果量の全ての計測項目を使用して いる(4.1を参照)。 都市型は、3社のうち2社が第Ⅰ象限にプロットさ れており「効率的」と評価される。 生産性(高い) 区分 獅型 産業型 通勤型 生活型 ■生活・観光型 観光型 第Ⅰ象限 愛知 鹿島, 阿武隈 山形 .松浦 (10社) 伊勢 樽見 筑豊 第Ⅳ蒙隈 由利 三陸 野岩 (12社) 明知. のと 長馴 錦川 南阿蘇 第帽限 神岡 若桜 I言葉 四 第訂集限 北条 (柑) 三木 秋田 j)たらせ 同性 産業型は、4社のうち3社が第Ⅰ象限にプロットさ れており「効率的」と評価される。 通勤型は、第Ⅰ象限と第ⅠⅠⅠ象限に分かれており・「二 極分化」している。 生活型は、全ての象限にプロットされており経営状 況にバラツキが大きいものの、生産性は横ばいで企業 性が年々低下していることから「準効率的」と評価さ れる。 生活・観光型は、松浦は第Ⅰ象限にプロットされて いるものの、これを除くと全社が生産性の低い第ⅠⅠⅠ象 限、第Ⅳ象限にプロットされており、企業性も全体と しては平均を下回っていることから「非効率的」と評 価される。 観光型は、全社が生産性の低い第IH象限、第Ⅳ象限 にプロットされており」生産性は横ばいかやや上昇し、 企業性は平均を上回っていることから「準効率的」と 評価される。 6 八代川内鉄道の効率性と展望 6.1性質別分類上の位置づけ 入手可能なデータ及び沿線の状況から「生活型、生 活・観光型」に位置づけられる。 6.2収支予測 (むJR九州による収支予測(単位:千円) 生産性(低い) 図8 企業性一生産性マトリックス 廿L抑帽 −・:曽l 仙、禦ヨヂ, 、 t、中! 棚 1平. 750,000 220.000 220,000

嘗鞘 経薫 1,010,000 370,000 ・370.000

営業収益 3¢0,000 3¢0.000 540,000 官業損益 11,400,000 1230,000 150,000 区分 現 在A 開業時B 需要増 C 人絹 AからBへの営業費削減については、「生活型、生 活・観光型」に属する既存の第三セクタ「鉄道の実績 0.G O.7 0.8 0.9 1 全発色 図9 企業性一生産性マトリックス(分類別) ー43 −

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から見て十分可能と考えられる。 BからCへの予測については、営業費をそのままに して営業収益を50%増加させることはかなり困難と考 えられる。 ②本研究における開業5年後の収支予測(単位:千円) から考察する必要があるが、その前提として、第三セ クター鉄道が精一杯の経営改善努力を行っている必要 がある。 本研究は、この経営改善努力の結果を客観的数値を 用いて一覧化するものである。「企業性一生産性マト リックス」で第ⅠⅠⅠ象限にプロットされた鉄道は、鉄道 の廃止・バス転換を視野に入れた経営改善計画を策定 する必要がある。 ②鉄道経営を支える地域政策 鉄道の第三セクター化の意義を最大限に生かすため には、鉄道経営を含む交通政策と地域政策との一体化 が必要であり、地方自治体の施策が鉄道利用を促進す るような土地利用、地域開発を図っていくことが不可 欠である。

従 前 一−→ 今 後

絹 25さ,940(旺勒 258,940(BX鞘)

営業費 経頁 397,750(Bx平均) 397,750(Bx平均)

官業収益 377パ40(Bx朔) 5細000(Bxl.5) 営業損益 1279,050 11日パ90

区分 予測1D 予測2 E 人

Bをベースに開業5年後の収支予測を行った。営業 費・営業収益ともに既存の第三セクター鉄道の平均並 に増加する場合を予測1、営業費は平均並で営業収益 が50%増加する場合を予測2とした。 6.3 DEA分析 八代川内鉄道の収支予測には金銭的なデータしか使 用されておらず、4種類の効率性のうち企業性しか計 測できない(4.1を参照)。 「需要増」のプロット位置は第Ⅰ象限であるが、こ の予測は実現困難であることから、八代川内鉄道の効 率値の上限を示すものと考えられる。 「開業時」のプロット位置は第ⅠⅠⅠ象限であり、八代 川内鉄道はスタート時点では損益面からも企業性の面 からの効率性も低い。 しかしながら、営業費の増加を平均並に抑えて収入 を増加させれば(予測2)、効率性が上昇することが 示されており、同時に開業する予定の新幹線の需要効 果を考えれば明るい見通しももてる。  ̄ ̄ ̄ ̄

敷蓮窟曽;

上全国二律〕 .__ 地 域 政 策

〔悪霊羞は〕

図11鉄道経営を含めた地域政策 7.2八代川内鉄道 ①生活路線としての役割 都市間輸送から地域密着型の生活路線への転換が重 要である。 新幹線 都市間輸送 (スピード アップ) (礪餉上) 十鈷彙 +わた 楢桜 ■癌= 十何性 ちほく 一l▲肌0・ly乃) 可諜 在来線 生活交通 図12 鉄道の役割分担 ②地域戦略鉄道としての再出発 新幹線開通を受けた総合的な地域開発の一翼を担う 戦略的な鉄道として位置づけることが必要である。 参考文献 【1】安藤陽「『第三セクター鉄道』の成立と展開」 埼玉大学経済研究室『社会科学論集』第70号、 1990年 〔2】西尾勝『行政学の基礎概念』東京大学出版会、 1990年 【3】刀根薫『経営効率性の測定と改善一包絡分析法D EAによる−』日科技連、1993年 【4】Rob Norto町ⅦmW〃〃α=ほ〃耽錯朋M〃 タ∫β∫♂朗JβgJrア」〟朗′r♂♂∠Ⅳ以J”,FORTUNE, OCTOR8ER 31,1994. づ(旧 −1叩 −300 −2の 一1∞ 0 納臓(首万円) 図10 営業損益と企業性(八代川内鉄道) 7 まとめと提言 7.1既存の第三セクター鉄道 (9鉄道存続の意義の再検討 鉄道存続の利益(もenefit)と負担(Cost)の両面 −44−

参照

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