Title
ブレオマイシン肺線維症の発症機序と抑制に関する実験的
研究 特にプロスタグランジンE_1, プロスタサイクリンおよ
びセファランチンによる抑制効果について( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
奥村, 康明
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第871号
Issue Date
1993-10-20
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15400
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与月付 学位授与の要件 学位論文題目
奥
村 康 明(愛知県) 博 士(医学) 乙第 871号 平成 5 年10月
20 日学位規則第4条第2項該当
ブレオマイシン肺線推症の発症機序と抑制に関する実験的研究 特にプロスタグランジンE,′プロスタサイクリンおよぴセファランチンに よる抑制効果について 審 査 委 員 (主査)教授 岡 伸 光 (副査)教授 高 見 剛 教授 鶴 見 介 登 論 文内
容 の 要旨
ブレオマイシン(以下BLM)は水溶性塩基性ペプチド系抗生物質で特に扇平上皮癌の治療に有効であり繁用 されている。しかし,副作用の面で不可逆性の重篤な肺線維症を併発する欠点がある。その作用にはBLMによ り血管内壁が刺激され血管透過性冗進により肺の問質に溶出した血栓部分が線維芽細胞の増殖を促し,肺の線維 化を促進させると考えられている。この作用にはトロンポキサンA2の関与が大きいことから,その括抗作用の あるプロスタサイクリン(以下PGI2)や血小板の凝集抑制作用,肺血管の拡張作用を有するプロスタダラジン El(以下PGEl)化合物が肺の線維化抑制に有用であると考えられた。またBLM誘発肺線維症では肥満細胞が 増加することから,その発症にアレルギー反応が関与しており抗アレルギー作用を有するセファランチン(以下 CE)も肺線維症の抑制に有効と考えられるので,これらの薬剤投与を行い抑制効果の有無について検討した。 実験方法 1・15週齢のICRマウスを使用して投与薬剤別にBLM(7.5mg/kg)単独群,BLM(7.5mg/kg)+PGEl(0.5mg /kg)群,BLM(7.5mg/kg)+PGI2(0.5mg/kg)群,BLM(7.5mg/kg)+CE(5mg/kg)群,コントロール(生理 食塩水)群の5群に分類した。 2・各群をBLM,生理食塩水は連日10日間腹腔内投与を行い,PGEl,PGI2,CEはBLMと同時に投与開始し屠殺 前日まで連日腹腔内投与を行った。投与後1,3,5過後と屠殺時期を変えて肺を摘出し光学顕微鏡(へマトキ シリン●エオジン染色,コラーゲン染色,アザン染色)で各ブロックの切片全体の面積に対する線維化した部分 の面積を線維化面積比として評価した。また,Prockopの方法に従ってエールリッヒ試薬で発色させ分光光度計 を用いてヒドロキシプロリン定量を測定して比較検討した。 3・肺組織のヒドロキシプロリン主に及ぼす影響は,3週で顕著であったので3週群のみにおいて各薬剤の用量 作用関係を検討した。PGEl,PGI2は0.1,0.2,0.5,0.7Ⅲg/kg,CEは1,2,5,7mg/kgとしてヒドロキシプロリン 定量を行い3週後のBLM単独群およびコントロール群と比較した。 実験結果 1・病理組織学的には,BLM単独投与群において肺周囲の胸膜下,血管や肺胞周囲に軽度の線維化を認め次第 にフィプリンの析出や線維芽細胞の過増生とともに経時的に線維化が進行し肺胞腔の縮小および消失を認めた。 2・PGEl,PGI2,CEの併用により初期変化にみられた血栓形成,フィプリンの析出が抑制された。線維芽細胞 およびコラーゲン線維の増生も抑制され肺胞構造が維持された。光顕的に線維化面積の経時的推移はBLM単独 群と比較して3週後にPGEl,PGI2,5過後にPGE.,PGI2,CEに有意差を認めた。 3・肺組織中のヒドロキシプロリン圭では,BLM単独群と比較してPGEl,PGI2の併用群は5過群に有意差が 77あり,CE併用群は3週,5週群に有意差を認めた。 4.BLMと併用した各投与薬剤の用量別のヒドロキシプロリン圭では,PGElは0.7mg/kg,PGI2は0.5と0.7mg /毎に有意差があり.両薬物共に用量依存性の抑制効果を認めた。CEでは1,2,7mg/短が軽度な抑制効果 を示したに過ぎず,5mg/kgのみ肺の線維化の抑制に有意差を認め,用量作用関係は明らかでなかった。 5.ヒドロキンプロリン量と組織学的な線維化の程度(線維化面積比)との間には相関性が認められた。 6.コラーゲン染色は他の染色法と比較して線維化の変化を容易に確認することができ,有用であった。 考 察 BLMによる肺線維症はt 血管壁の障害により胸膜下や血管周囲に線維化が起こり問質全体に拡大していくこ とが明らかとなった。この障害作用に対してPGE.,PGI2,CEが単独でも肺線維症を抑制することから,これら の薬剤が,血管壁に対する炎症作用を軽減することにより肺の線推化を抑制するものと考えられた。臨床的にも BLM投与に際しては,これらの抗炎症作用をもつ薬剤を併用投与することは有用な方法であると考えられ臨床 的意義が大きいものと考えられた。 また,これらの薬剤を併用することによる抗腫瘍作用に与える影響についても今後の重要な研究課題である。