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(1)

インターメディア保存情報システムの設計

著者名(日)

森川 滝太郎

雑誌名

井上円了センター年報

3

ページ

198-188

発行年

1994-07-20

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00002614/

(2)

インターメディア保存情報システムの設計

森川滝太郎

mori乏4tva taflitaro 1.情報の仲人役  情報化時代を背景に大学の情報化が進む中で、大学特有の情報をその 大学が発展するためのタネ(種あるいは種子)と考えることとする。多 年かつ多様にわたる蓄積の成果が情報でありタネである。トキ(時代) の中でこのタネを如何に活用していくか、が問われる。遺伝情報として のタネを大切に保存しつつ有効に利用していくことが、伝統に裏付けら れた固有の情報に依拠して大学を活性化する鍵となる。タネは根源とな るシーズであり、トキはその発芽と成長を促すニーズである、と言って もよい。  ところで、「種子」を辞典で調べると、①果実の中にあって草木の芽を 出すもとになるもの、②生物の発生するもと、③原因、④話や小説など の材料、といった意味が書かれている。「特ダネ」の項には、特定の社だ けが特に手に入れた記事材料とあり、タネを逆さ読みした「ネタ」は、 新聞記事などの素材を示すのに使われる。タネがタネたる所以は、その 内部に生物の個々の遺伝形質を発現させるもとになる遺伝子を内蔵して いることである。遺伝子は、染色体中に一定の順序で配列され、生殖細 胞を通じて親から子に遺伝情報を伝えるものである。その実体はデオキ

シリボ核酸(DNA)の分子で、リボ核酸(RNA)を介し細胞内で合

成される蛋白質の種類を指令するといわれる。  東洋大学にあってこのタネに相当するものは、その創立者である井上 円了に関連する膨大な諸資料であろう。これのデータベース構築を目的 インターメディア保存情報システムの設計 47(198)

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として、インターメディア保存情報システム(INTER 一 MEDIA

PRESERVED INFORMATION SYSTEM:略称IMPIS)の概念

が提起される。ここでは、井上円了関連データベースの作成に向けて、 情報ファイリングの中心となる光ディスクを情報記録保存用のインター メディア(仲介媒体)として位置づける。つまり、物質価値(原本)と 情報価値(転写物)の間の相互連関に着目し、光ディスクを過去(伝統) と現在(展開)との間の媒介として捉える(文献1参照)。

IMPIS

生物遺伝子    原本 (円了以前∼以後)

e

  DNA

(突然変異・進化) 転写物(媒介) ←

H

RNA(使者)      ↓       ↓

[組織活力]一[遮亘亘コ

図1 インターメディア保存情報システム(IMPIS)と生    物遺伝子との対比

 図1は、このIMPISと前記の生物遺伝子との類似性を対比したも

のであるが、この考え方に沿いながら、以下に資料組織法と入出力機器 を核とするデータベースの構築について考察を行う。具体的には、東洋 大学の諸活動に係わる理念追求を視野に入れて、井上円了に関連する多 量多種資料の分類・保存・検索のためのファイリングシステムの概念設 計を行う。その際に、所要作業の省力化と迅速化に係わる電子技術的側 面の将来性、入出力に関するソフトウェアとハードウェアの間の整合性、 なども併せて検討する。データベース形態の導入によって情報機器の助 けが借りられ、情報の有機的な融合あるいは複合が従来よりも格段に容 易になるものと期待される。

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2.保存種の活用  種子機能をもつ前記IMPISのようなデータベースが東洋大学の今 後の発展の基礎になるとの想定のもとに、まずその応用につながる方面 を概観しておく。大学アイデンティティーを確立するための方法論とし て、井上円了が創立した「哲学館」(哲学専修の学校)の原点が明らかに なり、建学の精神に基づく理念を再認識できれば、これへの発展的回帰 を図る道筋が開けてくる。図2に、井上円了に由来する資料・データ活 用システムを実現していく上での条件整備の流れを示す。  円了が提起した課題の捉え直し i _違杢巳一しヱ発熱塑甦∼...1

o

円了データベースの概念設定 (大学運営のサポート基盤の形成)

⇒遜薩翌響塞一之∼

図2 井上円了関連データベース構築のフローチャート  東洋大学の総合理念としては、学則に掲げられているとおり、創立者 である井上円了の建学の精神に則り、東西学術を考究すると共に有為の 人材を育成し(東洋大学学則第1条)、そのことの状況に関して自らの点 検・評価を実施する(同第1条の2)ことである。建学の精神を再認識 することは、時代時代に応じてその都度行われるべきものであることは 論を待たない。教育・研究・経営の全般にわたって、従来からもこれは 精力的に進められている。そうした活動を含めて、関連する事柄をまと めると次のようになる。 インターメディア保存情報システムの設計 4g(196)

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 1)教育分野  東洋大学では、創立100周年を記念して「井上円了の教育理念」が新書 版の形で出版され、現代的に建学の精神を捉え直すためには、史実の中 から学び取らなければならないこと、資料を収集し整理するためには、 教職員・学生の協力が基礎となること、などが実践的に明らかにされて いる(文献2参照)。  この出版を受けて、その内容を学生がどう受け止めたかの読後感想文 を集成する形で「現代学生と『井上円了の教育理念』」が出版され、学生 の間にデリケートな見解の相違のあることが浮き彫りにされ、井上円了 の生き方や考え方がいろいろな角度から再検証されている(文献3参 照)。  2)研究分野  井上円了の思想や行動の展開を研究し理解するための情報を提供する 文献目録データベースとして、その関係文献を編年的に配列し、著者名 索引とタイトル索引を付けた「井上円了関係文献年表」が発行されてい る。これは、1875年(明治8年)から1987年(昭和62年)までの4658件 に及ぶ単行本、所収論文、雑誌論文、講義録、新聞、翻訳本の書誌デー タをコンピュータに入力して、年代順に整理して出力したものである。 この文献目録が研究者に与えたインパクトには、計り知れないものがあ る(文献4参照)。  3)経営分野  情報はヒト、モノ、カネに次ぐ第四の経営資源といわれ、価値ある情 報の活用は組織にとって経営を左右する重要なテーマである。情報は他 の資源と異なる特徴を持っていて、コンピュータやネットワークを通し ていくらでも共有できる。教育・研究はもとより経営の展開のための文 献分析でも、データベースを使えば短時間のうちに完了するので、組織 の意思決定支援の分析にもこれが使われ始めている。外部にデータベー

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スがある場合でも、ユーザー(利用者)はパソコン通信あるいは電子メ ールのように通信回線を介して自在にアクセスできる(文献5参照)。  情報を仲立ちにすれば、地域社会との連携も活発化できる。丁度それ はタンポポのタネが風に乗ってあちこちに飛んで、そこに新しい芽を出 すのに似ている。こうした情報とタネの伝播の類似性に着目すると、生

物学的情報技術(BIOLOGICAL INFORMATION TECHNOLOGY:

略称BIT)といった新規概念が生まれて来る。組織の存否は生物の生 存競争になぞらえられるが、いずれにおいてもタネとしての情報が果し ている役割の大きさが分かる。このことと上記の事柄を組み合わせて、 東洋大学における総合的な戦略の枠組みをスケッチしたのが図3である。     井上円了の 哲学思想・社会業績・時代背景 ← iタネ(インターメディア)i       十   iヒト・カネ・モノ: ← 学生の個性形成(教育) 学問の継承発展(研究) 組織の持続拡大(経営) 図3 生物学的情報技術(BIT)の考え方に基づく総合戦略 3.システム設計  一般論であるが、データベースの構築には膨大な費用とマンパワーを 要するので、将来への見通しを明確にして、データの入力・蓄積・運用 の方法を慎重に考える必要がある。データを体系化し整理保存して活用 インターメディア保tf情報ンKテムの設計 51(lg4)

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することが組織発展の根源になるとの認識のもとに、データベースとし てのインターメディア保存情報システム(IMPIS)の設計指針を以 下に示す。  近年の著しい技術の進歩を反映して、システム構築手法自体も日進月 歩の変容を遂げっっある。とくに光ディスク、光ファイバー通信ネット ワーク、マルチメディア、パソコン、ワークステーションなどハードウ ェアの機能向上と価格の低下により、画像や音声などのイメージデータ を扱うことも極めて容易になっている。  システム設計にあたっては、データ集合体の作成と、それを高速大容 量のデータ蓄積装置で管理するコンピュータの導入、の二つが主要な検 討課題である。一般には、コンピュータに電子図書館情報システムとい ったアプリケーションソフトウェアが載せられ、それが光ディスクファ イル装置と接続される。利用者が情報を探し出す作業を容易にするため に、分類目録作成、索引作成などの分析作業が特に重要になるが、蓄積 データは、特定範囲の中で網羅的でなければならない。システムの規模 は、ユーザーニーズに対応するデータ蓄積量(データ件数)、利用可能端 末数およびコストパフォーマンスから決められる。ハードウェアが如何 に高速化、高機能化されても、ソフトウェアに問題があれば、システム としては評価されない。何にもまして「使い易さ」が大きな評価基準と なる。以上の諸点を作業のフローとして示したのが図4である。 入力手順検討  資料分別  年次計画 (収集・整理)

o

光ファイル方式設計   規模推定   仕様選択  (増訂・改訂) ⇒ 出力手順検討  検索様式  媒体様式 (編集・出版) 図4 インターメディア保存情報システム(IMPIS)を開発する上での課    題

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 もともとデータベースというのは、その利用形態において図書館と多 くの共通点を有する。その図書館であるが、大規模な大学の場合には分 館が幾つかあり、また研究室や教室から図書館情報システムを利用した いというニーズが大きい。そのため図書館情報システムのネットワーク 化が重要であり、多くの大学で大学図書館はキャンパスネットワークの 中でも重要な位置を占めている。全国規模で大学図書館を結ぶネットワ ークとして、文部省の学術情報センターによる学術情報ネットワークが よく知られている。また光ディスクの普及傾向に対応して、CD(コン パクトディスク)を利用した電子図書やデータベースが増え、図書館自 身でも書誌データベースをCD化できるようにさえなっている(文献6 参照)。 井上円了記念 w術センター 光フアイル    ●

WAN/

   ●

   LローPC

      l      PC    (学外端末) 口 東洋大学 付属図書館

 WAN

● キャンパスネットワーク (ex . TRITON) 学術情報 センター

「一『一一一一^……’’’’’”1

一〇     LAN

  LO     O

       

  PC−ローPC   PC−ローPC

     l      l     PC       PC    教室  研究室  事務室    (白山・朝霞・川越・板倉)     PC :パソコン       ロ 集線装置

    LAN:狭域ネットワーク   O LAN制御装置

    WAN:広域ネットワーク  ●:WAN制御装置

図5 インターメディア保存情報システム(IMPIS)を巡る情報の流れ  光ディスクを用いた光ファイルを導入する最大のメリットは、書庫な いし保存倉庫の大半を占める図書・文書・図面などの膨大な資料につい て、省スペース化、ペーパーレス化を実現できることにある。現行の典 fンターメディア保存情報シスアムの設:i 53(192)

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型的な光ディスクのデータ収容能力は、1枚当りで600Mbyteとなってお り(M=106)、これを例えばA4版(200dpi)で70Kbyte/枚という紙デ ータ容量で割った値がA4枚数換算のデータ収容能力となる(K=103)。 ここで、dpiはdot/inchの略で1インチあたりの画素数であるが、ちなみ に600dpiは高精細画質(オフセット印刷クラス)に対応する。  光ファイルデータのパソコン検索システムとしては、本体からのデー タを通信ネットワーク経由でパソコンデータに変換して使用する方式が 標準的なものである。パソコンを用いて光ファイルのイメージデータを 検索・出力するのに要する時間は、光ファイルの規模にもよるが、典型 的にはA4サイズ1枚分を呼び出すのに秒から分のオーダーである。以 上に述べたデータベースシステムの構成概念を模式的に表すと基本的に は図5のようになる。 4.淘汰の新時代  ここで検討しているデータベースを含めて、情報システムー般は今後 の大学運営において益々その重要性を発揮するものと考えられる。研究 の展開では種々の情報を利用しなければならないし、研究成果は公開の 流通過程に乗せることが求められる。教育の改善にとっても、教材とな る資料情報のデータベース化が今後は必要不可欠となろう。その際に、 学術情報の組織化は当該専門分野の研究者の仕事である点に十分な配慮 が望まれる。  一方、そうしたシステムに組み込まれるハードウェア、ソフトウェア の進歩は今後も著しいものと予測され、現在はその過渡的状況にあると 受け止めるべきである。このような背景のもとに、新時代に向けての動 向と将来性に関する調査・検討が求められる。  まず、システムの技術面の課題としては、インターメディアとしての 光ディスクそのものの性能アップが期待される。入出力機器関連では、

(10)

マルチメディア型の卓上出版(DESK TOP PUBLISHING:略称DT

P)が普及し、高精細テレビ(HIGH DEFINITION TELE−VISION:

略称HDTV)の実用性も高まる。このHDTVは、現行のNTSC方

式の4倍の画素によるもので、ディジタル化するには輝度信号と色調信 号を合わせると1Gbit/secという高速の情報速度が必要とされる(G= 109)。このことは必然的にネットワーク構成にも影響を及ぼし、総合サー

ビスディジタルネットワーク(INTEGRATED SERVICES DIGITAL

NETWORK:略称ISDN)の広帯域化が追求されるところとなる。そ

れと並行して、文字・データ・音声・映像(画像・グラフィックスを含 む)の通信というマルチメディア伝送技術の重要性が増してくる。  システムの活用面の課題として最も関心が寄せられるのは、東洋大学 とこれを取り巻く社会との接点の部分である。教育・研究・経営の全体 にわたる視点としては、  1)理念確認:効果的な自己点検・評価の実施  2)地方巡講:情報ネットワークなどの技術進歩の活用  3)校地展開:白山、朝霞、川越から板倉への拡張 などが特に重要視されよう。  これらに関連するが、「学校法人東洋大学・データブック1993」によれ ば、関東地区における出身高等学校所在地別入学者数の推移は、1984年 (昭和59年)と1993年(平成5年)の間に、神奈川+東京+千葉で1089 名から1633名(1.53倍)に、埼玉+茨城で723名から1231名(1.70倍)に、 群馬+栃木で184名から215名(L17倍)にといずれも増大傾向を見せて いる。日本全国に対する関東地区の割合の方も60.8%から74.8%にと大 幅にアップしている。  このことの一つの結論は、前記のような井上円了関連のデータベース ネットワークを重点的にこの地域に広げていくことが、将来の東洋大学 の着実な発展に結びつくのではないかということである。こうした推論 イ・ターメデ・ア保存情報システム畷言i55(190)

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に絡めて示したのが、図6の関越横断ベルト(日本列島中央の太平洋岸 から日本海岸までの広域リンク)の概念である。 〈日  本  海〉

   新潟県

(越路・井上円了生誕地)

 群馬県

(板倉・学際学部)

栃木県

  埼玉県

(朝霞・文系学部) (川越・工学部)

  茨城県

(牛久・付属高校)

神奈川県  

東京都

       (白山・文系学部)        (中野・哲学堂)

千葉県

       〈太  平  洋〉     図6 東洋大学の生命線となり得る関越横断ベルト  この図には入っていないが、兵庫県(姫路・付属高校)を関西地区へ の展開拠点として位置づけ、同様の概念が組立られることは言うまでも ない。いずれにしても、マクロアプローチとして、ヒト(人材)とカネ (資金)とモノ(設備)とタネ(情報)の有機的で効果的な結合を図る 上で、本論で取り上げたデータベースの仕組みが積極的に利用されるこ とを望みたい。  井上円了の遺志を継いで20世紀という激動の時代を逞しく生き抜いて きた東洋大学であるが、その遺志を遺伝子としてさらに進化発展させて いくことに期待がかかる。時代という環境に適応し、生存競争に耐えた 遺伝子のみが21世紀という淘汰の新時代に生き残り得る。その意味から も、井上円了関連データベースの構築は、東洋大学にとって目前に連な

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る避けては通れない道筋である、と断言せざるを得ない。 【参考文献】 (1)森川、「インターメディア保存情報システムの展開」、井上円了センター年   報第1号、pp.155−158(1992年) (2)東洋大学創立100周年記念論文集編纂委員会編、「井上円了の教育理念一   新しい建学の精神を求めて」、東洋大学(1987年) ③ 東洋大学井上円了選集編集等委員会編、「現代学生と『井上円了の教育理   念』」、東洋大学(1989年) (4)東洋大学井上円了研究会第三部会、「井上円了関係文献年表」(1987年) (5)堀越、「外部データベースの活用」、電子情報通信学会誌、Vol.76, No.4,   pp.404−409(1993年) (6)杉本、田畑、「図書館のエレクトロニクス」、電子情報通信学会誌、Vo1.77,   No、1, pp.68−70(1994年) インターメディア保存情報ソスアムの設計 57(188)

参照

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