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学会誌『基礎心理学研究』改善に向けての取り組み

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Academic year: 2021

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DOI: http://doi.org/10.14947/psychono.36.9

1 村上: 学会誌『基礎心理学研究』改善に向けての取り組み

学会誌『基礎心理学研究』改善に向けての取り組み

Endeavors to upgrade “The Japanese Journal of Psychonomic Science”

村 上 郁 也

日本基礎心理学会編集委員長 は じ め に 日本の基礎心理学分野の学界を束ねる本会の会誌とし て,『基礎心理学研究』は 1982年度に第1巻,以来毎年 度2号ずつ刊行され,2017年度で36巻目を数えます。 本誌は現在に到るまで,成果発表の場として,また学 術的情報交換の場として,感覚・知覚,認知,記憶,学 習,動物行動,歴史,原理,方法などの基本的な問題に 関して,さまざまな著者層と読者層にはたらきかける媒 体として機能してきました。このような編集体制が今後 も維持され,ますます発展していくことを願います。 グローバル化 維持・発展のためにはグローバル化の波に乗ることが 必要と考え,歴代の編集委員会において検討し,各種の 改革を行ってきました。その一環として 2013年に,こ れまで「掲載する投稿論文の著者には会員が含まれてい なければならない」としていた規制を撤廃し,会員・非 会員を問わず投稿することを可能にしました。言語は原 則として日本語または英語とする,という規定のため日 本語で書かれる必要はなく,世界の誰でも投稿しようと 思えばでき,採択の暁には後述のように世界の誰でも無 料で閲覧できることになります。また,審査の迅速性が 重要なアピールポイントであることを考慮し,webベー ス電子投稿システムとして世界的に定評のあるEditorial ManagerTM (EM) を2011年に採用し,著者・審査者・編 集者・印刷担当が通信のロスタイムなしに同じプラット フォーム上で意思疎通できるようになりました。世界の 誰でも審査者に迎えることさえできるようになったので す。 オープンアクセス化 近年,pdfその他の電子ファイル形式による論文のオ ンライン配信,ソーシャルネットワーキングサービス, 機関レポジトリなど,さまざまな時代的変革に伴い,本 誌の基盤的サービス体制にも時代の要請に即した変更が なされてきました。まず,国立情報学研究所学術情報ナ ビゲータ『CiNii』の終了に先んじて,これまで『CiNii』 との契約で本誌論文の有料ダウンロードが可能という形 で配信していた体制から,科学技術振興機構の総合電子 ジャーナルプラットフォーム『J-STAGE』への登載へ踏み 切り,誰でも無料でpdfをダウンロードできる「オープ ンアクセス」化を果たしました。本誌の刊行にあたり著 者負担基本料として 1万円 (著者全員が非会員の場合3 万円) の負担を求めていますが,この額はオープンアク セス化の前から据え置かれていますし,他のオープンア クセスのオンラインジャーナルでのいわゆる論文掲載料 (article processing charge: APC) の相場と比較してかなり

安価だと感じられるのではないでしょうか。2017年に, バックナンバーを含めてすべての巻号のJ-STAGEへの登 載を完了しています (本誌のwebサイトhttp://psychonomic. jp/journal/ からJ-STAGEにたどることができます)。 無料の早期公開 本誌は9月末日に1号,3月末日に2号を発行する体制 となっていますが,論文が採択されるのはもちろん随時 のタイミングなので,採択されれば冊子版の刊行を待つ ことなく直ちに論文pdfを閲覧できる方が,著者や読者 の利便性が高まります。そこで2016年より,著者が希望 すれば無料で,著者校正済みの論文をpdfにてJ-STAGE 上に早期公開 (advance online publication) ができることと しました。早期公開であることを示す電子透かしと早期 公開の日付が入った状態の論文pdfの形となり,早期公 開の時点ですでに一意なデジタルオブジェクト識別子 (digital object identifier: DOI) が各論文等に付与され,公の 研究実績報告書などを著者が作成する際にも便利なよう になっています。冊子版の刊行時点に合わせて,同一の DOIにて恒久的な論文pdfに自動的に差し替えられます。 無料のカラー図版 カラー図版の掲載に関して,従来は,冊子版の中に例 外的にカラー印刷ページを挿入する経費の一部負担(1 ページあたり6万円および外税) を著者に求めていまし た。しかし,pdfという電子媒体を用いるのであれば経

The Japanese Journal of Psychonomic Science

2017, Vol. 36, No. 1, 1–2

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2 基礎心理学研究 第36巻 第1号 費は大幅に下がるので,2016年より,著者がカラー図版 の掲載を必要とした場合は,デフォルトでは電子版にの みカラー図版を掲載する方針に変更しました。その場 合,カラー図版の掲載は無料となり,冊子版に同じ図版 のグレースケール版をやはり無料で載せるということに なります。もしも,著者が冊子版にも同一のカラー図版 を載せたい,というオプションを選んだ場合に限り,上 記の負担を従来通り著者に求めるということになります。 電 子 付 録 J-STAGE上の機能を利用して,2016年より,電子付録 (いわゆるsupplementary material) の掲載もできるように なりました。これにより,脳イメージングのデータなど の大量のカラー図版が必要な場合や,運動錯視のデモな どのために動画像を示すことが必須であるような研究内 容をはじめ,さまざまな理由で本文と図版を超えた情報 量でのデータ公開をしたいという著者の必要に応じて, 有効活用していただいています。 査読ガイドライン このように,より使いやすいシステムをと考え,数世 代分の編集委員会と編集幹事・事務局にまたがって投 稿・審査・出版システムが構築されてきたのですが,原 著論文,研究ノート,評論のカテゴリーの査読有り論文 の投稿件数がますます伸びるためには,審査の迅速性や均 一性が担保されていること,またそれが周知されている ことが必要です。そのために,「『基礎心理学研究』に投稿 された論文の審査者へのガイドライン」を編集委員会にて 2014年に策定し,審査の打診に対して迅速な回答をす ること,原則として30日以内の迅速な審査をすること, そして,2016年の改訂後には以下の留意事項について了 解していただくことなどを明文化しました。 「著者の中には,研究キャリアの中で初めて学術誌に 論文投稿を行う人,学術論文に求められる様々な要求水 準に関して十分な訓練を受けていない人もいるでしょう。 本誌の質を落とすような不適切に甘い審査をするのは避 けるべきですが,いわゆるハイ・インパクトな国際誌相 当の厳しい審査を行ったあげく掲載不可とすることは本 誌の目指すところではありません。可能であるならば, 建設的な助言・改稿指示を提示し採択に近づけるように することを基本方針に,審査をしてください。」 従来より,本誌には当該分野の重鎮から大学院生まで 幅広いキャリアステージの方々からの投稿をいただいて きました。そして,特に学位の取得を目指す若手研究者 にとっては,本誌はある種の登竜門のような位置づけで あるとともに,基礎心理学分野のコミュニティの中で次 世代研究者の跳躍を後押ししてくれるための貴重な環境 であるはずですし,本誌のクオリティでの研究業績を出 すことがその方たちのキャリアパスの種々の局面に現実 的な波及効果を生むことでしょう。したがって,審査者 のメンタリティに一定範囲のスペクトラムがあることを 見越した上で審査の均一性を図るため,本誌発刊時から の本学会の精神を尊重し,「可能」ならば「建設的」に 「採択に近づける」という基本方針を,具体的な文言で 今いちど確認したということになります。 優秀論文賞 編集委員会の活動とは別に,研究者の顕彰のためのも うひとつの方策として,常務理事会の管掌で優秀論文賞 選考委員会が毎年度組織されています。この委員会で は,優秀な研究を奨励し基礎心理学の発展に寄与するこ とを目的として,各巻の1号と2号に掲載された原著論 文と研究ノートと評論のうち著者に本学会会員を含むも のを対象に,「日本基礎心理学会優秀論文賞」の選考が 行われています。論文展開の論理,研究遂行の方法,成 果の学界への貢献度,記述などの論文形式について評価 がなされ,厳正な選考の末に授賞論文が決定すれば,本 会年次大会中の総会で授賞式が行われるほか,本誌にて 優秀論文賞選考委員会からの報告記事が掲載されます。 特 集 号 最後になりますが,基礎心理学分野の情報交換を促進 したいことや最新の研究トレンドに意識的でありたいこ となどを含み,編集委員会において1巻おきに特集号を 企画していますが,多くの論文著者からの積極的な寄与 がいただけてありがたい状況が続いています。この号も おかげさまで質量ともに豊かな仕上がりとなって会員各 位にお届けすることができ,編集委員長としてはうれし い限りです。このような企画は今後も同様のペースで続 けていければと考えています。 お わ り に 特集号のための論文投稿に限らず,一般論文として研 究成果をまとめた原稿も,ますます積極的に検討してい ただき,日本の各地,世界の各地からたくさん投稿をし ていただいて,本会の束ねる基礎心理学のコミュニティ をますます発展させていっていただければと思い,今期 編集委員長として巻頭をお借りし,ここ10年ほどの編 集委員会と編集事務局による本誌のさまざまな改革に関 する活動報告をまとめさせていただきました。

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