〔
Jon. J. Hosp. Pharm.
一 般 論 文 21(1) 15-21 (1995)•l マ ル チ ビ タ ミン を 添 加 し た 高 カ ロ リー 輸 液 中 で の チ ア ミ ンの 安 定 性. 浅 原 慶 一*,合 田 泰 志,下 村 家 紀,藤 原 康 浩, 瀬 川 和 子,雀 部 貴 美 代,山 本 英 二,塚 口裕 子 兵庫県立柏原病院薬 剤部†
Stability of Thiamine in Intravenous Hyperalimentation Containing Multivitamin
KEIICHI ASAHARA*, YASUSHI GODA, YUKI SHIMOMURA,
YASUHIRO FUJIWARA, KAZUKO SEGAWA, KIMIYO SASABE,
EIJI YAMAMOTO and HIROKO TSUKAGUCHI
Department of Pharmacy, Hyogo Prefectural Kaibara Hospital•õ
(
Received July 8, 1994 Accepted August 17, 1994)
As intravenous hyperalimentation (IVH) prepared from IVH basic solution and amino acid solution has become popular, lactic acidosis is receiving attention as a serious adverse reaction. Therefore, thiamine is added to IVH in order to prevent this adverse reaction. However, sodium sulfite (SS), added as a stabilizer to many IVH basic solutions and most amino acid solutions, degrades thiamine. Recently, since an amino acid solution without SS has been deve-loped, it is now possible to prepare IVH without SS.
In this study, we measured the time courses of the residual concentrations of both SS and thiamine in the 12 kinds of IVH containing multivitamin and investigated the relationship bet-ween the SS concentration and the stability of thiamine from the viewpoint of degradation kine-tics.
From the kinetic analysis results, the degradation rate of SS in the IVH stored in a bag was faster than that stored in a glass bottle. The degradation rate of SS in the IVH was very fast when SS is not included in the IVH basic solution.
The degradation of thiamine in IVH was regarded as the apparent first-order degradation process and the degradation rate as being proportional to the SS concentration. The second-order degradation rate constant of thiamine by SS was not affected by the pH of IVH. Sta-bilization of thiamine by glucose was inferred by comparing the degradation rate of thiamine caused by SS in IVH and that in buffered solution without glucose.
Keywords-intravenous hyperalimentation (IVH), sodium sulfite, thiamine, multivitamin, amino acid solution, degradation kinetics
緒 言
近 年,高 カ ロ リー輸 液(IVH)が 医 療 の場 で繁
†兵 庫 県 氷 上 郡 柏 原 町 柏 原5208番 地 の1;5208-1, Kaibara,Hikami-gun,Hyogo,669-33 Japan
用 さ れ る よ う に な り,い くつ か の 問 題 点 が 指 摘 さ れ る よ う に な っ た.そ の う ち 特 に 重 篤 な 副 作 用 で あ る 乳 酸 ア シ ドー シ ス に つ い て 注 意 が 喚 起 さ れ て い る1).最 近詮,こ の 乳 酸 ア シ ドー シ ス を 予 防 す る た め に チ ア ミ ン がIVH中 に 加 え ら れ る よ うに な っ た1).一 方,市 販 のIVH基 本 液 や ア ミ ノ 酸 輸 液 に 安 定 剤 と し て 加 え ら れ て い る 聾 硫 酸 塩 は チ ア ミ ン を 分 解 す る こ と が 知 ら れ て い る2,3). 一 般 にIVHはIVH基 本 液 と ア ミ ノ酸 輸 液 を 混 合 し て 調 製 さ れ て や る.従 来 か ちIVH碁 本 液 に は 亜 硫 酸 塩 を 含 ま な い 製 品 も 市 販 さ れ て い た が,市 販 の ア ミノ 酸 輸 液 に は す べ て 亜 硫 酸 塩 が 添 加 さ れ て お り,亜 硫 酸 塩 を 含 ま な いIVHの 調 製 は 困 難 で あ っ た.こ め よ うな 状 況 か ら,最 近 亜 硫 酸 塩 を 含 ま な い ア ミ ノ酸 輸 液 が 開 発 さ れ,亜 硫 酸 塩 を 全 く 含 ま な いIVHの 調 製 が 可 能 に な っ た. そ こ で 今 回,こ の 亜 硫 酸 塩 非 含 有 の ア ミ ノ酸 輸 液 を 含 む4種 類 の ア ミ ノ酸 輸 液 を 用 い て12種 類 の IVHを 調 製 し,IVH中 の 亜 硫 酸 塩 とチ ア ミ ン の 濃 度 を 経 時 的 に 測 定 し,両 者 の 関 係 を 速 度 論 的 に 検 討 し た の で 報 告 す る. 実 験 の 部 1. 試 料 お よ び 試 薬 試 料 は,次 に 示 す 製 剤 を 用 い て 調 製 し た.IVH 基 本 液 に は,ハ イ カ リ ッ ク液2号(テ ル モ,Lot. No.930726HD,700ml),ト リパ レ ン2号(大 塚 製 薬,Lot.No.3F97B,600ml),バ レ メ ン タ ー ル A(森 下 ル セ ル,Lot.No.3C11F,400ml),ア ミ ノ 酸 輸 液 に は,ア ミゼ ッ トB(田 辺 製 薬 ― テ ル モ, 研Lot.No.931206SS,200ml),プ ロ テ ア ミ ン12X (田 辺 製 薬,Lot.No.38083,200ml),モ リア ミ ンSN(森 下 ル セ ル,Lot.No.3DO8W,200ml), ア ミ ゼ ッ ト10(田 辺 製 薬,Lot.No.331120,200 ml),マ ル チ ビ タ ミ ン と して ネ オ ラ ミ ン ・マ ル チV (科 研 製 薬,Lot.No.331120):塩 酸 チ ア ミ ン3 mg含 有 を 用 い た.ま た,そ の 他 の 試 薬 は 市 販 の 特 級 試 薬 を 用 い た. 2. 試 料 調 製 ア ミ ノ酸 輸 液200mlを 連 結 管 を 用 い てIVH基 本 液(400m1)中 に 注 入 した 後 ネ オ ラ ミ ン ・マ ル チ V1管 を 加 え 試 料 溶 液 と し た. 3. 保 存 条 件 お よ び 試 験 項 目 各 試 料 を 室 温(約25℃),螢 光 灯 下(約1000ル ク ス)に 放 置 し,配 合 の 直 後,1,3,6,24お よ び48時 間 後 の 塩 酸 チ ア ミ ン と亜 硫 酸 塩 の 濃 度 を 測 定 し た.ま た,同 時 にpHを 堀 場 製 作 所 製F-13 型pHメ ー タ ー に よ り測 定 した. 4. 亜 硫 酸 塩 の 定 量 IVH中 の 亜 硫 酸 塩 の 濃 度 を バ ラ ロ ザ ニ リ ン 法 に よ り定 量 し,亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム と し て 含 量 を 算 出 し た.す な わ ち,試 料 を 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム に 換 算 し て1∼2μg/mlに な る よ うに0。01%EDTA 溶 液 で 希 釈 し,そ の5mlに パ ラ ロ ザ ニ リ ン-ア ル デ ヒ ド溶 液(0.04%パ ラ ロ ザ ニ リ ン 溶 液-0.2%ホ ル ム ア ル デ ヒ ド混 液(1:1))1mlを 加 え 室 温 で 35分 間 放 置 し た 後,560nmの 吸 光 度 を 自記 分 光 光 度 計UV-2200(島 津 製 作 所)に よ り測 定 し た4). 5. 塩 酸 チ ア ミ ン の 定 量 塩 酸 チ ア ミ ン の 定 量 に は フ ル ス ル チ ア ミ ンや 塩 酸 チ ア ミ ン の 定 量 法 と し て,著 者 ら が 報 告 した ラ ウ リ ル 硫 酸 イ オ ン を カ ウ ン タ ー イ オ ン と しODS 系 カ ラ ム を 用 い る 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー5) を 一 部 変 更 して 実 施 し た.バ レ メ ン タ ー ルAを 含 む 試 料 に つ い て は,最 終 濃 度 が0.5μg/ml,バ レ メ ン タ ー ルAを 含 ま な い 試 料 に つ い て は2.0μg/ mlに な る よ う移 動 相 で 希 釈 し た 後,高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ ー(絶 対 検 量 線 法)に よ り測 定 し た . 分 析 条 件 を 以 下 に 示 す 。HPLC装 置:LC-10 A,LC-6A(島 津 製 作 所),UV検 出 器:SPD-10 A,SPD-6AV(島 津 製 作 所),カ ラ ム:Nucleosil 5C18(4.6×150mm),移 動 相:0。2%ラ ウ リル 硫 酸 ナ ト リ ウ ム を 含 む0.1mMリ ン酸 緩 衝 液(pH 3.0)-ア セ トニ ト リル 混 液(5:3),流 速:0.5ml/ min,カ ラ ム 温 度:40℃,測 定 波 長:250nm,注 入 量:パ レ メ ン タ ー ルAを 含 む 配 合 液 に つ い て は 50μl,パ レ メ ン タ ー ルAを 含 ま な い 試 料 に つ い て は10μlを 注 入 した. 結 果 お よ び 考 察 1. IVH中 で の 亜 硫 酸 塩 濃 度 の 経 時 変 化 種 々 のIVH中 の 亜 硫 酸 塩 濃 度 の 経 時 的 変 化 に
つ い て は未 だ 詳 細 な 報 告 が な され て い な い.亜 硫 酸 塩 に起 因 す るチ ア ミ ンの分 解 を速 度 論 的 に 検 討 す るため に ネ ォ ラ ミン ・マ ル チV1管 を 含 むIVH を螢 光灯 下(1000ル クス)に 保 存 し,亜 硫 酸 塩 の 濃 度 を48時 間 後 まで 経 時 的 に測 定 した.な お,実 用 条 件 に 準 じて ア ミノ酸 輸 液 をIVH基 本 液 中 に 注 入 してIVHを 調 製 した た め,IVHの 容 器 は基 本 液 に ハ イ カ リ ッ ク2号 ま た は ト リパ レ ン2号 を 用 い た 場 合 は プ ラ スチ ッ クバ ッ グ,バ レ メ ンタ ー ルAを 用 い た 場 合 は ガ ラ ス瓶 で あ る.検 討 した12 種 類 のIVH処 方 とそれ ぞ れ の 製 品 中 の残 存 亜 硫 酸 ナ トリウ ム濃 度 の平 均 値,保 存 容 器 お よびIVH 調 製 後 の残 存亜 硫 酸 塩 濃 度 を 表1に 示 した. 亜 硫 酸 塩 は チ ア ミン と反 応 して 付 加 的 分 解 物 4-ア ミノ-2-メ チ ル-5-ピ リジ ニル メタ ンス ル ホ ン 酸 を 生 成 し,亜 硫 酸 塩 を 消 費 す る こ とが 知 られ て い る2,3).表1か ら換 算 す る と混 合 直 後 のIVH 600ml中 に含 まれ る亜 硫 酸 ナ ト リウム の量 は26∼ 316mgに な る.し か し,添 加 され た ネ オ ラ ミン・ マル チV1管 に 含 まれ る塩 酸 チ ア ミンの 含量 は3 mgで あ った.従っ て,チ ア ミン と の反 応 にま る 亜 硫 酸 塩の 消 費 は 拳然 で あ るが,チ ス ミンが す べ て亜 硫 酸 塩 と反 応 した と して も1mg程 度 しか 亜 硫 酸 塩 が 消費 されな い と推 定 され,亜 硫 酸 塩 減 少 の 主 な原 因 とは 考 え られ な い. 表1に 示 した 処 方 で配 合直 後 の 亜 硫 酸 塩 濃 度 に あ ま り差 が な い(231∼312mg/l)4種 類 のIVH 中 で の 亜 硫 酸 塩 の 残 存 率 の経 時 変 化 をFig.iに 示 した.Fig.1か ら亜 硫 酸 ナ トリ ウム の残 存 率 と保 存 時 間 の 間 に ほ ぼ直 線 的 関 係 が 認 め られ,検 討 したIVH中 で の亜 硫 酸 塩 の消 失 は0次 反 応 的 な挙 動 を 示 す こ とが わ か った.表1とFig.1か ら,IVH基 本 液 と して ガ ラ ス容 器 の パ レメ ンタ ー ルAを 使 用 した 処 方 は バ ッ グに 入 った ト リパ レ ン 2号 や ハ イ カ リ ッ ク2号 を 使 用 した処 方 に 比 べ て,亜 硫 酸 塩 の 消失 速 度 が 遅 い こ とが 判 明 した. 亜 硫 酸 塩 の 消 失 速 度 に 差 を 生 じ海原 因 の 一 つ と し て,ガ ラス象容 器 は プラ スチッ クバ ッ グ と異 な り酸 素を透 過 しないという容器の特性 炉影響 して いる と推 察 され た. 次 に,基 本 液 と して ハ イ カ リ ッ ク2号(亜 硫 酸 塩 無 添 加)を 用 い た 処 方と トリパ レ ン2号(亜 硫 酸 塩 添 加)を 用 い た 処 方 を 比 較 ず る と,ハ イ カ リ ツ ク2号 を 用 い た 処 方 は 亜 硫 酸 塩 の 消 失 速 度 が 速 い こ とが わ か っ た. 抗 酸 化 剤 と して 繁 用 され る亜 硫 酸 塩 は 酸 素 に よ りフ リー ラ ジ カ ル を 生 じて 自動 酸 化 し,最 終 的 に は 硫 酸 に な る6).す なわ ち,'亜 硫酸 塩 を 蒸 留 水 に 表1.IVHの 処 方 例 と混 合 後 の亜 硫 酸 ナ ト リウ ム濃 度 の経 時 変 化
Fig. 1. Stability of Sodium Sulfite (SS) in Neolamin Multi added Intravenous
Hyperalimentation under Fluorescent Lamp of 1000 lux at 25•Ž 添 加 す る と,亜 硫 酸 塩 は 蒸 留 水 中 の酸 素 に よ り酸 化 され て 残 存 酸 素 濃 度 が 減 少 す る.酸 素 量 が 多 い 場 合 に は 亜 硫 酸 塩 の 減 少 も著 しい こ とが 知 られ て い る7).従 って,IVH基 本 液 中 の 残 存 酸 素濃 度 は 亜 硫酸 塩 が 添 加 され た トリパ レ ン2号 よ り亜 硫 酸 塩 無 添 加 の ハ イ カ リ ッ ク2号 の方 が 高 い と考 え ら れ た.こ の こ とが,種 々考 え ら れ る トリパ レ ン 2号 を 用 いたIVHと ハ イ カ リ ッ ク2号 を 用 い た IVH間 で亜 硫 酸 塩 消 失 速 度 に 差 が 生 じた 原 因 の 一 つ と推 測 され る. また,IVH基 本 液 の ブ ドウ糖 は製 剤 の 滅 菌 時 お よび経 時 的 に 分 解 され3-デ オ キ シ-2-ヘ キ セ ノ ー ス な どの α,β-不飽 和 ア ル デ ヒ ドを 生 成 す る こ と が 知 られ て い る8).こ れ ら の不 飽 和 ア ル デ ヒ ドに 葦 硫酸 堆 が 不 可逆 的 に 付 加 す る こ とに よ る9)非 結
Fig. 2. Semilogarithmic Plots for the Degra-dation of Thiamine in Neolamin Multi added Intravenous Hyperalimentation under Fluorescent Lamp of 1000 lux at 25•Ž 合型 亜 硫 酸 塩 の減 少 も考 え られ る. 2. IVH中 で の チ ア ミン濃 度 の 経 時 変化 室 内散 光 下 に保 存 した 各 種IVH中 で の チ ア ミ ンの 残 存 濃 度 を 混 合 後48時 間 ま で経 時 的 に 測 定 し た.こ の うち チ ア ミンの安 定 性 が 最 も良 い 例 と悪 い 例 をFig.2に 示 した 。亜 硫 酸 塩 を 全 く含 ま な い ハ イ か リ ッ ク2号 と ア ミゼ ッ トBの 配 合 で は24 時 間 後 に お い て92.6%の チ ア ミンが 残 存 して い た が,ト リパ レン2号 と ア ミゼ ッ ト10の配 合 で は チ ア ミンは24時 間 後 に は38.5%ま で 減 少 した. Fig.2に 示 す よ うにチ ア ミンの 残 存 率(対 数) と保 存 時 間 の 間 に 直 線 関 係 が 成 り立 つ こ とが わ か っ た.従 って,厳 密 に は 亜 硫 酸 塩 に よ るチ ア ミン の分 解 は21次 反 応 で あ るが,亜 硫 酸 塩 の 濃 度 が チ ア ミンの 濃 度 に 対 して大 過 剰 で あ るた め,IVH中 で の チ ア ミンの 分 解 は擬1次 反 応 と して 扱 うこ と が 可能 で あ った.そ こで,種 々のIVHの 亜 硫 酸 ナ ト リウ ム濃 度 とチ ア ミンの 擬1次 分 解 速 度 定 数 を 求め 表2に 示 した.こ の表2に 示 し泥IVHの 亜 硫 酸 ナ ト リウ ム濃 度 に 対 し,チ ア ミ ンの擬1次 分 解 速 度 定 数 を プ ロ ッ トした と ころFig.3の よ
表2.IVHの 亜 硫 酸 ナ トリウ ム濃 度 と塩 酸 チ ア ミンの 擬1次 分 解 速 度 定数 うに直 線 的 な 関 係 が 成 立 す る こ とが判 明 した.つ ま りIVH中 に お い て も亜 硫 酸 塩 の 残 存 濃 度 が チ ア ミンの安 定 性 に大 きな 影 響 を 与 え,亜 硫 酸 ナ ト リ ウム の濃 度 が 高 くな れ ば チ ア ミンの 分 解 速 度 は それ に 比 例 して 大 き くな る こ とが わ か った.チ ア ミンの擬1次 速 度 定 数 の 算 出 に は,IVHが 亜 硫 酸 塩 を含 む場 合,亜 硫酸 塩 の 残 存 率 が80%以 上 に保 たれ る時 間 内 の 測定 値 を 用 い た.ま た亜 硫 酸 塩 の 濃 度 は混 合 直 後 の実 測値 を 使 用 した. Fig.3の 直 線 的 関 係 か ら亜 硫 酸 ナ トリ ウ ム を 含 むIVH中 で の チ ア ミ ンの 土次 分解 速 度 定 数 は 式(1)の よ うに表 す こ とが で き,kssは 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム に よ る チ ア ミ ン の2次 分 解 速 度 定 数,Css は 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 総 濃 度,koは 亜 硫 酸 塩 を 含 ま な いIVH中 で の チ ア ミ ン の1次 分 解 速 度 定 数 で あ る.こ の 直 線 の 傾 き か ら 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム に よ る チ ア ミ ン の2次 分 解 速 度 定 数 を 求 め た と こ ろ 9.02M-1h-1で あ っ た.ま た,k0は-1.63×10-4h-1 と ご く小 さ な 値 で あ っ た.以 上 の よ う に 今 回 検 討 し たpH4.9∼6.1の 比 較 的 狭 いpH領 域 内 に お い て は,IVH中 で の 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム に よ る チ ア ミ ン の1次 分 解 速 度 定 数 は 式(1)で 表 せ る こ と が 判 明 し た. (1)
Fig. 3. Relationship between the Sodium Sulfite Concentration and Apparent First-order Degradation Rate Constant of Thiamine in Neolamin Multi added Intravenous Hy-peralimentation under Fluorescent Lamp of 1000 lux at 25•Ž 3. 亜 硫 酸 塩 共 存 下 で の チ ア ミン のpHプ ロフ ァイ ル 亜 硫 酸 のpK1とpK2は それ ぞ れ1.8と7.03) で あ り,一 方 今 回検 討 した種 々 のIVHはpH4.9 ∼6 .1と1.2単 位 のpH幅 を 持 って い た.従 っ て, pHが 変 化 す れ ば チ ア ミンを 攻 撃 す る亜 硫 酸 の イ オ ン種 の 分 率 が 変 化 す る こ と は 明 らか で あ る.そ こ で,IVH中 で の亜 硫 酸 ナ トリ ウム に よ るチ ア ミ ンの分 解 速 度 定 数 とpHと の関 係 を 考 察 した. Fig。3に 示 した チ ア ミンの擬1次 分 解 速 度 定 数 中 で そ の値 が か な り大 きけ れ ば,例 え ば0.02 M-1h-1以 上 の場 合,擬1次 速 度 定 数 を 亜 硫 酸 ナ トリ ウム の モ ル 濃 度 で割 った値 を チ ア ミンの2次 分 解 速 度 定 数 と見 な して大 きな 問 題 は な い と考 え た.そ こで,本 条 件 に適 合 す るIVH中 の チ ア ミン の2次 分 解 速 度 定 数 と そ のPHと の 関 係 をFig.4 に 示 した.こ のpHプ ロ フ ァイ ル は 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ムに よ るチ ア ミンの2次 分 解 速 度 定 数 がpHの 影 響 を ほ とん ど受 け な い こ とを 示 して い る. 一 方,緩 衝 液 中 で の 亜 硫 酸 塩 に よ るチ ア ミンの 分 解 速 度 のpHプ ロ フ ァ イル はpH5.5付 近 を ピ ー ク とす る釣 り鐘 状 で あ る こ とが報 告 さ れ て い る3).今 回 求 め た チ ア ミ ンの2次 分解 速 度 定 数 が
Fig. 4. pH-Profile of the Second-order De-gradation rate constant of Thiamine by Sodium Sulfite in Neolamin Multi added Intravenous Hyperalimentation under Fluorescent Lamp of 1000 lux
at 25•Ž
pHの 影 響 を あ ま り受 け な い よ う に み え る 理 由 と して,上 記 釣 り鐘 状pHプ ロ フ ァ イ ル の ピ ー ク部 平 坦 領 域 にFig.4で 示 し た 試 料pH(5.47∼
6.12)が 包 含 され る こ とが 考 え られ た. 4. ブ ドウ糖 濃 度 の影 響 pH5.2の 緩 衝 液 中 に お け る亜 硫 酸 ナ ト リウ ム に よ るチ ア ミ ンの2次 分 解 速 度 定 数 は25℃ の 場 合47.5M-1h-1と 報 告 され てい る3).こ の値 は 今 回 求 め たIVH中 の塩 酸 チ ア ミ ンの2次 分 解 速 度 定 数9.02M-1h-1の 約5倍 で あ った.こ の原 因 は 緩 衝液 とIVHと い う試 料 溶 液 の 組成 上 の相 違 点 に あ る と考 え られ,カ ル ボ ニ ル 化 合 物 と して の性 質 を 持 つ ブ ドウ糖 や 果 糖 がIVH中 に 含 まれ て い る こ とが 影 響 して い る と考 え られ た.著 者 ら は既 に ブ ドウ糖 の添 加 に よ り非 結 合 型 の 亜 硫 酸 塩 濃 度 が低 下 しチ ア ミンの 分解 を か な り抑 制 す る こ とを 報 告 して お り5),今 回 のIVHに お い て も同様 の 理 由 に よ りチ ア ミンが 安 定 化 され た も の と考 え ら れ た. す な わ ち,IVHの カ ロ リー源 と して 特 に 繁 用 さ れ て い る ブ ドウ糖 は アル デ ヒ ドと して の 性 質 を 持 つて い る.こ の ブ ドウ糖 は 亜 硫 酸 ナ ト リウ ム と付 加 化 合物 を 生成 す るた め10),チ ア ミンを攻 撃 す る 非 結 合型 の亜 硫 酸 塩 濃 度 が 低 下 し,チ ア ミンの 分 解 が抑 制 され た と考 え られ る.従 って,今 回 求 め たIVH中 で の チ ア ミンの 擬1次 分 解 速 度定 数 は 当然 ブ ドウ糖 の影 響 を 含 ん だ値 で あ る.し か し, IVHの ブ ドウ糖(果 糖 も同 様 に 扱 っ た)濃 度 は 16.7∼20.9%と ほ とん ど差 が な く,非 結 合型 の亜 硫 酸 ナ トリ ウム濃 度 と亜 硫酸 ナ トリ ウム の総 濃 度 の 間 に は 比 例 関 係 が 成 立 す るこ とか ら5),今 回 検 討 した チ ア ミンの 亜 硫 酸 分 解 だ お げ る擬1次 分 解 速 度 定 数 を 比 較 した 場 合,ブ ドウ糖 に よる 影 響 が 観 察 され な か った も の と推 測 され た. 謝辞 本研究 に試 料等をゼ 提供 い癒 だいた 田辺製薬 株弐 会社に深謝 いた します. 引 用 文 献 1) 高 橋 隆 一, 日本 薬 剤 師 会 雑 誌, 45, 1610-1611 (1993). 2) R. R. Williams, J. Am.Chem.Soc., 57, 229-230 (1935).
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