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Vol.45 , No.1(1996)035星名 万美「『教行信証』における「諸仏の家」」

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Academic year: 2021

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印 度 學 佛 教 學 研 究 第 四 十 五 巻 第 一 号  平 成 八 年 十 二 月

﹁諸

﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と は 、 大 乗 仏 教 の 精 神 を 最 も よ く 顕 示 す る 言 葉 で あ る 。 親 鸞 は 、 浄 土 真 宗 を ﹁ 大 乗 の 中 の 至 極 な り ﹂ (﹃ 末 灯 紗 ﹄ ) と 言 い 切 っ た 。 そ の 親 鸞 の 主 著 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ に お い て 、 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と い う こ と が ど の よ う に 確 か め ら れ て い る か を 考 察 す る こ と は 、 浄 土 真 宗 の 意 義 を 明 ら か に す る 一 端 に も な る で あ ろ う 。 親 鸞 が ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ を い か に と ら え た か を た ず ね た い と 思 う 。 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ に は 、 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と い う 言 葉 は 、 ﹁ 行 巻 ﹂ の ﹃ 十 住 毘 婆 沙 論 ﹄ の 文 と ﹁ 信 巻 ﹂ の ﹃ 観 経 疏 ﹄ の 文 に 出 さ れ て い る 。 ま ず 、 ﹁ 行 巻 ﹂ に は 、 ヲ ク ノ ト ノ ス ノ ヲ ノ ニ 般 舟 三 昧 及 大 悲 、 名 二 諸 仏 家 殉 従 日庇 二 法 ↓ 生 二 諸 如 来 殉 此 中 、 般 ワ ス ト ヲ ト ニ ハ ナ リ ハ 舟 三 昧 為 二 父 二〇 又 、 大 悲 為 二 母 殉 復 次 、 般 舟 三 昧 是 父 。 無 生 法 忍 是 ナ リ 母 。 (親 全 一 -二 四 ) と 、 ﹃ 十 住 毘 婆 沙 論 ﹄ ﹁ 入 初 地 品 ﹂ の 文 が 引 か れ て い る 。 ﹁ 般 舟 三 昧 ﹂ と ﹁ 大 悲 ﹂ 、 な ら び に ﹁ 無 生 法 忍 ﹂ が 、 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ で あ る と 示 さ れ て い る 。 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と は 、 諸 仏 た ち が 生 ま れ た 処 で あ り 、 諸 仏 を 養 育 す る 処 で あ る 。 そ こ に 生 ま れ た も の は 必 ず 仏 に な る 処 で あ る 。 ﹁ 般 舟 三 昧 ﹂ は 、 念 ず る も の に 諸 仏 が 現 前 す る 三 昧 で あ る が 、 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ で は 、 そ れ は 念 仏 三 昧 、 す な わ ち ﹁ 大 行 ﹂ で あ る 。 ま た 、 ﹁ 大 悲 ﹂ と は 、 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ 全 体 の 根 源 、 阿 弥 陀 仏 の 無 縁 の 大 悲 で あ る 。 そ し て 、 ﹁ 無 生 法 忍 ﹂ は 、 章 提 希 の 得 忍 が 示 す よ う な 、 真 実 信 心 の 智 慧 で あ る 。 そ れ に よ っ て 生 ず る 諸 々 の 如 来 と は 、 真 実 信 心 を 獲 得 す る 已 ・ 今 . 当 の 衆 生 で あ る 。 そ の よ う な 、 諸 々 の 如 来 の 生 ず る 家 で あ る 故 に ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と 言 う の で あ る 。 ま た 、 初 地 を 得 る こ と が 其 処 に 生 ず る こ と で あ る 。 ﹁ 行 巻 ﹂ に は 、 右 の 文 に 続 い て 、 同 じ く ﹃ 十 住 毘 婆 沙 論 ﹄ ﹁ 入 初 地 品 の 文 を 引 い て 、 エ ヲ ル ヲ ク ル ト ノ ニ 得 二 初 地 一已 、 名 三 生 二 如 来 家 殉 ( 親 全 一 ー 二 五 ) 1fiO

(2)

﹃ 教 行 信 証 ﹄ に お け る ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ (星 名 ) と 、 示 し て い る 。 ﹁ 初 地 何 が 故 ぞ 、 名 づ け て 歓 喜 と す る や ﹂ と の 問 に 答 え て 、 ﹁ 究 寛 し て 浬 盤 に 至 る ﹂ 、 ﹁ 設 い 睡 眠 し 瀬 堕 な れ ど も 二 十 九 有 に 至 ら ず ﹂ と い う 歓 喜 の 故 に 初 地 を 歓 喜 地 と す る 。 そ の 初 歓 喜 地 と は 、 必 当 作 仏 を 歓 喜 す る ﹁ 必 定 の 菩 薩 ﹂ の 地 で あ る 。 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ で は 、 ウ レ ノ ヲ ハ ニ キ カ ニ ヲ ク ト 獲 二 真 実 行 信 一者 、 心 多 二 歓 喜 一故 、 是 名 二 歓 喜 地 殉 (親 全 一 -六 七 ) と 、 真 実 の 行 信 の 人 を ﹁ 初 歓 喜 地 ﹂ ﹁ 即 時 入 必 定 ﹂ と し 、 真 実 の 行 信 を 獲 る 時 、 諸 仏 の 家 に 生 ま れ る と し て い る の で あ る 。 そ の よ う な ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ こ そ 真 実 の 浄 土 で あ る 。 ﹁ 信 巻 ﹂ の ﹁ 真 仏 弟 子 釈 ﹂ に は 、 シ ノ ヒ ト ハ チ レ ノ ナ リ ノ ナ リ ノ ナ リ ノ 若 念 仏 者 、 即 是 人 中 好 人 、 人 中 妙 好 人 、 人 中 上 上 人 、 人 中 希 有 ナ リ ノ ニ ハ ス ス レ ノ ヲ ハ チ ニ テ 人 、 人 中 最 勝 人 也 。 四 、 明 下 専 二 念 弥 陀 名 一者 、 即 観 音 ・ 勢 至 常 随 シ タ マ ゥ コ ト ク ナ ル コ ト ヲ ノ ニ ハ ス ニ ニ レ リ ノ ヲ ス テ ヲ 影 護 、 亦 如 中 親 友 知 識 上 也 。 五 、 明 下 今 生 既 蒙 二 此 益 ↓ 捨 レ命 ラ ン ニ リ テ コ ニ ニ キ も ヲ セ ム ニ 即 入 二 諸 仏 之 家 ↓ 即 浄 土 是 也 。 到 レ 彼 長 時 聞 レ 法 、 歴 事 供 養 。 因 円 ス ニ ハ ル ヵ ナ ラ ム ヤ ト イ フ コ ト ヲ 果 満 、 道 場 之 座 豊 除 加 (親 全 一 ー 一 四 九 ∼ 一 五 〇 ) と い う 善 導 ﹃ 観 経 疏 ﹄ の 文 が 引 か れ て い る 。 こ れ は 、 ﹃ 観 無 量 寿 経 ﹄ ﹁ 流 通 分 ﹂ 、 シ ス ル ハ ニ ル ノ ハ ノ も 若 念 仏 者 、 当 レ 知 、 此 人 是 人 中 分 陀 利 華 。 観 世 音 菩 薩 ・ 大 勢 至 菩 リ ア フ ノ ト ニ シ ニ ス ノ ニ 薩 、 為 二 其 勝 友 殉 当 下 座 二 道 場 ↓ 生 中 諸 仏 家 加 ( 真 聖 全 一 ー 六 六 ) に つ い て の 釈 で あ る 。 ﹁ 当 座 道 場 、 生 諸 仏 家 ﹂ を ﹁ 即 入 諸 仏 之 家 、 即 浄 土 是 也 ﹂ と い う の で あ る 。 こ の 文 に よ れ ぽ 、 念 仏 者 が 人 中 の 分 陀 利 華 と 呼 ば れ る こ と や 、 観 音 勢 至 が 影 護 し 親 友 知 識 の 如 く で あ る こ と は 今 生 の 益 で あ る 。 ま た 、 ﹁ 諸 仏 の 家 に 入 ら ん 、 即 ち 浄 土 こ れ な り ﹂ は 、 捨 命 以 後 の 益 で あ る 。 し か し 、 そ の ﹁ 捨 命 ﹂ と は 何 を 意 味 す る か が 問 題 で あ る 。 こ れ は 肉 体 の 死 と い う こ と で は な く 、 自 力 の 終 わ り の こ と で あ る 。 そ れ は 、 ﹁ 横 超 断 四 流 釈 ﹂ の 中 の ﹁ 断 ﹂ の 釈 の 結 び に 引 か れ た ﹃ 般 舟 讃 ﹄ と ﹃ 往 生 礼 讃 ﹄ の 文 に お い て 示 さ れ て い る 。 ﹃ 般 舟 讃 ﹄ の 文 と は 、 ヘ バ ク ッ ヘ ハ チ ニ ニ セ リ ッ レ ハ チ ノ シ オ ノ ツ カ ラ 厭 則 娑 婆 永 隔 、 折 則 浄 土 常 居 。 隔 則 六 道 因 亡 。 論 廻 之 果 自 ス ニ シ テ チ タ チ ト ト ニ フ ル ヲ ヤ 滅 。 因 果 既 亡 、 則 形 名 頓 絶 也 。 (親 全 一 ー 一 四 三 ) で あ る 。 親 鸞 は こ の 文 の 心 を 、 光 明 寺 の 和 尚 の ﹃ 般 舟 讃 ﹄ に は 、 ﹁信 心 の 人 は そ の 心 す で に 浄 土 に 居 す ﹂ と 釈 し 給 え り 。 居 す と い う は 、 浄 土 に 、 信 心 の 人 の こ こ ろ 、 つ ね に い た り と い う こ こ ろ な り 。 こ れ は 弥 勒 と お な じ く と い う こ と を 申 す な り 。 (善 性 本 ﹃ 御 消 息 集 ﹄ 親 全 三 -七 〇 ) と 、 述 べ て い る 。 す な わ ち 、 真 実 信 心 の 人 に 開 け る 心 境 が 浄 土 で あ る と し て い る の で あ る 。 ま た 、 ﹃ 往 生 礼 讃 ﹄ の 文 は 、 ニ ツ テ ニ ツ テ ノ ニ ニ ニ ク ノ ヲ マ テ ニ 前 念 命 終 、 後 念 即 生 二 彼 国 ↓ 長 時 永 劫 常 受 二 元 為 法 楽 一。 乃 至 成 仏 ヲ ニ ス ニ ヤ ツ ト 不 三 遙 二 生 死 叩 豊 非 二 快 一 哉 。 応 二 知 ↓ . ( 親 全 一 ー 一 四 三 ) i61

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﹃ 教 行 信 証 ﹄ に お け る ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ (星 名 ) で あ る 。 親 鸞 は ﹃ 愚 禿 紗 ﹄ に 、 ス ル ハ ヲ ナ リ チ ル ノ ル ニ 信 二 受 本 願 一前 念 命 終 ﹁ 即 入 二 正 定 聚 之 数 こ 文 ﹁ 即 時 入 二 必 定 こ ル ニ ノ ト 文 ﹁ 又 名 二 必 定 菩 薩 一覚 ﹂ 文 、 ノ ナ リ 即 得 往 生 後 念 即 生 ( 親 全 二 ・ 漢 文 篇 ー 二 二 ) と 、 記 し て い る 。 前 念 ・ 後 念 の ﹁ 念 ﹂ を ﹃ 大 経 ﹄ 本 願 成 就 文 の ﹁ 信 の 一 念 ﹂ と す る の で あ る 。 す な わ ち ﹁ 命 終 ﹂ と は 本 願 を 信 受 す る 時 で あ る 。 ﹁ 捨 命 ﹂ も 同 じ く 現 生 の こ と で あ る 。 本 願 を 信 受 す る 時 に 、 そ の 人 は 人 中 の 分 陀 利 華 で あ り 、 観 音 勢 至 が そ の 親 友 知 識 と な る 。 そ れ ば か り で は な く 、 ﹁ 諸 仏 の 家 に 入 ら ん 、 即 ち 浄 土 こ れ な り ﹂ と い う こ と も ま た 、 現 生 の 利 益 で あ る 。 す な わ ち 、 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ に 入 る と は 、 信 心 に お け る 自 証 の 内 容 で あ る 。 親 鸞 は 、 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ に 、 ﹃ 浄 土 論 註 ﹄ 春 属 功 徳 の 釈 を 引 い て 、 浄 土 に 生 ま れ る も の は 、 阿 弥 陀 如 来 の 正 覚 の 華 よ り 化 生 す る 者 で あ り 、 皆 春 属 で あ る と す る 。 そ れ は ﹁ 同 ﹂ 念 仏 無 別 道 ﹂ の 故 で あ り 、 ﹁ 遠 く 通 ず る に 、 四 海 の 内 皆 兄 弟 と す る な り ﹂ と 示 し て い る 。 こ の よ う な 浄 土 を ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と い う 。 ﹁家 ﹂ と い う こ と が 、 衆 生 の 連 帯 性 ・ 同 朋 性 を 極 め て よ く 顕 わ し て い る の で あ る 。 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ と し て の 浄 土 は 、 ﹁ 同 一 念 仏 無 別 道 ﹂ の 大 行 大 信 で あ る 。 つ ま り 、 本 願 を 信 じ 念 仏 申 す こ と で あ る 。 そ れ が ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ に 生 ま れ 、 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ を 生 む こ と で あ る 。 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ に 生 ま れ た も の は さ ら に ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ を 生 む 。 ﹁ 諸 仏 の 家 ﹂ す な わ ち 真 実 の 浄 土 は 、 静 止 的 な 理 想 郷 で は な い 。 浄 土 に 生 ま れ る も の を 生 み 出 す は た ら き を な す 道 場 が 浄 土 で あ る 。 ︿ キ ー ワ ー ド ﹀ 諸 仏 の 家 、 親 鸞 、 ﹃ 十 住 毘 婆 沙 論 ﹄ 、 善 導 ﹃ 観 経 疏 ﹄ 、 ﹃ 教 行 信 証 ﹄ (大 谷 大 学 大 学 院 ) 162

参照

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