1099
1
.は じ め に2005
年のライブ・エンタテインメント5
ジャンル(音楽, 演劇,映画,スポーツ,遊園地・テーマパーク:図1
参照) の市場規模は1
兆1,150
億円[1
]と推計されており,化粧 品産業とほぼ匹敵するぐらいの市場規模を持っている.その 中でも,最も市場規模の大きい遊園地・テーマパークに比べ, 「音楽,演劇,映画」を合わせたジャンルは,ここ数年増加 傾向であり,ライブ・エンタテインメントの約半分の市場規 模を占め,今後注目すべき市場と考えられる.その音楽,演 劇,映画で真っ先にイメージできるのが芸能界である.近年 は,歌のみだけではなく,ドラマ,映画,舞台で活躍する芸 能人(タレント)が増えてきており,1
人のヒットタレント(商 品)を創造する事ができると,多くの利益が得られる事がよ く理解できる. しかしこのような芸能人に関する研究では,「芸能人の肖 像権の問題」「芸能人の人権問題」[2-5
]や「タレントの広告・CM
効果」[6-8
],「スポーツ界でのタレント性」[9-11
]等 の研究が多く,このようなライブ・エンタテインメント企業 が,どのようなメカニズムで,ヒットタレント(商品)を創 造しているかという,経営やマーケティングの視点で取り上 げられる事は,著者の調べた範囲では散見されなかった.ま た2003
年∼2008
年の5
年間に雑誌等[注1
]でタレントの 記事が取り扱われたのが599
件,芸能人の記事が537
件と多 いが,内容は,「ブログ,顔・身体,美容,海外進出,名前, 芸能人の過去・家族・子ども,恋愛,薬物,対談,プライバ シー,人気度ランキング,所得,占い,事件・被害,趣味, マナー,才能,宗教,噂・暴露,失言・発言,人間関係,副 業,パブリシティ,文化,キャッチコピー,転職,ライセン ス,キャラクター,発掘・スカウト,ファン等」が大半であ り,ライブ・エンタテインメント企業が行うヒットタレント 創造という商品開発等の経営やマーケティングの実態すらも 知られていないのが実状である. そこで本研究では,ライブ・エンタテインメント企業が行っ ているタレント創造に関する研究の意義を明示する事を第1
の目的とする.そしてライブ・エンタテインメント企業とし て持続的な成長を成し遂げているジャニーズ事務所のタレン トを事例として取り上げ,タレントが消費者に感性価値をい かに与え得るのか,その感性価値とはどのようなものなの か,どのような感性価値が調えば,消費者から支持が得られ るのかという感性価値の定量化,可視化を第2
の目的とす る.最後に,第1
,第2
の目的を明らかにする事によって, ライブ・エンタテインメント商品が生み出す感性価値に関す る,幅広いアイデアや議論を生み出す,又は積み上げるため の1
つの基礎を創る事を第3
の目的とする.2.
ライブ・エンタテインメント企業が行っているタレント 創造に関する研究の意義1999
年に発売された宇多田ヒカルの「First Love
」は,累 計出荷枚数が868
万枚という大量に売れた商品であり,現在 も国内アルバム売上げ第1
位の記録として残っている[12
]. 同様の商品にB
’z
のデビュー10
周年ベストアルバム「B
’z
The Best
“Pleasure
”」(累計売上590
万枚)と「B
’z The Best
“Treasure
”」(累計売上500
万枚)も年間アーティスト・トー タルセールスで365
億円という歴代1
位記録を作るほどの大 ヒットを創出している[13
].さらに上述のタレントは,超ライブ・エンタテインメント商品が生み出す感性価値に関する事例研究
丸山 一彦
富山短期大学経営情報学科CASE STUDY ON KANSEI VALUE OF
LIVE-ENTERTAINMENT PRODUCTS
Kazuhiko MARUYAMA
Toyama College, 444 Gankaiji, Toyama-shi, Toyama 930-0193, Japan
Abstract : A lot of enterprises are requesting the production system for which it appeals to the sensibility now. Therefore, all people’s
eyes are focused on the key word of “Customer Experience”. However, the experience model is not enough in the point of practical application. A concrete explanation of the idea how the enterprise should create customer experience value is insufficient. In this study, we thought “Customer Experience” to be “Entertainment value”. And, the Johnny’s theatrical agency that was the enterprise of excellent was taken up as an object of study. We consider the creation of “Entertainment value” by using the case with kansei value that the TV performer of Johnny’s creates.
Keywords : Customer experience, Entertainment value, Kansei value of Johnny’s TV performer
Received 2008.02.06 Accepted 2009.02.14
品や耐久消費財でも,エンタテインメント型になっている商 品が,ヒット商品に多く存在していると言え(例えば
iPod
,NINTENDO DS
,BILLY
’S BOOTCAMP
,dyson
掃除機,National
斜めドラム式洗濯機,SHARP
ヘルシオ等々),今 後のものづくり研究においても重要なキーワードであると考 える. 以上の観点から,エンタテインメント企業やエンタテイン メント商品を研究する事は,極めて重要であり,大きな意義 が存在すると示唆できる.3.
取り上げる事例企業の価値と本事例研究の意義 ヒットタレントを多く生み出している芸能プロダクション の1
つに,株式会社ジャニーズ事務所(以下ジャニーズ事務 所と記す)が存在する.2006
年度の年間シングル売上げラ ンキング[21
]を見ると,ジャニーズタレントが100
位内に26
曲がランキングし,上位5
位を2
位以外全て独占している (表1
).ちなみに2005
年度の年間シングル売上げ1
位は,2006
年度3
位にもランキングされている「青春アミーゴ」 であり,やはりジャニーズタレントであった.シングル以外 に,アルバム,DVD
,写真集,グッズ,コンサート・ミュー ジカル興行,TV
・映画出演料,ファンクラブ収入等を含め ると,莫大な売上げが推測できる. ジャニーズ事務所は,1962
(昭和37
)年6
月にジャニー喜 多川(本名:喜多川擴)によって創業された芸能プロダクショ ンである[22-34
].現在45
周年を迎え,多くの人気タレント が所属する企業となり,2006
年6
月に発表された「興行部門 申告所得全国ランキング」[35
]では,71.9
億円で第2
位であ り(第1
位は72
億円,2005
年のランキングでは71.9
億円で 第1
位であった),業界大手の老舗と並ぶ大手プロダクション と言える優良企業である.しかし多くの企業が多角化を行い, 色々な事業や色々なジャンルのタレントを創造し,現在の位 置を維持している中で,ジャニーズ事務所は「男性アイドル」 のみに特化したビジネスで,業界大手の老舗と並ぶ地位を確 立できているという,他に無い驚異の経営を行っている. 具体的には,ジャニーズ事務所は第1
号タレントである 「ジャニーズ」から最も新しいヒットタレント「KAT-TUN
」 大ヒットまではいかなくとも,ヒット商品を継続して何十年 も創出しているのも事実である. 製造業に限らず,サービス産業においてでも,ニーズの多 様化や複雑化が指摘されている現在で,このような大量需要 を生み出し,継続的なヒットを創り上げる事は,何かが優れ ている事であり,多くの企業が興味・関心を寄せる出来事と 言える.またタレントが提供している商品の中心は無形であ り,目で見る事ができず,触れる事もできない.また商品を 情報で提供されても,無形であるためイメージがしづらく, 事前に十分評価をする事が難しい.つまりタレントが提供し ている商品は,現在商品開発(サービスも含む)において注 目をされている「五感に訴える商品」「経験価値商品」「コト づくり商品」等[14-18
]と言え,多くの企業がこのような 商品を開発したく,ライブ・エンタテインメント企業以外の 企業にも十分活用できると言える. しかし第1
章でも述べたように,ライブ・エンタテインメ ント企業が,どのようなメカニズムで,ヒットタレント(商 品)を創造しているかという,経営やマーケティングの視点 での研究は,著者の調べた範囲では散見されなかった.これ には,日本ではエンタテインメントを演劇や娯楽と訳す事が 多く,才能や技芸と言われる特殊な総合芸術か水商売と捉え るため,マネジメントを考え,戦略的にビジネスするまでの も の で は な い と 捉 え て い る か ら と 考 え る. だ が 本 来 「entertainment
」とは,「人をもてなす事(もの),人を楽し ませる事(もの)」を意味するのであり[19
],そのように 考えるとエンタテインメント商品は,様々な企業にも共通す る商品を創造している事になり,他の企業に参考になるエン タテインメント商品やエンタテインメント企業を研究する事 は,十分に意義のある事と言える. またエンタテインメント商品は,顧客の感覚・感性に訴え る商品であり,多くの顧客の感性を揺さぶり,歓喜や感動を 与える事によってヒット商品となる.「エンタテインメント は,創造する世界であり,表現する世界であるため,感性を 抜きにして考えられない.『感性はエンタテインメントを科学 する要』である」[20
]と指摘されるように,エンタテイン メント商品が生み出す感性価値を研究する事も,今後の経営 やマーケティング研究に極めて大きな意味を持つと言える. このような認識の元,近年のヒット商品を考察すると,エ ンタテインメント要素の強い商品が多く散見され,生活必需 図1 ライブ・エンタテインメント5ジャンル市場規模 表1 2006年度年間シングル売上げランキング1101 まで,
45
年間同一ジャンルのヒットタレントを連続して大量 に創造してきた企業[36
]であり,他にこのような企業は 存在せず,他と比較する事のできない企業である. このように他と比較する事のできない優良企業であるジャ ニーズ事務所のタレントを事例として取り上げ,タレントが 消費者に感性価値をいかに与え得るのか,その感性価値とは どのようなものなのか,どのような感性価値が調えば,消費 者から支持が得られるのかという感性価値の定量化,可視化 を試みる事で,他のタレント・企業・ジャンル等を比較研究 する動機を生み出し,より普遍的な法則性に至るまで研究を 積み重ねるという発展に繋がっていく.その意義において も,たった1
社の事例研究であっても,本研究は今後このよ うな研究を積み重ね,深く掘り下げていく価値のある研究 テーマであるのかを示す基礎研究として意義があり,このよ うな基礎的な研究を基に,多くの研究者が本研究を発展させ ていく動機付けになるという価値を持っていると言える.4.
ジャニーズタレントが消費者に与える感性価値の分析 本章では,タレントが消費者に感性価値をいかに与え得る のか,その感性価値とはどのようなものなのか,どのような 感性価値が調えば,消費者から支持が得られるのかという感 性価値の定量化,可視化を,ライブ・エンタテインメント企 業として持続的な成長を成し遂げているジャニーズ事務所の タレントを事例として試みる.評価するタレントは,現在人 気の高い「SMAP
」「TOKIO
」「V6
」「嵐」「NEWS
」「関ジャ ニ∞」「KAT-TUN
」の7
グループである. なお,以降の調査結果が,一般的傾向としての可能性がど の程度存在しているかについては,別途さらなる研究が必要で ある.よって,以降の断定的に記述されている内容は,本調査 の評価タレントや対象者に限定して理解すべきものである.4.1
定性調査によるタレント評価の感性用語の抽出 まず定性データによる側面からジャニーズタレントの感性 価値を考察する.タレントを好きになる要素は,どのような 感性の側面であるのか,その要素の項目を抽出するため,地 方都市にある文科系の女子大生30
人に対して評価グリッド 調査[37
]を行った.評価グリッド調査を用いる理由は, 評価グリッド法は,パーソナルインタビューで用いられる事 の多い手法の1
つで,人間が「何を知覚して」,その知覚か ら「どのような理解をし」,そこに「どのような価値を見出 して」いるのか,という消費者が持つ評価構造を明らかにし, 視覚的に階層構造として表現する事ができる画期的な手法で あり,ジャニーズタレントを評価する構造が導出できる適切 な方法と考えたからである. 評 価 す る タ レ ント は,「SMAP
」「TOKIO
」「V6
」「 嵐 」 「NEWS
」「関ジャニ∞」「KAT-TUN
」の7
グループに所属 する計41
人である.調査には,写真付きのプロフィール資 料も提示し,各タレントがどのようなタレントであるのか, ある程度理解をしてもらい,評価をしてもらった.また評価 用語の抜けがないかを確認するため,評価グリッド調査の対 象者とは別の地方都市にある文科系の女子大生3
グループ (各5
∼6
人),計16
人に対して,ジャニーズタレントを評価 する項目について,グループ・インタビューも行った. 調査の結果,ジャニーズタレントに対する嗜好性(好き/ 嫌い)に影響する感性の評価項目は,「格好良い」「可愛い」「面 白い」「ギャップがある」「歌が上手」「優しそう」「頑張って いる」「頼りになりそう」「セクシー」「さわやか」の10
項目 が抽出された.また上位概念(潜在ニーズ)として,最終的 にジャニーズタレントによって満たされたい事は,「癒され たい」「ときめきたい」「楽しみたい」のキーワードであった.4.2
抽出された感性用語による主観的ポジショニング分析 定性調査によって抽出された感性用語を用いて,各タレン トがどのような位置づけになるか,主観的ポジショニング分 析を行い,考察する. ジャニーズタレントのイメージや特徴が良く紹介される 「Wink up
」「POTATO
」「Myojo
」「ポポロ」「Duet
」「オリ コンスタイル」「日経エンタテインメント」の雑誌の中で, 定性調査によって抽出された感性用語で評価されているもの を用いて,各タレントの特徴を主観的ポジショニングする と,図2
になる(各タレントを位置づける作業は,これらの 雑誌の情報を,10
人の地方都市にある文科系女子大生が相 談しながら解釈して,マップを作成した). どのような容姿の良さ,個性・性格の良さによって各タレ ントが特徴づけされるかをバランス良く考察するため,縦軸 には容姿の側面を,横軸には個性・性格の側面を取った.そ して完全な対になる意味の用語ではないが,縦軸は容姿の良 さの相反する二面性を表した「格好良さ」と「可愛さ」で, 横軸も個性・性格の良さの相反する二面性を表した「面白さ」 と「さわやかさ」で作成している.なお「SMAP
」「TOKIO
」 「V6
」「嵐」「NEWS
」「関ジャニ∞」「KAT-TUN
」の7
グルー プの中で,グループ全員の特徴が収集できたのは,「SMAP
」木村拓哉
草彅剛
中居正広
稲垣吾郎
香取慎吾
面白
�
格好良い
可愛い
�
�
�
�
図2 SMAPの主観的ポジショニングマップのみであったため,「
SMAP
」の結果を示す. 図2
を考察すると,「SMAP
」のメンバーは,性格や容姿 についてバランス良く構成されており,本定性調査で得られ た嗜好性(好き/嫌い)に影響する項目で,多様なニーズに 対応するグループである事が分かる.4.3
定量調査による客観的ポジショニング 次に定量データによる側面からジャニーズタレントの感性 価値を考察する.ジャニーズタレントを好きになる感性要素 を,客観的に又定量的に考察するため,地方都市にある文科 系の女子大生71
人と女子高校生100
人の計171
人に対して アンケート調査を行った.評価するタレントは,「SMAP
」 「TOKIO
」「V6
」「嵐」「NEWS
」「関ジャニ∞」「KAT-TUN
」 の7
グループに所属する計41
人で,定性調査によって抽出 された感性用語を用いて,全てのタレントを評価してもらっ た.評価の時には,評価グリッド調査の時に使用した写真付 きのプロフィール資料を用いて評価してもらった.アンケー トの一部を図3
に示す. この171
人のデータを用いて,各タレントのポジショニン グマップを作成するため,「格好良い」「可愛い」「面白い」 「ギャップがある」「優しそう」「頑張っている」「頼りになり そう」「セクシー」「さわやか」の評価項目を因子分析し,得 られた固有値,因子負荷量等の統計量を表2
に示す.第3
因 子までで累積寄与率が81.5%
であり,この3
因子で元の9
変 数の情報量が約8
割説明できている.縮約された3
つの因子 の特徴を理解するため,表2
に示す因子負荷量の高い項目を 元に,因子の解釈を行うと,第1
因子は「個性・性格の良さ」, 第2
因子は「セクシー+格好良さ」,第3
因子は「可愛い」, と命名できる.この3
因子の因子得点をタレントごとに平均 し,それを代表点としてプロットしたものが,図4
∼6
のポ ジショニングマップである.また3
因子の因子得点を説明変 数,「好き」の評価を目的変数として,重回帰分析した結果 が表3
である. 表3
より,タレントに対する嗜好性(好き/嫌い)に最も 表2 因子分析の結果 表3 重回帰分析の結果 香取慎吾 長野博 長瀬智也 錦戸亮 赤西仁 草野博紀 草彅剛 稲垣五郎 相葉雅紀 田口淳之介 田中聖 渋谷すばる 横山裕 森田剛 桜井翔 松本潤 松岡昌宏 村上信五 木村拓哉 手越裕也 岡田准一 山口達也 山下智久 小山慶一郎 安田章大 大野智 大倉忠義 増田貴久 城島茂 坂本昌行 国分太一 加藤成亮 内博貴 中居正広 井ノ原快彦 二ノ宮和也 亀梨和也 丸山隆平 中丸雄一 上田竜也 三宅健 ‑1 .1 ‑0 .7 ‑0 .2 0.2 0.7 1.1 ‑0 .9 ‑0.5 ‑0 .1 0.3 0.7 1.1 因子1:個性・性格の良さ SMAP TOKYO V6 嵐 NEWS 関ジャニ∞ KAT‑TA N 因子2�セクシ�+格好良 い 図4 ポジショニングマップ(因子1と因子2) 三宅健 上田竜也 中丸雄一 丸山隆平 井ノ原快彦 中居正広 内博貴 加藤成亮 国分太一 坂本昌行 城島茂 増田貴久 大倉忠義 小山慶一郎 山下智久 山口達也 手越裕也 木村拓哉 村上信五 松岡昌宏 松本潤 桜井翔 森田剛 横山裕 渋谷すばる 田中聖 田口淳之介 相葉雅紀 稲垣五郎 草彅剛 草野博紀 赤西仁 錦戸亮 長瀬智也 長野博 香取慎吾 ‑ 1.4 ‑ 0.9 ‑ 0.4 0.1 0.6 1.1 ‑ 0.9 ‑ 0.5 ‑ 0.1 0.3 0.7 1.1 SMAP TOKYO V6 嵐 NEWS 関ジャニ∞ KAT‑TA N 因子3�可愛い 因子1:個性・性格の良さ 大野智 亀梨和也 安田章大 岡田准一 二ノ宮和也 図5 ポジショニングマップ(因子1と因子3) 図3 調査票の一部1103 影響する感性要素は,第
1
因子の「個性・性格の良さ」であ り,その次に影響する第2
,第3
因子の容姿の2
側面はほぼ 同等の影響度である.図4
∼6
を見ると,近年デビューした グループほど,性格・個性の軸でかなりばらついており,特 に容姿に関する軸(因子2
と因子3
)では,グループ内で重 なるようなタレントは存在しない.また図5
を考察すると, 結果的に現在人気の高いグループは,ほぼ右側のエリアに位 置づけされており,個性・性格で高評価を得る事が重要と言 える.そしてSMAP
は,第1
因子∼第3
因子までの全てに おいて,バランス良く配置されたタレントが揃っている事が 良く理解できる. 以上のように,ジャニーズ事務所で多くのヒットタレント が創造できている理由は,消費者のタレントに対する嗜好性 (好き/嫌い)に影響する個性・性格で,工夫をしているか らと考える.そしてその事が,多様なタイプのタレントを揃 え,様々なファンを獲得する事につながっていると考える.5.
結 語 本研究では,ライブ・エンタテインメント企業が行ってい るタレント創造戦略に焦点を当て,ライブ・エンタテインメ ント企業として持続的な成長を成し遂げているジャニーズ事 務所のタレント感性価値に関する実態調査を通じて,感性価 値の成立要素を抽出し,定量化,可視化を試み,以下の事を 明らかにした. (1
)エンタテインメント企業やエンタテインメント商品を研 究する事は,極めて重要であり,大きな意義が存在する. (2
)消費者のタレントに対する嗜好性(好き/嫌い)に影響 する要素は,容姿よりも個性・性格である. (3
)個性・性格を構成する感性価値は,「頑張り屋」「頼もし い」「優しそう」「面白い」「さわやか」である. (4
)近年デビューしたグループほど,グループを構成するタ レントの個性・性格評価でばらつきが大きい. (5
)ヒットタレント創造戦略の1
つの基礎を得た. 以上のように,本研究の目的を明らかにする事によって, ライブ・エンタテインメント商品の感性価値に関する,幅広 いアイデアや議論を生み出す,又は積み上げるための1
つの 基礎を示す事ができた.また本研究は芸能プロダクションの 一企業を考察したのみであるが,エンタテインメント企業の 「感性価値創造」に関する,重要なフレームワークが得られ たと考える. 但し,本研究はライブ・エンタテインメント商品に関する 基礎的な研究やジャニーズ事務所1
社のみを取り上げた事例 研究に絞ったため,以下のような点で課題が残っており,今 後の研究で解明したいと考えている. ①ジャニーズタレント以外やジャニーズ事務所以外との比 較研究が無く,ジャニーズタレント独自の特徴が明示さ れていない. ②売れるタレントを創造するための具体的な方策やシステ ムまでは導出されていない. ③導出した結果と感性価値の理論に関する考察が詳細に行 われていない. ④本研究結果をライブ・エンタテインメント産業に一般化 できる可能性に関する研究が十分ではない. 参 考 文 献 [1]ぴあ総合研究所株式会社編:エンタテインメント白書 2006,ぴあ株式会社,2006. [2]山上和則先生還暦記念論文集刊行会編:判例ライセンス 法,発明協会,2001. [3]清水幸雄:芸能人のパブリシティー,駿河台法学,6,1, pp.77-90,1992. [4]三浦正広:芸能タレントのプライバシーとそのパブリシ ティ価値,岡山商大社会総合研究所報,20,pp.179-191, 1999. [5]森宗崇:日本のマスコミに関する一考察-「スキャンダル」 「アイドル」「タレント」をキー・タームとして,東亜大学 研究論叢,11,2,pp.33-41,1987. [6]北原明彦,横田澄司,渡辺裕一:パーソナル・インフルエ ンスと期待される製品情報および広告内容(その2)— 特 に製品情報に対する広告タレントの効果,日本社会心理学 会第25回大会発表要旨集,1984. [7]中嶋純子,北原明彦,会田和子:広告タレントの属性に関 する研究(1),日本社会心理学会第24回大会発表要旨集, 1983. [8]北原明彦,会田和子,中嶋純子:広告タレントの属性に関 する研究(2),日本社会心理学会第24回大会発表要旨集, 1983. [9]徳永政夫,鯨吉夫,磯貝浩久,冨山浩三:野球におけるタ レント発掘に関する研究,北九州大学開学五十周年記念論 文集,pp.329-352,1997. [10]高岡享,寺島善一:スポーツタレントの発掘とその育成法 の国際比較研究,明治大学人文科学研究所紀要,35, pp.61-85,1994. [11]伊坂忠夫,石井喜八:中国におけるスポーツタレント発掘 三宅健 上田竜也 丸山隆平 二ノ宮和也 井ノ原快彦 中居正広 内博貴 加藤成亮 国分太一 坂本昌行 城島茂 増田貴久 大倉忠義 大野智 安田章大 山下智久 山口達也 岡田准一 手越裕也 木村拓哉 村上信五 松岡昌宏 松本潤 桜井翔 森田剛 横山裕 田中聖 田口淳之介 相葉雅紀 稲垣五郎 草彅剛 草野博紀 赤西仁 錦戸亮 長瀬智也 長野博 香取慎吾 ‑ 1.4 ‑ 0.9 ‑ 0.4 0.1 0.6 1.1 ‑ 1.1 ‑ 0.7 ‑ 0.2 0.2 0.7 1.1 SMAP TOKYO V6 嵐 NEWS 関ジャニ∞ KAT‑ TAN 中丸雄一 亀梨和也 小山慶一郎 渋谷すばる 因子2:セクシー+格好良さ 因子3�可愛 い 図6 ポジショニングマップ(因子2と因子3)法に関する文献研究,日本体育大学体育研究所所報,17, pp.3-16,1992.
[12] EMI MUSIC JAPAN:アーティスト情報,
http://www.emimusic.jp/domestic/artists/utada/index_j.htm/, 2006.
[13] VERMILLON RECORDS: B’z Official website, http://www.bz-vermillion.com/,2006. [14]電通「経験経済」研究会訳:経験経済,流通科学大学出版, 2000. [15]嶋村和恵,広瀬盛一訳:経験価値マーケティング,ダイヤ モンド社,2000. [16]堀内圭子:「快楽消費」の追究,白桃書房,2001. [17]常盤文克:コトづくりのちから,日経BP社,2006. [18]恩蔵直人,平木いくみ,井上淳子,石田大典訳:感情マー ケティング,千倉書房,2007.
[19] A.S. Hornby: The Oxford Advanced Learner’s Dictionary, Oxford University Press, 2005.
[20]椎塚久雄:エンタテインメント感性特集号によせて,感性 工学研究論文集,5,3,p.1,2005.
[21] J-POP MUSIC PROGRAM FAN SITE:2006年間シング ルランキングTOP100, http://www.musictvprogram.com/corner-ranking-2006.html/, 2007. [22]ジャニーズ:ジャニーズの逆襲,鹿砦社,1989. [23]平本淳也:ジャニーズのすべて3,鹿砦社,1996. [24]矢崎葉子:ジャニーズ輪廻論,太田出版,1996. [25]本多圭:ジャニーズ帝国崩壊,鹿砦社,1997. [26]江木俊夫:ジャニー喜多川さんを知っていますか,KKベ ストセラーズ,1997. [27]鹿砦社編集部:ジャニーズの憂鬱,鹿砦社,1998. [28]鹿砦社編集部:ジャニーズの欲望,鹿砦社,1998. [29]平本淳也:ジャニーズ解読書,星雲社,1999. [30]ジャニーズ特別取材班編:ジャニーズの躓き,鹿砦社, 1999. [31]ジャニーズ特別取材班編:スキャンダルの中のジャニー ズ,鹿砦社,1999. [32]西条昇:ジャニーズお笑い進化論,大和書房,1999. [33]天馬飛呂志:不滅のアイドル王国,ブックマン社,2002. [34]小 菅 宏:「 ジ ャ ニ ー 喜 多 川 」 の 戦 略 と 戦 術, 講 談 社, 2007. [35] HP&J:興行部門申告所得全国ランキング, http://www.machineworks.co.uk/whg/2006/07/post_2729.html/, 2006. [36]ジャニーズ研究会:新版ジャニーズOB大全,鹿砦社, 2006. [37]神田範明編,大藤正,岡本眞一,今野勤,長沢伸也,丸山 一彦:商品企画七つ道具実践シリーズ第2巻,日科技連出 版社,2000. 注
[1]著者が次の「The Wall Street Journal,Aera,AFF,Asia Japan journal,Boss,Business data,Business risk man-agement,Card wave Facta,Front,Harvard business re-view,ROCKIN’ON JAPAN,Sapio,SPA!,The21, Themis,Valiant,Venture link,Verdad,Web & pub-lishing編集会議,Yomiuri weekly,Zaiten,エコノミスト, エスクァイア日本版,エルネオス,こども未来,さぽーと, サライ,サンデ-毎日,ジャズ批評,ストレングス&コンディ ショニング,テアトロ,ばんぶう,マナビィ,まなぶ,み んなのねがい,音楽現代,音楽主義,企業と人材,経済界, 月刊公論,月刊人事労務,月刊日本語,現代,語文,厚生 労働,国際人流,財界九州,児童心理,自由,週刊ダイヤ モンド,週刊ポスト,週刊現代,週刊新潮,週刊朝日,週 刊 東 洋 経 済, 週 刊 文 春, 諸 君!, 新・ 調 査 情 報 passingtime,新潮45,新聞研究,人材教育,人事マネジ メント,人民中国,宣伝会議,選択,総合教育技術,草思, 速報先見経済,第三文明,中央公論,潮,東京人,読売ウ イークリー,日経ビジネスassocie,日経マネー,日経広 告研究所報,日経消費マイニング,婦人公論,文芸春秋, 編集会議,保険展望,放送研究と調査,本の話,論座」の 雑誌の中から独自に集計分析したもの. 丸山 一彦(正会員) 富山短期大学 経営情報学科 教授. 成城大学大学院経済学研究科経営学専攻博士 課程を修了[博士(経済学)]し,成城大学 経済研究所研究員,明治大学理工学部兼任講 師を経て,現在に至る.専門は,新商品開発 マネジメント,市場戦略論.主な所属学会は,日本商業学会,マー ケティング・サイエンス学会,日本消費者行動研究学会,日本 品質管理学会.