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香川の社寺林(3)創祀年代と社叢の構成樹種について-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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(1)

香 川 の 社 寺 林(3)

創祀年代と社叢の構成樹種について

新 居 正 敏

〒761−24 香川県綾歌郡綾歌町東熊323綾歌町立東熊小学校

Precinct woods atShintoShrinesandBuddhist templesinKagawaPrefecture

(3)FoundedagesofShrinesand speciescomposition

MasatosiNii,肋riゐ弘mαPr去れα′ツSc/乙00g,Aγα弘亡α−C九0,花ノー24,舟α花 は じ め に 先の香川生物19号および20号(新居,1992, 1993)で,県内382社寺林の調査法とその結果 の概要および,412社寺林に.ついて,樹林の階 層構造と樹種の分布を報告した。 今回,12社寺林の調査を追加した。本県にお ける神社の創杷(遷座)年代が,1200年以前か ら200年代以前にかけて社叢の植生に差異が見 られる。したがって,社叢を創杷(遷座)年代 のうえからとらえていくことは,本県の原植生 を解析していくうえで,また,遷移の基礎デー タを得ることからも意味がある。 そこで,第」・段階として,これまでの調査と あわせて,創杷(遷座)年代の明らかな73社に ついて,年代別の主な構成樹種の被度等をまと めたので報告する。 なお,この報告をまとめるに・あたって,ご助 言や資料の提供をいただいた末広喜代一・(香川 大学教育学部)・和気俊郎(香川県大手前高等 (中)学校)両氏に対し心より感謝の意を表する。 方 法 調査した424社寺林のうち,創杷(遷座,奉 杷,勧請を含む。以下同じ)年代の明らかな神 社104社を選び,その社叢の高木(上層)また は,それについで高木(上層)に近い(亜高木一 中層)樹種について,被虔の程度を,多い(3), ふつう(2),少ない(1)の3階級とし,その樹木 の被度3・2・1の数字を合計して多い順に並 べたところ,アラカシ・クスノキ・サカキ…… 等92種であった。そのうち多い順に50種を選ん だのが表1の主な樹種である。 創杷年代の明らかな神社でも,殆ど社叢が形 成されていないものや,極めて貧弱な社叢もあ るが,上記の104社は一応社叢が形成されてい る神社である。104社のうち比較的社叢の発達 している73社を取りあげて,創杷年代の古い順 に並べて,上記の50種について,被度多い(Ⅱ), ふつう(Ⅰ),少ない(十)で表した(表1−・1,

2,3)。この被度ほ,新居(1992)のP79の

植生調査表に.もとづいたものではなく,社凝全 体を概観して,3階級で表したものである。し たがって,社叢の規模が異なる場合は,同じ階 級でも被度や個体数は同じでないので比較する ことほできない。杜若全体で,およそ50%以上 を占めている場合を(Ⅱ),およそ50%以下10% 程度を(Ⅰ),高木(上層)または,それに近い 亜高木(中層)が1本以上認められる場合を(十) として表した。社叢の構成樹種によっては,高 木(上層)でも樹高が異なるので,高木(上層) の高さを他の社叢と比較することほできない。 神社の創杷年代(1993年より何年前)ほ,1200

年以上11社,1100年以上6社,1000年以上9社,

900年以上6社,800年以上6社,700年以上

一25−

(2)

● ● r.こ・﹂ 、 − .\ ● ●

ヽ・・、

ー 、 ′ ∴q ヽ − ′・ノ / し \ ヽ ′−■/ ノ ′ − \ + 図1… 表1の73社の分布 以下,創杷年代の古い順に多い樹種ほ次の通 りであった。 1100年以上−−−クスノキ,アラカシ,クロガ ネモチ,サカキ,ヒノキ,ヤ プニッケイ,ツブラジイ等 1000年以上−アラカシ,ツプラジイ,ヒノ キ,ヤブツバキ,クロガネモ チ,スギ等 900年以上−アラカシ,クスノキ,ヤプニ ッケイ,エノキ,ホルトノキ, ウバメガシ等 800年以上−■アラカシ,ヒノキ,スギ,ア ベマキ,モッコク,ツプラジ イ,クスノキ,サカキ等 700年以上−アラカシ,ツブラジイ,サカ キ,ヒノキ,ウラジロガシ, モッコク,クスノキ等

6社,600年以上5社,500年以上4社,400

年以上9社,300年以上8社,200年以上3社

を取りあげた。 神社に.よっては,創杷年代が2000∼3000年以 上昔のものもあるが,それらはすべて1200年以 上とした。 近年,タケの類(モウソウチク・ハチク・マ ダケ等)が社叢に多く侵入している所が多く認 められたが,今回の調査では省いた。また,栽 植と思われるイチョウ,オガタマノキ,サカキ の−・部等は除いたが,社叢を形成している樹種 と見られるスギ・ヒノキ等は調査対象とした。

結果 と考察

1200年以上前に創杷された神社では,アラカ シ,サカキ,ツブラジイ,スギ・ヒノキ(栽植 と思われるが確かなデ・一夕を得ることはできな

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表1−1.創立年代と主な樹種 § § § 8 § § 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 圏 8 園 国 8 8 8 8 モ ヤマキ・モ ・エ・ノキ アカメガシワ ソヨゴ ホ′レナノキ −・27−

(4)

九 ′創立年代 (年前) 主な樹種 § u § 且 8 且 九 8 色 九 8 貝 九 8 且 九 8 艮 九 8 色 八 8 巳 八 8 且 八 8 巳 八 8 員 八 8 白 八 8 員 七 8 且 七 8 色 七 8 且 亭 七 8 且 七 8 員 六 8 a 六 8 且 六 8 a 六 8 8 六 8 巳 クロマツ ヤマモモ コナラ シラカシ′ カナメモチ ■7カメガ㌧/ワ ソヨゴ サカキ タカノツメ カクレミノ

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表1−3.創立年代と主な樹種 五 五 五 五 四 四 四 四 四 四 四 四 四 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 固 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 8 モ + + アカマツ クロ■マツ ヤマモモ コナラ シラカ・ン アキニレ カナメモチ アカメガシワ モチノキ ソヨゴ サカキ タカノツメ −29−

(6)

等 400年以上【 アラカシ,ヒノキ,モッコク, サカキ,ヤブツバキ,ヤマモ モ,クスノキ等 300年以上−−アラカシ,クスノキ,アカマ ツ,アベマキ,クロマツ,ク ロガネモチ等 200年以上−アラカシ,アベマキ,■7カマ ツ,コナラ,ネズミサシ,ハ ゼノキ,ウバメガシ等 創杷年代の古い神社には,クスノキ科(クス ノキ,カゴノキ,ヤプニッケイ,シロダモ)や, サカキ,モッコク,ヤブツバキ,カクレミノ, スギ,ヒノキ等が多くを占めていた。それにひ きかえ比較的新しく創杷された神社には,■7カ マツ,コナラ,アベマキ,ネズミサシ,ヤマ・モ モ等が比較的多くを占めていた。タブノキは, 700〉900年前の神社に多く見られた。この結果 ほ,植物遷移や,暖温帯の麻植生の構成樹種を 解析する基礎データの−・部として今後の考察に 供することができる。本県の原植生の構成樹種 (海洋∼平野部)と見られるツブラジイ,タブ ノキ,カゴノキについて,創杷年代の古いもの (1200年以前)から100年毎の被度の平均をと って指数被度として表したものが図2である。 ツブラジイほ,400年以前の神社に多くを占め ており,タブノキは,700年以前の神社に多く, カゴノキほ,400年以前から古い神社忙なるほ ど多い債向が見られた。また,二次林の構成樹 種であるアカマツ,ネズミサシ ,コナラ,アベ マキのうち,アカマツ,ネズミサシの指数被度 を,創杷年代別に表したのが図3である。創杷 年代の新しい神社に多い。アカマツは,近年マ ックイムシの被害で急激に枯死しているために, 本来の樹林として扱うことには問題が残るが, 被害の詳細なデ、一夕は得ていないのでここでは 割愛する。 2 ︵指数︶ 5 1 00 120011001∝IO 900 800 700 600 500 4∝) 300 200 (創杷年代の高さ,年以前) 図2.創杷年代(年以前)と指数 殆どの神社に成育していることがうかがえる(新

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2.浪打八幡神社(詫間町) 604年勧請 4.石清水八幡神社(白鳥町)143年奉杷

6,鶴 尾 神 社(高松市)1691年遷座

図4.1.雷八幡神社(三木町) 688年創杷, 3.曲木神社(綾上町) 899年創杷, 5.河内神社(山本町)1592年遷座, −31−

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きい樹林の形成ほあまり見られず,むしろ独立 樹または,小面積の社叢の構成樹種となってい ることが多い。これは,種子(果実)がヒヨド リ等の野鳥が好む所から県内全域に種子が散布 されて,その結果,点々と分布しているようで あるが確かなデー・タは得ていない。 ヤブツバキ,アセビ,シャシヤソボ,ネジキ, ネズミモチ等は,亜高木(中層),低木(下層) に多い樹種で,高木(上層)またほ,高木(上 層)に近い亜高木(中層)としてほ,被度,個 体数ともに少ない。 シラカシは,琴平町の大歳神社の他数社㌢こ分 布しているが,創杷年代が不詳のため,今回の 記載からほずしたが,カシの類の一・種として表 に加え.た。その他のカシの類(アラカシ,ウラ ジロガシ,ツクバネガシ,シリブカガシ)は, 創杷年代による差異は■あまり認められなかった。 アカガシも数社に.分布が見られたが,創杷年 代が不詳のため記戟対象外とした(アカガシの 場合は,、特に標高との関係がある)。 摘 要 香川県内424社寺林の植生調査にもとづいて 創杷年代の明らかな神社の社叢の高木(上層) と,これに.近二い亜高木(中層)の被度を,3階 級に分けて1創杷年代(年代の古いものから新 しいものへ)と社叢の構成樹種との関係を解析 する基礎デー・タをまとめた。 その結果,創杷年代の古い社厳には,本県の ノキ,カシ類(シリブカガシ等),ヤブツバキ が比較的多く見られたが年代順にはっきりした 差異はあまり認められなかった。新しい社叢に は,アカマツ,コナラ,アベマキ等の二次林を 形成する樹種が多く見られ,年代をさかのぼる につれて,アカマツや落葉広葉樹林から照葉樹 林へと変化の傾向が見られるが結論を出すまで のデータは得られなかった。1アラカシ,クスノ キのように.どの年代の社叢に.も多く分布してい る樹種もあった。栽植と思われるスギ・ヒノキ は,どの年代の社叢にも多く見られた。個体数 は多かったが,高木(上層)または,これに近 い亜高木(中層)では少なかったものに,ネズ ミモチ,ヒサカキ,シャシヤソボ,ネジキ,ヤ

ブツバキ,カクレミノ等があった。

タケ類(モウソウチク,ハチク,マダケ等) が社叢に多く侵入しているが,今後,調査の必 要がある。

引 用 文 献

新居正敏.1992.香川の社寺林(1)調査法と結 果の概要.香川生物(19):75−84. .1993.香川の社寺林(2)樹林の階層 構造と樹種の分布について.香川生物(20): 11−20. 香川県神職会.1938.香川県神社史.(上)442 pp.香川県神職会. 1938.香川県神社史.(下)508 pp.香川県神職会.

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