高等学校用 「オー ラル ・コミュニケ∵シ ョン A」
教科書 における依頼表現の特徴
‑ 談話分析 の視点か ら‑ *)
北海学園大学 教授 (人文学部) 北海道薬科大学 教授
北星学園大学 助教授 (社会福祉学部) 札幌大学 助教授 (経営学部)
小樽商科大学 助教授 (言語セ ンター)
哲翠子彦彦
慶智敏
野田坂田林
岡吉早尾小
序 :論点について
本稿 は二重の目標 を達 しようとす るものであるO 目標 の第‑ は,談話分析の実践的過程 を示す ことであ り, その第二 は,談話分析の方法 を,わが国における外国語 としての英語教育 に関連づ けて,何等かの意義 を兄いだす ことである。
第一の目標 は,本稿 における論述全体 によって達せ られ るもの と信ず るが,第二の目標 に関 し ては,外国語教育の多面性 を考慮すれば,分析 の対象 を限定せ ざるを得ないのは言を侯たない。
我々は教科書 その ものを,ある意味で,談話の現実体,すなわちテクス トと見なすべ きであると 考 えるのであるが,本稿 は, そのような意味でのテクス ト全体 を対象 とするものではない。なぜ ならば,教科書 は,教材 として,教材論の視点か らの分析 を必要 とし,それは,明 らかに教育学 全体の枠組 みの中に位置づ けて行われ るべ き分析だか らである。
さて,一般 に理解 されているところ,英語の教科書 は,読解力の養成 ・文法の理解 ・文章表現 力の養成 を主眼 として,それに,種々の補足的要素 ‑ 練習問題 ・語桑 ・発音の表示 など‑ が 付 け加 えられている.本稿の対象 とする高等学校用オーラル ・コミュニケーション
A
の教科書 に おいて も同様である。従 って, この科 目の達成 しようとする目標 に照 らして,主眼 となるべ き素 材 と補足的要素 とを弁別す ることが可能である。我々 は必ず しも補足的要素の重要度が低い とは 考 えないないのであるが,全体 を通 して主眼 をどの ようにして提示するかに,教科書 それぞれの 特徴が現れ ることが認 められ る。本稿 の対象 としては,その意味 における中心的な部分 に焦点 を 当てて,分析 を試みるものである。ここで,本題 に立 ち入 るに先だって,「オーラル・コ ミュニケー ション
A
」という科 目について, 若干の付言が必要であろう。文部省 は昭和
6 2
年教育課程審議会答申を受 けて,外国語 (英語)について も学習指導要領 の改 訂 を行 った。 この答申は「国際化の進展 に対応 した,国際社会で生 きるために必要な資質 を養い,コ ミュニケーション能力 を養成 し,国際理解の基礎 を培 う」必要 を強調す るものであったO これ を受 けた高等学校改訂指導要領
( 1 9 9 4
年度 より学年進行 をもって実施)1)によって,「オーラル ・ コ ミュニケーションA/B/C
」の三科 目が新たに設 けられた。 これ らは,高等学校の課程 にお いて,話 し言葉 としての英語 によるコ ミュニケーション能力の育成 を第一の目標 として掲 げるも のである。 これ ら,三科 目は,A/B/C
の順 に,それぞれ「自分の考 えや感情 を表現する能力」の養成,「聴解能力」の養成,「整理 ・発表 ・話合いの能力」の養成が,その目標である。 そして, 高等学校の生徒 は, これ ら三科 目の少な くともどれか‑科 目を履修す ることが要請 され ることに なった。 この様 に,言語運用の能力 を三分野に分 ける科 目編成 は,既 に,中学校 の指導要領 にお いて 「話す こと」 と 「聞 くこと」の領域 を独立 した二つの領域 として指導す ることによ り,話 し 言葉 としての英語 コミュニケーション能力の向上の実現 を図ろうとした方針 を受 け継 いだ もので ある。
この様 な指導要領の方針 に従 って,オーラル・コミュニケーション
A
[以下,OCA
と略称]の 教科書が編纂 され,文部省の検定 を経て,一般 に利用 され ることになった。我々が検討の対象 と した ものは,それ らのすべてで,1 9
種奨 2)にのぼる。これ らは3‑1 4
名の編著者 によるもので, 一種類 を除 き,母語話者が編著者 に加わっているのが普通である。母語話者が校閲にのみ携わっ ている例が一種類 あるが,最大3
名の母語話者が参加 している。それぞれの レッスンの数 は,慕 大35
課,最 も少ない もので1 2
課である。 この最少のレッスン数 は, レッスンに匹敵す る補助的 な教材が加 えられているので,実質 はこれ より多い筈である。 これを除いて最 も少ないレッスン 数 は1 5
課である。また,これ らのレッスンをユニ ッ トまたはパーツにまとめている教科書が約辛 数( 1
1種類)である。レッスンまたはユニ ッ トの組立方 に,編著者の方針が現れている。言語表現の形式,言語表現 機能,言語使用の場面の三つの観点の どれによ り多 くの注意が払われているかをみると,使用場 面 (シチュエーション)によるレッスンの組立てが過半数
( 1 2
種)である。 もちろん,それぞれ の場面での言語機能 ‑ 例 えば,挨拶 ・忠告 ・指図な ど‑ が含 まれ,それ らが英語で どのよう に表現 され るかに及ぶのであるが, OCA
教科書の編集者が よ り具体的な言語行為 をイメージして いるとい う傾向を認 めてよいのか もしれない。それぞれの レッスンあるいはユニ ッ トの組立ては, ダイアログを基本 として,様々な練習課題 が与 えられているのが普通である。 どのような練習上の課題が付随 していて も,基本 ダイアログ 抜 きにレッスンが組 み立て られていることはない。つ まり,ダイアログが教材の中心で,最低の 必修 内容 なのであ り, それを基本 として,練習課題 を通 じてよ り多 くの表現形式 を身 につけさせ る,あるいは,聴解力 を増強 させ る,実用的な語桑 を増やす工夫 を加 える,な どの多様 な編集上 の努力がなされている0
高等学校用 「オーラル ・コミュニケーション
A
」教科書 における依頼表現 の特徴この ようにして,我々は,1
9
種類のOCA教科書の全てのレッスンのダイアログ部 3)
について, 談話分析的観点か ら考察 を加 えることにした。 この様 な視点 とは,具体的な例 として言 えば,吹 のような事項 になるであろう :1)発話 を言い切 っているか( i nc o mpl e t e ne s so fs e nt e nc e s ) , 2)
ダイアログにおける話者の交替( t ur n‑ t aki ng) , 3)
繰 り返 し( s t r uc t ur a lr e pe t i t i o n) , 4)
栄 話の語数( qua nt i t yo fut t e r a nc e s ) , 5)
談話の標識や注意喚起の信号( di s c o ur s emar ke r &
a t t e nt i o ns i gnal s 4
)), 6)文体 の適切 さ ( f o r malo rc a s uals t yl e
), 7)
ジャンルによるテクス トの型( ge ne r i ct e xtpa t t e r ns ) , 8)
隣接ペア( ad j a c e nc ypai r s )
の生起, 9)
その他5)。 これ らの全てについて検討 をすすめてきたのであるが,本稿 においては,主 として 「文体の適切 さ」ない しは 「自然度
」( a ut he nt i c i t y) 6 )
を依頼表現( s pe e c hf unc t i ono fr e qu e s t )
との関連 におい て考察 し,その結果 を論 じることにす る。Ⅰ.分析の方法
本稿 において 「依頼」とい うのは,表現の形式 を問わず,機能 ‑ すなわち,言語行為理論上, いわゆる,発語媒介行為 としての行動 を聞 き手か ら引 き出すような機能7),そのような発語内の力 をもつ もの と緩やかに解釈 した言語機能
( s pe e c hf unc t i o n)
についていうのである。 この様 な意 味で話 し手が相手 に対 して行 う依頼行為 としての言語表現が対象である。 もちろん,対人的に依 頼 を行 う行為 は,言語以外の手段 によるもの も当然あ り得 る。 また,言語行為 として も,文書 に よる依頼 もあるが, これ は時間的な直接性 に欠 ける。本稿 における 「依頼」 というのは,話 し手 と聞 き手が同 じ時間的 ・空間的場 にあって,直接 に話 しか け,聞 くという行為 を通 じて,話 し手 が聞 き手か らの行為 による反応 を喚起す るものである。要するに,聞 き手が話 し手の言語行為 に よって行動 を直接的に起 こすか どうかを区別の基準 とする。例 えば,(1‑ 1)J us tc al lmeJ e nni e. (1)
8)
(1‑2)Co ul dyo ut e l lmet hewa yt ot heCi t yHo t e l ? ( 2 0 9 ) (1‑3)To moko,yous t a ndt ot her i ghto fYu j i . (7)
(1‑4)Ⅰ ' dl i kes o mef l owe r s .
(61)(1‑5)He l l o,ma yls pe akt oPat ,pl e a s e ? ( 66) (1‑ 6) Pl e as epa s st hes o ys a uc e . ( 2 8 )
のような例文 において, (
1‑ 6)
では,発話 に対 して,同席 している人が何 も言わないで,醤油 の容器 を手渡すだけであって も,問題がない場合があ り,直ちに醤油の瓶 を手渡す行為が第一義 的に求められているO同 じ事 は (1‑3)
の場合 も同様であろうOいろいろな場面が考 えられる が,大勢で集合写真 を撮影する場合の位置の取 り方が問題であれば, トモコはユウジの隣へ移動 するだけでよいのであるQしか し, (
1‑ 2)
においては,直 ちに求 められているのは言葉 による指示 という言語行為であ る。道案内 とい う言語的反応 は,発語媒介行為であるか ら,言語行為が聞 き手の直接的第一義的反応 としての行動である。同様 に,(1‑ 1)において も,初対面の堅苦 しさを解 きほ ぐすために, 名前の親 しみの こもった呼び方 を要求 しているので,聞 き手が 「ジェニー」 と呼びかけるとい う 言語行為が直接的第一義的な反応でなければな らないO この様 に,単 なる動作 という意味での行 動がな くて も,言葉 による指示や呼び掛 けを行動 と見 なして, これ らを依頼表現の考察の資料 に 加 えることにす る。
(1‑
4)
および (1‑5)
においては,何等かの言葉 による反応が伴 う場合が多いが,買物 の 場面で 「花 を下 さい。」と発話す るな らば,第一義的に求め られている聞 き手の反応 は,肯定的 に は,花 を売 ることである。 また, (1‑ 5)
のように電話 をかけているいるとすれば,本人であれ ば言語的な反応 を示す ことが重要であ り, もし,電話の受 け手が本人でなければ,本人 を呼び出 すための行為が要求 され る反応である。 これ らの場合,言葉 による反応 を考慮することが普通で あるが, この反応の直接性 にむ しろ着 目すべ きであろう。この様 にして,依頼表現 は,言語形式に拘 らず,話 し手が聞 き手 の行動 による反応 を求めるも の として,容易 に判定が可能 な場面の脈絡 において兄いだす ことがで きる。
次に考察の視点 としては,受益関係お よび対人関係9)が依頼 の言語表現 とどの ように関わって いるかに着 目した。
依頼者 と被依頼者の対人関係 については
,4
つのカテゴ リーを設定 した。すなわち : 1)対等関係 :学生 とか友人同士な ど (例 :Emi ,l e tmes e eyo urno t e book,pl e as e
.);2)上下関係 ‑
a)
:下位 の依頼者の発話,子供 の親 に対する依頼,店員の顧客 に対す る依頼, 学生の教師に対する依頼 な ど (例 :Ca nwego,mo m? )
;3)上下関係 ‑ b)
:上位の依頼者の発話,教師の生徒 に対す る依頼,顧客の店貞 に対する依 頼,親の子 に対す る依頼 な ど (例 :Ge tup,To s hi ko!)
4
)関係不明 :上位 ・下位の関係が不明であるか,関連が無い と考 えられる場合,例 えば, 全 く未知の他人 に対す る依頼,電話 をかけるとき誰であるか不明の相手 に対する依頼 な ど (例 :
Exc us eme ,whe r e ' st hene ar e s tt e l e pho neboot hP )
この関係の分類 については,教科書の編集方針 によっては,容易 に判別がつ くもの と,比較的困 難な もの とがあった。ダイアログその ものが,話 し手 ・聞 き手の関係 を明示 している場合 は判別 が容易な場合である。逆 に,話 し手 ・聞 き手が単 に記号 (例 えば,A ;B
のような)で示 されてい る場合 は,各 レッスンの練習問題,その他の説明部分,イラス トレーションな どか ら判断で きる のが普通である。前述のように,教科書全体が シチュエーション中心 に編集 されているものが多 いか らである。受益関係10)については,対人関係の如何 を問わず
, a)
依頼が依頼者 に直接的な利益 をもた ら すか,逆に, b)依頼が被依頼者 に直接的に利益 をもた らすかによって区別が可能である。例 え ば,a)Wa t c hyo urs t e p.
高等学校用 「オー ラル ・コ ミュニケー シ ョン
A
」教科書 における依頼表現 の特徴b)Co ul d I a s kaf a vo ro fyo u,Pr of e s s o r ?
において,≪A)依頼者<被依頼者 ;B)依頼者>被依頼者≫のように,不等号 を用いて定式化で きるような,比較的単純 な関係 として捉 える。資料全体 を通 じて, この判断が困難 な場面 は殆 ど 無かった と言 える。
本題である 「依頼表現」 における 「文体 の適切 さ」 を考察するには,言 うまで もな く,表現の 多様 な形式 を整理 してお く必要がある。依頼 という言語行為 の主体 は,発話が どの様 な形式 を取 ろうと,言語的にその主体11)が表現 に顕在化 していようが,表現 されずに終わっていようが,依 頼者 として必ず存在す る筈である。 しか し,その ことを念頭 に置 きなが らも,やは り,表現の形 式上の適切 さを考察す るには,セ ンテンスの形式 を整理 してお くとい う準備作業が必要である。
そこで,我々は,セ ンテンスが節
( c l aus e )
の形式 をとるか,節形式 と無関係 な,いわゆる,「無 定形文」( amo r phouss e nt e nc e )
12)であるか を,まず,区別 しなければな らない。次の例文 によれ ば :C)A r e t ur nt oVi c t o r i a,pl e a s e . ( 1 5 3 ) d)J us tamo me nt ,pl e a s e. ( 3 8 ) e)Hur r yup,Yoko! ( 2 4 4 )
C)は,鉄道 な どの駅で切符 を買 うときの定形的表現であ り, これを節形式 に置 き換 えることは ない。 d) は,節形式 に還元す ることが可能であるが,その様 な変換が 「文体 の適切 さ」 に及ぼ す影響 は無視で きない。 これは,頭部省略13)と考 えることもで きるが,節形式 とは関係づ けない こととした。 これに類する用例 は,資料の中に少なか らず存在する。 e) は, これに対 して,節 形式 をなす もの と捉 えるべ きである。セ ンテ ンスの意味上の分類か ら,文法的に位置づ けられた セ ンテンスのタイプであるか ら,無定形文 と同列 に扱 う事 は,本来的には正 しくない。 しか しな が ら,本稿 においては,以上,三つの場合,文法上の主語が欠如 しているという観点か ら,同列 に扱 うことにした。すなわち,無定形文 ・頭部省略 ・命令文 (ただ し肯定形のみ,その理 由につ いては以下 を参照 されたい) は同列の類 をなす ことにした。
他の依頼表現の発話 は,節形式,すなわち,主語
( s u bj e c t )
と逮部( pr e di c a t e )
の結合 をなす 類 である。主語 は名詞句( no un phr a s e )
で,構造的 に単純 で ある。述部 の構造 は 「操作子」( o pe r a t o r )
と「叙述部」( pr e di c a t i o n)
14)か らなる。依頼表現 に関連 して重要なのは,主語 と操作 子の語順である。いわゆる,意味 によるセ ンテンスの分類 は,伝統的には, この語順 によって決 定 されてきた。次例 :f)Ⅰ ' m l ooki ngf o rabl uej ac ke t
.( 1 0 2 ) g)I pr e f e rabr i g ht e rco l o r . ( 2 6 5 ) h)So,c o ul dlc o me ,t oo,Yumi ? ( 2 5 1 )
i)Do n' tc al lmeMr .Ha r a. ( 2 4 3 )
をみると, f) と
g)
は,肯定平叙文( de c l ar a t i ve ) , h)
は疑問文( i nt e r r o ga t i ve ) , i)
否定命令文
( i mpe r a t i ve )
であるが,一般 に, このセンテンスの意味上の分類 は,対人関係 を表示す ると考 えられ る。すなわち,疑問文 は質問( que s t i o n)
であ り,相手か ら吉葉 による反応 を引 き出 す とい う機能 を特色 とするとされ,命令文 は要請( r e que s t )
で,相手か ら行動 による反応 を引き 出す機能 を特色 とすると言われる。疑問文 も命令文 も要請 としては同 じであるが,相手 に求める 反応が言語的であるか行動的であるかの違 いがあるだけだ というように単純化 して説明 される。これは,あ くまで も文法の分野での議論であるO
しか し,文法 において も,質問や要請 という事 を云々する以上,そこには話 し手 と聞 き手の間 に,何等かの対人関係
( i nt e r pe r s o nalr e l a t i o ns hi p)
を認 めているのだ という判断が成 り立つで あろう。従 って,文法的に形式上の区別が可能 な限 りにおいて対人関係 を考慮するな らば,対人 関係の区別 に対応する形式 は,上の例文 にみるとお り,主語 と操作子の語順 によると言 うことに なる。すなわち,f')主語 (Ⅰ)十操作子
( ' m) gり 主語 (Ⅰ)+操作子 ( 0
)15)h
')操作子( Co ul d)
+主語 (Ⅰ)i
')主語(0)
+操作子( Do n' t )
従 って,本稿 においては,節形式のセンテンスに関 しては, f'‑ i')に認 め られ る結合の様態 を 対人関係表現の中心部分 とみなす事 にする。
これに対 して,いわゆる叙述部 は,内容 によっては依頼表現 と密接な関係 を持つけれ ども,必 ず しも関係があるとは限 らない。
j)Wi l lyo uhe l pmewi t hmy J a pane s e P ( 4 9 ) k)Si r ,ma ywegob ac ki nt ot hes t at i o nP ( 2 2 8 )
のような例文 を比較 してみれば明 らかなように
, j)
の叙述部 は依頼表現 と関係が深いけれ ども,k)
の叙述部 は,殆 ど,無関係であると言 える。従 って,叙述部の内容 をもって節形式の依頼表 現の中核的な要素 と見なす ことはで きない。この様 にして,節形式の発話 に関 しては,≪主語 +操作子≫の要素を 「中核部
」( Nuc l e us )
と見 な し16),それに続 いて生起す る叙述部 を「中核部継続要素」( Pos t ‑ Nuc l e us )
として,従属的な位 置 を与 える事 にする。以上 は,節形式の発話に限 られ る配慮であるが,依頼 の発話の殆 どすべてに当てはまる残余の 要素 を考慮 しなければな らない。節形式 に関 して言 えば,叙述部の中の疑問詞 は,文法上の規則 に従 って中核部の前 に生起する。 また,節形式に限 らないが,呼掛 け
( voc at i ve )
や注意 を喚起す るための合図や談話の標識( di s c our s e mar ke r )
17)
,同様 にして,遊離要素である儀礼的従接詞( c o ur t e s ys ub j unc t )
18)やイディオマテイツタな表現形式が,中核部 に先行 し得 る。従 って,これ らは 「中核部先行要素」( Pr e ‑ Nuc l e us )
として認 めなければな らない。同様 にして,中核部継続要素では完結せずに,呼掛 けや儀礼的従接詞が最後 に付加 され ること
高等学校用 「オー ラル ・コ ミュニケー シ ョン
A
」教科書 における依頼表現の特徴が しばしば兄いだされ る。 これ らは,「終結部
」( Fi ni s h)
として別 に考 えざるを得ない。この様 にして,節形式における依頼 の発話 を,構成要素の観点か らみると,次のように定式化 することが出来 るだろう :
( Pr e ‑ Nuc l e us )+Nuc l e us[ s ub j e c t +o pe r at o r /o pe r a t o r+s ub j e c t ]
( +Po s t ‑ Nuc l e us )
(+Fi ni s h)
ここにおいて,括弧の中の要素 は義務的でない。すなわち,特別 な文脈 においては,中核部 のみ か ら依頼 の発話が成 り立 っている場合 も起 こり得 る :
1)A :Yo uha veape r f e c tr i ghtt oge tt hepe r mi tj us tno w.
B :J J ( 7 ̲ l ・J , つ
A :Ce r t a i nl y.He r eyo uar e .
のような場合である。 しか しなが ら,依頼表現の性質上,括弧内に示 した随意的要素 を含 まない ような表現 は稀であろう。
また, さきに掲 げた無定形文 ・頭部省略 ・命令文 (ただ し肯定形のみ) については,当然 なが ら,節形式 における中核要素 は欠如 している。従 って,節形式 において随意的であると考 えられ た要素が重要な意味 をもつ。例 えば,
m)Aw,pl e as e ,Mo m. ( 1 4
1)n)Par do n? ( 2 0 2 )
o) Smi l e ! ( 3 3 )
これ らを節形式の定形化 にな らって示せば :
Pr e‑ Nuc l e us+ Po s l 卜Nuc l e us+ Fi ni s h
となるか も知れないが, この うち, どの要素が義務的か,随意的かを決 めることはで きない。
さて,これ まで詳述 した基準 に基づいて,所定の
OCA
教科書1 9
種類 に現れた2 9 4
例の依頼表 現 について定量的 ・定性的分析 を行 った。使用 した計算 ソフ トはEXCEL9 7 / 9 8
である。 ダイア ローグのテクス トを精査するに際 しては,言語機能の観点 を反れないよう,形式 にとらわれて読 み違 いのないように,繰 り返 し細心の注意 を払 って共同作業 にあたった。従 って,2 9 4
個の用例の 依頼表現 としての位置づけについては,確信 をもって集計 に当たることがで きた。上拓の計算 ソフ トにより, それぞれの構成要素毎 に分析 したワークシー トを作成 した。 ワーク シー トについては,付録別表 によって, それぞれの機能単位が確認 されている実態 を参照 された い。すなわち,中核部先行要素,中核部 (主語 ×操作子),中核部継続要素,終結部 にどの様 な表 現形式が位置づけられているか,依頼 の発話主体
( add r e s s e r )
および被依頼人( a ddr e s s e e )
とその間の対人関係 (1
‑ 4)
,依頼の受益関係 (< ;>)が示 されている。この原資料 をソーティング19)することにより,主眼 とする項 目について数量的知見 を得 ること ができた。例 えば,中核部先行要素がない表現 は
, 0
によって連続的に読み取 ることが可能であ る。依頼表現の多様性 は, この原資料 により明 らかになるのであるが,それを対人関係および受 益関係の視点か らみて, どのように評価することができるか,すなわち,「文体の適切 さ」の視点 か ら評価 を試みることがで き,しか も,その結果 を数量的に明 らかにすることにより,OCA教科
書ダイアローグの適切 さについての考察が可能 になるか,多大の関心 をもって考察 に当たった。言 うまで もな く, 日本国内の高等学校で使用するための, 日本人 による日本人のための教材で あることに留意 して,「文体の適切 さ」にある程度の評価 を下すために,教科書以外の資料 との比 較 を試みた。すなわち,インターネ ットで公開されている外国 (アメ リカ)映画の資料サイ ト
( us . i mdb.c o m/ )
20)
か ら,資料の一部 を検索 し,依頼表現の一部 について対照的な様相が兄いだせ る か試みた。Ⅰ Ⅰ.分析の結果およびその考察
以上の基準に基づいて
,A.
表現の形式 ;B.
対人関係 ;C.
受益関係 ;D.
対人関係および 受益関係 と表現の形式;E.
表現上の自然 さに関する考察 を行 った。A.
表現形式について 1.中核部( NUCLEUS)
我々の基準 によれば,依頼表現の形式的側面 として,節形式をとるか否かの区別が立てられて いる。節形式をとらない表現の例 を繰 り返 しあげれば :
a)Aw,pl e as e ,Mo m. ( 1 4 1 ) b)Pa r don? ( 2 0 2 )
C)Smi l e ! ( 3 3 )
の如 きものである。すなわち,節形式を中心に考 えるならば,主語 と操作子が欠如 しているよう な表現である。本稿 における分析 によれば,主語
‑0
ならびに操作子‑0
として,中核部全体 は≪0/ 0
≫の構造 として捉 える事 にした。 このようにして,該当の2 9 4
例 についてみると,主語 ‑ 0の形式は,1 0 1
例 ;操作子‑ 0
の形式は,1 0 4
例 ;中核部全体 として≪0/ 0
≫の形式は,9 0
例 であった。 (表 1参照)操作子 として
( do n' t
)をとるが,主語 を欠 くもの,すなわち≪0/do n' t
≫の形 をもつ否定の命 令文 は7
例であった。 しか し,上掲の例文 C)のような肯定命令文は9 0
例あ り,全体 として命 令文 は9 7
例であった。 (表1
参照)主語 についてのみ考察すると,表
1
に示 したように〈Ⅰ) 8 8
例 ;〈 yo u〉 8 1
例 ;( we ) 7
例 ; くt he r e 〉 3
例 ;(その他〉 1 4
例であった。また,操作子 は‑ 主語 と語順倒置のあるものについ高等学校用 「オーラル ・コミュニケーション
A
」教科書 における依頼表現の特徴表
1 Gr a ndTo t al
Nuc l e u s ( S+Op e r a t o r ) Nu c l e u sl s t ( Sub j e c t ) Nu c l e u s2 n d( Ope r a t o r )
0 / 0 9 0 0 1 0 1 0 1 0 4
0
/ Do n' t 7 Ⅰ 8 8 c a n ? 3 6
I / 0 8 yo u 8 1 c o ul d 2
Ⅰwi l l 1 6 We 7 c o ul d ? 3 5
Ⅰwo ul d 1 2 t he r e 3 d o ?
llDoy o u ? 9 do n' t 7
Do n' tyo u ? 5 o t h e r 1 4 do n' t ? 5
Wi l lyo u? 8 i s 7
Ca nⅠ ? 1 9 i s ? 8
Ca nyo u? 1 4 ma y ? 2 0
Ma yⅠ ? 1 9 wi l l 1 7
Wo ul dyo u ? 1 2 wi l l ? 9
Cou l dⅠ ? 9 wo ul d 1 3
Co ul dyo u ? 2 6 wo ul d ? 1 2
o t h e r 4 0 o t he r 0
t o t al 2 9 4 t o t al 2 9 4 t ot al 2 9 4
ては〈?〉をつけて区別 した ‑
( can? ) 3 6
例 ;( coul d) 2
例 ;( coul d? ) 35
例 :くdo? 〉 1
1例 ;( don' t ? 〉 5例 ;(i s ) 7例 ; 〈 i s ? ) 8例 : 〈 may? 〉 20
例 ;( wi l l 〉 17
例 ;( wi
ll?〉9例 ; ( woul d) 1 3
例;( woul d? ) 1 2
例 ;〈その他〉8
例 ;((don' t 〉 7
例 :これ は上述の否定命令 文 に含 まれる)である。以上 について,主語 と操作子の結合 としての中核部で最 も頻度の高い ものか ら順 に掲げると,
( coul d you? ) 26
例 ;〈 may I ? ) 1 9
例 ;〈 can I ? ) 1 9
例 ;〈I wi l l 〉 1 6
例 ;くcan you? ) 1 4
例 ;( woul d you? ) 1 2
例 ;(I woul d) 1 2
例 ;〈 coul d I P 〉 9
例 ;( do you? ) 9
例 :( wi l l you? ) 8
例 ;(Ⅰ/ 0) 8
例 ;〈 don' tyou? ) 5
例 ;(その他〉 40例 (ただし,否定命令文 をつくる
〈 don' t 〉 7
例 は除 く)である。以上 について,以下のような例文を掲げることがで きる :
d) Co ul dyo u j us tg iveusanot hermi nut eort wo? ( 23
1)e) 吻 Js eeyourt i cke tandpas s por t ? ( 95)
f) Ter uo ,c a nI as kyous omet hi ng? ( 56) g) 7 7gt aket hi sone. ( 5 3)
h) Canyo u t el lmet hewayt oTakes hi t aDor iSt r eet ? ( 1 07) i) Wo ul dyo u pl eas et el lherIcal l ed? ( 30)
j)I '
dli keat i ckett oBos t on,pl eas e. ( 283)
k)Co ul dIl e a veame s s a ge ,Mr s . Hi l l ? ( 8 0 ) l) Doyo umi ndi fIus eyo urc omput e r ? ( 2 7 4 ) m)Be t h,wi l lyo uhe l pmec utt heve ge t a bl e s ? ( 2 4 9 )
n)Iwa ntac he e s e bur ge rw it hke t c hupa ndmus t ar d. ( 1 8 4 ) o) Whydo n' tyo uj oi nus ,Te d? ( 2 0 5 )
P)I si tOK t owat c hTV o nt hi sbe d? ( 1 5 ) q)Pl e a s edo n' ts t e po nt hemo s s . ( 3 4 )
2.
中核部先行要素中核部先行要素の うち,疑問詞のように文法上義務的に中核部 に先行す る要素がある。上掲の 例
1‑ 0)
とともに,次の例文 を参照 されたい :a)Ho w c a nIge tt ot hec i t yl i br a r y? ( 4 8 )
呼掛 け
( voc at i ve )
の例 は,上掲1‑m)
に認 め られるが,同様 に,呼掛 けの間投詞( i nt e r j e c t i o n)
が起 こり得 るが,本稿の扱 う資料の中では,頻度が きわめて低 い :b)He y ,Mar i ko,l ooka tt he s es we a t e r s . ( 1 8 9 )
注意 を喚起する信号
( a t t e nt i o ns i g na
l)としては,〈 Exc us eme ,( but ) )
が,最 も頻度が高い。く We l
l),( But
),( No w
),〈 And
)などの談話 の標識( di s c o ur s ema r ke r )
は,頻度が低い。C)Ex c u s eme ,whe r ei sNi s hiSt at i o n? ( 1 7 0 )
d)
Oh,byt hewa y,c a nyo uhe l pmew it ht hatr e po r tt o mo r r o w? ( 2 7 5 )
従接
詞 ( s u bj unc t )
21)の類 は,当然なが ら( pl e as e
〉の頻度が最 も高い。( ye s
),〈 OK
)なども生 起する。 また( j us t
) は,用例が7
個ある。e)AL s o ,C o ul dyo ut akehi m o utf o rawal ke ve r ymo r ni ng? ( 2 2 2 )
合接詞
( c on j unc t )
22)
もきわめて稀である。上掲の例文d)
における〈 byt hewa y
) はこれに 該 当する。f)So ,me e tmeatDo n' spl ac ea tt wo. ( 2 1 9 ) g)Fi r s to fa l l , I ' dl i ket oha vec o r ns o up. ( 1 2 7 )
離接詞 ( di s j unc
t)
23)の例 としては,h)Ma yb e ,yo uc a nhe l pu s,t oo. ( 1 4 4 )
その他,慣用的な表現 として,敢 えて この範暁に属せ しめた例 をあげると :
i)And" .we l l… Iu ) a su ) o ndm' n gl fyo uc o ul ddoo nel a s tt hi n gf orhi m. ( 2 2 3 ) j
)Z t ' dr l e al l yhe l pmel fyouc oul ds ho w meho w t os ol vet hi s . ( 2 3 7 )
3.
中核部継続要素中核部継続要素 は,まさに,依頼の内容であ り,メッセージの最 も重要な部分である。従 って,
高等学校用 「オー ラル ・コ ミュニケー シ ョン
A
」教科書 における依頼表現 の特徴シチ ュエー シ ョンによって, どの様 に も変わ り得 る。例 えば,食事 のために外 出 しようとす る場 合 と,電話 で医者 に診察時間の予約 を取 り付 ける場合 とで は, 当然 なが ら,用 いる言葉 自体が変 わ らなけれ ばな らない。 したが って, これ について内容上 の特別 な分類 を試 み ることは意味がな い と考 える。
しか しなが ら, この部分 は,節形式の発話 の場合 には,文法上,叙逮部
( pr e di c a t i o n)
として 取 り扱われ るべ き要素である故 に,文法的な類別 をたてることが可能である。すなわち, 1)本 動詞 を先頭 にたて る句 をなす場合 ;2)
操作子が( be )( ( ha ve
)も可能)で,述詞 ( pr e di c a t i ve )
が名詞句である場合 ;3)
操作子が( be
)で,述詞が形容詞句 である場合,である。 それぞれ に ついて例 をあげるだ けで充分 であろう :a)Co ul dyo u wr i t ei to nt heb o nd ,pl e a s e ? (4) b)Whati s yo urna me ,pl e as e ? ( 2 7 8 )
C)J us twa t e ri s
fl ‑ ne .
(43)なお,念 のために付言すれ ば,上掲 の例文
b)の分析 は,本来 は主語 であるが, このデータの
処理 のための必要上, そ こに位置づ けてある ものである。また, この ような節構造 を全 くもたない ものが多数 あることは既 に述べた ことか ら明かであろ
う。
d)J us tonemo me nt ,pl e a s e. ( 3 8 ) e)Aw,pl e a s e ,Mo
m.( 1 4 1 )
この後者 の例文 において特 にそ うであるが,依頼 の内容 は,場面 の脈絡か ら完全 に検索可能 であ る。
4.
終結部終結部 は変化 に乏 しい。全 く終結部 を欠 くばあい と,呼掛 け
( voc a t i ve )
お よび儀礼的従接詞の〈 pl e a s e
〉が生起す るのみである。a)Te l lhi m I ' m noti n. ( 7 6 )
b)So,c oul dIc o me ,t oo ,Yumi P ( 2 5
1)C)Pa s st hes a
lt , Pl e a s e . ( 1 4 9 )
なお,全体 として,終結部 を欠 く例文 は
2 2 3
個( 7 5. 9%)
,( pl e a s e
) (中核部継続要素 に従接詞 と して組 み込 まれている3
例 を除 く) を含 む例文 は4 5
個( 1 5. 3 %)
であった。B.
対人関係 について対人関係 は,既 に述べた ように
4
つの類 :1)対等関係 ;2)
上下関係‑ a);3)
上下関係 ‑b);4)
関係不明,に分類 されている24)。それぞれの類 について総括すれば,以下の通 りである。1.第
1類 (対等関係):本稿の分析対象に関する限 り, きわめて単純であると考 えられる。ダイ アログのテクス トが高等学校用の教材であるという特色 を反映 して,対等の話 し手 ‑ つまり, 依頼者 と被依頼者 ‑ は,共 に学生・生徒である。全体 として,対等関係者の間での依頼 は,29 4
例中の89
例( 30. 3%)
である。唯一の例外 は,夫婦間のや り取 りの中に兄いだされた :a)Whydon' tyouj oi nus ,Ted? ( 2 05 )
つまり,妻が夫のテッドの参加 を要請 しているものである。
2.
第2
類 (上下関係 ‑a))
:非対等の関係者のうち,何等かの意味で下位の話 し手が上位の聞 き手 に依頼行動 として発話 している場合である。この類の発話 は,全資料のなかで45
例( 1 5. 3%)
にとどまっている。その内容 を考察すると,1
)依頼者が学生 ・生徒である場合 :3 2
例a)
被依頼者が身内の上位者 (親など)の場合 :8
例 :‑Canlha vene xtwe ek' sal l owanc enow? ( 8 9)
b)
被依頼者が友人の親 ・ホス トフアミリの主人の場合 :1 4
例 :‑Pl eas eas khi m t ocal lmebac k
.( 1 7 8) C)
被依頼者が教師である場合 :5
例 :‑
MayIas kyous ome t hi ng? (3)
d)
被依頼者が医者 ・警官その他,未知の他人である場合 :5
例 :‑Exc us eme,whe r ei sNi s hiSt at i on? ( 1 7 0)
2
)依頼者が店員 ・受付掛 ・タクシー運転手などの場合 :1 3
例a)
被依頼者が学生 ・生徒の場合 :3
例 :‑Pl ea s ef i l loutt hi sf or m ands i gnhe r e. ( 1 5 6 ) b)
被依頼者が学生 ・生徒 と限定で きない場合 :1 0
例 :‑Canyouputyours ui t cas eont hes cal e s ? ( 9 6)
3.
第3
類 (上下関係‑b) )
:非対等の関係者のうち,何等かの意味で上位の話 し手が下位の聞 き手 に依頼行動 として発話 している場合 は,本稿 の対象 とす る資料 に関 しては,全体で1 2 1
例( 4 1. 2%)
を兄いだした。その内容 を,同様 にして分析すると,1)被依頼者が明 らかに学生 ・生徒である場合 :
4 7
例a)
依頼者が身内の上位者 (親など)の場合:1
1例 :‑Johny! Pl eas et ur ndownt hatmus i c. ( 1 3 9 )
b)
依頼者が友人の親 ・ホス トフアミリの主人の場合 :1 9
例 :‑Iwantyout odos omec hor e sj us tasSam andhi ss i s t e rdo. ( 1 9 5 )
C)依頼者が教師である場合:1
1例 :‑
高等学校用 「オーラル ・コ ミュニケー ション
A
」教科書 にお ける依頼表現 の特徴Now Iwa ntapai ro fyout oa c toutt hec o nve r s at i o n. (5) d)依頼者が医者 ・警官 その他,未知 の他人である場合 :6
例 :‑Yo urpa s s po r t ,pl e as e . ( 1 3 6 )
2
)被依頼者が店員 ・受付掛 ・タクシー運転手 な どの場合:7
4例a)
依頼者が明 らか に学生 ・生徒の場合 :1 6
例 :‑I ' l lt akeac he e s e bur ge rwi t hFr e nc hf r i e sa ndac ho c ol a t es hake ,t ogo. ( 1 6 1 )
b)
依頼者が学生 ・生徒 と限定 で きない場合 :5 8
例 :‑Ca nIc he c ki nhe r ef o rt heWor l dAi r l i ne sf l i ghtt oNe w Yo r k? ( 9 4 )
4.第 4
類第 4類 (関係不明) には対人関係 を明 らか にで きない三 つの理 由があ り得 る。 その一 つは,互 いに全 く未知 の他人であ り,場面 の脈絡 に互 いの上下関係 を示す ような役割関係が認 め られない 場合である。例 えば,デパー トでの買物 においては,如何 に貧 しい人 で も顧客 である限 りにおい ては,高給 を とっている店員 よ り上 の立場 にある と,社会的役割 の上で認 め られ る。第一 の場合 は, その種 の不確定性 をい う。
二つ 目の理 由は,互 いに既知 の関係 にあるか もしれないが, その場 において,互 いの関係 を確 認す るに到 っていない場合 をい う。例 えば,電話 を掛 ける場合,相手 として誰が出て来 るか は, 掛 けてみなければ,分か らない。 その段階 においては,対人関係 は不確定である。 そ して, その 不確定性 が程 な く解消す る場合 もあ り,結局 は,不確定 の ままに終 わ る場合 もある。 これ は,礼 会的役割 とは関係 な く,む しろ,伝達 の媒体の然か らしめる結果である。
第三 の理 由は,初対面 の人 の間 において起 きる不確定性である。 そ して,互 いに関係 を深 める 場合 には,不確定性が消 えるのであるが, その必要がない他人 どうしの関係 を続 ける場合 には, 対人関係 の上下 については,判 断がつかない。初対面 の段階 においては, これ と同 じ状況が存在 す る。
第
4
類 の用例 は4 9
例 である。これ について,数量的処理 をす ることは,対人関係 と受益 の関係 を結 び付 けるためには役立たない と考 え られ る。従 って, これ までの三つの類 と異 な り,全体 を 一括 して取 り扱 うことにす る。ただ,例文 を示す ことによ り,概ね,上掲 の条件 は了解 され る と 思われ る。例
:a)Exc us eme,c oul dyo upl e a s ehe l pmef i ndmys t at i o n? ( 2 9 0 ) b)No w t e l lmemo r ea bo utyo urt o wn, (2)
C)Ma yls pe akt oTom,pl e a s e ? ( 1 7 7 )
C.
受益 の関係 について依頼表現 を発話す るとい う言語行為 は,依頼 の内容 に依 っては,話 し手 ・聞 き手 の都合 に影響
を与 える。被依頼者 は,喜んで依頼 に応 える場合 もあるが,不都合 を押 して応 じることもあ り, 拒絶する場合 もあ り得 る。 どの様な条件 によって反応の違いが生 じるのかは,かな り常識的な判 断 をつけることが可能である。例 えば,依頼 された内容が被依頼者 に とって,きわめて好都合で, 容易 に応 じることができるような らば,当然,肯定的な応諾が得 られ るであろう。つ まり,被依 頼者 に とって利益が大 きく,払 うべ き犠牲が小 さいか らである。本稿で考察 した資料の中で も,
a)Yo uj us ts i tt he r ea ndr e l ax. ( 1 1 2 )
の ような,仰々 しく 「依頼」 とも言えないような発話では,被依頼者 は進んで申し出に応 じるで あろう。
しか し,若い留学生にホームステイ している家のホス トマザーが次のように依頼 した とすれば, 被依頼者 にとって, あまり嬉 しくない仕事 を押 し付 けられた と感 じて も不思議でない :
b)Ke n j i ,c a nyo ut akeo utt hega r ba geno w? ( 1 7 )
依頼が容易 に受 け入れ難い場合がある。我々の資料の中で,C)Ca nIha vene xtwe ek' sal l o wanc enow? ( 8 9 )
のような小遣 いねだ りの例がある。母親 としては,娘 に対する教育上, これを受 け入れ ることは 出来ない と考 えてよかろう。
このように,依頼が被依頼者 に とって どの様 に好都合 に,あるいは逆 に,不都合 に受 け止め ら れるかは,依頼 の内容 と場面の脈絡 によって,様々な段階があると考 えてよい。 しか しなが ら, 不都合 な依頼であって も,依頼 の仕方によっては応諾 され得 るし,好都合な依頼で も,不快感 を 与 えるような依頼の仕方 をすれば断わ られ る恐れ無 しとしない。つ まり,依頼 については,依頼 の内容 の如何が当事者 に評価 され るはずである。 しか し,同時 に,依頼者 は,応諾 させ るための 工夫 を凝 らすだけの才覚があれば,た とえ,被依頼者 に とってあまり好都合でな くて も,応諾 し て貰 えるとい うことである。 そして, そのような工夫,才覚の一部分 として,言語的表現のあ り 方が含 まれ る。言葉の使 い方如何で,諾否が左右 される場合があるのである。
本稿 においては, このような論点 に深入 りすることは出来 ないが,少 な くとも,依頼の内容が 依頼者 に とって利益 をもた らすか,被依頼者 に利益 をもた らすかの区別だけは立て られ ると判断
した。全ての例文 について, これを検討 し,
A.
≪依頼者 (‑話 し手) < 被依頼者 (‑聞 き手) ≫
B.
≪依頼者 (‑話 し手) > 被依頼者 (‑聞 き手) ≫
の判定 を下 した。それによれば
,2 9 4
例 のなかで,A.
タイプは5 2
例,B.
タイプは2 4 2
例であっ た。更 にこれ を対人関係毎 に分類すると :第1
類A :1 9 /B :7 0;
第2
類A :7/B :3 8;
第
3
類A :1 9 /B :1 0 2
;第4
類A :7/B :3 2
であった。表2‑ 9
参照。D.
対人関係および受益関係 と依頼の言語表現B
節 において考察 した対人関係4
類 について,それぞれA/ B
両 タイプの受益関係が上述の様高等学校用 「オーラル ・コ ミュニケー シ ョン
A
」教科書 における依頼表現の特徴表
2 1 ‑ t ypeA
Nuc l e us ( S+Ope r at or ) Nuc l e usl s t ( Sub j e c t ) Nuc l e us2 nd( Ope r at or )
0 / 0 1 3 0 1 3 0 1 3
0 / don' t Ⅰ 2 c an? 1
Ⅰ / 0 yo u 3 c oul d
Ⅰwi l l
Wec oul d? 2
Ⅰwoul d 1 t he r e 1 do ? 1
Doyo u? 1 do n' t
Don' tyo u? o t he r do n' t ?
Wi l lyou? i s 1
CanⅠ ? 1 i s ?
Canyou? may?
Ma yⅠ ? wi l l
Woul dyou? wi
ll?Co ul dⅠ ? 9 woul d 1
Co ul dyo u? 2 woul d?
o t he r 1 ot he r
1 ‑ t ypeB
Nuc l e us ( S+Ope r a t or ) Nu
cl e usl s t ( Sub j e c t ) Nuc l e us2 nd( Ope r a t o r )
0 / 0 1 9 0 2 2 0 2 2
0 / don' t 2 Ⅰ 1 8 c a n? l l
Ⅰ / 0 2 you 2 8 c oul d 1
Ⅰwi l l We c oul d? l l
Ⅰwoul d 1 t he r e 1 do? 2
Doyou? 2 don' t 2
Don' tyou? 2 ot he r 1 don' t ? 2
Wi l lyo u? 4 i s 2
Ca nⅠ ? 4 i s ?
Ca nyou?
7may? 5
MayⅠ ? 5 wi l l
Woul dyo u? 5 wi l l ? 4
Coul dⅠ ? 5 wo ul d 1
Coul dyou? 6 wo ul d? 5
ot he r 6 o t he r 2
に明 らかになった。従って, この段階で,合計
8
つの類別それぞれに関 して,対応する言語表現 の特徴 を調査することができる。表現上の中心 として,節形式における中核部の構造 に着 目する ことにする。従 って,基準 は上述の「 A.
表現形式 1.中核部」において限定 した類別 を導入 することとする。いずれについて も,関連の付表 を参照されたい。1.第
1
類 タイプA (対等関係):1 9
例 (表2
参照)対等の関係 にある当事者
( par t i c i pa nt s )
のうち,聞 き手 (被依頼者)が受益者( be ne f i c i a r y)
であるような場合である。中核部 においては,以下ににおいて も同様であるが,《0/ 0
≫は無定 形文,頭部省略,肯定の命令文である。通常の節形式 においては,≪ 0 /do n' t ; Ⅰ /0 ; 二wi l l ; Iwo ul d;
doyo u;do n' tyou;wi l lyo u;c a nI ;c anyo u;mayI ;wo ul dyou;c o ul dI ;c oul dyo u;
その他≫で ある。それ らの生起の頻度 を示す と :0/ 0:1
3例。 0/don' t:
ナシ。 Ⅰ/
0 :ナシ。Iwi l l:
ナシ。Iwo ul d:1
例。doyo u?:1
例。don' tyo u?
:ナシ。wi l lyo u?
:ナシ。c a nI ?:1
例。c a nyou?:
ナシ。mayI ?:
ナシ。wo ul dyou?
:ナシ。c o ul d
I?:ナシ。c o ul dyo u?:2
例。その他:1
例。( Coul dyo u? )
および (その他〉の1
例 は :a)Co ul dyo us t ando ve rt he r e ? ( 1 1 5 )
b)The r ei ss o me o neIwantyo ut ome e t . ( 292)
である。2.
第1
類 タイプB
(対等関係):7 0
例 (表3
参照)対等な関係 にある当事者のうち,話 し手 (依頼者)が受益者
( be ne f i c i a r y)
であるような場合 である。中核部各タイプの生起の頻度 は次のようであった :0/ 0: 1 9
例。 0/don' t: 2
例。 Ⅰ/ 0: 2
例。twi l l:
ナシ。Iwo ul d: 1
例。doyo u?: 2
例。do n' tyou ?:2
例。wi l lyo u?:4
例。c a n 二 ?: 4
例。c a nyo u?:7
例。ma yI ?:5
例。wo ul dyou?:5
例。c o ul dI ?:5
例。c o ul dyo u?:6
例。その他 :6
例。C)Ⅰ ' dl i ket okno w why. ( 252)
d)Coul dyo ul ookaf t e rRove rwhi l eI ' m a way? ( 221) e)I st he r ea nyc ha nc eIc o ul dgowi t hyo u? ( 250)
これ らの例文のうち
,d)
の̀ Ro ve r '
というのは,ペ ッ トで,留守中にその世話 を頼 もうという事 情がある。 e)
の̀ I st he r ea nyc hanc e'
は,機能的には離接詞の̀ may be'
などに近い と解釈することもできる。
3.
第2
類 タイプA (
上下関係 ‑ a)):7
例 (表4
参照)非対等な関係 にある当事者のうち,聞 き手 (被依頼者)が何等かの意味で上位の立場 にあるが,
高等学校用 「オーラル ・コ ミュニケー シ ョン
A
」教科書 にお ける依頼表現の特徴表
4 2 ‑ t ypeA
Nuc l e us ( S
+Ope r at or ) Nuc l e usl s t ( Subj e c t ) Nucl e us2 nd( Ope r at or )
0 /0 4 0 5 0 5
0 / don' t 1 Ⅰ 1 can?
Ⅰ /0 you i coul d
Ⅰwi 1 1 We coul d?
Ⅰwoul d 1 t hr e e do?
Doyou? don' t 1
Don' tyou? ot he r don' t ?
Wi l lyou? i s
CanⅠ ? 4 i s ?
Canyou? may?
MayⅠ ? 5 wi l l
Woul dyou? wi l l ?
Coul dⅠ ? woul d 1
Coul dyou? woul d?
ot her 1 ot he r
2 ‑ t ypeB
Nucl eus ( S十Ope r at or ) Nucl e usl s t ( Subj ec t ) Nucl e us2 nd( Ope r at or )
0 /0 7 0 8 0 7
0 / don' t Ⅰ
ll canP 7
I / o you 1 3 coul d 1
Ⅰwi l l We 2 coul d? 6
Ⅰwoul d t hr e e do?
Doyou? don' t
Don' tyou? ot he r 4 don' t ?
Wi l lyou? 4 i s 1
CanⅠ ? 4 i s ? 4
Canyou? 1 may? 5
MayⅠ ? 5 wi l l
Woul dyou? 2 wi l l ? 4
Coul dⅠ ? 2 woul d
Coul dyou? 4 woul d? 2
ot he r 9 ot he r1
t ot al 3 8 t ot al 3 8 t ot al 3 8
同時に受益者
( be ne f i c i a r y)
であるような場合である。中核部各タイプの生起の頻度 は次のよう であった :0/ 0:4
例。 0/do n' t:1
例。 I/
0 :ナシ。Iwi l l:
ナシ。Iwo ul d:1
例。doyou?
:ナ シ。do n' tyo u?
:ナシ。wi l lyo u?
:ナシ。c anI ?
:ナシ。c a nyo u
P:ナシ。ma y
I?:ナシ。woul dyo u
P:ナシ。c o ul dI ?
:ナシ。c oul dyou?
:ナシ。その他 :1
例。f)Ot o s a n,do n' tdoi t . ( 1 1 1 )
4.
第2
類 タイプB
(上下関係‑ a)): 3 8
例 (表5
参照)非対等な関係 にある当事者のうち,聞 き手 (被依頼者)が何等かの意味で上位の立場 にあるが, 話 し手 (依頼者)が受益者
( be ne f i c i a r y)
であるような場合である。中核部各タイプの生起の頻 度 は次のようであった :0/ 0:7
例。 0/do n' t:
ナシ。 Ⅰ/
0 :ナシ。Iw
ill:ナシ。Iwo ul d:
ナシ。doyou?
:ナ シ。do n' tyo u?
:ナシ。wi l lyo u?:4
例。c a n I ?: 4
例。c a nyo u?:1
例。ma y I ?: 5
例。wo ul dyo u?:2
例。c o ul dI ?:2
例。c o ul dyo u?:4
例。その他 :9
例。g)Te l lhi m I ' m noti n. ( 7 6 )
h)MayIha veyo urna meandpho nenumbe r ,pl e as e ? ( 1 0 6 ) i)I sPe t e rt he r e ,pl e as e ? ( 7 8 )
g)
は,母親 に向かって,友人か らの電話 に留守だ と断わって くれ と頼んでいる発話である。 i)
は,電話で相手が在宅か どうか確かめているものである。5.
第3
類タイプA (
上下関係 ‑b) ):1 9
例 (表6
参照)非対等な関係 にある当事者のうち,聞 き手 (被依頼者)が何等かの意味で下位の立場 にあるが, 同時に受益者
( be ne f i c i ar y)
であるような場合である。中核部各タイプの生起の頻度 は次のよう であった :0/ 0:1 2
例。 0/don' t:2
例。 Ⅰ/
0 :ナシ。Iwi l l:
ナシ。Iwo ul d:1
例。doyou?
:ナ シ。do n' tyo u?
:ナシcwi l lyo u?
:ナシ。c anI ?:1
例。c a nyo u?
:ナシoma y
I?:ナシ.wo ul dyo u?:1
例cc oul dI ?
:ナシ。c oul dyo u?
:ナシ。その他 :2
例oj) Takes o mea s pi r i na nds t a yi nbe dt oda y. ( 1 3 )
6.
第3
類 タイプB (
上下関係‑b) ): 1 0 2
例 (表7
参照)非対等な関係 にある当事者のうち,聞 き手 (被依頼者)が何等かの意味で下位の立場 にあるが, 話 し手 (依頼者)が受益者
( be ne f i c i a r y)
であるような場合である。中核部各タイプの生起の頻 度 は次のようであった :0/ 0:2 6
例。 0/do n' t:1
例。 Ⅰ/ 0:6
例。Iwi l l:1 6
例。Iwoul d:8
例。doyou?:4
高等学校用 「オーラル ・コ ミュニケー シ ョン