本稿は︑国語教科書︑特に小学校第1学年で使用されてい
た教科書を対象とし︑読点がどこに打たれているか︑その実
態を整理するものである︒今後︑学校教育において読点をど
のように指導するとよいか︑﹁話すこと・聞くこと﹂﹁書くこ
と﹂﹁読むこと﹂と関連づけながら検討するための前段階の
ものとして位置づける︒
なお︑読点は︑しばしば句点と共に取り上げられる︒その
ため﹁句読点﹂と述べる箇所があるが︑本稿では読点を取り
上げるため︑句点については触れない︒
国語教科書における読点の実態
|はじめにI小学校第1学年を対象にI
日本語において読点︵﹁︑﹂︶は︑その源流を辿れば︑漢文訓
読における訓点に求められる︵飛田良文一九七四︶︒飛田二
九七四︶によれば︑当初は読者自身が︑該当箇所まで読解し
たことを表示するための記録として用いられていたが︑室町
時代以降︑書物の出版が行われるようになり︑読者の読解上
の手引きとしての性格をもつようになったという︒
その後︑近代においてさまざまな句読法が提案される中︑
明治三十九年︑文部大臣官房図書課により国定教科書編集の
際の基準として﹃句讃法案分別書キ方案﹄が発表され︑以
後︑読点は︑文中に打たれる符号として収散する︵川上葵一
九七四参照︶︒ ||読点の歴史素描
清田朗裕
qJ
前節で述べたように︑読点は﹁読解﹂﹁表現﹂の手引きとし
て用いられる︒しかし︑石黒圭︵二○○九︶や棚橋︵二○一
五︶等が指摘するように︑学校教育の現場において︑読点の
明確な指導がなされることは少ない︒それは︑井上ひさし
︵一九八二﹃私家版日本語文法﹂や本多勝一︵一九九四︶
﹁実戦・日本語の作文技術﹄などの読点関連の記述からも窺 現行の読点は︑文部省教科書局調査課国語調査室二九四六︶﹃くぎり符誰の使ひ方︹句讃法案こに基づく︒これは︑文部省教科書局調査課国語調査室︵一九四六︶には︑﹁明治三十九年二月文部省官房調査課草案の句讃法︵案︶を骨子とし︑これを振充してあらたに現代口語文に適する大鰐の基準を定めたものである﹂とある︒つまり︑句読法は︑基本的に明治以来のものを基準とし︑現在に至るということである︒
そして︑棚橋尚子︵二○一五︶によれば︑昭和二十四年︑
総理庁・文部省編集による﹃公文用語の手引き改訂版﹄に
おける記述から︑﹁句読点が表現のための符号でもあることが
明示されたことになる﹂という︒ここにおいて︑句読点は︑
読解の手引きだけでなく︑表現の手引きとしても位置づけら
れたことになる︒
三読点の問題点 ﹄えワ︒O
だが︑後述するが︑﹃学習指導要領﹄には︑句読点の指導に
関する記述がみられ︑決して無視されているわけではないの
である︒だとすれば︑学校教育上における読点の問題は︑一
体どこにあるのだろうか︒
論者は︑実際の教科書において︑読点がどこに打たれてい
るのか︑その実態が不明であることに問題の一端があると考
える︒
そもそも︑学校教育における教科書とは︑学びの基本とな
るテキストである︒勿論︑﹁教科書を教える﹂ことは︑教育の
最終目的ではない︒だがその一方で︑教員は︑﹁教科書で教え
る﹂ために︑教科書に何が︑どのように記されているのかを
熟知しておく必要があるだろう︒
物語文や説明文などには︑数多くの教材研究があり︑議論
も活発である︒しかし︑読点に関する研究は︑文法指導の中
で︑その特徴の一部が取り上げられるに留まる︒つまり︑系
統的に把握する︵させる︶という観点が欠如しているといえ
︑r手記ハノ○
以上の問題意識の下︑本稿では︑読点が教科書でどのよう
に扱われているのかを整理する︒特に︑読点が打たれる機会
が多いと予測される助詞との共起関係に着目し︑その実態を
明らかにする︒
− 4 −
現行の﹁学習指導要領︵平成調年告示︶﹂における読点に関
する記述は︑第1学年及び第2学年︑第3学年及び第4学年
の項目に見える︒これは︑旧﹁学習指導要領﹄でも︑第1学
年及び第2学年から第3学年及び第4学年までの項目で取り
上げられており︑共通する︒以下︑現行の﹁学習指導要領﹄
の該当箇所を引用する︒
第2各学年の目標及び内容
︹第1学年及び第2学年︺
⑪言葉の特徴や使い方に関する次の事項を身に付ける
ことができるよう指導する︒ 2内容
︹知識及び技能︺
ウ長音︑勧音︑促音︑擢音などの表記︑助詞の﹁は﹂︑
﹁へ﹂及び﹁を﹂の使い方︑句読点の打ち方︑かぎ
︵﹁﹂︶の使い方を理解して文や文章の中で使うこと︒
また︑平仮名及び片仮名を読み︑書くとともに︑片仮 四﹁学習指導要領﹄における読点の扱い
読点︵句読点︶は︑﹁︹知識及び技能︺﹂の中で取り上げられ
ている︒なお︑第5学年及び第6学年の項目では読点は取り
上げられていない︒したがって︑読点は︑﹁学習指導要領﹄の
中では︑初等教育の始めから理解及び習得が目指される項目
だといえる︒そのため︑﹁学習指導要領﹄に従えば︑読点の指
導は︑第1学年から第4学年までを一応の目安とし︑系統的
に行うことになる︒勿論︑第5学年以降も取り上げることは ⑪言葉の特徴や使い方に関する次の事項を身に付ける
ことができるよう指導する︒
ウ漢字と仮名を用いた表記︑送り仮名の付け方︑改行
の仕方を理解して文や文章の中で使うとともに︑句読
点を適切に打つこと︒また︑第3学年においては︑日
常使われている簡単な単語について︑ローマ字で表記
されたものを読み︑ローマ字で書くこと︒ 2内容
︹知識及び技能︺ ︹第3学年及び第4学年︺ 名で書く語の種類を知り︑文や文章の中で使うこと︒
− 5 −
妨げないが︑それまでに読点の様々な用法を児童に触れさせ︑
考えさせる機会を設けるべきだということはいえるであろう︒
読点を打つ基準は︑石黒︵二○○九︶の二八一名を対象に
行った調査によれば︑﹁長さ派﹂﹁意味派﹂﹁分かち書き派﹂
﹁構造派﹂に分かれる︒この指摘は︑読点に複数の側面があ
ることを示すと共に︑学校教育ではどのように扱うか︑検討
すべきであることをも示唆する︒
︒﹁こくご一上かざぐるま﹂︵光村図書︑平成十八年発行︶ 本稿では︑第1学年の以下の教科書を取り上げる︒
1
調査資料に見える︑標題を除いたすべての助詞の用例を採表 調査資料の分量としては不十分であるが︑今後の課題とする︒六調査資料 五読点を打つ基準の指摘
七調査方法
『こくご1上かざぐるま」における助詞出現数 と読点の関係
集する︒その後︑助詞の直後に読点が打たれている例を整理
する︒助詞の分類は︑学校教育に資するため︑基本的に学校
文法の枠組みで取り上げる︒
八・全体の用例数
本稿では︑読点が打たれた助詞のみ取り上げる︒調査結果
を表1に示す︒
読 点 割 合
(%)
八調査結果
読 点 有 総 出 現 数 助 詞 品 詞
がをにでとや
644511
八︒ワー4坐14ハUハU
8411001750
1 ワ︺戸bF○局﹄ワ臼11
局I︑ろ旬0格助詞
は
(には)も な ん か
EJ旬○1上1上
つJワーQJの○11
●ん証74.5
100.033.3 100.0
副 助 詞
24161
51.6
85.7
100.0221
31
て
と か ら
接続助詞 よ 終 助 詞
28.6
ワー
2
計 3 1 . 7 1 0 8 3 4 1
− 6 −
読点が打たれた例をもつ助詞の総出現数は三四一例であり︑
そのうち読点が打たれていた例は一○八例であった︒
格助詞では﹁が﹂﹁を﹂﹁に﹂﹁で﹂﹁と﹂﹁や﹂に︑副助詞で
は﹁は﹂﹁には﹂﹁も﹂﹁なんか﹂に︑接続助詞では﹁て﹂﹁と﹂
﹁から﹂に︑終助詞では﹁よ﹂に読点が打たれている例が見
られた︒以下︑例を挙げる︒取り上げる助詞は︑ゴシック体
の太字で示す︵以下︑同様︶︒
︵一︶︹が︸くまさんが︑ふくろをみつけました︒︵二八頁︶
︵二︶︻を一つくえのうえを︑ぴかぴかにふけるようになり
ました︒︵七二頁︶
︵三︶︷に︸なつやすみに︑なにをしましたか︒︵七四頁︶
︵四︶︻で︸がっきゅうぶんこで︑うさぎのほんをみつ
けたよ︒︵七一頁︶
︵五︶︻と︸おれいのこづちをてにもって︑おうちに
かえっておばあさんと︑おどったおどった
すっとんとん︒︵六四頁︶
︵六︶︻や一きゅうきゅう車は︑けがをした人や︑びょうき
の人を︑びょういんへはこぶしごとをしていま
す︒︵九七頁︶
︵七︶一は﹈ここは︑なにをするところですか︒︵一八頁︶
︵八︶︻には﹈おもいにもつをのせるトラックには︑
タイヤがたくさんついています︒︵九四頁︶ 八・二読点が打たれている用例数が多い助詞
読点が多く打たれている例を整理する︒
読点が打たれている例が十例以上見られる助詞は︑全四七
例中三五例︵七四・五%︶の﹁は﹂︑全六二例中三二例︵五
一・六%︶の﹁て﹂︑一四例中一二例︵八五・七%︶の﹁と﹂
である︒ただし︑﹁て﹂と﹁と﹂には︑注意が必要である︒
﹁て﹂は︑﹁おおきなかぶ﹂における﹁かぶをおじいさんが ︵九︶︻も︸ぼくも︑おじいさんのやくになって︑かぶ
をぬきたいな︒︵八六頁︶
︵十︶︻なんか一おなかがすいてることなんか︑わす
れてしまったおじいさん︒︵六一頁︶
︵十一︶︷て︸ふとくて︑ながくのびたくちばしです︒
︵四七頁︶
︵十二︶︻と︸ふたつめこるんところがすと︑きこえる
きこえるおなじうた︒︵六○頁︶
︵十三︶﹇から﹈こえをそろえて﹁うんとこしよ︑どっこ
いしょ・﹂といったから︑かぶがぬけたん
だね︒︵八六頁︶
︵十四︶︹よ﹈ともだちいるよ︑いっぱいいるよ︒
︵二四頁︶
以上の例を対象とし︑以下︑整理していく︒ ワー
ひっぱって︑おじいさんをおばあさんがひっぱって︑﹂と
いう例で︑連続して現れていることが用例数を増加させてい
るといえる︒同様に︑﹁と﹂は︑﹁かずとかんじ﹂における
﹁一つたたくと︑こぶたが一ぴき︒二つたたくと︑こ
ぶたが二ひき︒﹂という例で連続して現れていることが用例
数を増加させているといえる︒したがって︑小学校第1学年
の教科書では︑主に﹁は﹂に読点が打たれていることが多い
と考えられる︒そこで以下︑﹁は﹂を検討する︒
︵七︶で挙げたように︑﹁は﹂に読点が打たれた例は︑主題
を表していた︒となると︑﹁は﹂に読点が打たれていない一二
例は︑どのような特徴をもつ例であろうか︒以下に示す︒
︵十五︶さるはとる︒︵五二頁︶
︵十六︶これはこれはおもしろい︒︵六○頁︶
︵十七︶それからふたりはいつまでも︑なかよくたの
しくくらしたよ︒︵六五頁︶
︵十八︶むずかしかったのはどこですか︒︵七五頁︶
︵十九︶それでも︑かぶはぬけません︒︵七八頁︶
読点が打たれていない例も︑主題を表している︒ただし︑
︵十五︶は︑﹁はをへをつかってかこう﹂という︑文型練
習の見本を示した例である︒作文において特に注意が必要な
﹁は﹂﹁へ﹂﹁を﹂を用いた単文を作成させることを意図した
箇所である︒
︵十六︶︑︵十七︶は︑﹁おむすびころりん﹂における例で
ある︒︵十六︶は︑おじいさんがおむすびを穴の中に落として
しまった際︑穴の中からねずみの歌が聞こえてきたことに対
するおじいさんの驚きを表したものである︒︵十七︶は︑その
直後に﹁なかよくたのしくくらしたよ︒﹂と続くもので︑
拍数を揃えているといえる︒︵十六︶︑︵十七︶共にリズムよく
音読できる箇所である︒
︵十八︶は︑﹁はっきりはなそう﹂という見出しがあり︑
夏休みの体験を発表する児童に対し︑別の児童が質問してい
る例である︒
︵十九︶は︑直前に読点が打たれた接続語が現れている例で
ある︒
以上のように︑﹁は﹂に読点が打たれていない場合も︑打た
れている場合と同様に主題を表しているものの︑文型練習︑
リズムの調整︑質問文︑接続語が関わっている例であった︒
つまり︑該当する文が︑何等かの表現意図や表現技法を有す
る場合︑﹁は﹂には読点が打たれないということである︒これ
をまとめると次のようになる︒
I﹁は﹂に読点が打たれているのは︑主題を表す場合である︒
主題を表すのにもかかわらず︑読点が打たれていない場合
は︑該当する文に何等かの表現意図や表現技法が認められ
る場合である︒
− 8 −
八・三読点が打たれている用例数が少ない助詞
読点が打たれている用例数が少ない助詞を検討する︒
表1をみると︑読点が打たれている例のうち︑格助詞の
﹁が﹂は全七二例中六例︵八・三%︶︑﹁を﹂は全八六例中四
例︵四・七%︶︑﹁に﹂は全三五例中四例二一・四%︶で
あった︒その割合は︑約五〜十%程度で低いと考えられる︒
他の助詞については︑そもそも全体の用例数が少ないため︑
本稿では考察対象から外す︒以下では︑﹁が﹂﹁を﹂﹁に﹂を取
り上げる︒
八・三・一﹁が﹂
﹁が﹂の例を検討する︒読点が打たれている例を挙げる︒
︵二十︶くまさんが︑ふくろをみつけました︒︵二八頁︶
︵二十一︶くまさんが︑ともだちのりすさんに︑ききにい
きました︒︵三○頁︶
︵二十二︶くまさんが︑ふくろをあけました︒︵三二頁︶
︵二十三︶おじいさんが︑かぶのたれをまきました︒
︵七六頁︶
︵二十四︶▼だれが︑だれをよんできましたか︒
︵八六頁︶
︵二十五︶いろいろなじどう車が︑どうろをはしって
います︒︵九二頁︶ 以上の例から︑﹁が﹂は︑主に他動詞文の主語を表す場合に読点が打たれていることがわかる︒ただし︑︵二十二は︑文末に﹁行く﹂という自動詞があるが︑﹁ききにいく﹂と︑他動詞の﹁聞く﹂もある点で注意が必要である︒これは︑﹁くまさん﹂が︑﹁Vに行く﹂という複雑述語のVに係ると考えれば︑他の例と同様に︑他動詞文に対して読点が打たれていると捉えることができる︒つまり︑﹁が﹂に読点が打たれている場合は︑やはり他動詞文の主語を表す場合と整理することができるのである︒
ところで︑︵二十五︶のように︑﹁はしる﹂という自動詞文
の主語に読点が打たれている例がある︒それでもこの例では
﹁どうろを﹂と経過する場所を表す﹁を﹂があり︑形式上は
﹁AがBをV︵Vは動詞︶﹂と整理することができる︒つまり︑
他動詞文の主語の﹁が﹂に読点が打たれることを基本としつ
つ︑﹁AがBをV﹂という形式を満たす場合には︑﹁が﹂に読
点が打たれていると把握できるのである︒
このことを確かめるために︑﹁が﹂に読点が打たれていない
例を見てみよう︒
︵二十六︶﹁しまった︒あながあいていた︒﹂︵三二頁︶
︵二十七︶あたたかいかぜがふきはじめました︒
︵三四頁︶
︵二十八︶ながいながい︑はなのいつぼんみちができ
− 9 −
ました︒︵三四頁︶
︵二十九︶さきがするどくとがったくちばしです︒
︵四五頁︶
︿三十︶ふとくて︑さきがまがったくちばしです︒
︵四七頁︶
︵三十一︶どんなことがありましたか︒︵七四頁︶
︵三十二︶▼﹁大きなかぶ﹂のおはなしには︑どんな
ひとやどうぶつがでてきましたか︒
︵八六頁︶
︵三十三︶かぶをおじいさんがひっぱって︑おじいさん
をおばあさんがひっぱって︑﹁うんとこしよ︑
どっこいしょ・﹂それでもかぶはぬけません︒
︵七八頁︶
︵二十六︶から︵三十二︶までの例は︑すべて自動詞文の例
であり︑先程の内容と整合する︒しかし︑︵三十三︶は︑﹁ひっ
ぱる﹂という他動詞を含む文である︒ただ︑この例では︑目
的格を表す﹁を﹂が文頭に現れており︑基本語順の移動がみ
られる︒つまり︑倒置による作者︵翻訳者︶の表現意図が認
められるのである︒
以上を踏まえまとめると︑次のようになる︒
Ⅱ﹁が﹂に読点が打たれているのは︑主に他動詞文において
である︒自動詞文には打たれていない︒ただし︑﹁を﹂と共 八・|||・二﹁を﹂
﹁を﹂の例を整理する︒読点が打たれている例を挙げる︒
︵三十四︶はちどりは︑ほそながいくちばしを︑はなの
なかにいれます︒︵五○頁︶
︵三十五︶つくえのうえを︑ぴかぴかにふけるようになり
ました︒︵七二頁︶
︵三十六︶きょうきゅう車は︑けがをした人や︑びょうきの
人を︑びょういんへはこぶしごとをしています︒
︵九七頁︶
︵三十七︶▼かたかなを︑よんだりかいたりしましょう︒
︵九八頁︶
︵三十四︶から︵三十六︶の例で︑﹁を﹂に読点が打たれて
いるのは︑直後に述語が現れない場合︑すなわち︑述語と隣
接していない場合だと考えられる︒
ところで︑︵三十七︶のように︑一見︑述語が隣接している
ようにみえる例がある︒これは﹁よんだり﹂とは隣接するが︑
並列する﹁かいたり﹂の部分とは隣接していないため︑読点
が打たれていると把握できる︒もしくは︑直前の頁︵テキス 起する場合には︑打たれている︒他動詞文にもかかわらず︑読点が打たれていない場合は︑語順の移動や何等かの表現意図や表現技法が認められる場合である︒
‑ 1 0 −
卜九七頁︶の内容から離れ︑片仮名を書く練習をさせる部分
であることからすると︑﹁かたかな﹂は︑文の焦点となる新
情報を表し︑そのことを示すために読点が打たれているとい
う見方もできる︒
次に︑読点が打たれていない例を挙げる︒
︵三十八︶ことばをいれて︑ぶんをつくる︒︵三六頁︶
︵三十九︶そして︑きのなかにいるむしをたべます︒
︵四六頁︶
︵四十︶バスやじょうよう車は︑人をのせてはこぶ
しごとをしています︒︵九三頁︶
︵四十一︶かぶをおじいさんがひっぱって︑おじいさん
をおばあさんがひっぱって︑﹁うんとこしよ︑
どっこいしょ・﹂けれども︑かぶはぬけません︒
︵七八頁︶
︵三十八︶から︵四十︶の例で︑﹁を﹂は他動詞と隣接して
い↓︒Oただし︑﹁大きなかぶ﹂には︑︵四十一︶の﹁かぶをおじ
いさんがひっぱって﹂のように︑他動詞と隣接していない
のにもかかわらず︑読点が打たれていない例が見られる︒こ
れは︑改行の位置がかかわっていると考えられる︒すなわち︑
実際のテキストでは︑︵四十三のように︑﹁かぶを﹂で改行
されており︑﹁おじいさんがひっぱって︑﹂と︑主語・述語 が一行に収まるように工夫されているのである︒この表現形式は︑その後︑かぶを引っ張る場面において繰り返し現れている︒﹁を﹂が倒置されていることと合わせ︑作者︵翻訳者︶の表現意図を読み取ることができるのである︒︵四十二︶﹁大きなかぶ﹂の改行位置︵七八頁︶
おじいさんは︑おばあさんをよんできました︒
かぶを
おじいさんがひっぱって︑
おじいさんを
おばあさんがひっぱって︑
﹁うんとこしよ︑どっこいしょ・﹂
それでも︑かぶはぬけません︒
以上の例から︑﹁を﹂と読点の関係をまとめると︑次のよう
Ⅲ﹁を﹂に読点が打たれているのは︑述語が隣接していない になる︒
場合である︒述語が隣接していないのにもかかわらず︑読
点が打たれていない場合は︑何等かの表現意図や表現技法
が認められる場合である︒
八・三・三﹁に﹂
﹁に﹂の例を検討する︒読点が打たれている例を挙げる︒
︵四十三︶ぼくは︑ひらせまみさんに︑すきなたべものをき
‑ 1 1 ‑
きました︒︵六七頁︶
︵四十四︶なつやすみに︑なにをしましたか︒︵七四頁︶
︵四十五︶くまさんが︑ともだちのりすさんに︑ききに
いきました︒︵三○頁︶
︵四十六︶▼ほかに︑どんなじどう車がありますか︒
︵九七頁︶
結論から述べると︑︵四十三︶から︵四十六︶の例では︑
﹁ひらせまみさん﹂﹁なつやすみ﹂﹁︵ともだちの︶りすさん﹂
は︑文の焦点を表す新情報であり︑そのため︑読点が打たれ
ていると考えられる︒
︵四十三︶の例は︑﹁すきなもの︑おしえて﹂という見出
しがあり︑それについて作文を書かせる単元である︒そのた
め︑好きなものを﹁誰か﹂に教えてもらう必要がある︒ここ
では︑﹁あくなおき﹂君が︑﹁ひらせまみさん﹂に質問し︑答
えてもらったことを作文にしている︒このことから︑﹁ひらせ
まみさん﹂は︑新情報であるといえる︒
︵四十四︶の例は︑その直前に﹁みんなにしらせたいこ
と﹂という見出しがあった︒それを承け︑テキストでは︑本
文の冒頭で︑︵四十四︶の例が挙がっている︒﹁いつ﹂のこと
を知らせたいのかは︑ここまでに述べられていないため︑﹁な
つやすみ﹂という情報は︑新情報であるといえる︒
︵四十五︶の例では︑﹁くまさん﹂が︑何かよくわからない ものが入った袋を見つけ︑それが何かを﹁りすさん﹂に聞きに行くという場面である︒﹁誰﹂に聞きに行くかはここまでに述べられていないため︑﹁りすさん﹂は︑新情報である︒
︵四十六︶の例は︑﹁じどう車くらべ﹂の文章の後に示され
ている︑発展的な内容である︒本文で様々な自動車が取り上
げられたことを承け︑﹁他に﹂どんな自動車があるか考えさせ
るものであるため︑﹁他﹂は︑新情報である︒
以上のように︑﹁に﹂に読点が打たれているのは︑すべて文
の焦点を表す新情報の場合であった︒
次に︑読点が打たれていない例を挙げる︒
︵四十七︶▼たてによんでみましょう︒︵四○頁︶
︵四十八︶うたにあわせておどりだす︒︵六一頁︶
︵四十九︶わたしのあさがおにはながさきました︒
︵七三頁︶
︵五十︶きつつきは︑とがったくちばしで︑きにあな
をあけます︒︵四六頁︶
︵五十一︶おれいにこづちをあげましょう︒︵六三頁︶
︵四十七︶︑︵四十八︶の例では︑﹁に﹂は述語と隣接してい
る︒述語と隣接する場合には︑読点が打たれていないと考え
ることができる︒
ただし︑︵四十九︶から︵五十二の例は︑述語が隣接して
いないのにもかかわらず︑読点が打たれていない︒これにつ
‑ 1 2 ‑
いては︑直後にみえる名詞との関係を捉える必要があると考
える︒すなわち︑例文中の﹁に﹂を﹁の﹂に変換すると︑名
詞句をつくることができるのである︒具体的には︑︵四十九︶
は︑﹁わたしのあさがおのはな﹂︑︵五十︶は︑﹁きのあな﹂︑
︵五十二は︑﹁おれいのこづち﹂となる︒
つまり︑以上の例は︑述語よりも直後の名詞との繋がりを
優先したことから︑読点が打たれていないと考えることがで
きる︒
ところで︑次のような例もみられた︒
︵五十二︶▼かきじゆんにきをつけて︑かきましょう︒
︵九一頁︶
これについては︑﹁きをつけて﹂が連文節で︑連語である
と考えると︑述語と隣接する例だと把握できる︒
以上の例から︑﹁に﹂と読点の関係をまとめると︑次のよう
になる︒Ⅳ﹁に﹂に読点が打たれているのは︑基本的に︑文の焦点と
なる新情報を表す場合である︒ただし︑新情報を表す場合
であっても︑述語と隣接している場合は︑読点は打たれて
いない︒また︑述語と隣接していないのにもかかわらず︑
読点が打たれていないのは︑﹁に﹂を﹁の﹂に変換でき︑直
後の名詞と名詞句を形成する場合である︒ 前節で︑教科書にみえる助詞に打たれた読点の例を整理した︒この実態を再掲すると︑次のようになる︒I﹁は﹂に読点が打たれているのは︑主題を表す場合である︒
主題を表すのにもかかわらず︑読点が打たれていない場合
は︑該当する文に何等かの表現意図や表現技法が認められ
る場合である︒
Ⅱ﹁が﹂に読点が打たれているのは︑主に他動詞文において
である︒自動詞文には打たれていない︒ただし︑﹁を﹂と共
起する場合には︑打たれている︒他動詞文にもかかわらず︑
読点が打たれていない場合は︑語順の移動や何等かの表現
意図や表現技法が認められる場合である︒
Ⅲ﹁を﹂に読点が打たれているのは︑述語が隣接していない
場合である︒述語が隣接していないのにもかかわらず︑読
点が打たれていない場合は︑何等かの表現意図や表現技法
が認められる場合である︒
Ⅳ﹁に﹂に読点が打たれているのは︑基本的に︑文の焦点と
なる新情報を表す場合である︒ただし︑新情報を表す場合
であっても︑述語と隣接している場合は︑読点は打たれて
いない︒また︑述語と隣接していないのにもかかわらず︑
九考察
‑13−
読点が打たれている場合の特徴
①﹁は﹂は︑主題を表す場合
②﹁が﹂は︑述語と隣接していない場合
③﹁を﹂は︑述語と隣接していない場合
④﹁に﹂は︑述語と隣接しておらず︑焦点を表す場合
﹁は﹂に読点が打たれているのは︑Iを参考にすると︑主題
を表す場合であった︒これは︑主語・述語の関係を明確にす
るために︑読点が打たれていると考えられる︒
﹁が﹂に読点が打たれているのは︑Ⅱを参考にすると︑他動
詞文の主語を表す場合であった︒これも文の主語・述語の関
係を明確にするために︑読点が打たれていると一応考えるこ
とができるかもしれないが︑自動詞文の主語に読点が打たれ
ていない点が説明できない︒そのため︑﹁が﹂に読点が打たれ
ているのは︑﹁を﹂と同様に︑述語と隣接していない場合だと
考えることができる︒すなわち︑自動詞文の例では︑述語と 結論を述べると︑小学校第1学年の教科書における助詞と読点の関係︑特に読点が打たれている場合には︑以下のような特徴があると考えられる︒ 読点が打たれていないのは︑﹁に﹂を﹁の﹂に変換でき︑直後の名詞と名詞句を形成する場合である︒ 隣接する例ばかりであったために︑読点が打たれていなかったいうことである︒
﹁に﹂に読点が打たれているのは︑Ⅳを参考にすると︑文の
焦点となる新情報を表す場合であった︒文中の重要な情報を
明確に示すために︑読点が打たれていると考えられる︒
①から④は︑あくまでも調査範囲内の特徴である︒しかし︑
学校教育においては︑これらを一つの基準にすると︑この特
徴から外れた例では︑作者の何らかの表現意図や表現技法が
現れている可能性があり︑より深く読解することが期待でき
る︒また︑作文教育においても︑どこに読点を打てばよいか︑
参考にすることができるであろう︒
以上︑教科書における助詞と読点の関係について︑その実
態を確認した︒
最後に︑学校教育で読点を扱う意義について付言する︒
読点そのものは︑表現者︵書き手︶の表現方法の一つとし
て︑柔軟に用いられるべきものである︒しかし︑だからと
いって︑学校教育で指導しなくてもよいというわけではない︒
読点が打たれる位置によって︑文の意味が変化することが
あるという事実から︑読点には︑適切な︵わかりやすい︶文 十おわりに
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石黒圭︵二○○九︶﹃よくわかる文章表現の技術11表現・表記
編l﹇新版﹈﹂明治言院
井上ひさし︵一九八一︶﹃私家版日本語文法﹂新潮社
川上華︵一九七四︶﹁点の問題点l補助記号論l﹂﹃言語生活﹂ を作成するという役割を認めることができる︒これは︑読点の指導が︑児童の言語能力の向上に資することを意味する︒
だが︑それだけではない︒読点をどこに打つのが適切であ
るかを考えることそれ自体が︑他者を意識した言語活動であ
り︑打たれた読点は︑他者への配慮を示した結果でもあるの
である︒したがって︑読点の指導の際︑他者の存在を児童に
意識させることが︑教員には求められる︒
文法指導の一端を担うという位置付けだけでは︑児童は他
者の姿を自覚しにくい︒教員にあっては︑読点が誤解のない
表現のための符号であるという側面だけでなく︑他者とのコ
ミュニケーションを円滑にするための符号であるという側面
を忘れずに指導することが求められる︒これは︑無味乾燥に
なりがちな読点の授業︑ひいては文法の授業そのものが︑
﹁主体的・対話的で深い学び﹂に発展することを示唆するも
のである︒
参考文献
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雄・山元隆春編﹃国語科重要用語事典﹂明治図書
飛田良文︵一九七四︶﹁句読点表示の成立過程l明治初年から﹃句
読法案﹄までl﹂﹁言語生活﹂二七七︑筑摩書房
本多勝一︵一九九四︶﹃実戦・日本語の作文技術﹄朝日文庫
文部科学省︵二○一七︶﹁小学校学習指導要領︵平成羽年告示︶﹂
文部科学省
文部省教科書局調査課国語調査室︵一九四六︶﹃くぎり符雅の使ひ
方︹句調法案︺﹂︵国立国会図書館デジタルコレクション
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十八日閲覧︶
文部大臣官房図書課︵一九○六︶﹁句讃法案分別書キ方案﹄︵国
立国会図書館デジタルコレクション冒言茎巳ロ&ぬ︒君昏昏旨且亘
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︵きよた.あきひろ大阪大学非常勤講師神戸学院大学非
常勤講師桃山学院中学校高等学校非常勤講師︶