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教科書表現の変遷 ―中学校技術教科書―

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

教科書表現の変遷 ―中学校技術教科書―

著者 吉田 武尚, 福田 誠, 樫岡 健史

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 31

ページ 39‑50

発行年 1995‑03‑01

その他のタイトル An Analysis of Junior High School Technical Training Textbooks from the Viewpoint of Phraseological Changes

URL http://hdl.handle.net/10105/6858

(2)

教科書表現の変遷‡

一中学校技術 教科書一 吉田 武尚・福田  誠杣・樫岡 健史‡舳    (技術教室)   (奈良市教育委員会)

要旨:教科書表現の変遷をコンピュータを用いて、計量国語学の視点から分析 した。さらに、意味論の観点から基本的・基礎的概念を表す専門語についても 考察を試みた。その結果、教科書における漢字含有率増加の要因が明らかになっ たとともに、説明的記述の不安定さについても証明しれ

キーワード:教科書表現 計量国語学 テキストデータベース

1.はじめ こ

 教えるということは、1)伝達することであり、2)経験をわかちあうことであり、3)各自 のもっていることを共通にすることである。そして、そこに教えることを助ける補助としての教 科書がある。よりよい教科書とは、凝集された知識を組織的に並べ、それに対して的確で親切な 説明が施されており、生徒の学習さらには教師の教授活動を支援するものである。

 財団法人教科書研究センターが行った「教科書の質的向上に関する総合的調査」刊がある。その 調査によると、小・中・高の平均ではあるが、6割の教師が教科書で授業をすすめるという教科 書中心の授業を考えており、児童・生徒が読んでわかる教科書が望まれている。中学校技術の教 科書もしかりである。

 昭和37年、近代技術に関する基礎的な技術の習得と、それに対する理解や創造的実践的な能力 の育成をめざした新しい教科(中学校技術)が創設された。以来32年の歳月が流れ、この間、科 学技術の進歩や生活の質的向上など社会の変化に対応して教科書内容や記述に変更が加えられて

きている。

 そこで、本研究では中学校技術科教科書下技術・家庭」(開隆堂出版)の電気領域を対象として、

コンピュータ言語学の視点をおりまぜて、教科書表現の変遷を明らかにする。また、専門語の使 われ方や、その意味についても考察を行う。

  *An Analysis of Junior High School Technical Training Textbooks from the Viewpoint of    Phraseologica1Changes

 **Takehisa YOSHIDA,Makoto FUKUDA(Department of Technica1Education,Nara University   of Education,Nara〕

***Takefumi KASHIOKA(The Board of Education of Nara City,Nara〕

(3)

2.教科害のテキストデータベース化

 テキストデータベースの作成については、コンピュータ・周辺機器・ソフトウエアを使用して

いる。

 コンピュータ    ;Macintosh Quadra800  スキャナ     ;App1eCo1orOneScanner  OCRソフト     ;MacReader plus v.2.5  テキスト検索ソフト;MyDataBrouser1.7

 テキスト処理言語 ;Japanized Gnu Awk(jgawk)2.15.2+1.0+1.2.2(Mac)

 エディタ     ;YooEdit0.97a7

 まず、OCR(光学文字読み取り装置)を用いて、次のような手順で行う。(1〕スキャナから画 像データとして文書を読み込む、/2〕認識する範囲を指定する、(3)辞書と対照して、文字コードと

して認識する、(4〕認識した結果を記憶し、出力す乱ここでの認識率は90%程度である。

 つづいて、文字が正確に認識されたかどうかを確認する。それは一番労力のいる仕事であるが、

このことをおろそかにしてしまえば、検索結果の意味は半減す糺つぎに、このテキストデータ ベースから指定された表現にマッチした行をリストアップするといった機能を持つ MyDataBrouser1.7というソフトを使用して検索を行う。情報検索には、検索を確実に行い、関 連のない情報をカットすることが要求されるが、「拾いすぎ」といった現象からは逃げられない。

つまり、人問の手による分類整理が必要である。

3.計量国語学的視点から見た教科警の変撮 3−1.教科のありかたと情報量について

 技術・家庭科の第1期(昭和37年度以降)から第4期(平成5年度以降)までは、30年そこそ この短い期間ではあるが、その問にも様々な変化が見られ糺たとえば、教科書の物理的な量や 文の長さの変化などがあげられる。これらには、大きく分けて2つの理由があると考える。その

ユつは、技術・家庭科のあり方に応じた変化であり、もう1つは狭義での日本語の変化であろう。

その変化を具体的に示せば、次のようになる。

11)教科のあり方;

 技術教科の年間授業時間数は、第1期と第2期(昭和37年度版一昭和53年度版)は各学年105 時間、第3期(昭和56年度版一平成2年度版)は1,2年が70時間、3年が105時間、第4期(平 成5年度版一)が1,2年が70時間、3年が70〜105時間というように変化してきた。これに連 れて、電気領域に割り当てられた授業時間数も変化している。

(2)情報量及び文体;

 年間授業時間数の変化に応じて、教科書の情報量が変化するのは当然のことと思われる。教科 書のデータベース化の副産物として、テキスト処理言語jgawkを用いて得られた統計調査から、

教科書の総文字数、文の数、文の長さの平均、漢字含有率の変遷を図1に示す。このグラフから、

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600

500

400

300

200

100

/  .一べ

\一イ

!\!∴

二こ1㌘∵

十文の長きXlO

+…□宇合構夢{ム〕

霜 鶏 霜 霜 霜 籍 霜 霜 霜 震 震 」」

3π   41    4   4ワ   o0   55   56   59   62   2    5

養 震養 養 養 震 養 養 養・養 養

       教科警使用年度   図1 計量国語学から見た教科書の変遷

昭和56年度版が一大転換期になっていることがうかがえる。この年は2回目の学習指導要領改訂 後、初の教科書が出され、さらに、この改訂を機に教科書の大きさが大判に変わっている。教科 書の情報量と教科のあり方には一種の相関関係があるものと推測できる。

 樺島忠夫引は、文章は文を連ねて作られていて、文の長い短いは読みやすさや読みにくさに関 係し、また、文章の印象をも左右すると述べている。そこで、文の長さがどのように変わってき たかを見た。文の長さは、総文字数を句点の数で割って算出し、文字数や、文の数は、jgawkを 用いてカウントしている。

 また、奥秋義俘〕は、文脈が通っていて、歯切札が良く、読み手に苦痛を与えない文章が理想 的だと述べている。だから、文の長短によって文章の性格を推測する試みがなされている。樺島 は、文の長さの平均が44字以下であるのが望ましいと指摘しており、奥秋は、20字ないし55字の 文が最適であると述べている。さらに、金田一春彦jは、われわれの日本語では、つとめて短い センテンスで文章を書かなければならないと述べてい糺

 以上のような基準と照らし合わせて、教科書の文の長さを見たとき、第1期から第4期までほ ぼ一貫して、適当な文の長さを保っていると考える。なかでも、第3期以降の教科書は樺島の理 想にマッチしている。また、第1期の教科書に比べて、第4期の教科書の文の長さが明らかに短

くなって読みやすくなったといえる。しかし、読みやすくなったといって手放しで喜ぶわけにも

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いかない。永野賢!jは、程度の高いものほど文が長くなるのは、表現しようとする事がらが複雑 になるからであると指摘している。永野の考えに基づけば、学習内容の程度が低下したため、文 が短くなったとも解釈できる。実際、授業時間数の減少と文の長さには相関関係があるように思 える。また、平成5年度から完全実施された男女共修による学習内容の精選も文の長さの減少に つながっているのかもしれない。

3−2.教科書の漢字含有率について

 漢字含有率=文章中の漢字の総数/文章中の漢字と仮名の総数×100で求められる。

 安本美典uは、1900年から1955年までの100人の作家・100編の作品の漢字含有率を調査した。

その結果、漢字含有率は直線的に減少していることを明らかにした。そして、この減少傾向に加 速度がついた場合は2031年に、この傾向が続くとするなら2191年に漢字含有率はゼロになると予 測した。それでは、教科書の漢字含有率はどのように変化してきているのだろうか。教科書の機 械可読化の結果、漢字含有率の全数調査をjgawkを用いて行うことができた。確かに、図1か ら昭和47年度版では漢字含有率は大きく減少しているといえる。しかし、それ以降、安本の仮説 に反して平成2年版まで増加し続けている。

 佐竹秀鮒〕は、漢字含有率に影響を与えうる要因として、作品のあり方と作品を表記する人間 のあり方の2つの要因を挙げている。作品のあり方が与える影響とは、作品のあり方が表現・単 語を通じて漢字含有率に影響を与えることをいう。つまり、自立語の概念を表す語は主に漢字で 書き、形式名詞・活用語尾・助動詞・助詞などは平仮名で表記するということは、ぽぽ決まって いるためである。また、文章の文字数も漢字含有率を左右している。樺島は、限られた紙面で多

くの情報を伝えようとすると漢字が多くなると述べている。新聞の三行広告が、最たる例である。

教科書の総文字数の変遷を示したグラフ(図1)から、樺島の説のとおり、総文字数と漢字含有 率は相関関係にあるといえる。

 作品を表記する人間のあり方が与える影響は、文字選択権の所有である。日本語の正書法はほ ぼ確立しているが、どういう語を漢字にするかは表記主体である人間が最終的に決めることであ る。また、ワープロの使用が漢字含有率を増加させているという意見もある。ナネット・コット リーブm〕は、手で書く場合、漢字を忘れると辞書を引いたり、仮名にしたりすることがあるが、

仮名漢字変換キーを押してワープロのメモリーからどの漢字でも簡単に引き出せるため、書類は 以前の手書き時代に比べて漢字が多くなってきたことを指摘している。野村雅昭川も同様のこと

を確信している。実際、最近の文章では「悦惚」や「毅然」などの表記が見受けられる。しかし、

教科書の場合、表記主体の意向を抑制する存在がある。たとえば、教科書会社や検定を行う文部 省である。したがって、教科書の場合は表記主体が与える影響は薄いと思える。

 以上の考察から、教科書の漢字含有率を大きく左右しているのは作品のあり方であると考える。

事実、教科書の総文字数や学習指導要領の改訂、教科書の大きさの変更などを機に漢字含有率は、

変動している。

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4.専門語使用の実態 4−1.電気と電気エネルギーについて

 まず、電気という語彙項目がどのような意味で用いられているかを見ていく。そのために「電 気」の意味が少しでもわかる用例を表1に挙げる。つづいて、その意味分析を表2に示す。

 上記(・ト(j)の電気についての意味を、次の(1ト(5)の基準で分類整理した。

(1)発電や送電、供給といった言葉での説明

(2)生活や産業との関係での説明

(3〕様々なエネルギーの源としての説明

(4)コイルと磁界との関係での説明

/5〕コンデンサに蓄えられるものとしての説明

 その結果を記述の煩をさけて表5に示す。表5からわかるように、昭和37年度版から昭和62年 度版まで、電気は生活や産業と深い関わりのあるものとして説明されている。しかし、平成2年 度版以降そういった説明は姿を消している。また、電気の使用度数も減少して来ており、現行の 教科書では、わずかに5回使用されているだけである。それに比べて、電気エネルギーの使用度 数は急激に増加しており、同じく現行の教科書では35回も出現している(図2)。次に電気エネ ルギーという語彙項目の意味を考察する。まず、最初に「電気エネルギー」の意味がわかる用例 を表3に挙げる。また、その意味分析を表4に示す。

 以上のように、これら2つの語彙項目の使われ方がどのように重複しているかを見るため、表 5と同じ形式で表6を作成した。表5、表6を比較すると、第3期までは電気と電気エネルギー の意味が重複されがちであ乱しかし、現行の教科書からは、電気と電気エネルギーは明確に使 い分けられてい乱すなわち、コンデンサに蓄えられるものが電気であるというような記述をの ぞいて、これまで電気として説明されていたものが、全て電気エネルギーとして用いられるよう になっていることがわかる。これまで見てきたように、電気と電気エネルギーは非常に類似した 用いられ方をしており教科書執筆者でさえ、その区分をあやふやにしてきたといっても過言では ない。また、電気エネルギーに関する説明は特に不十分であり、教科創設以来32年をへた今、電 気とは何か、電気エネルギーとは何かといった基本的・基礎的概念に関する正確な説明的記述の 必要性が求められる。

4−2.電気器具と電気機器について

 電気器具と電気機器とでは、意味にどのような差異があるのか。日本国語大辞典には電気器具 の項目が立てられていて、「電気を熱・光・動力源などに利用した器具。電気製品。」とある。さ らに、器具として「簡単な器械や道具類。」といった記述がある。また、電気機器については項 目が立てられておらず、機器として「器具、器械、機械の総称。」と記述されている。つまり「電 気器具⊆電気機器」という図式が考えられ、電気器具と電気機器の意味は同じであると推測され

る。

 しかし、以上のようなことを100%信じることはできない。この表現では具体性を欠いており

(7)

表1 電気の用例

昭和37年度版

昭和41年度版

昭和44年度版

昭和47年度版

昭和50年度版

・一 ハの住宅の屋内配線には、2本の電線で単相交流100Vの電気が供給される。

・私たちは、毎日、家庭や職場での生活に電気を盛んに利用している。

 たとえば、電気を照明器具で光に、電熱器具で熱に、電動機で機械的エネル ギーに、通信機器で信号や音にかえ、直接日常生活に役立てている。

・このように、私たちは、電気を利用した機械や器具を用いて生活の能率化を はかり、文化を向上させている。

・電気は、産業・交通・通信などにきわめて重要な役割をはたしている。

・電気機器は、目に見えない電気を使うので、そのはたらきがわかりにくいも のが多い。

 家庭で電気を使う場合には、電燈線のソケットやコンセントにきている交流 100Vを電源とすることが多い。

・この電気は、発電所で作られ、高圧線で町や村に送られてきたものである。

・高圧の電気は、19図にあるような柱上変圧器で低い電圧にされ、各家庭に引 込線で配られる。

・コンデンサは82ぺ一ジですでに学んだように、絶縁物をはさんで2枚の金属 の極板を向かい合わせたもので、これに直流電圧を加えると、瞬間に充電電流 が流れて、極板に電気がたくわえられる。

・このように、電気を利用した機械や器具を用いることによって、生活の能率 化や向上がはかられている。

・電気は、産業の各分野に関係が深く、とりわけ、交通・通信などにきわめて 重要な役割をはたしている。

・いっぱんの家庭で利用されている電気は、16図のように引込線から電力量計 電流制限器を通って、安全器(カットアウトスイッチ)に送られ、屋内配線に

よって谷へやに配られ、電源として利用されている。

・電気技術は、おもに電気を光・熱・動力などのエネルギーの源として、利用 するために進歩してきたが、また、電信・電話やラジオなどのように、通信手 段としても大きな進歩をとげてきた。

 また,電気こんろやけい光燈、扇風機のように、電源につながれて、電気を 熱、光、動力などにかえるものを負荷という。

・電気は、熱や光、動力などのエネルギーにかえやすいので、生活のなかでい ろいろな面に広く利用されている。

・コイルは、磁界のなかで動くと電気を発生する性質があるから音声信号がつ くられる。

・コンデンサには、電気を蓄えるはたらきと、直流は通さない交流は通すとい うはたらきがある。

 電気技術は、日常生活や産業のなかで、おもに電気を、光・熱・動力などの エネルギーの源として利用するために進歩してきた。

 いっぽう、電気は、電信や電話などのように通信の手段としても利用され、

その技術は大きな進歩をとげた。

・また、電気こんろやけい光燈、扇風機のように、電源につながれて、電気を 熱、光、動力などにかえるものを負荷という。

・電気は、熱や光、動力などのエネルギーにかえやすいので、生活のなかでい

意味の判別がしがたい。つまり、どのようなものを電気器具といい、電気機器というのかの定義 が望まれる。

 そこで、教科書から用例を検索し、それらの意味について考察する。

(8)

ろいろな面に広く利用されている。

・コイルは、磁界のなかで動くと電気を発生する性質があるから音声信号がつ くられる。

コンデンサは、電気を蓄えたいところや、直流電流を流さないようにしたま まで、交流電流を通したいところに使用される。

・電気技術は、日常生活や産業のなかで、おもに電気を、光・熱・動力などの エネルギーの源として利用するために進歩してきた。

・いっぽう、電気は、電信や電話などのように通信の手段としても利用され、

その技術は大きな進歩をとげた。

昭和53年度版 回路をつくるには、電気を供給する電源と、電気を熱、動力、光、音などに かえる負荷、および、これらのあいだをむすぶ導線やスイッチなどが必要であ

る。

電気は、熱、動力、光や音にかえやすいので広く利用され、生活を能率化し 便利にしている。

・コンデンサには、13図のようなものがあり、直流電圧を加えると電気をたく わえるはたらきがある。

・これらだけでなく、電気を利用したものは、わたくしたちの生活や産業のな かでたくさん使われ、たいせつな役割をはたしている。

昭和56年度版 ・これらの機器では、電気が、光、熱、動力などにかえられ、生活に役だって

いる。

昭和59年度版 ・わたくしたちの家庭で利用している電気は、多くの人々の努力によって、発 電され、送られてきたものである。

わたくしたちの利用しているいろいろな電気機器は、電源から送られてくる 電気を光、熱、動力などにかえて、生活に役立っている。

昭和62年度版 住まいや道路を明るくてらしたり、家庭や工場で熱源や動力源として利用す るなど、電気はわたくしたちの生活になくてはならないものである。

しかし、日ごろ、ごくあたりまえに使っている電気は、決して無限にあるわ けではなく、石油をはじめ、限りある貴重な電源を使ってつくり出されている。

コンデンサは、14図(c)のように電気を蓄えることができ、このはたらき を充電という。

平成2年度版 わたくしたちの家庭で使う電気は、29図のように、柱上変圧器から電力量計 をへて、屋内の配電盤に導かれ、いくつかの回路にわけられて利用されている。

・柱上変圧器 送電線で送られてきた高電圧の電気を、100Vや200Vにさげて

いる。

しかし、日ごろ、ごくあたりまえに使っている電気は、決して無限にあるわ けではなく、石油をはじめ、限りある貴重な資源を使ってつくり出されている。

・コンデンサは、14図(c)のように電気を蓄えることができ、このはたらき を充電という。

平成5年度版 コンデンサは、電気を蓄えて放電することができる。

 まず、電気器具の意味がわかる用例を表7に挙げる。

 この用例からは、屋内配線を電源としているものが電気器具であると解釈できる。けれども、

この1つの用例のみから電気器具の概念を判断することはさける。

(9)

表2 電気の意味分析

昭和37年度版 1・)電線から供給され、様々なエネルギーに姿を変えて、日常盛んに利用され 生活や文化を向上させているもの。

昭和41年度版 (b)発電所で作られ、高圧線を通って送られてきて、柱上変圧器で低い電圧に 変えられてから家庭に配られる目に見えないもの。また、日常生活において きわめて広い範囲にわたって利用され、生活の能率化と向上をはかっている もの。コンデンサに蓄えられるもの。

昭和44年度版 (・〕日常生活や産業に関係が深く、重要な働きをなしているものであり、光、

熱、動力などの平ネルギーの源となるもの。

昭和47年度版 (d〕光、熱、動力などのエネルギーの源であり、生活や産業に広く利用されて 昭和50年度版 いるもの。コイルが磁界の中で動いたときに発生するもの。また、コンデン

サに蓄えられるもの。

昭和53年度版 1・〕電源から供給され、光、熱、動力、音などのエネルギーの源として、生活 や産業において広く利用され、生活を能率化し、便利にするといった重要な はたらきをするもの。コンデンサに蓄えられるもの。

昭和56年度版 lf〕光、熱、動力などの源であり、生活に役立てられているもの。

昭和59年度版 同 多くの人々の努力によって発電され、送られてくるものであり、光、熱、

動力などの源になっているもの。

昭和62年度版 (h)石油をはじめ、限りある資源を使ってつくられたものであり、熱源や動力 源として私たちの生活になくてはならないもの。また、コンデンサに蓄えら れるもの。

平成2年度版 川 石油をはじめ貴重な資源を利用してつくりだされ、送電線、柱上変圧器、

電力計をへて屋内の配電盤からコンセントに導かれてくるもの。コンデンサ に蓄えられるもの。

平成5年度版 lj〕コンデンサに蓄えられるもの。

 図3からわかるように、電気器具という語彙項目は昭和37年度から現行の教科書に変わるまで 比較的よく使用されており、それなりに重視されている。しかし、その説明は今日までほとんど 施されていない。「かんたんな」、「いろいろな」、「製作しようとする」などの装飾が加えられて

はいるが、それからは具体的な理解にはいたらない。4−1でも述べたが、当然なされているは ずの基本的な専門語の説明が30年以上もなされていないことになる。

 上記の用例(表8)より、せん風機、電気洗たく機、ブザ、電気こんろ、電気そうじ機、けい 光燈、電気アイロンの類が電気機器である。しかし、それは電気機器の名称の羅列にとどまり、

正確な意味記述にはつながっていない。それに、上記7つの電気機器は屋内配線に接続して用い られているものであり。上記用例の電気器具と全く同じようなあつかいといえる。

 以上、電気器具と電気機器の違いを考察したが、教科書の用例から判断する限り、電気機器と

は、我々が一般に言うところの電気製品ではないかと解釈される。また、電気機器と電気器具の

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表3 電気エネルギーの用例

昭和37年度版 ・水力や火力など自然界のエネルギーを、電気エネルギーにかえ、その電気工 ネルギーを、ふたたびいろいろなエネルギーにかえて利用している。

昭和41年度版 ・電気エネルギーは、光源として工場・道路・ビルディングなどの大規模な照 明に利用され、熱源として電気炉・電気溶接など、材料の熱処理や加工に盛ん に用いられている。

昭和53年度版 ・電気機器のしくみを調べるには、どのように電気エネルギーを利用し、どの ように機器としての仕事をするのか、分解などをして、観察するとよい。

昭和62年度版 ・2図のように、電気エネルギーをわたくしたちの利用したい光・熱・動力な どのエネルギーにかえるものが電気機器である。

平成2年度版 水力・火力・原子力などのエネルギーによってつくられて電気エネルギーは 遠くはなれた住宅や工場などへ送られてくる。

平成5年度版 ・自然界のエネルギーを利用してつくられた電気エネルギーは、電気機器に よっていろいろなエネルギーに姿をかえて、わたしたちの生活を支えている。

・わたしたちは、生活の中で電気エネルギーを手軽に使っているが、石油をは じめ、かぎりある貴重な資源を利用してつくりだしたものであるということを 忘れてはならない。

・電気エネルギーは、熱や光にかえることができるほかに、動力を得るために も利用されている。

表4 電気エネルギーの意味分析

昭和37年度版 ・水力や火力など自然界のエネルギーが変換されたもの。

昭和4I年度版 ・光源や熱源として盛んに用いられているもの。

昭和53年度版 ・電気機器に使用されるもの。

昭和62年度版 ・光、熱、動力などのエネルギーに変えられるもの。

平成2年度版 水力、火力、原子力などのエネルギーによってつくられたもので、光や熱な ヌの別のエネルギーに変えられるもの。

平成5年度版 ・貴重な資源を使ってつくりだされたものであり、光、熱、動力などのエネル Mーに変えられるもの。

意味の使い分けについては明らかではなく、「電気器具⊆電気機器」であるといえる。

 以上のことから、重要と思われる語彙項目の説明がここでもなされていないことがわかる。さ

らに、電気器具と電気機器が混用されていることから、使用語句の統一が求められる。これに加

え、概念を表す語彙項目の説明が不足していることからも教科書表現の再考が求められる。

(11)

表5 電気の意味分類 表6 電気エネルギーの意味分類

改定年度

(1) (2) /3) (4) (5)

昭和37年

昭和41年

昭和44年

昭和47年

昭和50年

昭和53年

昭和56年

昭和59年

昭和62年

平成2年

平成5年

改定年度

(1) (2) (3) 14) (5)

昭和37年

昭和41年

昭和44年 昭和47年 昭和50年 昭和53年 昭和56年 昭和59年

昭和62年

平成2年

平成5年

 35

徴30

25

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15

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E一 d最

一一].一

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霧 鶉 霜 霜 霧 霜 霜 霜 霜 護 震

3甲41 震 産 震 震 震 震 震 鐘 震 籠 震 一505300596呂25

       教科書使用年度

図2 電気と電気エネルギーの使用度数の変遷

(12)

 50 使

度45

・一■

d気8^

十電最標間

40 35

30

ノ/口

̲一

・一・

O

25

20

15

10

霧 黒

丁   

養 震

霜霜霜霧 霜

    ¶   50   53   00

養養養養養

霜・鶏

50  幽

養・賃

萎震 2  5 書 養 教科○使用年度

図3 電気器具と電気機器の使用度数の変遷 表7 電気器具の用例

昭和37年度版 この屋内配線が、電燈をはじめ、家庭用電気器具の電源となる。

表8 電気機器の用例

昭和47年度版 ・わたくしたちの生活には、ブザをはじめ、電気こんろ・電気洗たく機・電気 そうじ機など、いろいろな電気機器が、取り入れられている。

わたくしたちは、ブザをはじめ、電気こんろ・電気洗たく機・電気そうじ機 などいろいろな電気機器を広く利用している。

ラジオ受信機、テレビジョン受信機、けい光燈など、広く電気機器に使われ

る。

・電気そうじ機、電気洗たく機などの電気機器に使われる。

昭和53年度版 わたくしたちの家庭では、電気アイロン、電気洗たく機、電気そうじ機、け い光燈など、いろいろな電気機器が広く利用されている。

昭和56年度版 わたくしたちの生活には、けい光燈、電気アイロンや電気洗たく機など、い 昭和59年度版 ろいろな電気機器が使われてい瓦

わたくしたちの生活には、電気アイロン、けい光燈、電気洗たく機などのよ うな電気機器や、ラジオ受信機やテレビ受信機などのような電子機器が使われ、

たいへん便利になってきた。

平成5年度版 扇風機や電気そうじ機など、機械的な仕事をする電気機器の中には、動力源

として電気エネルギーを動力にかえるための電動機が用いられている。

(13)

5.おわりに

 戦前のように教科書を絶対化し、そこに書かれている知識を伝達する。すなわち、「教科書を 教える」のではなく「教科書で教える」あるいは、「教科書でも教える」ことを主張する人も少

なくはない。しかし、何はともあれ6割の教師が教科書中心の授業を考えているからには、学習 を助ける補助としての教科書の位置づけは看過できない。

 さて、本研究では計量国語学の視点から見た教科書表現の変遷と専門語の用法について考察を 行った。今回考察した専門語は、紙面の都合上わずか2つと少ない。けれども、その結果と我々 の教科書観とを照らし合わせたとき、本研究で扱った教科書には「的確で親切な説明」、とりわ け基本的な概念の説明が欠けていることがわかった。このような現象は、ほとんど全ての専門語 に共通していることと言える。また、明らかに文章量の少ない昭和56年度版以降の教科書は、先 の調査にあった6割の教師の要求を満たすものとはいいがたい。すなわち、この頃から「教科書 で教える」、「教科書でも教える」ことが主流になってきたことが推測できる。今後、他領域につ いても調査研究し、よりよい教科書の概念を求める計画であ糺

引用・参考文献 1)安本美典;「漢字の将来」,『言語生活』137号,1963 2)永野賢;r悪文の自己診断と治療の実際』,至文堂,1969 3)樺島忠夫編;『文章作法事典』,東京堂出版,1978

4)佐竹秀雄;「各種文章の字種比率」,『国立国語研究所報告71研究報告集一3一』,327−346.

  1982

5)吉本均編;『現代授業研究大事典』,明治図書,1987 6)金田一春彦;『日本語・心服(下)』,岩波書店,1988

7)三枝孝弘;「教科書の位置づけと役割」,r教師とメディアの間一新しいコミュニケーション   の創造一,ぎょうせい,21−51.1990

8)酒井恵美子;「OCRを使ってKWlCを作る」,丁日本語学」,第十二巻,第三号,105−111.

  1993

9)奥秋義信;『日本語の文章術』,創拓杜,1993

10)ナネット・ゴッドリーブ;「ワープロの社会言語学」,『日本語学』,第十三巻,第十号,52−57.

  1994

11)野村雅昭;「ワープロと漢字の未来」,r日本語の風』,大修館書店,102−11O,1994 12)福田誠,吉田武尚,樫剛健史;「教科書表現に関する研究一中学校技術科電気領域におい   て一」,r第11回研究発表会講演論文集』,日本産業技術教育学会近畿支部,41−42.1994 13)教科書;「技術・家庭」,開隆堂出版,昭和37,41,44,47,50,53,56,59,62,平成2,

  5年度版

参照

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