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博 士 論 文 要 旨 題

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Academic year: 2021

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様 様 式 D5 号

博 士 論 文 要 旨

題 目

認 知 症 高 齢 者 に 対 す る 長 期 的 ・ 継 続 的 な 自 己 決 定 支 援 が 認 知 症 高 齢 者 と ケ ア 提 供 者 に 及 ぼ す 効 果

The effects of long-term and continuous self-determination support on elderly people with dementia and care providers

指 導 教 授 川 島 和 代 教 授 入 学 年 月 平 成 25 年 4 月 入 学 学 籍 番 号 1307603

氏 名 渡 辺 陽 子

要 旨 緒言・目的

認知症高齢者の自己決定が促進されるか,阻害されるかは,ケア提供者の関わり方に影響されることが,

先行研究で明らかになっている。そこで本研究では,介護老人保健施設に勤務するスタッフ(看護職・介護 職)を介入実践者として,認知症高齢者に対して自己決定支援の介入を長期的に継続的に実施する。その長 期間の継続的な実施における認知症高齢者とスタッフの双方における効果と課題を明らかにすることを目的 とする。

既に研究者は認知症高齢者に,日常における「行動の選択肢を示して選択を待つ」との自己決定支援を 14 日間実施し「適切な支援があれば決められる」「自己決定支援で精神機能が改善する」ことを明らかにして いる。本研究ではその結果に基づき,更に認知症高齢者が選択した後,スタッフが「なぜそれにしたのです か?」と「選択理由を尋ねる」という支援を行い,尋ねて反応を導き出す。その反応で生じるスタッフの驚き,共 感の表れを期待する長期の自己決定支援を介入とした。

本研究の仮説は,①認知症高齢者の認知機能や前頭葉機能・精神機能の改善②認知症高齢者の生活全 体の質の向上③スタッフのケア時に感じる苛立ちなどネガティブな感情の減少④スタッフの認知症高齢者に とって善いケアとは何か,を感じとる力の向上 である。

方法

【研究デザイン】準実験デザインとし,ベースライン期,介入期,フォローアップ期の 3 期からなる実験計画を 立案した。

【対象者】・認知症高齢者:急性疾患,退所予定の有無で除外した22名のうち,期間中の退所者を除外し,16 名を分析対象者とした。分析対象者は女性13名,男性3名で,年齢の中央値(四分位偏差)は87(4.00)歳,

MMSEの中央値(四分位偏差)は9.50(4.88)点であった。

(2)

・スタッフ:認知症専門棟2棟のスタッフ29名を介入実施者および調査対象者とし,調査期間中の部署移動者 を除外し27名(看護職9名・介護職18名)を分析対象とした。年齢の中央値(四分位偏差)は43(7.00)歳で あった。経験年数は15(7.00)年,うち認知症ケアの経験年数7.50(3.51)年であった。

【支援方法】支援の実施場面は「間食」「更衣」「レクリエーション」「移動」の4場面として,13~4 場面,8週間の介入とした。支援の枠組みに基づき,スタッフの具体的行動と,予測される認知症高齢者の反 応,それに応じたスタッフの対応を示したプロトコルを作成し,スタッフへの個別説明を行った。介入実施度を スタッフの自己申告で記録し,研究者は定期的に巡回し支援内容を確認した。

【評価】認知症高齢者に対しては,認知機能検査(MMSE),前頭葉機能検査(FAB),精神機能障害評価票

(MENFIS),QOL 評価(DHC)の計4つの測定尺度を用いた。スタッフに対しては感情労働尺度,共感経 験尺度改訂版,改訂道徳的感受性質問紙日本語版の3つの測定と,調査者が作成したアンケートを用いた。

ベースライン期間開始時,介入期間開始時,介入期間終了時,フォローアップ期間終了時のうち,認知症高 齢者は4回,スタッフはベースライン期間開始時を除く3回の測定を実施した。

【分析】各期の評価尺度の得点変化について Wilcoxon の符号付順位検定を行った。アンケートの自由記載 は内容の類似性で分類した。

結果

【実施状況】認知症高齢者16名に平均79.6回/1名の介入がなされた。期待回数に対する63.5%の実施度 であった。場面別にみると,実施回数が最も多かったのは間食(平均 31.4 回)で,期待実施回数に対する実

施割合も78.4%と高かった。更衣は,実施期待回数が16回と少ないが実施割合は80.9%と最も高かった。

レクレーションと移動は,実施割合が63.0%,43.3%と低かった。

【認知症高齢者の結果】介入前後での前頭葉機能検査(p=0.007),精神機能障害評価票(p=0.014), QOL 評価尺度(p=0.005)が有意に改善した。精神機能障害評価票は下位項目の「動機づけ機能障害」

(p=0.026),「感情機能障害」(p=0.022)の有意な改善も見られた。QOL評価尺度は,介入前とフォロー終了 時(p=0.001)でも有意な改善があった。認知機能は有意な変化はなかった(p=0.253)。アンケートへのス タッフの記述による変化内容は,『決められなかった方が決めることができるようになった』『受動的だった方が 積極的になった』など,自己決定支援が認知症高齢者の精神,生活によい影響を与えることが示された。

【スタッフ】労働感情尺度の「患者へのネガティブな感情表現」が低下傾向(p=0.071)にあった。共感経験尺度 改訂版,改訂道徳的感受性質問紙日本語版の有意な改善はなかった。アンケートへの記述による自分自身 の変化内容は,『選ぶことができることに感動した』『認知症高齢者の考えにびっくりしたり驚いたりした』などで あった。負担感の大きさが伺われた半面で,より善いケア実践に繋がる気づきも示された。

考察

認知症高齢者に対する長期的・継続的な自己決定支援は,認知症高齢者の活動に対する動機づけを高 め,スタッフとの交流を促し,前頭葉の賦活や精神機能の改善に繋がる支援であることが示唆された。さらに 生活の中での自己決定支援を積み重ねることが,認知症高齢者の生活全体の質の向上にも繋がることが示さ れた。

スタッフの効果として示された「ネガティブな感情表出」の低下傾向は,認知症高齢者との関わりを促し,笑 顔などのポジティブな感情を引き出すことに繋がる,非常に意義深い結果であると考えられた。

参照

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