専 。 攻
審 査 委 員
論 文 題 目 (題目変更の有無)
有 ・ 園
( 共生環境学専攻長 (共生環境学副専攻長
学位論文審査の結果の要旨
共生環境学専攻
主 査 副 査 副 査 副 査 副 査 副 査
教 授 教 授 教 授 特任教授 准 教 授 准 教 授
氏 名 五 味 千 絵 子
葛 葉 泰 久 立 花 義 裕 松 村 直 人 小 田 巻 実 清 津 秀 樹 大 野 研
極値的自然現象の時空間分布のモデル化に関する研究
A s t u d y o n m o d e l i n g o f t e m p o r a l a n d s p a t i a l d i s t r i b u t i o n s o f e x t r e m e v a l u e s o f n a t u r a l p h e n o m e n a
(論文審査の結果の要旨) 1.論文の概要
2011年3月の東日本大震災はM9.0という,日本・世界の観測史上最大規模の災害であった.この ような災害をもたらす現象は,再現期間がきわめて大きい,極値的な自然現象である.換言すれ ば,現象の規模がそれを表現する確率密度関数の裾の辺りに対応するような極値を示す現象であ る.
本論文では,そうした極値的自然現象のうち,津波と豪雨を対象に,分布のモデル化を試み た.第I部では,東日本大震災の津波による浸水域,つまり空間分布を推定する手法を,第II部で は解析雨量データと51の日降水量(地上気象観測データ)を用い,それらの時間分布,空間分布 のモデル化手法を検討した.以下, (1)津波浸水域(空間分布)のモデル化, (2)解析雨量の時空 間分布のモデル化, (3) 51地点日降水量の時間分布のモデル化に分けて,得られた成果の概要を述 べる.
(1)津波浸水域(空間分布)のモデル化
東日本大震災に伴う津波に関し,震災発生後約1ヶ月間の新聞記事 (4社)と標高データを基に,
津波浸水域(空間分布)を推定した.まず,新聞記事から離散的な津波浸水深を推定し,標高デ ータを併せて用い, 2次元スフライン補間法によって津波浸水深の空間分布(空間モデル)を求め た.このモデル値と観測値の比較を行ったところ,モデルが妥当であることが証明された.開発 されたモデル化手法の適用例としては,下記の2つが挙げられる.
1) 今まで,現場踏査や衛星データ等のリモート・センシングデータを利用した浸水深・浸水域 推定がなされてきた.これらの手法等は,手間,時間,費用等の問題があるが,本研究で開 発されたモデル化手法によれば, 1ヶ月程度の時間と比較的安価に津波浸水深の空間分布が 推定可能である.
氏 名 五 味 千 絵 子
2) 貞観の津波の詳細が明らかになっていれば,東日本大震災の津波による被害は軽減できた 可能性がある.過去の災害を示す資料(津波の痕跡)から過去の津波の規模や浸水域等を 明らかにしようとする研究が続けられている.本研究で開発された手法における「新聞記 事Jを「過去の津波の痕跡Jと読み替えれば,本研究の手法をそれらの研究に適用するこ
とが可能である.
(2)解析雨量の時空間分布のモデル化
地球科学的データは,時系列データ,空間データに関わらず,フラクタルでモデル化でき ることが多い.フラクタルモデルは,自己相似性に基づいた確率統計的モデルの一種で,物 理モデルと異なり,モンテカルロシミュレーションへの適用が想定される.本研究では,ホ ワイトノイズを発生させ,それを適正にフィルタリング(櫨波)することで,乱数的なフラ クタルデータ列を得る手法を採用した.Bm (ブラウン運動)は最も簡単な例で,ホワイト ノイズとして正規乱数を使い ハースト指数を0.5にした場合に相当する.ハースト指数を 0.5以外の場合に拡張したのがtBm (非整数ブラウン運動)で,ホワイトノイズとして,正規 分布の一般形であるLeη分布を用いたのが江m (非整数Levy運動)である.これらはすべ て,モノフラクタルモデルで,それの適用の必要条件は,波数(空間)または角振動数(時 間)とパワースペクトルの関係がlog‑1oglinearになることである.解析雨量データを用いた 解析の結果,以下のような結論が得られた.
1)解析雨量の空間分布から 256
x
256の領域(東海地方)を5スキャン取り出して解析した結 果,場がフラクタルであることが分かった.また,この場を生成させるためのホワイトノイ ズとして,次項の時間の場と異なり,正規乱数が適当である場合が多いことがわかった.つ まり,解析雨量の空間場の多くは, tBmで生成することができる.2)解析雨量の時系列データ (30日 分 =744データ)を 3種類の期間について取り出し,上述 の空間分布データと同様の解析を行った.この場合も,場(時系列)はフラクタルであるこ とが分かつたが,ホワイトノイズとして,正規乱数は適当でなく,裾の厚い,極値が出やす い分布である Levy分布で生成させたLevy乱数が適当であることが分かつた.
3)つまり,空間的には,隣同士の降水量が極端に変わらない(極値的でない)場合が多い が,時系列的には隣同士の降水量が極端に変わる場合が多いということを意味している.
(3) 51地点日降水量の時空間分布のモデル化
日本の51地点の日降水量時系列データを用いて, (2)と同様の解析を行った.その結果,日 降水量時系列データそのものは,パワースペクトルにピークが出るため,この種の解析に向 かないことが分かつた.そのため,各年のアノマリ一時系列(降水量と平年値の差)をデー タとして解析を行なった.その結果, (2)と異なり,データの場はフラクタルではなく(つ まり,角振動数とパワースペクトルの関係がlog‑1oglinearにならなかった) ,適正なフィル タとして指数関数的な関係が得られたι それを用い, (2)と同様の手順によって時系列モデ ルを生成する e‑modelを構築した.ホワイトノイズとしては, Levy乱数が適当であること が分かった.乙のモデルによりシミュレーションを行った結果,現実の降水量時系列と同様 のデータ時系列を生成することができた.
2 .
審査の要旨申請論文が,この学問分野で充分な新規性があるものか否か,また,充分に信頼性がある内容 か否か,博士の学位を与えるに足りる内容か否か,等について審査を行った.その結果,本論 文は,これらについて,いずれの条件も満たした,学位授与に値する論文であることが,主査
.副査の総意で認められた.