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意思決定と経営情報 (2)

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意思決定と経営情報 (2)

その他のタイトル Decision‑Making and Management Information (II)

著者 中辻 卯一

雑誌名 關西大學商學論集

巻 14

号 3

ページ 254‑269

発行年 1969‑08‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021211

(2)

2 (254) 

〔 研 究 ノ ー ト 〕

意 思 決 定 と 経 営 情 報 ( 2 )

目 次 まえがきー一意思決定と経営情報

II  経営情報ネットワーク 経営管理と意思決定

IV  定型的意思決定と非定型的意思決定

情報活動段階

①  定型的意思決定の場合

②  非定型的意思決定の場合

③  実態調査 VI  設計活動段階

中 辻 卯

①  定型的意思決定に対する伝統的方法

O REDPS

⑧  シミュレーション (simulation)

④  非定型的意思決定とヒューリステック アプローチ(以上前号)

⑥  アンソフのQ A法(以下本号)

⑥  創造的方法

選択活動段階—評価と選定

VI  経営意思の執行 VlI 統制

珊 統 制 か ら 計 画 へ の 循 環

1X  あとがきー一経営情報のその他の分類方法

⑥  ア ン ソ フ のQ A

H.I.ア ン ソ フ は , 最 近 , 戦 略 的 な 経 営 問 題 を 解 決 す る た め , ヒューリス テ ッ ク な ア プ ロ ー チ を 適 用 す る こ と を 考 え て い る 。 彼 に よ る と , 両 極 端 に あ たるO Rと 伝 統 的 方 法 ( 前 号 の 注 記(27)の ご と く 彼 は こ れ を ヒ ュ ー リ ス テ ッ

(3)

意思決定と経営情報(2)(中辻) 255) 6 3  (32) 

クな方法という点に注意)の中間に存在するという。よく構造化された問題 ORが適用されたと同様に,戦略的な経営問題に対する十分利用できる分 析技術としてこの方法が質的に十分正確なものとできるかどうかなお若干疑 問の余地は存在するが,準分析的 (quasianalytic)方法と彼がよぶ新しい方

(33) 

法の若干の特長を以下のように三つあげることができる。

1は過程志向的 (processoriented)とよばれる特長である。 OR的な方 法では,企業経営の行動をあらわすモデルを作成し,代替的な戦略の採用に よってもたらされるであろう行動の異った結果を計算し評価する結果志向的 (outcomeoriented)な方法がとられるのに対し, Q A法では,企業の目標に 対して貢献するものと認識され,その強さは目標の実現の度合に関連するそ れぞれの戦略の顕著な特長を比較するような(明示的,あるいは暗黙的な)

モデルが使用される過程志向的方法がとられる。

例えばある企業が多角化によって,資本利益率を改善しようとする場合,

結果志向的方法では,代替的な多角化戦略ほ,ある特定の年数にわたる資本 利益率の計算結果(その間の平均,現在価値への割引,経済環境における変 化に関連する予測について適当に酌量して)のうち最高のものが選択される。

過程志向的方法では,戦略は成長率,技術革新の見込,また利益の安定性と いう特長についてその良い方が選択される。

2の顕著な特長は,質的な要因を問題わくの組のなかに入れるやり方に 見出される。 ORにおいては,質的な考慮を本質的な数値モデルで取扱うこ

とができるようなかたちにかえられる。これにたいしてQ A法では,質的な 要素を全体的モデルのなかに保持しようと努力される。しかしそのためにほ 十分な素地が解決過程において作られた後でないと良い質的判断は行なわれ ない。これを可能にするために,質的関係が問題構造に埋め込まれる。かか る構造は,あるアウトプットが他のインプットを生み出す一連の相互連絡さ

(32)  H. I.  Ansoff, A QuasiAnalytic Method for Long Range Planning, in M. 

Alexis and C.  Z.  Wilson,  Organizational  Decision Making,  1967.  (Prentice Hall) pp. 430431. 

(33)  ibid.  pp. 432434. 

(4)

(256)  意思決定と経営情報(2)(中辻)

れたプラックボックスで構成されるものと考えられ,これらのボックスのあ るものほ,経営者であったり,相似型のコンピュータボックスであったりす

Q A法の第三の重要な特長は,問題解決の種々の段階の関係に存在する。

普通は問題の定式化の終了時点や資料の収集や分析開始の時点の明瞭な順序 が定められず,問題解決過程の至るところで分析と定式化の間の連続的相互 作用が行なわれ,新しく得られた情報が問題の内容を改善するために使用さ れる。最初の定式化の内容が,問題の解決が進むにつれて急速に修正される ことほしばしば経験することである。また問題がはじめて定式化された時有 効なものと考えられたものと比較されながら実際の問題を具体化するために 最も役立つ結果を見出すことも珍しくない。インプットとアウトプットの関 係とブラック ポックスの類推をさらに進め,新しい情報を分析の初期の段 階に伝達するフィードバックをもつことによってボックスを具体化すること ができる。

この定式化と分析の間のフィードバックの過程が存在することがまった<

重要なことである。戦略的な計画問題の定式化の助けとなるような満足な理 論が存在しないために,分析者は最初の定式化をまったく試験的なものとし て取り扱わねばならない。彼は問題を探究して情報を得るにつれて仮説を検 討し,そして修正することができる一種の自己修正的手続を採用する。この ようにして問題解決の過程において,最初定式化されたものは,何回も修正 され,調査中の現象についての部分的な一応の結論を作成する。

以上のような特長に示されるごとも問題を解決するためのQ A法は,現 実の問題を抽象化し,そして抽象化したものを体系的方法で分析する。問題 解決の過程において,問題構造にふくまれる変数を検討し,無関係な,ある いは解決に第二次的効果しか与えないと思われるような変数をはっきりと除 外し,ふくまれた変数の相互関係を分析し,それらの間の基礎的関係を明瞭 にする。それから問題が抽象化される実際の問題と抽象化された問題は, i っきり区別される。分析者が彼の結果を実現の状態に適用して評価できるし,

また同時に,それらの限界を明瞭に認識できることが, Q A法もO Rと同様,

(5)

意思決定と経営情報(2)(中辻) (257)  6  伝統的な方法よりも基本的にすぐれている点である。

また過程志向的問題は認識可能な構造をもつ。まず問題の目標が確認され る。つぎに代替的戦略が描かれ,そして目標の達成に影響を与えるこれらの 戦略の基本的な特長が確認される。普通,基準 (criteria)とよばれる判断の標 準がこれらの特長について設定される。それからこれらの基準は,個々の戦 略を評価するために使用され,そして最後にこれらの評価結果によってそれ ぞれの戦略の全体的順序が定められる。

さらに方法は構造的であるけれども,問題は非構造的である。量的,質的 な両者の問題構造を使用するので,全体としてのモデルは明らかにできない し,またアルゴリスム(計算手続)を解決の前に規定できない。問題の部分 的なものについては,変数間の関係は明らかにされうるし,また数量的方法 によって分析されうる。しかしながら問題の全体的な構造は,たかだか変数

(34) 

間の記号的な関係で定式化されるだけである。

なおQ A法の性格を明らかにするため,アンソフは伝統的方法とO Rとそ

(35) 

れぞれ対比して説明している。

Q A法は,伝統的方法から戦略的問題で取り扱われる非数量的要素によっ て指図される過程志向的方法を模倣し,問題解決の過程において分析者が問 題の性格を研究続けることができるフィードバックの方法をも借りた。ただ 伝統的方法では分析者の潜在意識として行なわれたものを, Q A法では体系 化し,明示的なものとした。

O Rからは現実の問題を抽象化することを模倣したが,抽象化する方法に 根本的な差異が見出される。 O Rでは,問題について精密な数学的に完全な 標準を設定し,そして非常に強力な分析方法を活用できるようにするために,

重要であっても数量分析できない実際問題の面はモデルから省略する(方法 志向的)。 それに対してQ A法の主要な目的ほ,意思決定者の直面する実際 的問題に構造的な方法を採用することにあるので,抽象化は,そうすること によって分析を困難なものとするかどうかにかかわらず,すべての関連ある

(34)  ibid., p. 434.  (35)  ibid., pp. 436  437. 

(6)

(258)  意思決定と経営情報(2)(中辻)

変数を包含する十分包括的なものでなければならない。またたとえ計量的な 評価の代りに経営者の判断が加えられるとしても,変数間の関係が実際問題 に非常に近いものになるのでなければならない(問題志向的)。 O Rが精密 性と数学的完全性を, Q A法では包括性と現実の正確な記述を重視する。

ただアンソフも最後に,このQ A法が新しいもの (brand)であるという印 象を与えることを避けることが重要であるという。環境に対する企業行動の 理論を改善するのに貢献する方法ではなく,むしろ理論の現状に対し構造的 な方法をもたらそうと試みるものであり,そしてここで示されたものは最初 の試みであり,まだ十分研究しつくされた分析方法ではなく,今後更に多く

(36) 

の研究が必要であるという。

⑥  創造的方法

経営計画の設定には伝統的なものから近代的なものに至るまで数多くのテ クニックが活用されうる。定型的なもの,あるいはそれに近いもの程テクニ ックの適用のみでその計画設定の目的を達成することが可能となる。しかし 非定型的なもの,あるいはその性格の濃厚なものになると特定のテクニック の適用のみで十分な計画を設定することはできない。ヒューリステックな解 決法においてほ競合的目標の選択の場合,また問題をできるだけ定式化しよ うとする場合において優先順位をきめる場合,経営者の判断をしばしば必要

(37) 

とする。その場合,創造と革新を要求する企業では,現状から飛躍した創造

(38) 

的着想に対する必要も大きい。現状からの連続以上の跳躍的発展を探索する 戦略的計画設定にあたっては,問題解決と学習の過程において,経営者の自

(39) 

由裁量が存在し,独創性が加わることが必要である。

これまで創造的解決は,経営者の個人的能力によることが多かったが,問 題の複雑化にともない個人の能力では限界があり,組織的に計画体制を強化 することが必要条件となる。

(36)  ibid., p. 437.  (37)  ibid.,  p. 435. 

(38)  伊藤淳己著前掲書 p.75. 

(39)  占部都美他共著前掲書(日本経営出版会) p.87, pp. 216225. 

(7)

意思決定と経営情報(2)(中辻) (259)  6 7  (40) 

これはまたサイモンのいう「計画のグレシャムの法則」からいっても重要 な意味をもつ。

企画部,開発部など有能な専門スタッフがこれにあたる。現在の企業では,

計画設定のための高度のテクニックをこなし,新しい探究を活澄に行なうた めには, トップマネジメントを補佐する強力なスクッフの組織化がますます

(41) 

重要視される。

選 択 活 動 段 階 _ 評 価 と 選 定

代替案が一応作成されたならば,つぎに各代替案を実施することによって 生ずると予想される結果を推定しなければならない。それは現在得ることの できる経営情報による将来の結果についての期待である。そして結果が予想 されるとつぎに各代替案の評価が行なわれる。 「代替案の評価は,代替案の 調査と密接に関連するものであるが,より詳細に,そして明確にそれぞれの

(1) 

代替案が組織に与える影響を考慮するものである。」 しかも過去においてど

(2) 

うしたかではなく,未来においてどうなるかが問題となる事前的評価である。

ところが実際には行動主体がもっている状況認識能力と計算能力に限界が存 在するので,客観的,合理的に評価することができない。 「企業は,それが 人間によって構成されているかぎり,その意思決定能力において全知全能で

(3) 

はない。」

サイモンによれば,客観的合理性とは,「行動している主体が,(a)意思決定 にさきだって,パノラマのように代替的諸行動を概観すること,(b)各選択に よって生ずる複雑な諸結果の全部を考慮すること。 (c)基準としての価値の体 系でもって,全代替的行動から一つの行動を選択すること,これらのことに よって統合されたバターンヘの自分の行動すべてをつくりあげることであ

(40)  H. A. Simon, ibid., p. 13.  (41)  河野豊弘著前掲書 pp.365406. 

(1)  AAA. op. cit., pp. 46 47. 

(2) 河野豊弘著前掲書 p.208.  (3)  占部都美他共著前掲書 p.189. 

(4)  H. A. Simon, Administrative Behavior, 1957.松田武彦,高柳暁,二村敏子 訳「経営行動」(昭40 ダイヤモンド社) p.103. 

(8)

6 8 (260)  意思決定と経営情報(2)(中辻)

(4) 

ところが実際の行動は,少なくともつぎのような三つの点において客 観的合理性に及ばない。 (1)合理性は,各選択に続いて起こる諸結果につい ての,完全な知識と予測を必要とする。実際には,結果の知識はつねに部分 的なものにすぎない。 (2)これらの諸結果は将来のことであるゆえ,それらの 諸結果を価値づけるにさいして,想像によって経験的な感覚の不足を補わな ければならない。しかし価値は,不完全にしか予測できない。 (3)合理性は,

起こりうる代替的行動すべてのなかで選択することを要求する。実際の行動 では, これらすべての可能の代替的行動のうちほんの二,三の行動のみしか

(5) 

思い出さないのである。」

このように「普通人としての行動主体がもっている認識能力と,かれの行 動に指針を与えるべき客観的状況の複雑性とのギャップが,最適行動の実現 を阻止しているといえよう。そこでこのギャップを縮小するためには,行動 主体の認識能力を質的,量的に改善するか,またかれをとりまく客観的状況

(6) 

の複雑性を単純化するかのいずれかの方法が考えられるのであるが,」前者に ついては,代替案作成において使用された各計量的テクニックと電子計算機 の発達,およびシステム設計が重要な役割をはたし,後者については,満足基

(7) 

準にもとづく人間行動の記述理論が,このギャップを縮小しようとしている。

「代替案の選定は評価の過程につづく。若し問題が詳細に述べられ,そして また評価モデルが適切,完全であるならば,代替案の選択は評価に従って論

(8) 

理的に行なわれる。」 しかし上述の如く,実際にはこれらの条件のうちのあ るものがみたされないので,代替案の選定は自動的に行なわれない。このよ うな場合,経営者の経験上の深慮による判断力,決断力が適用され,質的要

(5) 同上, p.104. 

(6) 野本千秋稿「企業・経営行動理論における新次元」(企業会計 第20巻第9 (7) 野本千秋稿前掲論文

河野豊弘著前掲書 占部都美他共著前掲書

吉原英樹稿「意思決定の行動科学的モデル」(会計第91巻第3 (8)  AAA. op. cit.,  p. 47. 

(9)

意思決定と経営情報12)

(9) 

素が評価過程の数量的結果に併合される。

VI  経 営 意 思 の 執 行

(261)  6 

経営計画が決定されると実行にうつされる。計画実現のために進行されね ばならない仕事を,協力者にそれぞれ分担させ,それらの分担者相互間の関 係を明確に規定するという意識的活動である「組織すること」という経営過

(1) 

程が計画過程につづく。必要な業務活動の決定および列挙,これらの業務活 動のグループ化,管理者に対するこれらのグループ化された仕事の割当て,

仕事を達成するための権限の委譲,組織構造内における権限の水平的,垂直

(2) 

的関係の調整のための措置といったものが含まれる。

さらに計画が組織を通じて実現されるために,「指導」の過程をつぎに強調

(3) 

することが多い。リーダーツ ッフ,コミュニケーション等が課題となる。こ のうちコミュニケーションの問題は,経営情報の問題と非常に関連はあるが,

後者が経営活動全体の場において検討されるのに対し,前者はここでは指導 の過程において研究される意味において(ただし前者の問題がその過程のみ

(4) 

の問題だとは考えないことは勿論であるが)後者の方が広い範囲をもち,ま た逆に前者が単に情報のみでなく意思,感情をもふくめた交流を考えるのに 対し,後者は主として情報を対象とする意味において(ただしその経済性を 考える場合ただその技術的問題のみでなく,語義,表現に関する問題,能率

(5) 

の問題をも考えることは勿論であるが)前者の方が広い範囲をもつと考えら (9)  ibid., p. 47. 

拙稿「トータル・システムに関する一考察」(商学論集 10巻 第6 (1) 桜井信行著「現代経営学」(昭42.東洋経済新報社) pp.77 78. 

(2)  H.クーンツ, C.オドンネル著 大坪檀訳「経営管理の原則(1)40.ダイ ヤモンド社) p.58. 

同上著高宮晋,中原伸之共訳「同上(2) 桜井信行著前掲書 pp.79 155. 

伊藤淳己著前掲書 pp.203   220.  (3) 桜井信行著前掲書 pp.154  194. 

(4)  占部都美著「近代管理学の展開」(昭41.有斐閣) pp.217   226. 

(5) 拙稿「経営情報の経済性に関する若干の考察」(関西大経済政治研究所研究双書 24

(10)

70 (262)  意思決定と経営情報(2)(中辻)

れることもある。しかしこの点に関しては経営情報と重要な共通場面が存在 し,検討すべき内容も多いが,ここでの論旨と少しずれるので,別の機会に ゆずることとする。

" : 統 制

命令や責任の委嘱によって経営計画,経営意思が現実の作業として実行さ れるが,その際作業結果(実績)と経営計画,経営意思とを合致させようと する経営主体の配慮が統制である。この統制の本質的機能は,ある基礎的過 程(手続)を経て行なわれる。その統制の基礎的過程は,(1)実績を測定する こと,(2)実績と計画,標準と比較し,偏差を見出すこと,(3)偏差を分析し,

原因を明らかにし,修正のための処置一~ィードバックーーをとること,

(1) 

に普通分けられる。

ここで論題に関連して重要な統制のための経営情報について考えるためA A Aの報告書をみるとつぎのように述べている。(2) 

統制とは,ほとんどもっばら活動を目的,計画,あるいは目標に一致させ ることを取扱うものである。それ故,統制のための情報は,進行された活動 と達成されるべき計画や目的の両者に焦点があわされる。計画された業績に 関するこの焦点は,統制のためのデークを収集するためのフレームワークを 提供する。他のフレームワークはそれによって計画が履行される組織によっ て与えられるo履行のための計画と機構 (mechanisms)の両者が明らかにさ れたならば,活動の進行以前,あるいは進行につれて,統制のために用いら れる情報は,ある予め定められた構造 (structure)に従って収集することが できる。―この状態は,情報の収集を支配するために利用できる唯一の構 造が活動の代替的過程が評価できなければならない知識(knowledge)である 計画の情報と非常に対照的である。この対照は,計画においては未来のデー

(1)  桜井信行著前掲書 pp.197  20 0.  伊藤淳己著前掲書pp.231  23 4.  AAA. op. cit.,  p.  45. 

(2)  AAA. op.  cit.,  p.  46, pp. 4849. 

(11)

意思決定と経営情報(2) (263)  71  クを用い,統制においてはすでに発生したことの報告をふくむということで 強められる。

しかしながら,統制は単に過去に関連した情報を収集することだけに限定 されるものではない。より重要なことは,発生したことと発生すべき標準

—一計画,あるいは目標との比較である。これらの計画や目標ほ多分に期待 の問題であり,期待は時間とともに,また変化する状況とともにたえず変化 するものである。だから発生すべきものとして設けたものが,履行時に組織 の目標を達成するために意図された指導,あるいは評価活動のためめ合理的 な基準ともはやなりえないことがある。したがって,経営者は,組織のメン/

バーの活動の変化についての情報のみではなく,それらの活動がそこで行な われる環境の変化する状態についての情報をも必要とする。

計画が組織の目標を達成するために修正されねばならないのは,活動が計 画に従って修正されねばならないのと同様である。活動の評価が行なわれる 時,標準あるいは計画の適切性をふくむ判断の範囲は特に重要である。現在 関連する環境状態はこの判断にとって関係があるが,発生するだろうと期待 された状態には関係ない。

組織の統制活動のあらかじめ定められた標準の役割は,企画された活動の 性質とそれらがそこで実施される環境によって大いに異なる。環境状態がは っきりしており.そして行なわれる活動が定型化しうるもの (programmed) であるならば,あらかじめ定められた標準は大いに有効に役立つ。環境が不 定であり.あるいは変動的であっても,そこで行なわれる活動が定型化しう

るものであるならば,あらかじめ定められた標準はなお有効なものとなりう るし,またリボートは実績と期待とを比較するように作成しうる。勿論,こ

(3) 

の比較は統制のための基本であり,そして例外原理の基礎である。環境が変 化する場合,例外的なものは,経営者の注意を,活動の適切性に対してのみ でなく,同様に標準あるいは期待の適切性に対してむけられる。

(3) 例外原理については,

L. R. Bittel, Management by Exception 1964 (McGraw‑Hill)和久本芳彦訳

「例外原理」(昭43.産業能率短大出版部)参照のこと。

(12)

2 (264)  意思決定と経営情報(2)(中辻)

定型化しえない活動に対する統制はより困難である。この場合,方法はし ばしば前もって指示されないし,あるいは知られない,そして特定の計画達 成のための仲介方法,あるいは結果を見積ることは不可能ではないにしても 困難である。要するにとられるべき活動の性質についても,また目標や活動 や業績に影響をもつ環境についても明確でないからである。このような場合,

評価は, しばしば遂行された活動よりもむしろ得られた結果について行われ,

そして達成する可能性があると考えられたあまり明確にされていない (ill defined) 標準—あるいは多分達成の満足水準と考えられているもの一tこ

よって行なわれる。

(4) 

3表経営情報の分類の一つのフレームワーク

〜 ミ 非 定 型 的 定 型 的 機能

計 画 (1)  (2)  統 制 (3)  (4) 

統制の場合も計画の場 合と同様,定型的なもの と非定型的なものに分け て考えることが一つの方 法であろう。

非常に定型的な活動の統制の場合,すでに述べた如く,計画設定そのもの がコントロール基準の表示である点からして,統制の三つの基礎的過程が完

(5) 

全に型にはまったものとして適用されうる。またこれもいままでみてきた如 く,種々のテクニックの発展により定型的な領域の拡大によって計画,標準,

あるいは基準の設定がより正確に設定できる範囲が拡大され,それにつれて 統制の効果を発揮できる度合が増大される。統制がより効果的に行なわれる ということは,統制の三つの過程が確実に実行されることであるが,計画の 定型的な領域が拡大されること,計画,標準,あるいは基準がより確実なも

のになることがこの場合重視される場合にあたる。

しかしこれらの場合,各種のテクニックにより計画がより定型的に近いも のとなりうるが,完全に定型的なものとなるのではなく,そのうちに確率的 要因,さらに不確定要因をふくんで決定されている場合もなお存在する(す

(4)  AAA. op. cit.,  p. 44. 

(5) 伊藤淳己教授は,統制の方法として組織による統制,会計による統制,統計に よる統制の三つをあげて説明される。前掲書 pp.235 267および前掲論文 pp. 418421. 

(13)

意思決定と経営情報(2)(中辻) (265)  7 

なわち非定型的要素も排除されていない)のであるから,どうしても計画そ のものの誤差が発生すること(確定的要因についても誤差はありうるが,主 として実行につれて確率的要因が確定的に,不確定要因が確率的に,さらに 確定的になる,未投入の変数が逐次固定化して定数に移行するにつれて判明 する)が避けられず,活動実績との差異分析の結果をたえずフィードバック して,計画そのものを補正することが必要である(計画補正の手続は,主と

戸 鼻 鼻

して不確定要因の確定化誤差を残存変数の中へいかに吸収させるかという問

(6) 

題になる)。

(さきにアンソフは, Q A法の特長として,フィードバックの過程の存在す ることをあげたが,彼の場合,定式化と分析の間の問題そのものの設定過程

戸 戸 鼻 '

におけるフィードバックであり,ここでいう計画が実施されるにつれて実績 結果をフィードバックして計画を補正する場合とは異なることを指摘してお

きたいo)

非定型的な性格が強い計画においては,計画のところで述べた如く,まず 計画の設定そのものが多段的な模索過程をとり,分析と定式化の間に連続的 な相互作用が行なわれ,若干のブラック ボックスの類推を含むので,その 計画設定過程そのものの統制(アンソフのいうフィードバック過程)が問題 となる。また「ある問題に対する決定に到達せんとしてスタッフが進めてい る作業の進捗状態を点検したり,このプロセスに関係している人々の能力を

(7) 

評価したり,」そして全体的方針が計画の設定において守られているか否かを 検討したりするトップマネジメントの役割がふくまれる。この種の統制は組 織的でなく,客観的でもなく,また困難である。比較の基準は漠然としており,

計画の成否の判定は将来の相当期間に起こる事象と突き合わせてみてはじめ て可能となるのであり,雲をつかむような「どうなっただろうか」というこ

(8) 

とを比較してみてはじめて可能となるものである。さらに一応計画が決定し て実施に移された場合,前の定型的と非定型的な両要素を共にもった計画の

(6) 伊藤淳己稿前掲論文 p.423. 

(7),  (8)  R. N. Anthony, Planning and Control Systems. (Harvard U.) 1965. 

高橋吉之助訳「経営管理システムの基礎」(昭43.ダイヤモンド社) p.62. 

(14)

4 (266)  意思決定と経営情報(2)

場 合 よ り も さ ら に 実 績 結 果 と の 差 異 に 注 意 し , 十 分 な 手 を 打 つ た め の 考 慮 を 重視せねばならない。

このような計画と統制の種類を,生物体における情報と自動制御とに比較して考察 されることがしばしば行われる。非常に定型的な計画と統制の如き反射的な場合,「生 体にある特定の刺戟が作用すると,その興奮が比較的簡単な伝導経路を通って,意識と は無関係に特定の反応を,きわめて規則的に解発する場合」とよくにており,例えば 脚気の診断に行われるひざのやや下のととろを打つと腔がとぴ上がる膝蓋反応がそれ である。この場合,高位の中枢である脳には関係なく,脊臆の中で一つも仲介の神経 細胞を介することなく,直接に感覚性の神経が運動性の神経に連絡しているのである。

その他,生まれて間もない赤ちゃんの口の周わりに手をもっていくと,乳だと思っ て吸いつく。また手のそばに手指をさしのぺると握ろうとする。足の裏をくすぐると,

足を曲げたり伸ばしたりする。人間の指先に火を近づけて許容量以上の温度差を感ず ると火傷のおこらぬ前に手を引っ込める等,生物体内の「無条件反射」と呼ばれるも のである。

夏みかんをまだ食べたことのない子どもに食べさせてみると,みかんの酸味で口の 中が刺戟され,この刺戟によって唾液の分泌中枢が興奮して,唾液腺よりよだれが分 泌される。これもまた「無条件反射」によるものである。ところが大人はすでに夏み かんは「スッパイ」ということを憶えているので,夏みかんが目の前に出てきただけ で,唾液が出てくる。あるいは夏みかんを想像しただけで,口の中がむずむずしてく る。つまり,夏みかんは「スッパイ」のだということを学びとることによって,その 形を見ただけで,あるいは考えただけで,反射が起るのである。このような反射を

「条件反射」という。こういう反射ほ,大人になるまでに学ぴ憶えたものである。こ のようなことは,動物でも見られることに気づき,条件反射を実験的に研究しはじめ たのが,有名なソ連の生理学者イワン・ペトロビッチ・パプロフである。このように 後天的ではあっても,常に繰り返されたり,生命にとって重大な経験は,条件反射の 機構を造り出している。条件反射の成立ということは,とりも直さず新しい情報処理 機構の獲得である。

企業における組織の合理化,標準化の運動は,これらの反射機構の整備とも考えら れる。

さらに学習という表現で示されるものほ,やはり動物が経験によって,行動を改変

(15)

意思決定と経営情報(2) (267)  したといいうる点では条件反射と同じであるが,伝達の経路は,はるかに複雑であろ

うし,明らかでほない。さらに「知能的行動といわれるようなものになると,少なく とも今の段階で,生理学的な場と結びつけて分折することが,ほとんど不可能である。

生理学的な説明の本質は,複雑な現象を,単純な要素的なものに解きほぐして説明す る,いわゆる因果分析である。それに対して,知能的行動というのは,本質的に目的 によって部分行動が決定されるような合目的性をもっている。」

簡単な条件反射から,学習,さらに知能的行動において,そこに量的,質的差異は あるとしても,経験した多くの事例の中から適当なものを反射記憶ファイルとしても ち,その中から必要なものを取り出せるようなレトリーバル システムが存在するこ とになる。

しかし高度の知識的行動となると,学習によってすでにファイルされたものでは不 十分な状態が生じてくる。 「一つにはみずからの創造的活動,もう一つは外界の複雑 さとその変化により,登録外の情報に対し行動を決定しなければならぬことが多い。

それが思考活動の中心課題である。」

「思考過程は,一般的には推測,試行錯誤の繰返しである。また一方では,各工程の 組合せである。入カデータは,主題要素に分解され,その組織に必要な,あるいは少 なくとも関連があるものが選り分けられる。このためには過去の経験が整理され,新 しい計画にとって必要か.あるいは継続中のアクションにとって関連する主題を更新 し,それに基づく情報需要が何かの形でとらえられていなければならない。この選り 出された関連データは,記憶ファイルと照合され,記憶ファイルの中から,入カデー タに関連する記憶データを抽出する。これらが論理的演算によって.いくつかの行動 戦略に変換される。この中から,その組織として行動可能な,あるいは行動して意味 のある許容戦略群を選び出す。これが入カデータの変換過程である。この許容戦略群 の中から,何かの基準に基づいて一つを選ぶこと,これが判断過程である。判断によ り指令データが選ばれると出力され,それにより何らかのアクションが実行される。

その結果がフィードバック データとして出力され,次の思考サイクルの素材とな

「この非反射的決定過程の各部分をみるとき.断片的には処理技術が開発され,中に は実用されているものもあるが,全体としてはほとんど未開拓の分野であり,その探 求が今後の課題である。」

企業活動における非定型的な計画および統制になる程同様の課題が多くなる。

(16)

(268)  意思決定と経営清報12)

「高等動物においては,反射的決定機構は神経組織の随所に分散しているが,非反射 的決定機構は大脳に集中している(大脳の中では分業体制が確立しているけれども)」

が,近代的企業組織では定型的な,またそれに近い意思決定程分散されているが,さ らに非定型的に近い非反射的決定機構が,どの程度フォーマルな形で権限委譲されて いるか,権限外のものが,より上部の非反射的決定過程を経なければならないかとい

(9) 

う集権化,分権化の問題が組織構造に影轡を与える。

VI[  統 制 か ら 計 画 へ の 循 環

統制機能はフィードバックによって計画機能に結合される。フィードバッ クは計画がどのようにうまく理解され,また履行されているかを示し,そし て経営者の注意を必要とする問題を明らかにするものである。これを効果的 なものとするためには,情報は検討中の活動,あるいは組織単位を反映する ように組み立てられねばならない。さらに正しい問題を明らかにし,なお何 を行なうべきかを示すように原因と結果の関係を明らかにする情報が要請さ れる。その上さらに情報はありのままの組織を反映すべきである一ー経営者 の判断を必要とする領域を明らかにし,また定型化された活動の領域を支配 する総合化された全体計画を反映すべきである。組織あるいほ計画が変化す

(1) 

るにつれて,情報構造は適応されねばならない。

統制は,経営循環の最終過程にあたるわけであるが,同時に,それはつぎ

(2) 

の経営循環の前提ともなるのである。経営循環は螺旋のように回転していく のであるが,従来理論的にはそれが理解されていたとしても,現実には技術 的阻害要因等があってなかなか実際には実施されておらなかった。それらの 阻害要因が電子計算機およびそれに関連する技術の発達によって急速に除去

(9) 塚田裕::::編「100億の脳の細胞」(昭41. 日本放送出版協会)

桑原万寿太郎著「生物と情報」(昭43. 日本放送出版協会)

中井 浩稿「インフォメーション・マネジメント」(岸本英八郎編著「コンビュ ータ経営」) (昭43.河出書房) pp.245   250. 

(1)  AAA. op.  cit.,  pp. 49 50. 

(2) 桜井信行著前掲書p.198,  208. 

(17)

意思決定と経営情報(2)(中辻) (269) 

されるようになると考えられる。特に電子計算機の処理能力,速度の向上,

増大,オソライン リアル タイム方式の発達が指摘されうる。

1X  あとがき—経営情報のその他の分類方法

以上の如く経営情報の性格(種類)を経営意思決定との関係において検討 してきたが,それは最初に述べた如く,両者の関係がわれわれにとって最も 重要であると考えたからである。しかし経営情報の性格(種類)は別の観点 からも取扱うことができる。例えばディアデン・マクファーランドの如く,

財務情報,人事情報, ロジスティクス情報等に分類,また行動情報と非行動 情報,経常的情報と非経常的情報,文書情報と非文書情報,内部情報と外部

(1) 

情報,歴史的情報と将来的情報に分類することもできるし, T.R.プリンス の如<,伝統的情報システム(責任会計システム,収益性会計システム,ク リテカルバス計画およびスケジュール情報システム),生産および操業情報シ ステム(生産情報システム,在庫管理システム,在庫統制情報システム),マ ーケティング情報ッステム(マーケティング管理情報ツステム,販売分析お

(2) 

よび売掛統制情報システム)に分類することもできる。その他,種々の観点 から分類整理された多くの事例については次の機会に批判的に検討したいと 考えている。ただし経営情報の種々の分類方法が存在するにもかかわらず,

結論的には,われわれがここで取扱った経営意思決定との関連において考察 する経営情報の性格(種類)の認識が経営活動を理解する上で最も重要であ

ると考える。

(44.  3. 20) 

(1) J. Dearden and ・F.  W. McFarlan, Management Information Systems, 1966.  (Irwin)村松林太郎,島田照代共訳「経営情報システム」(昭42.建吊社)

J. Dearden, Computers in Business Management, 1966.  (Irwin) pp.  117133.  (2)  T. R. Prince,  Information Systems for Management Planning and Control, 

1967.  (Irwin). 

参照

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