Involvement of RhoA in hyperresponsiveness of bronchial smooth muscle in rats
学位名 博士(薬学)
学位授与機関 星薬科大学
学位授与年度 2005年度
学位授与番号 32676乙第150号
URL http://id.nii.ac.jp/1240/00000353/
氏名(本籍)酒井寛泰 (東京都)
学位の種類博士(薬学)
学位記番号乙第150号
学位授与年月日 平成17年9月7日
学位授与の要件 学位規則第4条第2項該当者
学位論文の題名 Involvement of RhoA in hyperresponsiveness of bronchial smooth mUSCle in ratS
論文審査委員 主査 教授 三澤美和
副査教授鈴木勉
副査 教授 米谷芳枝
論文内容の要旨
近年、気管支喘息発症率は世界的に増加傾向にある。しかも発症率のみな らず入院を要する重症例の増加も問題になっている。幼児から高齢者に至る幅 広い年齢層で発症するこの疾患の解明は社会的にも非常に重要である。気管支 喘息は代表的なアレルギー性疾患でありかつ炎症性疾患であり種々の炎症性サ イトカインの関与が示唆されているが、発症の詳細なメカニズムは未だほとん ど解明されていない。また、気道過敏性(airway hyperresponsiveness;AHR)は、
アレルギー性気管支喘息患者共通に認められ、喘息病態の本質因子であり増悪 因子とされている。この気道過敏性発症のメカニズムを解明するには適切な動 物モデルが必要であるが、感作ラットに抗原を反復吸入させることにより、著 しい気道過敏性状態が獲得されることが当教室の研究によりわかっている。こ の気道過敏性ラットより摘出した気管支平滑筋のacetylcholine(ACh)をはじめ とする各種収縮性アゴニストに対する反応性は、正常動物のものと比較して、
著明かつ有意に元進していることを明らかにしている。この時、気管支平滑筋 のhight K+誘発収縮反応および細胞膜ムスカリン受容体量については正常レ ベルであることも明らかにしている。これらの結果は、抗原チャレンジにより 気管支平滑筋細胞の収縮に関与する情報伝達系がなんらかの影響を受けている 可能性を示唆している。一方、各種平滑筋のアゴニストによる収縮反応には Ca2+感受性の増大が確認されており、そのメカニズムが解明されつつあり、
低分子量GTP結合タンパク質であるRhoAがアゴニスト誘発Ca2+感受性元
進機構に関与していることが知られている。そこで、抗原誘発気道過敏性時の
収縮反応の増大機序にCa2→感受性元進機構の変化が関与しているか否かを検
討した。一方、最近になって気道過敏性の発症とサイトカインとの関連性が注
目され始めており、中でも炎症性サイトカインの一つであるTNF−alphaが気 道過敏性発症において重要な役割を持つことが報告されている。そこで、
TNF−alphaによるACh誘発収縮増大反応にRhoAが関与するか否か、さら に、このRhoA発現増加にmitogen−activated protein kinase(MAPK)系が関与 するか否かを検討した。
AHRラットはWistar系雄性ラットに死菌百日咳ワクチンをアジュバント として、DNP−Aぷc抗原を感作し、5日後に追加感作を行い、追加感作の3日 後から48時間毎に計3回抗原の反復吸入チャレンジを行うことで作製し、
最終チャレンジの24時間後に実験を行った。気道過敏性気管支平滑筋におけ るCa2+感受性元進機構の変化をCa2+蛍光指示薬Fura−2を用いて気管支平 滑筋収縮反応とこのときの細胞内Ca2+濃度(ICa2+」1)を同時にモニターした 結果、control群、 AHR群ともにACh濃度に依存した収縮反応と、[Ca2+]、上 昇が認められた。このとき、ACh誘発収縮反応はcontro1群と比較してAHR
群は有意に増大していたが、AChによる[Ca2+]、の上昇は同レベルであった。
さらに抗原誘発AHR時の気管支平滑筋におけるRhoA発現量と、ACh誘 発RhoAの細胞膜トランスロケーションレベルの変化についても検討した。
すなわち、RhoAは定常状態では主に細胞質に存在しており、agonist等の刺 激によって活性化されると細胞膜へ移行(トランスロケーション)することが 知られているので、気管支平滑筋におけるRhoAを介するCa2+感受性機構 元進機構発現のメカニズムを解明する一環としてAChによるRhoAの細胞 膜トランスロケーションについて検討を行った。また、各種ムスカリン受容体 サブタイプの特異的拮抗薬を用いて、気管支平滑筋のACh誘発収縮反応およ びRhoAの細胞膜トランスロケーションに関与するムスカリン受容体サブタ イプを薬理学的に同定することを試みた。気道過敏性ラット気管支平滑筋の RhoAレベルをwestern blotおよびRT−PCR法を用いて検討した結果、気道 過敏性の気管支平滑筋のRhoA mRNAおよびタンパク質はコントロール群と 比べて有意に増加していた。Western blot法を用いてACh誘発RhoAの細胞 膜トランスロケーションを検討した結果、細胞膜分画のRhoA含量はACh(10−3 M)処置時間とともに増加し、5分から20分後にかけて有意なRhoA含量の 増加が認められた。また、control群、 AHR群ともにAChの濃度に依存した RhoA細胞膜トランスロケーションが認められ、このとき、 control群と比較
してAHR群のRhoA細胞膜トランスロケーションレベルの有意な元進が認
められた。さらに、気管支平滑筋におけるACh誘発収縮反応とRhoAの細
胞膜トランスロケーションにどのムスカリン受容体サブタイプが関与している
かを検討した結果、気管支平滑筋収縮は4−DAMP(M3 antagonist)により拮抗 され、細胞膜トランスロケーションもmethoctramine(M2 antagonist)や prirenzepine(Ml antagonist)ではなく4−DAMPにより抑制されることが明らか
となった。
正常ラット摘出気管支平滑筋にTNF−alpha(100、300、1,000 ng/mL)を処 置したところ、contro1群と比較して、 AChに対する反応性は濃度依存的に 著明かつ有意に方進することが認められが、high K+による収縮反応性は control群と比較していずれのTNF−alpha濃度処置群においても変化は認めら れなかった。このことより、正常ラット摘出気管支平滑筋にTNF−alphaを処 置すると、AChに対する反応性の増大、すなわちAHRが獲得されることが 明らかとなった。したがって、TNF−alphaは気管支平滑筋に何らかの変化をも たらし、AChによる収縮反応を増大した可能性が考えられる。 TNF−alphaに よるラット摘出気管支平滑筋の収縮反応増強のメカニズムを解明する一環とし て、UOI26(特異的p42/44 MAPK−kinase阻害薬), SB−203580(特異的p38 MAPK
阻害薬)を用いてその効果の検討を行ったところ、TNF−alpha処置で見られた 気管支平滑筋のAChに対する収縮反応性の増大は、 UO126を併用処置するこ
とによって著明に抑制された。しかし、SB−203580はTNF−alpha誘発ACh収 縮増強作用に抑制効果を示さなかった。したがって、TNF−alphaによる気管支 平滑筋収縮増強のメカニズムにはp42/44 MAPK−kinaseの活性化による
p42/p44 MAPKの活性化を介しているものと考えられる。また、 p42/44 MAPK−
kinase、 p42/p44 MAPKの活性化を介した一連の反応が遺伝子発現の調節によ るタンパク質合成過程に依存しているか否かを検討する目的で、タンパク質合 成阻害薬であるcycloheximide(CHX)の効果についても実験を行ったところ、
TNF−alpha単独処置で見られた気管支平滑筋のACh収縮反応性増大はCHX を併用処置することにより有意に抑制された。つまり、TNF−alphaによる気管 支平滑筋の収縮反応性元進には何らかのタンパク質合成が関与し、気管支平滑 筋収縮の増強作用が引き起こされていることが考えられる。さらに、気管支平
滑筋にTNF−alpha処置下RhoAタンパク質レベルの検討を行ったところ RhoAタンパク質レベルが増加することが示された。さらに、このRhoAタン パク質の増加はp42/44 MAPK−kinase inhibitorであるUOI26により阻害され
た。
以上の結果から、本研究は抗原誘発気道過敏性モデルにおいてACh刺 激によるRhoAを介するCa2+感受性元進機構が著しく増強されており、著
しい収縮反応が惹起されることを証明した。また気道過敏性時にはRhoAの
細胞膜へのトランスロケーション(活性化)が元進していることを明らかにし た。 AChによる気管支平滑筋収縮反応および細胞膜RhoAトランスロケー ションにはムスカリン性M3受容体が関与していることを証明した。さらに、
TNF−alpha処置によるACh誘発気管支平滑筋収縮反応の増大にはRhoAの発 現増加が関与しており、そのRhoAの発現にはMAPKの一種であるp42/44 MAPKが関与しRhoA発現が増加することを示唆し、気道過敏性の発症には 炎症性サイトカインであるTNF−alphaが重要な働きをしていることが提唱で
きた。
論文審査の結果の要旨
気管支喘息は代表的なアレルギー性疾患でありかつ炎症性疾患であり、種々 の炎症性サイトカインの関与が示唆されている。しかし発症の詳細なメカニズ
ムは未だほとんど解明されていない。また、気道過敏性
(airwayhyperresponsiveness;AHR)は、アレルギー性気管支喘息患者共通に認め られ、喘息病態の本質因子であり増悪因子とされている。感作ラットに抗原を 反復吸入させることにより、著しい気道過敏性状態が獲得されることが当教室 の研究によりわかっている。この気道過敏性ラットより摘出した気管支平滑筋 のacetylcholine(ACh)をはじめとする各種収縮性アゴニストに対する反応性は、
正常動物のものと比較して、著明かつ有意に充進していることを明らかにして いる。一方、各種平滑筋のアゴニストによる収縮反応にはCa2+感受性の増大が 確認されており、そのメカニズムが解明されつつあり、低分子量GTP結合タン パク質であるRhoAがアゴニスト誘発Ca2+感受性充進機構に関与していることが 知られている。
そこで、本研究では抗原誘発気道過敏性時の収縮反応の増大機序に、Ca2+感受 性充進機構の変化が関与しているか否かを検討した。一方、最近になって気道 過敏1生の発症とサイトカインとの関連性が注目され始めており、本論文では TNF−alphaによるACh誘発収縮増大反応にRhoAが関与するか否か、さらに、こ のRhoA発現増加にmitogen−activated protein kinase(MAPK)系が関与するか否 かを検討している。
ACh誘発収縮反応はcontrol群と比較してAHR群では有意に増大していたが、
AChによる[Ca2+]iの上昇は同レベルであることを見出した。気道過敏|生ラッ ト気管支平滑筋のRhoAレベルをwestem blotおよびRT−PCR法を用いて検討し た結果、気道過敏性を有する気管支平滑筋のRhoA mRNAおよびタンパク質は コントロール群と比べて有意に増加していること、また細胞膜分画のRhoA含量 はACh処置時間とともに増加し、有意なRhoA含量の増加を認めている。また、
control群、 AHR群ともにACh濃度に依存したRhoA細胞膜トランスロケーショ
ンが認められ、このとき、control群と比較してAHR群のRhoA細胞膜トランス
ロケーションレベルの有意な充進を示すことを認めた。さらに、気管支平滑筋
におけるACh誘発収縮反応とRhoAの細胞膜トランスロケーションにどのムス
カリン受容体サブタイプが関与しているかを検討した結果、ムスカリン受容体
本研究において、正常ラット摘出気管支平滑筋にTNF−alpha(100、300、1,000ng
/mL)を処置したところ、control群と比較して、 AChに対する反応性は濃度依 存的に著明かつ有意に充進することを認めた。すなわちAHRが獲得されること
を明らにした。またTNF−alphaによるラット摘出気管支平滑筋の収縮反応増強の メカニズムとして、TNF−alphaによる気管支平滑筋収縮増強はp42/44 MAPK−
kinaseの活性化によるp42/44 MAPKの活性化を介していることを示した。タ ンパク質合成阻害薬であるcycloheximideの効果から、TNF−alphaによる気管支平 滑筋の収縮反応性元進には何らかのタンパク質合成が関与し、こが気管支平滑 筋収縮の増強作用を引き起こすことを示唆した。さらに、気管支平滑筋にTNF−
alpha処置下、 RhoAタンパク質レベルの検討を行ったところ、RhoAタンパク質 レベルが増加することを示し、このRhoAタンパク質の増加はP42/44 MAPK
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