• 検索結果がありません。

血糖低下作用に関する臨床開発研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "血糖低下作用に関する臨床開発研究"

Copied!
82
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

熊本大学学位論文

SGLT2 阻害薬 ルセオグリフロジンの

血糖低下作用に関する臨床開発研究

-肝機能障害患者、腎機能障害患者における血糖低下作用と

2

型糖尿病患者における日内血糖変動へ与える影響の検討-

2017 寒川 能成

A Study on the Hypoglycemic Effect of Luseogliflozin,

a Sodium-glucose Cotransporter 2 (SGLT2) Inhibitor in Clinical Trials - An Investigation on the Hypoglycemic Effect in Patients with Hepatic or Renal Impairment and on 24-hour Glucose Variability in Patients

with Type 2 Diabetes Mellitus –

Yoshishige Samukawa

(2)

略語一覧表

本文中では以下の略語を使用する。

AUCinf:

area under the plasma concentration versus time curve from time zero to infinity、

投与後0時間から無限時間までの血漿中薬物濃度時間曲線下面積

AUClast:

area under the plasma concentration versus time curve from time zero to the last measurable concentration、

投与後0時間から最終検出時間までの血漿中薬物濃度時間曲線下面積 BMI:body mass index、

体重と身長の関係から肥満度を示す体格指数

CGM :continuous glucose monitoring、

持続血糖測定

CRP:C-reactive protein、

C反応性蛋白

CKD:chronic kidney disease、

慢性腎臓病

CL/F:total body clearance from plasma after extravascular administration、

見かけの全身クリアランス

Cmax:maximum observed plasma concentration、

最高血漿中濃度

CPR:C-peptide immunoreactivity、

C-ペプチド

eGFR:estimated glomerular filtration rate、

推算糸球体濾過量

FBG:fasting blood glucose、

空腹時血糖

(3)

FPG:fasting plasma glucose、

空腹時血糖

GCP:good clinical practice、

医薬品の臨床試験の実施に関する基準 GPSP:good post-marketing study practice、

医薬品の製造販売後調査および試験の実施の基準に関する省令

HbA1c:glycated hemoglobin A1c、

糖化ヘモグロビン

HBs:Hepatitis B surface antigen、

B型肝炎ウィルス抗体 HCV:Hepatitis C Virus、

C型肝炎ウィルス

MAGE:mean amplitude of glycemic excursions、

24時間の平均血糖変動幅

NGSP値:National Glycohemoglobin Standardization Program値、

国際標準値

SD:standard deviation、

標準偏差

SGLT:sodium-glucose cotransporter、

選択的ナトリム依存性グルコース輸送体

PPG:postprandial glucose、

食後血糖

T1/2:elimination half-tim、

消失半減期

tmax,:time to reach maximum concentration、

最高血漿中濃度到達時間

UGE:24-h urinary glucose excretion、

24時間尿糖排泄量

UGT:UDP-glucuronosyltransferase、

UDP‐グルクロン酸転移酵素

(4)

本論文は、学術雑誌に掲載された次の論文を基礎とするものである。

(1)

Luseogliflozin, an SGLT2 inhibitor, in Japanese patients with mild/moderate hepatic impairment: a pharmacokinetic study.

Clinical Pharmacology in Drug Development, 6, 439-447 (2017).

Yoshishige Samukawa, Michio Sata, Kenichi Furihata, Toshifumi Ito, Naohiko Ueda, Hidekazu Ochiai, Soichi Sakai, Yuji Kumagai

(2)

Effects of luseogliflozin, a sodium-glucose co-transporter 2 inhibitor, on 24-h glucose variability assessed by continuous glucose monitoring in Japanese patients with type 2 diabetes mellitus: a randomized, double-blind, placebo- controlled, crossover study.

Diabetes, Obesity and Metabolism, 17, 800-804 (2015).

Rimei Nishimura, Takeshi Osonoi, Shigeto Kanada, Hideaki Jinnouchi, Kumiko Sugio, Hirohisa Omiya, Michito Ubukata, Soichi Sakai,

Yoshishige Samukawa

(3)

Substantial effects of luseogliflozin revealed by analyzing responses to

postprandial hyperglycemia: post hoc subanalyses of a randomized controlled study.

Advances in Therapy, 33, 1215-1230 (2016).,

Yoshishige Samukawa, Hirohisa Omiya, Hirotaka Watase, Kazunari Nozaki, Soichi Sakai, Rimei Nishimura

また、以下の論文についても基礎としているが、現在、学術雑誌に投稿、対応中である。

(4)

Pharmacokinetics and pharmacodynamics of luseogliflozin, a selective SGLT2 inhibitor, in Japanese patients with type 2 diabetes with mild to severe renal impairment.

Clinical Pharmacology in Drug Development, 投稿中

Yoshishige Samukawa, Masakazu Haneda, Yutaka Seino, Takashi Sasaki, Atsushi Fukatsu, Yusuke Kubo, Yuri Sato, Soichi Sakai

(5)

目次

第1章 緒論 ... 1

1. 糖尿病治療の薬物治療の現状と課題 ... 1

2. 選択的ナトリム依存性グルコース輸送体2阻害薬の開発の経緯 ... 1

3. SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの有用性 ... 4

第2章 SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの肝機能障害を伴った患者における 薬物動態、安全性、安全性、薬力学の検討 ... 6

第1節 本章の目的 ... 6

第2節 臨床試験成績 ... 6

第1項 試験方法と評価項目 ... 6

第2項 被験者背景 ... 8

第3項 薬物動態... 10

第4項 薬力学的作用 ... 15

第5項 安全性の評価 ... 15

第3節 小括 ... 15

1.肝機能障害患者における血漿中未変化体の薬物動態へ与える影響に ついての考察 ... 16

2.肝機能障害患者における血漿中代謝物の薬物動態へ与える影響についての考察 .. 17

3.薬物動態と肝機能障害の程度との関係についての考察 ... 18

4.肝機能障害患者における薬力学へ与える影響についての考察 ... 19

5.肝機能障害患者における安全性へ与える影響についての考察 ... 19

6.本試験における制約条件 ... 20

7.結論 ... 20

第3章 SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの腎機能障害を伴った2型糖尿病患者に おける薬物動態、安全性、薬力学の検討 ... 21

第1節 本章の目的 ... 21

第2節 臨床試験成績 ... 21

第1項 試験方法と評価項目 ... 21

第2項 被験者背景 ... 22

第3項 薬物動態... 24

第4項 薬力学的作用 ... 29

(6)

第5項 安全性の評価 ... 34

第2節 小括 ... 35

1.腎機能障害患者における未変化体および代謝物の薬物動態へ与える影響に ついての考察 ... 36

2.腎機能障害患者における薬力学へ与える影響についての考察 ... 36

3.腎機能障害患者における安全性へ与える影響についての考察 ... 37

4.本試験における制約条件 ... 38

5.結論 ... 38

第4章 SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンのCGMを用いた2型糖尿病患者における 24時間血糖変動へ与える影響の検討 ... 39

第1節 本章の目的 ... 39

第2節 臨床試験成績 ... 40

第1項 試験方法と評価項目 ... 40

第2項 被験者背景 ... 41

第3項 薬力学的評価 ... 42

第4項 安全性の評価 ... 49

第3節 小括 ... 51

1.日内血糖変動に与える影響についての考察 ... 51

2.尿糖排泄量に与える影響についての考察 ... 51

3.血糖関連指標に与える影響についての考察 ... 51

4.安全性に与える影響についての考察 ... 52

5.本試験における制約条件 ... 53

6.結論 ... 53

第5章 SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの2型糖尿病患者における食後高血糖の 反応性の違いによる層別解析の検討 ... 54

第1節 本章の目的 ... 54

第2節 追加解析成績 ... 54

第1項 方法と評価項目 ... 54

第2項 被験者背景 ... 55

第3項 薬力学的作用 ... 56

第3節 小括 ... 65

1.被験者背景からの考察 ... 65

2.血糖値の変動に関する考察 ... 66

3.尿糖排泄作用からの考察 ... 66

(7)

4.血糖関連指標からの考察 ... 67

5.本試験における制約条件 ... 67

6.結論 ... 67

第6章 総括および今後の展望 ... 69

参考文献 ... 71

謝辞 ... 74

(8)

1 第1章 緒論

1. 糖尿病治療の薬物治療の現状と課題

糖尿病治療は長らく血糖値、すなわちHbA1cを低下させ、血糖値を下げた状態を継続的 にコントロールすることが目的とされてきた。しかし、ACCORD1)ADVANCE2)と言った 厳格な血糖コントロールを行った大規模臨床試験において心血管イベントを抑制出来ず、

むしろ心血管死を増やすという危険性が示唆されるなど、血糖を低下させてコントロール するだけではなく、どのように血糖を低下させるか、ということも考慮されるようになって きた。その背景としては、近年、糖尿病の研究領域においては、病態の研究に加えて、新規 の薬剤やデバイスが次々と登場してきていることによるところが大きいと考えられる。ま た、製造販売後の臨床試験、大規模な臨床試験による新たなエビデンスも発表されてきてお り、このような新しい知見を受けて糖尿病治療に関する種々の考察がなされるようになっ た結果、多くの治療アプローチが考えられ、血糖コントロールのあり方が議論されるように なってきている。

糖尿病治療に関して、特に日本では近年のライフスタイルの欧米化に伴う肥満人口の増 加、高齢化社会の進行などもあり、肥満や高齢の糖尿病患者が増える中で、従来の網膜症、

腎症、血管障害などの合併症の予防はもちろんであるが、がん、認知症、骨粗しょう症の合 併も考慮する必要が重要となってきている。ここ数年、糖尿病治療薬も多くの機序の薬剤、

ターゲット臓器の異なる薬剤が開発され、多用なメカニズムにより血糖を低下させること が出来るようになってきた。このような状況の中、糖尿病治療においては、これまでの血糖 値の低下だけを目指した治療ではなく、患者の病態や背景に応じた治療を行う必要があり、

そのための治療薬の選択、すなわち糖尿病治療薬の性質を種々の側面より検討し把握する ことが重要になってきている。

2. 選択的ナトリム依存性グルコース輸送体2(Sodium-glucose cotransporter 2:SGLT2)

阻害薬の開発の経緯

SGLT2阻害薬の起源はリンゴの樹皮に含まれる天然物であるフロリジンという物質であ

り、1800年代にフランスの研究者らにより、分離・精製された3)のがSGLT研究の始まり と言われている。その後、フロリジン投与による尿糖排泄作用が報告され4)、長らくは尿糖 を誘発する試薬として扱われ、その機序は不明であった。大きく研究が前進したのは1987 年のフロリジン投与による糖尿病ラットの血糖低下作用、インスリン感受性の改善および インスリン分泌能の改善の報告 5),6)からである。そして、SGLT2 の阻害によりインスリン を介さずに血糖値が改善され、その結果、糖毒性が解除されるという仮説が主張されること となった。これを契機として研究が活発化し、1994年にSGLT2 の分子が同定された 7)

(9)

2

とを受けて、SGLT2阻害薬の研究は急速に進展し、糖尿病治療薬としての可能性が検討さ れることとなった。

体内に取り込まれたグルコースは腎糸球体において濾過を受け、先ずは近位尿細管の前 半部の S1 セグメントに発現している低親和性であるが輸送能の大きい SGLT2 により約 90%が再吸収され、原尿中のグルコースを血液中に戻す役割を担っている。原尿中のグルコ ースの残りの約 10%は近位尿細管の遠位部の S3 セグメントに発現している高親和性で輸 送能の小さいSGLT1により再吸収される(図1)。SGLT1は主に小腸、腎臓、気管等に発 現しており、SGLT2はほぼ腎臓特異的に発現している。フロリジンはSGLT阻害作用の選 択的が低く、経口での吸収性も低かったことから血糖低下薬としての開発が難しかった。し かしながら、フロリジンの構造を参考にして、SGLT2に対する選択性を高めた経口吸収性 の高い種々の化合物が合成され、SGLT2特異的であり、経口投与可能なSGLT2 阻害薬の 開発が近年進められてきた。

1.SGLT1およびSGLT2を介したグルコース再吸収機構概略(模式図)

(10)

3

これまでの糖尿病治療薬は、糖尿病の主要原因であるインスリン量の低下およびインス リン感受性の減弱を補うため、インスリン量の増大、もしくはインスリン感受性の増強によ る血糖値の改善を目指したものであるのに対し、SGLT2阻害薬はインスリン作用を介する ことによる血糖値の改善ではなく、血中の糖そのものを体外に排泄するという新たなアプ ローチによる血糖低下作用を目指した薬剤である。α-グルコシダーゼ阻害薬もインスリン 作用を介さずに血糖改善を目指した薬剤であるが、α-グルコシダーゼ阻害薬は腸管からの 糖の吸収を遅延させることにより、血糖の吸収を緩徐にする薬剤であるため、体内に過剰に 存在する糖の排泄を目指したSGLT2阻害薬とは作用が異なっている。従って、SGLT2 害薬はこれまでに無い新規な機序であり、新しい位置付けの薬剤として開発され、新たな作 用分類の薬剤として登場することとなった。

従って、SGLT2阻害薬はこれまでの糖尿病治療薬と作用機序が大きく異なることより、

いずれの糖尿病治療薬とも併用することが可能であり、既存の糖尿病治療薬が無効であっ た症例には当然のことながら、既存治療薬において血糖コントロールが十分ではなかった 症例に対する追加投与など種々の場面での使用が期待されている。このようにSGLT2阻害 薬は新たな糖尿病治療の選択肢として治療現場に登場し、単独での治療を目指した投与、既 存の糖尿病治療薬に加えた併用による投与、既存の糖尿病治療薬からの切り替え投与等、臨 床現場に浸透しつつある。

2.グルコース再吸収機構(健康成人)とSGLT2阻害時の尿糖排泄

Abdul-Ghani MA et al. Diabetes. 2013; 62: 3324-33288)

(11)

4

3. SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの有用性

ルセオグリフロジン水和物(図3、以下、ルセオグリフロジン)は大正製薬株式会社にて 創製および開発されたSGLT2阻害薬である9)。20145月に2型糖尿病を効能・効果と して日本にて発売されている。SGLT2阻害薬は日本国内において6成分が承認され、販売 されているが、ルセオグリフロジンの特徴は、基本用量が2.5mg 11回投与というクラ ス最小用量という点である。1日用量が100mgSGLT2阻害薬もあることより、用量の 少なさが特徴と言えるが、この低用量にて血糖低下作用をもたらすという特徴が有効性お よび安全性においていかなる影響をもたらすかの検討が今後の課題の一つである。

ルセオグリフロジンの血糖降下作用に関しては、第Ⅲ相のプラセボ対照二重盲検比較試 10)、単剤の長期投与試験11)および既存の経口糖尿病治療薬との併用長期投与試験12)にお いて良好な血糖低下作用および持続的な血糖コントロールが確認されている。プラセボ対 照試験では、HbA1cはプラセボ群と比較して有意に0.75%の低下が認められた。52週間の 単剤長期投与試験においては、HbA1cは投与開始前と比較して0.50%の有意な低下が認め られた。既存経口糖尿病治療薬との併用投与試験では、HbA1c0.52~0.68%の有意な低 下が認められた。いずれの試験においても、HbA1cの低下に加えて、空腹時血糖値の低下、

体重の減少も認められていた。また、安全性に関してもこれまでの臨床試験において有害事 象の発現率、内容、程度等で重要な問題点は指摘されていない。

構造式:

xH2O

一般名: ルセオグリフロジン水和物(JAN)

分子式: C23H30O6S・xH2O 分子量: 434.55(無水物として)

化学名: (2S,3R,4R,5S,6R)-2-{5-[(4-Ethoxyphenyl)methyl]-2-methoxy-4-methylphenyl}

-6-(hydroxymethyl)thiane-3,4,5-triol hydrate (IUPAC)

3 ルセオグリフロジンの構造式および名称等

S

H OH H

O H

H OHH H O H

CH3

O CH3 O

C H3

(12)

5

これまでの研究においてルセオグリフロジンでは、肝機能障害患者および腎機能障害患 者等の特殊患者における血糖低下作用の詳細、および 2 型糖尿病患者における持続的な血 糖低下作用および血糖関連指標へ与える影響の本質について殆ど明らかになっていない。

そこで、本研究では、ルセオグリフロジンの血糖低下作用の詳細を検討する目的で、種々の 観点より血糖低下作用の本質を明らかにするために検討を行った。

本研究では、第2章においてルセオグリフロジンの肝機能障害患者における薬物動態、安 全性、薬力学の検討を行い、ルセオグリフロジンが肝機能障害を伴った 2 型糖尿病患者に 投与された際の用量調整の必要性および安全性、また薬効発現の可能性、さらには肝機能の 程度と薬物濃度等の相関があるか等を考察し、ルセオグリフロジンを肝機能障害患者へ投 与した際の特徴を明らかにした。

第3章では腎機能障害を伴った2型糖尿病患者におけるルセオグリフロジンの薬物動態、

安全性、薬力学の検討を行い、SGLT2阻害薬の標的臓器である腎臓の機能が低下した際の 有効性を薬物動態の変動も含めてルセオグリフロジンが腎機能障害へ投与された際の特徴 を明らかにした。

第4章ではルセオグリフロジン投与時の24時間血糖変動へ与える影響を持続的血糖測定

(CGM:continuous glucose monitoring)を用いて検討し、ルセオグリフロジン投与時の 1日を通しての血糖変動と血糖関連指標の変動を観察することで、ルセオグリフロジンの連 続的な血糖低下作用、その際の血糖関連指標へ与える影響の特徴を明らかにした。

第5章では第4章にて検討したルセオグリフロジンの連続的な血糖低下作用に関して食 後高血糖の反応性の違いに着目し、食後血糖値に対する反応性の相違に関して追加解析を 実施することで、ルセオグリフロジンの血糖変動および血糖関連指標へ与える新たな知見 を得ることが出来た。

以上、SGLT2阻害薬ルセオグリフロジンの肝機能障害患者および腎機能障害患者等の特 殊患者における血糖低下作用、2型糖尿病患者における持続的な血糖低下作用の検討は、今 後の糖尿病治療の臨床現場にてルセオグリフロジンを使用するに際して非常に有意義な検 討であり、今後、本薬の作用をさらに解明していくうえで参考となる有用な知見であると考 えられた。

(13)

6

第2章 SGLT2 阻害薬ルセオグリフロジンの肝機能障害を伴った患者における薬物動態、

安全性、薬力学の検討

第1節 本章の目的

SGLT2阻害薬は2014年より市場に6種類の異なる化学的構造の薬剤が登場しており、

その血糖降下作用はほぼ同様であると言われているが、血糖降下作用の特徴や化合物ごと の違いの詳細に関しては検討されていない。一方、製品ごとの臨床用量は各々異なっており、

ルセオグリフロジンに関してはSGLT2阻害薬のクラス最少用量(1日用量:2.5mg~5mg)

にて承認されている。この臨床用量の違いは各薬剤の体内動態、分布またSGLT2に対する 選択性と結合強度の相違などで説明されることが多いが、まだその本質は明らかにされて はおらず、ルセオグリフロジンの血糖低下作用の特長を明らかにすることは重要であると 考えられてきた。

一般的に、薬剤が肝臓にて代謝を受ける場合、肝機能障害患者においては薬物動態が影響 を受ける可能性がある。肝機能が低下している場合などは肝由来の代謝酵素が低下するこ とにより薬物濃度が上昇する可能性があり、それに伴って薬物濃度が上昇する場合には薬 効が過剰発現することが考えられるため、肝機能障害患者においては必要に応じて投与量 を通常の臨床用量より少量から開始する必要がある。また、SGLT2阻害薬においても、こ れまでの臨床試験での報告によると中等度から高度の肝機能障害患者においては薬物動態 が影響を受け、薬剤の暴露量が増えると報告されている薬剤もある 13),14),15)。したがって、

ルセオグリフロジンにおいても肝機能障害患者における薬物動態の検討は意義があること と考えられた。また、一般的に作用が類似していると言われているSGLT2阻害薬間におい て肝機能障害患者などの特殊患者における血糖低下作用の違いを明らかにすることは意義 のあることと考え、本研究を実施した。

本研究では、肝機能障害患者におけるルセオグリフロジンの薬物動態、安全性および薬力 学を検討することを目的とし、軽度から中等度の肝機能障害患者にルセオグリフロジンを 投与した際の薬物動態の変化を明らかにし、投与量調整の必要性を検討し、かつ薬力学的な 検討を行うことで血糖低下作用へ与える影響を推察するために実施した。

第2節 臨床試験成績

第1項 試験方法と評価項目

本臨床試験は日本人の肝機能障害患者を対象として、ルセオグリフロジンを5mg単回投 与した際の薬物動態、安全性および薬力学についての検討を目的に計画した。また、比較対

(14)

7

照群として健康成人を対象として同様の試験も実施した。本試験は非盲検の単回投与並行 群間比較試験とし、日本国内の 5 施設に協力を得て医薬品の臨床試験の実施に関する基準

(GCP:good clinical practice)準拠の下に実施した。

試験は入院下にて実施し、対象とした肝機能障害患者は、試験薬投与時の入院日よりも28 日前~7日前に実施したスクリーニング検査において肝硬変であることが診断され、肝機能 の障害の程度は、Child-Pugh分類(表1)でClassA(mild5~6点/軽度)およびClassB

(moderate:7~9点/中等度)とし、同意取得時の年齢が20歳以上75歳以下の被験者と した。なお、ClassC(severe:10~15点/重度)の肝機能障害患者では肝不全の進展・出 血・脳症の発現・感染症などのリスクがあることから本試験ではChild-Pugh 分類でClass

A(mild:軽度)またはClass B(moderate:中等度)を対象に設定した。また、主な除外

基準としてはコントロール困難な腹水が認められる患者、肝性脳症が認められる患者、肝切 除の既往を有する患者、悪性腫瘍を合併しているか過去 5 年間に悪性腫瘍の既往を有する 患者などを除外した。臨床薬理試験であるため、被験者の安全性の確保が出来ること、臨床 評価が可能であることを考慮して被験者の選択除外基準を設定して実施した。

試験は安全性の確保、薬物動態のための採血および薬力学の検討のための蓄尿を実施す ることから56日の入院管理下にて実施した。

表 1 Child-Pugh 分類16)

1:肝硬変の診断は画像診断および下記「慢性肝炎と肝硬変の判別式(A)」で総合的評価する。

A = 0.124×γ-グロブリン(%)+0.001×ヒアルロン酸μg/L+(-0.413)×性別(男=1、女=2

+(-0.075)×血小板数104/μL-2.005

2:プロトロンビン時間は(%)にて判定する。

また、健康成人群として、本試験に組み入れられた肝機能障害患者の被験者背景の年齢、

性別、体重を可能な限り合せた肝機能が正常な20歳以上の被験者を選定した。

<50 50~80

(%) >80

>6 4~6

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

(4.0~10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0~3.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8 2.8~3.5

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

80

(%) >80

>6 4

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

上記5項目のscoreを合計して判定する。

ClassA(mild) :5~6 点 ClassB(moderate):7~9 点 ClassC(severe):10~15点

内科学書 改訂第7 Vol.4 一部改訂

2

<50 50~80

(%) >80

>6 4~6

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

(4.0~10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0~3.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8 2.8~3.5

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

80

(%) >80

>6 4

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

上記5項目のscoreを合計して判定する。

ClassA(mild) :5~6 点 ClassB(moderate):7~9 点 ClassC(severe):10~15点

内科学書 改訂第7 Vol.4 一部改訂

<50 50~80

(%) >80

>6 4~6

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

(4.0~10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0~3.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8 2.8~3.5

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

80

(%) >80

>6 4

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

上記5項目のscoreを合計して判定する。

ClassA(mild) :5~6 点 ClassB(moderate):7~9 点 ClassC(severe):10~15点

<50 50~80

(%) >80

>6 4~6

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

(4.0~10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0~3.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8 2.8~3.5

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

80

(%) >80

>6 4

(秒、延長) <4 プロトロンビン時間

3~4(時々昏睡あり)

1~2(軽度)

なし 肝性脳症(度)

中等度以上 コントロール困難 軽度

コントロール可能 なし

腹水

(>10)

10)

(<4.0)

(原発性胆汁性肝硬変の場合)

>3.0 2.0

<2.0 ビリルビン(mg/dL)

<2.8

>3.5 アルブミン (g/dL)

3点 2点

判定基準 1点

上記5項目のscoreを合計して判定する。

ClassA(mild) :5~6 点 ClassB(moderate):7~9 点 ClassC(severe):10~15点

内科学書 改訂第7 Vol.4 一部改訂

2

(15)

8

なお、試験の参加に際しては本人の文書による同意を取得して実施した。

ルセオグリフロジン投与の前日、尿糖定量への影響を考え、投与日は全ての被験者の食事 の総カロリーを1,800kcalとし、その内訳は糖質70%、蛋白質20%、脂質10%とした。ル セオグリフロジン投与日は投薬1分後に朝食を摂取し、投与4時間後に昼食、投与12時間 後に夕食を摂取することとした。

ルセオグリフロジンの薬物動態を検討するため、活性本体であるルセオグリフロジン未 変化体、加えて代謝物M1、M2、M3およびM17の測定を行った。

採血はルセオグリフロジン投与前、投与後0.25、0.5、1、1.5、2、2.5、3、4、6、8、12、

24時間後(投与翌日)、48時間後(投与3日目)、72時間後(投与4日目)に実施した。

蓄尿はルセオグリフロジン投与24時間前から投与直前までの 24時間、投与後から 24 間、投与24時間後から48時間後(投与2日目~投与3日目)、48時間後から72時間後

(投与3日目~投与4日目)まで実施した。なお、蓄尿は薬力学的検討を行うための尿糖 定量にも使用した。

安全性に関しては有害事象の調査、バイタルサイン(体重、体温、血圧、脈拍)、心電図、

臨床検査を実施して評価した。

第2項 被験者背景

本試験に組み入れられた被験者の背景を表2に示した。13 例の肝機能障害患者および6 例の健康成人が試験を完了した。なお、被験者の組み入れに際して、肝機能障害患者群に対 して健康成人群の被験者背景を可能な限り合せるため、年齢、性別、体重、BMI(body mass index)を勘案して健康成人被験者の選定を行った。

軽度の肝機能障害患者8例、中等度の肝機能障害患者 5例、肝機能の正常な健康成人 6 例が組み入れられた。被験者背景のうち、各群の体重の平均値は健康成人 65.6kg、軽度の 肝機能障害患者62.8kg、中等度の肝機能障害患者68.3kg、およびBMIは各々23.7kg/m2 23.2kg/m2、24.0kg/m2とほぼ度程度の値であった。

(16)

9 表 2 被験者背景

Normal hepatic function

Mild hepatic impairment

Moderate hepatic impairment

N 6 8 5

Male/female 5 / 1 7 / 1 4 / 1

Age, years

Mean ± SD 48.2 ± 9.3 57.4 ± 12.2 54.8 ± 12.5

Range 40 - 65 43 - 75 44 - 72

Body weight, kg

Mean ± SD 65.63 ± 12.4 62.84 ± 12.44 68.26 ± 9.28

Range 49.0 - 79.3 44.7 - 79.7 60.5 - 82.4

BMI, kg/m2

Mean ± SD 23.67 ± 3.10 23.22 ± 3.20 23.98 ± 1.49

Range 20.3 - 28.0 18.2 - 27.0 22.3 - 25.8

Fasting plasma glucose, mg/dL

Mean ± SD 97.0 ± 5.5 104.8 ± 17.7 99.2 ± 8.1

Range 89 - 105 91 - 145 88 - 107

Total bilirubin, mg/dL

Mean ± SD 0.78 ± 0.40 0.99 ± 0.35 1.96 ± 0.74

Range 0.6 - 1.6 0.5 - 1.6 1.0 - 2.7

Albumin, g/dL

Mean ± SD 4.32 ± 0.10 3.78 ± 0.38 3.08 ± 0.18

Range 4.2 - 4.4 3.3 - 4.5 2.8 - 3.2

Prothrombin time, %

Mean ± SD 101 ± 0 92.5 ± 6.0 74.6 ± 8.8

Range 101 - 101 85 - 101 66 - 85

Ascites, -

None 7 3

Mild - 1 2

Serologocal test for hepatitis,

HCV antibody positive 0 4 3

HBs anitgen positive 0 1 0

None 6 3 2

SD: Standard deviation, BMI: Body mass index, HCV: Hepatitis C Virus, HBs: Hepatitis B surface antigen Clin Pharmacol Drug Dev., 6, 439-447 (2017)

(17)

10 第3項 薬物動態

3-1 血漿中薬物濃度

肝機能障害患者および健康成人に対してルセオグリフロジン5mgを単回投与した際のル セオグリフロジン未変化体、代謝物M1、M2、M3、M17の薬物動態の検討を行った。

軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群および健康成人群のルセオグリフ ロジン未変化体、代謝物M2およびM17の血漿中濃度の推移を図4に示した。

ルセオグリフロジン未変化体の濃度推移は軽度の肝機能障害患者群と健康成人群におい てほぼ同様の推移を示した。中等度の肝機能障害患者群では健康成人群に比べてルセオグ リフロジン未変化体濃度は投与後0.5時間から4時間まで、やや低く推移したが、その後は ほぼ同様の推移を示した。

代謝物M1、M2、M3、M17の濃度はルセオグリフロジン未変化体濃度と比較して低値に て推移した。測定した代謝物M1、M2、M3、M17のうち、10ng/mLを超えて検出された ものはM2およびM17であり、M1およびM3はそれ以下であった。M1は健康成人群に おいて軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群よりも高値で推移したが、M2、

M3およびM17は軽度の肝機能障害患者群において健康成人群および中等度の肝機能障害 患者群よりも高値で推移した。

軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群および健康成人群のルセオグリフ ロジン未変化体、血漿中代謝物M1、M2、M3、M17の血漿中薬物動態パラメーターを表3 に示した。

最高血漿中濃度(Cmax:maximum observed plasma concentration)は中等度の肝機能 障害患者群では 170ng/mL であり、軽度の肝機能障害患者群の 228ng/mL、健康成人群の

228ng/mL に比較して低値であったが、その他の投与後 0 時間から無限時間までの血漿中

薬物濃度時間曲線下面積(AUCinf:area under the curve from time zero to infinity) 消失半減期(T1/2:elimination half-time)、見かけの全身クリアランス(CL/F:total body clearance from plasma after extravascular administration)などの薬物動態パラメーター に関しては3群ともに同様であった。

代謝物M1、M2、M3、M17CmaxおよびAUCinfはルセオグリフロジン未変化体の 濃度に比較して非常に低値であった。M1に関しては軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝 機能障害患者群ともにCmax、AUCinfは健康成人群に比較して低値であった。一方、M2、

M3ならびにM17 に関しては軽度の肝機能障害患者群においてCmax、AUCinfは健康成 人群に比較して高値であったが、中等度の肝機能障害患者群においては健康成人群と同様 であった。

健康成人群に対する肝機能障害患者群の薬物動態パラメーターの比を検討した結果、

(18)

11

Cmaxに関しては軽度の肝機能障害患者群で、1.02(90%信頼区間:0.790-1.32)、中等度の 肝機能障害患者群では、0.774(90%信頼区間:0.580-1.03)であり、AUCinfに関しては軽 度の肝機能障害患者群で、0.939(90%信頼区間:0.752-1.17)、中等度の肝機能障害患者群 では、1.00(90%信頼区間:0.780-1.28)であった。健康成人群と比較して中等度の肝機能 障害患者群ではCmax23%低下したが、それ以外の肝機能障害患者における薬物動態パ ラメーターは健康成人群とほぼ変わらなかった。

(19)

12

4 軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群および健康成人群における

ルセオグリフロジン未変化体、代謝物M2およびM17の血漿中濃度の推移

Clin Pharmacol Drug Dev., 6, 439-447 (2017)

(20)

13

3 軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群および健康成人群における

ルセオグリフロジン未変化体、代謝物M1、M2、M3、M17の薬物動態パラメーター

Analyte Parameter

Normal hepatic function

Mild hepatic impairment

Moderate hepatic impairment

(n = 6) (n = 8) (n = 5)

Luseogliflozin

Cmax (ng/mL) 228 ± 80.6 228 ± 54.9 170 ± 28.4 AUCinf (ng∙h/mL) 1800 ± 427 1720 ± 523 1780 ± 260

Tmax (h) 1.17 ± 1.4 0.50 ± 0 0.50 ± 0

T1/2 (h) 11.0 ± 1.17 10.9 ± 1.14 12.9 ± 1.85 CL/F (L/h) 2.89 ± 0.589 3.12 ± 0.839 2.86 ± 0.393

代謝物M1

Cmax (ng/mL) 0.634 ± 0.322 0.315 ± 0.1 0.276 ± 0.121 AUCinf (ng∙h/mL) 13.5 ± 7.47 5.47 ± 3.22 7.79 ± 2.60 a) Tmax (h) 2.83 ± 2.56 2.44 ± 1.24 4.40 ± 2.63 T1/2 (h) 14.4 ± 1.76 15.4 ± 6.05 18.3 ± 2.46 a)

代謝物M2

Cmax (ng/mL) 8.11 ± 3.35 9.46 ± 2.61 6.95 ± 2.16 AUCinf (ng∙h/mL) 233 ± 79.5 285 ± 113 271 ± 65.1 Tmax (h) 5.42 ± 5.16 4.50 ± 3.30 10.8 ± 2.68 T1/2 (h) 13.5 ± 1.72 14.0 ± 2.52 18.0 ± 4.46

代謝物M3

Cmax (ng/mL) 1.77 ± 0.735 2.36 ± 1.61 1.28 ± 0.254 AUCinf (ng∙h/mL) 21.5 ± 5.65 34.3 ± 18.0 27.3 ± 4.70 Tmax (h) 2.08 ± 2.91 1.19 ± 0.651 1.70 ± 0.671 T1/2 (h) 8.81 ± 0.737 9.98 ± 1.44 13.3 ± 3.49

代謝物M17

Cmax (ng/mL) 5.86 ± 2.18 9.01 ± 4.77 5.32 ± 1.93 AUCinf (ng∙h/mL) 131 ± 45.4 214 ± 105 146 ± 38.5 Tmax (h) 5.83 ± 3.25 5.94 ± 3.05 7.4 ± 3.29 T1/2 (h) 11.0 ± 1.39 11.4 ± 2.07 13.8 ± 2.33 Mean ± SD

a) n=4

Clin Pharmacol Drug Dev., 6, 439-447 (2017)

(21)

14 3-2 肝機能障害の程度と薬物濃度との関連

肝機能障害の程度がルセオグリフロジンの薬物動態へ与える影響を検討する目的にて、

ルセオグリフロジン未変化体のCmaxAUCinfに関してChild-Pugh 分類の肝機能障害 の重症度の判定基準因子である総ビリルビン値、アルブミン値、プロトロンビン時間との関 係を検討した。その散布図を図 5 に示した。ルセオグリフロジン未変化体濃度と総ビリル ビン値、アルブミン値、プロトロンビン時間との関連について相関係数を検討したが、被験 者間ごとのばらつきが大きいこともあり、意味のある相関関係はみられなかった。

5 ルセオグリフロジン未変化体の薬物動態パラメーター(CmaxAUCinf)と肝機能

障害の重症度因子との散布図

Clin Pharmacol Drug Dev., 6, 439-447 (2017) 3-3 尿中未変化体および代謝物の排泄

ルセオグリフロジン投与後より投与72時間後までのルセオグリフロジン未変化体の尿中 累積排泄率は健康成人群では 3.90%、軽度の肝機能障害患者群では 3.33%、中等度の肝機 能障害患者群では5.45%であり、各群においてほぼ同様であった。ルセオグリフロジン代謝 M1、M2、M3、M17の累積尿中排泄量、累積尿中排泄率に関しても健康成人群、軽度の 肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群とも同様であった。

(22)

15 第4項 薬力学的作用

肝機能障害患者に対してルセオグリフロジン5mgを単回投与した際の薬理的な指標とし て尿糖排泄量にて評価を行った。

ルセオグリフロジンは健康成人群、軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群 のいずれの群においても投与前値と比較して有意に24時間の尿糖排泄量を増加させた。24 時間の尿糖排泄量の投与前値からの平均の増加量は健康成人群では55.2g、軽度の肝機能障 害患者群では38.8g、中等度の肝機能障害患者群では50.3gであった。

なお、軽度の肝機能障害患者群において尿糖排泄量の増加量が著しく少ない被験者が1 存在した。その被験者は投与24 時間の尿糖増加量が6.7g であり、健康成人群および中等 度の肝機能障害患者群における最も少ない尿糖増加量の被験者の尿糖排泄量は各々42.0g、

32.3gであり、これらと比較しても極端に少ない増加量であった。なお、本被験者のルセオ

グリフロジンの薬物動態は他の被験者と同様であり、暴露量は十分であったと考えられ、尿 糖排泄量の増加量が僅かであった理由は不明である。参考までにこの被験者を除いた場合 の軽度の肝機能障害患者群の平均の尿糖排泄量を算出したところ43.3gであった。

第5項 安全性の評価

本試験において重篤な有害事象は認められなかった。また、低血糖の有害事象もみられな かった。有害事象は軽度の肝機能障害患者群において1 1件、軽度の鼻咽頭炎が認めら れたのみであった。鼻咽頭炎が認められた例に関してはルセオグリフロジン投与前より感 冒様症状がみられており因果関係は否定された。なお、本症例は無処置にて回復した。

その他、バイタルサイン、臨床検査値では特に問題となる変化は認められなかった。また、

12誘導心電図においても試験期間を通じて問題となる変化はみられなかった。

本研究における軽度の肝機能障害患者、中等度の肝機能障害患者に対するルセオグリフ ロジン 5mg単回投与においては安全性上の大きな問題点は認められなかった。

第3節 小括

薬物治療に際して、一般的に肝機能障害を伴う場合、特に肝硬変などに因る場合には肝臓 の病態生理学的な変化が生じ、薬物によっては薬物動態が影響を受け、薬物動態パラメータ ーであるCmaxAUCが変化する場合がある。

SGLT2阻害薬においても、これまでの臨床試験の報告によると中等度から高度の肝機能

障害患者においては薬物動態が影響を受け、薬剤による暴露量が増えると報告されている 化合物がある。SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンではCmaxおよびAUCの幾何学平 均の比は健康成人と比較して肝機能障害患者において、各々140%、127%であり、同じく

(23)

16

SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジンでは123%、136%、エンパグリフロジンでは125%、

147%であり、肝機能障害患者では薬剤の暴露量の増大が認められている13),14),15)。ダパグリ

フロジンおよびイプラグリフロジンの薬物暴露量の増大は、それらの薬剤の代謝に寄与し

ている UGT(UDP-glucuronosyltransferase)活性の低下によるものと考えられている。

一方、エンパグリフロジンで認められた暴露量の増加はエンパグリフロジンの肝クリアラ ンスの低下もしくは肝臓におけるグルクロン酸抱合の低下による胆汁排泄の減少に因ると 考えられている。

以上のようにSGLT2阻害薬であるダパグリフロジン、イプラグリフロジン、エンパグリ フロジンは肝障害患者においてCmax AUCの増大が認められ暴露量が増えるとの報告 があったため、ルセオグリフロジンにおいても肝機能障害患者における薬物動態へ与える 影響の検討は意義があることと考えられた。本研究は、ルセオグリフロジンの投与の可能性 のある軽度から中等度の肝機能障害患者における薬物動態に関して健康成人を対照として 検討し、ルセオグリフロジンの薬物動態的な特徴を明らかにし、肝機能障害患者における投 与量調整の必要性および血糖低下作用へ与える影響を検討し、肝機能障害患者における有 用性を推察するために計画したものである。

1.肝機能障害患者における血漿中未変化体の薬物動態へ与える影響についての考察

本試験において、軽度から中等度の肝機能障害患者におけるルセオグリフロジンの暴露 量の変化は小さいものであった。血漿中未変化体濃度の推移を投与後72時間まで検討した 結果、軽度の肝機能障害患者においては健康成人とほぼ同様の推移を示した。一方、中等度 の肝機能障害患者においては健康成人と比較して投与後 0.5 時間から 4 時間まではやや低 く推移したが、その後はほぼ同様の推移を示した。血漿中未変化体の薬物動態パラメーター に関しては、軽度の肝機能障害患者においては健康成人とほぼ同様のCmax、AUCであっ た。一方、中等度の肝機能障害患者において、健康成人と比較してCmaxが約23%低下し たが、AUCはほぼ同様であった。すなわち、ルセオグリフロジン血漿中未変化体濃度は軽 度から中等度の肝機能障害患者の薬物動態は健康成人と比較して、中等度の肝機能障害患 者においてCmax23%程度低下するものの、それ以外の薬物動態パラメーターはほぼ変 わらないものと判断された。

本研究では、軽度から中等度の肝機能障害患者においてルセオグリフロジンのAUCが変 わらない理由を正確に説明することは出来ないが、他のSGLT2阻害薬と比較した場合、ル セオグリフロジンのクリアランスが比較的小さいこと、さらにルセオグリフロジンは肝臓 だけではなく腎臓と小腸において代謝を受けると考えられている。そのためルセオグリフ ロジンの AUC は肝機能障害により肝血流量が変化した場合においても影響を受け難いと 推測される。中等度の肝機能障害患者において Cmax の低下が僅かにみられたが、浮腫や 腹水による分布容積の増大等によると推察された。

(24)

17

2.肝機能障害患者における血漿中代謝物の薬物動態へ与える影響についての考察

ルセオグリフロジンの代謝様式は、酸化代謝経路およびグルクロン酸抱合経路の 2 つの 経路とされており、図 6 に示した通り、複数の酵素が関与して代謝されると考えられてい 17)。ヒトにおけるルセオグリフロジンの主要代謝経路は、酸化代謝経路である以下の(1)

と(2)、グルクロン酸抱合経路である(3)と考えられている:

(1)O-脱エチル化によるM2(O-脱エチル体)への変換、M2のグルクロン酸抱合による

M12(M2のグルクロン酸抱合体)の生成

(2)エトキシ基のω-水酸化によるM3(エチル基末端の水酸化体)への変換、酸

化によるM17(カルボン酸体)の生成

(3)未変化体の直接的なグルクロン酸抱合によるM8(グルクロン酸抱合体)の生成

ルセオグリフロジンのヒトにおける代謝は、主にCYP3A4/5によりM2に変換され、M2

は主にUGT1A1、1A8、1A9によりM2のグルクロン酸抱合体であるM12に変換される。

また、主にCYP4A11、4F2、4F3Bによりルセオグリフロジン未変化体はM3に変換され、

M3ADH/ALDHによりカルボン酸体であるM17に変換される。これらに加えてルセオ

グリフロジン未変化体がUGT1A1により直接グルクロン酸抱合を受けグルクロン酸抱合体 M8となることが推定されている。このように複数の代謝経路および代謝酵素によりルセオ グリフロジンは代謝を受けていることが確認されている。

本試験においてはルセオグリフロジン未変化体に加えて、代謝物 M1、M2、M3 および M17という4種類の代謝物を測定した。この4種類の代謝物を測定することとした理由は M2M17は主要代謝物であり、M1M3はその化学的構造から活性代謝物と考えられ ているためである。

ルセオグリフロジン代謝物に関して検討したところ、活性代謝物 M1 に関しては軽度の 肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群ともにCmax、AUCinfは健康成人群に比較 して低値であった。また、主要代謝物であるM2およびM17、活性代謝物M3に関しては 軽度の肝機能障害患者群においてCmax、AUCinfともに健康成人群に比較して高値であっ たが、中等度の肝機能障害患者群においては健康成人群と同様であった。しかしながら、こ れらルセオグリフロジンの代謝物であるM1、M2、M3、M17のいずれにおいてもCmax よびAUCはルセオグリフロジン未変化体の濃度に比較して非常に低値であったため、若干 の暴露量の変化がみられたが、臨床的に意義のある変動ではないと考えられた。

(25)

18

6 ルセオグリフロジンのヒト代謝経路

3.薬物動態と肝機能障害の程度との関係についての考察

肝機能障害の程度がルセオグリフロジンの薬物動態へ与える影響を検討する目的で、ル セオグリフロジン未変化体の薬物動態パラメーターであるCmaxAUCinfChild-Pugh 分類の肝障害の重症度の診断上の因子である総ビリルビン値、アルブミン値、プロトロンビ ン時間との相関係数を算出して関係を検討した。しかしながら、被験者数が少ないこと、被 験者の重症度の診断因子のばらつきが大きいこともあり、血漿中濃度とこれらの因子に意 味があると考えられる相関関係がみられなかったと考えられた。本検討に関しては被験者 数を多くし、高度の肝機能障害患者におけるルセオグリフロジンの薬物動態を評価するこ

Glu:グルクロン酸抱合 :主要代謝経路

M11 M18

M4、M5、M6

M7、M9

(グルク口ン酸抱合体)

M1

(Ο-脱メチル体)

ルセオグリフロジン M2

(Ο-脱エチル体)

UGT1A1 UGT1A8 UGT1A9 CYP3A4/5

M12、M19、M20 CYP4A11

CYP4F2 CYP4F3B UGT1A1

ADH ALDH

M8

(グルク口ン酸抱合体)

M3

(エチル基末端の水酸化体)

M17

(カルボン酸体)

M16

Glu

図 3  ルセオグリフロジンの構造式および名称等 SHOHHOHHOHHHOHCH3 O CH 3OCH3
図 4  軽度の肝機能障害患者群、中等度の肝機能障害患者群および健康成人群における
図 6  ルセオグリフロジンのヒト代謝経路
図 11  血糖値 AUC(0-4 時間)の変化量(平均値±S.D.)
+7

参照

関連したドキュメント

BMI, serum lipid levels, fasting plasma glucose and insulin, blood pressure, prevalence of high 167.. blood pressure,

Methods: Organ-specific IR in the liver (hepatic glucose production (HGP)6 fasting plasma insulin (FPI) and suppression of HGP by insulin [%HGP]), skeletal muscle

We measured blood levels of adiponectin in SeP knockout mice fed a high sucrose, high fat diet to examine whether SeP was related to the development of hypoadiponectinemia induced

直腸,結腸癌あるいは乳癌などに比し難治で手術治癒

man 195124), Deterling 195325)).その結果,これら同

「 Platinum leaf counter electrodes for dye-sensitized solar cells 」 Kazuhiro Shimada, Md. Shahiduzzaman,

「 Platinum leaf counter electrodes for dye-sensitized solar cells 」 Kazuhiro Shimada, Md. Shahiduzzaman,

再生可能エネルギーの中でも、最も普及し今後も普及し続けるのが太陽電池であ る。太陽電池は多々の種類があるが、有機系太陽電池に分類される色素増感太陽 電池( Dye-sensitized