長野工業高等専門学校紀要第
3 2
号( 1 9 9 8 ) 1 5
平面接触摩擦実験装置の製作 とその 自動化
宮尾芳一 青木博夫 芳賀武
Fabrication of the Flat on Flat Friction Tester and its Automation
Yoshikazu MIYAO Hiroo AOKI and Takeshi HAGA
Var i o uss t udi e sha vebe e nc ar r ie do utt or e duc et hef r i c t i o n.I nvac uum o rf o o dmac hi ne,r e s i nbo nde d l ubr i c at i o n丘l msar ewi de l yus e d.Ho we ve r ,asf r ic t i o nanddur a bi l i t yar ec ompl i c at e d,t he r ear ef e w f undame nt als t ud i e si nc as eo ff lato nf latc o nt ac t .Soweha vede v e l o pe dt hee xpe r i me nt alappar at us ,by whi c ht hec yl i ndr ic alr ingendc o nt ac t sandr o t at e sont hes ampl e丘l ms .Thef eat ur e so ft hi sappar at us a r e:
Co nt ac tf lato nf latwi t hwe l lpr e c i s i o n.
Co l l e c tands t o r ee x pe r i me nt a ldat aal l t O mat i c al l y.
St o paut o mat i c a ll ywhe nt hef i l m ■ sl i f ei so ve r .
Me as ur et I l eabr as i o nonmac hi nei nadvanc i ngS t ag e s .
Andweal s or e po r tt hef ri c t i o nc ha r ac t e r is t i c so ft y pi c a l8 0 1 i dl ubr ic antPTFEandMOS 2
.キー ワー ド : 平面・平面接触,固体潤滑剤,耐久性
1.
はじめに氷帯による単結晶の氷 を切断 してスケー トリンク を製作 し,摩擦を減 らし記録を更新 しようとする試み が話題をよんでいる.また,エンジン等の各種の機械 が作動 しているとき,摩擦のために大量のエネルギー が消費 され,その摩擦を減 らすための様々な研究がな されている.一方, 自動車のブ レーキは大きな摩擦力 を応用 しているし,人間は地面 との摩擦がなければ歩 くこともできない.このように 日常生活では摩擦 と深 くかかわっている.
昨今の摩擦の研究は,摩擦係数を減 らすばか りで なく,必要なときに必要な摩擦係数を得るにはどのよ うにすれば良いかも研究 されている. しかし,摩擦 を 少なくする事は,エネルギ問題 と材料 (資源)損失の 観点からも重要である.
各種産業機械の急速な進歩に伴い,潤滑条件も過
*機械工学科助教授
**電気工学科助教授
*榊 電子制御工学科教授 原稿受付
1 9 9 8
年1 0
月8
日酷 となってきた.また,普通の潤滑には潤滑油を用い る. しか し,それ らの使えない高温や真空中の場所の ほかに,汚染をきらう食品機械やコピー機等には レジ ン結合固体潤滑剤被膜が広 く使用 されている.この被 膜の摩擦や耐久性は複雑であるが,この方面の基礎研 究は少なく摩擦特性 も明かでない.今まで硬球をスラ イダとして摩擦実験を行い固体潤滑被膜の摩擦 と耐久 性を報告 されてきた 1). しか し,実際は平面 と平面 の接触する場合が多い.そこで,より実用使用に近い 条件で特性 を調べるため,円筒 リング端面を被膜試料 に接触回転 させ る実験装置を製作 した.
今回はこの摩擦実験装置に付加 した機能を中心に, 報告する.また,この装置によ り得 られた,固体潤滑 剤 として代表的な
PTFE
(四フッ化エチ レン)お よびMo S 2
(二硫化モ リブデ ン)の摩擦特性 2>4)についても参考 として報告する.
2.
付加する機能摩擦摩耗試験機は,一般的に自作装置を用いて試験
図1 摩 擦実 験装 置 を行 うことが多い.また,実際の摩擦面は様々な組み
合わせがある.平面 と平面の場合 も多いが,実験装置 で平面と平面を精度良く接触させることは難 しく,平 面に対 して硬球をスライダとした実験で摩擦特性を調 べることが多い.そこで,今回製作す る実験装置は, 平面 と平面が精度良く (片あた りしな く)接触できる ようにした.
また,固体潤滑剤は機械が壊れるまでの長時間,メ ンテナンスフリーで作動する摺動部分に使われる.そ のため,固体潤滑剤の寿命実験は長時間にお よぶ事が ある.しか し,被膜の損傷は突然表れ る可能性 もある.
そこで,急に被膜面がなくな り寿命 となった とき,装 置を自動的に停止する機能をつけた.
さらに,「定時間毎にデータを自動的にパ ソコン取 り込み保存できる機能および試験片を実験装置か ら外 すことなく,形状を測定 し摩耗の進行状態を測定でき
る機能も付加 した.
3
.実験装置3‑1
構成図
1
に今回製作 した円筒 リング端面による摩擦実 験装置の概略図を示す.試料は ドリル ・タップ用切削 勤力計 (佐藤マシナ リーAST・ BM)
・に保持 し,円筒 リングを回転させて端面を潤滑被膜に摩擦 させて実験( A)
調 整板 の 面 だ し( 8)
リン グ端 面 の面 だ し 図2 平 面 だ し原 理平面接触摩擦実験装置の製作とその自動化 を行った.
可変モータ‑減速機‑主軸回転で円筒 リングを回転 させ,所定の回転速度が出るようにした.このときの 切削動力計の トルク値から摩擦力,摩擦係数を算出 し た.
変位計を用い リングの上下畳を,また,測定部に直 列に
1 K
f2の抵抗 を接続 し,5 V
の電圧 をかけた とき の降下電圧 より摩擦面の接触抵抗を算出した.リング形状は接触面積
40mm 2(
外径¢1 6. 6
,内径¢ 1 5.
0)
で材質はS45C
である.今回の被膜の寿命は摩 擦係数 〃が再上昇 して0. 3
以上の時とした.実験は20
‑25
℃,湿度は40‑50%
の室内空気中で行った.3‑2.
付加した機能3‑2‑1
平面一平面接触平面一平面が精度よく接触できない理由は円筒 リン グをチャックに取 り付ける際の傾き誤差,および試料 の取付時の誤差が考えられる.そこで次のよ うにし誤 差を少なくした.
(1)図 2(A)に示すように切削動力計の試料取付をで きるだけチャック (回転軸) と垂直になるように 固定する.
( 2)
試料取付台に細い凸部を持つ調整板を接着剤で固 定する.(3)チャックに砥石 (研磨紙)をつけ,調整板凸部を 研磨する.この時,たとえ砥石面が回転軸に垂直で なくて砥石最下部が凸部にあた り研削する事になる ので,凸部上面は回転軸に垂直な面 となる.
(4)図 2(ち)に示すように,試料取付台に試料の変わ りに砥石をつける.
( 5)円筒 リングをできるだけセンタを出しながらチャ
ックに取 り付ける.1 7
( 6 )円筒 リング端面を砥石面に接触 させ端面を削る.
砥石面が僅かに傾いていても砥石の最上部で円筒 リ ング端面を研削 し,円筒 リング端面は回転軸に対 し 垂直に形成される.
( 7 )被膜試料は平面研削盤で加工 した鋼材 に被膜を塗
布 したので試料平面の平行度は極めて良い.この試 料を取 り付けると,試料表面 と円筒 リング端面は精 度良く接触する.3‑2‑2
データの自動採取 とその保存実験装置にパ ソコンを連結 し,実験デー タを 自動 的に得るように した.図3にシステム構成を示す.
摩擦力等のデータは電圧値で出力 されるので,その電 圧を増幅 し
,A/D
変換 した後パ ソコンに取 り込める ようにした.所定の回数 (時間)毎にデータを取 り込 み配列にいれ保存 した.データは変動があるので一定 個数を取 り込み,その平均値を使用 した.3‑2‑3
装置の自動停止実験中に摩擦係数が
0. 3
となる摩擦力を越 したら, 実験装置の駆動モータ電源,記録計の電源,電子回路 の電源を自動的に遮断するようにした.この回路図を 図4に示す.スイ ッチ
PS2
を押 している間は,モータ電源の リ レーR3のスイッチが オ ンになると共に,コンセ ン トには交流1 00 V
の電圧がかか り,直流電源 もオンに な りオペアンプ,電子回路,直流 リレーが作動できる 状態になる.そ してスイ ッチPS
lをオンにするとリ レーRl
が働き自己保持回路 となる. リレーRl
内の1 00 V
のスイッチがオンにな り,PS
l,PS2
をオフに してもモータ電源は供給 され,電子回路 も働 き実験可 能な状態が保持 される.ここで,摩擦力に起因する切削動力計か ら出力す る
図
3
シ ステ ム構 成図
4
電 気 回 路 図電圧 を
VA
,実験条件により 調整できる基準電圧をvB
とする.これ らの電圧を摩擦実験中にオペアンプ で常に比較 している.摩擦力が大きくな りVF‑VB
≧
0になった ら,オペアンプの出力が ハイ レベル と な り, リレーR2
が作動 し, リレーR
lの 自己保持で きなくな り,1 00 V
電源,直流電源, 3
相20 0 V
電源 が遮断 される.3‑2‑4
摩耗痕深 さの測定被膜の摩擦特性 を調べ損傷,寿命 を予測するため に,被膜の摩擦進行状態を観察する事は重要である.
一度試料をはず し,被膜 を観察 してか ら同一箇所に取 り付け実験を再開することは殆 ど不可能である.そこ で摩擦実験装置に形状測定装置を組込み,試料を外す ことなく一定回数毎に円筒 リングを上昇 させ,試料表 面に形状測定器のセンサー部を移動 させ,同一箇所の 摩耗痕の形状の測定できるようにした.また,測定状 必要な試料表面 とセンサー部の移動が平行になるよう な調整機能もつけた.
4.
実験結果および考察これ らの機能が付加 した実験装置によ り得 られた 一例 として代表的な固体潤滑剤である
PTFE
とMo S 2
の摩擦特性を調べた.
4‑1
言式料作成本研究で使用 した固体潤滑剤被膜は固体潤滑剤 と して,平均粒径
5F Lm
のPTFE
および0. 45J Lm
のMo S 2
を,結合剤 としてPA I
(ポ リア ミ ドイ ミド樹脂)を使用 した.直径
45 mm
のS45 C ( 0. 6〃mRa
,2 40Hv )
円板に,スプ レー法にて レジン結合剤,固体 潤滑剤,溶剤の混合液を被膜が一定の厚 さになるまで, 塗布 ‑乾燥 ‑膜厚測定を繰 り返 し,焼成( 2 3 0o C, 3 0
分)した.4‑2
固体潤滑剤含有の摩擦特性図
5
に,被膜厚がほぼ同 じ( 2 5
土5J Jm)
で,結合 剤PA
I(図中表示P
AI)のみの場合 と固体潤滑剤PTFE
を3 3 wt %
含有( PAI ・ P・ 33 wt %)
の場合, こ れ と体積%がほぼ同 じMo S 2
を5 0 wt %
含有( P
AI ‑ M・
5 0 wt %)
の場合の 代表的な摩擦係数と摩擦回数の特 性を示す.固体潤滑剤が
Mo S 2
の場合,摩擦係数は,最初は低 いがその後摩擦回数 と共に増加 しピーク値を示 し,そ の後再び低い値を長い期間示 したのち寿斜 こ達 した.最初のピーク値までは
,PA
Iのみの場合とほぼ同 じ 傾向になった.これはMo S 2
は結合剤 で被覆 されて いるので, ピーク値になるまでの摩擦特性は潤滑剤無 しのPA
Iのみの摩擦特性を示 していると思われる.Mo S 2
含有の場合はピーク後にMo S 2
の被覆が破壊 し, 本来のもつ低摩擦が表れ ると思われる.固体潤滑剤
PTFE
含有の場合,平均接触圧力が低 い と寿命がかな り長いので 平均接触圧力 P が5 MPa
の摩擦特性で比較 した.Mo S 2
含有の場合と異な り, 摩擦係数は摩擦回数 Nが増加 して もおよそ0. 1
から 僅かづつ上昇 し,N=1 2
万回で0. 1 8
とな り,N=1 3
万回で寿命 となった.Mo S 2
のようにピーク値 (大きな摩擦係数)を示 さ平面接触摩擦実験装置の製作とその自動化
1 ×1 0 5
500 0 0
回 数 N (回)
図
5
固 体 潤 滑 剤 含 有 の 影 響 な くてほぼ一定なのは,最初からPTFE
が潤滑剤 として作用 していることを示 している・
4‑3 Mo S 2
系の摩擦特性図
6( A)
に代表的なMo S 2
系の摩擦係数 と摩擦回数N
の関係 を,図6
(ち)に実験の途中回数における 摩耗 痕形状曲線 を示す.また,この形状曲線か ら得た摩擦 回数に対す る摩耗痕深 さの変化を 図6( C)
に示す・図 6(B)よ り,含有率66wt% の場合では,すでにN=5 0
までに表面の一部が凹状 とな り,N=50 0
までに膜厚 相 当の厚みで被膜が剥離 した.この時はまだ リング端 面は底部に接触 していない.N=500 0
では被膜は殆 ど 無い状態で リング端面が摩耗痕底部に接触 し,底部が 平面化 した.この時期が薄い被膜および再付着被膜の 結合剤被膜が破壊 しMo S 2
の本来のもつ低摩擦を示すと考えられ る.
含有率
50 wt %
で膜厚t
が1 0〃m
の場合 も初期 に リングとの接触部の一部が剥離 しそれが拡大 した・そ の後 リング端面が摩耗痕底部 と接触 し,底面が平面化 し被膜が無 くな り寿命 に至 った.Mo S 2
の場合,図 6(C)に示す よ うに小 さな回数で被膜が急激 に破損す る場合が多かった.4‑4 PTFE
系の摩耗特性図
7( A)
にPTFE
系の代表的な 摩擦係数 と摩擦回 数N
の特性を示す.この条件で摩擦係数は,N=200 0
まではお よそ
0. 1
であ り,その後上昇 し0. 1 7
近 くを 保 ちN=850 0
で寿命 となった.この実験にお ける途 中回数での摩耗痕形状曲線 を図
7
(ち)に示す・また, この形状 曲線か ら得 られた 摩 擦回数に対す る 摩耗痕深 さの変化を図7( C)
に示す・これよ り
,N=5
ですでに表面凸部が変形 し,摩耗痕の1 9
回 数
N
(回)(A)
摩 操 係 数 の 変 化h r = 50 0 ; J 一 一
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ヨ≦̲J̲
等 .
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(a)摩 耗 痕 形 状ち I l l ロ
≡ ミ 3 0 ヽ ̲ ノ . 亡 エロ
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Al ‑M‑50ヽ v t % Pコl MPaL ≡l OF LT T l
▲ ㌍ 圭 ‑ M M p ;6g : W 2 t 9 % pm yt0. 1 m/ s e e 50α
1回 数 N (回)
( C)
摩 耗 痕 深 さの 変 化 図6 MoS 2
の摩 擦 特性I
咲れo
形成が観察 され る.摩擦係数が お よそ
0. 1
であるN=1 00‑2000
では,回数の増加 と共に摩耗痕深 さが 徐々に大きくなるが,摩耗痕底部の粗 さは極めて少な い.また摩羊毛痕両側での盛 り上が り層は観察できない ので,周囲‑の塑性変形は生 じていないと思われる.また,摩擦係数が
0. 1 7
に上昇 したN=5000‑8000
の摩耗痕の底部は少 し荒れてきていることが観察され た.このように摩擦回数が増加 し,摩擦係数が上昇す ると摩耗痕底部の粗 さが大きくなった. しか し,図7 ( C)
より摩耗痕深 さはN=200‑800
0では,ほぼ回数 に比例 し寿命 に至 った. この間の平均摩耗深 さは0. 64mm/
回であった.平均接触荷重が5 MPa
と大き いので,すなわち潤滑剤被膜が極めて薄い状態 (摩耗 痕深 さがほぼ膜厚深 さに相当)で低摩擦が続 くことなしに寿命に達 した と思われる.
5. おわりに
この方法で,かな りの精度で平面出 しができ,平 面一平面接触の場合の摩擦特性を調べ られた.また, 固体潤滑剤被膜 も
PTFE
含有の場合 とMo S 2
含有の 場合では摩擦特性が異な り,使用する際には注意を要 することが分かった.特に
Mo S 2
は急激 に寿命 となる傾向があるので,磨 擦力が一定以上になると停止できる装置は有効であっ た.参考文献
1)田中ほか (社) 日本 トライボロジー学会 トライボ ロジー会議予稿集 (福岡
1 991 ・ 1 0,P. 61 7)
など2 )
宮尾ほか 同上 (東京1 997
‑5, P. 99)
3 )
宮尾ほか 同上 (大阪1 997・
11 , P. 646) 4 )
宮尾ほか 同上 (東京1 9 9 8
・5,P. 204)
0
.3a o. 2
主
表
壁
芸 0 1
0
p AトP133 wt % J I J
V=0. 1 m/ s e e
・ .P≠5MPa 1 =1 0
/一m ( W J F 20 0N)
O O
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0 20 00 4 000 6cm 8∝氾
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( A)
摩 擦係 数 の変化 ll
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:、二→pAt‑p‑33wt% t‑l
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