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低濃度酸含有熱水を用いたセルロースの解重合

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Academic year: 2021

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(1)

平島 健吾, 1

B–23

低濃度酸含有熱水を用いたセルロースの解重合

Hydrothermal depolymerization of cellulose in aqueous solution of low concentration acid

応用化学専攻 平島 健吾 HIRAJIMA Kengo

緒言

バイオマスは機能性物質を有する化学原料で構成 された再生可能な資源であり、そのバイオマスから 効率的に機能性物質を生産する研究が盛んに行われ ている

1

。地球上で最も豊富に存在するバイオマス であるセルロースからは化学原料、食品及び医薬品 に利用されるグルコース、セロビオース、セロオリ ゴ糖といった機能性物質を生産することができる。

しかし、セルロースは分子間・内に多くの水素結合 を持つために結晶性が高く、処理・分解が困難な物 質であるが、一般的に酸性条件下での加水分解によ り解重合は促進する

2

当研究室でも少量のギ酸を添加した水熱条件下で セルロースを効率的に解重合できることを明らかに した

3,4

。また、酸水溶液のプロトン濃度とセルロー ス解重合の反応速度には相関性が見られた。しかし その結果から、セルロースの解重合にはより酸性度 の低い無機酸添加の方が効果的であると考えられる。

そこで本研究では、水熱条件下において希薄リン酸 及び希薄硫酸水溶液を利用したセルロースの解重合 を試みた。そして、それらの酸が生成物及び反応速 度に及ぼす影響を検討した。

1. 実験

半回分式反応装置を用いて行った(図 1) 。内容積

3.5 mL のステンレス製反応管へセルロース試料と

してろ紙 0.5 g を仕込み、リン酸、硫酸水溶液(0–10

mmol/kg)を、それぞれ HPLC ポンプから 15 g/min

で反応管へ流通させた。反応条件は、 260 ºC、 5 MPa に設定した。溶融塩浴に反応管を浸した時間を反応 開始とし、 1–15 min 間隔で生成物を分取した。回収

した反応液は全有機炭素計を用いて水溶性生成物の 定量を行い、高速陰イオン交換クロマトグラフィー を用いて生成物を定量した。

2. 結果及び考察

異なる濃度の酸水溶液をそれぞれ流通させた時の セルロースの可溶化率を示す(図 2) 。可溶化率とは、

セルロースが水溶性生成物に変換された割合を表す。

可溶化率は流通時間の増加に伴い増加した。また、

全ての実験条件において反応終了後に固体残渣物が なかったことから、反応したセルロースは全て水溶 性生成物に変換されたことが示唆される。水のみの 反応(酸無添加)では、セルロースの完全な可溶化

には 150 min を必要とした。対照的に、リン酸及び

硫酸水溶液を利用すると、添加濃度の増加に伴い反 応速度が増加した。リン酸添加時において 10

mmol/kg では 20 min で完全に可溶化した。これは、

無機酸を添加することによって反応場中のプロトン 濃度が増加し、セルロース分子内のグリコシド結合 の開裂が促進されて解重合が進行し、低分子の水溶 性生成物が多く生成したためだと示唆される。水熱 条件下において、無機酸添加はセルロースの解重合 を促進させることが確認できた。

全ての実験条件においてグルコース、セロビオー

蒸留水または 酸水溶液 蒸留水

HPLCポンプ

溶融塩浴

冷却管 背圧弁

焼結フィルター T

P

P T

サンプリング 圧力計

熱電対

予熱カラム 反応管

図 1. 実験装置図.

(2)

平島 健吾, 2

ス、セロオリゴ糖の生成及びグルコース由来の生成 物であるフルクトース、5- ヒドロキシメチルフルフ ラール及びレボグルコサンの生成がそれぞれ確認さ れた。どちらの酸を添加した時も同様の生成物が得 られた。また、これらの生成物の中でグルコース収 率が最も高かった。異なる濃度の酸水溶液を流通さ せた時のグルコース収率の経時変化を示す(図 3) 。 酸無添加では 19 %であったが、リン酸及び硫酸水溶 液では、添加濃度の増加に伴いグルコース収率が増 加し、流通時間 20 min、リン酸水溶液 10 mmol/kg

では 70 %となり、本研究における最大収率を得た。

このことから、無機酸の添加がグルコース生成にお いても効果的であることが確認できた。

セルロースの解重合を速度論的に解析するために、

可溶化率から求めた反応速度をセルロースの表面か ら解重合が進行すると仮定した表面反応モデルで検 討した。表面反応モデルはセルロースの解重合を速 度論的に精度良く記述できた。そこで、リン酸と硫 酸の効果を比較するために、プロトン濃度が反応速 度定数へ与える効果をそれぞれ比較した。 (図 4) 。 反応速度定数はプロトン濃度の増加に伴い増加し、

プロトン濃度 0.1 mmol/kg より高い濃度において、

反応速度定数の傾きが大きくなった。 このことから、

解重合を促進させるためには酸の添加濃度が 0.1

mmol/kg より高濃度でないと効果が表れないことが

示唆される。また、リン酸添加時の傾きは硫酸添加 時のそれよりも大きくなった。リン酸には、セルロ ースを膨潤及び溶解させる効果がある

5

。従って、

リン酸添加によってセルロースが膨潤し、内部のセ ルロース分子にもプロトンが接近しやすくなり、そ の結果解重合が促進されたことが示唆される。

3. 結言

半回分式反応装置を用いて、水熱条件下において 希薄リン酸及び希薄硫酸水溶液を利用したセルロー スの解重合を行った。酸濃度の増加はセルロースの 可溶化を促進させ、完全な可溶化までの流通時間を 短縮させた。流通時間 20 min、リン酸水溶液 10

mmol/kg においてグルコース収率 70 %を得た。表面

反応モデルはセルロースの解重合における反応速度

を精度良く記述した。硫酸添加よりもリン酸添加の 方がセルロースの解重合を促進させた。

参考文献

(1) Progress in biomass and bioenergy research, Warnmer, S. F. Nova Science Publishers: New York, 2006.

2) Saeman, J. F. Ind. Eng. Chem. 1945, 37, 43.

3) Asaoka, Y.; Funazukuri, T. Res. Chem. Intermed. 2011, 37, 233.

4) T. Funazukuri, Hydrothermal conversion of cellulose to glucose and oligomers in dilute aqueous formic acid solution, in Cellulose–Biomass Conversion, InTech, 2013.

5) Zhang, Y.–H. P. et al. Biomacromolecules 2006, 7, 644.

図 2. セルロースの可溶化率の経時変化(260 ℃).

図 3. グルコース収率の経時変化(260 ℃).

図 4. 異なる酸水溶液中のプロトン濃度における反応速度定数

(260 ℃).

図 2.  セルロースの可溶化率の経時変化(260  ℃).

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