創造的問題解決力優劣者の
心理的特性(第一報告)
緒 方 刢
創造的問題解決(Creative Problem Solving)には連想力(一定の刺戟についてさまざま なimageの自発可能性)と想像又は空想する力(過去経験像の解体と新しい結合を行ふ力)
更に問題を見通しによって新奇な合目的解決にもって行く力を必要とする。
創造的(生産的)思考による問題解決力の測定には連想力想像力の測定と,新奇な問題の洞 察的合目的な解決力との両者のテストを用意しなければならない。筆者は者両のテストによっ て創造的思考力の測定を行いその優劣者について,諸他の心理的特性を比較するため,一般知 能検査,クレペリン検査,ロールシャッハ検査,デザイン評価力テスト及び接触教師の集団に
よる特性観察等を行ってそれらの心理的特性を比較考察しようと試みた。
〔研究手続及び方法〕
被験者長崎大学学芸学部中学課程2年86名(第一対象群)川棚高校普通科二年105名(第二
対象群)
検査月日 昭和39年2月〜39年6月
実施テスト A.創造的問題解決テスト B.語の制限聯想検査 C.高等学校用団体知能 検査 D.クレペリン精神作業検査 E.人格診断検査(ロールシャッハ検査 …集団用) F.デザイン評定テスト(大学生のみ)
創造的問題解決テストはその目的の違いにより次の三つの主な型に別れる。
1.Eexplanation(説明的創造)個々の事件がどうして起ったかという理由の理解を要求 してあるもの。
2。Prediction(予報的創造)若干の条件を与えられてこれらの諸条件の結果を理解するこ と,又まだ発生していない或事件を予想することを求めてあるもの。
3.Invention(発明的創造),ある特殊の事件を生み出す諸条件や材料の新しい構成を創 造することを求めているもの。
以上の三つの型の問題に亘って,Weltheimer, Dunker, Meierなど先学が思考領域の諸 研究に使用した問題や筆者が新に集めた問題の中から検討して問題を採用したが以下概記す
る。
1.Meierの二本の紐の問題。静止している二本の紐をひっぱったりしては結べないが,
振ることを工夫して結びつける問題。
2.
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
手の届かぬ距離の床上の球を,同じく手の届かぬ床上の箱の中に,与えられた材料を考 案使用して入れる問題。オスロ大学のSaugstadの使用した問題。
ローソクの火が途中で自動的に消えるよう所与材料を使って工夫する問題。ストックホ ルム大学のSzekelyの使用せるもの。
マッチ棒並べ問題。9本のマッチ棒を縦横3三つづ並べてあるところに新に3本を加え て縦横4本つつになるよう配置する問題。Szekeryが使用したもの。
銅貨並べ,7枚の10円銅貨を縦横にかぞえてどちらも50円になるよう十字形に置く問
題。
/ \ のような街路を交叉点以外は二回通らず又同一街路を往復せずに最短距離で通
≡モって終る問題.
幾何学作図問題。直線MNの一方側にある二点A.BとMN線上の一点Xとを結ぶAX.BX の二線の和を最短にする如きX点を求ある問題。Dunkerの使用せるもの。
登山問題。今朝は麓の登山口を出発して頂上につき明朝は頂上から今朝と同一時刻に下 山する同一人が,今日と明日の違いはあってもそのコース上同じ時刻に同じ地点に在り
うるかの問題。Weltheimerの使用せるもの。
レントゲン線量の分割による焦点集中照射法を考へつく問題。Duhkerの使用せるも
の。
算術問題。今年夫と妻の年令合計98,夫が妻の今年の年令であったときの妻の年令に比 較すると夫は今年丁度その2倍に相当する。夫と妻の今年の年令を算術的,思考によっ て求める問題。Johansonの使
用したもの。
以上10題を予備テストの結果1〜5 問は5分宛,6一ユ0閥は8分宛に規定
し,配点は通過率によって問題を3 点,2点,1点に重みづけた。又同一 問題,類似問題の解答経験あるものは 用紙に記入させその個入についてはそ の問題を除外して個人平均得点を作っ
た。
次に第一対象群では創造的問題解決 テストの個人得点の高い順にA(30名)
:B(29名)C(27名)の三群に分け,
その二間での他の心理的特性の有意差 を求めようとした。表〔1〕は人格 断面としてのRorschach, Krepdin
表〔1〕
Rorschach 人格診断
テ ス ト
FL 値
形態水準 得 点
Key
1.5 2.0 2.5
Key−
P
:FL平均(×100)
A
クレペリン
精神作業
検 査
182 33 7 60 83 113.2
判定類型
作業量
a
a
a/f f(A)
f(B)
bf 前 後 休効率
13 9 4 0 1 1
61.8 69.9 1.14
B
168 24 5 63 95 114.3
12 9 6 0 0 0
C
195 28 7 86 87 113.0
10 11 3 1 1 0 54.2 56.3 63.1 65.2
1・1811・17 デザインテスト ・1.4111.6111.3
一23一
検査及び絵画デザイン評 定テストの得点のグルー プ別傾向であり,表〔2〕
は,後藤式高校用団体知 能検査によるIQ値及び そのSubtest得点の傾 向である。表〔3〕は被 験者全員の創造的問題解 決テストと知能検査との 相関係数。表〔4〕は Rorschach, Krepelin 検査の一部評定項目や絵
表〔2〕
B C
知 能 検 査
1 2 3 4 5 6 7 8
22.1 13.9 9.3 12.7 12.8 9.6 9.3 16.1
22.5 14.7 9.4 12.2 13.8 7.8 9.3 14.4
21.7 13.4 8。8 11.9 12.4 7.5 7.5 12.5
前差値152・9 52.8 46.9
表〔3〕
知能剣・1烈3 4【516 7 8時差値
画デザインテストの相闘相関緻0・02610・0110・1870・130…180・2300・048a323 C.P.Sとの 0.296 係数を示している。
結果の考察
1.創造的問題解決力 と知能検査成績と の関係
表〔4〕
\調査項目 R・rsch・・h焔診断検査Lレペリン 1K・y(一)}plR岬均i臆蘇率
C.P. S と の
相 関 係 数 一.288 .001 .003 一.015
絵画テスト
.003
筆者のこの方向における実験結果は表〔3〕の如く一般的に極めて低いcrを示した。1946 年Welchは58名の大学生に新奇発想的型式に観念を再構成するテストを実施して,一方 面onderic知能テストとの相関は.27であった。古くは1898年Dearbomがハーバード大学 の学生にimaginative responseを一組のink blatsによって検査し,その被験者中最も 貧弱な成績が二人の決定的知能優秀学生に見られた際知能の優秀さと創造力の優秀さと相関が 低いということを偶然の発見として報告している。J. P. Guilfordは1950の米国心理学学会 において次の如く述べている。「知能テストの内容の検討をすれば明かに創造的素質であるも のについては,少ししか明かにしてくれない。創造的才能は多くの人が知能の高いこと(Hig hIQ)知力の高いこと(High Intelligence)によって説明さるべきことであると信じてい る。この概念は創造的入材を理解するということが進展しないことに責任をもつべき誤謬であ り,又不適当である。若し知能テストと創造的performanceの幾種類かの型との間に相関が 低かったり,或はせめて中程度の相関があっても,知能テストの中に現はされる主たる諸能力
は創造的行為には殆ど重要でないからである。又創造的行為に重要な主たる能力の若干のもの
は知能テストの中に全く呈出されていない。換言すればIQの境界を越えて観察しなければ創
造力の境界を測ることは出来ないだろう」又Phurstoneは次の如く論じている。「極度に知
的であるということは創造的活動で素質を恵まれているということと同じでない。之は仮説と
して考えられる。大学でも普通の範躊でhigh intelligenceをもっていると判定される大学
生が必ずしも最もOriginalなideaを産出するものでない。創造性と高い知能とを両方もつ ものも多少いるがそれは通例のConbinationではない。クイズの天才児は天才とよく考え られ勝だが彼等は記憶機能一事件的記憶と機械的記憶とを併せて一には高い得点をとる。然し Original Ideaをどれだけ生み出すかには疑問がある」
筆者の調査においてもTotal IQ Subtest Score共に創造的問題解決力とのCrは極めて 低いが,唯Subtestの⑧と⑥は他のSubtest以上に梢高いことが注目される。⑧は数的操 作,幾個かの基数について二つづつ加減乗除のいつれかを用いてその和を所定の数にする問題 であり⑥は廻転図形判断の問題である。知能検査における数因子は創造的思考問題において 個々の断片的情報間の数量関係をとらえる力として重要でもあるがこの知能検査のSubtest
⑧は問題の性質が新奇で解答者の創造的思考えの動機づけに適したものであった。空間関係能 は創造的思考問題において問題に含まれている条件の空間的配置や分割や空間の示す意味につ いて情報を提供するがこの創造的思考問題においては問1(二本の紐)問2(手の届かぬ球を移 す問題)問3(ローソクの灯を自動的に消す問題)を始め,問4(マッチ並べ)問5(銅貨並 べ)問6(市街一巡問題)問7(幾何作図)問9(X線焦点集中照射)問10(登山路問題)と 殆んど九問題に空間関係能の関与が考へられる。
Subtest⑧が数的性能としてか又は問題の性質が新奇なものであって創造的思考えの動機づ けになったためCrが高いか⑥が空間性能として相関が他より高いのかということについては 更に検討しなければならない。この関係の確認をうるために因子分析を行った。結果は創造的 思考問題の⑩と知能検査のサブテスト⑥⑧が1の群因子として認められ考察をより進めること が出来る。⑤の転換図形と⑥の同一図形も共に空間関係能の検査であるが,⑤,⑥の相関は0ユ 45(解説書)で殆んど相関がないため,⑥に問題解決力との相関が高く現はれても不合理では ない。知能検査の③は文章による論理的判断力を見るものであり筆者は創造的問題解決力と可 成りの相関があることを期待したが.130と低い相関を示した。③は形式論理そのものを用いて 思考丁る問題であるに拘らず他のサブテストと比較しても更に低い相関を示すことは創造的思 考問題の解決に要する性能は言語による形式論理が必要でないということでなくそれ以上に重 大な他の要因を含んでいると解する外はない。
2.人格診断検査反応との関係
第二群についの調査結果を,表〔5〕及び表〔6〕に示している。表中の診断項目は次の基
準による。
一25一
表〔5〕 創造的問題解決優劣群の人格診断検査反応(第:;二群)
旧習・2 314同61718 gl・・巨・ ・2113114
内
容 優 群 20 N
劣 群 20 N
π
C
x
C X2
lEL
−FL 平均i
2名
5名
Key(一)
O l− 11711・7
4 1 1181.5 t
3
△
1.31
1
1.4
3
}
P F.M
3.02.3
1 1
翌1璽
0 2 CF十 C>2
FC
1
2
F
8.3
0
8.1
0 FC+C F+C +
C sym
1.4
2 2.3
8
※4.80 P〈0.05
KF 十K
0.2
0
0.1
0 cF十c
0.4
1
0.3
0
M< FC+2 CF十3C
象