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マッカーシーモデルの再検討

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(1)

経営 と経済

8 4

巻 第

3

2 0 0 4

1 2

2 2 5

《研究 ノー ト》

マッカーシーモデルの再検討

‑ その会計学における意義を求めて ‑

小 野

Abst ract

Thi spa pe rr e e xa mi ne sMc Ca r t hy' smo de li no r de rt os e e kf o rt ha t i mpl i c a t i o ni na c c o unt i ng.Fi r s t ,f r o m t hevi e wpo i nto ft e c hno l o gl C a l ba s e s ,t hi spa pe rs ho wst hec o ns t r uc t i o no fMc Ca r t hy' smo de la nda n a dva n t a geo ft ha tmo de le s pe c i a l l yba s e do nt heE‑ 氏mo de lt hr o ught he c o mpa r i s o no fo t he rda t amo de l s .Ne xt ,c ha r a c t e r i s t i c so fMc Ca r t hy' s mo de lbas e do nt heE‑ Rmode

l

,whi c hwe r epr e s e nt edi nhi sa r t i c l e si n 1 9 7 9a nd 1 9 8 2,a r ee xpl a i ne d.Fi na l l y,pr o bl e mso fMc Ca r t hy' smo de l i nt hebus i ne s sar egr a s pe d,mo r e o ve ravi e woft ha tmo de l ' si mpl i c a ‑ t i o ni na c c o unt i nga nda c c o unt a nt s'kno wl e d gega i ne df r o mi ti nt hea ge O HTe vo l ut i o nsa r epr e s e nt e d.

Keywords:Da t aMo de l s ,E‑ Rmo de l ,REAAc c o unt i ngmo de l .

Ⅰ.は じ め に

システムにおけるデータの記憶容量の増大,データの転送能力の向上,イ ンターネ ットの普及や電子開示の開始な どを背景 として,現在再び事象アプ ローチに注 目が集まってきているように思われる。 このような事象アプロー チの代表的な研究者の一人が,マ ッカーシー

( W.E. McCar t hy)

である。

(2)

マ ッカーシーは

1 9 7 9

年(

1

)と

1 9 8 2

(2)に発表 した一連の論文により,会計学 の世界においてセンセーシ ョナルな旋風を巻 き起 こした。その衝撃は,会計 情報システム論 といった領域に限 られた ものではな く,会計のパラダイム と いうレベルにまで踏み込んだものであった と思われる。

これほ どの波紋を広げたマ ッカーシーの理論ではあるが,こと実務 という 面でいえば,現時点においてもマ ッカーシーのモデルに基づいてシステムを 構築 している例はあま り多 くないであろう。

そこで本稿では,マ ッカーシーのモデルが実務 という面でなぜ壁に直面 し ているのか という問題意識の下,マ ッカーシーが自己の理論を主張 した当時 よりも情報技術がさらに発展 した現状 も加味 しなが ら,マ ッカーシーモデル の利点や問題点を今一度検討 した上で,̀̀マ ッカーシーモデル として具体化 されたマ ッカーシーの理論が持つ会計学への意義 とは,どのようなものであ るのか''について考 えてみたい。加ネて,その意義 か ら我 々会計人が," を学ぶべ きか''ということに関 して も触れることとする。

具体的には,つぎの ようなプロセスで考察を進める。

(1

)まず基盤 とするデータモデル という技術的側面から,マ ッカーシーモ デルの構造やその優位性 (特に

E‑R

モデルについて)を示す。

(2

)つぎに

,E‑R

モデルをベース とするマ ッカーシーの

1 9 7 9

年 と

1 9 8 2

年の 一連の論文をレビュー し,マ ッカーシーモデルの特徴について整理する.

(3

)そ して,実務サイ ドの視点に立ち,マ ッカーシーモデルにおける実務 面での問題点を把握 した上で,マ ッカーシーモデルがもた らした意義 と, 情報技術の急激な進歩に直面 している我 々会計人がその意義から学ぶべ

きことは何かについて見解を示す。

(1

)Mc Ca r t hy,W.E.

,

" AnEnt i t y‑ Re l a t i o ns hi pVi e wo fAc c o unt i ngMo de l s

,"

TheAc I c o unt i n gRe v i e

u

) ,Oc t o be r ,1 9 7 9 ,pp. 6 6 7 1 6 8 6・

( 2 )Mc Ca r t hy, W.E.

,

" TheREAAc c o unt i ngmo de l :AGe ne r a l i z e dFr a me wo r kf o rAc ‑

c o unt i ngSys t e msi naSha r e dDa t aEnvi r o nme nt

,

' 'TheAc c o unt i n gRe v i e w ,J ul y,1 9 8 2

,

pp. 5 5 4 ‑ 5 7 8・

(3)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 における意義を求めて ‑

22 7

Ⅱ.

デ ー タモ デ ル か らみ る マ ッカ ー シ ーモ デ ル の構 造 と優 位 性 I.階層,ネッ トワーク,関係,及びオブジェク ト指向モデルにおける利点 ・

欠点

周知 の ように会計 デー タモデル論 は,階層 デー タモデル

( hi er ar chi c al da t amo de l )( 3)

,ネ ッ トワーク ・データモデル

( ne t wo r kda t amo de

l

)(

4),関 係デー タモデル

( r e l a t i o na lda t amo de l)( 5)

,

E‑R ( e nt i t y‑ r e l a t i o ns hi p:

実体‑関連)モデルに基づいたマ ッカーシーモデル

( 6 )

,オブジェク ト指向モ デル

( o bj e c トo r i e nt e dda t amo de

l)(7)として展開されてきた。 これ らの会計 データモデルは,階層データモデル,ネ ットワーク ・データモデル,E‑R モデル,オブジェク ト指向モデル という各種のデータモデルを会計の領域 に 適用 しようとしたものであ り,新 しいデータモデルが開発される とそれに呼 応する形で発展 してきた。 この ように会計データモデルは,特定のモデ リン グ手法 に依拠 したものであるので,当然のことなが ら前提 となるモデル技術 の利点や欠点の影響を受けることになる。

( 3 )Co l a nt o ni ,C.S

Ma ne s ,良.P.a ndWhi ns t o n,A.

,

" A Uni f i e dAppr o a c ht ot he The o r yo fAc c o unt i nga ndI nf o r ma t i o nSys t e ms

,"

TheAc c o u nt i n gRe v i e w ,J a nua

ry,

1 9 7

1

,pp. 9 0 ‑1 0 2.

Li e be r ma n,A.Z.a ndWhi ns t o n,A.B.

,

̀ ̀ A St r uc t ur i ngo fa nEve nt ‑ Ac c o unt i ng I nf o r ma t i o nSys t e m

,"

TheAc c o unt i n gRe v i e w ,Apr

il

,1 9 7 5 ,pp. 2 4 6 1 2 5 8.

Ha s e ma n,W.D.a ndWhi ns t o n,A.B

" De s i gno faMul t i di me ns i o na lAc c o unt i ng Sys t e m" ,TheAc c o unt i n gRe v i e w ,J a nua r y,1 9 7 6 ,pp. 6 5 ‑ 7 9.

( 4 )Ha s e ma n,W.D.a ndWhi ns t o n, A. B

,

, I nt y 1 0 d uc t i o nt oDat aMan a ge me nt ,I r wi n,1 9 7 7.

( 5 )Eve r e s t ,G.C.a ndWe be r

,R.L.,

" ARe l a t i o na lAppr o a c ht oAc c o unt i ngMo de l s

,"

Th eAc c o unt i n gRe v i e w ,Apr

il

,1 9 7 7 ,pp. 3 4 0 ‑ 3 5 9.

( 6 )Mc Ca r t hy ,o p.c i t . ( 1 97 9 ),pp. 6 6 7 1 6 8 6.

Mc Ca r t hy,o P.c i t . ( 1 9 8 2 ),pp. 5 5 4 ‑ 57 8.

(7

)Mur t h y,U.S.a ndWi ggi nsJ r ,C.E.

,

" Obj e c t ‑ Or i e nt e dMo de l i ngAppr o a c he sf o r De s i gni ngAc c o unt i ngl nf o r ma t i o nSys t e ms , " J o umalo fI n f o r mat i o nS y s t e ms ,Vo l . 7 , No.

2 ,Fa l l ,1 9 9 3,pp. 9 7 ‑

111.

Ada ms o n

,.

L a nd°i l t s , D. M

" De ve l o pme nto fa nAc c o unt i ngOb j e c tMo de lf r o m

Ac c o unt i gTr a ns a c t i o ns

,

' 'J o ur nalo fZ n f o r mat i o nS ys t e ms ,Vo l

.

9 ,No. 1 ,Spr i ng,1 9 9 5

,

pp. 4 3 ‑ 6 4.

(4)

以下では,まず階層モデル,ネ ットワーク ・モデル,関係モデル,オブジ ェク ト指向モデルを対象にこの問題

( 8)

について触れることとする。

初期のデータモデル として登場 してきたのが,階層モデル とネ ットワーク モデルである。 この

2

つのモデルに共通 している点は

,1 9 6 0

年代の技術水準 か らデータの処理が記憶容量の制限によりレコー ド単位で行われることであ る。 レコー ドとは,データ表現の基本単位になるもので,一連のデータ項 目 の並びである。階層モデルは,その名の通 りデータを階層的に記憶するもの である。階層モデルにおけるレコー ド間の構造は,木の ように板か ら節へ, 節か ら節へ と枝分かれ してゆ くツ リー構造 になってお り,木の根や節が レ コー ドに相当 し,それ らはポインタで結合される。データへのアクセスはこ の階層構造に従 って行われるので,枝分れ してい くレコー ドにいたる経路が

1つだけである。

したがって,このモデルによるデータ表現は単純で分か りやすい というメ リットはあるが,下位 レコー ドが複数の上位 レコー ドに従属するような形の データの表現がで きない,ツ リー構造 と少 しでも違 う使い方をするには複雑 な操作が必要になるとい うデメリットがある。

ネ ットワーク ・デー タモデルでは,レコー ドが網 目状のポインタで結合さ れるので,階層データモデル より自由度が高いデータ構造になっている。ま た,多様なアクセス ・パスを設定で きるというメリットもある。 しかしなが ら,ネ ットワーク ・モデルにおいて もレコー ドは上下関係になってお り,上 位のレコー ドから順にポインタをた どり下位のレコー ドにアクセスすること

となる。 よって,ネ ットワーク ・データモデルは,あ らかじめ設定された順 番 と異なる順番でデータにアクセス しようとすると,操作が複雑になるとい

う階層データモデル と同様な欠点を持つ。

階層デー タモデルやネ ッ トワー ク ・デー タモデルの欠点を克服するため

( 8)

昌彦,『知識時代の会計情報 システム ーデー タ管理 か ら情報資源戦略へ

』,税務 経理協会

,2 0 0 3

,p p. 8 7 ‑ 9 0.

(5)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 における意義を求めて ‑

2 2 9

に,コッド

( E.F.Co d d ) ( 9 )

が関係データモデルを

1 9 7 0

年 に提案 した

。1 9 7 0

年代後半 になる と

I C

メモ リが普及 し,記憶容量が大幅に増加 した ことが関 係デー タモデルの発展を支えたのであった。

前述の階層データモデルやネ ットワーク ・データモデルでは, レコー ドと レコー ド間を連結す るポインタで現実世界を表現する。ポイン タはコン ピ ュータにおけるポインタの延長で,データの検索はこのポインタをた どるこ とで行われる。 しかしなが ら,現実世界のデータ間にはポインタの概念がな いことが多い という点が問題 となる。

これに対 し関係データモデルは数学の集合論を基盤 とし,すべてのデータ を関係

( r e l a t i on)

に対応 させ表

( t a bl e)

で表現する。 この ように関係デー タモデルは数学を基盤 として持ち,データを 2次元の表で表現するため構造 が単純で分か りやすい というメリットを持つ。また,高度なデー タの独立性 を確保 で きるな どとい う点か ら,現時点において も主要 なシステム開発の ツール としての意義を保持 している。

上記のような有用性を持つ関係データモデルであるが,現状を考慮すると 問題点 も存在する。すなわち,現在のマルチ メデ ィア環境のように図形 ・画 像 ・音声を取 り扱 うという点に関 して,関係デー タモデルでは扱 うデータが 固定長の文字や数値 に限 られているため対応が難 しいのである。

この関係モデルの限界を克服するための次世代のモデルが,オブジェク ト 指向データモデルである。 ここにオブジェク トとは,データとその操作方法 をカプセル化

( e nc a ps ul a t i o n)

,すなわちひ とま とめにした ものである。た だ し,オブジェク ト指向モデルにおいてはオブジェク トの適切な定義 という 点で壁 があ り,ビジネスデータの処理 という面で極めて有力なオブジェク ト 指向データモデルは,筆者の知 る限 りではあるが,まだ無い というのが現状 ではなかろうか。今後の研究の進展が大いに期待 される分野であることはい

( 9 )Co dd,E.F.

,

" ARe l a t i o na lMo de lDa t af o rLa r geSha r e dDa t a Ba nks

,"

Co mmuni c a‑

t i o n so ft heACM ,Vo l . 1 3,No. 6 ,J une ,1 9 7 0,pp. 3 7 7 ‑ 3 8 7.

(6)

うまで もないが,いずれにして も関係データモデルは現状 において一定の限 界を認め られなが らも,有力なデー タモデル としての評価 を維持 しているの である。

2

.概念モデル ・論理モデルの関係 とマ ッカーシーモデルの優位性

以上会計デー タモデル論 のバ 、ソクグラウン ドとな ったデー タモデル とし て,階層 データモデル,ネ ットワーク ・デー タモデル,関係データモデル, オブジェク ト指向デー タモデルを概観 して きたが, これ らのモデルは論理モ デル

( l o gi c a lmo de

l) とされる。

一方マ ッカーシーが基盤 とす る

E‑R

モデルは,概念モデル (

c o nc e pt ua l mode

l)である。 ここで,概念モデル ・論理モデルの内容や関係を把握する ために,データモデ リングの過程をみることにしよう。

図表Ⅱ‑ 1の ようにデー タモデ リングの過程は,現実世界を概念モデル化 する過程 と,概念モデル を論理モデルに変換する過程 に分けることがで きる。

図表

Ⅱ‑1

現実世界のデータモデ リング過程

出所 :増永良文 ,

[ 1 9 9 0

]

,p. 1 8.

最初の現実世界を概念モデル化す る過程は

,DBMS ( da t aba s ema na ge ‑ me nts ys t e m)

とは別個 に現実世界を図形な どのモデル として記述するもの

である。 この ようなモデルを,概念モデル という。なお,概念モデル記述言

語 ( c o nc e pt ua lmo de lde s c r i pt i o n)

とは,概念モデル記述 に用い られるデー

(7)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 におけ る意義 を求めて ‑

2 31

タモデルの呼称であ り,概念モデルの代表的な ものが

E‑R

モデルである。

また,

DBMS

はデー タベース とその複数存在す る利用者の橋渡 しを行 うシ ステムの ことである。

つ ぎの概 念 モ デル を論 理 モ デル に変 換 す る過 程 とは ,概 念 モ デル を

DBMS

に実装 しやすいモデルへ変 えるこ とであ る。先 に触 れた ように,概 念モデルはシステム とは別個 に記述 された ものであ るか ら, これを

DBMS

に実装可能なモデル に しなければな らない。 このモデル を論理 モデル とい い,論理モデルは階層 デー タモデル,ネ ッ トワー ク ・デー タモ デル,関係 モデル ,オブジ ェク ト指 向デー タモデルのいずれかで記述 され るこ とにな る。

マ ッカーシーは概念モデル として

E‑R

モデルを,論理モデル として関係 モデルを採用 した。特 に概念モデル として

E‑R

モデルを取 り入れた ことで, 会計 デー タモデル論 に質的な変化

( 1 0)

を もた らした点が評価 され,会計デー

タモデル論はマ ッカーシー以前 と以後 とい う形で区分 されることも多い。で は ここでいう質的変化 とは,いかなることであろうか。それは,チ ェン (p.

p. Ch e n )

(ll)

E‑R

モデルの持つ メリッ トに起因する。

E‑R

モデルの利点

( 1 2 )

とは,現実世界 において識別 され るあ らゆ る要素 を 「実体」 と 「関連」 という 2つのカテゴ リーに より表現 しようとするもの で,特定の

DBMS

に限定 されないモデルの構築 を可能 にす るこ とが他のモ デル と大 き く異なる点である。特定の

DBMS

を前提 としたデー タモデルは,

DBMS

の処理効率を加味 した情報構造 が要件 として与 え られ るので,デー

タモデルが現実世界の要素を捕捉す る度合,つま りデー タモデルの意味的表 現能力

( s e ma n t i ce x p r e s s i v e n e s s )

が必然的に制限されて しま うのである。

( 1 0 )

昌彦,前掲書

,p. 1 1 3.

( l l )Che n,p.p.

,

" TheEnt i t y‑ Re l a t i o ns hi pMo de l :To wa r daUni f i e dVi e wo fDa t a

,"

ACM Tr an s ac t i o nso nDat ab a s eS ys t e ms ,γo

l.

1 ,No. 1 ,Ma r c h,1 9 7 6 ,pp. 9 ‑ 3 6.

( 1 2)

竹島貞治

,

マ ッカーシー会計モデル論の貢献

IREA

会計モデルの分・

‑ 」

合計』,

1 5 6

巻,第

4

,1 9 9 9

,1 0

,pp. 6 5 ‑ 6 7.

(8)

これに対 し,E‑Rデータモデルでは,情報構造 に左右されることな く,現 実世界の意味構造を自然な形で記述することが可能 になることか ら,E‑R モデルは意味デー タモデル

( s e ma nt i cda t amode

l) とも呼ばれている。い ずれにしても,

E‑R

モデルはシステムへの実装可能性を掛酌 し,作成され なければな らない論理モデル とは異な り,論理モデルに先行する概念モデル を作成す る概念モデル記述言語であ るか ら,特定の

DBMS

に従 う情報構造 に制約を受けることな く,現実世界の意味を自然な形で表現で きるというメ

リットを持つのである。

以上の ようにマ ッカーシーは概念モデル としてチ ェンのE‑Rモデルを, 論理モデル としてコッドの関係データモデルを とい うように 2つの定評ある データモデルを採用 したので,モデ リングの技術的側面 という点に関 してマ ッカーシー以前の会計データモデル論 よりも優れていた といえるであろう。

Ⅲ.マ ・tJカーシーによる EIR会計データモデル

1.抽象化過程

およそシステムの開発においては,現実世界をいかにモデル化,すなわち 抽象化 して把握するか という問題が重要である。マ ッカーシーはこのような 抽象化過程(13)を,図表III‑ 1に示す ように 4つの レベルに区分 して説明し ている (図表 Ⅲ‑

1

を参照されたい)0

レベル 1‑ 4までの段階で,マ ッカーシーの主要な関J山まレベル3である。

レベル

3

の段階 になる と,抽象化プロセスは現実世界あるいは本体

( pr i n‑

c i pa l s )

か ら,データモデルないしは写体

( s ur r o ga t e s )

の世界へ移行する。

データモデルは,デー タベースの利用者が対象システム としてみなすような 論理構造の記述を行 う。それは,関心のある概念的世界の構造をデータによ

り表現するスキーマ

( s c he me )

である。

( 1 3 )Mc Ca r t hy , o p . c i t . ( 197 9 ) ,p. 6 6 8・

(9)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 における意義を求めて ‑

2 33

図表

Ⅲ‑1

データベース抽象化過程

レベル1

レベル2

レベル3

レベル

4

レベル

一現実世界の一側面 一 関心 のある概念的領域 一対象 システム

対象システムの データモデル

会計の例

企業の会計的世界

a.

企業の経済状態

b.

時間の経過 に伴 い,

経済状態 に変動 を もた らす事象 伝統的な会計

/\

a.勘定科 目表

b.

複式記 入

E‑Rビュー

a.

実体表

=t データベースファイル

E P

出所 :

Mc Ca r t hy , [ 1 9 7 9 ] ,p. 6 6 9.

伝統的な会計 においては,エヴ ェレス トとウ ェバー

( 1 4 )

らが指摘 した よう に,勘定科 目表

( c ha r to fa c c o unt s )

の ような ̀̀人工物

( a r t i f a c t s )

''に遭遇 する。マ ッカーシーは,この レベル3で伝統的な会計か ら離れて,E‑Rビュー

( 1 4 )Eve r e s ta ndWe be r ,o p.c i t . ,p. 3 4 2 .

(10)

( vi e w)

を使用する。加 えて,開発 されるスキーマは複式記入の原則 と貨 幣的測定 に制限されるのではな く,事象論者達が提唱 した多次元で集約化さ れない

( di s a ggr e ga t e d)諸側面をより多 く想定させ るものである。

2.E‑R

ベースの会計データモデル

マ ッカーシーは,会計システムについてつぎのように考えていた。すなわ ち,会計 システムは現実世界の実体 と実体問の関連 の集 ま りとしてデータ ベース環境 において最 も自然にモデル化 されるものであ り,そのための方法 論 としてチ ェンの

E‑R

モデルを使用する

( 1 5)

と主張するのである。以下で

4

つの

E‑R

モデルの設計プロセスに従い,

E‑R

ベースの会計データモ

デル(16)の概要を考察 してゆ く。

(1

)実体集合

( e nt i t ys e t s )

と関連集合

( r e l a t i o ns hi ps e t s )

の認識

マ ッカーシーは小規模の小売業を例 に,会計データモデルにおける実体集 合 と関連集合を提示 している。小規模の小売業の会計データモデルにおける 実体集合 として,つぎの

3

つのものを挙げている。

対象

( o b j e c t s )‑設備,商品,現金

主体

( a ge nt s )‑株主,従業員,得意先,仕入先

事象

( e ve nt s )=・

注文,売上,仕入,現金受取,現金支払,設備の取得, 資本取引,一般管理用役,労働用役

また,つぎの ような関連集合が示されているが,完全な リス トではないこ とが付記 されている。

事象 (‑‑)事象‑売上 (応需)注文,現金受取 (支払)売上,現金支払 (支払)労働用役

主体 ()事象・従業員 (雇用)労働用役,仕入先 (供給先)一般管理 用役,得意先 (実現)売上高

( 1 5 )Mc Ca r t hy

,

o p . c i t . ( 1 97 9 ) ,p. 6 6 7.

( 1 6 )Mc Ca r t hy , o p. c i t . ( 1 97 9 ) ,pp. 6 6 8 ‑ 6 8

1

(11)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 における意義を求めて ‑ 235

対象 (‑一一)事象‑・現金 (フロー)現金受取,商品 (売上品 目)売上, 一般管理用役 (原価配分)設備

(2

)実体関連図

( e nt i t y‑ r e l a t i o ns hi pdi a gr a m)

の作成

それぞれの関連の意味的性質 (あるいは現実世界の特性)が この段階で検 証 され,それぞれの関連は実体関連図により表現 される。 2つの実体集合間 の関連 には,基本的な

3

タイプが存在する。それ らは,

1

1 ( o ne ‑ t O‑ o ne )

,

1対多

( o ne‑ t 0‑ ma ny)

,多対多

( ma ny‑ t 0‑ ma ny)

の関連であ る。

1

1 ( o ne‑ t O‑ o ne)

の関連

1

対 1の関連は,ある実体集合の 1つが別の実体集合の 1つに対応するこ とを意味する。例 えば,仕入 (事象) と現金支払 (事象)の間にこの関連が 成立する。

1対多

( o ne‑ t 0‑ ma ny)

の関連

1

対多の関連 とは,ある実体集合の 1つが別の実体集合の複数の実体に対 応することである。例 えば,ある得意先 に複数の販売が行われ る場合,得意 先 (主体) と販売 (事象)の間に この関連が成立する。

多対多

( ma ny‑ t 0‑ ma ny)

の関連

多対多の関連は,ある実体集合の 1つの実体が別の実体集合の複数の実体 と対応 し,また,後者の集合の

1

つの実体が前者の集合の複数の実体 に対応 することを意味する。例 えば,個 々の販売行為が多 くの商品か ら構成 され, また個 々の商品は多 くの販売行為 に関与する場合,販売 (事象) と商品 ( 負) との間に この関連が成立する。

図表 Ⅲ‑2に小規模の小売業の実体関連図が示 してある。図表 Ⅲ‑2にお いて長方形で示 されているのは実体集合で,菱形 で示 されているのが関連集 合である。

1

対 1の関連は関連集合を結ぶ

2

つの添 え字の

1

1

で示 され, 1対 多は添え字の 1と

n

で,多対多は添 え字の

m

n

で示 されている。小規 模の小売業を前提 とするこの図表 には

, 1 6

の実体 と

2 2

の関連が措 かれている。

(12)

図表 Ⅲ‑

2

小規模小売業の実体関連図

出所 :

Mc Ca r t hy , [ 1 9 7 9 ] ,p. 6 7 5.

(3

)特性の認識 と写像

( ma ppi ngs )

対象システムの実体関連図が作成 されると,個 々の実体集合 と関連集合に ついて関連性のある特性 が認識 され,特定化が行われる。実体集合 と関連集 合のい くつかの特性は,属性/値の組

( a t t r i but e/ va l uepa i r s )

で表現 され る。 ここに属性 とは,実体集合または関連集合か ら値集合への写像を行 う関 数であ り,値は在庫番号,金額,数量 といったさまざまな数値の集合である。

図表 Ⅲ‑3は実体集合 (商品) についての特性の写像を示 し,図表 Ⅲ‑4は 関連集合 (売上品 目)に関する写像を示 している。

(4

)実体表 と関連表の作成

データモデ リングの最後の段階では,主キーが特定 され,実体集合,関連 集合,値集合及び属性が実体表 と関連表 にま とめ られる。

(13)

マ ッカーシーモ デル の再検討 ‑ その会計学 におけ る意義 を求めて ‑

2 3 7

ここに主キー とは,実体集合や関連集合の要素 に関 して

1

対 1の写像を行 う同定的特性

( i d e nt i f y i n gc h a r a c t e r i s t i c )

(17)であ り,データベースにおいて それ らの要素を表現することを可能 にするものである。 この ことを行 うため に,主キーは各実体集合が属性 として持ち (普遍的),その値 が各実体で異 なって (独 自的)いなければな らない。

認識 された主キー,属性,値集合のデータは,それぞれの実体表 と関連表 にま とめ られることになる (図表 Ⅲ‑

5

を参照 されたい)0

そ して,図表Ⅲ‑2の実体関連図におけるすべての集合 に関 して表 を作成 することで小規模の小売業を前提 とした会計システムの実体関連 ビューが完 成 し,使用可能な もの となる。

3.E‑R

会計データモデルの特徴

以上マ ッカーシーの

E‑R

会計データモデルについて,

E‑R

モデルの設 計プロセスに従い概観 して きたわけであるが,まず今一度

E‑R

モデルの設 計プロセス手順を吟味 してみたい。

既述の ように

E‑R

モデルは①実体集合 と関連集合の認識,②実体関連図 の作成,③特性の認識 と写像,④実体表 と関連表の作成 とい う順番で行われ る。 ここで注意すべ き点

( 1 8)

は,①実体集合 と関連集合の認識 が③特性の認 識 と写像 に先行 していることである。

関係モデルな どのデータモデルは,特性の観点か ら対象システムを認識 し てお り,対象システムの認識 と特性の定義が同一 プロセスで行 われる。特性 の観点か ら対象システムを認識する と,特性が定義で きうる範囲で しか対象 システムを認識で きない。 また,認識 された対象システムについて定義 され

( 1 7)林

昌彦,前掲書

,p. 11 9.

主キーは換言すると,各実体や関連を一意的に識別する 1つまたは複数の属性 と値の組 ということになろう (河崎照行

,

情報会計システム とデー タベース指向‑マ ッカーシーの実体司目互関係的 ・会計データモデル (REA会計モデル) を中心に

」『産業経理』

,γo l . 46 ,No. 1 ,1 986

,p. 1 09)

0

( 1 8 )竹島貞治,前掲書 ,p. 67・

(14)

る特性は,必然的に定義 されたものに限定 される。E‑Rモデルにおいては, 対象システムの認識が特性の定義か ら切 り離され, これを特性の定義に先行

させることで,特性の定義にとらわれない対象の認識が可能にな り,かつ認 識 された対象システムについて多様な定義ができるようになるのである(19)0

図表

Ⅲ‑3

実体集合 (商品)の写像

実体集合

E j

(商品)

属性 値の集合

Vl

(

商品轟り)

出所 :

Mc Ca r t hy, [1 979], p. 677.

ただし,E‑Rモデルに従 って作表する際には,いかなる実体を認識 し, それ らの実体間にどのような関連を見出すのか という問題が存在する0

E‑

R

モデル 自体には実体 と関連の分類体系がないので,この問題はシステム開 発者のスキルに大 きく関わるもの となる。

マ ッカーシーは小規模な小売業を前提に3つの実体 と3つの関連を示 した

( 1 9 )E‑R

モデルの この ような特長を,会計における伝統的な記録方法である仕訳に置 き換えて考 えてみると,会計測定のプロセスが

,

勘定科 目を記録するプロセス」 と 「日 付 と金額を記録するプロセス」に分けられる ということになる (竹島貞治,前掲書

,p. 7 4 )

0

(15)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 におけ る意義 を求めて ‑

2 3 9

のであるが,これはあ くまで も小規模な小売業を対象 とした ものであるか ら, システム開発者の負担 を軽減 させ るにはより一般的な実体 ・関連概念を提示 する必要がある。

図表

Ⅲ‑4

関連集合 (売上品 目)の写像

値の集合

出所 :

Mc Ca r t hy , [1 979 ] ,p. 678.

図表

Ⅲ‑5

実体表 (商品) と関連表 (売上品 目) 実体表 (商品)

値 の 集 合

‑主 キー‑

商 品番号 取得原価 取替原価 保 管 費 販売価格 手許数量

商 品番号 単 位 数

7 4 3 2 3. 0 0 3. 5 0 . 7 5 .5. 0 0 2 6 9

8 51 9 . 3 0 . 3 2 . 1 5 1. 0 0 8 5

(16)

関連表 ( 売上品 目)

実 体 表 名

実 体 属 性 値 の 集 合

主キー

7tj‑ ス トック

商品番号 商品番号 単位数

0 6 2 1 1 41 5 7 4 3 2 3 0 6 2 1 1 41 5 8 51 9 4 0 6 2 1 1 41 5 6 7 8 4 7

関連の属性

出所 :

M

c C

art

hy

, [1

9

8 2 ], pp.679‑

6

80.

そ して,これまでの会計 と大 き く異なっているのは,抽象化プロセスの レ ベル

3

で述べた ようにモデルにおいて勘定科 目表 と複式記入のメカニズムが 使用 されていない ことである.対象実体 と事象実体間の関連は,

E‑R

モデ リング過程 においてス トックとフローの相互作用 として特徴づけ られ る。す なわち,現金や設備の ような実体 ( ス トック)は,現金受取や設備の購入の ような事象 ( フロー) によりその水準 に影響 を受け る。

これまでの会計では,上記の ような関連は取引が発生すると資産 ( 対象)

勘定 に記入することで処理 されるが,

E‑R

モデルにおいては,フロー実体

の発生 によるス トック実体の更新の定義 による処理 とい う形 になる。小売業

の商品の例でいえば,対象システム ( 図表 Ⅲ‑ 1の レベル 2 )において仕入

が行われ る と,データモデル (レベル 3 )で仕入集合 と仕入品 目集合 に新 し

い要素が追加 される。 この ような追加は,商品集合の要素の属性に①新 しい

取得原価 の設定,( む新 しい取替原価の設定,③新 しい手許数量の計算 という

更新を引 き起 こす ( t r i gge r ) ことになるのである。

(17)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学 におけ る意義 を求めて ‑

241

以上がマ ッカーシーの

E‑R

会計データモデルの概要であったが,以後マ ッカーシーは このモデルを発展 させた

REA

会計モデルを提唱す ることにな るのである。

Ⅳ.

マッカーシーの

REA ( Re s our c e s ‑ E ven t s ‑ Age n t sAc c oun t i n g Mode t )会計モデル

I . ∩ EA

会計モデルにおける実体 ・関連概念

既述の ように

E‑R

モデ リングには,いかなる実体を認識 し,それ らの実 体間にどの ような関連 を見出すのか という面で課題があった。システム設計 者の負担 を軽減 させ るためには, これ ら2点に関 して分析 に有用 なフレーム ワークを提供する必要 がある。マ ッカーシーは このため,つぎの ような

3

の実体 と3つの関連

( 20)

を見出している。

(1

)実 体

経済資源

( e c o n o mi cr e s o u r c e s )

「 (

i)希少であ り,かつ効用があ り,(ii)企業の支配下 にある対象物

」 ( 2

1)の こと。

経済事象

( e c o n o mi ce v e n t s )

‑ 「生産 ,交換,消費,分配 に よ り生 じる希少手段 (経済資源)の変化を反映する現象

」( 22)

と定義 されている。

この経済事象は,実体集合の中心的な存在である。

経済主体

( e c o n o mi ca g e n t s )

‑ 「経済事象に関与す るか,または下 位者の関与 について責任 があ る個人 または機 関

」 ( 23)

であ る。経済主体

( 2 0 ) Mc Ca r t hy,o p.c i t . ( 1 9 8 2 ),pp. 5 5 9‑ 5 6 5,

( 2

1)井尻雄士 ,『会計測定の理論』,東洋経済新報社

,1 97 6

年,pp.

77 ‑8 0

,ただ し,マ ッ カーシーは売掛金の ような請求権を,特定の情報利用者の要求が他の利用者の要求に制 約を与 えるとして除外 している。売掛金の ような請求権 は,販売額 一回収額の差 として 利用者が個別 にデー タベースを操作することで得 るもの とされている

( Mc Ca r t hy ,o p・

c i t . ( 1 9 8 2 ),p. 5 7

1)o

( 2 2 )Yu,S.C. ,TheSt nt c t weo fAc c o unt i n gThe o

7

T,TheUni ve r s i t yPr e s so fFl or i da

,

1 9 7 6,p. 2 5 6,

( 2 3 )

井尻雄士,前掲書,p.

7 8.

(18)

は,外部経済主体 と内部経済主体 に区別 され,内部経済主体は特 に経済 単位

( e c o no mi cuni t s )

とされている。

(2

)関

ス トソクーフロー関連

( s t o c k‑ f l o w r e l a t i ons hi ps )

‑経済資源 (ス ト ック)と経済事象 (フロー)を結びつけるもの。経済事象が生起すると, 経済資源の有高が変化することになる。

② 二重性関連

( dua l i t yr e l a t i o ns hi ps )‑経済資源の増加は,他方で経済

資源の減少 を もた らす とい う観点

( 2 4 )

か ら,事象 を相互 に結びつけ るも のである。

③ 支配関連

( c o nt r olr e l a t i ons hi ps )‑t「一般 に財 を支配す る主体の力

は他 か ら与 え られ,その代わ りに支配下 にある財にたいする会計責任が 要求 される

」 ( 25)

という見解 に基づ くものである。経済資源の増減 (経済 事象)には,支配 また会計責任 を持つ内部経済主体または外部経済主体 が関与

( pa r t i c i pa t i on)す ることになるので,経済事象 と主体が結びつ

くことになる。

④ 責任関連

( r e s po ns i bi l i t yr e l a t i o ns hi ps

ト ・内部経済主体 (経済単位) を相互 に結 びつけ るもの。 よ り上位 の経済単位 が部下の活動 をコン ト ロール し,その活動に責任 を持つ とい う関係である。

マ ッカーシーの

REA

会計モデルは上記内容の経済資源,経済資源を増減 させ る経済事象,これ らの経済事象に関与する

3

つの経済主体 と,経済資源, 経済事象,経済主体間に存在する

4

つの関連 を用いモデル化を行 うものであ

る。

REA

会計モデルの概要を示す と,図表 Ⅳ

1の ようになる。図表 Ⅳ‑

1において実体は長方形で,関連は菱形で示 されている。

なお,マ ッカーシーは上記4つの関連 に加 えて,別の関連 も追加 している。

( 2 4 )

これは,井尻 の 「犠牲 と効益の間にみ られる原田 ・結果の関係」,すなわち因果関係 に基づ くものであ る (井尻雄士,前掲書,p.

93)

0

( 25)井尻雄士,前掲書,p. 79.

(19)

マッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学における意義を求めて ‑

2 4 3

既述の

4

つの関連は全体 として結合

( a s s o c i a t i o n)

とされ 別の関連は一般

( ge ne r a l i z a t i o n)

とされている。一般化 とは下位集合

( s ubs e t )

を上位 集合

( s u pe r s e t )

に統合することで,例 えば,原材料,仕掛品,製品等 ( 位集合)が棚卸資産 (上位集合)に含まれるような関係である(26)0

2.REA

会計モデルにおけるデータベースの設計

マ ッカーシーはデー タベースの設計プロセス(27)をつ ぎの

3

段階 に分 けて 説明 している。

(1

)要求分析

( r e q ui r e me nt sa na l ys i s )

‑個 別利用者の情報要求 を識別 し,特定化 す るプロセス。 ここにおいて, ローカル な視野 (個別利用 者の視野)が集約化 される。

(2

)視野のモデル化

( v i e w mo d e l i n g)

‑要求分析で集約 された個別利用 者の情報要求を,デー タモデル によって意味論的 に表現す るプロセス。

ここで使用 されるのが,E‑Rモデルである。

図表 Ⅳ

‑ 1 REA

会計モデル

l

出所 :

Mc Ca r t h y , [ 1 9 8 2 ] ,p. 5 6 4.

( 2 6 )Mc Ca r t hy,o p.c i t . ( 1 9 8 2 ),p. 5 5 8.

( 2 7 )Mc Ca r t hy,o p.c i t .( 1 9 8 2 ),pp. 5 5 6 ‑5 5 7.

(20)

(3

)視野の統合化

( vi e w i nt e gr at i o n)

‑データベース設計の完成段階。

ここにおいて,ローカルな視野がグローバルな視野 (組織全体の視野) に統合化 されるこ とになるが,両者が矛盾や重複な しに統合化 される ことが必要である。加 えて,グローバルな視野か らローカルな視野が どの ようにして誘導で きるのかを特定化する必要 もある。

さて,データベースは概念スキーマ

( c onc e pt ua ls c he ma)

,外部スキーマ

( e xt e r na ls c he ma)

,内部スキーマ

( i nt e r na ls c he ma)

を基本的な構成要素 と して持つ (図表 Ⅳ‑ 2を参照されたい)0

図中の概念スキーマ とは現実世界をデータの立場から記述 した もの (視野 のモデル化 に相当),外部スキーマは利用者側か らみたデータの記述 (要求 分析に相当),内部スキーマ とは物理的デー タの編成法を概念スキーマを基 準 として記述す るものである

( 2 8)

。また, この図において実体集合は長方形 で,関連集合は菱形で示されているが,先に述べた一般化関連 (概念スキー マにおける棚卸資産参照)が追加 されている点に留意 されたい。

伝統的な会計では経済資源や経済事象を仕訳帳や元帳に記述するが,これ に対 し

REA

会計モデルのフレームワークは,複式簿記の勘定記入を用いず に会計の対象 となるシステムを意味論的にモデ リングするものである。マ ッ カーシーは,「これ らの要素は,仕訳帳や元帳 に関連する人工物であ り,早 にマニ ュアルベースでデータを記録 し,伝達するメカニズムに過 ぎない。そ れは必ず しも会計の本質的側面 とはいえない。概念スキーマにおいて経済現 象を直接的にモデ リングすることで,会計担当者は何をするのか,何を説明 するのか ということの本質を把握することがで きる。特定の利用者が望む複 式記入操作は,外部スキーマにおいて行われる

」 ( 29)

と述べている。

つま りマ ッカーシーは,伝統的な会計手続を外部スキーマの問題 として処 理 し,概念スキーマにおいて経済現象を多数の 「属性 と値」の組で記述 し,

( 2 8)高田橋範充,「デー タベース ・システム と会計モデル」原田富士雄編著 ,

動的社会 と会計学』,中央経済社,1

9 9 5

年,p.

8 9・

( 2 9)Mc Ca r t h y,o p.c i t . ( 1 9 8 2 ),pp. 5 5 9 ‑ 5 6 0・

(21)

マッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学における意義を求めて ‑ 2 4 5

図表 Ⅳ

‑2 データベースのスキーマ設計

出所 :

Mc Ca r t hy

,[1

9 82

]

,p. 5 6 0.

なるべ く統合 しない状態でデータを維持 ・管理すべ きである と主張する

のため,会計測定の多元化 とデータの多面的利用が可能 となるので,デー タ の集中制御 と共 同利用 を 目的 とするデータベース確立 に有効な枠組みを提供

したのである

(30)0

Ⅴ.

マ ッカーシーモデルの実務面での問題点 と会計学へもたらした 意義

1 . マ ッカーシーモデルの実務面での問題点

これまでみて きた ようにマ ッカーシーは,事象アプローチを忠実に実践す べ く,終始一貫 して価値アプローチに基づ くこれまでの伝統的会計 における

( 3 0) 河崎照行,前掲書 ,p. 11 2.

(22)

複式記入や勘定科 目表 を用いない,会計データモデル論を展開 した。それで は伝統的な会計について,マ ッカーシーは どの ような見解を持っていたので あろうか。

マ ッカーシーは

8 0

年の論文において,つぎのような伝統的会計に関する

4

つの欠点を指摘 している

( 3

1)0

(1)会計測定の次元が限定 されている。ほ とんどの会計測定値は貨幣尺度 で表現 されるので,生産性,業績,信頼性,その他多元的なデータの維 持 と利用ができない。

(2)伝統的な会計の分類スキーマが,必ず しも適切であるとはいえない。

経済事象に関する情報の配置カテゴ リーが勘定科 目表であ り,それがす べてであるため,非会計人

( no n‑ a c c o un t a n t )

がデータの性質を把握で

きない可能性がある。

(3

)情報の集約度が高すぎる。会計データは極めて多様な意思決定者に利 用 されるものであ り,多様な利用者のパーソナ リティ,意思決定スタイ ル,概念 レベルに応 じて,様 々な量,集約度,焦点が必要 とされる。ゆ えに,経済事象や経済対象に関する情報は,利用者が集約すべきであ り, それはできるだけ要素の形態で保持されるべ きである。

(4

)会計職能 と組織の他の職能領域 を統合する場合に,その統合度に制限 を受ける。 このため同じ現象についての情報が,会計人 と非会計人の間 で別個で保持 されることがあるので,情報の不一致,情報ギ ャップ と重 複が起 きた りする。

以上の ような問題意識に基づ きマ ッカーシーは,会計情報システムを中核 とした統合情報 システムを念頭に置 き,それまでの会計データモデル論のよ うに伝統的な会計の枠組みをデータモデルに定式化するという試み とは異な るアプローチを採用 したのであった。

( 3

1

)Mc Ca r t hy,W.E. , " co ns t r uc t i o na ndUs eo fI nt e gr a t e dAc c o unt i ngSys t e mswi t h

Ent i t y‑ Re l a t i o ns hi pMo de l i ng, ' 'i nChe n,p.p.( e d.

)

,Ent i t y‑ Re l at i o ns hi p4秒7 1 0 a C ht o

S ys t e msAnal ys i sandDe s i gn ,No r t hHo l l a nd,1 9 8 0,pp. 6 2 8 ‑ 6 2 9.

(23)

マ ッカー シーモ デル の再検 討 ‑ その会計学 におけ る意義 を求めて ‑

2 4 7

複式記入や勘定科 目表を基盤 とする伝統的な会計の枠組みを持つ会計情報 システムをデータベース と統合する場合には,①複式記入は効率的な情報処 理を妨げる,(∋勘定科 目表はそれ 自身が分類表であ り,データベースで分類 すべ き対象ではない とい う問題がある

( 3 2 )

。 この問題を解決す るために,E

‑R

モデルを採用 し,展開させたのがマ ッカーシーモデルであった。 しかし なが ら,マ ッカーシーモデルに関 してい くつかの実務面での問題点があるの

も事実である。

マ ッカーシーは事象アプローチの忠実な実践を企図 しているので,その主 眼を概念スキーマに置 き,情事師 rl用者のデータの集約や利用を外部スキーマ の問題 として処理 している。確かに会計データモデル論のスタンス としては, 決 して間違 った取 り扱いではない といえようが,情報利用者は必ず しもシス テム開発やコンピュータの専門家ではないのである。

この点を考慮すると,現実における実践 という面で,概念スキーマに特化 し,データの集約や利用は情報利用者の問題 とい う論の展開は,利用者サイ

ドからすれば問題があるといえるだろう。なぜな らば,集約化 されない情報 が伝達 されることは一面では利用者 に とっ 情報過多をもた らす し,利用者 自身の情報処理能力にも限界があるか らである。む しろ何 らかの集約化 され たデータを取 り出せ ることは,かえって利用者の利便性を高めるのではなか ろうか。そのためには,利用者が簡単に集約方法を指定 し,それを利用でき るようなイン ターフ ェイスをいかに構築するか とい う視点

( 33 )

も必要であろ

また,マ ッカーシーは小規模の小売業を前提にした実体関連図を例示 した が,そこにおいては単純なビジネス ・プロセスの小規模な小売業 といえども

1 6

の実体 と

2 2

の関連があった。 より複雑なビジネス ・プロセスを持つ多角化

したメーカーな どにおいては,いったいい くつの実体 と関連が識別 されるの

( 3 2 )Ev e r e s ta n dWe b e r , o p.c i t . ,p p. 3 4 1 ‑ 3 4 2 .

( 3 3 )

坂上

,

事象会計報告 における伝達思考の新展開 一洗練 された事象アプローチに 向けて

」『経営研究』,大阪市立大学経常学会,第

4 6

巻,第

4

,1 9 9 6

,2

,p. 5 5 ・

(24)

であろうか。そ して,恐 らく極めて複雑化 した実体関連図におけるすべての 集合について表 を作成 しなければな らないので, この作業はビジネス ・プロ セスの内容が複雑 になればなるほ ど困難な ものになるであろうか ら,変換作 業における正確性の問題が生 じることになろう。加 えて,多 くの集合が存在 するので,更新作業が極めて難 し くな るとい う問題

( 34)

も発生する。

さらに,情報技術が急激 に発達 している現状を想定すると,一方で可能性 と他方で限界がみえて くるように思われる。情報技術が急速 に発展 している 今 日では記憶容量やデータの転送速度が高ま り,確 かにこの面で

REA

会計 モデルに代表 され るようなアプローチについて,これまでいわれてきたよう な技術的壁が低 くな りつつあるのは事実である。

一方,情報技術の急速な発展は,以前では考 えもされなかったビジネス ・ モデルや,単なる財やサービスのや り取 りの レベルに止ま らない企業間の連 携等を生み出し,ビジネスのブラックボ ックス化や複雑性を進行 させている。

この ような状況に対 してマ ッカーシーの

REA

会計モデルは, どの ようにあ るいは どこまで対応で きるのであ ろ うか。 この ように考 える と,筆者 には

REA

会計モデルの識別能力の面で限界が感 じられるのである。

2

.マ ッカーシーモデルが会計学へもた らした意義

マ ッカーシーのモデルを概観すると,ソー タ‑

( G. H. S o r t e

r),チ ェソ, コッド,井尻等の影響を受け,彼等の理論が巧みに取 り入 られる形で,E‑

R

会計データモデルか ら

REA

会計モデルへ とま とめあげ られた ことが分か る。ただ し実務 という面では,前節で挙げた問題点等の理 由か ら成果を収め た とはいい難 く,プ リミテ ィブな段階で止まって しまった感が強い。

一連のマ ッカーシーモデル として具体化 されたマ ッカーシーの理論 につい て,筆者 が高 く評価すべ きである と考 えていることは,こと実務面での問題 点を重視すると,モデルの内容その もの とい うよりはむ しろ,問題解決のた

( 3 4 )Sa ka ga mi ,M.

,

" Ⅰ nt r o d uc i nga nObj e c t ‑ Or i e nt e dMo de li nt oAc c o unt i ng

,

' 'os a k a

Ci t yUni v e r s i t yBu s i n e s sRe v i e w ,No. 6 ,Fe br ua

ry

,1 9 9 5 ,p. 1 7・

(25)

マ ッカーシーモデルの再検討 ‑ その会計学における意義を求めて ‑ 2 4 9

めにシステム中心観に立ち,E‑Rモデルを会計の領域に導入することで, 伝統的な会計パラダイム とは異なる新 しいパラダイムのモデルを提示 した と いう "事実"である。 この事実を真筆に受け とめることで,つぎの ように考 えることもで きよう。

すなわち,既述の ように情報技術の進展は,エンジン とな り次か ら次へ と 新 しいビジネスのや り方を生み出しているが,伝統的な会計のパ ラダイムが

この潮流に十分に対応できているとはいい難い と思われる。 このような意味 か らすれば,我 々は直面する問題の解決のため極めて保守的に伝統的なパラ ダイムに固執することな く,む しろ伝統的なパラダイムを基盤 としなが らも, システムを念頭に置 き改善 ・改良してゆ く道を模索すべ きではなかろうか。

いずれにしても,マ ッカーシーは問題解決のため,システム中心観の伝統 的な会計パラダイム とは別のパラダイムのモデル化を試みることで,新 しい 会計学の方向性を不完全なが らも提案 した ということが会計学 において果た した意義であろうし,マ ッカーシーの最大の評価すべき点ではないか と思わ れる。

Ⅵ.むすびに代えて

本稿では,あれだけセンセーシ ョナルな取 り上げ方をされたマ ッカーシー モデルが,実務 とい う面でなぜ壁 に直面 しているのか という問題意識の下, 情報技術が急速に発展 している現状 も加味 しなが ら,マ ッカーシーモデルの 利点や問題点を把握 した上で,マ ッカーシーモデルが会計学に及ぼ した意義 とそれから我 々会計人が学ぶべ きことについて筆者な りの見解 を示 した。本 稿の内容の要約は,つぎの ような もの となる。

マ ッカーシーは概念モデルにE‑Rモデルを,論理モデルに関係モデル を というように

2

つの定評のあるデータモデルを採用 したので,モデ リン グの技術的側面 という点に関 してマ ッカーシー以前の会計データモデル論

(26)

より優れていた

マ ッカーシーの

E‑R

会計データモデルは,実体 と関連でモデル化を行 うため,伝統的な会計のパラダイムである複式記入や勘定科 目表 を使用 し ない。 このため,伝統的な会計の枠組みを持つ会計情報システムをデー タ ベース と統合する際の問題点が緩和 される。ただ し,

E‑R

モデルに従 っ てモデ リングする際には,いかなる実体を認識 し,それ ら実体間にどの よ うな関連を見出すのか という問題が存在する。 この間題はシステム開発者 のスキルに過度に依存 して しまうため,開発者の負担を減 らすためには分 析のフ レームワー クを提供す る必要がある。マ ッカーシーは

E‑R

会計 データモデルを提示 した際

3

つの実体 と

3

つの関連を示 したが,あ くまで も小規模の小売業を前提 としていたため,広範な実践 という点で汎用性を 欠いていた

マ ッカーシーは上記問題点を解決すべ く

EIR

会計データモデルを発展 させ,REA会計モデルを提唱 し,汎用性を向上 させるようなモデルを示 した。

REA会計モデルは, 3

つの実体 と

4

つの関連 (一般化を加えると

5

つ)により対象システムをデータモデル化するものである。また,

RE

A

会計モデルに基づ くデータベースは,経済現象を多数の 「属性 と値」の 組で記述 し,なるべ く統合 しない状態でデータを維持 ・管理するので,会 計測定の多元化 とデータの多面的な利用が可能な もの となる。

しか し実務 という視点でマ ッカーシーのモデルを概観すると,以下の よ うな問題点があると思われる。

(1

)事象アプローチの実践を忠実に企図 しているため,情報利用者の問題 が外部スキーマの問題 として処理 されている。

(2)ビジネス ・プロセスが複雑になればなるほど論理モデルへの変換作業 に,正確性の問題が生 じよう。また,ビジネス ・プロセスの複雑さに応 じて多数の集合が存在することになるので,更新作業が困難なもの とな る。

参照

関連したドキュメント

「文字詞」の定義というわけにはゆかないとこ ろがあるわけである。いま,仮りに上記の如く

はある程度個人差はあっても、その対象l笑いの発生源にはそれ

肝臓に発生する炎症性偽腫瘍の全てが IgG4 関連疾患 なのだろうか.肝臓には IgG4 関連疾患以外の炎症性偽 腫瘍も発生する.われわれは,肝の炎症性偽腫瘍は

これらの定義でも分かるように, Impairment に関しては解剖学的または生理学的な異常 としてほぼ続一されているが, disability と

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

つの表が報告されているが︑その表題を示すと次のとおりである︒ 森秀雄 ︵北海道大学 ・当時︶によって発表されている ︒そこでは ︑五

(2011)

は,医師による生命に対する犯罪が問題である。医師の職責から派生する このような関係は,それ自体としては