織物のバイアス布に関する基礎研究(IV)
一一曲線(凹カーブ・凸カーブ〉利用の実物製作一一
中 屋 典 子* 伊 沢 政 枝料
A
Fundamental Study of the Fabric Cut on the Bias (N)一一Life-size Framing making use of Curved (convex and concave) Lines---
Noriko Nakaya Masae Izawa
はじめに
第I報1)では被服製作における衿ぐりや袖ぐ りの始末としての見返し仕立ての基礎的 な試み として, 円形の内側をバイアステープで始末す る場合を取り上げ, 曲率半径4cmの凹カーブに ついて実験し, 希望の幅に仕上げるためのテー プ長といせ込み量(マイナス量も含む)を求め る公式を発表した。 第E報のでは被服パターン に多く適合する曲線の曲率半径を4, 7, 10,
22cmとし,第I報で行 なった4cm 以外の7, 10,
22cmの凹カーブについて実験を行 ない, これに より得た数値を用いて, 第I報で求めた公式に 従って必要テープ長を算出L, 実際にブラウス を製作し, 適応させることが出来た。 第E報の では前報までの結果を踏まえて, 円形の内側つ まり凹カーブをノミイアステープで見返し仕立て に始末する方法のまとめとして, 必要テープ長 を曲率半径4, 7, 10, 22cmの4種, 仕上がり 幅 0.4cmから2. 0cm までの17段階(左・右 パイア
* 本学教授 被服構成学 材 木学講師 被服構成学
ス別)を, 試験布 5 種類について, 各々のいせ 込み量(マイナス量も含む)を算出し一覧表に まとめた。
つぎに曲線部分の始末としての 玉縁(縁とり〉
にも適応出来ると仮定し, 先の一覧表の数値を 用い凹カーブ・凸カーブに0.5cm 幅と1. Ocm 幅の 玉縁仕立ての実験を行 なった。 その結果カーブ の強い曲率半径4cmを除き7, 10, 22�mについ ては見返し仕立ての数値が 玉縁仕立てにも適応 出来ることが得られた。 曲率半径4cmについて は, 見返し仕立ての場合より, 玉縁仕立ての場 合の パイアステープ長が, 長く 必要と なったの で補正を加え再度実験を行 ない, 適当 なテープ 長を算出することが出来た。
そこで 今回は 今迄の結果を踏まえて, 凹カー ブ・凸カーブの縁とりによる実物製作を試みた。
1
製作方法前固までの見返し佐立てに始末する場合の布 地として選んだ試験布5種類について検討した。
( 51 )
60番ブロードによるブラウスの実物製作では 凹カーブの 部分を パイアステープで見返し仕立
図1
デザインてにする方法を, 第E報2)で報告した。
今回は 玉縁の実験の数値を出来るだけ多く取 り入れたデザインのものを, ブロード程度の布 地使用で, バイアステープを平面曲線に試みた 方が, 仕上がりの良否が明確に なると考え, 数 値の裏付けを目的 に, 室内装飾の壁掛け等の製 作を試みた。
2
製作過程と考察2-1 デザイン
円を数多く使用したデザインをいろいろと考 えてみた。 図lのように た て240cm Xょこ270 cmの大きさに考えたが, 一つの部分の大きさが
30cm X30cm と なり, 縁とり幅も3.5cm にも なる ため, 縮少して10cm X l Ocm, 即ち全体の大きさ は80cm X90cm と決め方眼紙に図1の通り図案を 書いた。
2-2 試験布
今までの試験布で一番適していると思われる 布地としてブロードを選んだ。 前回の試験布の ブロードは, 自の 60番ブロードであったが, 今 回は40番ブロードを選んだ。 その理由は,
①
60番ブロードで得た数値を40番ブロード にも適用させ, その結果を検討したいと考えた。②
市販されているブロードでカラーが最も 多く揃っているのが40番ブロードであり, その 数は 100 色近く見受けられた。 その中から25色10
図2
必要テープ長図3
部分作成を選び, 縮少した図 案に貼布し配色効果 をみた。
2-3 型紙作り このデザインは一 つの部分としての図 案の繰り返しであ る。 前の数値に出て いる曲率半径10cmを もとに, 図2 のよう に 必要テープ長を求 め 型紙を作成した。
2-4 部分作成 一つの部分を試験 布で部分作成を試み た。 (図3) 玉 縁仕 立てにしたものが 5 種(土台布が 5枚) 重 なるので一番厚く なる部分が, 布地9 枚重 なる結果と なっ た。 (図4) 先の デ
ザインの10C1耳2の対 角線に於いては, 相 対する布地が1枚の場合は問題 ないが 5-9枚 重 なった厚い部分間志の接ぎ合わせは, 縫い代 の倒し方に於いて無理 な立とが判り, 方法を変 更することを考えた。 しかしテープ長に於いて はよく適合していると思われる。
厚く なることを避けるための方法として, 図 案はこのまま続行したい、と考え, 玉縁仕立てに せずパイアステープ同志を接ぐことにし, 実験 を試みた。 (図 5 )
結果として布自の正しい土台布にバイアステ!
ープを 縫いつける場合には, 玉縁の幅は正確に 仕上がるが, バイアステープとバイアステープ の 縫い合わせでは幅も不揃いになりやすく, 安 定性が ないため, 型紙通りの形を保つことは困 難であり, 止む なくデザインを変更することに じた。
2- 5 デザイン変更
A土 台 布 � Aの土台布 ケBの土台布 Cの土台布
図4部分作成
Dの土台布 Eの土台布
図5 部分作成
前固まで、 の実験で、得た数値を使用して曲率半 径4, 7, 10, 22cmの凹・凸カーブの型紙を,
仕上げたい枠 の中 に, 美的 に配置し ながらデザ インを数種考えた。 (図 6 )(図7)
今回は画一的 なデザインに決定したがこのデ ザインに決めるまでには, 波型 のもの等いろい ろ部分作成も試みた。
図6 デザイン1
今回製作した作品の大きさは80cmX80cmであ る。 デザインと し て 使 用 し た曲率半径は図8 に示す通り, 4 cn:凹カーブに O.5cm の縁とり幅
a,
4cm凸カーブに O.5cm の縁とり幅b • b',7cm凹カーブに 0.5cmの縁とり幅c,7cm凸カー ブに1. Ocmの縁とり幅d • d' の組み合わせであ る。
デザイン2
図7 デザイン1
図8 図案および配色 ( 55 )
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デザ=イン2
占表1 試験布の諸元
織糸 3式 験 布
材小 質 組
織方 向 糸密度 厚 さ 色 H V/C
(%)
撚り構成
太さ(S) (本/c m) (mm) 40 番 たて 一一一 Z 4 0 1 黒
ブロード 綿100
平織
4 0 54X27 、0.25 N 1.41 よ
」ヤ一一一 Z グ レ ー 40 番 た て 一一 Z 4 0 2 ブロ ード 綿100
平織4
Ó54X27 0.25 10PB 7.04/2 よ
」ヤ一一一 Z
40 ヘ番、
だて 一一一 Z 4 0 3 紫
綿-100
平織54X27 0.25 3.7P 2.97/9
ブロード
よ
」予一一 Z 4 0
,,40
番 た て 一一- z 4 0 4 ピ ン ク 内ア ロード 毒自 100
平織一一 Z 54X27 0�25 L7R 5.20/10.2 よ .:: 4 0
Jた て ー- z 4 0 5 赤 40 番、 綿100
平織ぜ、54X27 0.25 6.2 R 3.98/12 eプロード
よ
」、,一一 z 4 0 - t..こ
" て 一一一 Z I 4 0 6 赤桂
4 ブ 0番 綿 100
平織54X27 0.25 7.8R 5.18/14.5 ロード よ
」一一 Z 4 0
40 '番 た て 一一一 Z 4 0 綿 10Q 7
糧平織54X27 0.25 2.2YR 6.45/13.4
'ブロード
よ
」ヤ一一一 Z 4 0 40
-番 たて 一一一 Z 4 0 8 賞 古車 100
平織54X27 0.25 4.7Y 8.98/11.2
ブロード
よ .:: 一一 Z 4 0
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て 一一 Z 4 0 40 番 9 黄緑 ブ ロー ド 綿100
平織54X27 0.25 7GY 5.85/16.4 よ
」乍一一一 Z 4 0 40 番
平織た て 一一一 Z 4 0 10 緑
ブロード 綿 100 54X27 0.25 0.9G 5.28/6.3 よ
」、骨一一一 Z 4 0
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一 青 40 番
綿 100
平織
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54X27 0.25 4.4PB 3.39〆9.7
ブロード
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(叩由)
東レの製品でクムスである。 素材はポリウレ タンー'40%, キュプラ・・・50%, ナイロシ・,'10労。
③
試験布試験布には40番のカラーブ戸ー ド11色であ る。 その諸元は表1に示す通りで ある。
④
j:p'0_けおよび裁断土台布Aの裏面にチャコで、方眼紙に書いたも のと同じ円を 書く。 その際布目を正し, 布が動f
くのを避けるため, 裁ち台の上にピンで止め,
型紙を使用してチャコで印を入れ, 縫いつける 際の合い印もつける。
土台布に黒を使用した結果とLて, 書いたチ ャコは消えにくと扱い易かったが, アイロン等 による亡て光りが目立ち, 裏面からのみアイロ ンを使用じた。‘
パイケステ戸フ'は前固までの実験と同じ方法 を用い, テープの幅は出来上がり 0.5cm 幅の縁 とりにiは 2 cm,
1.
Ocm幅の縁とりには3cmとし,長さはそれぞれJ一覧表の数値から選び公式に従 い表2 のよ〆うに必要テーフ。長を求めた。 裁断中 に伸びるのを避けるために, 布を平らに置きす
べて合い印までつけて裁断した。
⑤
縫製前固までの実験と同じ方法を使用した。 円に なる誠分はバィデステープの端を接ぎ合わせて 縫いしろは割り, つぎに土台布とバイアステー
図9
Cの内側b表2 必要テープ長'
� r
カーブ 出来上 がり幅 内側 寸法 Cの っけ 必ー要プ長 テ
a
4 凹 0.5 25.12 25.92
b 4 凸 0.5 25.12 25.92
c
7 凹 0.5 43.9.6 42.27
d 7 凸 LO 20 20.5
d' 7 凸 LO 22 20.6
b' 4 凸 0..5 イ 8.4 8.67
b' 4 凸 0.5 ロ 8.4 8.67
b' 4 凸 0.5
ノ、7.7 7.95
b' 4 凸 0.5
一8.1 8.36
b' 4 凸 0.5 ホ 3.2 3.3
プの合い印を合わせて, しつけをかけて後,
シン 縫いをした。 それぞれアイロンで 型 を整え しつけをかけた。b'はイ, ロ, ハ, ニ, ホを そ れぞれ 止めるのに際にミシンで 止めつける方法 を用い, cのあいている部分に裏面から当て,
際にミシンで 止めつける。 bを土台布に 止めつ けるのも同様の方法を用いた。 作品に調和する と思われる 額縁を選び, 額縁の大きさより周囲 5 cm 大きい土台布 Bを用意した。 (額縁に入 れ る際に裏面に折りまげる。)
aのあいている部分にあたるところの土台布 Bにクムスを両面接着テープで止めつけた。
つぎに土台布 Bの上に土台布Aをのせ額縁に 入れた。 図
1
0は出
来上
がり
である。
( 57 )
図10
額縁に入れた作品3
まとめ1
60番ブロードの数値により, 4 0番ブロー ドを使用したが, 実物製作の結果は十分適用す ると思われる。2 円の土台布にバイアステープを 縫いつけ 玉縁仕立てにする場合の問題点として, バイア ステープが 縫いつけられた土台布は, たて地お よびょこ地の部分に, ごく僅かピリつきが見ら れる。 その点についてもう少し実験を試みよう と,思っている。
3
今回の実物製作は被服を製作するより円 を多く扱うことが出来, 素材等の変化を楽しむことも出来た。 カラーブロードのみにとどまら ず, 柄物等を用いれば無地と違った変化のある 物が出来ると思われる。
参 考 文 献
1) 中屋典子・小林美百合:文化女子大学研究紀要 第10集織物のバイアス布に関する基礎研究(1) (1979)
2) 中屋典子・小林美百合:文化女子大学研究紀要 第11集織物のバイアス布に関する基礎研究(ll) (1980)