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佛教大學研究紀要 66号(19820314) 043榎本福寿「世説新語の手法」

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Academic year: 2021

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寿

. l . 歴 史 記 述 は 虚 飾 を 交 え な い こ と を 原 則 と す る 。 孔 子 が ﹁ 述 而 不 レ 作 ﹂ ( 論 語 ・ 述 而 ) と 規 定 し た そ の 原 則 は 、 司 馬 遷 の 史 記 や 班 固 の 漢 書 な ど で も 貫 か れ て い て 、 こ れ 以 降 、 歴 史 書 編 述 の 規 範 と し て な が く 受 け 継 が れ る 。   と こ ろ が 時 代 の 下 る に 従 い 、 そ の 規 範 と し て の 意 味 が 薄 れ て 、 唐 の 太 宗 の 時 に 編 述 さ れ た 晋 書 は 、 か つ て 類 を み     な い 程 の 潤 色 が 施 さ れ て い る と い わ れ る 。 果 し て そ の 潤 色 の 実 情 は い か な る も の で あ っ た の か 。 前 稿 で は 、 世 説 新   語 ( 以 下 に 世 説 と 略 称 す る ) の 所 伝 と 、 劉 孝 標 が 世 説 の 注 と し て 諸 書 か ら 拾 い 集 め た 世 説 の 所 伝 に 対 す る い わ ゆ る 異 聞 と を 主 に 取 り あ げ 、 そ れ ら を 晋 書 が 編 述 に お い て い か に 利 用 し て い た の か 、 あ る い は ま た 、 晋 書 の 潤 色 の 度 合 ひ い て は 編 述 そ の も の の 実 態 を 探 ろ う と 試 み た の で あ る が 、 そ の 結 論 の あ ら ま し は 、 潤 色 の 度 合 い は 思 い の ほ か 低 く 、 む し ろ 世 説 の 所 伝 を 始 め と す る 先 行 資 料 を そ う と う 忠 実 に 利 用 し て い る と い う こ と で あ っ た 。 い わ ば 伝 記 の 豊 か な 肉 付 け を め ざ し て は い る も の の 、 そ こ に 潤 色 を 施 す そ の 程 度 は 、 ﹁ 述 而 不 レ 作 ﹂ の 原 則 を 逸 脱 す る ま で に は 至 っ 世 説 新 語 の 手 法 四 三

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 四 四 て い な い と い う こ と で あ っ た 。 晋 書 の 遍 述 に お い て も 、 そ の 史 書 と い う 性 格 上 、 な お 原 則 は 等 閑 視 さ れ て い な い 。 以 上 が 前 稿 で 述 べ た こ と の 概 略 で あ る 。 小 稿 は 、 こ れ を 踏 ま え て 、 ﹁ 述 而 不 レ 作 ﹂ の 原 則 が と も か く も 貫 か れ て い る 晋 書 と 、 史 書 な ら ぬ 、 従 っ て そ う し た 原 則 の 規 制 を あ ま り 受 け て い な い と 考 え ら れ る 世 説 と の 記 述 上 の 相 違 は 何 か 、 あ る い は 一 般 的 な 言 い 方 を す れ ば 、 原 則 の 有 無 が 記 述 に ど の よ う な 違 い を も た ら し て い る の か 、 等 の 疑 問 を め ぐ っ て 世 説 に 取 り 組 む 。 世 説 は 史 書 で は な い 。 隋 書 の 経 籍 志 で 子 部 に 分 類 さ れ 、 ﹁ 小 設 ﹂ ( 街 説 巷 語 之 説 也 ) と 規 定 さ れ て い る 。 こ れ が 以 後 引 き 継 が れ て 、 旧 唐 書 経 籍 志 ま た 新 唐 書 芸 文 志 い ず れ に お い て も ﹁ 小 読 家 ﹂ と い っ た 同 じ 扱 い を 受 け る 。 こ う し た 世 説 の 記 述 上 の 特 徴 は な に か 、 そ れ は 史 書 の 記 述 と 較 べ て ど の よ う な 点 が 特 異 な の か 、 問 題 を こ の 点 に し ぼ る が 、 先 学 に よ っ て 史 書 の う ち で も 潤 色 の 程 度 が は な は だ し い と さ れ る 晋 書 や 後 漢 書 、 あ る い は 三 国 志 そ の 他 、 ま た 史 書 で は な い が 人 物 の 伝 記 と い う 相 通 う 性 格 を も つ 高 僧 伝 な ど 、 史 書 な い し そ れ 相 当 の 書 か ら 世 説 の 所 伝 と 内 容 上 一 致 す る 所 伝 を 拾 い 出 し 、 双 方 の 記 述 の 比 較 を 通 し て 、 と り わ け 世 説 の そ の 特 徴 を 明 ら か に し た い と い う の が 小 稿 の 意 図 で あ る 。 と こ ろ で 、 世 説 の 文 体 上 の 特 徴 を 指 摘 し た 論 考 に 吉 川 幸 次 郎 氏 の ﹁ 世 説 新 語 の 文 章 ﹂ が あ る 。 世 説 に 特 徴 的 な 表 現 と そ の 背 景 な ど に 犀 利 な 考 察 を 加 え て お ら れ る が 、 世 説 に 対 す る 基 本 的 な 把 握 は ﹁ 魏 晋 南 北 朝 の 史 家 の 文 章 に は 程 度 の 差 こ そ あ れ 、 ﹃ 世 説 ﹄ と 同 じ よ う な 特 色 が 認 め ら れ る の で あ っ て 、 そ の 特 色 を 最 も 強 く 表 わ し て い る の が ﹃ 世 説 ﹄ で あ る に 過 ぎ ぬ 。 ﹂ ( ﹃ 吉 川 幸 次 郎 全 集 7 ﹄ 四 五 五 頁 ) と あ り 、 世 説 の 特 色 を 、 最 も 強 い と 言 わ れ る に せ

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よ 、 時 代 の 一 般 的 な 傾 向 と し て 捉 え て お ら れ る 。 そ こ に は 、 世 説 の 独 自 性 と い う 観 点 が 欠 落 し て い る よ う に 思 わ れ る 。 世 説 が 時 代 の 特 色 を 最 も 強 く 表 わ し て い る と し て も 、 否 そ う で あ れ ぽ こ そ な お さ ら 、 ﹁ 特 色 を 最 も 強 く 表 わ す ﹂ は 、 や が て 世 説 の 個 性 の 問 題 、 い わ ば そ の 独 自 な 性 格 の 如 何 と い う と こ ろ に 自 ら ゆ き 当 ら ざ る を 得 な い の で は な い か 。 結 論 を 言 え ぽ 、 世 説 は あ く ま で も ﹁ 小 説 ﹂ で あ っ て 、 こ の 性 格 が 文 体 と 表 裏 あ い ま っ て 世 説 を 特 徴 づ け て い る と み る こ と が で き る 。 そ の 特 徴 は 、 史 書 の も の で は あ り 得 な い 。 以 下 に 、 ま ず は 晋 書 と の 比 較 を 通 し て 世 説 の 特 徴 を   探 る こ と に す る 。 1 0 張 憑 擧 二 孝 廉 一 出 レ 都 、 負 二 其 才 氣 ↓ 謂 三 必 參 二 時 彦 鱒 欲 レ 詣 二 劉 尹 州 郷 里 及 同 擧 者 共 笑 レ 之 。 張 途 詣 レ 鈴 。 劉 洗 二 濯 料 事 ↓ 處 二 之 下 坐 ↓ 唯 逋 二 寒 暑 ↓ 紳 意 不 レ 接 。 張 欲 二 自 發 { 無 レ 端 。 頃 レ 之 、 長 史 諸 賢 來 清 言 。 客 主 有 二 不 レ 通 處 司 張 乃 遙 於 二 末 坐 一到 レ 之 。 言 約 旨 遠 、 足 レ 暢 二 彼 我 之 懷 ↓ 一 坐 皆 驚 。 眞 長 延 二 之 上 坐 { 清 言 彌 レ 日 、 因 留 宿 。 至 レ 曉 、 張 退 、 劉 日 、 卿 且 去 、 正 當 三 取 レ 卿 共 詣 二 嘸 軍 司 張 還 レ 船 、 同 侶 問 二 何 處 宿 輔 張 笑 而 不 レ 答 。 須 臾 、 眞 長 遣 レ 傳 教 レ 覓 二 張 孝 廉 船 司 同 侶 椀 愕 。 師 同 載 詣 二 撫 軍 幻 至 レ 門 、 劉 前 進 謂 二 撫 軍 一 日 、 下 官 今 日 爲 レ 公 得 一二 太 常 博 士 妙 選 鱒 既 前 、 撫 軍 與 レ 之 話 言 、 咨 嗟 稱 レ 善 日 、 張 憑 勃 搴 爲 二 理 窟 輔 印 用 爲 二 太 常 博 士 司 ( 世 説 ・ 文 学 第 四 ・ 53 ) ○ 張 憑 字 長 宗 。 ∼ 擧 一一孝 廉 ↓ 負 二 其 才 嚇 自 謂 竃 必 參 二 時 彦 鱒 初 欲 レ 詣 レ 淡 、 郷 里 及 同 擧 者 共 笑 レ 之 。 既 至 。 倏 處 二 之 下 坐 { 祚 意 不 レ 接 。 憑 欲 二 自 發 一而 無 レ 端 。 會 王 濛 就 レ 倏 清 言 。 有 レ 所 レ 不 レ 通 。 憑 於 二 末 坐 一 剣 レ 之 。 言 旨 深 遠 、 足 レ 暢 二 彼 世 説 新 語 の 手 法 、 四 五

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 四 六 我 之 懷 鱒 一 坐 皆 驚 。 淡 延 二 之 上 坐 ( 清 言 彌 レ 日 、 留 宿 。 至 レ 旦 、 遣 レ 之 。 憑 既 還 レ 船 、 須 臾 、 楼 遣 レ 傳 歡 レ 霓 一一張 孝 廉 船 叩 便 召 與 同 載 、 途 言 二 之 於 簡 交 帝 ↓ 帝 召 與 語 、 歎 日 、 張 憑 勃 搴 爲 二 理 窟 司 官 至 一一史 部 郎 、 御 史 中 丞 ↓ ( 晋 書 . 列 伝 第 四 十 五 ・ 張 憑 ) 世 説 ・ 晋 書 と も に 張 憑 の 出 世 譚 を 伝 え る 。 孝 廉 に 挙 げ ら れ た 張 憑 が 周 囲 の 冷 笑 を し り 目 に も ち 前 の 才 気 で 劉 尹 ( 劉 淡 ) に 取 り 入 り 、 彼 を 驚 嘆 さ せ た こ と に よ り や が て 引 き 合 わ さ れ た 撫 軍 ( 簡 文 帝 ) ま で 感 嘆 さ せ る と い う 内 容 で 、 晋 書 が 長 文 に わ た っ て 世 説 を 利 用 し た 例 で あ る 。 全 体 の 筋 の 展 開 ば か り で な く 、 表 現 の 細 部 に 至 る ま で 忠 実 に 引 き 写 し て い る が 、 一 方 ま た 、 手 を 加 え て い る 箇 所 も 少 な く な い 。 そ の 主 な も の を 抜 き 出 す と 、 e 出 レ 都 。 ⇔ 洗 二 濯 料 事 ↓ ∼ 唯 通 二 寒 暑 輔 ⇔ 張 退 。 劉 日 、 卿 且 去 、 正 當 三 取 レ 卿 共 詣 二 撫 軍 鱒 ー ← 遣 レ 之 。 ㈲ 同 侶 問 二 何 處 宿 司 張 笑 而 不 レ 答 。 ㈲ 同 侶 椀 愕 。 ㊨ 至 レ 門 、 劉 前 進 謂 二 撫 軍 一 日 、 下 官 今 日 爲 レ 公 得 一二 太 常 博 士 妙 選 鱒 既 前 、 1 ← 途 言 二 之 於 簡 文 帝 輔 ㊨ 咨 嗟 稱 レ 善 日 、 ← 歎 日 、 O ⇔ ⑳ ㈲ は 晋 書 に 対 応 記 述 が な く 、 省 略 さ れ た も の 、 一 方 ⇔ の ㈹ は 晋 書 で 大 幅 に 縮 約 さ れ て い る も の で あ る 。 こ れ ら 省 略 な い し 縮 約 さ れ た 箇 所 は 、 基 本 的 な 話 の 筋 の 展 開 に 与 る そ の 程 度 は 低 い 。 当 然 の こ と な が ら 、 こ と に 省 略 箇 所 に は 根 幹 と な る 事 柄 の 記 述 は 含 ま れ て い な い 。 た と え ぽ 劉 尹 が 気 負 っ て や っ て き た 張 憑 に 対 し て ど の よ う に 応 接

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し た の か 、 ﹁ 洗 二 濯 料 事 二 ﹂ 、 唯 通 二 寒 暑 こ ⇔ を 省 い て も 、 晋 書 に 、 處 二 之 下 坐 ↓ 神 意 不 レ 接 . L と あ る 限 り で . そ れ が は な は だ 疎 略 な も の で あ っ た こ と を 窺 わ せ る に 足 る 。 同 様 に 、 劉 尹 に 認 め ら れ 一 日 中 語 り 合 っ て そ の 晩 泊 っ た 後 で 船 に 帰 っ た 張 憑 と 同 侶 と の や り と り 、 す な わ ち ﹁ 同 侶 ≫n 1a ≪ ti何 處 宿 鱒 張 笑 而 不 答 ﹂ 四 も 、 ま た さ ら に 、 帰 船 後 間 も な く 劉 尹 が 使 い を 遣 っ て 張 憑 を さ が し 求 め さ せ た こ と に 対 す る ﹁ 同 侶 椀 愕 ﹂ ㊨ と い う 記 述 も 、 い ず れ も 省 略 に よ っ て 話 の 展 開 に 支 障 を き た す も の で は な い 。 一 方 、 縮 約 さ れ て い る 箇 所 は 全 体 の 構 成 に か か わ る そ の 度 合 が 大 き く 、 話 の 展 開 に 欠 か せ な い 記 述 を 含 む 。 一 日 中 語 り あ っ た 挙 句 そ の ま ま 泊 ら せ た と い う と こ ろ か ら 、 船 に 戻 っ た と い う と こ ろ ま で 、 こ の 間 を 全 て 省 く こ と は 不 自 然 さ を 逸 れ な い 。 世 説 で は 、 張 憑 が 明 け が た 帰 る と こ ろ で 劉 尹 が 撫 軍 の 許 に 連 れ て い っ て や ろ う と 約 束 す る そ の 言 葉 を 含 め た 委 細 な 記 述 ⇔ が そ の 間 に 展 開 す る が 、 晋 書 は 、 そ れ を 僅 か に ﹁ 至 レ 旦 遣 レ 之 ﹂ と 記 す に 過 ぎ な い 。 ま た い よ い よ 撫 軍 の 許 に 至 る く だ り か ら 語 り 合 う ま で 、 こ の 間 の 撫 軍 に 張 憑 を 推 す 劉 尹 の 言 葉 を 含 め 推 薦 す る 過 程 を 委 細 に 伝 え る 世 説 の 記 述 ㊧ を 、 晋 書 は ﹁ 逐 言 二 之 於 簡 文 帝 一﹂ の 一 句 に 、 あ る い は 張 憑 と 語 り 合 っ た 撫 軍 が 感 嘆 す る 記 述 で は 、 世 説 の ﹁ 咨 嗟 稱 レ 善 ﹂ ㈹ を ﹁ 歎 ﹂ の 一 語 に と 、 そ れ ぞ れ 縮 約 が 大 幅 に 施 さ れ て い る 。 同 じ よ う に こ れ ら も 、 話 の 基 本 的 な 構 成 を 維 持 す る た め に は 不 可 欠 な 、 と は い え 必 要 最 小 限 の 記 述 だ っ た に 違 い な い 。 と こ ろ で 、 右 の よ う に 世 説 の 所 伝 を 基 に そ の 一 部 を 省 略 ・ 縮 約 と い う よ う に 手 を 加 え て 成 り 立 つ 晋 書 の 所 伝 は 、 内 容 の 上 で 世 説 と 大 差 な い 。 手 を 加 え て も 、 そ れ が 所 伝 の 基 幹 部 分 で は な く 、 ま た 世 説 所 伝 の 基 本 に 添 う 限 り 、 内 容 上 大 差 な く て む し ろ 当 然 な の で あ る が 、 張 憑 の 伝 記 が 晋 書 の 記 述 で 十 分 了 解 で き る と い う 点 で は 、 世 説 の 記 述 は い か に も く ど い 。 世 説 の 特 徴 は 、 そ う し た 記 述 の く ど さ 、 よ く 言 え ば 委 細 さ に 求 め ら れ る 。 そ れ が 何 に も と つ く の 世 説 新 語 の 手 法 四 七

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 四 八 か 、 委 細 な 記 述 を め ざ す そ の 意 図 が 改 め て 問 わ れ な け れ ば な ら な い 。 世 説 で は 冒 頭 に ﹁ 擧 二 孝 廉 嚇 出 レ 都 ﹂ と あ る が 、 晋 書 は そ の ﹁ 出 レ 都 ﹂ e を 省 く 。 九 品 官 人 法 に よ れ ば 、 孝 廉 に 挙 げ ら れ た 後 に 中 央 で 試 験 を 受 け る の が 魏 晋 以 降 の 通 制 で あ っ た と い う ( 宮 崎 市 定 著 ﹃ 九 品 官 人 法 の 研 究 ﹄ 六 三 頁 ) 。 し か も 張 憑 は ﹁ 謂 三 必 參 二 時 彦 こ と い う 志 を 抱 い て い た と あ る の だ か ら 、 ﹁ 出 レ 都 ﹂ と 記 述 す る ま で も な く 、 以 下 の 話 の 舞 台 が 都 で あ る こ と は 容 易 に 了 解 で き た は ず で あ る 。 そ れ を 、 世 説 は 敢 え て 表 わ す 。 そ う し た 点 に も そ れ と 知 ら れ る で あ ろ う が 、 世 説 の 記 述 は 、 所 伝 を そ の 事 跡 ( 結 果 ) を 主 に し て 描 い た も の で は な く 、 そ こ に 登 場 す る 人 物 の 行 為 や そ の 背 景 な ど を 話 の 展 開 の 中 に 刻 明 に 写 し 出 そ う と い っ た 強 い 意 欲 を み せ る 。 繰 り か え し 挙 例 す れ ば 、 世 説 ー 師 同 載 詣 二 撫 軍 鱒 至 レ 門 、 劉 前 進 謂 二 撫 軍 一 日 、 下 官 今 日 爲 レ 公 得 二 一 太 常 博 士 妙 選 殉 既 前 、 撫 軍 與 レ 之 話 言 、 晋 書 i 便 召 與 同 載 、 途 Q11II it 之 於 簡 文 帝 ↓ 帝 召 與 語 、 事 柄 と し て は 、 晋 書 の 記 述 に あ る 通 り の 、 共 に 簡 文 帝 の 許 に 行 き 話 を 交 す と い う に 過 ぎ な い こ と で も 、 世 説 で は 、 そ の 事 の 次 第 を 、 か り に 動 詞 だ け を 並 べ て も ﹁ 載 ・ 詣 ・ 至 ・ 進 ・ 謂 ・ 日 ・ 前 ・ 話 言 ﹂ と い う よ う に 多 用 し て 描 く 。 動 詞 の 多 用 自 体 は 行 為 を 一 つ 一 つ 丁 寧 に 追 い な が ら 描 き 出 そ う と し た そ の 結 果 に 外 な ら な い が 、 そ れ に 象 徴 さ れ て い る よ う に 、 世 説 の 記 述 上 の 特 徴 は 、 現 実 に 事 態 が 展 開 し て ゆ く そ の 一 つ 一 つ に そ く し て 表 わ そ う と し て い る 点 が   ま ず 挙 げ ら れ る 。 い わ ぽ 展 開 す る 事 態 の 細 部 に 至 る ま で 記 述 の 中 に 取 り こ も う と す る そ の 手 法 は 、 事 態 そ れ 自 体 ば か り で な く 、 事 態 間 の 相 互 の 関 係 も ま た 明 ら か に 示 す 。 世 説 ・ 晋 書 と も に 劉 尹 に 取 り あ っ て も ら え な い で い た と い う 張 憑 の い さ さ か 当 惑 ぎ み な 状 態 を 庶 ば 伺 じ く ﹁ 欲 二 自 發 一無 レ 端 ﹂ と 記 す が 、 そ れ と 、 以 下 の 事 態 と の 闘 を 繋 ぐ 記 述 に お い て 、

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世 説 ー 頃 レ 之 、 長 史 諸 賢 來 清 言 。 晋 書 ー 會 、 王 濛 就 レ 怪 漬 言 。 た ま た ま ﹁ し ば 刻 ず る と 長 史 諸 賢 が や っ て 来 て 清 言 し た ﹂ と い う 世 説 の 記 述 は 、 そ れ が 晋 書 に ﹁ 會 ﹂ と 表 わ さ れ て い る よ う な 偶 発 の 事 態 な の か 、 あ る い は 約 束 事 な の か 、 ま た 習 慣 な の か い ず れ と も 不 明 と い う 外 な い が 、 と も か く も 、 前 文 か ら 後 文 へ と 事 態 が 展 開 す る そ の 前 後 の 関 係 を 現 実 の 事 態 の 展 開 に そ く し て 明 示 し た も の で あ る こ と は 疑 う 余 地 が な い 。 ﹁ 會 ﹂ で は 、 そ う し た 事 態 間 の 関 係 、 す な わ ち 前 後 の 時 間 的 な 推 移 は 辿 り が た い 。 類 例 を 挙 げ る と 、 世 説 → ← 皿 呈 日 共 笑 レ 之 。 張 途 詣 、 → ← 共 笑 レ 之 。 既 至 、 客 主 有 二 不 レ 通 處 ↓ 張 乃 遙 於 二 末 坐 一剣 レ 之 。 → ← 有 レ 所 レ 不 レ 通 。 憑 於 二 末 坐 一剣 レ 之 。 清 言 彌 レ 日 、 因 留 宿 。 → ← 清 言 彌 レ 日 、 留 宿 。 右 の 傍 線 を 付 し た 語 は い ず れ も そ れ で あ っ て 、 関 係 明 示 は 世 説 の 記 述 の 特 徴 的 な 手 法 と い う べ き で あ ろ う 。 こ う し て 晋 書 の 記 述 と 比 較 し た 場 合 に 、 世 説 は 、 現 実 に 展 開 す る 事 態 に そ く し て 委 細 に 記 述 し て い る 点 と 、 さ ら に は 事 態 相 互 の 関 係 に つ い て も 明 示 的 に 記 述 し て い る 点 と 、 こ の 二 点 が 記 述 上 の 特 徴 と な る 。 特 徴 が あ ら わ な 例 は 枚 挙 に い と ま な い 。 ○ 郡 司 空 在 二 北 府 ↓ 桓 宣 武 惡 三 其 居 一一兵 權 司 郡 於 二 事 機 一素 暗 、 遣 レ 牋 詣 レ 桓 、 方 欲 下 共 奬 二 王 室 一脩 申 復 園 陵 加 世 子 嘉 賓 出 行 、 於 二 道 上 一聞 二 信 至 { 急 取 レ 牋 、 靦 竟 、 寸 寸 毀 裂 。 便 廻 還 更 作 レ 牋 、 自 陳 、 老 病 不 レ 堪 二 人 聞 ↓ 欲 下 乞 二 閑 地 一自 養 ⑳ 宣 武 得 レ 牋 大 喜 、 印 詔 轉 二 公 督 五 郡 會 稽 太 守 司 ( 世 説 ・ 捷 悟 第 十 一 ・ 6 ) 世 説 新 語 の 手 法 四 九

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 五 〇   ○ 時 倍 在 二 北 府 ↓ ∼ ( 桓 温 ) 深 不 レ 欲 二 倍 居 7 之 。 而 倍 暗 二 於 事 機 嚇 遣 レ 牋 詣 レ 温 、 欲 下 共 奬 二 王 室 一 修 中 復 園 陵 加 超 取 覗 、 寸 寸 毀 裂 。 乃 更 作 レ 牋 、 自 陳 、 老 病 甚 不 レ 堪 二 人 間 ↓ 乞 ご 閑 地 一自 養 。 温 得 レ 牋 大 喜 、 部 轉 レ 倍 爲 二 會 稽 太 守 ↓ ( 晋 書 ・ 列 伝 第 三 十 七 ・ 郡 超 ) 郡 司 空 ( 郡 倍 ) が 北 府 ( 軍 府 ) に あ っ て 兵 権 を 握 っ て い る こ と を 快 く 思 わ な い 桓 宣 武 ( 桓 温 ) に 対 し て 、 事 機 に う と い 郡 は 、 共 に 帝 室 の 失 地 回 復 を 図 ろ う と 認 め た 書 簡 を 送 る 。 こ れ 以 下 の 、 長 子 郡 嘉 賓 ( 郡 超 ) が 気 転 を 利 か せ て そ の 書 簡 を 途 中 で 破 り 捨 て 、 老 を 理 由 に 閑 職 を 乞 う と い う 全 く 別 の 内 容 の も の に 作 り か え て し ま う と い う 一 節 に お い て 、 世 説 の 記 述 は 、 世 子 嘉 賓 出 行 、 於 二 道 上 一聞 二 信 至 ↓ 急 取 レ 牋 、 観 竟 、 寸 寸 毀 裂 、 便 廻 還 更 作 レ 牋 、 郡 嘉 賓 の 行 動 を 委 細 に 追 う 。 そ の 全 体 は 、 晋 書 で ﹁ 超 取 靦 、 寸 寸 毀 裂 、 乃 更 作 レ 牋 ﹂ と い う だ け の 頗 る 簡 略 化 さ れ た 記 述 に か え ら れ る 。 記 述 を 事 柄 の 基 本 的 な 筋 だ け を 伝 え る こ と に 限 定 す れ ば 、 晋 書 が そ れ を 削 っ て い る よ う に 、 傍 線 を 付 し た 記 述 は 不 要 と い う 外 な い 。 そ う し た 点 か ら も 、 世 説 の 記 述 が 現 実 の 事 態 の 展 開 に そ く し て 、 そ こ に 継 起 的 に 生 起 す る 行 為 や そ の 背 景 を 刻 明 に 描 き 出 そ う と し て い る こ と は 疑 い な い 。 一 方 ま た 関 係 記 述 で も 、 晋 書 の ﹁ 超 取 覗 、 寸 寸 毀 裂 ﹂ に 引 き く ら べ る ま で も な く 、 世 説 が そ の 明 示 に 意 を 用 い て い た こ と は 、 た と え ば ﹁ 急 取 レ 牋 、 覗 竟 、 寸 寸 毀 裂 ﹂ に 徴 し て 明 ら か で あ ろ う 。 記 述 上 の そ う し た 特 徴 は 、 次 の 例 に お い て も 同 様 に 窺 う こ と が で き る 。 ○ 王 罕 子 出 爲 二 荊 州 司 王 太 尉 及 時 賢 途 者 傾 レ 路 。 時 庭 中 有 二 大 樹 ハ 上 有 二 鵲 集 弔 夲 子 睨 ご 衣 巾 宀 徑 上 レ 樹 取 一一鵲 子 ↓ 涼 衣

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拘 二 関 樹 枝 ↓ 便 復 睨 去 。 得 二 鵲 子 一 還 下 弄 、 神 色 自 若 、 傍 若 レ 無 レ 人 。 ( 世 説 ・ 簡 傲 第 二 十 四 ・ 6 ) ○ 澄 將 二 之 鎭 減 迭 者 傾 レ 朝 。 澄 見 二 樹 上 鵲 集 ( 便 蛻 レ 衣 上 レ 樹 、 探 レ 鷲 而 弄 、 祚 氣 蕭 然 、 傍 若 レ 無 レ 人 。 ( 晋 書 ・ 列 伝 第 十 三 ・ 王 澄 ) 王 平 子 ( 王 澄 ) が 荊 州 の 刺 史 と な っ て 赴 任 す る に あ た り 、 当 代 の 名 士 た ち が 大 勢 見 送 る さ な か に な さ れ た 彼 の 奔 放 ノ な ふ る ま い を 伝 え る く だ り で あ る が 、 晋 書 の 記 述 が ﹁ 樹 上 鵲 集 ﹂ と 単 な る 語 的 な 結 合 と し て 表 わ す と こ ろ を 、 た と え そ の よ う に 現 象 上 は 一 つ の 事 物 と し て 捉 え ら れ る も の で あ る に せ よ 、 世 説 で は 、 庭 に 樹 が あ っ て そ の 上 に 鵲 巣 が あ る ﹁ 庭 中 有 二 大 樹 納 上 有 二 鵲 集 こ と い う よ う に 、 樹 や 鵲 巣 が 現 実 に 在 る そ の そ れ ぞ れ の 在 り 方 に そ く し て 記 述 し ひ な て い る 。 あ る い は ま た 、 鵲 の ひ な を 得 て 弄 ぶ と い う 一 節 に し て も 、 晋 書 の ﹁ 探 レ 鶩 而 弄 レ 之 ﹂ に 対 し て 、 世 説 の 記 述 の ぼ は 、 そ れ が ﹁ 得 二 鵲 子 ↓ 還 下 弄 ﹂ と あ り 、 ひ な を 得 て 上 っ た 樹 か ら 還 り 下 り て 弄 ぶ と い う よ う に 、 現 実 に 展 開 す る そ の 一 つ 一 つ の 事 態 ( 行 為 ) を 記 述 に 取 り こ む と い っ た 特 徴 を み せ る 。 さ ら に 事 態 問 の 関 係 記 述 で も 、 ﹁ 卆 子 腕 二 衣 巾 納 徑 上 レ 樹 ﹂ と あ る が 、 服 や 頭 巾 を 脱 ぐ こ と 自 体 が 樹 の ぼ り の た め で あ り 、 脱 い で す ぐ ( 徑 ) の ぼ る こ と は 表 わ す ま で も な い 。 そ う し た 自 ら 推 測 さ れ て 然 る べ き こ と 、 つ ま り は 現 実 に 事 態 二 つ が 関 連 し な が ら 展 開 す る そ の 関 係 を 記 述 の 上 で 明 示 し て い る の で あ る 。 晋 書 は 、 そ れ を ﹁ 肬 レ 衣 上 レ 樹 ﹂ と 記 述 す る に 過 ぎ な い 。 こ れ と 同 様 の 例 に 、 世 説 の ﹁   く 迭 者 傾 レ 路 。 時 庭 中 有 二 大 樹 鱒 ∼ ﹂ と 対 応 す る 晋 書 の ﹁ 迭 者 傾 レ 路 。 澄 見 二 樹 上 鵲 集 ご と が あ り 、 晋 書 の 記 述 に は 、 世 説 に 特 徴 的 な 関 係 を 明 示 す る ﹁ 時 ﹂ が な い 。 ○ 王 藍 田 性 急 。 嘗 食 二 難 子 軸 以 レ 筋 刺 レ 之 、 不 レ 得 。 便 大 怒 、 擧 以 擲 レ 地 。 難 子 於 レ 地 圖 轉 未 レ 止 。 仍 下 レ 地 、 以 二 屐 齒 一 膿 レ 之 、 又 不 レ 得 。 瞋 甚 、 復 於 レ 地 取 内 二 口 中 ↓ 齧 破 部 吐 レ 之 。 ( 世 説 ・ 忿 狷 第 三 十 一 ・ 2 ) 世 説 新 語 の 手 法 ・ 五 一

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 五 二 〇 但 性 急 爲 レ 累 。 嘗 食 二 難 子 ↓ 以 レ 筋 刺 レ 之 、 不 レ 得 。 便 大 怒 、 擲 レ 地 。 難 子 圓 轉 不 レ 止 。 便 下 レ 牀 、 以 二 屐 齒 一踏 レ 之 、 夊 不 レ 得 。 瞑 甚 、 綴 内 二 口 中 ↓ 齧 破 而 吐 レ 之 。 ( 晋 書 ・ 列 伝 第 四 十 五 . 王 述 ) 右 は 、 た い へ ん な 癇 癖 も ち だ っ た と い う 王 藍 田 ( 王 述 ) に ま つ わ る 笑 話 め い た 一 段 で 、 彼 が 鶏 卵 を 食 べ よ う と し て 箸 で 刺 し た が う ま く 刺 せ ず 、 大 い に 腹 を た て た と こ ろ ま で は 、 世 説 ・ 晋 書 と も に 記 述 の 一 致 を み る 。 こ れ 以 降 、 世 説 の 記 述 は 特 徴 的 で あ る 。 ま ず 腹 を た て て 卵 を な げ る く だ り で 、 晋 書 が ﹁ 便 大 怒 、 擲 レ 地 ﹂ と 記 述 す る そ の 限 り で 十 分 了 解 可 能 で あ る は ず の と こ ろ を 、 世 説 で は 、 な げ る 前 に そ れ が 自 ら 前 提 と な る 卵 を と り あ げ る ﹁ 便 大 怒 、 擧 以 擲 レ 地 ﹂ と い う 行 為 を 表 わ す 。 ま た な げ た 卵 が こ ろ が っ て 止 ま ら な い と い う 一 節 に お い て も 、 晋 書 の ﹁ 難 子 圓 轉 不 レ 止 。 ﹂ に 対 し て 、 ﹁ 難 子 於 レ 地 圓 轉 未 レ 止 。 ﹂ と い う よ う に 、 世 説 で は そ れ が 起 こ る 場 所 も 明 示 す る 。 こ の 一 文 の 直 前 に ﹁ 擲 レ 地 ﹂ と 記 す 以 上 、 卵 が 地 上 を こ ろ が る の は い わ ず も が な の こ と で あ り 、 ﹁ 於 レ 地 ﹂ は 省 き 得 な い 語 で は 勿 論 な い 。 同 様 に 、 こ ろ が る 卵 を 驥 の 歯 で 躑 も う と し て 失 敗 、 激 怒 し た 後 に 続 く 世 説 の ﹁ 復 於 レ 地 取 、 内 二 口 中 ↓ 齧 破 、 部 吐 之 。 ﹂ と い う 記 述 に つ い て も 、 晋 書 の ﹁ 綴 内 二 口 中 ↓ 齧 破 而 吐 之 ﹂ と だ け 表 わ す そ の 記 述 に 、 世 説 の ﹁ 復 於 レ 地 取 ﹂ は 前 提 と な っ て い る は ず で あ っ て 、 そ れ を 省 略 し て も 、 叙 述 の 展 開 上 な ん ら 支 障 は な い 。 と は い え 、 省 略 す れ ば 、 そ れ だ け 、 記 述 は 具 体 的 な 描 写 か ら 遠 ざ か る 。 い き お い 文 脈 か ら の 推 測 に ゆ だ ね ら れ る 程 度 は 増 す こ と に な ろ う 。 そ の 逆 、 つ ま り 繁 を い と わ ず 現 実 の 事 態 の 展 開 に そ く し て で き る だ け 刻 明 に 記 述 す る こ と 、 こ れ こ そ 世 説 が 記 述 上 め ざ し た こ と に 外 な ら な い 。 事 態 間 の 関 係 記 述 で も 、 世 説 → ← 晋 書 瞋 甚 、 衡 於 レ 地 取 内 一一 口 中 嚇 → ← 瞋 甚 、 撮 内 一一 口 中 {

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齧 破 、 師 吐 レ 之 。 → ← 齧 破 、 而 吐 レ 之 。 屐 の 歯 で 碾 も う と し て ﹁ 仍 下 レ 地 ﹂ と い う 前 の 事 態 を ふ ま え て の ﹁ 復 ,於 レ 地 ﹂ で あ り 、 一 方 、 卵 を 口 中 に 入 れ て か み つ ぶ し 、 そ れ を 即 座 に ペ ッ と 吐 き 出 し た そ の 関 係 を 表 わ し た の が ﹁ 劃 吐 レ 之 ﹂ で あ っ た ろ う 。 世 説 の そ の 記 述 は 、 か く 明 示 的 な の で あ る 。 ○ 劉 瑛 兄 弟 、 少 時 爲 二 王 榿 所 ワ 憎 。 嘗 召 三 一 人 一 宿 、 欲 二 默 除 7 之 、 令 レ 作 レ 坑 。 坑 畢 、 垂 レ 加 レ 害 矣 。 石 崇 素 與 一一瑛 ・ 現 一 善 。 聞 二 就 レ 憬 宿 ↓ 知 レ 當 レ 有 レ 變 、 便 夜 往 詣 レ 憧 、 問 三 一劉 所 在 鱒 憬 卒 逍 不 レ 得 レ 諱 、 答 云 、 在 ご 後 齋 中 一 眠 。 石 便 徑 入 、 自 牽 出 、 同 レ 車 而 去 。 語 日 、 少 年 何 以 輕 就 レ 人 宿 。 ( 世 説 ・ 仇 陳 第 三 十 六 ・ 2 ) ○ 劉 輿 兄 弟 、 少 時 爲 二 王 榿 所 7 嫉 。 榿 召 レ 之 宿 、 因 欲 レ 坑 レ 之 。 崇 素 與 二 輿 等 一善 。 聞 レ當 レ 有 レ變 、 夜 馳 詣 レ 榿 、 問 三 一 劉 所 在 輔 愃 逍 卒 不 レ 得 レ 隱 。 崇 徑 進 二 於 後 齋 一索 出 、 同 レ 車 而 去 。 語 日 、 年 少 何 以 輕 就 レ 人 宿 。 輿 深 徳 レ 之 。 ( 晋 書 ・ 列 伝 第 三 ・ 石 崇 ) 右 は 、 劉 瑛 . 劉 現 の 兄 弟 が 若 い こ ろ 王 憧 に 憎 ま れ 、 彼 に よ っ て 危 う く 穴 埋 め に さ れ か か り 、 す ん で の と こ ろ で 石 崇 に 助 け 出 さ れ た と い う の が 大 筋 で あ る 。 世 説 ・ 晋 書 と も そ の 大 筋 に お い て 一 致 す る も の の 、 か ん じ ん の 穴 埋 め に 関 し て 、 ﹁ 因 欲 レ 坑 レ 之 ﹂ と い う だ け の 晋 書 の 記 述 で は 詳 細 は 知 り 得 な い 。 世 説 は 、 そ の 逐 一 を ﹁ 闇 に ほ う む ろ う と し て 坑 を 作 ら せ 、 そ れ が で き あ が っ て 、 い よ い よ 殺 害 し よ う と し た 。 ﹂ と い う よ う に 、 こ こ で も 現 実 に 事 態 が 展 開 す る そ の 一 つ 一 つ に そ く し て 記 述 し て い る 。 こ の 後 の 記 述 で も 、 聞 二 就 レ 憧 宿 噴 知 レ 當 レ 有 レ 變 、 便 夜 往 詣 レ 愃 。 ( 世 説 )

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聞 レ 當 レ 有 レ 變 、 夜 馳 詣 レ 榿 。 ( 晋 書 ) 世 説 新 語 の 手 法 五 三

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 五 四 世 説 は 、 ま ず ﹁ 愃 の と こ ろ で 泊 っ た と 聞 き ﹂ そ れ か ら ﹁ 異 変 が き っ と お こ る で あ ろ う こ と を 知 り ﹂ と 続 け る と い う よ う に 、 知 覚 か ら 判 断 へ と い う 精 神 的 な 営 為 を 順 に 表 わ す 。 さ ら に は 、 答 日 、 在 一一後 齋 中 一 眠 。 石 便 徑 入 、 自 牽 出 、 ( 世 説 )

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崇 徑 進 二 於 後 齋 ↓ 索 出 、 ( 晋 書 ) 晋 書 が た だ ち に 書 斎 に 飛 び こ ん で 救 出 し た と だ け 記 す そ の 事 の 次 第 を 、 世 説 は 、 榿 の 苦 し ま ぎ れ の 言 い の が れ の 言 葉 を ま じ え て 、 救 出 と い う 事 態 の 展 開 に そ く し て 刻 明 に 記 述 し て い る の で あ る 。 1 右 に 縷 述 し た 通 り 、 世 説 の 記 述 は 、 事 態 の 展 開 を 現 実 に そ く し て 逐 一 描 き 出 す と い っ た 特 徴 を も つ 。 現 実 に そ く し た 記 述 と は い え 、 そ れ は 、 実 際 に 起 っ た 歴 史 的 事 実 の 忠 実 な 記 録 を め ざ し た も の で は 勿 論 な い 。 現 実 に 起 っ た 事 実 を そ の ま ま 記 録 す る こ と と 、 事 態 の 展 開 を 現 実 に そ く し て 記 述 す る こ と と は 自 ら 別 で あ る 。 世 説 を 読 む 者 は 、 恐 ら く 誰 し も 所 伝 が 、 し か も そ の 多 く が 歴 史 的 事 実 か ら 遠 い と い っ た 印 象 を 受 け る の で は な い か 。 所 伝 の 信 憑 性 は 、 世 説 の 成 立 後 間 も な い 頃 す で に 疑 わ れ て い る の で あ る 。 劉 義 慶 ( 四 〇 三 -四 四 四 ) が 世 説 を 編 述 し て 間 も な く 、 南 朝 梁 の 劉 孝 標 ( 四 六 ニ ー 五 二 一 ) が 世 説 本 文 に 関 連 す る 所 伝 を 博 く さ ま ざ ま な 書 か ら 抜 粋 し 、 注 と し て 本 文 に 付 記 ( そ の な か に は 、 た と え ぽ 排 調 第 二 十 五 の 7 に 付 記 し た よ う な 本 文 に 数 倍 す る 長 文 の も の も あ る ) し て 、 し か も 相 当 数 の 本 文 に つ い て 、 そ れ と 関 連 所 伝 と の 事 実 関 係 に ま で 言 及 し て い る が 、 そ の 言 及 は 、 世 説 の 誤 謬 を あ げ つ ら う も の が 殆 ど を 占 め る 。

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斯 説 謬 矣 ( 言 語 第 二 ・ 1 ) 獪 疑 斯 文 爲 レ 謬 也 ( 文 学 第 四 ・ 57 ) 世 説 虚 也 ( 雅 量 第 六 ・ 40 ) 世 読 所 レ 言 謬 矣 ( 識 鑒 第 七 ・ 1 ) 世 読 謬 設 二 斯 語 一 也 ( 賞 誉 第 八 ・ 螂 ) 世 説 此 言 妄 矣 ( 品 藻 九 ・ 19 ) 世 読 此 言 迂 謬 已 甚 ( 規 箴 十 ・ 21 ) ⋮ ⋮ 右 に 掲 出 し た 一 部 の 例 か ら も 知 ら れ る で あ ろ う が 、 世 説 の 所 伝 は 事 実 と ほ と ん ど 無 縁 で あ る か の よ う で あ る 。 た と え ぽ ﹁ 諸 書 無 レ 聞 、 唯 見 二 世 説 ↓ 自 未 レ 可 レ 信 ﹂ ( 惑 溺 第 三 十 五 ・ 5 ) に 至 っ て は 、 世 説 に 独 自 と い う だ け で 信 じ ら れ て い な い の で あ っ て 、 こ れ が 端 的 に 示 す よ う に 、 世 説 の 所 伝 は 信 憑 性 を 欠 く 。 と は い え 、 そ れ は む し ろ 当 然 で も あ ろ う 。 世 説 は 本 来 的 に 事 実 の 記 録 を め ざ し た も の で は な い 。 隋 書 の 経 籍 志 が 世 説 を ﹁ 小 説 し に 分 類 し 、 そ の 説 明 に あ て た ﹁ 街 説 巷 語 之 読 也 ﹂ と い う こ と こ そ が 世 説 の 性 格 を 端 的 に 物 語 る 。 も っ と も 、 劉 注 の 指 摘 や 史 書 の 扱 い に 徴 す る ま で も な く 、 世 説 の 内 容 自 体 が 、 そ の 所 伝 が ﹁ 街 読 巷 語 之 論 ﹂ で あ る こ と を 窺 わ せ る 。 そ の 徴 証 の 一 つ に 、 た と え ば 、 郡 公 は 、 永 嘉 の 喪 乱 に あ い 、 郷 里 で ひ ど く 飢 え に 苦 し ん だ 。 郷 人 は 、 郡 公 が 名 声 徳 望 の あ る 人 だ っ た の で 、 そ の 苦 し み を 伝 え 、 み な で 養 っ た 。 郡 公 は 、 あ る 時 、 兄 の 子 の 邁 と 甥 の 周 翼 と の 二 人 の 子 供 を 連 れ て 食 べ に 行 っ た 。 郷 人 は い っ た 、 ﹁ 私 達 も そ れ ぞ れ に 飢 え 苦 し ん で い ま す 。 あ な た が 賢 者 な の で 、 み な で あ な た を 救 お う と し た ま で で す 。 と て も 一 緒 に 救 う 余 裕 は な い で し ょ う ﹂ と 。 郡 公 は そ こ で 独 り で 出 か け て 食 べ 、 そ う し て 飯 を 両 頬 の あ た り に ほ お ば っ て 帰 り 、 そ れ を 吐 き 出 し て 二 人 の 子 供 に 食 べ さ せ た 。 そ の 後 、 み な 生 き な が ら え て 江 南 に 渡 っ た 。 ( 世 説 ・ 徳 行 第 一 ・ 24 ) 右 は ﹁ 郷 人 ﹂ の 例 で あ る が 、 こ れ と 同 様 に 、 世 説 の 所 伝 が さ ま ざ ま な 階 層 の そ れ こ そ 雑 多 な 人 々 の 言 動 を 積 極 的 に 世 説 新 語 の 手 法 五 五

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 五 六 取 り こ ん で い る こ と を 挙 げ る こ と が で き る 。 あ る い は ま た 、 世 人 の 評 判 に 強 い 関 心 を 寄 せ て い る こ と に も そ れ は 知 ら れ る で あ ろ う 。 世 以 レ 此 定 二 華 王 之 優 劣 司 ( 徳 行 第 一 ・ 13 ) 當 時 以 爲 二 美 事 一ゆ ( 同 ・ 22 ) 時 論 以 レ 此 多 レ 之 。 ( 同 ・ 41 ) 時 人 謂 爲 二 試 守 孝 子 輔 ( 同 ・ 42 ) 時 人 以 爲 二 純 孝 之 報 一也 。 ( 同 ・ 45 ) 于 レ 時 以 爲 二 名 言 輔 ( 言 語 第 二 ・ 41 ) 時 賢 以 爲 二 徳 音 司 ( 同 ・ 47 ) 時 人 以 爲 レ 能 。 ( 同 ・ 60 ) 時 人 善 レ 之 。 ( 同 ・ 鵬 ) 諸 人 以 爲 レ 佳 。 ( 政 事 第 三 ・ 18 ) 一 時 絶 歎 、 以 爲 二 名 通 輔 ( 文 学 第 四 ・ 46 ) ⋮ ⋮ こ う し た 世 評 を 所 伝 の 末 尾 に 付 し て い る の は 、 言 う ま で も な く そ の 所 伝 が 世 評 を と も な っ て 巷 間 に 伝 え ら れ て い た か ら に 外 な ら な い 。 世 説 は 、 そ う し た 所 伝 を 収 載 す る こ と に は な は だ 意 欲 的 で あ っ た 。 恐 ら く 世 評 を と も な わ な い 所 伝 も 、 そ の 多 く は 、 世 人 の 興 味 を 惹 く 話 と し て 、 書 伝 あ る い は 口 伝 そ の 他 に よ っ て 広 く 巷 間 に 伝 え ら れ て い た も の で あ っ た ろ う 。 世 説 と い う 書 名 は 、 そ の 自 ら の 性 格 を 言 い 表 わ し た も の で あ っ た に 違 い な い 。 前 述 し た 世 説 の 記 述 上 の 特 徴 、 す な わ ち 事 態 の 展 開 を 現 実 に そ く し て 一 つ 一 つ 記 述 す る と い う こ と も 、 世 人 が 関 心 を 寄 せ る 話 を 興 味 深 く 語 ろ う と す る そ の 意 欲 の 自 ら に 然 ら し む る と こ ろ で あ っ た ろ う 。 一 例 を あ げ れ ば 、 う そ ぶ 阮 歩 兵 の 嘯 く 声 は 数 百 歩 の 遠 く ま で 聞 こ え た 。 蘇 門 山 の 中 に 忽 然 と 仙 人 ( 眞 人 ) が 現 わ れ 、 き こ り た ち は 皆 そ の こ と を 言 い 伝 え た 。 阮 籍 が 行 っ て み る と 、 そ の 人 が 巌 の そ ば に 膝 を か か え て い る の が 見 え た 。 籍 は 嶺 に 登 っ て 近 づ き 、 足 を な げ 出 し て 対 坐 し た 。 籍 が 太 古 か ら の 事 蹟 を 論 じ 、 上 は 黄 帝 神 農 の 玄 妙 虚 静 な 道 を の べ 、 下 は 夏 殷 周 三 代 の 盛 徳 の 美 を 思 い は か っ て 訊 ね た が 、 仙 人 は キ ッ と し て 坐 っ た ま ま 答 え な い 。 か さ ね て 人 為 を 超 越 し た 世 界 の こ と や 精 神 を し ず め 気 を 導 く 仙 術 に つ い て の べ て 、 相 手 の 様 子 を う か が う と 、 や は り あ い か わ ら ず で 、 じ っ と

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一 点 を 凝 視 し た ま ま ふ り 向 か な い 。 籍 は 、 そ こ で か れ に 向 っ て ひ と し き り 長 嘯 し た と こ ろ 、 や っ と 笑 っ て 言 っ た 、 ﹁ も う 一 度 や る が よ い ﹂ と 。 籍 は ま た 長 嘯 し 、 思 い の た け を つ く し て 山 の 中 腹 あ た り ま で 降 り て く る と 、 上 の 方 で ヒ ュ ー と い う 声 が 聞 こ え 、 幾 組 か の 打 楽 器 や 管 楽 器 の 演 奏 の よ う に 林 や 谷 に 響 き わ た っ た 。 ふ り か え っ て み る と 、 さ っ き の 人 が 嘯 い て い る の で あ っ た 。 ( 世 説 ・ 棲 逸 第 十 八 ・ 1 ) 右 は 、 阮 籍 に 関 す る 事 実 の 伝 記 的 な 記 録 で は 勿 論 な い 。 い わ ば 阮 籍 に ま つ わ る 一 篇 の 説 話 と し て の 性 格 が 色 濃 い 。 晋 書 の 阮 籍 伝 に も こ の 話 は 伝 、兄 ら れ て い る が 、 そ こ で は 、 世 説 の ﹁ 眞 人 ﹂ は ﹁ 孫 登 ﹂ と 実 名 が 記 さ れ 、 全 体 の 記 述   も 半 分 以 下 に 縮 約 さ れ て い る 。 世 説 の 説 話 風 な 所 伝 を 容 易 に は う け い れ 難 い 恐 ら く そ う し た 事 情 か ら 、 そ の 伝 記 的 ti≫a 録 へ の 変 容 を 、 晋 書 が は か っ た と み る べ き も の の よ う に 思 わ れ る 。 世 人 が 関 心 を 寄 せ る 話 を 興 味 深 く 語 ろ う と す る い わ ぽ 説 話 へ の 意 欲 と も い う べ き 世 説 の 志 向 は 、 そ の 記 述 を 根 本 的 に 規 定 し て い た は ず で あ る 。 事 態 を 現 実 の 展 開 に そ く し て 記 述 す る と い う の は 、 そ の あ ら わ れ で あ ろ う 。 特 徴 的 な そ の あ ら わ れ に 付 随 す る よ り 具 体 的 な あ ら わ れ と し て は 、 助 辞 や 修 飾 語 な ど が 多 用 さ れ て い る 点 が 注 目 さ れ る 。 助 辞 の 多 用 に つ い て は 、 す で に 吉 川 幸 次 郎 氏 に 御 指 摘 が あ り 、 そ れ が ﹁ 清 談 の 言 語 の 無 意 識 な 浸 潤 の 為 の み な ら ず 、 更 に 意 識 的 に 哲 学 を 文 章 に 象 徴 さ せ よ う と い う 動 機 ﹂ 、 さ ら に は ﹁ 一 句 の 字 数 を 四 字 も し く は 六 字 に 統 一 し よ う と い う 文 章 の 形 式 上 の 要 求 ﹂ ( 前 掲 書 四 六 九 頁 ) な ど か ら 起 っ た と 説 か れ る の で あ る が 、 た と え ば 、 世 説 新 語 の 手 法 五 七

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 五 八 有 二 千 里 蓴 羮 嚇 但 未 レ 下 二 鹽 鼓 一耳 。 ( 世 説 ・ 言 語 二 ・ 26 )   千 里 蓴 羮 、 末 下 鹽 鼓 。 ( 晋 書 ・ 王 導 伝 ) 袁 宏 始 作 二 東 征 賦 { 都 不 レ 道 一一陶 公 司 ( 世 説 ・ 文 学 四 ・ 97 )

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宏 賦 又 不 レ 及 二 陶 侃 鱒 ( 晋 書 ・ 文 苑 袁 宏 伝 ) 羅 既 至 、 初 不 レ 問 二 郡 事 ↓ 徑 就 レ 謝 、 數 日 飮 酒 而 還 。 ( 世 説 ∴ 規 箴 十 ・ 19 ) 1 含 至 、 不 レ 問 二 郡 事 ↓ 與 レ 省 累 日 酣 飮 而 還 。 ( 晋 書 ・ 羅 含 伝 ) 右 に 傍 線 を 付 し た 助 辞 な ど は 、 哲 学 と は 無 縁 で あ る し 、 ま た そ れ ら が 三 字 句 な い し 五 字 句 の 中 に 使 わ れ て い る の で 、 四 ・ 六 字 句 へ の 統 一 へ の 要 求 と は 無 関 係 と い わ ざ る を 得 な い 。 も っ と も 、 哲 学 を 文 章 に 象 徴 さ せ る と い う こ と と は 別 に 、 一 句 を 四 字 あ る い は 六 字 に 整 え る 傾 向 は 確 か に 看 取 で き る 。 け れ ど も 、 そ れ は 、 む し ろ 当 時 の 中 国 古 文 一 般 の 通 性 と み る べ き で は な か ろ う か 。 四 字 句 ・ 六 字 句 へ の 志 向 は 、 世 説 以 上 に 晋 書 の 記 述 に お い て 著 し い 。 世 説 に 独 自 な 特 徴 と い う 点 で は 、 助 辞 ば か り で な く 飾 修 語 を 含 め た 多 用 を こ そ 、 な に よ り も ま ず 指 摘 し な け れ ば な ら な い 。 そ れ ら は 説 話 へ の 意 欲 の あ ら わ れ 、 な お い え ば 、 世 人 が 関 心 を 寄 せ る 所 伝 を そ れ こ そ 精 彩 あ ら し め る た め に 世 説 が 凝 ら し た 記 述 上 の 意 匠 に 外 な ら な い 。 今 、 任 意 に 挙 例 す れ ば 次 の 通 り で あ る 。 ( 右 が 世 説 で 左 が 晋 書 の 例 )

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袁 虎 摩 爾 樹 日 、 運 自 有 二 震 興 司 豈 必 諸 人 之 過 。 桓 公 懍 然 作 レ 色 、 顧 謂 二 四 坐 一 日 、 ( 軽 詆 11 )

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袁 宏 日 、 運 有 二 興 廢 嚇 豈 必 諸 人 之 過 。 温 作 レ 色 、 謂 二 四 座 一 日 、 ( 桓 温 伝 ) こ れ ら 所 伝 を 精 彩 あ ら し め る た め の 意 匠 は 、 具 体 的 に は 行 為 ・ 状 態 そ れ 自 体 に 対 す る 、 あ る い は そ れ ら の 時 間 的 な い し 空 間 的 な 限 定 ・ 修 飾 に 外 な ら な い が 、 言 う ま で も な く 、 そ う し た 限 定 ・ 修 飾 は 右 の 語 的 な も の か ら 、 さ ら に 句 的 な も の へ 、 武 子 前 置 二 數 斛 羊 酪 ↓ 指 以 示 レ 陸 日 、 ( 言 語 26 )

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濟 指 二 羊 酪 朔 謂 レ 機 日 、 ( 王 導 伝 ) 崇 硯 訖 以 二 鐵 如 意 一 撃 レ 之 。 ( 汰 侈 8 )

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崇 便 以 二 鐵 如 意 一 撃 レ 之 。 ( 石 崇 伝 ) 世 説 新 語 の 手 法 五 九

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 六 〇 そ し て そ れ ら の 総 合 と し て の 文 単 位 の も の ま で 連 続 的 に さ ま ざ ま な 記 述 に 及 ぶ 。 ○ 庚 太 尉 在 二 武 昌 嚇 秋 夜 氣 佳 景 清 。 佐 吏 殷 浩 ・ 王 胡 之 之 徒 、 登 二 南 樓 一理 詠 。 音 調 始 遒 、 聞 三 函 道 中 有 二 屐 聲 甚 属 ( 定 是 庚 公 俄 而 摩 二 左 右 十 許 人 一歩 來 。 ( 容 止 24 ) ○ 亮 在 二 武 昌 ↓ 諸 佐 吏 殷 浩 之 徒 、 乘 二 秋 夜 一 往 共 登 二 南 樓 輔 俄 而 不 レ 覺 亮 至 。 ( 庚 亮 伝 ) な お 助 辞 に 関 し て 言 え ば 、 右 の 例 の う ち 、 世 説 の ﹁ 定 是 ﹂ は 晋 書 に は な い 。 こ れ を 始 め と し て 、 吉 川 幸 次 郎 氏 が ﹁ 大 体 当 時 の 口 語 の 語 法 が 文 章 に 採 り 入 れ ら れ た も の と 考 え ら れ る ﹂ ﹁ 前 代 に は 全 く そ の 淵 源 を 求 め 難 い 新 し い 助 字 ﹂ ( 前 掲 書 四 六 三 頁 ・ 四 六 二 頁 ) 、 ほ か に た と え ば ﹁ 都 不 ﹂ ﹁ 都 無 ﹂ な ど も 、 説 話 へ の 意 欲 の あ ら わ れ と し て 捉 え る べ き で は あ る ま い か 。 世 説 の 所 伝 が ﹁ 街 説 巷 語 之 説 ﹂ で あ っ て み れ ば 、 巷 間 に 語 ら れ る 語 法 ま で も 世 説 が あ え て 記 述 中 に 取 り い れ て い る の は い わ ば 必 然 で も あ ろ う 。 助 辞 ば か り で な く 、 語 彙 で も 当 時 の 口 語 と 認 め ら れ る 例 が 、 た と え ば 、 由 レ 此 李 氏 在 レ 世 得 二 方 幅 齒 遇 殉 ( 賢 媛 十 九 ・ 18 )

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由 レ 此 李 氏 途 得 レ 爲 二 方 雅 之 族 輔 ( 列 女 周 顕 母 李 氏 伝 ) 右 の ﹁ 方 幅 ﹂ ( 新 釈 漢 文 大 系 ﹃ 世 説 新 語 ﹄ 下 の 当 該 語 釈 に 、 晋 ・ 宋 ご ろ の 方 言 と い う 、 と あ る ) を は じ め 少 な か ら ず 散 見 す る よ う で あ る が 、 こ れ に 関 連 し て 注 目 す べ き は 、 所 伝 中 に 会 話 を 積 極 的 に 組 み 入 れ て い る こ と で あ ろ う 。 太 傅 時 年 七 八 歳 。 箸 二 青 布 縛 一 在 二 兄 膝 邊 一坐 。 諫 日 ﹁ 阿 兄 、 老 翕 可 レ 念 。 何 可 レ 作 レ 此 。 ﹄ 奕 於 レ 是 改 レ 容 日 、 ﹁ 阿 奴 欲 二

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安 時 年 七 八 歳 。 在 一一奕 膝 邊 ↓ 諫 止 之 。 奕 爲 改 レ 容 、 遣 之 。 ( 列 伝 第 四 十 九 ・ 謝 奕 ) 放 去 一 邪 。 ﹄ 途 遣 之 。 ( 徳 行 第 一 ・ 33 )

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王 甚 遽 、 問 レ 謝 日 ﹃ 當 レ 作 二 何 計 ご 謝 神 意 不 レ 變 。 ( 雅 量 第 六 ・ 29 ) 1 坦 之 甚 懼 、 問 二 計 於 安 ↓ 安 瀞 色 不 レ 變 。 ( 列 伝 第 四 十 九 ・ 謝 安 ) 謝 公 日 ﹁ 小 者 最 勝 。 ﹂ 客 日 ﹁ 何 以 知 レ 之 。 ﹂ 謝 公 日 、 ( 品 藻 第 九 ・ 74 ) 1 安 日 、 ﹁ 小 者 佳 。 ﹂ 客 問 二 其 故 司 安 日 、 ( 列 伝 第 五 十 ・ 王 献 之 ) 徑 就 レ 謝 、 數 日 飮 酒 而 還 。 桓 公 問 ﹁ 有 二 何 事 ご 君 章 云 、 ( 規 箴 第 十 ・ 19 )

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與 レ 爾 累 日 酣 飮 而 還 。 温 問 二 所 レ 刻 事 鱒 含 日 、 ( 列 伝 第 六 十 二 ・ 文 苑 ・ 羅 含 ) 便 令 レ 種 レ 竹 。 或 問 ﹁ 暫 住 、 何 煩 爾 。 ﹂ 王 嘯 詠 良 久 、 ( 任 誕 第 二 十 三 ・ 46 )

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便 令 レ 種 レ 竹 。 a1 問 t1 其 故 司 黴 之 但 嘯 詠 、 ( 列 伝 第 五 十 ・ 王 徽 之 ) 右 の よ う に 同 じ 内 容 を 表 わ し て も 、 晋 書 が 地 の 文 で あ る と こ ろ で 、 世 説 は 会 話 を 使 う 。 会 話 の 利 用 は 、 当 時 の 口 語 語 彙 や 語 法 を 取 り こ む の と 同 じ く 、 説 話 へ の 意 欲 が 与 っ て 大 き な 原 動 力 と な っ て い た に 違 い な い 。 晋 書 は 、 こ の 点 で も 事 柄 の 説 明 的 な 文 章 と し て の 性 格 が 色 濃 い 。 対 照 的 に 、 世 説 は 、 説 明 的 で あ る よ り は 、 む し ろ 現 実 の 精 彩 あ る 再 現 を め ざ し て い る 。 そ れ は 、 前 節 で 、 世 説 記 述 の 特 徴 が 事 態 を 現 実 に そ く し て 一 つ 一 つ 展 開 さ せ て い る 点 に 求 め ら れ た そ の こ と と 軌 を 一 に す る 、 い わ ば 世 説 の 基 調 な の で あ る 。 ㈲ ゆ と こ ろ で 、 世 説 の 記 述 と 関 連 が 認 め ら れ る 文 献 類 は 、 晋 書 以 外 に そ う と う な 数 に の ぼ る 。 始 め に 前 置 き し た 通 り 、 世 説 の 記 述 上 の 特 徴 を 主 に 史 書 と の 比 較 に お い て 捉 え る と い っ た 方 法 を 小 稿 が 採 る 関 係 上 、 多 く の 関 連 文 献 の 世 説 新 語 の 手 法 亠企

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 六 二 う ち 、 こ こ で は 史 書 な い し そ れ 相 当 の 書 し か 取 り あ げ な い が 、 そ れ が 史 書 の 性 格 を も つ 限 り 、 比 較 の 対 象 を 拡 げ て も 、 晋 書 の 場 合 と ほ ぼ 同 様 の 指 摘 が 可 能 で あ る 。 ま ず 三 国 志 に つ い て み る 。 左 の 例 は 、 廱 士 元 ( 廱 統 ) が 司 馬 徳 操 ( 司 馬 徽 ) を 訪 ね 彼 と 話 を 交 す と い う 、 世 説 ・ 蜀 書 共 通 の 所 伝 で あ る 。 ○ 南 郡 寵 士 元 、 聞 三 司 馬 徳 操 在 二 穎 川 叫 故 二 千 里 候 レ 之 。 至 、 遇 二 徳 操 采 7 桑 。 士 元 從 二 車 中 一謂 日 ﹁ 吾 聞 、 大 夫 處 世 、 當 二 帶 レ 金 佩 7 紫 。 焉 有 卞 屈 二 洪 流 之 量 嚇 而 執 中 絲 婦 之 事 蜘 ﹂ 徳 操 日 ﹁ 子 且 下 レ 車 。 子 適 知 二 邪 徑 之 速 ↓ 不 レ 慮 一失 道 之 迷 鱒 昔 伯 成 綱 耕 、 不 レ 慕 二 諸 侯 之 榮 鱒 原 憲 桑 樞 、 不 レ 易 レ 有 二 官 之 宅 ↓ 何 有 二 坐 則 華 屋 、 行 則 肥 馬 、 侍 女 數 十 ↓ 然 後 爲 レ 奇 。 此 乃 許 父 所 コ 以 慷 慨 ↓ 夷 齊 所 コ 以 長 歎 弔 雖 レ 有 二 竊 秦 之 爵 、 千 駟 之 富 ↓ 不 レ 足 レ貴 也 。 ﹂ 士 元 日 ﹁ 僕 生 出 二 邊 垂 碗 寡 レ 見 二 大 義 司 若 不 下 一 叩 二 洪 鍾 一 伐 中 雷 鼓 ハ 則 不 レ 識 二 其 音 響 一也 。 ﹂ ( 世 説 ・ 言 語 第 二 ・ 9 ) ○ 穎 川 司 馬 徽 、 清 雅 有 二 知 人 鑒 輔 統 弱 冠 往 見 レ 徽 。 徽 採 レ 桑 於 二 樹 上 輔坐 、 統 在 二 樹 下 司 共 語 自 レ 晝 至 レ 夜 。 徽 甚 異 レ 之 、 稱 二 統 當 7 爲 二 南 州 士 之 冠 覺 ↓ 由 レ是 漸 顯 。 ( 三 国 志 ・ 蜀 書 七 ・ 廱 統 ) 共 通 す る と は い っ て も 、 右 の 通 り 、 廱 士 元 ( 統 ) が 司 馬 徳 操 ( 黴 ) の 語 る 話 に 敬 服 す る と い う 世 説 と 、 逆 に 、 司 馬 が 廱 を す ぐ れ た 者 と 認 め る と い う 蜀 書 と 、 登 場 す る 人 物 の シ テ ・ ワ キ の 関 係 が 二 つ の 所 伝 で 逆 転 し て い る 。 誰 を 主 に 物 語 る か に よ っ て 所 伝 に 異 な り が 生 じ て い る の で あ る が 、 両 所 伝 に 物 語 ら れ る 状 況 や 場 面 、 さ ら に は そ こ で 話 し た 事 に よ っ て 相 手 を 評 価 す る と い う 基 本 的 な 筋 立 て な ど が 一 致 す る こ と か ら も 、 こ の 例 を も っ て 両 者 を 比 較 す る こ と に さ し て 難 は な か ろ う か と 思 わ れ る 。 世 説 の 記 述 上 の 特 徴 は こ の 例 に お い て も 著 し い 。 ま ず 擺 が 司 馬 を 訪 ね る く だ り を み る に 、 蜀 書 の そ の 記 述 は ﹁ 往

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見 薇 L と は な は だ そ ウ け な い ・ 世 説 で 犠 そ れ ζ 聞 三 鳶 縫 在 二穎 型 .擁 に二 重 候 レ之 . 至 . 遇 二徳 攀 桑 、 ﹂ と 現 実 に 事 態 が 展 開 す る そ の 流 れ に そ く し て 逐 一 記 述 し て い る 。 ま た そ れ ぞ れ 評 価 す る 相 手 を 異 に す る 、 と は い え そ う で あ る こ と に よ っ て 互 い に 独 自 性 が む し ろ あ ら わ と な っ て い る こ の 所 伝 の 核 心 部 分 の 記 述 で も 、 蜀 書 は 、 概 略 を ﹁ 共 語 自 レ 晝 至 レ 夜 。 徽 甚 異 レ 之 、 ﹂ と 外 面 的 に 描 く に 過 ぎ な い 。 世 説 は 、 晋 書 と の 比 較 で 特 徴 的 で あ っ た よ う に 、 し ば ら く 会 話 を 使 い 、 そ れ を 具 体 的 に 伝 え る 。 こ と に 司 馬 の ﹁ 子 且 下 レ 車 ﹂ な ど は 、 無 礼 に も 車 に 乗 っ た ま ま 話 し か け る 廱 に い か に 応 対 し た か そ の 場 面 を 彷 彿 と さ せ る 、 そ う し た 現 実 の 事 態 の 再 現 を め ざ し た 記 述 と み る こ と が で き る 。 ○ 魏 明 帝 爲 二 外 租 母 一築 一一館 於 甄 氏 鱒 既 成 、 自 行 覗 、 謂 二 左 右 一 日 ﹁ 館 當 一一 以 レ 何 爲 7 名 。 ﹂ 侍 中 繆 襲 日 ﹁ 陛 下 聖 思 齊 二 於 哲 王 ↓ 罔 極 過 二 於 會 閔 司 此 館 之 興 、 情 鍾 二 舅 氏 司 宜 下 以 二 渭 陽 一 爲 右 名 。 ﹂ ( 世 説 . 言 語 第 二 . 13 ) ○ 帝 思 二 念 舅 氏 一 不 レ 已 。 暢 爾 幼 、 景 初 末 、 以 レ 暢 爲 二 射 聲 校 尉 州 加 二 散 騎 常 侍 鱒 夊 特 爲 起 二 大 第 ( 車 駕 親 自 臨 レ 之 。 夊 於 二 其 後 園 一爲 二 像 ( 暢 の 父 ) 母 一起 二 觀 廟 ↓ 名 一一其 里 一 日 二 渭 陽 里 ↓ 以 追 調 思 母 氏 一也 。 ( 三 国 志 . 魏 書 五 . 文 昭 甄 皇 后 ) 右 は 魏 書 と の 比 較 例 で あ る 。 世 説 と 魏 書 と で 、 渭 陽 と 名 付 け ら れ る 対 象 が 館 と 里 と い う よ う に 相 異 な る け れ ど も 、 同 じ く 舅 氏 に 因 ん で そ の 名 付 け が 行 な わ れ る と い う 一 致 し た 内 容 で あ る 。 こ の 例 に お い て も 、 会 話 を 取 り こ ん で い る の は や は り 世 説 の 所 伝 で あ る 。 魏 書 の 所 伝 に は 会 話 が な く 、 恐 ら く そ の こ と と 無 縁 で は な い で あ ろ う が 、 事 柄 の 結 果 を 伝 え る だ け の 外 面 的 な 記 述 に 終 始 し て い る 。 い わ ば 、 事 態 が 現 実 に 展 開 し て ゆ く そ の 流 れ の 中 で 会 話 が 交 さ れ る と い っ た 記 述 を し 、 そ れ に よ っ て 現 実 の 精 彩 あ る 再 現 が な さ れ て い る 世 説 と は 際 立 っ た 違 い が 認 め ら れ る で あ ろ う 。 次 に は 後 漢 書 の 一 節 を 掲 げ る が 、 孔 融 が と ら え ら れ た 後 、 彼 の 二 子 が 少 し も 動 揺 の 色 を 表 わ さ な か っ た と い う 世 世 説 新 語 の 手 法 六 三

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 六 四 説 と 共 通 す る 所 伝 で あ る 。 ○ 孔 融 被 レ 收 、 中 外 惶 怖 。 時 融 兒 大 者 九 歳 、 小 者 八 歳 。 二 兒 故 琢 釘 戲 、 了 無 二 遽 容 司 融 謂 二 使 者 一 日 ﹁ 冀 罪 止 二 於 身 ↓ 二 皃 可 レ 得 レ 全 不 。 ﹂ 兒 徐 進 日 ﹁ 大 人 豈 見 三 覆 巣 之 下 、 復 有 二 完 卵 一 乎 。 ﹂ 、尋 亦 收 至 。 ( 世 説 ・ 言 語 第 二 ・ 5 ) ○ 初 、 女 年 七 歳 、 男 年 九 歳 、 以 一一其 幼 弱 一得 レ 全 、 寄 二 它 舍 殉 二 子 方 変 棊 、 融 被 レ 收 而 不 レ 動 。 左 右 日 ﹁ 父 執 而 不 レ 起 、 何 也 。 ﹂ 荅 日 ﹁ 安 、有 二 集 毀 而 卵 不 7 破 乎 。 ﹂ ( 後 漢 書 ・ 列 伝 第 六 十 ・ 孔 融 ) 右 の 世 説 . 後 漢 書 の 同 じ 内 容 で も 、 孔 融 伝 の 記 述 は コ 一 子 方 変 棊 、 融 被 レ 收 而 不 レ 動 L と あ っ て 、 事 柄 の 概 略 を 描 く に 留 ま る 。 ま た 会 話 を 使 う と は い え 、 ﹁ 左 右 日 ﹂ ﹁ 荅 日 ﹂ と あ る 限 り で 、 子 供 の 返 答 の 中 身 に 専 ら 関 心 を 寄 せ て い る に 過 ぎ な い 。 事 態 を 現 実 に そ く し て 記 述 す る の は こ こ で も 世 説 で あ る 。 孔 融 が と ら え ら れ る や ﹁ 中 外 惶 怖 ﹂ と な っ た と い う 、 丁 度 そ の 捕 縛 に 際 し て 、 釘 刺 し あ そ び に 無 心 に 興 じ る 二 子 を 前 に 、 孔 融 は 彼 ら の 安 否 を 使 者 に 訊 ね る 。 使 者 と は 、 捕 縛 に 遣 わ さ れ た 者 で あ ろ う 。 使 者 が そ れ に 答 え る よ り さ き に 、 子 は 自 ら の 運 命 を 覚 っ た 言 葉 を 返 す 。 そ の ﹁ 徐 進 日 ﹂ は 、 ま さ に 緊 迫 し た 現 実 の 事 態 が ま の あ た り に 展 開 し て い る と い っ た 、 読 む 者 に 臨 場 感 を 抱 か せ る 。 と 同 時 に 、 そ の 記 述 は 、 絶 望 的 な 状 況 に も か か わ ら ず 落 ち 着 き は ら っ た 子 の 態 度 ま で 彷 彿 と さ せ る 。 そ う し た 事 態 を 現 実 の 展 開 に そ く し て 記 述 す る と い っ た 特 徴 は も と よ り 、 助 辞 の 使 用 で も 、 、 艦 理 釘 戲 、 鳶 無 二 遽 容 こ な ど に 上 述 し て き た 世 説 の 特 徴 は 著 し い 。 と こ ろ で こ の 世 説 の 所 伝 に 対 し て 、 劉 孝 標 が 注 と し て 付 し た 異 聞 が あ る 。 後 漢 書 の 右 に 比 較 の 対 象 と し た 孔 融 伝 の 記 述 に ほ ぼ 重 な る そ れ は 、 ○ 魏 氏 春 秋 日 、 融 樹 二 孫 權 使 一有 二 訥 謗 之 言 ↓ 坐 二 棄 布 司 二 子 方 八 歳 九 歳 。 融 見 レ 收 、 変 棋 端 坐 不 レ 起 。 左 右 日 ﹁ 而 父

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見 レ 執 。 ﹂ 二 兒 日 ﹁ 安 有 二 集 毀 而 卵 不 レ 破 者 一哉 。 ﹂ 途 倶 見 レ 殺 。 右 の よ う に 世 説 の 所 伝 と は か な り の 違 い を み せ る 。 所 伝 の 内 容 や 記 述 の 類 似 と い う 点 で 後 漢 書 と 魏 氏 春 秋 と の 関 連 が 推 測 さ れ る が 、 こ こ で は 、 む し ろ そ の 両 書 の 相 似 た 性 格 に 注 目 し た い 。 范 曄 は か か る 編 纂 物 ( 萢 曄 以 前 に 存 在 し た 七 八 種 の 後 漢 書 を 指 す 1 榎 本 注 ) を 材 料 と し て ( 後 漢 書 を i 同 前 ) 書 い た の で 、 文 章 を 改 め る 必 要 を 生 じ た 點 も あ り 、 夊 萢 曄 が 餘 程 の 名 文 家 で 、 や は り 歴 史 を 自 分 の 頭 で 書 く と い ふ 抱 負 が あ っ た 爲 め 、 前 人 の 書 に 滿 足 せ ず し て 書 き 改 め た 點 も あ る で あ ら う 。 ( 内 藤 湖 南 ﹃ 支 那 史 學 史 ﹄ 内 藤 湖 南 全 集 第 十 一 巻 二 五 二 頁 ) 臣 松 之 案 中 略 i 孫 盛 改 コ 易 泰 言 司 雖 レ 爲 二 小 勝 嚇 然 檢 三 盛 言 , , 所 t一改 易 ↓ 皆 非 三 別 有 二 異 聞 鱒 牽 更 自 以 レ 意 制 、 多 不 レ 如 レ 舊 。 ( 三 国 志 ・ 魏 書 二 十 二 ・ 陳 泰 伝 の 裴 松 之 注 ) 後 漢 書 に つ い て の 内 藤 湖 南 の 指 摘 、 ま た 魏 氏 春 秋 に つ い て の 裴 松 之 の 批 判 に そ れ ぞ れ 知 ら れ る 通 り 、 両 書 と も に そ め も と つ く 恥 ど の 資 料 を 書 き 改 め て い る 。 そ れ が 具 体 的 に ど の 程 度 ま で 及 ん で い た の か は 個 々 の 例 に お い て 区 区 で あ っ た ろ う が 、 本 来 、 史 書 編 述 上 の ﹁ 逋 而 不 レ 作 ﹂ と い う 準 則 に 照 し て あ る ま じ き 書 き 改 め が 行 な わ れ て い た と い う こ と は 、 こ の 際 看 過 し 得 な い 。 と い う の も 、 く だ ん の 裴 松 之 の 批 判 は 、 魏 氏 春 秋 に 記 述 さ れ て い る 言 葉 を 取 り あ げ 、 そ の 言 葉 は 魏 氏 春 秋 の 編 述 者 で あ る 孫 盛 が ﹁ 改 易 ﹂ し た も の で あ る と い う 、 外 な ら ぬ 言 葉 を め ぐ っ て な さ れ た も の だ か ら で あ る 。 過 去 の 人 が 口 に し た 言 葉 を 忠 実 に 再 現 す る こ と は 殆 ど 不 可 能 に 近 い 。 そ う で あ る か ら こ そ 、 孫 盛 を 批 判 し た 裴 松 之 も 、 そ の 批 ヘ ヘ へ 判 に 続 け て ﹁ 凡 記 言 之 體 、 當 レ 使 レ 若 レ 出 二 其 口 ご と 可 能 な 限 り そ の 人 の 口 か ら 出 た よ う に 記 述 す べ き で あ る と の 、 世 説 新 語 の 手 法 ' 六 五

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 六 六 い わ ば 指 針 を 示 す に 留 ま ら な け れ ば な ら な か っ た 。 世 説 は 、 そ の 再 現 す る こ と が 不 可 能 に 近 い 言 葉 、 つ ま り は 会 話 を 、 書 き 改 め が 行 な わ れ て い る 後 漢 書 や 魏 氏 春 秋 、 ひ い て は ﹁ 一 層 そ れ ( 書 き 改 め 1 榎 本 注 ) が 甚 だ し く ﹂ ( 内 藤 湖 南 . 前 掲 書 一 五 二 頁 ) な っ た 晋 書 な ど と 較 べ て も 遙 か に 積 極 的 に 活 用 し て い た の で あ る 。 も っ と も 、 会 話 の 使 用 は 世 説 記 述 の 特 徴 の 一 つ に 過 ぎ な い 。 現 実 の 精 彩 あ る 再 現 を め ざ し た さ ま ざ ま な 工 夫 が 凝 ら さ れ て い る 、 会 話 の 作 為 的 な 利 用 を 含 む そ の 記 述 上 の 特 徴 は 、 お お む ね 勝 手 に こ し ら え 上 げ た も の ( ﹁ 率 自 以 レ 意 制 、 多 不 レ 如 レ 舊 ﹂ ) と 前 述 の よ う に 裴 松 之 に よ っ て 批 判 さ れ て い る 魏 氏 春 秋 の 次 に 掲 げ る 所 伝 と 対 比 し て も 、 対 応 す る 世 説 の 所 伝 中 に 明 ら か に 指 摘 す る こ と が で き る 。 ○ 許 允 婦 、 是 阮 衞 尉 女 、 徳 如 妹 。 奇 醜 。 交 禮 竟 、 允 無 二 復 入 理 嚇 家 人 深 以 爲 レ 憂 。 會 允 有 二 客 至 輔 婦 令 二 婢 靦 7 之 。 邇 答 日 ﹁ 是 桓 郎 。 ﹂ 桓 郎 者 、 桓 範 也 。 婦 云 ﹁ 無 レ 憂 、 桓 必 勸 レ 入 。 ﹂ 桓 果 語 レ 許 云 ﹁ 阮 家 既 嫁 一一醜 女 一 與 レ 卿 、 故 當 レ 有 レ 意 。 卿 宜 レ 察 レ 之 。 ﹂ 許 便 回 入 レ 内 、 既 見 レ 婦 、 印 欲 レ 出 。 婦 料 三 其 此 出 無 二 復 入 理 ↓ 便 捉 レ 裾 停 レ 之 。 許 因 謂 日 ﹁ 婦 有 二 四 徳 嚇 卿 有 二 其 幾 ご 婦 日 ﹁ 新 婦 所 レ 乏 唯 容 爾 。 然 士 有 二 百 行 硝 君 有 レ 幾 。﹂ 許 云 ﹁ 皆 備 。 ﹂ 婦 日 ﹁ 肉 百 行 以 レ 徳 爲 レ 首 。 君 好 レ 色 不 レ 好 レ 徳 。 何 謂 二 皆 備 ご 允 有 二 慚 色 ↓ 途 相 敬 重 。 ( 世 説 ・ 賢 媛 第 十 九 ・ 6 ) ○ 魏 氏 春 秋 日 ー 中 略 i 允 妻 阮 氏 、 賢 明 而 醜 。 允 始 見 愕 然 。 交 禮 畢 、 無 二 復 入 音 甥 妻 遣 二 婢 覘 7 之 。 云 、 ﹁ 有 二 客 姓 桓 ご 妻 日 ﹁ 是 必 桓 範 、 將 二 勸 使 7 入 也 。 ﹂ 既 而 範 果 勸 レ 之 。 允 入 、 須 臾 便 起 。 妻 捉 レ 裾 留 レ 之 。 允 圃 謂 レ 婦 日 ﹁ 婦 有 二 四 徳 ハ 卿 有 二 其 幾 ご 婦 日 ﹁ 新 婦 所 レ 乏 唯 容 。 士 有 二 百 行 ↓ 君 有 二 ,製 幾 ご 許 日 ﹁ 皆 備 。 ﹂ 婦 日 ﹁寿 二 百 行 剃 以 レ 徳 爲 レ 首 。 君 好 レ 色 不 レ 好 レ 徳 、 何 謂 二 皆 備 ご 允 有 一一慚 色 嚇 知 二 其 囲 州 州 逑 嬲 相 嬲 重 ° C 11 1Q 志 ・ 魏 書 九 ・ 夏 侯 玄 伝 の 裴 松 之 注 )

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右 に 掲 出 し た 二 つ の 所 伝 中 、 傍 線 を 付 し た の は 対 応 記 述 の な い そ れ ぞ れ に 独 自 な 部 分 、 波 線 を 付 し た の は 対 応 記 述 が あ る も の の 少 し く 表 現 の 異 な る 部 分 、 そ し て そ れ ら の 付 し て な い の は 双 方 で 記 述 が 一 致 す る 部 分 で あ る 。 世 説 所 伝 中 の 付 線 の 多 さ 、 ま た そ の 部 分 に 限 っ た 記 述 か ら も 、 世 説 が い か に 現 実 の 事 態 の 展 開 に そ く し た 記 述 を め ざ し て い た か 、 一 見 し て そ れ と 知 ら れ る で あ ろ う 。 こ の 外 、 魏 氏 春 秋 と 同 じ よ う に 今 は 佚 書 と な っ て い て そ の 全 貌 は 知 り 得 な い も の の 、 世 説 の 所 伝 と 一 致 な い し 類 似 す る 所 伝 を も つ 書 が 世 説 の 劉 孝 標 注 や 三 国 志 の 裴 松 之 注 そ の 他 に お び た だ し く 拾 い あ げ ら れ て い る 。 そ れ ら の う ち 、 比 較 の 対 象 を こ と 史 書 に 限 れ ば 、 お お む ね 魏 氏 春 秋 の 場 合 と 相 似 た 世 説 の 特 徴 が 認 め ら れ る こ と は 、 も は や 言 を 俟 た な い 。 最 後 に 高 僧 伝 の 記 述 を 取 り あ げ る が 、 同 じ 特 徴 は 所 伝 の 随 所 に 指 摘 す る こ と が 可 能 で あ る 。 挙 例 自 体 す で に 確 認 の 意 味 し か も た な い の で 、 典 型 例 を 一 つ 挙 げ る に 留 め 、 他 は そ れ か ら の 類 推 に ゆ だ ね た い 。 ○ 支 道 林 還 レ 東 、 時 賢 並 迭 二 於 征 虜 亭 噸 蔡 子 叔 前 至 、 坐 近 二 林 公 鱒 謝 萬 石 後 來 、 坐 小 遠 。 蔡 暫 起 、 謝 移 就 二 其 處 輔 蔡 還 、 見 二 謝 在 7 焉 、 因 合 レ 褥 擧 レ 謝 擲 レ 地 、 自 復 坐 。 謝 冠 積 傾 脱 、 乃 徐 起 振 レ 衣 就 レ 席 。 神 意 甚 夲 、 不 レ 覺 二 瞋 沮 鱒 坐 定 ハ 謂 レ 蔡 日 ﹁ 卿 奇 人 、 殆 壞 二 我 面 ご 蔡 答 日 ﹁ 我 本 不 下 爲 二 卿 面 一作 う 計 。 ﹂ 其 後 二 人 倶 不 レ 介 レ 意 。 ( 世 説 ・ 雅 量 第 六 ・     m O 一 時 名 流 、 並 餞 二 離 於 征 虜 ↓ 蔡 子 叔 前 至 、 近 レ 遁 而 坐 。 謝 萬 石 後 至 、 値 二 蔡 暫 起 ↓ 謝 便 移 就 二 其 處 ↓ 蔡 還 、 合 レ 褥 擧 レ 謝 擲 レ 地 。 謝 不 二 以 介 7 意 。 ( 高 僧 伝 ・ 巻 第 四 ・ 支 遁 ) 右 は 高 僧 伝 の う ち 支 遁 伝 の 一 節 で あ る 。 記 述 の 繁 簡 に よ っ て も 明 ら か な 通 り 、 支 遁 伝 は 、 席 の 奪 い あ い の 次 第 を 概 略 だ け 表 わ し て い る に 過 ぎ な い 。 引 用 部 分 の 前 半 は ほ ぼ 相 似 た 記 述 で あ る が 、 そ れ で も 世 説 は 、 後 れ て や っ て 来 た 世 説 新 語 の 手 法 六 七

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仏 教 大 学 研 究 紀 要 通 巻 六 十 六 号 六 八 謝 万 石 の 座 が 林 公 ( 支 道 林 ・ 支 遁 ) の そ れ に ﹁ 坐 小 遠 ﹂ と い う よ う に や や 遠 く 離 れ て い る こ と を 示 す 。 前 に 来 て 林 公 の 近 く に 座 を 占 め て い た 蔡 子 叔 が し ば ら く 席 を 立 つ や 謝 が 蔡 の 座 に 移 っ た の は そ の た め で あ っ て 、 そ の 記 述 に よ っ て 、 如 実 に 宴 席 に あ る 人 々 の 位 置 関 係 が 明 ら か と な ろ う 。 中 程 の 記 述 は 、 両 書 で か な り の 違 い を み せ る 。 席 を 立 っ た 蔡 が 戻 る と あ っ て 、 支 遁 伝 で は 、 こ れ に い き な り ﹁ 合 レ 褥 擧 レ 謝 擲 レ 地 。﹂ と 続 け て い る が 、 世 説 は 、 ま ず ﹁ 見 二 謝 在 7 焉 ﹂ 、 そ れ に よ っ て ( ﹁ 因 ﹂ ) 、 そ の 乱 暴 な 挙 に で る と い う よ う に ど こ ま で も 現 実 の 事 態 の 展 開 に そ く し た 記 述 が な さ れ て い る 。 こ れ 以 下 の 支 遁 伝 に 無 い 記 述 、 す な わ ち ﹁ ( 蔡 ) 自 復 坐 。 謝 冠 嘖 傾 睨 、 乃 徐 起 振 レ 衣 就 レ 席 。 ﹂ や さ ら に は ﹁ 坐 定 ﹂ に 続 く 会 話 を 織 り ま ぜ た 記 述 な ど も 、 現 実 の 精 彩 あ る 再 現 を め ざ す と い っ た 、 上 述 の い わ ゆ る 説 話 へ の 意 欲 の 顕 著 な あ ら わ れ に 外 な ら な い 。 と こ ろ で 右 の 謝 ・ 蔡 の 席 の 奪 い あ い を め ぐ る 所 伝 は 、 晋 書 に も 、 世 説 に 近 い 記 述 で 伝 え ら れ て い る 。 世 説 に も と つ く と 思 わ れ る そ れ は 、 ○ 嘗 與 ご 蔡 系 一迭 二 於 征 虜 亭 ↓ 與 レ 系 爭 言 。 系 推 レ 萬 落 レ 牀 、 冠 帽 傾 腕 。 萬 徐 拂 レ 衣 就 レ 席 、 祚 意 自 若 。 坐 定 、 謂 レ 系 日 ﹁ 卿 幾 壞 二 我 面 ご 系 日 ﹁ 本 不 卞 爲 二 卿 面 一計 ご 然 倶 不 一一以 介 ワ 意 。 ( 晋 書 ・ 列 伝 第 四 十 九 . 謝 万 ) 右 の よ う に 、 席 の 奪 い あ い に 関 す る 部 分 を 大 幅 に 縮 約 し て 、 ﹁ 與 レ 系 爭 言 ﹂ と 表 わ す に 過 ぎ な い 。 晋 書 で は 、 か く て 世 説 に 特 徴 的 な 記 述 の そ の 大 く は 省 か れ て し ま う の で あ る 。 さ て 最 後 に 世 説 の 性 格 に つ い て 考 え て み る に 、 も と よ り 世 説 は 個 人 の 伝 記 を 伝 え た も の で は な い 。 ﹁ 徳 行 ﹂ 以 下

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﹁ 仇 樔 ﹂ に 至 る 三 十 六 の 標 題 を 立 て 、 そ の お の お の に ふ さ わ し い 所 伝 を 各 標 題 ご と に 編 述 し た い わ ば 類 話 集 で あ る 。 類 話 を 編 述 し た と い う そ の 性 格 に 明 ら か で あ ろ う が 、 世 説 は 、 本 来 的 に 史 実 あ る い は 個 人 の 伝 記 な ど と は 殆 ど 無 縁 な の で あ る 。 こ う し た そ も そ も の 成 り 立 ち か ら し て 、 世 説 が ﹁ 逋 而 不 レ 作 ﹂ と い う 史 書 の 原 則 や そ れ を 具 体 的 に 祖 述 し た ﹁ 辭 勝 而 違 レ 實 、 固 君 子 所 レ 不 レ 取 。 況 復 不 レ 勝 而 徒 長 二 虚 妄 一 哉 ﹂ ( 前 掲 の 三 国 志 ・ 魏 書 二 十 二 ・ 陳 泰 伝 に 付 し た 裴 松 之 注 の 文 ) と い う 考 え に と ら わ れ て い た と は 到 底 考 え 難 い 。 前 掲 の 通 り 、 劉 孝 標 が 世 説 に 付 し た 注 の 中 で 世 説 の 所 伝 を し ば し ば 誤 謬 ・ 虚 妄 と 批 判 し て い る が 、 そ う し た 批 判 を 浴 び せ か け る こ と 自 体 、 世 説 の 性 格 を わ き ま え な い 、 い っ て み れ ば 見 当 違 い で し か な い 。 所 伝 の 真 偽 の 問 題 は 、 世 説 の 編 述 者 劉 義 慶 の 念 頭 に さ し た る 比 重 を 占 め て い な か っ た で あ ろ う 。 個 人 の 伝 記 を め ざ し た も の で な い 以 上 、 そ の 伝 記 的 な 事 実 な ど む し ろ 些 末 な 、 そ れ こ そ 取 る に 足 ら ぬ こ と で あ っ た に 違 い な い 。 い わ ば 類 話 集 と い う 世 説 の 性 格 は 、 世 説 の 関 心 が も っ ぱ ら 標 題 に 表 わ さ れ て い る よ う な 事 柄 そ れ 自 体 に あ っ た こ と を 思 わ せ る 。 ﹁ 徳 行 ﹂ か ら ﹁ 仇 樔 ﹂ に 至 る 三 十 六 の 標 題 の 下 に 編 述 さ れ た そ の 事 柄 は 、 ま さ に 人 事 の 万 般 に 及 ぶ 。 そ れ こ そ 、 人 間 に 対 す る 興 味 の 広 く 、 そ し て 限 り な い 深 さ を 物 語 っ て 余 す と こ ろ な い 。 換 言 す れ ば 、 そ う し た 興 味 を 抱 い て い た こ と が 事 柄 そ れ 自 体 の 編 述 に 赴 か せ た と い う こ と で も あ る 。 伝 記 的 事 実 に 拘 泥 す る は ず は も と よ り な い 。 か く て 世 説 が 説 話 と い う か た ち を 取 る の は 必 然 で も あ っ た ろ う 。 総 じ て 、 ﹁ 賢 媛 ﹂ 篇 は 、 解 放 的 で 自 由 な 、 時 に は 奔 放 な 女 性 の 話 を 中 心 に 集 め て お り 、 ﹁ 列 女 伝 ﹂ は 、 き ま じ め で 、 つ つ ま し く 、 や や 狭 小 な 、 比 較 的 融 通 の き か な い 女 性 の 伝 を 主 要 な 要 素 と し て い る こ と が わ か る 。 ( 豊 福 健 二 ﹁ 世 説 ﹃ 賢 媛 ﹄ 篇 と 晋 書 ﹃ 列 女 伝 ﹄ ﹂ ﹃ 小 尾 博 士 退 休 記 念 ﹁中 国 文 學 論 集 ﹄ 二 八 九 頁 ) 世 説 新 語 の 手 法 六 九

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