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コモン付住宅地における共有空間の活用と維持管理に関する研究 

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Academic year: 2022

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はじめに 

戦後、右肩上がりの地価上昇は、住環境や住宅の質 に配慮するよりも土地を財産として所有することに価 値を置く傾向を助長した。宅地細分化による羊羹型、

ハーモニカ型と呼ばれる宅地割の強調された住宅地が それを物語っている。したがってこのように、所有宅 地が細分化された住宅地(以下「所有権住宅地」)では、

ゆとりのあるコモンスペース(以下「コモン」)を生み出 し難い。借地上の住宅(以下「借地権住宅地」)でも借 地権の保護が手厚いと、借地権者に境界の確保という 意識が生まれて、所有権住宅地同様コモンを生み出し 難い。最近登場した定期借地権付き住宅地(以下「定 借住宅地」)では、借地期間が満了した場合、借地契約 が更新されることなく土地所有者に返還されるため、

借地権の境界にこだわらない住宅地設計がしやすく、

コモンを生み出しやすいといわれる。当初の定借住宅 地では、土地の取得費用がかからない分、敷地にゆと りのある住宅が比較的安く入手できることをメリット としたが、最近はコモンを活用した居住環境に特色の ある住宅地も目に付くようになった。

本研究の目的

コモンを有する住宅地は、緑が多く良好な景観を創 出するだけでなく、コモンを活用してのコミュニティ の形成を図ることができる。しかし具体的にその空間 を生み出すことが難しい(特に所有権住宅地、借地権 住宅地)。またその維持管理にも課題があろう。本研究 では、所有権住宅地、借地権住宅地、定借住宅地それ ぞれにおけるコモンの活用と維持管理上の課題、また コモンのある住宅地についての評価など、居住者や土 地所有者へのヒアリング等を通して検討し、コモンを 有する住宅地の可能性と課題について検討する。

戸建住宅地のまちなみ形成とコモン 

 戸建て住宅地でコモンを実現するのは難しい。区分 所有法上の共有関係が適用されないので民法上の土地 の共有で実現しようとしても、共有持ち分の処分が認 められているなど、存続が不安定となるからである。

一建築物一敷地の原則が適用されない総合的設計制度 や連担建築物設計制度では実現の可能性が高いが、実 際には設計と管理上の工夫に依ることとなる。図1の

Keywords: コモン、定借住宅地、所有権住宅地      ボンエルフ 

連絡先:〒236-8501 横浜市金沢区六浦東1-50-1 E-mail: sshoji@kanto-gakuin.ac.jp

左側のように、一般的なまちなみは公共空間と私有地、

私有地と私有地がブロック塀などで画然と分けられて いる場合が多い。その境界近くに植栽することで景観 的な統一を図り、協同で管理するという緩衝調整的な コモンもある。より積極的にボンエルフ+広場をコモ ンとして活用するなど現状での工夫は様々である。

図1一般的なまちなみと前庭のコモン化

所有権住宅地での試み 

  「フォレステージ高幡鹿島台」(日野市)

図2 フォレステージ高幡鹿島台

 フォレステ−ジ高幡鹿島台(以下 フォレステージ)は 東 京都日野 市南平 にあり、 戸 数 53 戸、 街区面 積

15383.09㎡で、基本計画は宮脇檀建築研究所、事業者

は鹿島建設である(竣工時期1998年)。隣接地に高幡鹿 島台ガーデン54という住宅地があり、ここは同じ計画 者、事業者で建設された(1984 年)。ここでは歩者共 存道路(ボンエルフ)を軸に宅地、公園、広場、フッ トパス、ポケットパークを接続させ、公共空間と私有 空間の融合を目指している。フォレステージではさら

コモン付住宅地における共有空間の活用と維持管理に関する研究 

関東学院大学土木工学科    学生会員 ○福本 佑美 

関東学院大学土木工学科      三岳 大士 

関東学院大学社会環境システム学科 正会員 昌子 住江 

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にこれを進め、中央のクルドサック型の広場をコモン として位置づけ、それを囲む7戸程の住宅がコミュニ ティーの単位となっている。コモン広場は車の回転ス ペースを確保しつつ、幅員が一定でないためより自然 な感じがあり、たっぷりとした植栽とともに閉鎖的な 印象を与えない。なおここには地区計画がかけられて いる。

 フォレステージ居住者へのヒアリングでは、

・ コモンを単位に、居住者の発案でコモン会議が結成 され、理事会に代表を送っている

・ コモン会議は日常的なコミュニケーションの場に なっている

・ 高木の管理は市役所だが、住宅地内の植栽管理は管 理組合となっている。しかし、日常的には居住者で 清掃等しており、その後で立ち話をしたり夏は椅子 を出してビールを飲んだりする

・ 人の出入りが見える空間だが、煩わしいと言うより 安心感がある

などの話を聞くことが出来た。

借地権住宅地での試み  ドルフ水元

所在地 :東京都葛飾区東水元2丁目19番地 竣工時期:1993年3月

供給方式:一般借地権

 

 中央のS字型の道路は、歩行者のためのコモン(ドル フ専用歩道)になっている。この場所は、歩行者と子供 だけのもので、バイクで歩道内に入る時はエンジンを 止めて押して通り、自転車も幼児に注意して徐行する か降りて通ることになっている。そのため、幼い子供 たちの安全が確保できる。この歩道、駐車場へ導入路、

ゴミ置き場がコモンとなっているが、借地権住宅地な ので、ここは土地所有者のものである。コモンの清掃 および街灯管理は、土地所有者または管理業者が行っ ており住民が共同で管理をしてはいない。

 現在居住者 14 世帯に対して行ったアンケートの集 計集であるが、居住者の評価は概して高いようである。

またここの土地所有者は、これまで多くの借家、アパ ートを経営したが、その時の失敗に学び良好な住宅地 とは何であるかについて研究した上で、コモンを有す る住宅地にたどりついたと語った。

定期借地権付住宅地での試み 宮崎台住宅

事例1 :田園都市宮崎台

所在地 :神奈川県川崎市宮前区宮崎5丁目4他 竣工時期:1997年1月

供給方式:定期借地権(建売り)

建築協定:紳士協定

  宮崎台は、土地所有者が蜜採取のために四季折々の花 の咲く樹木やその他多種目の木を植え大切に育てた思 い入れのある土地である。そのため、自然林の保存を 最大限に配慮した設計となっている。既存樹木を尊重 した道路計画とし、その街区内道路を住戸が囲む構成 とする。さらに、街区道路と各戸の駐車場を一体的に つくり、道広場(コモン)となっている。

管理は、街区内道路と緑地は地主所有のまま管理の みを住民としている。また、S 字道路の土手部分と北 側外周道路沿いについては、住民の共同管理を行なっ ている。結果として一般の分譲地では得られない住環 境と住宅の質、良質のコミュニティが形成されること になった。

5.まとめ

 コモンのある住宅地を実現する上で、既存の制度に は多くの障害があるが、こうした住宅に住む人の満足 度は高い。維持管理になお課題はあるもの、コモン付 き住宅地の意義と成果を広く公表することで、特にこ れがつくりやすいとされる定借住宅地の中で多いに活 用されることを望む。

<謝辞>

 本研究を進めるにあたりご協力いただいた、不動産 鑑定士勝木雅治氏、川井香苗氏、フォレステージ高幡 鹿島台居住者松崎 茂氏、高幡鹿島台ガーデン54居住 者内田繁夫氏、ドルフ水元オーナー中田 一氏に感謝 の意を表します。

<参考文献>

1)社団法人 日本不動産鑑定協会 関東甲信会  第2回定期借地権に関する実態調査報告書 (2004年度)

参照

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