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供用中ダムにおける大規模な堤体切削工事の施工実績 

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Academic year: 2022

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供用中ダムにおける大規模な堤体切削工事の施工実績 

国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所  森本 修三  白川 豪人  中山 雅登      鹿島建設(株)  正会員  ○中川 進  後閑 淳司  小川 雄一郎  切島 弘貴 

1.はじめに  

  長安口ダムでは、洪水調節能力の向上を図るために,洪水吐ゲ ートを2門増設するダム施設改造事業を行っている.洪水吐ゲー ト増設のために既設堤体を大きく切削する必要があるが,ダムを 供用しながらの施工となるため,堤体の安定性や安全性を確保し ながら所定の工期内に施工することが求められた.

本文では,堤体切削後に存置する堤体の安定性を確保しながら 効率的に取壊しを行う工法を採用したので,その施工の実績につ いて報告する.

2.施工条件及び施工計画 

コンクリートの取壊しは,既設堤体の 9,10BL と 11,12BL の 2 箇所で行う.今回報告する9,10BLにおける取壊しは,幅が11.2m,

高さが37.0mであり,数量は4,684m3である(図−1).

施工条件及び現場状況は,以下のとおりである.

 コンクリートの取壊しはクリティカルパスとなっており,想 定外のトラブルが生じた場合,工程が遅延し本工事の工期が 間に合わなくなる.

 既設堤体の取壊しに伴う振動が,存置する堤体に悪影響を与

えないよう,振動レベルを制限する必要がある.発破工法の採用やブレーカによる機械掘削を行えば取壊 しの効率を向上できるが,振動レベルの制御は困難である.

  以上を踏まえ,施工方法を検討した.施工は,幅11.2m,高さ1.5mを1施工単位とし,ダム堤頂部から下 方へと順番に切り下がることとした.また,堤体に与える影響を最小限とするため,無振動工法であるワイヤ ーソー工法で撤去範囲のコンクリートを高さ1.5mで切削し,既設堤体と縁切りした後,油圧コアドリルで1m 程度のピッチで縦孔をあけ,バースター工法によって小割を行い,クレーンで搬出することとした.図−2に 施工フローを示す.

①パイロット孔削孔 ②水平ワイヤーソー切削 ③鉛直ワイヤーソー切削 ④バースター孔削孔 ⑤バースターで小割 ⑥ブロック搬出

  キーワード  ダム,リニューアル,ワイヤーソー,バースター,コンクリート取壊し    連絡先      760-0050  香川県高松市亀井町1-3   鹿島建設()四国支店  TEL 087-839-3111

図−1  堤体取壊し範囲図

上流側 下流側

9,10BL  4,684m3  報告対象

11,12BL 3,621m3 全体  8,305m3 平面図

断面図 (9,10BL)

図−2  施工フロー

9BL

10BL

12BL 11BL 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

‑997‑

Ⅵ‑499

(2)

コンクリートの取壊しは,工程に余裕がないことに加 え,無振動工法の使用が必須であることから,如何に工 程を短縮するかが課題であった.

表−1にコンクリート取壊しの主要数量を示す.表よ り,バースター孔削孔の数量が多いことがわかったこと から,この工程を短縮するための具体策を表−2のとお り検討した.

案1は,バースター孔削孔の高速化として,削孔速度 が速いロータリーパーカッションドリル(以下,RPD)を 使用する方法である.案2は,バースター孔削孔の省力 化として,ワイヤーソー工法のみで既設堤体を小さなブ ロック状に細かく切削する方法である.検討の結果,当 初計画より工程を35日短縮できる案1(RPDの採用)で施 工を行うこととした.

3.施工実績

  本工事では,存置する堤体への振動速度を2kine以下とすることが規定 されていた.一方,RPD(表−3)による削孔メカニズムは回転と打撃であ るが,削孔に伴う振動速度が不明であったことから,実施工に先立ち,試 験施工を行った.試験施工では,実施工の施工条件を再現し,削孔位置か ら2.5mの位置に振動計を取り付けて,X,Y,Z方向の振動速度を計測した.

計測は,削孔位置から計測器までのコンクリートが連続してい る場合と縁切りしている場合の2種類について実施した.

振動速度(合成)は,コンクリートが連続している場合で 0.283kine,縁切りした場合で0.046kineであった.コンクリート が連続していても,削孔位置と存置する堤体までの離

隔が2.5m以上であれば,振動速度の規格値を十分満足 し,縁切りを行うことで振動速度はさらに低減するこ とが確認できた.また,削孔の振動速度はほぼ一定で あることも確認できた.計測結果を表−4に,振動速 度の計測結果を図−3に示す.

実施工でのバースター孔の削孔は,RPDを使用した.

堤体の高位標高部は,RPDの大きさに対して堤体幅が小さいことからRPDの移 動が困難であり,施工面積が60m2以下の削孔歩掛は7.2m/h/台であった.施工の 進捗によって施工幅が広がると,RPDが自由に移動できるようになり,施工面 積120m2程度の時の削孔歩掛は8.5m/h/台となり,歩掛が約20%向上した.このよ うに,RPD削孔を短縮することで,所定の工期内でコンクリートの取壊しを完 了することができた.写真−1にRPDによるバースター孔の削孔状況を示す.

4.まとめ 

供用中ダムの大規模な堤体切削という国内初の工事において,存置する堤体の安定性や安全性を確保するこ とを前提に,工程確保に資する施工方法を検討した.その結果,RPD による削孔を採用することで,振動に よる堤体の安定性を損なうことなく,工程短縮を図ることができた.本文が同種他工事の参考になれば幸いで ある.

  規格  単位  数量 

パイロット孔削孔  水平φ75  m  1,902 ワイヤーソー切削  水平  m2  3,123 ワイヤーソー切削  鉛直  m2  1,340 バースター孔削孔  鉛直φ160  m  8,714 ブロック搬出  1.5×1.0×1.5m  ブロック 1,960

  当初計画  案1  案2 

施工 方法

ワイヤーソー工法と バースター工法の 組合せ 

ワイヤーソー工法と バースター工法の 組合せ 

ワイヤーソー工法の み 

使用 機械

大型ワイヤーソー  油圧コアドリル  バースター 

大型ワイヤーソー  油圧コアドリル  RPD  バースター 

小型ワイヤーソー  油圧コアドリル 

工程 実働185日  (昼夜) 

実働150日  (昼夜) 

実働164日  (昼夜) 

評価 ×  ○  △ 

項目  詳細 

型式  RPD-150C 

回転数(rpm)  36〜80  トルク(kgf-m)  800 

打撃数(bpm)  2,200/3,000  打撃エネルギー(kgf-m)  75/43 

  最大振動速度(kine) 

X  Y  Z  合成

コンクリートが連続  0.156  0.195  0.245 0.283 縁切り  0.037  0.023  0.030 0.046 表−1  コンクリート取壊しの主要数量

表−2  施工方法の比較一覧

表−3  RPD の仕様

表−4  計測結果 

図−3  振動速度の計測結果

0 0.2 0.4 0.6 0.8

0 10 20 30

振動速度(kine

(sec)

コンクリートが連続(縁切りなし) 縁切りあり

0 0.05 0.1 0.15 0.2 0.25

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 (sec) 拡大

写真−1  RPD 削孔 土木学会第71回年次学術講演会(平成28年9月)

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参照

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