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(1) 単純 X 線はいわゆる レントゲン である その基本的な仕組みは 身体に X 線を照射して 身体の後部のフィルムを感光させるというもので 身体組織ごとに X 線透過度が異なることによって陰影が映る 画像は原則として 透過度低い= 白く映る ( 骨 造影剤など ) 透過度高い= 黒く映る (

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■■■解剖実習配布資料 解答と解説■■■

◆文責:木下貴文(医学科 2008 年度入学) ◆2009.7.12 初版公開 ◆2009.7.27 追記と修正、APPENDIX を追加 ※以下の問題は解答を修正→2-2、2-6、3-7、3-8、3-12、4-7、4-8 ◆2009.7.29 修正 ※以下の解答を修正→2-4、3-15 ★第三解剖の解剖実習中に配布・口頭試問された問題に、解答と解説をつけました。資料画像(別 ファイル)中の番号の割り付けおよび解説の方針は、木下のあいまいな記憶と独断によります。 ★過年度の傾向では、実習中に配布された問題がそのまま期末試験に出題されることが多いよう なので、重点的に対策すると得をするかもしれません。対策としては、アトラスと比較しつつ画 像にうつる構造物を確認していくことを推奨します。 ★もし間違いがありましたら、ご指摘いただけるとうれしいです。また内容についての批判やご 要望や質問などもどうぞ。直接声をかけていただくか、以下までメールください。 xxax2002@yahoo.co.jp ★資料の性質上、別ファイルの資料画像ファイルにはパスをかけています。おそらく来年度にも 同様の口頭試問が行われると思うので、その妨げとならないよう、当資料の存在およびパスにつ いてはみだりに口外しないよう配慮をお願いいたします。

画像診断の基本知識

■画像の

orientation について

CT 画像で最も多い横断面(輪切り)の画像の場 合、「足の裏側から当該部位を透視している」画 像となる。そのため画像の上側はふつう(つまり 背臥位での撮影ならば)腹側になり、また画像の 右側は患者の身体の左側になる。たとえば胸部左 よりに位置する心尖apex of heart は、画像の右側 に映る。ようするに医師が向かい合って患者をみ る視点で左右が決まっていると考えればよい。

■3つの画像技術の整理:単純

X 線、CT、MRI

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2 (1)単純X 線はいわゆる「レントゲン」である。その基本的な仕組みは、身体に X 線を照射し て、身体の後部のフィルムを感光させるというもので、身体組織ごとにX 線透過度が異なること によって陰影が映る。画像は原則として ・透過度低い=白く映る(骨、造影剤など) ・透過度高い=黒く映る(空洞など) となり、筋や血管などの組織については、吸収経路が長い(X 線入射に対して厚みのある組織) ほど白くうつる。また腫瘍はさかんに増殖して厚みのある組織をつくるため、周囲よりやや白い 「影」がみえる。 X 線写真では、何がみたいかによって X 線照射量などのパラメータ調節や画像のコンピュータ 加工を行う。たとえば胸部X 線写真の場合、照射量を上げれば肺内部の細かい血管まで造影可能 だが、そうすると画面全体が白っぽくなってしまい、縦隔の構造は逆に見づらくなる。下図左で は肺の細かな構造までみえるが、縦隔付近を観察するには中央の画像がよい。 (2)CT(computer tomography)について。単に CT という場合、通常は X 線 CT を指す。X 線 を360 度の方向から照射し、その結果をコンピュータ処理することによって画像を得る。詳しい 特徴は次項でMRI と比較しながら説明する。

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3 (3)MRI(magnetic resonance imaging(核)磁気共鳴映像法) は、磁場を与えて生体内の水素 原子に電気的な偏りを作りだし、その偏りがもとに戻る時間が組織ごとに異なる(∵物質的組成 が異なる)ことから、組織ごとに色分けられた像を得る。 以下にX 線 CT と MRI の特徴を比較した表を示す。 X 線 CT MRI 時間 短時間 20-30 分ほどかかる 被曝 あり なし 空間分解能 中 高 時間分解能 高 低 利用例 胸腔、腹腔 脳、軟骨・筋肉・靱帯 その他 装置によっては横断面(輪 切り)しか撮影できない 体内に金属があると使用できない 両者は一長一短で、目的によって使い分けられている。たとえば: ・原理的な問題ではないが、CT 装置は横断面しか撮影できない場合が多い。MRI は任意の切断 面で撮影できる。 ・胸腔や腹腔では呼吸や腸管の動きなどがあるため、時間分解能の高い(=短時間で撮影できる) X 線 CT の方が、ブレがないクリアな画像が撮影できる。一方、動きがない脳や関節などで、よ り精度の高い画像が必要な場合にはMRI が利用される。(上図について、腹部では MRI の方が 見づらい画像となっている。一方、脳はMRI の方がより詳細な画像となっていることがわかる。)

1 上肢の問題

1-1 上肢の筋の支配神経

A:橈骨 radial n. B:尺骨 ulnar n. C:肘 cubital(elbow) joint

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4 D:上腕筋 brachialis と上腕二頭筋 biceps brachii

E:小指 digitus minimus F:内転 adduction G:外転 abduction

H:肘部管症候群 cubital tunnel syndrome

★上肢は腕神経叢brachial plexus により支配されるが、皮膚の感覚神経の分布と、筋の運動神経 の分布とではかなり異なる点にまず留意する。前者は、体幹部のデルマトームがそのまま延長さ れた形状で分布すると考えてよい。後者は、上肢の筋群をいくつかの区画compartment に分けて、 各神経がそれぞれの区画を支配すると考えると分かりやすい。 ・腋窩神経axillary n.→上肢帯(肩)の筋(三角筋と小円筋) ・筋皮神経musculocutaneous n.→上腕前面の屈筋群 ・正中神経median n.→前腕前面の屈筋群 ・橈骨神経radial n.→上腕および前腕後面の伸筋群 ・尺骨神経ulner n.→手内筋群 以上のようにおおまかに把握した上で、必要に応じて以下のような例外をおさえていくとよい。 ・腕橈骨筋brachioradialis は前腕後面の伸筋群に含まれ橈骨神経支配だが、肘関節の「屈曲」に はたらく。 ・正中神経も手内筋(特に母指側)を支配する。

1-2 上肢の筋の神経学的検査1

前鋸筋serratus anterior ★支配神経から判断するのは難しいが、作用から前鋸筋と考える。 「腕を突き出して壁を押す」動作のとき、肩関節や肘関節はあまり動かず、肩甲骨の前進がカギ となる点を理解しよう。肩甲骨の前進をは専ら前鋸筋である。

1-3 上肢の筋の神経学的検査2

上腕二頭筋biceps brachii 反射、肘関節の屈曲、中枢は C5 ★上肢や下肢の神経学的検査でよく用いられるもの、およびその反射中枢は ・上肢……二頭筋反射(C5)、腕橈骨筋反射(C6)、三頭筋反射(C7) ・下肢……膝蓋腱反射(L4)、アキレス腱反射(S1) など。反射中枢をピンポイントで答えさせるのは定期テストならやりすぎと思うが、次のよう に「だいたいこれくらい」と検討をつけられるようにしておくと便利。 ・上腕二頭筋→筋皮神経→腕神経叢の上位(C5~C6 くらい)

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5 ・上腕三頭筋→橈骨神経→腕神経叢の中位(C6~C7 くらい)

1-4 上肢の筋の神経学的検査3

上腕三頭筋triceps brachii 反射、反射中枢は C7

1-5 手の掌側に入る神経

①手根管(症候群)carpal canal syndrome ②正中median n.

③横手根transverse carpal lig. ④母指thumb ⑤示指index finger ⑥中指middle finger ⑦環指ring finger ★横手根靱帯は屈筋支帯flexor retinaculum の別名。正中神経は手では母指側(母指~環指の半 分)の知覚や母指の屈曲にはたらく。

2 下肢の問題

2-1 冠状動脈バイパスに使う静脈は……

大伏在静脈great saphenous v.

★心臓の冠状動脈coronary a.の機能障害で虚血性心疾患(心不全 cardiac insufficiency や心筋梗 塞myocardial infarction)が起こった場合、下肢の大伏在静脈を切り取って冠状動脈と大動脈 aorta をバイパスする術式がある。

2-2 大腿部のリンパをみる

大伏在リンパ管great saphenous lymph vessels と浅鼠径リンパ節 superficial inguinal lymph nodes

★下肢のリンパの画像。この図では、坐骨の付け根のあたりにリンパの塊(浅鼠径リンパ節)を 認めることができる。

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6 一般に、上肢や下肢や頚部などで大きな静脈が体幹部へと戻る周辺でリンパ節が発達している ことが多い。下肢では、大伏在静脈great saphenous v.が大腿静脈 femoral v.に合流し、鼠径靱 帯inguinal lig.をくぐるあたりにリンパ節が多数みられる。

2-3 大腿部の血管をみる

①大腿骨femur ②大腿静脈femoral v. ③大伏在静脈great saphenous v. ④膝窩静脈popliteal v. ★③大伏在静脈だと分かれば静脈と決まる。膝窩静脈の映り方から、左下肢の背側からの画像で あると分かる。下肢へ向かう静脈の本幹は、

下大静脈inf. vena cava→総腸骨静脈 common iliac v.→外腸骨静脈 external iliac v.→大腿静脈 →膝窩静脈→前頸骨静脈ant. tibial veins+後脛骨静脈 post. tibial veins+腓骨静脈 fibular v. の順に名前を変える。上肢と下肢の血管系は、非常に太い皮静脈があることが特徴で、下肢では (1)大腿静脈から分かれて主に大腿内側部に分布する大伏在静脈と、(2)膝窩静脈から分か れて主に下腿後部に分布する小伏在静脈small saphenous v.がある。

2-4 筋肉注射するときに注意するのは……

F1:上腕三頭筋 triceps brachii F2:伸 extensor F3:伸展 extention F4:坐骨 sciatic n. F5:腸骨稜 iliac crest F6:大殿 gluteus maximus F7:中殿 gluteus medius F8:大腿二頭筋 biceps femoris F9:半膜様筋 semimembranosus F10:半腱様筋 semitendinosus F11:屈 flexor F12:ヒラメ筋 soleus F13:腓腹筋 gastrocnemius

25:上前腸骨棘sup. ant. iliac spine 26:腸骨稜iliac crest

27:坐骨結節iscial tuberosity 28:恥骨pubic tubercle

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7 29:坐骨神経sciatic n. ★筋肉注射時に注意する神経の理解を求める問題。腕神経叢brachial plexus から出て上肢の主に 背側を通る橈骨神経radial n.も多くの筋(上腕・前腕の伸筋群)を支配するが、腰仙骨神経叢 lumbosacral plexus で(というより人体中で)最大の神経であり下肢背側を足まで貫通する坐骨 神経sciatic n.の支配域はさらに広く、大腿後面・下腿の前面と後面および足内筋まで支配してい る。

2-5 どちらの十字靱帯?

前方引き出し症状→前十字靱帯ant. cruciate lig. 後方引き出し症状→後十字靱帯post. cruciate lig

★脛骨の前+内側から後+外側+上方に伸びるのが前十字靱帯、より背側でこれと交叉するよう に位置するのが後十字靱帯。これは知っておくべき配置である。PK やローキックをうつときに ぴーんと伸びるのが前十字靱帯だと覚えておくと便利(このとき膝関節は内旋+伸展の方向に動 くから、これを制限するようにはたらくのである)。 膝関節の周辺は込み入っていて分かりにくいが、臨床的に重要度が高いのは (1)前・後十字靱帯 (2)内側・外側側副靱帯colateral lig. (3)内側・外側半月meniscus の3組だろう。 (1)(2)の作用は、それが傷害された時にどうなるかを考えると分かりやすい。上図のよう に下腿を前面に引っ張った場合、正常だと動かないが、前十字靱帯を損傷すると下腿が前方に動 いてしまう。また内側側副靱帯の損傷した場合は、膝関節を伸展した状態で大腿を固定し下腿を 外側の方へ押すと動いてしまう。この二つの靱帯の損傷は、スポーツ時のケガの中で非常に頻度 が高い。

2-6 足の関節をみる

A:後距腓靱帯 post talofibular lig. B:踵腓靱帯 calcaneofibular lig. C:前距腓靱帯 ant. talofibular lig.

★足根部の関節では、まず下腿(脛骨tibia・腓骨 fibura)と足根骨(踵骨 calcaneus・距骨 talus) の接合面を理解する。両者をつなぐ靱帯としては、内側の三角靱帯deltoid lig.と、本問で問われ ている外側の三つの靱帯が重要。

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3 胸部の問題

3-1 縦隔の横断面その1

①右腕頭静脈 r. brachiocephalic v. ②腕頭動脈 brachiocephalic a. ③左腕頭静脈 l. brachiocephalic v. ④気管trachea ⑤食道esophagus

⑥左総頚動脈left common carotid a. ⑦左鎖骨下動脈 l. subclavian a. ★縦隔mediastinum やや上部の横断面。両側に黒く映る肺 lung、中央を走る④気管は容易に同 定できる。気管の深部にあるのは⑤食道で、普段は横に潰れたような形状をしており目立たない ことに注意する。高さを決定する必要があるが、 ・気管分岐部・肺動脈管・大動脈弓は映っていないからそれらよりも上 ・頚部(左右の総頚動脈・内頚静脈のみ)よりは下 とわかる。残りの動静脈の同定は、大動脈弓が正中浅層→左深層へと走行しつつ三本の枝を出す こと、上大静脈sup. vena cava が大動脈弓より浅層で左右に分かれることを理解しておけば迷わ ないだろう。

3-2 縦隔の横断面その2

①②大動脈弓aortic arch ③上大静脈superior vena cava

★「草履と満月」というタイトルがついていた問題。大動脈弓は正中部浅層から左深層へ、ステ ッキの柄のようなカーブを描き、椎骨付近まで達することをおさえる。

3-3 縦隔上部の血管造影

①右腕頭静脈right brachiocephalic v. ②左腕頭静脈left brachiocephalic v. ③上大静脈sup. vena cava

★動脈ではなく静脈であることを形状から判断する。上大静脈の下部には右心房、その右側には 肺動脈幹pulmonary trunk~右肺動脈も映っている。

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3-4 肺の内部

向かって左の画像:肺動脈pulmonary a. 向かって右の画像:気管支bronchus ★形状から気管支・肺動脈・肺静脈を区別する。

3-5 気管の走行

★胸部を左斜め前方から撮影した画像で、気道airway の形状が明確に分かるようになっている。 「細かい名称は答えなくてもよい」とのことなので主要な構造のみ確認していく。 ・上部には鎖骨と第1肋骨が映り、肺尖apex of lung はこれらよりも上位にある。 ・第2肋骨の高さで気管trachea が分岐するが、左右で異なる形状を示し(右気管支 bronchi の 方が太く傾斜が急で、誤飲したものは右へ入りやすい)、右肺は上・中・下葉、左肺は上・下葉 へと気管支が伸びる。 ・肺の下面には、横隔膜を隔てて肝臓や胃、脾臓が接している(右下に横隔膜、左下は胃底が映 っている)。 ・気管と平行に走る、気道より細い管はカテーテルである。

3-6 肺動脈

肺動脈幹pulmonary trunk と左右の肺動脈 pulmonary a.

★心臓から肺動脈幹が出て、左右の肺動脈に分かれて肺に入っていくところ。右鎖骨下動脈から カテーテルが入ってきている。

3-7 肺の左上葉に腫瘍が……

①上行大動脈ascending aorta ②下行大動脈descending aorta ③肺動脈幹pulomonary trunk ④上大静脈sup. vena cava ⑤左心耳left atrial appendage ⑥左下肺動脈left inf. pulmonary a.

★⑤⑥は難しいので参考程度でいいと思う。写真C、D で分かるように、左肺に腫瘍がみられる。 写真A の①②は上行/下行大動脈だと分かればだいたいの高さが決定できる。肺動脈の走行を立 体的に理解することが重要で、心臓から肺動脈幹が出たあと、深層に向かいつつ肺に入っていく

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10 ことにとくに注意する。写真A から、腫瘍がこれ以上大きくなると左肺動脈が圧迫されるおそれ があることが分かる。

3-8 大動脈弓と上大静脈の形状変化をみる

★大動脈弓と上大静脈sup. vena cava が映る縦隔 CT で、A~C はほぼ同じ高さのおそらく別人 の画像。呼吸および腫瘍による大血管の形状の変化を見極めさせるのが出題意図と思われる。 ・C の腹側の影は胸腺腫 thymoma で、上大静脈への浸潤、大動脈弓の圧迫がみられる。 ・A、B はいずれも正常像で、呼吸による形状変化をみる。A は肋骨の挙上と胸腔内圧の低下によ る静脈環流量の増加(つまり静脈が太い)を認めるため、吸気時。B はその逆で呼気時。 吸気時に肋骨が挙上して胸腔を拡大させるが、このとき肋骨は水平に近くなり、実際にA では 後から前までほぼ肋骨の全長が映っている。

3-9 食道 esophagus を側方からみる

①中食道狭窄middle esophageal constriction ②大動脈弓aortic arch ★椎骨や肋骨の映り方などから、胸腔を側面からみた画像だとわかる。食道には三つの生理的狭 窄部があり、それぞれ ・上食道狭窄:食道の入り口 ・中食道狭窄:気管分岐部、大動脈弓に圧迫される ・下食道狭窄:横隔膜貫通部(食道裂孔) に位置する。これらの狭窄部は食道がんの好発部位としても重要。この画像には中食道狭窄しか 映っていない。

3-10 ならびかえ(縦隔の冠状断面)

腹側からA→B→D→C ★位置を決める重要な構造物をみていく。

(1)A、B には左心室 l. ventricle と大動脈弓 aortic arch が映っているが、A ではその上方に左 腕頭静脈r. brachiocephalic v. があり、いっぽう B では腕頭動脈と左総頚動脈 l. common carotid a.を出している。よって A→B。

(2)C には気管分枝部と気管支 bronchi、左心房 l. atrium があり、D は気管 trachea と上大静 脈sup. vena cava と右心房 r. atrium がみえる。よって D→C。

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3-11 奇静脈系 その1

①奇静脈弓arch of azygos v.

②半奇静脈hemiazygos v. が奇静脈に注ぐところ

★奇静脈系azygos system は肋間静脈を集めて上大静脈 sup. vena cava に注ぐ血管群で、左右で 走行が異なるのが特徴。右の奇静脈が本幹であり、左は下部の半奇静脈と上部の副半奇静脈が奇 静脈に注ぐ。 画像で本幹が椎骨左にあることを疑問に思う方がいるかもしれない。①奇静脈系の走行は個人 差が大きいこと、また半奇静脈と副半奇静脈が注ぐところでは本幹がやや左に蛇行する傾向があ るから、本幹で間違いないと思う。

3-12 奇静脈系 その2

①半奇静脈hemiazygos v. ②奇静脈azygos v. ③右肋間静脈right post. intercostal v.

④下大静脈inf. vena cava ⑤脊椎静脈叢vertebral plexus ⑥右腎静脈right renal v. ⑦上行腰静脈ascending lumber v. ★椎骨上を左右非対称に走る構造 物だから奇静脈系だと検討をつけ る。画面上部の左右に映っている のはおそらく横隔膜diaphragm (肝臓liver のある右の方が高くな っている)。横隔膜や腎静脈の位 置から、奇静脈系の全体は映って おらず、上部は奇静脈と半奇静脈 の合流部だと見当をつける。 右図に奇静脈系の全体像を示す。

椎骨右側に着目して下から追っていくと、奇静脈系は右総腸骨静脈right common iliac v.に発し、 上行腰静脈として腹腔を上行し(腰静脈は肋間静脈intercostal v.の腹部における続きと考えると 分かりやすい)、奇静脈となって胸腔で肋間静脈を集めながら上行し、左側の半奇静脈・副半奇 静脈と合流したあと、上大静脈に注ぐ(注ぐ前に特有のカーブを描く部分が奇静脈弓)。

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12 奇静脈系は上記のように下大静脈と上大静脈を連絡しているから、下大静脈の閉塞時には側副 路としてはたらく(つまり、下大静脈を迂回して、奇静脈系を通り上大静脈から心臓に帰る)。

3-13 縦隔の正中部矢状断

①気管trachea ②上行大動脈ascending aorta ③右肺動脈r. pulmonary a. ④左心房l. atrium ⑤左心室l. ventricle ⑥右心室r. ventricle ★正中部矢状断=正中断。食道はふつう前後方向に潰れた形をしておりあまり映らないから、① は気管。②の上行大動脈~大動脈弓からは、上方に枝(腕頭動脈brachiocephalic a.)がみえる。 気管と上行大動脈がほぼ正中部、肺動脈幹はそのやや左よりにあるから、③は右肺動脈である。 大動脈につながる⑤は左心室、それに対して④左心房は後方より、⑥右心室は前方よりにあると いう位置関係を把握する。

3-14 胸部大動脈造影

①上行大動脈ascending aorta ②右冠状動脈r. coronary a. ③左冠状動脈l. coronary a. ④内胸動脈internal thoracic a. ★縦隔上部の血管造影。上図と下図を比べると、大動脈弓が正中断の平面と約45 度の角度をなし ていることがよく理解できる。 ・まず①について、大動脈弓からは上部に複数の枝が伸びており、左から腕頭動脈brachiocephalic a.、総頚動脈 common carotid a.、左鎖骨下動脈 l. subclavian a.である。腕頭動脈はさらに上 肢と頭部に向かう枝を出す(だから「腕」「頭」)。腕頭静脈は左右あるが、腕頭動脈はひと つしかないことを、大動脈弓の走行とともに理解しておこう。大動脈弓は正中から左へと走る ので、右側へ向かう枝は距離が長いから腕頭動脈がある、と考えられる。

・次に②③は心筋を栄養する冠状動脈であり、大動脈弁の直後に大動脈から分かれる。冠状動脈 の不調が狭心症angina、冠状動脈が詰まって心筋が壊死するのが心筋梗塞 myocardial infarction である。③左冠状動脈はすぐに、下方へ向かう前室間枝 anterior interventricular branch と、側方をまわる回旋枝 circumflex branch に分かれる。

・最後に、④の内胸動脈は、左右の鎖骨下動脈から分かれて前胸壁(肋骨の裏側)を下行し、肋 間動脈を出す。

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3-15 縦隔の斜位矢状断

(上図) ①気管trachea ②上行大動脈ascending aorta ③右肺動脈r. pulmonary a. ④胸大動脈thoracic aorta ⑤右肺right lung ⑥左心房l. atrium ⑦右心房r. atrium (下図) ①左肺left lung ②大動脈弓aortic arch ③右肺動脈right pulmonary a. ④左主気管支left primary bronchus ⑤右肺right lung ⑥胸大動脈thoracic aorta ⑦左心房left atrium ⑧左心室left ventricle ⑨右心室right ventricle ★大動脈弓の描く曲線を含む平面は、縦隔を右前方から左後方へと切断することをまずおさえる。 画像タイトルから明らかなように、最初に大動脈の走行を特定すればよい。ついで、大動脈弓に はさまれる形で肺動脈幹、左心房、気管・気管支が存在していることから、これらが特定できる。 最後に残りの心房と心室を決めていく。

3-16 胸管

①左鎖骨下静脈left subclavian v. ②胸管thoracic duct ★椎骨やや左を走行することと左鎖骨下静脈に注ぐことから、胸管だとわかる。胸管は人体最大 のリンパ管であり、下肢や腹腔のリンパ管を集めた乳ビ槽chyle cistern に発して、胸部では胸大 動脈thoracic aorta のすぐ右側を上行し、左鎖骨下静脈(左内頚静脈と合流するところ)に背後 から注ぐ。

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4 腹部の問題

4-1 腹部における胎児期の遺残/迷走神経の

走行と作用

E1:下腹壁動静脈 inf. epigastric vessels E2:臍動脈 umbilical a.

E3:膀胱 urinary bladder

E4:肝円索 round ligament of liver

E5:肝鎌状間膜 falciform ligament of liver E6:臍静脈 umbilical v.

E7:静脈管 venous duct B1:交感(神経) sympathetic n. B2:迷走神経 vagus n. B3:反回神経 recurrent n. B4:右鎖骨下動脈 r. subclavian a. B5:大動脈弓 aortic arch B6:声帯 vocal cord B7:嗄声 hoarseness ★E は胎児期の循環系をおさえておく(解剖学講義の 24 ページ)。 ★B は迷走神経の走行と作用について、反回神経が発生上の都合により左右で異なる走行をみせ ることを理解しておく(解剖学講義の652 ページ)。

4-2 腹部横断(基本)

①門脈portal v.

②下大静脈inf. vena cava ③胸大動脈thoracic aorta ④胃stomach ⑤脾臓spleen ★腹部CT の基本的な画像。右側の肝臓では、門脈と下大静脈の深さの違いをみておく。後者は 胸大動脈のやや浅層、前者はかなり浅層で肝臓に流入する。胸大動脈の周りを囲むのは横隔膜 diaphragm である(大動脈が横隔膜をくぐるのは肝臓の下部で、この箇所ではまだ「胸」。自信 がなければ「下行大動脈」と答えるのも手)。

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4-3 腹腔動脈幹の枝

①脾動脈splenic a. ②腹腔動脈幹celiac trunk ③総肝動脈common hepatic a. ④胃十二指腸動脈gastroduodenal a. ⑤固有肝動脈proper hepatic a. ★腹部血管造影で、カテーテルで腹腔動脈幹から造影剤を入れている。腹腔動脈幹celiac trunk の主要な枝をおさえる。腹大動脈が消化器系へ出す大きな枝は次の3本で、いずれも無対性で大 動脈の前面から出ている: ・腹腔動脈:胃、肝、脾、膵、十二指腸前半に分布。 ・上腸間膜動脈:十二指腸後半~横行結腸のかなり広い部分に分布。 ・下腸間膜動脈:下行結腸~直腸上部に分布。

4-4 腸間膜 mesentery に分布する動脈

上が上腸間膜動脈sup. mesenteric a.、下が下腸間膜動脈 inf. mesenteric a.

★腹腔の血管造影。矢印の2箇所から造影剤を入れていると思われる。下腸間膜動脈は上と比べ てけっこう細い。

4-5 腹部の動静脈

①腹大動脈abdominal aorta ②肝臓liver ③脾臓spleen ④右腎right kidney ⑤門脈portal v. ⑥腹腔動脈celiac trunk ⑦上腸間膜動脈sup. mesenteric a. ⑧左精巣(卵巣)静脈left testicular(ovarian) v. ★通常の血管造影とは異なり動脈と静脈が両方映っているから、少しとまどってしまうかもしれ ない。順にみていくと: ・①は腹腔動脈や上腸間膜動脈が出ているから腹大動脈で、左右の総腸骨動脈common iliac a. に分岐するところまで確認できる。

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16 ・③の脾臓は血管を多く含む組織なので、こうした画像では血管同様の発色を示してすぐ同定で きることが多い。

・下大静脈inf. vena cava は映っていないようだが、肝臓に注ぐ⑤はどうみても門脈で、上腸間 膜静脈sup. mesenteric v.と脾静脈 splenic v.が合流している。脾静脈に下腸間膜静脈 inf. mesentric v.が合流する様子は確認できない。

・④の腎臓kidney には腎動静脈 renal a&v が向かうが、腎静脈から⑧左精巣(卵巣)静脈が分 岐している様子が確認できる。なおこれ以外の精巣(卵巣)動静脈はすべて大動脈・大静脈か ら分岐している。

4-6 腹部血管造影

①腹腔動脈celiac trunk ②上腸間膜動脈sup. mesenteric a. ③総肝動脈common hepatic a. ④固有肝動脈proper hepatic a. ⑤胃十二指腸動脈gastroduodenal a. ⑥右腎動脈right renal a. ⑦左胃動脈left gastric a. ⑧脾動脈splenic a. ★腹大動脈abdominal aorta から出る血管については、(1)前面から出る無対性のもの、(2) 真横から左右に出るもの、(3)斜め後に出るものの三つを区別すると分かりやすい。 (1)には次の三つの大きな動脈がある。 ・腹腔動脈:胃、肝、脾、膵、十二指腸前半に分布。 ・上腸間膜動脈:十二指腸後半~横行結腸に分布 ・下腸間膜動脈:下行結腸~直腸上部に分布

(2)は腎動脈renal a.と精巣(卵巣)動脈 testicular(ovarian) a.

(3)は腰動脈lumber arterys(肋間動脈の腹部における続きのような動脈)など。 次にこれらの動脈が出る位置だが、大動脈が横隔膜を貫通した直後に腹腔動脈が出て、そのす ぐ下で上腸間膜動脈と腎動脈、少し間が空いて下腸間膜動脈が分かれる。この画像では腹腔動脈 の枝をさらに同定することが求められる。また下腸間膜動脈は前三者よりも細い動脈で、この画 像では確認できない。

4-7 腹部血管造影(門脈)

①脾静脈splenic v. ②上腸間膜静脈sup. mesenteric v.

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17 ③門脈portal vein ★肝臓liver(右上部にうっすらと輪郭がみえる)に入る血管だが、動脈か門脈かで迷うかもしれ ない。4-3の画像と比較してみて欲しい。動脈の方が細くシャープな像をつくることに加えて、 特有の曲線を描くことが動脈を静脈と見分ける決定打となる。動脈壁はある程度の固さと弾力性 があるので写真のような蛇行が可能だが、静脈壁は一般に薄いため走行は直線的になる。 なお問題画像の矢印が何なのかは不明。門脈の枝がそこまで伸びているか、(左)肝静脈hepatic v.の可能性もあるかもしれない。

4-8 上腸間膜動脈の枝

①上腸間膜動脈sup. mesenteric a. ②中結腸動脈middle colic a. ③空腸動脈jejunal a. ④右結腸動脈right colic a. ⑤回結腸動脈ileocolic a. ⑥回腸動脈ileal a. ★この画像が「腸間膜なんたら」であることは分かったとして、動脈/静脈、上/下をどう見分 けるかで迷うかもしれない。まず腸間膜静脈は門脈に合流する部分で特有の走行を示すから、動 脈。次に左右両側に太い枝が伸びていることから、上腸間膜動脈であると判断する。この問題で はその枝の名称を求められている(が、ここまで問うのか?) ほぼ垂直方向へ走る太い血管が上腸間膜動脈の本幹で、ここから空腸~横行結腸まで左右に枝 を出すが、腸管の折りたたみのため走行が分かりにくい。

4-9 上腹部エコー(難易度高、参考程度?)

ア:肝左葉 left lobe of liver イ:膵管pancreatic duct ウ:膵体部body of pacreas エ:脾静脈splenic v.

オ:腹大動脈abdominal aorta カ:脾動脈splenic a.

キ:下大静脈inf. vena cava ク:門脈portal v.

(18)

18

4-10 下腸間膜動脈の枝

①腹大動脈abdominal aorta ②下腸間膜動脈inf. mesenteric a. ③左結腸動脈left colic a. ④S 状結腸動脈 sigmoid a. ⑤上直腸動脈sp. rectal a. ★腹大動脈から直接出ていて、右と下のみに枝を伸ばしていることから下腸間膜動脈で決まり(っ 造影剤を入れる位置からも動脈と分かる)。下腸間膜静脈は脾静脈と合流することをおさえてお こう。

4-11 腹部横断その2(T12 と L1)

(上図) ①門脈portal v. ②尾状葉caudate lobe ③下大静脈inf. vena cava ④右腎right kidney ⑤胸大動脈thoracic aorta ⑥胃stomach ⑦膵尾部tail of pancreas ⑧脾動脈splenic a. ⑨左腎left kidney ⑩脾臓spleen ★T12 レベルの腹部 CT 画像。 ・まず肝臓の特徴的な形態に着目する。右葉と左葉の間隙、肝門部の空洞が明確であるほか、尾 状葉の突出が際立つことで全体として童話の「おつきさま」のような形になっている。 ・この高さで左右の腎臓が映ることをおさえる。 ・膵臓の形態と位置にも着目したい。膵臓全体は短銃のような形をなし、そのグリップ(頭部) は門脈を抱きかかえる形になっており、銃身は深部へと向かい脾臓へとつく。膵臓の深部には脾 動静脈が走るが、見分け方は: ・脾動脈の方がより蛇行し、脾静脈は直線的 ・脾静脈には下腸間膜静脈inf. mesenteric v.が合流する (下図) ①胆嚢gallbladder

(19)

19 ②胃体body of stomach

③幽門部pyloric part of stomach ④十二指腸duodenum

⑤膵頭と膵体body and head of pancreas ⑥門脈portal v.

⑦脾静脈splenic v.

⑧下大静脈inf. vena. cava

★L1 レベルの腹部 CT 画像。T12 レベルと比較しながらみていくと: ・肝臓は右側につぶれる。

・肝臓に胆嚢が映るようになる。 ・腎臓が大きくなる(この辺りが最大)

・胃が胃体から幽門部pyloric part に移行し、さらに十二指腸 duodenum になる。胃には造影剤 がたまり液面が映っていると思われる(撮影はふつう背臥位でおこなう)。

・十二指腸は屈曲してから深部に向かい、大動脈と同じ深さに達する(この画像はその途中)。 ・膵頭と膵体の屈曲部が映っている。その深層にみえるのは脾静脈splenic v.。

・左上部には横行結腸transverse colon と下行結腸 descending colon が映る。これらは脾臓付近 で吊り下げられた形になっており(結腸脾弯曲部)、T12 レベルで確認できる。

4-12 逆行性胆膵管造影

G:胆嚢 gallbladder

C:総肝管 common hepatic duct PD:膵管 pancreatic duct ①胆嚢管cystic duct

②総胆管common bile duct

③大十二指腸乳頭greater duodenal papilla

★画面中央の太い管は内視鏡で、大十二指腸乳頭から胆汁・膵液の流れとは逆行する向きに造影 剤を入れているので、両方の通路が分かる(逆行性造影)。胆汁bile の通路の名称と、(多くの 場合)膵管に合流後に十二指腸乳頭に注ぐことを確認しておこう。乳頭の周囲はオッディの括約 筋Oddi’s sphincter という平滑筋があり、分泌調節を行っている。

4-13 門脈圧亢進症

①門脈portal vein ②脾臓spleen

(20)

20 ★門脈系は消化管から肝臓へ流れるが、肝臓の前、中、後のいずれかの場所で血管が閉塞し、門 脈圧が上昇する症状を門脈圧亢進症と呼ぶ。図では肝臓に入って以降の門脈周辺に病変がみられ、 脾臓(血流が盛んで門脈に注ぐ脾静脈を出す)にかなりの肥大がみられる。

4-14 肝臓を連続断面で復習する

SⅠ-SⅧ:Couinaud(クイノー)の肝区域1~8 SⅠ:尾状葉 caudate lobe PⅠ-PⅧ:門脈 portal vein1~8 UP:門脈左枝臍部 umbilical portion

※肝円索round lig. of liver~静脈管索 venous ligament が貫くところ L/M/RHV:左/中/右肝静脈

IVC:inf. vana cava

★画像は左列上から①~③、右列上から④⑤の順。解剖学では外観から肝臓を左葉、右葉、尾状 葉、方形葉quadrate lobe の4つに区分する。いっぽう臨床的には門脈の支配領域による区分 (Couinaud の肝区域)がよく用いられ、たとえば肝がんで肝臓を部分的に摘出する場合に、何 番に腫瘍があるから何番は残せるな、などと判断するときに使う。 この画像は復習用として配布されたので、上記の区分にはあまりこだわらず、横断面のレベル によって肝臓の形がどう変化するかをみておくといいと思う。

5 骨盤部の問題

5-1 骨盤隔膜を構成する筋たち

A:尾骨筋 coccygeus B:腸骨尾骨筋 iliococcygeus C:恥骨尾骨筋 pubococcygeus D:恥骨直腸筋 puborectalis ★骨盤は「底が抜けた」形状をしている(出産があるから当たり前)、この部分をお椀状に覆う 筋と膜のセットが骨盤隔膜pelvic diaphragm である。B~D はまとめて肛門挙筋 levator ani と いう。尿道urethra(と膣 vagina)は骨盤隔膜の前方の孔を通り、その先でもう一枚の筋+膜の セットである尿生殖隔膜urogenital diaphragm をさらに通過してから体外へ開口する。

二枚の隔膜のうち、この尿道と膣が通る孔の部分が構造的に脆弱となる。骨盤臓器脱POP とは、 骨盤臓器が膣道を通って体外に脱出してしまう疾患であり、特に中高年女性にある程度の頻度で 見られる。

(21)

21

5-2 骨盤断面をみる(難易度高、参考程度?)

A:子宮 uterus B:直腸 rectum C:卵巣 ovary D:腹直筋 rectus abdominis E:白線 linea alba

F:外腸骨動脈 external iliac a. G:外腸骨静脈 external iliac v. H:腸腰筋 iliopsoas

I:小殿筋 gluteus minimus J:腸骨 ilium

K:梨状筋 piriformis

L:大殿筋 gluteus maximus

★難易度が高く、参考程度と考えてよい。高さのレベルについて、大腿骨femur は映ってないの でそれより上、腸骨のかなり狭いところ(腸骨稜iliac crest)よりも下で切っている。膀胱 urinary bladder は見えていない(もう少し下)。子宮が映っていることから女性である。 腹部・下肢・骨盤の各所で実習した構造物がまとめて出てくるので、復習しつつ各々の位置関 係を確認するのが有益だろう。

6 頭頚部の問題

6-1 脳・脊髄をおおう膜と脳脊髄液

①クモ膜arachnoid mater ②軟膜pia mater ③硬膜dura mater ④黄色靱帯ligamenta flava ★脳脊髄液cerebrospinal fluid(CSF)とは、脳室系およびクモ膜下腔を満たす無色透明な液体であ り、脳実質の形状の保持や物理的な緩衝材としてはたらく。脳と脊髄は三重の膜で覆われており、 内側から、軟膜~(クモ膜下腔)~クモ膜~硬膜~(硬膜外腔)である。 局所麻酔では、クモ膜下腔か硬膜外腔に麻酔薬を投与することが多い(前者が脊椎麻酔、後者 が硬膜外麻酔)。なおこのあたりは後期の神経解剖学で詳しく扱う。 脳脊髄液(CSF, cerebrospinal fluid)は脳室系とクモ膜下腔を流れる液体で、脳の緩衝材とし ての作用を持っている。CSF は脳室系の脈絡叢で作られて、第四脳室の孔から脳室を出てクモ膜 下腔に流入したあと、脳を走る静脈系に回収される(この辺りは後期の神経解剖の範囲)。

(22)

22

6-2 頚部断面

①甲状腺thyroid gland ②総頚動脈common carotid a. ③内頚静脈internal jugular v. ④前斜角筋anterior scalene m. ★椎骨前部の狭さから頚部と判断できる。内頚静脈と総頚動脈では、後者の方が細く、また深層・ 内側にあるが、これは大動脈弓aortic arch の走行とそこからの分枝を考えると分かる。

6-3 後頭下の筋

A 項靭帯 nuchal ligament B 僧帽筋 trapezius C1 頭板状筋 splenius capitis C2 頭最長筋 longissimus capitis D 頭半棘筋 semispinalis capitis ★後頭下(後頭骨の下、下顎骨の後面)の横断面。C2(軸椎 Axis)の椎体が映っていることから 高さと前後が分かる。A は色が微妙でそもそも何なのか分かりにくいが、椎骨棘突起間を結ぶ棘 上靱帯supraspinous lig.が頚椎部で大きく発達した項靱帯である(項は「うなじ」の意)。筋群 の識別も少し難しいが、<固有筋intrinsic muscle ほど深層、non-intrinsic muscle ほど浅層にあ る>という一般的傾向にしたがって、次の三つの層に分けると分かりやすい。

1、上肢帯の筋:僧帽筋

2、固有背筋:頭板状筋、頭最長筋、頭半棘筋

3、後頭下の固有筋:上/下頭斜筋obliquus capitis sup./inf.、大/小後頭直筋 rectus capitis posterior ma./mi.

なお「固有intrinsic」とは以下のような意味である:たとえば背部に着目した場合に、背部に 起始と停止がある筋群は背部に固有の筋であり、背部だけでなく肩や上肢にまで伸びている僧帽 筋はそうではない。

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APPENDIX

★以下では図を示さず口頭で問われた問題について簡単に答えていきます。 Q1:縦隔 mediastinum とは何か。 A1:左右の胸膜と横隔膜によって囲まれる部分で、そこにある心臓や気管や食道や血管・神経 など重要な諸構造を集合的に指す。 Q2:標本(男性の膀胱周辺を後方か らみる)の主要な構造を答えよ。 A2:右図参照。尿管 ureter、精管 ductus deferens、精嚢 seminal gland、 射精管ejaculatory duct、前立腺 prostate などを同定する。

Q3:左下肢を挙上するまさにその時に、右下肢で重要な役割を果たす筋とその作用は? A3:主に中殿筋 gluteus medius(あと小殿筋 gluteus minimus)の外転と内旋。

左下肢を挙上するとき、同時に骨盤が傾けられる(骨盤左が上かつ前)。このとき右下肢では、 股関節の外転と内旋が起きている。少し分かりにくいと思う。このとき地面に対して右下肢は固 定されているが、骨盤の傾きにより骨盤と右大腿の位置関係が変わるから、股関節は外転・内旋 していることになる。 視点を変えて繰り返すと、左下肢の挙上は以下の二つの運動が同時に起こることによって可能 になっている、ということを理解しよう: ①主に腸腰筋の作用で左股関節が屈曲(大腿を前方に出す) ②主に中殿筋の作用で右股関節が外転・内旋(骨盤が傾く) Q4:会陰を外から棒で貫くと何に突き当たるか? 前と後では?

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24 A4:会陰 perineum は恥骨結合・坐骨結節・尾骨でできる菱形のことで、前側を尿生殖三角、後 側を肛門三角という。

・尿生殖三角を貫くと→尿生殖隔膜urogenital diaphragm(深会陰横筋など)、骨盤隔膜 pelvic diaphragm(肛門挙筋など)

・肛門三角を貫くと→骨盤隔膜(肛門挙筋など)

Q5:膝蓋腱反射とアキレス腱反射の反射中枢、かかわる筋肉とその支配神経は? A5:

・膝蓋腱反射:L4、大腿四頭筋 quadriceps femoris、大腿神経 femoral n. ・アキレス腱反射:S1、下腿三頭筋 triceps surae、脛骨神経 tibial n.

Q6:直腸に分布する動脈について説明せよ。

A6:上は下腸間膜動脈由来、中と下は内腸骨動脈由来である点をおさえる。詳しくは: ・腹大動脈→下腸間膜動脈→上直腸動脈sup. rectal a.

・内腸骨動脈→中直腸動脈

参照

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