2008 年度 上智大学経済学部経営学科網倉ゼミナール
『エビちゃんはもう古いのか??』 ~CanCam 衰退の本当の理由~
A0542309 石川亜紀子
CanCam 衰退の本当の理由 目次 1 はじめに 1.1 素朴な疑問 1.2 赤文字雑誌とは 1.3 CanCam 衰退の考えられる原因 1.4 CanCam 衰退の考えられる原因に関する検証 1.5 CanCam 衰退の考えられる原因に関する検証結果 2 新たな疑問 2.1 CanCam 衰退と ViVi のシェア維持の考えられる原因 2.2 CanCam 衰退と ViVi のシェア維持の仮説 2.3 CanCam 衰退と ViVi のシェア維持の仮説の検証 2.4 CanCam 衰退と ViVi のシェア維持の仮説の検証結果 3 まとめ 3.1 仮説が真ならば見えてくる現象 4 参考文献・参考URL
1 はじめに 1.1 素朴な疑問 私が大学に入学したのは2005 年 4 月。大学生になったら CanCam を読むのが自然な流れだった。 なぜなら、その当時女子大学生ならCanCam を読んでいるのが当たり前であると思っていたし、事実 その世代に最も読まれていた女性ファッション誌ももちろんCanCam だったからである。入学してか ら4 年間他誌に乗り換えるということもなく一途に CanCam を愛読していた私にとって信じ難いニュ ースがインターネット上に掲載されていた。それは、全国書店新聞によると2008 年 7 月号(2008 年 6 月下旬発売)の CanCam が同じ赤文字雑誌である ViVi に販売部数において 4 万部の差で逆転され たというものであった。この2 誌は 2006 年当時では 20 万部もの大差で CanCam が ViVi に圧勝して いたからさらに驚きである。そこで素朴な疑問が生じる。「なぜCanCam はここ 2~3 年という短い期 間で販売部数が激減してしまったのか。その原因は何であるのか。」 1.2 女性ファッション誌の位置付け この素朴な疑問を解消する前に、数ある女性ファッション誌の中で CanCam や ViVi はどの位置に 属し、どんな特徴があるのかを説明しようと思う。図の 1 を見てほしい。図から女性ファッション誌 の中で、お姉系に属すのがいわゆる赤文字雑誌と呼ばれるもので、CanCam、ViVi、JJ、Ray、PINKY の5 誌からなる。ここに CanCam、ViVi とも属している。このお姉系と呼ばれる雑誌の特徴は、ター ゲットとする読者が女子大学生から OL であり、他の女性ファッション誌に比べてエレガントでモテ 志向が強いことがあげられる。 図1 (出所:ファッションをめぐる4つの文化圏http://taf5686.269g.net/article/4754175.html)
【CanCam】※参考:CanCam 公式ホームページ ● 小学館発行の月刊女性ファッション誌
● 創刊:1981 年
● 名前の由来:「I Can Campus」の略で、キャンパスのファッションをはじめとするお洒落のリー ダーになってほしいという願いを込めて ● ターゲット:大学生~OL ● コンセプト:モテるためには? ● 男性観:モテたいが男に媚びすぎるのは厳禁 ● 特徴:ファッションを中心に、習い事や占い、恋愛相談がページを占める。そんな中で CanCam のカラーが色濃く出ているところが2 つある。 ◎ 1 つ目は、CanCam が初めに取り入れた毎号の定番企画として、CanCam の専属モデルが OL 役として登場し、1 カ月の洋服からアクセサリー、靴やバックまでをコーディネートして、読 者がその OL になりきれるよう特集するページである。この企画における最大のヒットがエビ ちゃんOL であり、2004 年 4 月から始まったこのエビちゃん OL のおかげで、エビちゃんのよ うになりたい女性、エビちゃんのようになれればモテると思う女性が増えることとなった。JJ に代わって CanCam が赤文字雑誌のトップに立ったのもこの企画によるところが大きいとさ れる。また、このエビちゃんOL のヒットにより、エビちゃんこと蛯原友里本人もカリスマモ デルとして有名になっていったのである。 ◎ 2 つ目は、男性目線を気にする雑誌であるということだ。毎号必ず慶応大学や早稲田大学に通 っている、または商社、銀行、アパレルに勤めているいわゆるイケメンが登場し、デートには こんなコーディネートで来てほしい、今年の流行の中ではこんな洋服にグッとくるといったコ メントをするページが出てくることから特徴と言える。そのため、読者も男性目線を気にして 洋服を選び、モテたいという欲求のある人が多いのかもしれない。ただし、JJ のように男うけ 100%を目指すのではなく同性からもモテたいと考える人が多い。 【ViVi】※参考:ViVi 公式ホームページ ● 講談社発行の月刊女性ファッション誌 ● 創刊:1983 年 ● ターゲット:大学生~OL ● コンセプト:いち早く流行を知り、それをどう使うか? ● 男性観:モテにはあまりこだわらず、自分を磨く ● 特徴:CanCam がモデルに親近感をもたせる誌面づくりをしているならば、ViVi は共感より憧れ を重視して誌面作りをしているといえる。なぜなら、ViVi のモデルが全員ハーフであることや、 海外セレブを多く登場させているからである。そのため、日本人離れしたスタイルのモデルが多い ので、読者は自己投影のしようがない。そんな憧れの対象に刺激され、自己啓発に励むのが ViVi 読者というわけである。それと同時にモデルのようになりたくてもなれないと気付かせてくれる雑 誌なのかもしれない。なお ViVi 系は真似できそうでできないスタイルが多いので、個性派ファッ ションとも思われている。
【JJ】※参考:JJ 公式ホームページ ● 光文社発行の月刊女性ファッション誌 ● 創刊:1978 年 ● ターゲット:大学生~OL ● コンセプト:コンサバファッション(トレンドにあまり左右されない保守的なセンスの中に女性ら しいエレガントさを取り入れたファッション) ● 男性観:とにかく男うけが一番 ● 特徴:創刊当時から読者のスナップ写真のページが多い。昔に比べてギャルの要素が若干入ってい る。また、ブランドの情報が盛りだくさんでもある。男うけが一番という考えであるが、CanCam に比べて男性が意見するページはさほどみられない。バブル時代から長らく赤文字雑誌トップの販 売部数を守っていたが、CanCam の台頭により販売部数を激減させている。 【Ray】※参考:Ray 公式ホームページ ● 主婦の友社発行の月刊女性ファッション誌 ● 創刊:1988 年 ● ターゲット:大学生~OL ● コンセプト:女の子らしい可愛らしさを追求 ● 男性観:モテよりもチヤホヤを目指す ● 特徴:フリルやレースがついた女の子らしい洋服を主流に他の赤文字系雑誌に比べて安価なブラン ドを紹介している。また、ターゲットも私立大学生やアパレル等の服装規定の緩い社会人としてい る。キャンパスリーダーの意見を取り入れたファッションやメイク、遊びを特集している。 【PINKY】※PINKY 公式ホームページ ● 集英社発行の月刊女性ファッション誌 ● 創刊:2004 年 ● ターゲット:大学生~OL ● コンセプト:依然として定まっていない ● 男性観:セクシーな自分に見合う男性を見つける ● 特徴:コンサバ系とギャル系、トレンド追及型とどの方向に向かっていくのかを迷走中。どちらか というとかわいい系よりかっこいい系である。 1.3 素朴な疑問に関して考えられる原因 赤文字雑誌各誌についてイメージをつかんでいただけただろうか。さて、本題の「なぜCanCam は ここ 2~3 年という短い期間で販売数が激減してしまったのか。その原因は何であるのか。」という素 朴な疑問に関して考えられる原因を 3 つあげる。1 つ目は、雑誌市場自体の減少によるものではない か。2 つ目は、ファッションページ数(広告や読者のお悩み相談、占いといった読み物を除いたページ 数)の減少による情報不足からくるものではないか。3 つ目は、広告ページ数の増加によるものではな いか。以上の3 つについて次に検証してみたいと思う。
1.4 検証
以上の 3 つの考えられる原因を検証してみる。まず、雑誌市場自体の減少についてである。赤文字 雑誌と呼ばれるCanCam、JJ、ViVi、Ray、PINKY の 2004 年から 2008 年までの 5 年間の販売部数 を調べたのが図 2・図 3 である。また、赤文字雑誌全体のうち各誌がそれぞれどのくらいシェアを獲 得しているのかを調べたのが図4 である。(※参考:日本雑誌協会 HP、全国書店新聞)
CanCam
JJ
ViVi
Ray
PINKY
合計(冊)
2004 年
513750
512375
480417
236525
294875
2037942
2005 年
626250
434375
467917
246059
213333
1987934
2006 年
649000
357298
456834
237466
210348
1910947
2007 年
490500
298591
446666
227767
210000
1673530
2008 年
400010
261500
448333
209279
190000
1509122
図2(赤文字雑誌の販売部数) 0 100000 200000 300000 400000 500000 600000 700000 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 冊 CanCam JJ ViVi Ray PINKY 図3(赤文字雑誌の販売部数の変化) 0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00% 25.00% 30.00% 35.00% 40.00% 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 CanCam JJ ViVi Ray PINKY 図4(赤文字雑誌各誌のシェア獲得の割合)次に、ファッションページ数の減少についてである。検証方法は、2005 年~2008 年の 4 年間計 48 冊 のCanCam 内においてファッションページを数える方法で、その変化をみたものが図 5・図 6 である。 ここでのファッションページの定義として、洋服、アクセサリー、靴やバックが掲載されかつその商 品にブランド名と値段が書かれているページとした。また、CanCam の全ページにおけるこのファッ ションページ数の割合の変化をみたものが図7 になっている。
1 月
2 月
3 月
4 月
5 月
6 月
7 月
8 月
9 月
10 月
11 月
12 月
平均
2005 年
202
115
127
258
265
199
210
151
158
247
304
296
211
2006 年
228
132
159
257
276
211
202
153
155
253
319
314
221.58
2007 年
235
128
147
242
276
199
178
186
148
219
247
266
205.91
2008 年
206
119
128
215
227
181
170
143
139
185
216
232
180.08
図5(CanCam のファッションページ数) 0 50 100 150 200 250 300 350 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ペ ー ジ 2005年 2006年 2007年 2008年 図6(CanCam のファッションページ数の変化) 0.00% 10.00% 20.00% 30.00% 40.00% 50.00% 60.00% 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2005年 2006年 2007年 2008年 図7(CanCam 全ページにおけるファッションページ数の割合)最後に、広告ページ数の変化である。検証方法は、2005 年~2008 年の 4 年間計 48 冊の CanCam 内において広告ページを数える方法で、その変化をみたものが図8・図 9 である。また、CanCam の 全ページにおけるこの広告ページ数の割合の変化をみたものが図10 になっている。
1 月
2 月
3 月
4 月
5 月
6 月
7 月
8 月
9 月
10 月
11 月
12 月
平均
2005 年
142
99
118
127
125
163
146
141
135
121
162
145
135.33
2006 年
156
123
146
125
137
172
132
172
143
120
161
154
145.08
2007 年
161
120
135
114
128
165
130
141
130
107
129
127
132.25
2008 年
141
103
119
102
109
149
125
128
113
91
111
112
116.91
図8(CanCam の広告ページ数) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ペ ー ジ 2005年 2006年 2007年 2008年 図9(CanCam の広告ページ数の変化)0.00%
5.00%
10.00%
15.00%
20.00%
25.00%
30.00%
35.00%
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月
2005年
2006年
2007年
2008年
図10(CanCam 全ページにおける広告ページ数の割合)1.5 検証結果 まず、雑誌市場自体の縮小についてだが、図の1・2 から縮小していることが分かる。しかし、販売 部数が5 年前からほとんど変わらず赤文字雑誌内でも高いシェアをキープし続けている雑誌もある。 この雑誌がViVi であり、雑誌市場自体の縮小を CanCam の販売部数の減少の直接的な原因にするこ とに疑問が残る。次に、ファッションページ数の減少についてだが、図の4・5 を見ると年々CanCam においてファッションページが減っている。しかし、図の6 から CanCam の全ページにおけるファッ ションページ数の割合は4 年前と比べてほとんど差がないことが分かる。そのため、このファッショ ンページ数の減少もCanCam の販売部数の減少を説明する原因にはならない。最後に、広告ページ数 の増加についてだが、図の7・8 を見ると広告ページ数は減少しているが、図の 9 から CanCam の全 ページにおける広告ページ数の割合は4 年前からほとんど変化がないことが分かる。ここから、広告 ページ数の増加についてもCanCam の販売部数の減少を説明する原因にはならないといえる。 2 新たな疑問 以上の検証からはCanCam の販売部数が減少した原因を見つけることは出来なかった。しかし、赤 文字雑誌各誌のここ数年の販売部数の推移を調べることで、「CanCam はなぜここ 2・3 年という短い 間で他誌に比べて販売部数の減少が激しいのか。」また、「ViVi はなぜ販売部数をここ数年変わらずキ ープさせ、赤文字雑誌内でのシェアを伸ばしているのか。」という疑問をみつけることができた。 2.1 新たな疑問に関して考えられる原因 「CanCam はなぜここ 2・3 年という短い間で他誌に比べて販売部数の減少が激しいのか。」また、 「ViVi はなぜ販売部数をここ数年変わらずキープさせ、赤文字雑誌内でのシェアを伸ばしているの か。」という疑問に関していろいろと考えられる原因が思い浮かぶが、大きく分けて2 つの軸で考える ことができるのではないかと思う。1 つ目は、「読者層」の変化であり、2 つ目は、「読者のニーズ」の 変化である。 まず1 つ目の「読者層」の変化について説明する。ここにおける変化として考えられるものが大き く分けて3 つある。 ● CanCam のターゲットはもともと大学に入学した 19 歳~25・26 歳くらいまでの OL である。数 年前まではターゲットと同じくらいの歳の女性がCanCam を読んでいたが、エビちゃん OL の大 ヒットにより、エビちゃんと共に年齢を重ねていく読者が増えていったのではないか。つまり、 25・26 歳になってもなかなか CanCam を卒業できない読者が増えたのでないだろうか。 ● 大学入学当時にCanCam にエントリーして読み始めた読者をはじめ、もともと CanCam のター ゲットとされている20 歳~24 歳くらいの中間層が CanCam から離れて他誌に移動したのではな いか。 ● エビちゃんというCanCam 内でのカリスマモデルとの年齢差があるために、新しく CanCam に エントリーしてくるだろう19 歳くらいの読者が減少したのではないか。
次に2 つ目の「読者のニーズ」の変化について説明する。CanCam の読者は赤文字雑誌内において も男性目線を気にするいわゆるモテ系を目指す人が多い。CanCam はそんな読者のためのバイブル誌 なのである。その中でエビちゃん OL のヒットにより、読者がエビちゃんをより身近に感じ、エビち ゃん OL そっくりに自分をコーディネート出来ればエビちゃんのようにモテる。そして、エビちゃん に近づくことができる、あわよくばエビちゃんになれると読者は勘違いしてしまったのではないかと 考える。しかし、実際にエビちゃんが誌面で着用した洋服やアクセサリーを買ってエビちゃん OL の 1 人になったところでやはりエビちゃんにはなれないと気付く読者が増えたのではないか。そして、 モテ志向から自分志向へ移行する読者が増えたのではないかと思う。ViVi は男性目線をある程度気に しつつもモデルにハーフを起用し、海外セレブを特集していることから、読者が憧れのモデルや海外 セレブになることは不可能であるため、自分なりのおしゃれを楽しめるような自分志向の雑誌といえ る。そのため、現実を分からせてくれるViVi に好感を持つ女性が増えたのではないか。 2.2 仮説 以上の「読者層」の変化と「読者のニーズ」の変化から1 つの仮説をあげる。それは、赤文字雑誌 には、「加熱」、「冷却」、「再加熱」というサイクルがあり、このサイクルをエビちゃんが崩したのでは ないか。というものである。つまり、このサイクルをエビちゃんが崩したことにより、CanCam は他 誌に比べて販売部数を激減させ、その影響とこのサイクルを守っているViVi は販売部数を一定に保っ ているのではないか。と考えるものである。 まず初めに「加熱」、「冷却」、「再加熱」モデルについて説明しようと思う。この言葉は、受験戦争 や就職戦争について書かれた本「日本のメリトクラシー 構造と心性(1995)」から引用している。 ● 加熱:一流大学に入り、一流企業に入社すれば成功する、また幸せになれると思い予備校に通っ たりするなどの自己投資をはじめる。 ● 縮小:自己投資をすればするほど成功するわけではない、つまり一流大学に入学したから、一流 企業に入社したからといって必ずしも成功するわけではないと気付き、アスピレーションの切り 下げによって自己投資を縮小する。 ● 冷却:結局ある程度の自己投資をしたにも関わらず成功することが出来なかった、あるいは高い 地位にいることが本当の幸せなのかと考えた結果自己投資から撤退する。 ● 再加熱:失敗したのは、運が悪かったから、まだ機会があると思い同じ分野で再投資をはじめる。 ● 代替的加熱:他の分野での再投資をはじめる。 次にこのモデルを赤文字雑誌にあてはめてみる。 ● 加熱:大学に入学してくる年齢の女子が大学ではモテたい、ちやほやされたいと思い赤文字雑誌、 特にモテ系バイブル誌とされるCanCam を買い始める。読者はエビちゃんを真似れば、エビちゃ ん OL になりきればエビちゃんのように自分もモテるのではないかと思う。つまり、大学に入学 してくる18 歳~20 歳くらいの女子が大量にエントリーしてくるのが CanCam である。 ● 冷却:20 歳~24 歳くらいの読者は、CanCam を読んでエビちゃんの真似をしても実際にはあま
りモテないことに気付く。そして、エビちゃん OL になりきってみてもモテないと気付いた読者 は、人の真似をしてもモテないのなら自分なりのおしゃれを楽しもうと思うのではないか。さら に、果たしてモテることが幸せであるのかという疑問を持つ読者もいると考える。また、エビち ゃん OL は作られたものであり、エビちゃんのリアルな私服はエビちゃん OL とは違っているた め、読者もエビちゃんになるのは不可能であるという現実に直面するのである。ここで冷却され た読者は、モテ志向よりも自分志向をコンセプトとして打ち出すViVi へ移行するのではないだろ うか。ViVi の特徴として先ほども述べたように、モデルの大半がハーフであり、海外セレブを特 集していることからも読者はやはりモデルのようになるのは不可能であることを改めて実感し、 冷却されるのである。 ● 再加熱:25・26 歳を過ぎた女性は、再び自分にとっての幸せを考え始めるのではないだろうか。 素敵な男性と結婚して主婦として暮らすのか、仕事に没頭してキャリアアップをはかるのか、趣 味を充実させるのか、といった様々な選択肢がみえてくる。そんな女性たちは、素敵な男性と結 婚するためにモテを意識する雑誌、仕事で成功した女性たちを特集する雑誌、旅行や料理といっ た趣味を特集する雑誌という具合に自分にあった雑誌を熱心に読み始めるのではないのかと思う。 以上の仮説を分かりやすく表したのが以下の図である。 2.3 検証 赤文字雑誌にみられるのではないかと考えるこの「加熱」「冷却」「再加熱」のサイクルをCanCam のカリスマモデルであったエビちゃんの登場により、崩してしまったのではないのかという仮説を検 証してみたいと思う。 まず初めに、CanCam はカリスマモデルであったエビちゃんの登場により、本当にエビちゃんを前 面に押し出す誌面作りをしていたのか。について検証する。これは、エビちゃんがブームになり始め た2005 年から 2008 年までの 4 年間計 48 冊の CanCam 内でのエビちゃんの登場ページ数を数える 25 歳~ 22~24 歳 18~22 歳 再加熱マシン 加熱マシン 冷却マシン 自分志向 モテ志向 CanCam ViVi
ことで検証した。これが以下の図11・12 である。また、CanCam 全体のページ数のうちのエビちゃ ん登場ページ数の割合の変化を表したのが図13 である。
1 月
2 月
3 月
4 月
5 月
6 月
7 月
8 月
9 月
10 月
11 月
12 月
平均
2005 年
91
42
60
79
121
84
91
76
58
117
131
110
88.33
2006 年
94
49
81
110
128
76
74
92
69
116
145
126
96.66
2007 年
102
52
68
131
134
97
78
81
64
111
110
103
94.25
2008 年
87
49
61
110
117
78
69
67
66
92
97
115
84
図11(エビちゃんの登場ページ数) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ペ ー ジ 2005年 2006年 2007年 2008年 図12(エビちゃん登場ページ数の変化) 0.00% 5.00% 10.00% 15.00% 20.00% 25.00% 30.00% 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2005年 2006年 2007年 2008年 図13(CanCam 全ページにおけるエビちゃん登場ページの割合) 次に、エビちゃんの影響で本当にCanCam をなかなか卒業できない読者が増えたのか、CanCam とViV 内でここ数年の読者の年齢層に変化は見られるのかについて検証する。この検証方法は、エビ ちゃんがブームになり始めた2005 年から 2008 年までの 4 年間計 48 冊の CanCam と ViVi の雑誌に 登場した読者の年齢を調べて、その平均を出した。その結果が図の14 である。また、この期間の CanCam と ViVi の読者の年齢の幅を調べたのが図の 15・16 である。20 20.5 21 21.5 22 22.5 23 23.5 2005 年1 月 2005 年4 月 2005 年7 月 2005 年1 0月 2006 年1 月 2006 年4 月 2006 年7 月 2006 年1 0月 2007 年1 月 2007 年4 月 2007 年7 月 2007 年1 0月 2008 年1 月 2008 年4 月 2008 年7 月 2008 年1 0月 歳 CanCamViVi 図14(CanCam と ViVi の読者の平均年齢の変化) 15 17 19 21 23 25 27 29 2005年1月 2005年4月 2005年7月 2005年10月 2006年1月 2006年4月 2006年7月 2006年10月 2007年1月 2007年4月 2007年7月 2007年10月 2008年1月 2008年4月 2008年7月 2008年10月 歳 CanCam 最高齢 CanCam 最年少 図15(CanCam の読者の年齢の幅の変化) 15 17 19 21 23 25 27 29 2 0 0 5 年1 月 2 0 0 5 年4 月 2 0 0 5 年7 月 2 0 0 5 年1 0 月 2 0 0 6 年1 月 2 0 0 6 年4 月 2 0 0 6 年7 月 2 0 0 6 年1 0 月 2 0 0 7 年1 月 2 0 0 7 年4 月 2 0 0 7 年7 月 2 0 0 7 年1 0 月 2 0 0 8 年1 月 2 0 0 8 年4 月 2 0 0 8 年7 月 2 0 0 8 年1 0 月 歳 ViVi 最高齢 ViVi 最年少 図16(ViVi の読者の年齢の幅の変化)
さらに、エビちゃんの人気が高まっていった2005 年から 2008 年までの 4 年間で CanCam と ViVi の読者の年齢層がどのように変化していったのかを検証する。この検証方法は、2005 年から 2008 年 までの4 年間計 48 冊の CanCam と ViVi に登場した読者モデルの年齢を、「加熱」時期である 19 歳 以下、「冷却」時期である20 歳~24 歳、「再加熱」時期である25 歳以上と 3 つに分けてその人数を集 計した。ただし、毎号の人数を合わせるために、初めのページから数えて50 人目までを人数にカウン トすることとした。この結果が図の17 と 18 である。
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人
CanCam ~19歳
CanCam 20~24歳
CanCam 25歳以上
図17(CanCam の読者の年齢層の変化)0
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ViVi ~19歳
ViVi 20~24歳
ViVi 25歳以上
図18(ViVi の読者の年齢層の変化)2.4 検証結果 図の11・12・13 から CanCam は、エビちゃん OL がヒットし始めた 2005 年から 4 年間は変わら ずにエビちゃんを前面に押し出す誌面作りをしていることが分かった。ここからCanCam は、赤文字 雑誌のターゲットである女子大学生~25 歳くらいの OL の年齢を超えるモデルが長年トップにいる変 わりばえしない雑誌という印象を受ける。 次に、図の14 から CanCam は 2006 年の終わりから 2007 年、2008 年にかけて読者の年齢層が年々 高くなっていることが分かる。その一方で、ViVi は読者の年齢層が年々低くなってきている。また、 図の15・16 から CanCam、ViVi ともに最年少の読者は 2005 年から 2008 年までほとんど変化は見 られないが、最高齢の読者の年齢が、CanCam は 2006 年の終わりから 2007 年、2008 年にかけて年々 高くなっていることが分かる。その一方で、ViVi は最高齢の読者の年齢が年々低くなっている。 最後に、図の17 から、2005 年から 2008 年にかけて CanCam の読者の年齢層は、「加熱」時期で ある大学入学年齢の読者と「冷却」時期である20 歳~24 歳までの読者は減少傾向にあるといえる。 一方で、「再加熱」時期にあたるにも関わらず未だ冷却されない25 歳以降の読者は増加傾向にある。 また、図の18 から、2005 年から 2008 年にかけて ViVi の読者の年齢層は、「加熱」時期である読者 と「冷却」時期である読者が増加傾向にあり、「再加熱」時期である読者が減少傾向にあることが分か った。 以上の検証結果から、エビちゃん OL の大ヒットにより、エビちゃんと共に年齢を重ねていく読者 が増えていった。つまり、25・26 歳になってもなかなか CanCam を卒業できない読者が増えたこと が分かる。また、大学入学当時に CanCam にエントリーして読み始めた読者をはじめ、もともと CanCam のターゲットとされている 20 歳~24 歳くらいの中間層が CanCam から離れていったこと も分かる。さらに、エビちゃんというCanCam 内でのカリスマモデルとの年齢差があるために、新し くCanCam にエントリーしてくるだろう 19 歳くらいの読者が減少し、ViVi にエントリーしてくる読 者が増えたことがいえる。つまり、以前は赤文字雑誌の「加熱」「冷却」「再加熱」というある程度年 齢で分かれていたこのサイクルをエビちゃんOL の大ヒットにより CanCam が崩してしまったことが いえる。つまり仮説は真に近いといえるのではないだろうか。 3 まとめ CanCam がここ数年販売部数を激減させている理由は、赤文字雑誌にある「加熱」「冷却」「再加熱」 というサイクルをエビちゃんが崩してしまったためである。CanCam は、エビちゃん OL の大ヒット により、エビちゃんをなかなかCanCam から卒業させずにエビちゃんに頼る誌面作りをしていた。そ のために、エビちゃんと共になかなかCanCam から卒業できずに年齢を重ねる読者が増えてしまった。 また、エビちゃんのようにモテたいと思い、エビちゃん OL になりきれればエビちゃんのようにモテ ると思っていた20 歳~25 歳くらいの中間層の読者が、エビちゃん OL になっても実際にモテなかっ たと冷却されてすぐにほかの自分志向を打ち出す雑誌に移行してしまった。さらに、CanCam のトッ プモデルであるエビちゃんとの年齢の差から新たにCanCam にエントリーしてくるだろう 18 歳・19 歳の読者が減ってしまったのである。
3.1 仮説が真ならば見えてくる現象 2006 年の後半から 2007 年・2008 年にかけて CanCam の読者層は大きく入れ替わっている。この 時期にCanCam を読むことを止めた女性に止めた理由を聞いてみた。2007 年 3 月号で CanCam を読 むことを止めた当時 21 歳の女子大学生は、大学入学時に CamCam を読み始め、それ以降ずっと CanCam だけを読んでいた。彼女が CanCam を読むことを止めた理由は 2 つある。1つは、エビち ゃんOL という作られたモテの王道を一度極めたものの、周りを見渡せばエビちゃん OL ばかりであ ったことである。もう1つは、蛯原友里本人とはかけ離れたものであると気付き、やはりモデル本人 のようになることは無理なことであると分かったことである。モデルになることは無理であるために、 自分なりのおしゃれを楽しむという自分志向を打ち出すViVi に移行したようだ。 一方ViVi は、2006 年の後半から 2007 年・2008 年にかけて読者の年齢層が下がっている。この時 期にViVi を読むことを止めた女性に ViVi を読むことを止めた理由を聞いてみた。また、この時期に CanCam ではなく ViVi を赤文字雑誌のエントリー誌として読み始めた当時 18 歳の女性に ViVi を選 んだ理由を聞いてみた。2006 年 11 月号で ViVi を読むことを止めた当時 26 歳の女性は、ViVi の誌面 や特集で自分の年齢がターゲットからはずされていると感じるようになったために、ViVi を読むこと を止めて他の雑誌に移行したそうだ。また、2007 年の 4 月号から ViVi を読み始めた当時 18 歳の女性 は、CanCam イコールモテたいというイメージが強すぎて自分もそのように見られることに抵抗感を 覚えたこと、そしてエビちゃんの年齢が自分と10 歳も離れていたことから CanCam を読まずに ViVi を読み始めたようだ。 以上のことからも私のたてた仮説が正しい可能性が高いことが分かる。赤文字雑誌にみられる「加 熱」「冷却」「再加熱」サイクルをエビちゃんが崩してしまったわけだが、CanCam はこれに気付かず に誌面構成をここ数年変えてこなかった。しかし、一方のViVi はこの CanCam の変化に合わせて誌 面を若返らせ意図的に読者の年齢層を低くしたのではないかと考えられる。年齢の高くなった読者が 自然と他の雑誌へ移行し、ViVi の本来の役割である「冷却」を守り続けたことが CanCam のように 販売部数を激減させなかった大きな理由なのではないか。このように考えた根拠として 2006 年後半 から2007 年・2008 年にかけて ViVi の誌面に変化がみられたからである。それは、ViVi で 3 か月ご とに誌面で特集されていた OL の通勤服と私服チェックのコーナーが消えてしまったこと。また、以 前までほぼ毎号に載っていた男性からの声が現在では載っていないことである。このことから、ViVi はCanCam とは違って誌面構成を変えて女性に現実を思い知らせてくれる的確な雑誌になったため、 シェアを獲得し続けられるのではないか。 CanCam のファンとしては、CanCam がエビちゃん OL の大ヒット、赤文字雑誌での圧倒的シェア 獲得というぬるま湯につかっている間に虎視眈々と逆転を狙っていた ViVi の戦略にしてやられたと いう感じである。
4 参考文献・参考URL 竹内洋「日本のメリトクラシー 構造と心証」 東京大学出版会、1995 「CanCam」 小学館、2005~2008 「ViVi」 講談社、2005~2008 「女性ファッション誌の分類・分析2007」 http://taf5686.269g.net/article/4754175.html 全国書店新聞 http://www.shoten.co.jp/nisho/syoten7/shinbun/index.asp 日本雑誌協会 http://www.j-magazine.or.jp/data_001/index.html CanCam 公式 HP http://cancam.tv/index.html ViVi 公式 HP http://www.joseishi.net/vivi/ JJ 公式 HP http://jj-m.jp/ Ray 公式 HP http://www.digi-ray.com/ PINKY 公式 HP http://www.s-woman.net/pinky/ ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC% E3%82%B8