九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
Rhizoctonia属菌の分類に関する研究
松元, 賢
九州大学農学研究科農学専攻
https://doi.org/10.11501/3123045
出版情報:Kyushu University, 1996, 博士(農学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
第3章
28S rDNA
のPCR
-RFLP解
析に基づくRhizoclollÎ
a属菌
の類別
従来の形態的特徴に基づく
Rhizoclonia属菌の系統分類
、には限界があることが多くの研究か ら指摘されている。 Rhizoclonia 属菌には形態、 病原性、 宿主範囲、 生理・生態的性質が異な る複雑な分化型が存在し、 このことが系統分類、に大きな混乱を引き起こす原因となっている。近年、
より基本的な性質すなわち分子遺伝学的性質に基づく系統分 類、が試みられつつあり、
分子遺伝学的性状は系統分類学上のきわめて 重要な指標のひとつとして位置づけられ始めて いる。 このような分子 分類学的研究はより信頼性の高い本属菌内分化型の系統分類学的位置 関係の再検討を可能とし、 さらにこれらの系統進化学的相互関係の推測に寄与するものと推 察される。
R. solaniには性質が異なる多くのグループが混在し、さらに種以下のレベルで分化した多く の種内群が存在 すると推察されているにもかかわらず、 形態的差違に重きを置く従来の分類 方法ではこれらを明確に種として分類整理す ることが出来ずにいる状況にある。 多くの研究 から、 R. solaniは多 数の菌糸融合群
(A
nastomosis group, AG)や種内群(Intraspecific group, ISG)に
区別されている。 これらのグループはまた分子遺伝学的な手法であるアイソザイム解析玖41,
53-54,63-66)、 DNNDNAハイブリダイゼーシヨン41・れ108)、 制限酵素切断長多型(Restriction fragemnt
length polymorphisms, RFLP s)解析丸110-111)、 PCR(Polymerase chain reaction)法11, 17,56,110-112,116)およ
びDNAシーケンス33, 113)などにより類別され、 これらの性質による類別は生物学的諸性質に 基づく菌群の類別と比較的一致 することが明らかとなっている。
R.
solani の菌糸融合群聞の遺伝的 相 関関係を類推するためにそ れら の
ゲノム DNAを DNNDNAハイブリダイゼーションによって調べた結果、 同一の融合群内でDNA塩基配列の
相向性が異なる分化型の存在が発見された。 これらの分化型は、 生理・ 生態的性質、 形態、
病原性および宿主範囲などの違いによる類別とよく一致した。DNNDNAハイブリダイゼーシ
-68-
ョンの相向性は同一の融合群内では高いパーセントを示すが、 融合群間では30%以下になる ことが知られている39)。 しかしながら、 AG 4とAG 6 には相向性の違いによって少なくとも それぞれ2つのISGが存在することが明らかにされている件付)。また、AG1,AG 2およびAG 9にも相向性の違いによっていくつかの分化型がみられた4ト42,108)0DNNDNAの相向性はISG 内では80-100%の類似性を示すが、 異なるISG間では30%以下であるとされている。 これら の結果は、 同じAGに属するISG聞がそれぞれ遺伝的に分化していることを示唆しているo
R. 50l,ωIIのISG聞に遺伝的な違いが存在することはRFLP解析の研究からも示唆されてい る。 RFLP解析の利点として、 試料としてのDNAの量がDNNDNAハイブリダイゼーション よりかなり少量でよい点と、 PCR 法を用いることによって制限酵素による多型性の解析が可 能である点が上げられる4,2九RFLP解析はまた、 DNNDNAハイブリダイゼーション法では 見いだせない詳細な DNAレベル の変異を菌株の遺伝的変異集団として位置付けることがで きる利点もある。 この手法は特に系統分類学や系統進化学的な研究において大きな意味を持 つものと推察される。
リボソームは微生物から高等生物に至る全ての生物の細胞におけるタンパク質合成の場と して共通した役割を担っており、 リボソームRNAの遺伝子であるrDNAの塩基配列は保存性 が高く、 近年系統進化学的研究分野における 遺伝的マーカーとして注目されている。 染色体 DNA中では約100個のrDNA繰り返し配列が存在し、 R. 50lani種レベルではrDNAの変異は 小さいことが認められている。 多くのISGでは1つあるいは2つ以上のrDNAの多型性がみ られる。事実、
R.50laniの種内群におけるのNAのRFLP解析結果は、ISG内に少なからぬ多
型性が観察されることを示し、
R.
50laniの系統分類学的位置関係を複雑にしている。rDNAの サザンブロット法によるRFLP解析では、ISGに特異性を示
す領域のプローブが発見された。~方、PCR法による迅速なISGの同定法も開発されつつあり114)、JSG閣の遺伝的な違いを詳 しく解析することも可能となっている。また、rDNAのITS領域を増幅するプライマーを用 い
た解析により、 AG 1およびAG 2の各AG聞の系統分類学的位置関係が明らかにされつつあ る54-55)。
このように、R. solaniでは分子生物学的手法を用いた種々の系統分類学的研究が行われてい るが、 いずれも断片的な研究と言わざるを得ない。そこで、 本章では28S rDNA領域に相向性 のあるプライマーを用いRhizoctonia属菌およびR. solani種内群のPCR-RFLP解析を行い、 そ れらの属種間および種内群間の系統分類学的な位置関係について総合的に検討した。
ー70-
第1節
Rhizoctonia属菌種聞におけるPCR-RFLP解析
分子生物学的手法によるRhizoctonia属菌の系統分類学的な研究は近年めざましい成果をあ げている。 しかしながら、
2核および多核 Rlzizoctonia属聞における系統分類学的な研究はあ
まり行われていない。 イネ紋枯病および紋枯類似症はRhizoctonia属菌によって引き起こされ ることが報告されており75・77)、R. solani AG 1-IAをはじめいくつかのRhizoclonia属菌がイネに 病原性を示すことが知られている。 これらのRhizoclonÎa属菌によるイネの病徴がよく類似し ているため病原菌の判定を難しくしており、 分類学や病害診断の分野から紋枯病とこれらの 類似病害を区別する必要があると思われる。 また、 これらは系統進化的に分化してきた可能 性があり、 本属菌の系統分類学的な研究を行う必要があると考えられた。前章において、 菌体脂肪酸組成比に基づくRhizoCIOnia属菌の類縁関係を調べた結果、 菌体 に含まれる脂肪酸組成比は種特異的であることが明らかとなり、 Rhi.zoctonia 属菌の種レベル における区別 が可能であることが示唆された。 同様にR. solaJliの菌糸融合群や菌株群はそれ ぞれ特異的な脂肪酸組成比を示 した。 特に、 イネに病原性を示すRhi.zoctonÎa属菌における脂 肪酸分析は、 2核および多核 Rhizoctonia属菌を明確に区別し得ることを示した。 脂肪酸分析 は本属種間の類縁関係を明らかにしたが、 系統進化学的な関係について言及するに至らなか った。 そこで、 分子生物学的手法によって本属菌における種閣の系統分類を試みた。 本節で はイネ紋枯病およびそ の類似病害を引き起こす病原菌として知られているイネ紋枯病菌(R.
solani AG 1-IA)、 イネ褐色紋枯病菌(R. solani AG 2-2 IIIB)、 イネ赤色菌株病菌(R. oryzae WAG- 0)、 イネ灰色菌核病菌(R. fumigata AG-Ba)、 イネ褐色菌核病菌(R.的Jzae-salÎvaeAG-Bb)および
イネ球状菌核病菌(SclerotiumhydrophÎlum)の以上6グループを実験に供試した。
第1項 材料および方法
L供試菌株
実験に供試したRhizoctonia属6菌種計30菌株の来歴をTable 22に示した。菌株は、PDA傾 斜培地上で250C、 暗所で維持・保存した。
Table 22 Lists of Rhizoctonia spp. isolates investiBatcd causinErice sheath diseases
Species Isolate AG
Rhizoctonia solαm
Cs-Ka 1lA
C-325 1 lA
C-326 1lA
Cs-2 1lA
Cs-Gi l lA
C-96 2-2 lIIB C-I00 2-2 IlIB C-116 2-2 IlIB C-328 2-2 IIIB
C-354
2-21IIB
R.σyzαe
Ro-OI05 WAG-O
M23 WAG-O
C-505 WAG-O
R-l WAG-O
KAES -14 WAG-O
R. fumigata
TO-7 Ba
TM-2B Ba KS-Tl-3 Ba
K-Tl Ba
K-T4 Ba
R. oryzae-sativae
93Gi Bb
94S Bb
KS-T2-4 Bb KS-T2δ Bb
K-T5 Bb
ScleroLium h ydroph ilum
94WS-l Bo 94WS-2 Bo KS-T2-1 Bo KS-T2-2 Bo KS-T2-6 Bo
ATCC: American Type Culture Collection, USA.
IFO: Institute for Fermentation, Osaka, Japan.
Source) Origin
Rice ATCC 76121
Riα IFO 30935
Riα IFO 30936
Rice AHU
Riα AHU
Mat rush ATCC 76124 Mat rush MAFF Mat rush MAFF
Rice IFO 30944
Rice AKU
Rice AMU
Ricε AMU
Rice AKU
Riα AKU
Rice AKU
Riα AMU
Rice AMU
Rice AKU
Rice AKU
Rice AKU
Rice AMU
Rice AMU
Riα AKU
Rice AKU
Riα AKU
Rice AMU
Rice
A九1URice AKU
Riα AKU
Rice AKU
AHU: Faculty of Agriculture, Hokkaido University, Hokkaido, Japan.
AKU: Faculty of Agriculture, Kyushu University, Fukuoka, J apan.
MAFF : Ministry of Agriculture, Forestry and Fi sheries. Tsukuba, Japan.
AMU: Faculty of Agriculture, Meijyou University, Nagoya, Japan.
-72-
2. 全DNAの抽出と純化
植物病原菌類は多量の多糖類と脂質を含むために、
DNAの抽出には一般的に塩化セシウム
密度勾配遠心が用いられるが、多数の菌株を供試する場合、 費用と時間の面で問題がある。そこで、 全DNA の抽出には以下に述べる簡便法を用いた。 菌の細胞壁は硬く、 DNA収量は 菌糸細胞の破壊程度にも依存するので、 抽出には若い菌休を使用し、 さらに凍結乾燥を行つ
o h~
あらかじめ PDA平板培地上で分離株を250C、 7日間培養し、 そのプレートから直径6m m のコルクボーラーで打ち抜いた含有寒天菌体をニュートリエントブロス( Nutrient broth, NB)液 体培地 50ml上に移植し、280C、 7日間静置培養した。培養後菌休をブフナ一滴斗を用いて回 収し、 蒸留水で洗浄後、-700Cで凍結後、真空乾燥を行った。凍結乾燥した菌体をエツペンド ルフチューブに入れ、液体窒素を加えて細かく磨砕し、抽出用バッファー{Ly si sbuffer (50 mM Tris-HCI, pH 7.2, 50mM ED宮に1% sodium N -lauroyl sarcosinate, 1 % 2-m ercaptoethano
l))}を450μi
加えて懸濁し、650C、30分間静置した。15,000rpm、15分間遠心分離後上清を回収し、ProteinaseK (300μ g lml)を加え370C、3 0分間タンパク質の分解処理を行った。 さらに、 フェノール/ク ロロホルム/イソアミルアルコール(25:24: 1, v/v/v)を450μl加え激しく撹持し、 15,000rpm、15 分間遠心分離後、上清 を回収した。 フェノール/ク口口フォルム抽出は中間層がなくなるま で繰り返し行った。回収した上清画分に 7.5M酢酸アンモニウムを最終濃度2Mになるように 加え、さらに2倍量の
100%エタノールを加えて、 - 700C、
30分間冷却静置した。15,000rpm、20分間遠心分離後、沈殿を回収し、70%エタノールで洗浄した後真空乾燥を行った。乾燥後、
沈殿物を 100μlの花バッファー(10mMTris-HCI, pH 8.0, 1mM N�EDTA)に溶解しRibonuclease
A(20μg /ml)を加え370C、1時間処理し、
-200Cで保存した。 手順の詳細をFi
g . 21に示した。Rhizoctonia spp. isolates
Cultured in 50ml liquid synthetic medium at 280C for 10 days
Collected mycelia
I
L川ilizedLyophilized|mycelia(50mg)
Superr;1atant
Superflatant
Homogenized mycelia at OOC
Suspended in 500μI extraction buffer (0.15M NaCI, 50mM Tris, pH 8.0,
10mM Na2-EOTA, 1%SOS) Incubated at 650C for 10 min
Centrifuged at 15,000 rpm for 10 min
Pellet Added an equal volume of 4 M potassium acetate Cooled at OOC for 30min
Centrifuged at 15,000 rpm for 10 min
Pellet Added a half volume of 7.5 M ammmonium acetate
Prepicipated with an equal volume of 95% i2・propanol at OOC for 10 min Centrifuged at 15,000 rpm for 20 min
Pe
[
let SupernatantOissolved in 200μI of TE buffer (1 OmM Tris-HCI, pH 8.0, 1 mM N�-EOTA) Shaken with an equal volume of pheno卜chloroform-isoamyl alcohol (25:24: 1 v/v)
Centrifuged at 15,000 rpm for 15 min
Superpatant Pellet
Shaken with an equal volume of chloroform-isoamyl alcohol (24: 1 v/v) Centrifuged at 15,000 rpm for 15min
Supernatant Pellet
Pellet
Prepicipated with two volumes of 95% ethanol at・200C for 30 min Centrifuged at 15,000 rpm for 20 min
Washed once with 80% ethanol Oried in vacuo
Oissolved in TE buffer
Supernatant
Treated with RNase A at 370C for 30 min
Fig. 21 Procedure for extraction and purification of fungal genomic DNA
ー74-
3. PCR による28S rDNA の増幅
RFL P解析を行う場合、 研究目的に応じてプローブを使い分けることが必要である。種内ま
たは特定の集団内での個体識別を目的とする場合、 広範な多型の検出が要求される。rDNAは 種を超えて相向性の高い領域( 18S, 5.8Sお よび28S)と比較的変異性に富む遺伝子問領域 (intergene tic spaαr re gion, ISG)から構成されている。 この構成単位は、 タンデムリピートとし て染色体上に分布し、 ゲノムあたり100-300コピーが存在する。本章では28S rDNAのコード領 域をPCR法によって増幅し、 個々の菌株の増幅産物を制限酵素によって切断しRFLP解析を行 った。2種類のデオキシヌクレオチドプライマーLROR (5'-ACCCGCfGAACTI九t\GC-3')とLR7
(S'-lACTACCACCAAGATCT-3' ) を化学合成した11)。 これらのプライマーは、 Saccharomyces
cereνlSLGeの25S rRNAの17-1,488の部位の塩基配列に基づくものであ り、 各生物種において高 い相向性が維持されている配列に相補的で、 糸状菌、 植物、 動物の28S rDNAの増幅に広く使 われている。
PCR増幅反応には、 Program Temp Control System PC・700の装置を使い、 DNAポリメエラーゼ としてTlh DNA polymerase (TOYOBO
CO., L1D., Tokyo) を付属の反応用バッファーとともに
使用した。 PCR反応時には、 反応条件としてDNAの熱変性を940Cで1分間、 プライマーのアニ ーリングを500Cで45秒間、 DNAポリメラーセ反応を 720Cで1分間として、 同一反応を30回繰り 返した。 PCR増幅後、 1. 0%アガロース電気泳動によって産物の確認を行った。 パクテリオフ ァージ(λ) DNAの制限酵素(EcoRl!liindlII)切断片を分子マーカーとし、 アガロースゲル電気 泳動後のDNA産物はエチジウムブロミドで染色、 uv照射下で写真撮影した。増幅したPCR産物は、 クロロホルム/イソア ミルアルコール(24:1,
wjw) で他出し、 6.5M酢
酸アンモニウム(最終濃度2M) と2倍容量の95%エタノールを加えて-700C、 1時間静置したo 15,OOOrpm、 30分間遠心分離後、 70%エタノールで洗浄、 真空乾燥後 TEバッファーに溶解したo PCR産物を5種類の制限酵素 (MspI, llhal, Sau3AI, HaelIIおよびBamHI)で切断した後、 2.5%アガロース電気泳動に供試した。泳動後のDNA断片はエチジウムブロミドで染色し、uv照射下 で写真撮影した。 また、 すべての試験は少なくとも2回繰り返した。
4. RFLPデータの解析
電気泳動によって得られた各制限酵素による切断パターンの情報から、各菌株の多型性を 断片の種類、と数の違いで比較し、 これらのデータを主成分分析とクラスター分析により解析 し、 各種菌株 の系統分類学的な関係を類推した。 多型性の解析にはMacintoshコンビュータの ソフトSYSTATを用いた。 実際的な多型性の検定では、 分類単位の聞にどの程度の遺伝的な差 違があるかをみるために遺伝距離の概念を用いた。各種菌株の相対的 な位置関係を2次の主成 分を用いた主成分分析を行った。 さらに、 各種菌株間の遺伝的類似度を、 菌株Aと菌体Bの遺 伝的な類似度(相向性)として、2Nab/(Na+Nb) * 100の式から算出した。ここで、のNabはA,Bに共 通してみられるDNA断片数であり、 Na+NbはそれぞれA,BでみられるDNA断片数の合計であ
る。さらに、 遺伝的類似度を基にクラスター分析し、 その結果をデンドログラムに示した。
第2J頁 実験結果
PCR法によって増幅された28S rDNAの部分 断片は、電気泳動によって異なる2種類(1.4-kbp あるいは1.8-kbp)の長さの産物として確認された。 そのうちR. solaniAG
l-lA、 AG 2-2 IIIBお
よびR.fumiga1a菌株か
らは1.8-kbpの産物が 得られ、R.
01りlzae、R.
oryzae-saliνaeおよびR.hydrophilumからは1.4-kbpの長さの増幅産物が得られた。RhizoClonia属菌の2核および多核性と 増幅産物の長さとの聞に相関関係はみられなかった。
各増幅産物を4種類の制限酵素で消化し、
HhαI、 MspI、
S仰3AIおよび:HaeIIIによる消化産物 の電気泳動パターンをFig.22に示した。同時に4種類の制限酵素による消化断片の長さをTable-76嶋
M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 M
Fig. 22 Electrophoretic patterns of PCR-amplified 28S rDNA of Rhizoctonia sheath diseases of rice plant digested with HhaI (A), MspI (B), J-flleIII (C) and Sau3AI JD):
. Lane 1� Çs���;
Lane 2, C-325; Lane 3, C-96; Lane 4, C-354; Lane 5, C-505;
Lane 6, Ro-OI05; Lane 7, TO-7; Lane 8, KS-Tl-3; Lane 9,
93Gi; Lane 10, K-T5; Lane 11, 94WS-1; Lane 12, KS-T2-1 and M, DNA size marker of À-DNA digested with EcoRI and HindIII.
Table 23
Sizes(bp)
of DNA fragments generated after digestion of28S
rDNA from sixRhizoctonia
spp. with four restriction enzymes.Restriction enzyme
species3)
Msplb) Hhalc) Sau3AId) HaelIIe)
R. solani AG 1-IA 310, 450,900 230,680, 850 900 200, 330, 450, 500 R. solani AG 2-2 IIIB 280, 500, 900 230, 680, 880 900 200, 330, 450, 500 R. oryzae 260,400, 550 260, 390, 480 200, 250 100, 900
R. fumigata 170, 330, 500 230, 480,880 850 180, 250, 450 R. oryzae-satiνa e 170, 400, 500 230, 850 550 450, 550
5.
hydrophilum 200, 400, 500 230, 300, 680 550 450, 550
a)
Represent12 AG
s ofR. solani, AGs
ofR.σyzae
and16
Japanese AGs of binucleateRhizoctonia
species.b)All isolates produced a∞mmon 290-bp fragment after digestion with
Mspl.
c)
All isolates produced a common 160-bp fragment after digestion withIlhaI.
d)
All isolates produced common110-
and 800-bp fragments after digestion withSau3AI.
e)All isolates produced common
150-
and220-bp
fragments after digestion withHaeIIl.
23に示したo MspI消化によってRhizoctonia属菌種それぞれに特異的な電気泳動パターンが得ら れたo MspIで、切断した場合の共通断片の長さは290-bpで‘あったが、 R. solaniでは900・旬、
R.
的'zaeで、は550-bpの長さのバンドが特徴的であった。また、
R. solani AG 1-IAとAG 2-2 IIIBとで
はそれぞれ310ーと450-旬、 280ーと500-bpの特有のバンドを示す点において違いがみられた。 一 方、2核Rhizoclonia属菌では500-bpの共通バンドが検出されたが、 R. fumiga1aでは170-と330-旬、
R.αyzae-satiνaeでは170ーと400-旬、 R. hydrophilumで、は200ーと400-bpの特異的なバンドが検出さ
れた。 また、HhaIで、消化した場合、 共通の消化断片は160-bpの長さであったが、 R.的'zaeを除
くと230-bpの長さの断片も共通してみられた。 R. solaniの2つの菌群は同じ切断パターンを示 したが、 それらのパターンはR.oryzaeの消化パターンとは明らかに異なるものであった。また、2核Rhizoctonia属菌では3種の菌種間では明らかに消化パターンの違いが認められた。そのうち
R. fumigαtaで、 は480ーと800-bp、 R. 。η'zαe-sωiνaeで‘は990-bpのみ、 S. hydoroplúlum では550ーと
680・bpの断片がみられた。 Sau3AIで切断した場合、 全ての種で110-と800-bpの共通バンドが検
出された。
R.
solaniの2菌群およびR. のz ae-s a1iνaeとR. hyc.かophilumの切断パターンはそれぞれ
相同的で、あったが、 他の種では特異的な切断パターンを示したolJaeIIIで、消化した場合150ーと
220・bpの共通バンドが検出 され、 Sau3AIの場合と同様な結果が得ら れた。
-78-
28S rDNAの塩基配列の差異に基づ、くからRhizoctonia属菌種聞の相対的位置関係を類推する
ために、PCR-RFLPのデータをもとに主成分分析を行った(Fig. 23)。主成分分析では、 R. solani
の2系統(AG 1-以とAG2・2IlIB)は近縁な関係にあったが、 R.仰zaeとは遠縁な関係にあった。
ー方、 2核Rhizoctonia3属菌に関しては、 R.αyzae-satiνaeとR. hydrophilumは位置的に近縁な関係
にあったが、R.
fumigataはそれらとはやや遠縁な関係にあった。さらにRhizoctonia属種聞における系統 分類学的な関係を類推するためにクラスタ一分析を 行いデンドログラムを作成した(Fig.24)0 RFLPパターンの相似性に基づくデンドログラムは
R. solani AG 1-1とAG2-2 IIIBが系統分類学的には近縁な関係にあるが、 R. σyzaeは系統分類学 的には遠縁な関係にあることを示した。 また、 このデンドログ ラムは2核Rhizoctonia属菌の3 菌種についてR. 0.り'zae叩tiνaeとR.
hy 改ophilumは系統分類学的に近縁な関係にあり、R. ルmigata
はやや遠縁な関係にあることを示した。2ド R.oryzae図
れl
さ1
�
図R. solani AG 1-IAω c o a
E
80ト
ro Q.
ü
.ê.1 ト
0...
-2
図R.solani AG 2-2"旧
回L
R. oryzae-sativae
国S.
hydrophilum 図R.fumiga伺-2.5 ・1.5 ・0.5 0.5 1.5
Principal component 1 2.5
Fig. 23 Plot showing results of principal component analysis of the six Rhizoctonia spp. based on 28S rDNA RFLPs.
R. solani AG 1・IA R. solani AG 2-2 1118 S. hydrophilum R. oryzae-sativae
a a e
Gua
mMJ h O R R
40 60 80 1∞(%)
Percentage of common DNA fragment
Fig.24 Dendrogram showing the phylogenetic relationship of six Rhizoclonia spp.
考 察
前章において、脂肪酸分析によるRhizoctonia属菌の種間における類縁関係を類推した結果、
Rhizoctonia属菌が2核であるか多核であるかと脂肪酸組成比との聞に相関関係はみられなか っ
た。 28S rDNAのPCR-RFLP解析に基づく系統分類学的類縁関係を調べた結果、 概略の分類学 的位置関係を類推することができ、 Rhizoctonia属菌は系統分類学的に大きく2核と多核に類別 可能であることが示唆された。また、 各2核および多核Rhizoclonia属菌はそれぞれさらに系統 進化的に分化している可能性が示唆された。
R. solani AG l-1AとAGユ2 IIIBはそれぞれR. solaniの系統として類別されている21,70.96)。脂肪 酸分析ではこの両グループはよく類似していることが示されが、PCR-RFLP解析の結果では系 統分類学的には両者は分化した集団であることが明らかとなった。 また、 2核Rhizoctonia属菌 のなかで、
R. σyzae-sωiνMとR. hydrophilumは多くの分類学的性質が異なり、 前章に述べたょ
っに脂肪酸分析の結 果からも両者を明らかに区別することができる。しか しながら、 PCR
RFLP解析では両者の制限酵素消化断片のパターンがかなり類似する点もあり、 主成分分析に 基づく系統分類学的な位置関係を考慮した場合、 これらの種は相互に関連性が高いことが示 吸された。 また、 今回の28S
rDNAのPCR-RFLP解析から、 R.αyzaeと他のRhizoctonia属菌とは
-80-
系統進化的には早い段階で分化した可能性が示された。本実験からの推論の域を出ないが、
本来Rhizoctonia属菌に属している菌株の菌糸は多核 が起源、であり、 ある時期に2核の菌株が出 現した可能性が考えられる。しかしながら、PCR-RFLP解析は制限酵素によって消化した断片 の多型性に基づいて解 析する方法であり、 制 限酵素の種類、を変えることによって異なる結論 が得られる可能性も否定できない。今後、28S rDNAのクローニングと塩基配列の解析により、
より精度の高い系統進化的 な類縁関係の解明が望まれる。
第2節 28S rDNAPCR-RFLP解析によるR. solaniの各種菌糸融合群の系統分類
前章において脂肪酸分析はR. solaniの各菌糸融合群や種内群の類別に有効であることを述 べた。DNNDNAハイブリダイゼーション8,41-46)の結果から、
AGlは3ISG、 AG2は3ISG、 AG4
およびAG6
はそれぞれ2 ISGに細別することができると報告されている。 リボソームRNAのPCR-RFLP解析の結果、 AG 1は6ISG、 AG2は5ISGにさらに分化していることが示唆された。
アイソザイム解析51,53-54,59ω,民104)の結果も同様の結果を示している。 このように分子生物学的
手法によって、 R. solaniにはさらに複雑なISGが存在することが明らかになった。 しかしなが ら、 多くのISGの定義は複合種としてのR. solaniの分類、に一層の混乱を引き起こす原因となる ようにも思われる。 本節では、 別の観点、からR. soIaniの系統分類、を再検討することを目的とし て、
28S rDNAのPCR-RFLP解析によるR.
solaniの系統分類学的研究を行った。第lJ頁 R
.
solani AG 1の28S rDNAPCR-RFLP解析AG 1には形態的特徴によって3つのサブグループ70,73)の存在が知られており、
一方、分子生物学的手法によってもいく つかのISGの存在が明らかにされている。 DNNDNAハイブリダイ ゼーシヨンでは3ISG41)に、
rDNAのRFLP解析110)で、は複数のISGが観察された。 さらに PCR法を
用いたRFLP解析55)では少なくとも6ISGが存在するものと思われる。このようにAG 1には複数 のISGが存在し、同じ菌糸融合群の中に遺伝的性質が異なる系統が分化している可能性が示唆 され
ている。 本項では、28SrDNAのPCR帯RFLP解析によってAG 1におけるISGの系統分類学的 位置関係を類推し、 以前の分子生物学的手法による類別結果と比較した。材料および方法
ー82-
菌糸融合群AG
1
に類、別されている菌株を実験に供試し、その来歴をTable 13に示した。菌株 の保存・維持は定法に従って行った。 また、 ゲノムDNAの抽出、 PCRの調製およびRFLP解析 の詳細は前節に記述した方法に従った。実験結果および考察
増幅産物の長さは、AG
l-IAでは1.8・kbpで、あり、AG
1-IBとAG l-ICでは1.4-kbpであった。28SrDNA増幅産物を 4種類の制限酵素(HhaI, MspI, S似3AIとHaeIII)で消化した断片の電気泳動写
真をFig.25に、 各制限酵素による消化断片の長さをTable 24に示したo MspIで、消化した断片の 長さは3つのグループ閣で違いがみられたが、 AG l-IBとAG l-ICでは、
Hhal, Sω3AIおよび
HaeIIIで消化した断片のパターンがよく類似していた。 また、 AG l-IAではこれらの制限酵素 による消化パターンは他の2つのグループと明らかに異なっていた。RFLPデータに基づいて、 AG 1の3グループ間の系統的位置関係を主成分分析とクラスター 分析により調べた結果をFig.26および:Fig.27にそれぞれ示した。主成分分析の結果からは、 こ れら3つのISGは全く異なる位置関係にあり、
RFLP解析からそれらは独立した関係にあること
が明らかとなった。 また、 AG 1の3 ISGのクラスター分析から、 AGl-IBとAG
l-ICとは近縁 な関係にあるが、 AG 1-IAとこれらのおGとは早い時期に分化した可能性が示唆された。これらのサブグループは、 形態、 病原性や宿主範囲が異なり、 遺 伝的に独立しているこ と が多くの分子生物学的な研究によって示されている凡35,40-41,札72・73,108,IIO)oITS領域のPCR-RFLP
解析で、はAG 1は少なくとも6つのISGに類別できるとされているが、 木実験における28S領域 のPCR-RFLP解析の結果では3つのISGに類別され、かつ、 それらは遺伝的に独立していること が明らかとなった。 とくに、
AG l-IAは他の2ISGとは明らかに遺伝的に分化していると思わ
M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 M
Fig. 25 Electrophoretic patterns of PCR-amplified _?8? rl)N� _of _3 ISGs of R. solani AG-l digested with HhaI (A), MspI (B),
HaeIII (C) and Sau3AI (D)・ Lane 1, Cs-Ka; Lane 2, C-325;
Lane 3, '
Cs-IW; Lane 4, CB-515-3; Lane 5, B-54; Lane 6, RI- 86; Lane 7, P-1; Lane 8, RH-28; Lane 9, BV-7 and M, DNA size marker of À-DNA digested with EcoRI and HindIII.
-84-
れる。
Sizes (bp) of DNA fragments gene凶ed after digestion of 28S rDNA from R.
solani
Table 24 AG 1
AGa) Msvlb) llhalc)
AG
1-IA
310,900 680,850AG 1-IB 190, 500 300, 480 AG1-IC 170、190、280 300,480 a) Anastomosis group represented by Ogoshi et al.
b)All isolates produced a common 290- and 450-bp fragment after digestion with MspI.
c)
All isolates produced a common 160- and 230・bp fragment after digestion with HhaI.d)
All isolates produced common 110- and 800-bp fragments after digestion with Sau3AI.e)
All isolates produced common 150・,220- and 450-bp fragments after digestion with HaeIII.flaeIIIe) 200,330,500
550 550
955e
一S一 昭一仰一ωmm 間一川一
R一
1.5
AG 1・IC図
図AG 1・IA ト
ト
。 ト
れi
令・4 a5 0.5
C O 0. E
o u
C 0.
C u
,_
Q_
。5 ←
「←LLLLL
AG 1・旧図
-1.5 よ
・1.5 -0.5 。 0.5
Principal component 1
Plot showing results of principal component analysis of R.
solani AG 1 subgroups based on 28S rDNA RFLPs.
Fig.26
R. solaniAG 2のPCR-RFLP解析 第2項
態的性質の異なる多くのサブグ
閉 主 γすL r
範囲および 宿
AG2は、 形態、 病原性、
R.
solαnl
これらのサブグループはそれぞれ遺伝的性質が異な
-
病原性の異なる5
つの系統聞にお っている可能性が示されている。 脂肪酸分析の結果、 宿ループに類別されている7,24,29,53,70,73,96)。
50 60 70 80
AG 1-IA
�
�� �・18AG 1-IC
90 100
Percentage of common DNA fragment
Fig.27 Dendrogram showing the phylogenetic relationship of R.
solani AG 1.
いて脂肪酸組成比に差異がみられ、 その違いは従来からの類、別によるサブグループの違いと よく一致する こ とを前章に述べた。 AG 2の分子生物学的手法 による類別に関しては、
DNNQNAハイブリダイゼーシヨン42)の解析から少なくとも3つのISGに、 またITS領域のPCR-
RFLP解析53δ4) から 5つのISGに類、別できるとされている。 AG2はこのように遺伝的に独立した
グループに分化している可能性が示唆されている。本節ではAG2に関するこれらのおG聞の系 統分類学的な類縁関係を28S rDNA領域のPCR-RfLP解析によって検討した。材料および方法
AG 2tこ分 類、されている5菌群34菌株を実験に供試した。 菌株の来歴をTable 16に示した。 ゲ
ノムDNAの抽出、PCR産物の調製、 RfLPデータの解析は本章第1節に述べた方法に従った。
実験結果および考察
PCR産物の長さ はサブグループ間で異なり、 AG2-1, AG 2-2 IIIBおよびAG2-3では1.8-k旬、
AG 2-2 IVおよびAG 2-3では1.4-kbpであった。 また、 これらのPCR産物をMspl, }-Ihal, Sau3AI および:Hae111で消化した断片の電気泳動写真を fig.28に、 消化産物の長さをTable 25にそれぞ れ示したo Msplで消化した場合、 AG2-2 IIIBとAG2-2 IV、 AG2-2 IVとAG2-2 LPはそれぞれ
ー86-
M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 M
Fig. 28 Electrophoretic patterns of PCR-amplified 28S rDNA of 5 ISO of R. sola川AG-2 digested with llhal (A), Mspl (B),
HaeIlI (C) and Sau3AI (D)・ Lane 1, PSベLane 2, SHふ Lane 3, '
C�96; Lane 4, C-354; Lane 5, Rh-46; Lane 6, BV-28;
Lane 7, 48R; Lane 8, RGR-38; Lane 9, R-l; Lane 10, R-6 and M, DNA size marker of À-DNA digested with EcoRI and HindIII.
Table 25 Sizes (bp) of DNA fragments generated after digestion of 28S rDNA from R.
solaniAG2
Restriction enzyme
AGa)
Msvlb) Hhalc) Sau3AId)
AG
2-1 700, 900 680, 850 900
AG
2-2 IIIB 500, 900 680, 880 900
AG
2-2 IV 450, 500 300, 680 550
AG
2-2 LP 450, 500 300, 680 550
AG
2-3 500, 900 680、850 250、280、 500 a) Anastomosis group represented by Ogoshi et al
IJaeIIIC) 1 80,250,450 200,33 0,450,500
450,550 450,550 330,450,500
b) All isolates produced a common 290-bp fragment after digestion with M spI.
c) All isolates produced a common 160-bp fragment after digestion with Hha 1.
d) All isolates produced common 110- and 800-bp fragments after digestion with Sau3A I.
e) All isolates produced common 150- and 220-bp fragments after digestion with HaeIII.
類似した消化パターンを示した。 AG 2-2 IVとAG 2-2 LPではさらにHhaI ,
Sau3AIおよび:HaeIII
で消化したパターンがよく類似していた。また、 AG2-3 のHhaI消化パターン はAG2-1と、HaelII による消化パターン はAG2-2IIIBとよく類似していた。
AG2の各サブグループの系統分類学的類縁関係を明らかにするため、RFLPデータを基に 主
成分分析とクラスタ一分析を行い、結果をFig.29とFig.30にそれぞれ示した。主成分分析では、
各ISGはそれぞれ異なる位置を占めたが、 その中ではAG2-21VとAG2-2 LPは比較的近い位置 関係にあった。クラスター分析も同様な結果を示し、 各ISGは遺伝的に分化・独立しているこ
とが明らかとなった。 とく に、 AG2-1、 AG2-2 IIIBとAG2-2 IVはそれぞれ遺伝的に異なって いたが、 AG2-2 IVとAG2-2LPは比較的近縁な関係にあることが明らかとなった。
分子生物学的手法によるR. solani AG 2の類別 の結果、AG2に は多く のISGが存在することが 明らかとなった。 上述の ようにDNんのNAハイブリダイゼーシヨン42)では 3 ISGに、 ITS領域の
PCR-RFLP解析53-54)では 5 ISGに類別されているが、 本実験において もAG 2は28S領域のPCR -
RFLP解析から少なく と も5ISGに類別可能であることが示された。前章における脂肪酸分析の結果で、も、 これら5ISGはそれぞれ異なる脂肪酸組成比を有することを明らかにした。本実験
では、 病原性が異なるAG 2-2 IVとAG 2-2
LP
のRFLPパターンがよく類似しており、 主成分分 析とクラスター分析の結果 から、 これらのおGは 近縁な関係にあることが示唆された。さらにー88-
28S rDNAのPCR産物の塩基配列の決定により、 より詳細なAG 2のISGに関する系統分類を行 うことが必要であると思われる。
1.5
AG2-3図
れj ,'J.5 AG2-211旧図
c ω C
EE
口£3 i 。
<).5
圏
AG2-2IV苛
G C巳EC J -2L
-, .5
AG2-1図 -2
-1.5 ー0.5 。 0.5
Principal component 1
Fig. 29 Plot showing results of principal component analysis of R. solani AG 2 subgroups based on 28S rDN^ RFLPs.
50 60 70 80 90
Percentage of common DNA fragment
AG2・2LP AG2・21V AG 2-1 AG 2-21118 AG2・3
100
Fig.30 Dendrogram showing the phylogenetic relationship of R. solani AG 2.
第3項
R.solani その 他のAG菌
株におけるPCR-RFLP解 析
R.
solani AG
ープからなっている。 脂肪酸分析ではタバコ系統とジャガイモ系統で組成比に違いがみられ、 両者は明らかに分化していることが示されている 101)。 しかしながら、 分子生物学的手法による類別においてはAG 3にはISGの存在は確認され ていない。
AG4はDNNDNAハイブリダイゼーシヨンでは2つのISG
(HG-IとHG-II)に類別でき るとされている44)0 AG4は多くの作物から分離されるが、 DNNDNAハイブリダイゼーシヨン
による類別と病原性による類、別とは必ずしも一致しないとされている。 また、 AG 5はジャガイモから分離されるが、その菌群内にISGはまだ確認されていない70)0 AG 6, AG 7およびAGBI
は土壌から分離される系統であり植物への病原性は確認されていないが3,48-49・87,101 )、 AG 6は、
DNNDNAハイブリ夕、イゼーションでは2つのISGに分化していることが報告されている45)。
そこで、 R. solani AG 3, AG 4, AG5, AG 6, AG 7およびAG BIにつ
いてAGやISG聞の系統分類学的 類縁関係を明らかにするため28SrDNA領域のPCR-RFLP解析を行った。
材料および方法
供試した菌株の来歴をTable 18とTable 19に示した。各菌株の維持および保存は常法にしたが い、 各種実験操作は本章の第1節の方法に準じた。
実験結果
PCR産物を制限酵素HhaI, MspI, HaeIIIおよびSω3AIで、消イじした断片の電気泳動写真をFig.
31-1および31-2に、 また、 消化断片の長さをTable 26にそれぞれ示したo MspIによる消化はそ
れぞれの菌群ごとに特徴的なRFLPノTターンをを示、 とくに、 AG BIでは170-, 200- および
300-bpの 断片が他と較べて特異的であった。 Jihal消化ではいずれの菌株においても300-と
680-bpあるいは680-と880-bpの断片が得られたが、 AG 5とAGBIではそれらとは異なる特異的
な切断片が生じた。各菌群のおu3AIによる消化パターンもそれぞれに特徴的であった。 とく
M 1 2 3 4 5 6 7 8 M
� E竺雪
g 出
咽圃陶 胆圃.
圃.
ーー・ー岨ー ・ー咽Fご:
一一ーー=ニ=ニ一一
B øþw • • A!tW
c -・・ ・凶E
a ー・
o ・..
恒国 ー 也
・・ � 1
S園 EJ 田恒
一 �
法 告 ザモデ
�
=書留缶詰制 竺翌三里- 一
.-
咽恥�
,
Fig. 31-1 Electrophoretic patterns of PCR-amplified 28S rDNA of R.
solani AGふAG-4, and AG-5 digested with HhaI (A), MspI (B), HaeIII
(
C)
and Sau3Al(
D). Lane 1, ST-11-6; Lane 2,ST-9; Lane 3, AH-l; Lane 4, GM-8; Lane 5, R-97; Lane 6,
HI-822; Lane 7, SH-29; Lane 8, GM-10 and M, DNA size marker of À-DNA digested with EcoRI and HindIII.
M 1 2 3 4 5 6 7 8 M
Fig. 31-2 Electrophoretic patterns of PCR-ampJified 28S rDNA of R.
solani AG-6, AG-7, and AG-BI digested with HI叫(A),MspI (�l, HaeIII (C) and Sau3AI (D). Lane 1, NKN引; Lane 2,
NH1-1; Lane 3, NAT 3-1; Lane 4, HAM 1-1; Lane 5,孔もt\FF 305551; Lane 6,恥也生FF 305552; Lane 7, TE-2-4; Lane 8ヲAI・
1-4 and M, DNA size marker of À-DNA digested with EcoRI and HindIII.
-92-
Table
26 Sizes (bp)
of DNAfragments generated after digestion of28S
rDNAfrom R. solaniAG 3, 4 and 5.
e a
lH明 h
.,ιvv a---‘ H . m LH
tn・ m l
・-ω
判∞A
P
M.
山mA
000 00 h F ふ 汀
050
0 5 ・ H
』 E 858 95 w d
仙幼主 こり 一肌仏仏o
1
4
司コ一' ・畑一M一白日百mmmmm刈一的dm釧 00
一n 円仏nu凶w '' ' '' 'LげたS・
F n
u一
u
一0
00
0
0000
一 F U 剖 訂
J
江一α
一78888850一- u
、汀e到 、
山一
s
一322 2 22 58
一崎 山一一
3
f自j
一1一一 d一一拍目白七一 p1ほほ一一一め 匂か
町 一 川中a5民一一000000oo---etu4恥
一
m一一
88880
888 a
G
p j Ud
L
8
0080088
一防一巾fdB〕
zonvooogiooo--1口;l mm~UW古川J一一JJJJJJJ一6 33 66 3 34 一 α中紅白引 一
一gL t
.
-P 2
一
一OGG七ソ 一
)一y ぉ
6
60
一
α一
b ,
しけ U
5
一
一0000 mm沿い一郎沿げてqh4いE一 m一MmM川山的沿m一m 0m一αα山m弘 一対ωωιu9
0000一万い川
河刀
一000
0500
0
一司iE
〈 仁
均一Qノづ/勺/QノAu,AU7Auvぺノ』一引AUAUAUAu,H1一
' ' ' ' ' ' ' '一)宅e右e
E00000 1 0 1 0 - o-ヰKにK
に正一0000606
7一
3I L l
M
一755
7222
1
一戸刈d刈d i- -gkm陀m
一一店p
ppp-
- 5
一[3一
5 5 S 5
O E
e
e c
一
」
」
一T剖M創刊引
一 G G
G
V一ωオ北JA北
一 H H
'
HI-G-制-m・山山・悶・山間- 4 45667E一1 1 1 1 1
巴 G か かG
G G G 引一ん
刈 刈 刈M
A一AAAAAAAAEfめののの
llaeIUe) 180, 330,500 550
550 250,500
180,200 550 550 250,500
に、 AG 3では370-bpの特異的な消化断片が得られたo HaeIIIで、消化したバンドパターンに は
250-,450ーと500-bpあるいは 450・と500-bpの2タイプの組み合わせが観察されたが、 AG3と AG 6
HG-Iではそれらとは異なる特徴的な消化パターンが観察された。これらのAGおよびISG聞の類縁関係を主成分分析で調べた結果をFig.32に示した。 その 結果、
AG3
とAG 6 HG-I、 AG 4 HG-I, HG-II,AG 6-GVとAG 7 はそれぞれ近縁な
2
図 AG6 HG-I
。』 図 AG3
c ω 亡包E o u
:0.5
止同 C tE E J L
o
t:-
�図AG4 HG-II 図AG50.5 図
図 AG7
-1 t.
AG 6・GV-1.5
-1.5 ・1
ー0.5 。 0.5 1.5 2 2.5Principal component 1
Fig. 32 Plot showing results of principal component analysis of R.
solani AG 3-AG BI subgroups based on 28S rDNA RFLPs.
位置関係にあるが、 AG 5とAG
BIはそれらとは遠縁な位置関係にあることが示された。
28S rDNA領域のPCR-RFLP解析の結果、AG4とAG6でそれぞれ2つのISGの存在が明らかとなった。第41頁
R.
solaniの系統分類、について国永・横沢によるDNNDNAハイブリダイゼーションの結果では、各AGは遺伝的に独立して おり、 AG内の各ISGも系統的に分化していると述べている41 )。 また、 リボソームDNA解析に 基づく系統分類では各AG内におけるISG、 とくにAG 2は遺伝的に他と離れた位置関係にある とされている。 本項では本節における実験で得られたデータを基に、 各AG内のISGついて主 成分分析とクラスタ一分析を行い、 それらの系統的位置関係について総合的に検討した。
実験結果
R. solaniに含まれる各々のAGとISGの系統的位置関係を主成分分析により調べた結果をFig.
33に示した。 AG 1とAG 2内で分化している各ISGはそれぞれ独特な位置関係にあることが全 体的な比較によって明らかとなった。 すなわち、AG1の3 ISGはそれぞれ独立した位置にプロ ットされ、 それらは明らかに遺伝的な差異を有することが認められた。 AG2に関しては、 AG 2・2 IIIBとAG2-2 IVとの聞に大きな位置的な違いがみられた。 また、 AG2-1はAG2-2 IIIBと比
較的近縁な位置関係を示し、 またAG4とAG6の各ISGは近縁な位置関係にあった。
さらに、 クラスター分析によるR. solani各菌群の系統分類を試み、 その結果をFig.34
島94-
1.5
れJ
芭 0.5
ω c
g_ 0
E
O U よ0.5
a. C
g
-10.. .-1.5
-2 -2.5
図AG6HG-I AG6GV図
ro.AG 4同3ト11
問凶 AG2・1
AG4トiG-1凶】 閉
�
AG2・21V AG5図図的81図 AG2・2LPAG 2・211旧図 AG3
図AG 1-旧
図 AG1-IC
AG2-3図 AG7図
-2 ・1.5 ・1 ・0.5 0 0.5 1 1.5 2 Principal component 1
Fig. 33. Plot showing results of principal component analysis of R. solani AGs and ISGs based on 28S rDNA RFLPs.
40 60 80
Percentage of common DNA fragment
AG 1-IA AG 1・IB AG 1・IC AG7 AG 4 HG-II AG 4 HG-I AG2・21V AG2・2LP AG6HG・|
AG6GV AG2・211IB AGBI AG2・1 AG5 AG3 AG2・3
100
Fig.34 Dendrogram showing the phylogenetic relationship of R. solani.
に示した。 このデンドログラムでは、 各AG群は大きく3つのセクションから分化してきた可 能性が示された。 とくに、AG 1の3 ISGは、 R. solaniの他のAGやISGとは独立して分化してき た可能性が推察された。AG 1内では、AG
l-
IAはAG l-IBやAG l-ICと明らかに大きく異なって いることが示された。 AG2に関しては、5つのISGは菌糸融合群にかかわりなく分化しており とくにAG2-2 IIIBとAG2-2 IVは遺伝的に相当に遠縁であると思われる。AG2-2 IVとAG2-2 LP は近縁な関係にあるが、 その起源は他のAG 2のISGとは異なり、一方、AG 2・1、AG 2-2 IIIB およびAG 2-3は、 同一のセクション内から分化した可能性が高いと思われる。 また、 AG 4と AG6の各2 ISGは同じ群内で分化し、 また、 AG 3、 AG5、AG7およびAG BIはそれぞれ独立し て分化してきた可能性が示唆された。考 察
R. solaniの分類を定義してる菌糸融合群が、系統進化学的な分類、を反映しているかどうかを
確認するための研究が行われている。 DNNDNAハイブリダイゼーションでは、各AG群はDNA の類似度は30%以下であり、各AGはそれぞれ独立して分化してきたものと推察されている41)。
すなわち、 各菌糸融合 群は遺伝的に独立していると考えられるが、 菌糸融合だけで系統進 化 を論ずることはできないと考えられる。 そこで、 別の指標として、 リボソームDNAの塩基配 列の比較による系統進化的な研究が行われた。 rDNAは保存性が高く、 系統進化的な分類を考 える上では良い指標となるとされている。
VilgalyzI08-111)は、
リボソームDNAの塩基配列の違い によるISGの存在が知られるAG 1、 AG4、 AG 6では、 各AG内のISGは同一の起源から分化し て来ており、それらの類縁関係が明確であるが、AG2のISG間では共通の系統進化的な関係が 見いだされず、したがって、菌糸融合は必ずしもISG聞の系統進化学的な類縁関係を説明する 最もよい分類指標とは考えにくいとしている。本研究における28S
rDNA領域のPCR-RFLP解析により、 Vilgalyzl08・111)の結果と
ほぼ共通した
-96-
結論を得ることができた。 AG 4およびAG
6の各ISGは共通した系統進化学的関係にあった。
また、AG 2に属するそれぞれのISGは共通な位置関係にはなく、AG 2に関してはその菌糸融 合によるISG類別は必ずしも系統進 化学的な類縁関係を反映しているとは限らないことが示 唆された。 一方、 本研究は制限酵素の消化パターンの違い に基づいており、 DNA塩基配列 の 比較によるものではないので、 今後、 28S rDNA領域の 塩基配列の比較に基づ、く系統進化学的 類縁関係を詳細に検討することが必要があるものと思われる。
以上に述べた28S rDNA領域のRFLP解析はRhizoclonia属ならび にR. solaniの系統分類の 指標として、 有効であることを明らかにした。 とくに、 R. solani AG 1は本属菌の中でも系統 進化的には他のAGやISG から独立して分化しており、中でも、AG l-IAは特異的な集団であ ることが考えられる。 脂肪酸分析などの他の指標による研究からも同様な結果が得られてい るので、AG l-IAの種レベルでの再分類、が必要であると思われる。 また、AG2 においては、
各 ISG は系統進化学的な類縁関係を必ずしも反映しておらず、 今後の研究が望まれる。
総 合 考 察
第1節 脂肪酸分析および28S rDNAのPCR-RFLP解析の分類学的有 効性
生物学的にみた植物病原菌類、の最大の特徴は、 細菌や酵母に比べではるかに高度に分化し た構造形態、 すなわち、 有性生殖器官や有性胞子、 様々な形態の無性的な分生子を有する こ とである。 このような 形態構造は進化の過程で最も安定的に保存されてきたので、 菌類の 分 類、では伝統的に生理的諸性質よりも形態的特徴に大きな比重が置かれている。 また、 生殖器 官の形態学的な性状は種族維持と直結するも のであり、 系統分類を考える上で最も基本的 な 分類指標といえる。 と ころが、 自然界で有性 生殖器官を形成しにく い不完全菌類では、 形態 的特徴に基づく系統分類には問題が生じてい る。 糸状菌の分類の基本単位は種であり、 有性 や無性世代の胞子の形 態、 大きさ、 菌糸から分化した特殊器官などの特徴や交配能から区別 されている。 植物病原菌類、ではまた、 宿主植物に対する病原性も重要な基準となる。 しかし、
形質の多様性がみられる場合には種の概念、は複雑になり、 種は単一固定的ではなくある幅の 変異を内包した個体群の集合であることが明らかにされつつある。 したがって、 菌種の特 徴 となる形態上の特徴を正確に把握することには困難を伴うことが多いが、 様々な生化学的 手 法により分類体系の修正が行われつつある。
生化学的手法として 、 核酸、 タンパク質の 生体高分子の情報、 生命の維持に必須の化学成 分あるいは代謝産物に着目して微生物を分類する方法がある。 菌類 の中でも体制が極めて単 純で、 表現形質だけでは系統関係を知ることのできない菌類、において有効な手段となってい る。 DNA塩基組成は、 DNAの性質の中でも分類学上の意義の最初に認められたもので、 塩基 組成の表示にはDNAの全塩基量に対するグアニンとシトシンの合計の占める割合(モル比) を用い、 GC含量(モル%) で示す。 GC含量はDNAの成分分析であり、 大まかな分類学的
-98-
位置を知る目的には有用な指標である。 また、 DNA塩基配列の相向性は、 個々の遺伝子の一 つ一つを考慮せずに、 巨視的に2つの生物閣のヌクレオチド配列の関係を知る方法であり、
近年、 DNA相向性は植物病原菌の分類、に応用され、 種の概念を知る上で最も信頼できる指標 であると考えられている41)。 さらに、 菌体成分分析による分類として、 タンパク質電気泳動 玖63,7り、 アイソザイム解析17,51・52,53-54,59-肌66)やユビキノンの研究などが知られ、 菌類、の分類・
同定の研究に広く応用され、 種の区別に有効であるとされている。
R.
solaniでは菌糸融合の有無に基づいて種以下に区分された多くの系統が存在し、これらの 菌群は上述の様々な生化学的性質と極めて相関性が高いとされている。 しかしながら、 本菌 は種内においてさらに分化した多くの菌群を含むため、 複合種として分類学的な混乱を引き 起こしている。 そこで、 本菌の分類を再検討し 明確な分類、体系を確立するために生化学的 手法による本 属菌の類別について研究した。 本論文では、 近年植物病原細菌の分類に極めて 有効とされている菌体脂肪酸分析による菌体 成分情報と形態的特徴に基づく類別との比較を 行い、 さらに、 系統分類学的立場からリボソーム遺伝子に着目した28S rDNA領域のPCRRFLP解析による本属菌の系統分類学的な類、縁関係について検討した。
中でも、R. solaniの一 系統で あるイネ紋枯病菌(R. solani AG l-IA)の 分類学的位置づけを再検討するために、Rhizoctonia属菌の分類、体系の明確化を行った。
近年、 菌体の構成成分に着目した分類法は高度な飛躍をもたらした。 菌体の成分は遺伝的 に安定しており、菌体を構成する脂肪酸組成比の違いによってRhizoctoniasolani菌群を区別で きることが明らかになっている99・102)。 細胞構成成分の一種である脂肪酸は実験操作の容易性 と分析結果の安定性か ら多くの生物種の分類や同定の指標として広く用いられている。 本論 文においてはRhizoctonia属菌を対象として、 培養条件を一定にして得られた菌体から脂肪酸 を抽出しその構成比を比較することによって、 菌体レベルにおける脂肪酸組成比と形態学に 準じた分類群との関係 を調べた。 その結果、 同一種の菌株間における脂肪酸組成比は一定し
ておりかつ遺伝的に安定していることから、 脂肪酸組成比が種を特徴づける形質になること を示唆した。Rhizoctonia属 各種聞における脂肪酸組成比の傾向として、 ステアリン酸、 オレ イン酸、 パルミチン酸 およびリノール酸が菌株に共通して高い組成比を示したが、 最も高い 組成比を示した脂肪酸は種によってまちまちであった。 また、 R. solaniの種内群、 AG1,AG 2 とAG 4においては脂肪酸組成比の違いによるISGが存在した。 これらのおG 内の菌株間で は脂肪酸組成比に大きな差異がみられなかったが、 異なるISG間では組成比に違いがみられ た。 また、 脂肪酸組成比の情報は形態学に基づく類別を補助する上で有効な手法であること が示唆された。 中でも、 イネに病原性を示すR. solaniAG l-IAとAG2-2 IIIBはそれぞれよく 類似した脂肪酸組成比を示した。 また、 これらのグループは他のAGやISGからは独自に分 化しているものと思われる。 脂肪酸組成比は菌体の遺伝情報を反映しており、 種内の菌株間 では近縁な関係にあるが、 種間では明らかに種特異性のあることがわかった。 RhizoclonÎa属 以外の植物病原菌についてはFusarium属や乃ricularia属菌に関して脂肪酸分析がなされてお り、 脂肪酸組成比は種間では大きな違いが認められず、 Rhizoclonia属と比較して脂肪酸組成 比に明確な特異性が見られないと報告されている。
一方、 リボソームRNAに着目した系統分類学的研究が行われている。 リボソームは全ての 生物種の細胞中にみられ、 タンパク質合成という共通の働きをもっ器官として知られている。
リボソームは進化学上最も変異していない器官であり、 リボソーム にみられる変異は系統進 化学的な関係を反映しているものと考えられることから近年系統分類、の指標として注目され ている。 本論文においてもこの推論に基づいてRh izoclonia属菌における系統分類を試みた。
まずRhizoctonia属の代表的な5種についてその系統分類学的な位置関係を検討した結果、
R.
0りJzaeは早い段階で系統分化しており、R. solaniと2核Rhizoctonia属種がさらに分化した可能 性が示唆された。続いてリボソームRNA遺伝子の制限酵素切断部位の違いと切断片長の違い に従ってR. solaniの系統分類、を行った結果、
R.
sol,ω1lは基木的にはAG毎に分化しているが、ハUハU唱EA
AG内の各ISGは必ずしも互いに近縁とはいえない場合があることが示された。
従来、 各AG は時間的には等しい地点で、分化してきたものと考えられてきた。 しかしながら、 PCR法の技 術が発達してきたことにともないPCR-RFLP解析やリボソームDNAの塩基配列による比較
に関する研究が進展し、 その結果、R.
solanÎの AG聞の系統分類は複雑な関係にあり、 特に AG 1やAG2ではそれぞれのlSGは全くAGとは関係なく分化して来た可能性が推測された 11,17,33,53-54,108,110)。 従来、 系統分類、の指標としてリボソームDNAの中でもとくに1ST 領域が用いられ、
R. solaniをはじめ多くの植物病原菌についてこの領域の塩基配列を比較した研究が
行われている53-56)。各AGおよびISGについて、 リボソームの大サブユニットを構成する28S rDNA領域をPCR-RFLP解析した。その結果とI TS領域に関する検討結果とを比較すると、ほ ぼ一致するといえる。 とくに、 AG 1とAG2に関しては比較的類似した結果が導かれた。 こ れらのことは、 28S rDNA領域の塩基配列の比較によりさらに明らかになるものと思われる。第2節
R.
solaniAG l-1Aの分類学的再評価についてイネ紋枯病菌の不完全世代はR. solaniであり、 完全世代はT. cucumerisであるが、野菜類、の 苗立枯病菌や樹木のくものす病菌も全く同じ学名で記載されている。 それらは、 病徴や発生 生態などにかなりの違いがあり、 全く同一に扱うのは不都合であるとされている82)。 イネ紋 枯病菌は前述のように 、 分化型や同一種のー病原型として区別することが提唱され、 松浦・
高橋と渡辺・松田112)は培養型、 病原性および生態的性質により紋枯病菌をイネ紋枯病系(培 養型IA)とした。一方では、
R.
solaniの菌株を培地上で対峠培養すると、 接触した菌糸聞で融合することがMatusmoto
elal.62)によって発見された。これを菌糸融合とよび、 菌糸融合によ
って類別された菌群と、 病原性、 培養的性質および生態によって類別された系統とはよく一
致しており、 相互に密接な関係があることが示されている。 しかし ながら、 この菌糸融合 の有無によってイネ紋枯病菌とくもの巣病菌とは区別できないことが指摘されている6九生越 82)は、菌糸融合のもつ意味はほとんど不明であるが少なくとも菌糸融合が起こらない菌株間に は遺伝要素の移行がなく、 各菌糸融合群はそれぞれ遺伝的に独立していると考えている。 さ らに、 紋枯病菌とくもの巣病菌は遺伝的にか なり近縁関係にあると思われ、 両者を区別出来 るのは、 前述した生理・生態的性質の違いのみであることを指摘している。 近年、 菌体のタ ンパク質、 酵素、 核酸解析などの手法を用いて菌株間の類縁関係が検討された。 Matsuyama el
al 63)はR. solaniのザイモグラム(非特異的エステラーゼの菌体外酵素の泳動パターン)を各 菌糸融合群間で比較した結果、 イネ紋枯病系とくもの巣病系は全く異なる泳動パターンを示 すことを明らかにした。 さらに、 ザイモグラム型が菌糸融合群と大まかに一致するうえ分化 型とも密接に相関する場合があることを指摘した。 一方、 微生物の分類学的類縁関係を検討 する上でDNAの遺伝情報について着目した類別が行われた。 国永・横津41 )は、 GC含量の近 似性やDNA塩基配列の相向性は菌群間では著しく異なるが菌群内の菌株間では互いに近い 値を示し、 また、 AG 1群内の紋枯病系とくもの巣病系の聞にも大差のないことを明らかにし、
各菌群の菌株は遺伝的に遠縁であるが各群内の菌株は近縁であることを示唆した。
以上のようにR. solaniに属する各菌株の植物病理学的性質、 菌糸融合現象および生理・生 化学的性質による類別はよく一致しており、 さらに各菌糸融合群は遺伝的に独立した菌株集 団であり、 イネ紋枯病系とくもの巣病系はさらに分化した菌株群であることが推察されてい る。R. solaniはこのように諸性質が異なる菌株群に分化しており、 いわば複合種と呼ぶべき菌 系であると思われる。 本論文においては、 菌 体を構成する成分の一種である菌体脂肪酸の分 析およびDNAの遺伝情報であるリボソーム(28S rDNA)のPCR-RFLP解析から、イネ紋枯病菌 の分類学的位置づけについて考察した。
細菌では、 菌体細胞膜を構成している脂質成分は遺伝情報を反映して同一種では一定であ る。 また、 分類学上近縁関係にあると考えられる場合は菌体脂肪酸の組成比は類似する傾向