ノンパラメトリック・スムージング理論とその応用
樋田勉
平成17年7月
目 次
1 はじめに 3
2 多峰性検定を用いた「平成9年全国物価統計調査」の価格分布についての検討 4
2.1 価格分布の多峰性検定 . . . . 5
2.1.1 電気冷蔵庫(指定商標B銘柄番号147東芝 GR-M40K)の価格分布 . . . . 5
2.1.2 養毛剤(指定商標A 銘柄番号293サクセス薬用トニック)の価格分布 . . . . 9
2.1.3 ビール(指定商標A 銘柄番号135サッポロ<生>黒ラベル24缶)の価格分布 . . . . 12
2.1.4 即席カレー(指定商標A 銘柄番号95 ハウス バーモントカレー)の価格分布 . . . . 14
2.2 おわりに . . . . 17
2.3 補論 . . . . 18
2.3.1 Silverman検定(Silverman [123] ) . . . . 18
2.3.2 Fisher, Mammen and Marron [42]の検定 . . . . 20
3 多峰性検出のための視覚的方法 21 3.1 はじめに . . . . 21
3.2 「全国物価統計調査」価格分布の分析. . . . 22
3.2.1 即席カレー(指定商標A 銘柄番号95 ハウス バーモントカレー)の価格分布 . . . . 22
3.2.2 パーソナルコンピュータ(指定商標A銘柄番号251 NEC PC9821 NW133/D14)の価格 分布 . . . . 23
3.2.3 ビール(指定商標A 銘柄番号134サッポロ<生>黒ラベル1缶、指定商標A 銘柄番号 135サッポロ<生>黒ラベル24缶)の価格分布 . . . . 27
3.3 二変量モード・フォレスト . . . . 32
3.3.1 二変量モード・フォレストの作成 . . . . 32
3.3.2 Wand and Jones [144]の二次元混合型正規分布への適用 . . . . 34
3.3.3 標本サイズの影響についての検討 . . . . 37
3.3.4 間欠泉データへの適用 . . . . 39
3.4 「全国物価統計調査」の二次元価格分布分析への適用可能性 . . . . 41
3.4.1 ビール1缶、ビール24缶の擬似価格データの作成 . . . . 41
3.4.2 電気冷蔵庫指定商標A、Bの擬似価格データの作成 . . . . 43
3.5 おわりに . . . . 45
3.6 補論 . . . . 46
4 有限母集団における累積分布関数の推定 48 4.1 はじめに . . . . 48
4.2 分布関数推定量の精度の検討. . . . 51
4.2.1 推定量の精度 . . . . 51
4.2.2 母集団の定義 . . . . 52
4.2.3 精度の比較 . . . . 53
4.2.4 条件付き性質 . . . . 56
4.3 ジャックナイフ分散推定量の精度の検討 . . . . 56
4.3.1 ジャックナイフ分散推定量 . . . . 56
4.3.2 分散推定量の精度. . . . 56
4.3.3 母集団の定義 . . . . 59
4.3.4 精度の比較 . . . . 59
4.3.5 条件付き性質 . . . . 63
4.4 おわりに . . . . 70
4.5 補論 . . . . 72
4.5.1 Horvitz-Thompson推定量 . . . . 72
4.5.2 Chambers and Dunstan [17]の推定量 . . . . 72
4.5.3 Rao, Kovar, and Mantel [99]の推定量 . . . . 72
4.5.4 Wang and Dorfman [147]の推定量 . . . . 73
4.5.5 Kuo [76]の推定量 . . . . 73
4.5.6 Kuk [71]の推定量 . . . . 73
4.5.7 Dorfman and Hall [31]の推定量 . . . . 74
4.5.8 Chambers, Dorfman, and Wehrly [16]の推定量 . . . . 75
5 おわりに 76
1 はじめに
本稿ではノンパラメトリック・スムージング理論の一つである、ノンパラメトリック・カーネル推定とその 応用について取り上げる。カーネル推定は、観測値の背後に滑らかな関数が存在することを仮定し、その関数 を推定する方法であり、密度推定や回帰関数の推定に利用される。そして、カーネル密度推定は密度関数を推 定するための方法で、密度関数の形を視覚的に把握することや、モードの数や位置を調べるためにも利用で きる。
カーネル密度推定量のモード数はバンド幅の値によって変化する。カーネル関数として、正規密度関数を利 用すると、推定値に表れるモードの数は、バンド幅の非増加関数になることが明らかにされている。この性質 を利用して、分布のモードの数を検定する多峰性検定が提案されている。第 2章では、多峰性検定を利用し、
総務庁「平成9年全国物価統計調査」の個票データを利用して価格分布の分析を試みる。多くの価格分布から 多峰性が検出され、多峰性を生み出した要因について詳細に検討する。第2章で行う分析は、舟岡史雄信州大 学教授、西郷浩早稲田大学教授との「平成9年全国物価統計調査」に関する共同研究(官報2003年6月9日公 示)において著者が担当した部分である。
カーネル推定量はデータの視覚化に優れており、視覚的データ解析手法の開発へ応用されることも多い。モー ド・ツリー(mode tree)、モード・フォレスト(mode forest)は、その代表的なものである。第3章では、モー ド・ツリーやモード・フォレストなど視覚的手法について取り上げ、「全国物価統計調査」の価格分布につい て、多峰性検定を行う際に、補助的な利用が可能であるか検討する。
モード・フォレスト、モード・ツリーは一次元データの分析手法であるが、多次元データでは分布の構造は より複雑になりうるので、多峰性の検討はさらに重要である。ここでは、モード・フォレストを二次元データ に拡張した、二変量モード・フォレストを提案する。そして、二変量モード・フォレストが「全国物価統計調 査」の二次元価格分布の分析に利用可能であるかどうか、擬似価格データを作成し検討を行う。
「全国物価統計調査」をはじめ多くの経済統計は、標本調査を行い作成されている。第 4章では、有限母集 団から標本抽出を行う場合に、累積分布関数を推定するための手法について取り上げる。分布関数の推定量と して最も基本的な経験分布関数と、完全な補助変数が利用できる場合の分布関数推定量の性質を検討する。補 助変数が利用できる場合、補助変数と特性値の関係をモデル化して利用することにより、特性値の母集団分布 関数のよりよい推定量を得ることができる場合がある。補助変数を利用する推定量では、パラメトリックモデ ルの利用が一般的であるが、モデルの定式化の段階で、パラメトリックモデルよりも柔軟なモデルを利用した い場合や、パラメトリックモデルの定式化が失敗した場合に、定式化の失敗によるバイアスを減らすことがで きるという意味でロバストな推定量を作成するために、カーネル推定が利用されている。ここでは、カーネル 推定を利用する推定量の性質や可能性についても検討する。また、補助変数を利用する分布関数推定量の中に は、複雑さゆえに分散式の導出が難しいものもあり、ジャックナイフ法を利用して分散を推定する方法が提案 されている。ここでは、主な推定量についてジャックナイフ分散推定量を作成し、シミュレーション実験を行 うことにより、様々な角度からジャックナイフ分散推定量の性質について考察し、今後の可能性について検討 する。
2 多峰性検定を用いた「平成 9 年全国物価統計調査」の価格分布についての検討
「全国物価統計調査」は、「国民の消費生活において重要な支出の対象となる商品及びサービスについて、販 売価格及び料金並びにこれらを取り扱う店舗の立地状況や販売形態などを幅広く調査し、価格の店舗間格差及 び地域間格差、価格分布及び価格形成の実態を解明し、物価対策、地域経済開発計画等各種行政施策の基礎資 料を得ること」を目的とする統計調査であり、統計法に基づく指定統計調査(第108号)として総務省が5年ご とに実施し、平成9年調査で8回目となる。調査対象は全国の小売店舗であり、店舗面積により大規模店舗と 小規模店舗に分けて標本調査が行われている。
店舗の抽出は層別多段抽出によって行われる。一次抽出単位は市町村であり、平成7年の国勢調査で人口が 10万人以上の市については221市すべてが調査対象になる。また、人口が10万人未満の444市のうち259市、
2568町村のうち191町村が人口規模に比例して確率抽出される。抽出された市町村に存在する小売店舗につ いては、「平成9年商業統計調査」の商業準備名簿を用い、売り場面積が450m2以上の店舗を「大規模店舗」、
450m2未満の店舗を「小規模店舗」として店舗の抽出が行われる。
大規模店舗では、店舗が二次抽出単位があるが、調査市町村に存在するすべての店舗が抽出されるため形式 的には層別一段抽出である。小規模店舗では、調査地区が二次抽出単位、店舗が三次抽出単位となる。調査地 区は「商業統計調査」の調査区を組み合わせて設定され、それぞれが属する市町村の人口階級によって定めら れた抽出率によって抽出される。そして、調査地区にある店舗のうち40店舗が抽出され調査される。
調査は「店舗の基本的属性に関する事項」と「商品・サービスの小売価格又は料金に関する事項」について 行われる。「店舗の基本的属性に関する事項」では、店舗の名称、業態、販売の特性、従業者数、競合店の有 無、広告の有無、立地環境などが調査される。また、「商品・サービスの小売価格又は料金に関する事項」で は、「国民の消費生活において重要な商品及びサービスの中から217品目(359銘柄)」が選定され価格などが 調査される。それぞれの品目について銘柄が定められ、全国で共通の商標・規格の商品、サービスが調査され る1。
このように「全国物価統計調査」では、同一時点における様々な商品の価格が、店舗の属性と共に調査され ている。平成9年からは、同年実施の「商業統計調査」の商業準備名簿をフレームとして確率抽出を行い調査 店舗を抽出するようになったため、「商業統計調査」において調査された店舗の属性が価格分布の分析に利用 できるようになった。「平成9年全国物価統計調査報告」(総務庁統計局[130])では、様々な属性によって店舗 の層別が行われている。
「平成9年全国物価統計調査報告」を利用した価格分布の分析としては、美添[154]、舟岡[44] 、井出[63]、
宇南山[142] 、西郷[108] などがある。美添[154] は、価格が安い品目ほど相対的な価格の散らばりが大きい
こと、従って平均価格と変動係数が負の相関を持つことを示し、その原因として探索費用を含めた合理的な消 費者行動から、高価格の商品を購入する場合には、消費者が様々な店舗の価格に関する情報を調査することに よると結論付けている。また、銘柄指定が価格分布に与える影響や、店舗の業態、店舗の経営戦略としての
「ディスカウント販売」の有無が、平均価格に与える影響等について検討している。舟岡[44] は、昭和62年、
平成4年、平成9年の調査結果から、バブル経済初期、バブル崩壊直後、バブル後の不況という3時点におい て、指定銘柄の平均価格を業態別に比較し、最近の百貨店の低迷について考察している。また、店舗の業態、
売り場面積、パート・アルバイト比率が価格形成に与える影響について分析した。さらに、「平成6年商業統 計調査」の結果から、店舗の系列店舗数、取扱商品で見る経営の多角化とマージン率の関係等について検討し ている。井出[63] は、店舗属性と価格の関係について考察している。宇南山[142]は、1990年代以降にいわゆ る「安売り量販専門店」が急増した原因に関する法的規制の経緯についてふれ、これらの「量販専門店」と、
従来からの「一般小売店」の価格差とその原因について検討している。そして、酒類と家電製品については、
「幹線道路周辺」に立地し、大規模チェーン展開する「量販専門店」が、「住宅地周辺」にあり従業員規模が小
さく、パート・アルバイト比率が低い「一般小売店」よりも10〜20%安値で販売していることを示した。価格 差の要因として、酒類では卸売りにおけるリベートなどの商慣行、家電では仕入れルートの違いによると考察 している。西郷[108] は、店舗規模や店舗の業態による価格差を、業態別の分布関数や分散分析を利用して分 析し、業態と店舗規模などの組み合わせによって生じる交互作用について検討している。そして、物価につい て論じる際、平均価格だけでなく分布全体について検討することが重要であると述べている。さらに、特売価 格分布についても検討を行っている。これらの研究は「平成9年全国物価統計調査報告」に表章された結果を 利用して行われており、表章されている結果から物価構造について様々な検討が可能であることが分かる。
一方、「日本の物価構造(解説編)」(総務庁統計局[130])には、様々な銘柄のヒストグラムが示されている。
多くの銘柄のヒストグラムからは、価格分布が多峰型である可能性が示唆される。一般に複数のモードが存在 するということは、対象となる分布が何らかの混合型分布であることを示唆する。このような場合、多峰性を 検出するために検定を行うことができる。多峰性検定を利用することにより、価格分布のモード数がいくつで あるかを客観的に判断することができれば、多峰性の要因の分析や、「日本の物価構造(解説編)」などにおい て、どのようなヒストグラムで価格分布を表章するべきか、という点からも有益である。
本章では、総務庁「平成9年全国物価統計調査」の個票データを利用し、多峰性検定の適用可能性の検討、
価格分布の多峰性の検出と多峰性を生じさせた要因の分析を行う。多峰性を検定するための方法として様々な 方法が提案されているが、本章では、カーネル密度推定を利用するSilverman[123]の検定を主として利用し、
「平成9年全国物価統計調査」において、銘柄指定がされている価格データについて、分布の多峰性に注目し 分析を行う。2.1節では多峰性検定の適用可能性と、多峰性の原因について検討する。2.2節では分析結果をま とめるともに、今後の展望について述べる。
本章は、舟岡史雄 信州大学教授、西郷浩 早稲田大学教授との「平成9年全国物価統計調査」に関する共同 研究(研究代表者 舟岡史雄教授)において著者が分析を担当した部分である。また、「平成9年全国物価統計 調査」の個票利用については、指定統計調査の目的外使用申請を行い、その利用が官報(平成15年6月9日第 3623号、総務省公示第425号、総務省公示第426号)で公示されたものである。
2.1 価格分布の多峰性検定
「平成9年全国物価統計調査報告」(総務庁統計局[130] )では、店舗規模別に店舗の業態、立地環境、従業 員規模など様々な属性によって層別が行われ、価格分布の分位点について、詳細な情報が表章されている。ま た、「日本の物価構造(解説編)」(総務庁統計局[130])では主な調査銘柄の価格分布がヒストグラムとして示さ れている。多くのヒスグラムからは、価格分布が多峰型であることが示唆されるが、ヒストグラムは階級幅の 取り方、階級の上限・下限の設定の仕方によって、分布のモードの数や位置が変化するので、ヒストグラムに 示された分布の形状から、価格分布が単峰であるか多峰であるかを検討するには注意が必要である。より客観 的に価格分布の多峰性を検討するため、本章ではSilverman検定(Silverman[123])の利用を試みる。Silverman 検定は、カーネル推定の性質を利用する多峰性検定であり、Silverman検定をもとにFisher, Mammen, and
Marron[42]の検定など、様々な方法が提案されている。本節では、価格分布の多峰性を多峰性検定によって検
出し、多峰性の原因となる店舗属性の抽出を試みる。
共同研究では、指定商標銘柄を中心に31銘柄の分析を行った。本節では、電気冷蔵庫、養毛剤、ビール24 缶、即席カレーについての分析結果を取り上げる。
2.1.1 電気冷蔵庫(指定商標B 銘柄番号147 東芝 GR-M40K)の価格分布
家電製品の例として、電気冷蔵庫(指定商標B銘柄番号147東芝 GR-M40K)の価格分布を取り上げる。電 気冷蔵庫の価格の基本統計量は表2.1のとおりである。ここで、レンジは99%点と1%点の差である。大規模
店舗の平均価格は156891円、小規模店舗は平均182801円と平均価格の差は大きい。また、大規模店舗の標準
偏差が20970、小規模店舗が23468である。小規模店舗の標準偏差は大規模店舗よりも大きいが、変動係数で
比較するとそれぞれ0.133、0.128と小規模店舗のほうが小さい。小規模店舗については、乗率を利用して基本 統計量の計算を行ったが、大きな違いは見られなかったことから、以下の分析では乗率を利用せずに計算を行 うこととした。
表2.1: 電気冷蔵庫の基本統計量
大規模店舗 小規模店舗
平均 156891 182801
メディアン 155400 186900
標準偏差 20970 23468
レンジ 115185 92610
標本サイズ 1617 1218
標本サイズがnのとき、Silverman検定ではブートストラップ標本を作成する際に、無作為に大きさnの標 本をリサンプリングする。「全国物価統計調査」の標本設計は、小規模店舗は層別三段抽出、大規模店舗は層 別一段抽出である。これを考慮し、Silverman検定のリサンプリングの段階で、西郷[109]の「全国物価統計 調査」の標本抽出構造を模したブートストラップ法を多峰性検定に応用した2。
表2.2はSilverman検定、Fisher, Mammen and Marron [42] の検定、標本抽出構造を考慮したSilverman 検定の結果である(以下では、それぞれFMM検定、SS検定と記す)。空欄は対応するモード数が得られなかっ たケースである3。
大規模店舗では、Silverman検定はモード数が2以下という仮説のp値が0.142で最も高い。また、SS検定 では、モード数が2以下という仮説のp値が0.18、モード数が14以下のp値が0.238である。FMM検定は、
モード数が11以下の仮説以降のp値が大きくなっており、11以下という仮説では0.614、12以下では0.414、
13以下では0.938であった。多くの分布では、FMM検定によるモード数はSilverman検定よりも多くなった。
Silverman検定とFMM検定の違いは、FMM検定が分布の曲率を評価する点にあるので、価格分布が離散的
である点を反映しているものと考えられる。
小規模店舗のSilverman検定では、モード数1の検定のp値が0.162、モード数2のp値が0.248となる。ま た、FMM検定では、モード数が2以下であるという仮説のp値が0.712である。FMM検定はSilverman検 定の結果と比べ、モード数が1以下であるという仮説のp値が小さく、2以下であるという仮説以降のp値が 大きい点が異なる。SS検定では、モード数が2以下であるという仮説のp値が0.12と大きくなっている。
ここでは、多峰性検定の結果から小規模店舗の価格分布のモード数が2であると仮定する。図 2.2の実線は
(h1,crit+h2,crit)/2をバンド幅としたときの、小規模店舗の価格分布の推定値である。ここで、hk,critはk番
目の臨界バンド幅(モード数がk個以下となる最小のバンド幅)である。図2.2から、11万円付近の小さい山 が、多峰性検定によって検出された山であることが示唆される。この山を分離するために、店舗属性4の検討 を行ったところ、店舗の業態が「量販専門店」であるか否かによって、価格分布に大きな差があることが明ら かとなった。154店舗の「量販専門店」と「量販専門店」以外、それぞれの価格分布推定値を図2.2に示した。
2共同研究において西郷浩 早稲田大学教授がSitter, R. R. Simon Fraser University教授との共同研究により考案した方法である。
3カーネル密度推定の計算は観測値xi, i= 1, . . . , nについて、[min(x)−0.3ˆσx,max(x)+0.3ˆσx]を500分割しビン型推定量を利用し た(計算方法の詳細はWand and Jones [145]などを参照されたい)。ここで、ˆσxは標本標準偏差である。また、[hnr/10,4hnr], hnr= 1.06ˆσxn−1/5を常用対数で対数変換後500分割し、各区間の中点を逆変換した値をバンド幅とした。また、ブートストラップ回数は 500とした。
表 2.2: 電気冷蔵庫の多峰性検定の結果
大規模店舗 小規模店舗
Silverman SS FMM Silverman SS FMM
N(f) hk,crit pk pk pk hk,crit pk pk pk
1 10872 0.012 0.000 0.000 5936 0.162 0.090 0.074
2 6730 0.142 0.180 0.000 4551 0.248 0.120 0.712
3 4323 0.018 0.014 0.008 4290 0.048 0.018 0.742
4 3986 0.000 0.000 0.004 4074 0.008 0.002 0.850
5 3841 0.004 0.000 0.972
6 3813 0.000 0.000 0.918
7 3898 0.000 0.000 0.000 3621 0.000 0.000 0.986
8 3621 0.000 0.000 0.000 3594 0.000 0.000 0.952
9 3594 0.000 0.000 0.000 3541 0.000 0.000 0.910
10 3388 0.000 0.000 0.000
11 2541 0.002 0.004 0.614 3388 0.000 0.000 0.930 12 2467 0.000 0.000 0.414 3147 0.000 0.000 1.000 13 1906 0.002 0.012 0.938 2756 0.000 0.000 1.000 14 1154 0.026 0.238 1.000 2113 0.016 0.108 1.000 15 1137 0.000 0.030 1.000 1656 0.038 0.098 1.000
「量販専門店」以外の分布からは、11万円付近の小さな山がほぼ取り除かれており、「量販専門店」を除いたこ とによる効果が現れている5。
表2.3に、「量販専門店」と「量販専門店」以外の店舗の価格分布について、多峰性検定を行った結果を示 した。「量販専門店」以外の分布からは、多峰性が取り除かれていることが分かる。「量販専門店」以外の分布 について、17万円未満と21万円以上の店舗で店舗属性の比較を行った。17万円未満の店舗に相対的に多く含 まれる属性は「競合店が量販専門店」、21万円以上の店舗では「競合店なし」であり、他に大きな差がある属 性はない。「量販専門店」以外の店舗の特徴を見ると、ほとんどすべての店舗は「一般小売店」であり、「ディ スカウント販売」をしておらず、広告を実施していない。立地環境は約半数が「住宅地周辺」であり、店舗の 集積状況は6割が商店街・地下街・ショッピングセンター以外(「その他」)にある。パート・アルバイト比率 は「10〜30%」の店舗が7割以上、店舗面積のメディアンは35m2で、従来型の小規模な「電器店」が多く含 まれていることが分かる。また、約7割の店舗では「競合店が量販専門店」であり、「量販専門店」から影響 を受けていることが分かる。
表2.2の多峰性検定の結果から、大規模店舗の価格分布のモード数を2と仮定して、価格分布の推定を行っ たものが図 2.1である。小規模店舗の「量販専門店」の分布は、大規模店舗の分布に類似している。大規模店 舗の価格分布では、販売の特性が「ディスカウント販売」をしているか否かによって層別を行った。「ディスカ ウント販売」をしている店舗は、ほぼ単峰な分布となったが、「ディスカウント販売」をしていない店舗を単 峰分布に層別するための要因は、本研究で利用した属性の中には見出せなかった。「ディスカウント販売」を していない店舗について、低価格の山に対応する区間と、高価格の山に対応する区間をとり、それぞれの区間
5特定の属性の価格分布推定におけるバンド幅は、カーネル推定量の平均積分二乗誤差を最小にする最適なバンド幅がn−1/5のオー ダーであることから、(hk,crit+hk+1,crit)/2×(n/m)1/5とした。ここで、nは全店舗数、mは特定の属性を持つ店舗数である。
1 1.5 2 2.5 x 105 0
0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8
2x 10
-5
Price distribution Selling at discount price Not selling at discount price
図2.1: 電気冷蔵庫(大規模店舗)の価格分布
1 1.5 2 2.5
x 105 0
0.5 1 1.5 2 2.5x 10
-5
Price distribution Volume sales specialty store Others
図 2.2: 電気冷蔵庫(小規模店舗)の価格分布
表 2.3: 業態別価格分布の多峰性検定 量販専門店以外 量販専門店
Silverman FMM Silverman FMM
N(f) hk,crit pk pk hk,crit pk pk
1 6391.3 0.364 0.584 11671.0 0.084 0.162
2 4045.2 0.476 1.000 7664.6 0.130 0.846
3 3785.3 0.244 1.000 7015.2 0.028 0.804
4 3757.5 0.062 1.000 4375.0 0.238 1.000
5 3702.4 0.004 1.000 4279.2 0.044 1.000
6 3675.2 0.002 1.000 4034.0 0.004 1.000
7 3490.2 0.000 1.000 3747.1 0.000 1.000
9 3464.6 0.000 1.000 3003.1 0.002 1.000
10 3314.6 0.000 1.000 2688.5 0.002 1.000 11 3194.5 0.000 1.000 2252.2 0.010 1.000 12 2945.5 0.000 1.000 1343.8 0.030 1.000 13 2598.3 0.000 1.000 1185.4 0.012 1.000 14 2113.4 0.042 1.000 1159.4 0.000 1.000
15 1608.5 0.182 1.000 964.1 0.004 1.000
に含まれる店舗属性の比較を行った6。「ディスカウント販売」をしていない店舗の7割弱が「量販専門店」で あるが、低価格帯の山には、系列店舗数が「量販専門店 10〜49店」、「人口15〜30万未満市」、二つ目の山に は系列店舗数が「量販専門店50店以上」の店舗が相対的に多く含まれていた。また、両区間とも店舗の集積 状況が「その他」の店舗が半数以上である。
「ディスカウント販売」をしている店舗についても同じ区間で、店舗属性の比較を行った。一つ目の山に対 応する区間に多く含まれる店舗属性は、「量販専門店」、「競合店が量販専門店」、「幹線道路周辺」、店舗の集 積状況が「その他」、系列店舗数が「量販専門店 50店以上」、専用駐車場有、パート・アルバイト比率「10〜 30%」があげられる。二つ目の山に対応する区間に多い属性としては、「スーパー」、「競合店がスーパー」、「駅 周辺」、「商店街」、「ショッピングセンター」、系列店舗数が「スーパー 50店以上」、パート・アルバイト比率
「70%以上」があげられる。店舗面積のメディアンは低価格の区間では708m2、高価格の区間では1635m2で ある。パート・アルバイト比率の平均は、それぞれ21%、44%である。これらの結果から、大規模店舗では、
「競合店が量販専門店」、「ロードサイド」(「幹線道路周辺」で店舗の集積状況が「その他」)に立地し専用駐 車場を持ち、系列店舗が「50店以上」の「ディスカウント販売」している「量販専門店」が安い傾向がある。
また、パート・アルバイト比率は低い。「ディスカウント販売」をしている店舗でも、「スーパー」は「量販専 門店」よりも高い傾向が見られる。「ディスカウント販売」をしていない店舗では、系列店舗が「10〜49店」
の「量販専門店」が低価格の傾向が見られた。また、小規模店舗の、特に「一般小売店」では「競合店が量販 専門店」であることが、価格形成に大きな影響を与えるが、逆の関係は見られないことが分かる。
2.1.2 養毛剤(指定商標A 銘柄番号293 サクセス薬用トニック)の価格分布
日用品の例として養毛剤(指定商標A銘柄番号293サクセス薬用トニック)を取り上げる。養毛剤の基本統 計量を表 2.4に示した。養毛剤の平均価格は大規模店舗1210円、小規模店舗1300円、標準偏差はそれぞれ 217.9、193.9である。また、変動係数は大規模店舗が0.180、小規模店舗が0.149であり、大規模店舗の散らば りが大きい。
表2.4: 養毛剤の基本統計量
大規模店舗 小規模店舗 平均 1210 1300 メディアン 1239 1344
標準偏差 217.9 193.9
レンジ 879 774
標本サイズ 8020 4187
表2.5は養毛剤の価格分布について多峰性検定を行った結果である。図2.3は、多峰性検定の結果から小規 模店舗のモード数を3とし、価格分布の推定を行ったものである。店舗の属性について検討し、店舗の業態が
「コンビニエンスストア」、「不詳」の店舗と、それ以外の店舗に層別した7。小規模店舗の価格分布のモード は、1050円、1250円、1450円付近にあるが、「コンビニエンスストア」の分布は1250円、1450円のモード に対応している。「コンビニエンスストア」の分布は多峰分布であり、それぞれのモードに対応する属性を検 討した。1250円の山に対応する区間と、1450円の山に対応する区間とで店舗の属性を比較すると、「競合店な し」、「専用駐車場有」の店舗が1250円の山の区間に、競合店の業態が「コンビニエンスストア」、「駐車場な し」の店舗が1450円の山の区間に含まれる比率が相対的に高い。
6それぞれの山に含まれる店舗の特徴を比較するために、山の間の谷の位置と密度を求め、それぞれの山について、価格分布の密 度が谷の密度を越える区間(価格帯)に含まれる店舗の比較を行った。他の銘柄・属性についても同様である。
7「不詳」の店舗は2店舗であり、分析への影響はほとんどない。
表2.5: 養毛剤の多峰性検定の結果
大規模店舗 小規模店舗
Silverman SS FMM Silverman SS FMM
N(f) hk,crit pk pk pk hk,crit pk pk pk
1 138.55 0.000 0.000 0.000 83.13 0.016 0.000 0.000 2 63.85 0.000 0.000 0.000 67.12 0.000 0.000 0.000 3 35.13 0.116 0.036 0.000 46.07 0.266 0.208 0.000 4 34.87 0.000 0.002 0.000 40.04 0.060 0.044 0.000 5 34.61 0.000 0.000 0.000 39.17 0.000 0.000 0.000 6 34.11 0.000 0.000 0.000 31.86 0.008 0.002 0.000 7 33.12 0.000 0.000 0.000 29.37 0.000 0.000 0.000
8 29.16 0.000 0.000 0.000
9 32.15 0.000 0.000 0.000 24.07 0.000 0.000 0.000 10 29.87 0.000 0.000 0.000 19.72 0.048 0.090 0.338 11 20.20 0.012 0.014 0.114 17.79 0.044 0.106 0.390 12 12.14 0.322 0.268 1.000 17.66 0.004 0.018 0.160 13 12.05 0.040 0.026 0.998 12.30 0.090 0.242 0.990 14 11.45 0.004 0.000 0.998 12.21 0.026 0.060 0.982 15 10.95 0.000 0.000 1.000 12.03 0.000 0.004 0.958
600 800 1000 1200 1400 1600
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
x 10-3
Price distribution Convenience store Others
図2.3: 養毛剤(小規模店舗)の価格分布
200 400 600 800 1000 1200 1400 1600
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8 2
x 10-3
Price distribution Selling at discount price Not selling at discount price
図 2.4: 養毛剤(小規模店舗)の価格分布2
400 600 800 1000 1200 1400 1600 0
0.5 1 1.5 2 2.5
x 10-3
Price distribution Supermarket
Department store and Cooperative store Others
図 2.5: 養毛剤(大規模店舗)の価格分布
一方、「コンビニエンスストア」以外の分布では、1050円と1450円にモードがあることが分かる。「コンビ ニエンスストア」以外の店舗については、販売の特性が「ディスカウント販売」をしているか否かによって層 別を行った結果を図2.4に示した。このように「ディスカウント販売」の有無が価格形成に与える影響は大き い。「ディスカウント販売」をしていない店舗では、1050円の山に含まれる区間と、1450円の山に含まれる区 間で比較した。一つ目の山では「量販専門店」、「競合店が量販専門店」、二つ目の山では「一般小売店」、「競合 店なし」、広告をしていない、パート・アルバイト比率が「30%以下」の属性が相対的に多く見られた。「コン ビニエンスストア」以外で「ディスカウント販売」をしている店舗については、1050円と1350円付近にモー ドがある。一つ目の山に相対的に多く含まれる店舗属性は、業態が「量販専門店」、二つ目の山では、業態が
「一般小売店」、「住宅地周辺」、パート・アルバイト比率が「30%以下」であった。店舗面積のメディアンはそ れぞれ71m2、66m2である。
このように「コンビニエンスストア」は他の業態とは異なる分布である。また、「コンビニエンスストア」の なかでも、「競合店がコンビニエンスストア」、駐車場がない店舗では、販売価格が高い傾向があるので、駐車 場がなく、複数の「コンビニエンスストア」が競合しながらも経営が成り立つような、集客しやすい環境にあ る店舗が高価格であると考えられる。「コンビニエンスストア」以外の店舗は86%が「一般小売店」、12%が
「量販専門店」であるが、「ディスカウント販売」をしているか否かによって分布が大きく異なる。また、「量 販専門店」の価格は安く、「一般小売店」は高い。「一般小売店」は競合店がある場合に販売価格が低い傾向が あるが、「スーパー」、「量販専門店」ではこの傾向は小さい。さらに、「一般小売店」では、「競合店が量販専 門店」の店舗の価格は安く、パート・アルバイト比率が低い店舗の価格は高めである。「ディスカウント販売」
の有無で層別して比較すると、「ディスカウント販売」をしている店舗でも「住宅地周辺」や、「一般小売店」
は高い。「ディスカウント販売」をしていない店舗では、「競合店が量販専門店」の店舗は安く、競合店がない 店舗や、パート・アルバイト比率が低い店舗は高い傾向がある。
大規模店舗の分布は業態によって異っており、図2.5では、「スーパー」、「百貨店・生協」と、それ以外の業 態に層別したものを示した。「スーパー」の分布で1050円、1350円、1600円付近の山に含まれる店舗の属性 について比較すると、1050円付近には系列店舗数が50店以上であるという属性と、立地環境が「幹線道路周 辺」であるという属性が、1350円、1600円には、系列店舗数が「1〜9店」、立地環境が「住宅地周辺」であ るという属性が相対的に多く含まれている。系列店が「10〜49店」は両区間に同程度含まれる。店舗面積のメ ディアンはそれぞれ、1387m2、1000m2、970m2である。従って、大規模店舗の「スーパー」の中では「住宅 地周辺」にあり、店舗面積が比較的小さいスーパーの価格は高く、「幹線道路周辺」で店舗面積が広く、系列
店舗数が多いスーパーは比較的安い価格で販売していることが分かる。また、「スーパー」・「百貨店」・「生協」
以外の業態として層別した店舗の内訳の75%が「量販専門店」である。これらの店舗では、業態が「量販専門 店」、「ディスカウント販売」をしている、「競合店が量販専門店」、立地環境が「幹線道路周辺」、店舗の集積 状況が「その他」などの属性を持つ店舗の価格が安くなっており、電気冷蔵庫の場合と同様に、「ロードサイ ド」に立地し「ディスカウント販売」をしている「量販専門店」が、低価格であることが分かる。従って、消 費者の店舗へのアクセスのしやすさが、価格形成に強い影響を与えていると考えられる。
2.1.3 ビール(指定商標A 銘柄番号135 サッポロ<生>黒ラベル24缶)の価格分布
大規模店舗の価格分布から、ビール24缶(指定商標A 銘柄番号135サッポロ<生>黒ラベル24缶)を取り 上げる。ビール価格の基本統計量は表2.6のとおりである。1缶の販売価格は、大規模店舗が平均208.3円、小 規模店舗が平均224.1円、変動係数はそれぞれ0.057、0.037である。24缶セットの販売価格では、大規模店舗 の平均4600円、小規模店舗の平均5206円、変動係数はぞれぞれ0.098、0.069である。共に平均価格は大規模 店舗が安く、変動係数は大規模店舗のほうが大きい。小規模店舗の乗率を利用した基本統計量は、利用しない ものと比べ大きな変化は見られない。大規模店舗の24缶セットの価格は1缶当たり191.7、小規模店舗では1
缶当たり216.9と、大規模店舗が約25円安く、店舗規模による価格差、セット販売の値引率の差は大きい。
表2.6: ビール1缶、24缶の基本統計量
1缶 24缶
大規模店舗 小規模店舗 大規模店舗 小規模店舗
平均 208.3 224.1 4600 5206
メディアン 208 229 4494 5368 標準偏差 11.9 8.2 449 361
レンジ 46 36 1372 1761
標本サイズ 3586 8921 3268 8510
ビールの価格分布の多峰性検定の結果は表2.7のとおりである。小規模店舗の分布については、モード数20 以下ではp値が0.1を超える値がなく、多峰性検定によってモード数を決めることができない。また、大規模 店舗の分布では、モード数3のp値がSilverman検定、SS検定で大きく、FMM検定では、モード数3のp値 が0.05、モード数4のp値が0.21であった。ここでは、モード数が3であると仮定し分析を進める。モード 数が3となるように価格分布の推定を行った結果が図2.6である8。図 2.6からビール24缶の分布には、4200 円、4900円、5500円を頂点とするモードがある。
多峰性の要因を分析したところ、店舗の業態が「百貨店」と「百貨店」以外とで、異なる価格分布を示すこ とが分かった。この属性によって分類した店舗の価格分布を図2.6に示した。「百貨店」の価格分布は、ほぼ単 峰な分布である。「百貨店」以外の店舗のついて見ると、「ディスカウント販売」をしているか否かによって、
価格分布が異なることが分かる(図 2.7)。
「百貨店」以外・「ディスカウント販売」をしていない店舗については多峰性が残されていおり、4200円、
4900円、5500円付近に山がある。4200円の山には、系列店の数が「スーパー1〜49店」である店舗、立地環 境が「幹線道路周辺」、店舗の集積状況が「その他(商店街、地下街、ショッピングセンター以外)」、専用駐車 場がある店舗が多く含まれる。4900円の山には、系列店の数が「スーパー50店以上」、立地環境が「駅周辺」
の比率が相対的に大きい。また、5300円以上の店舗を見ると、「住宅地周辺」の店舗が多く含まれる。店舗面 積をメディアンで比較すると、順に1129m2、1485m2、852m2である。
表2.7: ビール24缶の多峰性検定の結果
大規模店舗 小規模店舗
Silverman SS FMM Silverman SS FMM
N(f) hk,crit pk pk pk hk,crit pk pk pk
1 190.62 0.000 0.000 0.000 129.55 0.000 0.002 0.000 2 185.08 0.000 0.000 0.000 91.59 0.002 0.000 0.000 3 108.01 0.136 0.132 0.050 66.20 0.012 0.016 0.000 4 82.20 0.118 0.108 0.210 47.85 0.046 0.026 0.005 5 78.64 0.010 0.004 0.030 45.44 0.034 0.016 0.000 6 69.89 0.002 0.006 0.000 37.23 0.024 0.024 0.030 7 52.41 0.010 0.046 0.000 35.88 0.000 0.000 0.005
8 47.62 0.002 0.000 0.000
9 43.91 0.000 0.000 0.000
10 37.88 0.000 0.000 0.000 35.62 0.000 0.000 0.000 11 34.67 0.000 0.000 0.000 33.33 0.000 0.000 0.000 12 33.66 0.000 0.000 0.000
13 33.17 0.000 0.000 0.000 32.12 0.000 0.000 0.000 14 32.20 0.000 0.000 0.000 30.73 0.000 0.000 0.000 15 31.97 0.000 0.000 0.000 29.18 0.000 0.000 0.000
3500 4000 4500 5000 5500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
x 10-3
Price distribution Department store Others
図2.6: ビール24缶(大規模店舗)の価格分布
3500 4000 4500 5000 5500
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2
x 10-3
Price distribution Selling at discount price Not selling at discount price
図2.7: ビール24缶(大規模店舗)の価格分布2
「百貨店」以外・「ディスカウント販売」をしている店舗はおおむね単峰分布となるが、裾が長い分布となっ ている。ここでは、「百貨店」以外・「ディスカウント販売」をしていない店舗の、4200円と4900円付近の山と で店舗属性の比較を行った。4200円付近の店舗に相対的に多く含まれる属性は、「量販専門店」、「競合店が量 販専門店」、広告をしていない、「幹線道路周辺」、店舗の集積状況が「その他」である。4900円付近の店舗で は、「スーパー」、「競合店がスーパー」、「1日〜13日までと14日〜20日の両方で広告を実施した」、「駅周辺」、
「商店街」、「ショッピングセンター」、系列店舗数が「スーパー 50店以上」が多く含まれる。従って、「ロード サイド」に立地する「量販専門店」が安く、「駅周辺」や「商店街」にある「スーパー」が高いことが分かる。
また、「競合店が量販専門店」の店舗は、「競合店がスーパー」の店舗よりも低価格である。「スーパー」では、
系列店舗数が「10〜49店」の店舗が安く、「50店以上」が高くなっている。舟岡[44] は「平成6年商業統計調 査」の結果を利用し、店舗数階級別マージン率の検討を行っており、系列店舗数が「10〜19店」である店舗の マージン率が最も低く、ついで「20〜49店」のマージン率が低いことを示している。この結果は本節の結果と も整合的である。
「百貨店」以外・「ディスカウント販売」をしていない店舗も、「百貨店」以外・「ディスカウント販売」をし ている店舗と同様に、「ロードサイド」に立地し専用駐車場があり、系列店舗数が「1〜49店」の「スーパー」
が安く、「住宅地周辺」で比較的面積が小さい店舗の価格が高いことが分かる。また、ビール1缶の分布は第 3 章で取り上げるが、24缶と同じ属性で層別が可能である。
2.1.4 即席カレー(指定商標A 銘柄番号95 ハウス バーモントカレー)の価格分布
本節で取り上げた価格分布は、主として多峰性検定が機能するケースであるが、小規模店舗のビール24缶 の価格分布のように、分析を行った銘柄の中には、モード数を多峰性検定によって決めることができないケー スも見られた。ここではこのような銘柄の例として、即席カレー(指定商標A 銘柄番号095ハウス バーモン トカレー)を取り上げる。
即席カレーの基本統計量は表2.8のとおりである。また図2.8は小規模店舗のヒストグラム、図2.9は大規 模店舗のヒストグラムである。即席カレーは小規模店舗、大規模店舗ともに凹凸が激しいヒストグラムであ る。小規模店舗について見ると、最も頻度が高い値161円で販売している店舗数は8059店舗中、約2300店 舗である。一方、160円の店舗は約130店舗、162円の店舗は約10店舗にとどまる。また、166円の店舗が約 1270店舗、165円は約150店舗、166円は約10店舗となっている。同様に173円の店舗は約1040店舗、172 円、174円は10店舗未満である。大規模店舗について見ても、161円の店舗が7081店舗のうち約3210店舗、
166円が約1880店舗と、161円、166円の店舗だけで、全店舗の7割以上を占める。表2.9は、即席カレーの 価格分布について多峰性検定を行った結果である。表 2.9から、多峰性検定の方法よらずp値が0.10を超える モード数がないことが分かる。本章で取り上げた銘柄以外の分布でも、似たような特徴を持つ銘柄では、多峰 性検定によってモード数が決まらないケースが見られた。このようなデータについては、分布が連続であると いう仮定が適当ではなく、そのような仮定のもとで多峰性検定を行うことに問題があるとも解釈できる。ここ では、即席カレーの分布についてヒストグラムを利用し、価格差の要因の検討を行う。
表2.8: 即席カレーの基本統計量
大規模店舗 小規模店舗
平均 161.7 164.9
メディアン 161 166 標準偏差 5.6 8.1
レンジ 35 46
表 2.9: 即席カレーの多峰性検定の結果
大規模店舗 小規模店舗
Silverman SS FMM Silverman SS FMM
N(f) hk,crit pk pk pk hk,crit pk pk pk
1 3.676 0.000 0.000 0.000 3.490 0.010 0.016 0.000 2 3.108 0.000 0.000 0.000 2.207 0.036 0.042 0.000 3 2.776 0.000 0.000 0.000
4 1.868 0.012 0.002 0.000 2.039 0.000 0.000 0.000 5 1.750 0.000 0.000 0.000 2.028 0.000 0.000 0.000 6 1.458 0.000 0.000 0.000 1.738 0.000 0.000 0.000 7 1.332 0.000 0.000 0.000 1.515 0.000 0.000 0.000 8 1.079 0.006 0.010 0.000 1.448 0.002 0.000 0.000 9 0.985 0.004 0.002 0.000 1.437 0.000 0.000 0.000 10 0.969 0.000 0.000 0.000 1.314 0.000 0.000 0.000 11 0.827 0.000 0.000 0.000
12 0.803 0.000 0.000 0.000 0.924 0.004 0.010 0.000 13 0.788 0.000 0.000 0.000 0.913 0.000 0.000 0.000 14 0.709 0.000 0.000 0.000 0.868 0.000 0.000 0.000 15 0.614 0.000 0.000 0.000 0.857 0.000 0.000 0.000
小規模店舗では、161円に「コンビニエンスストア」、179円、180円に「一般小売店」が多く含まれてお り、業態によって層別を行った。ここでは、「コンビニエンスストア」、「一般小売店」9、「コンビニエンスス トア」・「一般小売店」以外の店舗で層別した(図 2.8)。「コンビニエンスストア」・「一般小売店」・「不詳」以 外の店舗の約92%が「スーパー」である。これらの層別の結果、178〜180円の店舗のほとんどが、「一般小売 店」・「不詳」に含まれ、161円の店舗の多くが「コンビニエンスストア」であることが分かる。「コンビニエ ンスストア」の価格は161円と166円が多い。価格差の要因として、パート・アルバイト比率が「70%未満」
と、「70%以上」で分割したものが図2.10である。「コンビニエンスストア」では、パート・アルバイト比率 が高い店舗が低価格の傾向がある。「コンビニエンスストア」・「一般小売店」以外(主に「スーパー」)の店舗 では、166円未満と166円以上の店舗が持つ属性の比較を行った。166円未満に相対的に多く含まれる店舗属 性は、系列店舗数が「スーパー 1〜9、10〜49」、パート・アルバイト比率が「70%以上」であり、店舗面積の メディアンは264m2である。166円以上では「スーパー 系列店なし」で、店舗面積のメディアンは216m2で あった。小規模店舗の「スーパー」では系列店舗があり、パート・アルバイト比率が高く、面積が広い店舗が 低価格であることが分かる。調査店舗のおよそ46%の店舗が「一般小売店」である。「一般小売店」は「住宅 地周辺」に立地するものが約65%、店舗の集積状況は「その他」が約73%であり、従来からの小規模な商店に 対応すると考えられる。「一般小売店」では「競合店がスーパー」の店舗が低価格、消費税が価格に加算され ていない店舗の価格が高い傾向がある。
大規模店舗では、調査店舗数の約89%が「スーパー」である。ここでは、系列店舗数が「スーパー50店以 上」、系列店舗のある「量販専門店」と、それ以外の店舗とで層別した(図2.9)。系列店舗数が「スーパー50 店以上」では、166円未満と166円以上の店舗で店舗属性を比較すると、166円未満では「駅周辺」、「商店街」、
「共用駐車場有」が、166円以上では「大都市」、「住宅地」、店舗の集積状況が「その他」が相対的に多く含ま
9「不詳」の2店舗を含む。
120 130 140 150 160 170 180 0
500 1000 1500 2000 2500
Ordinary retail outlet Convenience store Otherwise
図2.8: 即席カレー(小規模店舗)の価格分布
120 130 140 150 160 170 180
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
Supermarket 50 or more outlets & Volume sales specialty Others
図 2.9: 即席カレー(大規模店舗)の価格分布
120 130 140 150 160 170 180
0 500 1000 1500 2000 2500
Ratio of part-time workers and ’’arubaito’’ >= 70%
Ratio of part-time workers and ’’arubaito’’ < 70%
図2.10: 即席カレー(小規模店舗)の価格分布
れた。また、店舗面積のメディアンを比較すると166円未満では2145m2、166円以上では1244m2であった。
系列店舗数が「50店未満」の店舗についても、166円未満と166円以上の店舗で属性の比較を行った。166円 未満では系列店舗数が「10〜49店」が多く、166円以上では「10店未満」が多い。また、店舗面積のメディア ンは、166円未満では832m2、166円以上では700m2であった。このように、即席カレーの大規模店舗の価格 分布では、系列店舗数が「50店以上」で、店舗面積が広く、「駅周辺」や「商店街」にあり駐車場を共有して いる「スーパー」の価格が安い。また、系列店舗数が「10〜49店」の「スーパー」も低価格の傾向がある。反 対に「住宅地」にある、系列店舗数が「10店未満」で店舗面積が比較的小さい「スーパー」の価格が高いこと が分かる。
小規模店舗のビール24缶の分布でも、多峰性検定によってモード数を決めることができなかった。この銘 柄についても、即席カレーの分布と同様の傾向があり、5494円が約1960店舗、5493円が約70店舗、5492円 が約50店舗、5400円が約650店舗、5399円、5401円が10店舗未満、5250円が約460店舗、5249円、5251 円が0店舗となっている。価格差について検討すると、「ディスカウント販売」を行っていない店舗は、「ディ スカウント販売」を行っている店舗よりも平均価格で15%、メディアンで比較すると20%高い。「ディスカウ ント販売」を行っている店舗では、メディアン以下とメディアンより高い価格の店舗を比較すると、メディア ン以下には「量販専門店」、「競合店が量販専門店」が多く、メディアンより高い店舗には「一般小売店」や駐 車場無し、パート・アルバイト比率が「30%」以下の店舗が多く含まれた。また、「ディスカウント販売」を 行っていない店舗は全体の93%ある。これらの店舗の89%が「一般小売店」である。「ディスカウント販売」
を行っていない「一般小売店」では、「競合店が百貨店」の店舗、パート・アルバイト比率が低い店舗の価格 が高い傾向がある。
2.2 おわりに
本章では「平成9年全国物価統計調査」の個票データから、銘柄が指定されている品目について、多峰性検 定の適用可能性の検討と多峰性の要因分析を行った。多峰性検定にはSilverman検定、Fisher et al. [42]の検 定を利用した。また、Silverman検定のブートストラップの段階で、標本抽出構造を模したリサンプリングを 取り入れた検定を行った。SS検定が多峰性検定として適切に機能しているかどうかを詳細に検討する必要が
あるが、Silverman検定とSS検定の結果が大きく異なる場合、抽出率と価格の間になんらかの関連がある可
能性が示唆される。このような場合は、都道府県や都市階級など抽出率と関連する属性と価格の関係を、詳細 に分析する必要があると考えられる。
多峰性検定の結果、価格分布の多くは多峰分布であった。多峰性検定によって価格分布のモード数を決める ことができる場合、価格分布のヒストグラムを描く際に、この結果を利用し、多峰性検定のモード数とヒスト グラムのモード数が等しくなるようにすることは、多峰性検定の利用法の一つとして考えられる。また、多峰 性の要因として、業態や「ディスカウント販売」の有無など様々な属性を利用して層別を行うことにより、多 峰性を取り除くことができることを示した。価格分布には複数のモードがあり、左右に歪みのあるケースも多 く見られることから、価格について議論する際には平均価格だけでなく、分位点や分布関数を利用することが 望ましい。
本章で行った分析からは、1990年代以降出店が活発化した、「ロードサイド」に立地する大規模な「量販専 門店」が経営戦略として「ディスカウント販売」を行い、それぞれの銘柄の平均価格を引き下げるという傾向 が見て取れた10。これらの「量販専門店」では広告の実施と価格の関係は小さく、常に安値で販売している。
大規模店舗であっても、「駅周辺」、「住宅地周辺」や「商店街」に立地する店舗は、「ロードサイド」に立地す る店舗よりも価格が高い傾向があり、特に「スーパー」はこの傾向が強く、集客の容易さが価格決定に影響を
10家電製品と酒類について宇南山[142]が指摘している。
与えていることが考えられる。また、「量販専門店」、「スーパー」では、系列店舗数が「10〜49店」の店舗が
「10店舗未満」や、「50店以上」の店舗よりも低価格であるという傾向が見られた。これらの結果は、宇南山
[142] 、舟岡[44] の分析とも一致する。「百貨店」はメーカーの希望小売価格周辺で販売しており、業態内の
価格のばらつきは小さい。また、値引き販売を経営戦略としないという点で特徴があるが、「駅周辺」よりも
「幹線道路周辺」の店舗のほうが安い傾向があり、ここでも集客の容易さと価格の関係が考えられる。
大規模店舗の多峰性の要因分析は、小規模店舗よりも困難であった。これは、大規模店舗の多くが複数の系 列店舗をもち、系列店の本部が低コストで大量に仕入れを行い、経営戦略によって価格付けが行われることが 多いためと考えられる。大規模店舗では、店舗の立地環境、「ディスカウント販売」の有無、系列店舗数など、
本部の経営・出店戦略に関係すると考えられる属性が、価格形成に影響を与える要因として抽出されているこ とからも示唆される。
小規模店舗では、「コンビニエンスストア」の価格分布は、他の業態の価格分布と異なる特徴を持つ。「コン ビニエンスストア」の分布は、ほとんどの店舗が同じ価格で、他の業態よりも高く販売している銘柄が多く、
平均価格や分位点推定値の精度は高い。「コンビニエンスストア」は、店舗の立地環境や競合店の有無による 影響は他の業態ほどはっきりと現れないが、「競合店がコンビニエンスストア」の場合、価格が高い傾向が見 られた。また、駐車場がない店舗比率が非常に高い。これらのことから「コンビニエンスストア」では、いつ でも、すぐにいけるところで、同じものが買えるという利便性が、商品にサービスとして付加されているため と解釈できる11。また、食料品、日用雑貨などの銘柄では、標本に含まれる「コンビニエンスストア」の比率 が高いが、これは「全国物価統計調査」の標本設計によるものである。
小規模店舗では「量販専門店」の数は多くはないが、他の業態よりも低価格なケースが多い。「スーパー」、
「一般小売店」では、経営戦略として「ディスカウント販売」をしているかどうかが、価格形成の大きな要因 となっている。「量販専門店」、「スーパー」では、系列店舗がある店舗は低価格の傾向がある。「一般小売店」
では、「住宅地周辺」に立地する店舗や、店舗面積が小さい店舗、パート・アルバイト比率が低い店舗の価格 が高い傾向があり、従来型の小規模な個人商店が多く含まれると考えられる。「一般小売店」では、「競合店が 量販専門店」の場合は低価格で、「競合店がコンビニエンスストア」、「競合店が百貨店」の場合は高価格の傾 向が見られる。このように「一般小売店」では、店舗を取り巻く経営環境が、価格形成に大きな影響を与えて いると解釈できる。従って、古くからある「一般小売店」が、「量販専門店」などによる価格破壊など、最近 の外部環境の変化にある程度対応してはいるものの、対応し切れていない様子が伺える。
これらの結果から、店舗規模、業態など様々な要因が、店舗の価格形成に影響を与えていることが分かる。
本研究では「商業統計調査」で調査が行われている年間商品販売額や商品の仕入れ先など、価格形成に影響が あると考えられる店舗属性のいくつかを利用していない。このような属性を利用することができれば、店舗の 価格形成メカニズムをより詳細に検討できると考えられる。これらの点が今後の課題である。
2.3 補論
ここでは、本章で利用したSilverman検定とFisher et al. [42]の検定について記しておく。
2.3.1 Silverman検定(Silverman [123] )
X1, X2, . . . , Xnが互いに独立で同一な分布F(x)に従う確率変数であり、F(x)は密度関数f(x)をもつと仮 定する。確率変数の実現値をx1, x2, . . . , xnとする。