依存性が自律性 に与える影響 一自己成長感 を媒介 として一

全文

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富山大学保健管理 セ ンター 竹 澤み どり

Effects of dependency on autottomy:

NIidori Takezawa(Center fOr Health

キ ー ヮー ド

依存性、 自律性、 自己成長感

問題 と目的

「依存」 というと一般的にはネガティブなイメー ジを持たれることが多 い。 しか し、心理学の領域 においては、依存 の持つ積極的意義 は幼少期のみ でな く、青年期以降において も認め られつつある (竹澤 ・小玉、2006)。自分一人 では解決す ること がで きずに他者 に依存 して しまうことは、一見、

個人 の人格的 ・能力的成長 に悪影響を与えて しま うよ うに見え るか もしれないが、果 た してそ うで あろうか。個人が直面す る問題 は様 々で、全ての 問題 を自分一人で解決す ることは不可能 といって いいだろう。 その際に、他者 に適切 に依存で きる ことで、 自分一人では到達す ることがで きなか っ た成長を得 る可能性があるのではないだろうか。

一見個人の成長を阻害するように見える他者への 依存が、結果 として個人 の成長 を促す ことにつな が ることはまれな ことではないだろう。本研究で

本研究で は、青年期 において、依存性が 自己成長感 を媒介 として 自律性 に与える影響過程 を検討 した。

303名の大学生を対象 に、依存欲求、依存行動表出、依存後の自己成長感、 自律性 を測定 した。依存欲求、

依存行動 の表 出、依存後 の 自己成長感が どのよ うに自律性 に影響 を与え るのかを検討す るために、依存 欲求か ら直接 自律性 に影響 を与 え るパ ス と依存行動 の表 出 と依存後 の自己成長感 を介 して 自律性 に影響 を与 えるパ スの二つの過程 を想定 したモデルを作成 し、共分散構造分析 によ ってモデルを検討 した。 そ の結果(依 存欲求 は自律性 に負 の影響 を及 ぼすが、依存行動 として表出 し、 自己成長感を感 じることで 自律性が高 まることが明 らか とな った。 この結果 よ り、青年期後期 において依存性 の果 たす重要 な役割 が示 された6

The mediational process of feelins of self-growth Care and Human Sciences, University of Toyama)

は、 このような視点か ら依存の積極的意義を検討 す る。

依 存 性 につ いて は、 高 橋 (1968a、 1968b、

1970)は 中学生か ら大学生を対象 としてそれぞれ の依存構造 を検討 している。高橋 (1968a、1968 b、 1970)の 一連 の研究 を基 に、関 (1982)は 、 依存性を 「依存欲求」だけでな く、成熟 した適応 的な依存性のあり方 としての 「統合 された依存性」、 適応上の問題 を含む依存のあ り方 としての 「依存 の拒否」 とい う3つの変数か らとらえ、 自己像の 肯定度 との関連 を検討 している。 その結果、依存 欲求 の高 さは自己像 の肯定度 とは関連 が な く、

「統合 された依存性」 の高 い人 は自己像 も肯定的 であ り、「依存 の拒否」 が高 い人 は、 自己像の肯 定 度 が 低 い こ とを示 して い るё ま た、 久 米 (2001)は 、大学生 を対象 と して、 自己の安定性 か ら依存性の適応的意義を検討 している。その結

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果、男性 においては、依存欲求 と自己の安定性 と の間には関連がな く、特 に女性 においては依存欲 求 と自己の安定性の間に弱 い正 の相関がみ られ、

さ らに、依存不安を背景 とす る依存の拒否 と自己 の安定性 との間には負の相関が示 されている。以 上 のよ うに、青年期以降において も依存性が個人 の人格的成長 に関 して積極的な意味を有 している ことが示 されつつある。

ところで、依存性の重要な役割のひとつ として、

自立の獲得 に寄与す ることが挙 げ られ る。一般的 に、依存 と自立 は対極概念であ り、発達 とともに 依存性 を脱却 し自立性 を獲得す ることが望 ま しい 発達であると思われがちである。 しか し、両者 は 対極概念ではないとい う指摘が多 くなされている (例えば Ryan&Lynch、 1989)。江 □ (1966) は望 ま しい自立 とは 「外か らの束J激を受 けいれ る ことがで き、 しか もその刺激 に直接 に影響 されず に自己の立場か らの反応がで きるということであ る」 としている。 さらに、依存性 は発達 とともに 変容 してゆ くものであ り、 自立の獲得のためには 依存性が必要であると指摘 している。 また、鯨岡 (2000)は 依存 の形態 は生涯 を通 して様 々に変化 す るが、生涯存在 し続 けるものであ り、 その依存 の形態 によって 自立の現れ方が変化す るとしてい る。つまり、依存が適応的なあ り方 となることに よ って 自立が もた らされるといえる。逆 に、依存 が不適応的なあ り方 となれば自立を達成す ること は困難 となると考え られる。以上のよ うに、両者 の関連が指摘 されているにもかかわ らず、その関 連 を実証的に検討 した研究 はほとん どない。

ここで、 自立(independency)と類似 した概念 と して 自律(autOnomy)が あげ られ る。両者 には重 な る部分 が多 くあ る。 海外 にお いて は Beyers, G o o s s e n s , V a n s a n t & ] M o o r s ( 2 0 0 3 ) が自律 には 大 きく分 けて 2つ の捉え方があると している。一 方 は主 に精神分析理論 を基 に した見方であ り、 自 律を親か らの分離 として捉えている。 もう一方 は、

自己統制や 自主性 として捉え るものである。 しか し、Spear&Kulbok(2004)は それ までの自律研 究 を概観 し、以前 は家族か らの分離 ・独立 を達成

す ることが強調 されていたが、現在で はある程度 の自立を保持 しつつ も、つなが りや愛着を維持す ることが重要視 されていることを示 している。 ま た、青年期 における自己信頼や親か らの独立の程 度 を 浪J定 す る Emotional Autonomy Scale ( S t e i n b e r g & S i l v e r b e r g , 1 9 8 6 ) と様 々な否定的な 変 数 との 関 連 が 指 摘 され て お り (Beyers&

G o o s s e n s , 1 9 9 9 ; R y a n & L y n c h , 1 9 8 9 ) 、  自 律 に おいては親か らの分離や独立 よりも自己制御や 自 主性がよ り重要視 されている。 日本 においては、

Autonomyは 自律性 と訳 され、independenceは 独立や自立 と訳 され、 自立を親か らの分離や独立、

自律を自己統制 0自 己決定 と捉え ることが多 い。

井上 (1995)は 自律性 を 「自分の行動や感情 を自 分が コン トロール しているという感覚」 と定義 し、

自律性 を獲得 してい くことで 自立が達成 され ると している。また、深谷 (2000)は、 自立 には衣食住 などにかかわ る身の回 りの ことを処理す ることが で きる 「身辺 自立」、 自分が生活す るのに必要 な 収入 を得 ることがで きる 「経済的 自立」、 直面 し た問題 に関 して自分で決定す ることがで きる 「精 神的 自立」、他者 のために行動 で きる 「社会的 自 立」があると している。精神的 自立 は井上(1995) 言 う自律性 と同様の概念であると言える。つまり、

自律性 とは主 に自己決定や 自己制御で きることを 指 し、 自立 とは自律性 を獲得す ることや親か らの 独立 も含 め、生活状況全般 とかかわ る包括的な概 念であるといえ る。 したが って、先 に述べた江 口 (1966)の 自立概念 は自律 によ り近 い と考 え られ る。青年期 においては、身辺的自立 は達成 されつ つあるが、経済的に自立す ることは難 しい。 この 時期 に、最 も重要 となるのは 「精神的 自立」つ ま

り、 自律性であると考え られ る。

そこで、本研究では、依存性 と自律性 との関連 を検討す ることとす る。

依存欲求 は 「是認、支持、助力、保証 の源泉 と して他人 を利用 ない し頼 りに したい とい う欲求」

と定義 され る(竹澤 ・小玉、 2004a)。つ ま り、 自 分一人では実行す ることがで きない場合 に、 それ を他者か らの援助 によ って補お うとす るものであ

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る。逆 に、 自律性 とは自分 自身で意思決定 を行 っ たり、自分 自身を制御 したりすることである。従 っ て、両者 は概念的には相反す るものであるといえ る。実際、依存欲求の高 い人 は自己決定 に自信が ない ことが示 されてお り (竹澤 ・小玉、2004a)、

依存性が直接 自律性 を高 めるとは考えに くく、何 らかの別の要因が両者を媒介 していると考えるほ うがよ り現実的であるだろう。 ここで、本研究で は両者を媒介す るものとして 自己成長感 に注 目す る。宅 (2004)は 、 自己成長感を自らがポジティ ブに変容 したと感 じる主観的な感覚 と定義 し、 ス トレスフルな出来事を経験す ることによって自己 成長感 を感 じることを指摘 している。他者への依 存経験 に関 して も、大学生が他者 に依存す ること によるよい影響 として自分が成長す ることがで き る、逆 に悪 い影響 としては自身の成長が阻害 され ると感 じていることが示 されている (竹澤 ・小玉、

2004b)。つ ま り、 他者 に依存す る経験 は、 個人 の抱える問題や課題の解決の促進のみではな く、

自分が成長で きたとい う感覚 を得 ることがで きる 経験 とな りうることがわか る。 自己成長感 はその 後の動機づ けに重要 な影響 を与え ることが示 され てお り (神藤、 1998)、依存 によ って得 た自己成 長感がその後 の個人 の動機づ けを高め、 さ らなる 行動 を起 こしやす くす ると推測 される。つ まり、

依存欲求を抱 いているだけでは、 自己決定 に対 し て 自信がな く自律性 を低めて しまうが、他者 に依 存行動 を表 出 し、 それを通 して 自分が成長す るこ

とがで きたと感 じることで、 それまでは他者の助 けがなければ決定 した り、実行 した りで きなか つ た ことを実行で きるようにな りく 自律性が高 まる と考え られる。具体的には、依存行動を表出す る ことで 自己成長感が高 ま り、 さらにそれが 自律性 を高 めると推測 される。

そ こで、本研究では媒介変数 として 自己成長感 を取 り上 げ、依存性が 自己成長感を介 して 自律性 に影響を与えるモデルを検討す ることによって依 存性 の積極的役割 を示す ことを目的 とす る。仮説 としては、依存欲求 は直接的には自律性 に負の影 響 を与え るが、依存行動 の表 出 と自己成長感を経

る ことによ って、結果 と して 自律性 に正 の影響 を 与 え るだ ろ う。

方法

被 調査者 愛 知県 内 ・茨城県 内 ・大 阪府 内 0千 葉 県 内の大学生303名 (男性 126名、女性 177名) を対象 と した。平均年齢 は、19.49歳(1つ=1.27) で あ った。

調査 内容

①依存欲求 :情緒的依存欲求 (10項目)と 道具 的依存欲求 (10項目)の 2つの下位尺度 か ら 成 る、対人依存欲求尺度(竹澤 ・小玉、2004a) を、回答者が状況を想定 して回答 しやす いよ

うにす るために語尾 を修正 して用 いた (例え ば、「病気 の ときや、 ゆ ううつな ときには誰 かに慰 めて もらいたい」 を 「自分が病気 の と きや、 ゆ ううつなときに、誰かに慰 めて もら いたいとどれ くらい思 いますか ?」 になど、

語尾 を 「〜 どの くらい思 いますか ?」 に修正 した)。6件法 (1:「全 くそ う思わない」〜6:

「非常 にそ う思 う」)で 回答を求めた。

②依存行動 の表 出 :竹 澤 ・小玉 (2004a)の 依 存欲求尺度 の各項 目に関 して、 どの程度実際 に行動 に移すかを尋ねた。 6件 法 (1:「 全 く 行動 しない」 〜6:「 必ず行動す る」)で回答 を求めた。

③ 自己成 長 感 :Takezawa & Kodama(2004) で作成 した「頼 ることによる影響尺度」の下位 尺 度 で あ る 「自 己成 長 感 」 を 用 い た。

Takezawa&Kodama(2004)で 作成 した「自 己成長尺度」は3項 目と項 目数が少 ないため、

竹澤 ・小玉 (2004b)の 自由記述調査結果 の 自己成長 に関す る記述 を基 にさらに自己成長 に関す る4項 目を加 えた。新 たに加 えた項 目 として は、 「前 向 きになることがで きた と思 う」「強 くな ったと思 う」「物事 に対処す る力が 増 した と思 う」「様々な側面か ら物事 を見 るこ とがで きるよ うにな った と思 う」であ る。本 研究では、人 に頼 った後 に感 じる感情 を測定 す ることが必要であるため、教示 を 「あなた

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丁ablel自 己成長感尺度の主成分分析結果

成分 1 共 通性

22 自 分が成長す ることがで きたと思 う

16 自 分 に自信が持てるようになったと思 う 19 前 向 きになることがで きたと思 う 10 そ れか らもがんばることがで きたと思 う 12 物 事 に対処する力が増 したと思 う

8 強 くな った と思 う

1 5   さ まざまな側面か ら物事を見 ることがで きるようになったと思 う

.81 .81 .78 .72 .71 .67 .67

.66 .65 .61 .51 .50

。 46 .45 寄与 率 (%)54.69

丁able2 各 変数の平均値 (標準偏差)および性差

男性

― ― ― ― ― ― ―― ―――   ―   〃 ̀続 〃

丁able3各 変数間の相関係数

情緒的依存欲求 道具的依存欲求 情緒的依存行動 道具的依存行動 自己成長感 自律性

. 6 b * * . 6 4 * *

. 4 0 * *

. 1 9 * * - . 3 2 * * . 3 9 * * . 5 8 * * . 0 6 - . 3 6 * *

. 7 0 * *

. z s * r - . l b * * . 1 9 * * - . 1 1

. 1 0

* * ρ

〈. 0 1

Table2に、各変数間の相関を Table3に示 した。

依存欲求、依存行動 の表 出、依存後 の自己成長 感が どのように自律性 に影響を与えるのかを検討 す るために、依存欲求か ら直接 自律性 に影響を与 え るパ スと依存行動の表出 と依存後の自己成長感 を介 して 自律性 に影響 を与える二つの過程を想定 したモデルを、情緒的依存 と道具的依存それぞれ につ いて作成 した。 それぞれのモデルに対 して Amos4。0を用 いて共分散構造分析 を行 い、 モデ ルを検討 した。

まず情緒的依存で は、全てのパ スが5%水 準で 有意であ った。 このモデルの適合度 は、GFI=。9 9 5 、A G F I = ̀ 9 7 7 、 C F I = . 9 9 6 、R M [ S E A = 。037で あり、データに対するモデルの適合度は十分高かっ た。「情緒的依存欲求」 は 「自律性」 に負の影響、

「情緒的依存行動」 には正 の影響 を与 えていたし 次 に、 「情緒的依存行動」 は 「自己成長感」 に正 の影響 を、 「自己成長感」 は 「自律性」 に正の影 響を与えていた (Figurel)。

次 に、道具的依存 について述べ る。全てのパ ス が 5%水 準で有意であ った。 このモデルの適合度

女性

〃 側

対人依存欲求尺度

情緒的依存欲求 37.94(11.54)42.53(9.94) 道具的依存欲求 42.74(9。 44)42.54(8.10) 情緒的依存行動 28.33(11.37)31.72(9。 22) 道具的依存行動 34.10(10.07)33.77(7.32) 自己成長感     22.08(5。 12)22.10(5。 21)

自律性

13.70**

8.16**

16.27**

29.83(6.51)26.90(6.04)

* * ρ

〈. 0 1

が人 に頼 った後 に、以下 の ことを どの くらい 思 った り、感 じた り しますか。 当て はまる数 字 に○ をつ けて くだ さい。」 と し、5件法 (1:

「全 く思 わ ない」〜5:「 強 く思 う」)で 回答 を 求 めた。

④ 自律 性 :西 田 (2000)が 作 成 した心 理 的 Well―being尺度 の下位尺度である 「自律性」

8項 目を用 いた。6件法 (1:「 全 くあてはま らない」〜6:「非常 にあてはまる)で 回答 を 求 めた。

結果

自己成長感尺度 について

自己成長感尺度 の一次元性 を確認す るために、

主成分分析 を行 った (Tablel)。その結果、全 て の項 目において第1主成分が。40以上 の負荷量を示 した ことか ら、一元性が確認 された。信頼性 に関 しては、7項目で ″=。86であった。

依存性 と自律性 との関連

各 変 数 の男 女 別 の平 均 値 お よ び標 準 偏 差 を

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情緒的依存欲求

情緒的依存行動

自己成長感

は、GFI=。993、AGFI=.964、 CFI=.987、 RM[S EA=。 063であ り、 デー タに対 す るモデルの適合 度 は概 ね高か った。 「道具的依存欲求」 は 「自律 性」 に負 の影響、 「道具的依存行動」 には正 の影 響 を与 えて いた。 次 に、 「道具 的依存行動」 は

「自己成長」 に正 の影響 を、「自己成長」 は 「自律 性」 に正 の影響 を与えていた (Figure2)。

ちなみに、情緒的依存、道具的依存のどち らに おいて も 「依存行動」か ら 「自律性」へのパ スは 有意ではなか った。

考察

人 は適切 に他者 に依存す ることによって、 自信 を持つ ことがで きた、それまでは一人ではで きな か った ことがで きるよ うにな ったとい った自己成 長感を感 じることがで きる (竹澤 ・小玉、2004b)。

自己成長感 によって、 その後 の活動への動機付 け が高まり結果 として自律性が高まると考え られた。

そ こで、本研究では、 自律性の獲得が中心課題 と され る青年期後期 において依存性 と自律性が どの よ うに関連 しているのかを、 自己成長感を媒介変 数 とす るモデルを想定 して検討 した。 その結果、

依存欲求 は自律性 に負の影響 を及ぼすが、依存行

θ77■995,И 67Y■ θ7z 3R=̲99Q』 昴盗勁竪4三θθ7

* * p < . 0 1   実践は正,破 線は負のパスを示す。

誤差変数の表示は省略 し,有 意なパスのみ記載 した。

F i g u r e l   情緒 的依存 と自律性 との関連

θt t Y t t θθ&И 67Y二964,W卜 .θθz¨ 三θそ"

* * 〆 ・0 1   * 疹 〔0 5   実 践は正,破 線は負のパスを示す。

誤差変数の表示は省略 し,有 意なパスのみ記載 した。

F i g u r e 2   道具的依存 と自律性 との関連 道具的依存欲求

道具的依存行動

自己成長感

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動 と して表 出 し、 自己成長感 を感 じる ことで 自律 性 が高 ま る ことが示 され た。他者 へ の依存 は、他 者 との情緒 的 なつ なが りや他者 か らの支持、具体 的 な援助 を求 め る もので あ り、 自分 自身 で は支 え られ な い、 また は解決 で きない部分 を他者 に依拠

す ることである。従 って、 自ら自己決定 し、 自己 を制御す る自律性 とは相反す るものである。 その ために、依存欲求 は自律性 には負の影響 を与えて しまうと考え られる。一方で、依存行動を表出 し、

他者 に依存す るとい う経験 を通 して、人格的に、

または能力 において、 自分が成長 したとい う主観 的な感覚である自己成長感 を感 じることで、新 た な問題 に対 して一人で決定 した り、 自分を統制す ることがで きるよ うにな り、結果 として 自律性が 高 まったと考え られ る。一見遠回 りにも見え る他 者 に依存す るとい う行動が、結果的に自律性 を高 め得 ることが示 された。以上 よ り、依存性 には自 律性の増大 に寄与す るとい う積極的な役割がある ことが明 らか となった。  しか し、本研究ではパ ス 解析 によ って 日常の依存過程の一部 を切 り取 るこ とで、 その影響課程をモデル化 したが、実際は依 存経験 を経て 自己成長感を感 じるとい う課程 を繰 り返す ことで、次第 に自己成長感が内在化 され、

それに伴 って自律性 も高 まるのではないか と推測 され る。

本研究では、依存行動表出か ら自己成長感へ有 意 な正 のパ スが引かれた。つまり、依存行動を表 出す ることは自己成長感 を もた らす ことを示 して いる。 しか し、全ての依存行動 の表出が 自己成長 感 を もた らす とはいえないだろう。依存性人格障 害 に代表 され るよ うな、不適応 な依存 のあ り方 も 存在す る。 実際、 竹澤 ・小玉 (200b)は 他者 に 依存す ることによる影響 として、大学生 は自己成 長感ばか りではな く、成長阻害感 も感 じることを 示 している。他者への依存 の仕方 によっては、 自 己成長感 を感 じる場合 もあれば成長阻害感 を感 じ る場合 もあるだろう。本研究では、一般の大学生 を対象 としてお り、多 くの学生 は大 きな問題 な く 生活を送 っている健常群であるため、依存行動の 表 出か ら自己成長感へ有意 な正 のパ スが引かれた

と考え られる。逆 に、他者への依存の仕方が不適 切である場合 は、依存行動後 に自己成長感 を感 じ

に くい可能性 も考え られ る。不適切 な依存の仕方 と して、長山 (2001)は 「しがみつ き依存」をあ げている。「しがみつ き依存」では、他者か らどれ だけ援助が得 られたとして も、満 たされることは な く、要求 し続 け、それを繰 り返す ことによって、

よ り欠乏感が増す としている。適応的な依存の場 合 は補助的 に他者 を求 めているが、 「しがみつ き 依存」の場合 は自己の存在 その ものを他者 に支 え て もらうことを要求 しているという点で大 きく異 なると考え られる。逆 に、対人関係か ら回避的で あ り他者 に依存す ることがで きない場合 も、適応 的 とは言 えないだろう。 この場合、依存欲求が依 存行動 として表出されに くいために (竹澤 ・小玉、

2005)、自律性 に対 しては負の影響 のみを与えて しまうと推測 される。 さらに、 このような人 は他 者 に依存す ることによ ってよい影響があるとは考 えに くく、例え、依存行動を表出 したとして も、

相手 に迷惑 をかけたのではないか、相手 に弱みを さ らして しまったのではないか とい った不安が高 く、 自己成長感 を感 じに くい(Takezawa,&K6d ama、 2004)。以上 のよ うに不適応的な依存 の場 合、依存経験 を繰 り返す ことで、 または他者 に依 存で きないことで、結果 と して 自律性 は低下 して しまうのではないか と推測 される。本研究では、

適応的な依存 の影響過程を検討 したが、今後 は、

過度 な依存 の場合や依存 に対 して回避的な場合 な どの、不適応的な依存の影響過程 を検討す ること も必要であろ う。

まとめ と今後の課題

本研究 の結果 よ り、青年期後期 において、依存 欲求を抱えるだけでは、 自律性を低めて しまうが、

依存行動 として表出 し、 自己成長感 を感 じること によって、 自律性が高 まることがわか った。つま り、依存行動 を適切 に表出す ることが、結果的に 自律性 を高 めるとい った個人の全般的な成長 に寄 与す ることが可能であることを示す ことがで きた といえよ う。 これまでは、依存性が 自律性 に寄与

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す ることが指摘 されていたが、 その影響課程 は検 証 されて こなか った。本研究 によって、 これまで の指摘が正 しいことをデータによって実証 し、 さ らにそのプロセスを示す ことがで きた。 しか し、

この結果 は大学生を対象 として得 られた ものであ り、将来 に向か って成長 していこうとす る発達段 階に特徴的な ものであるか もしれない。今後 は、

他の発達段階 における自律性 と依存性 の影響過程 を、 それぞれの発達段階を考慮 して検討す ること が必要であると考え られる。

さ らに本研究では、 どのよ うに依存 しているの かなど、依存の仕方 については検討 していないた め、今後 はより自己成長感を感 じることがで きる 依存の仕方 はどのよ うな ものかを検討す ることが 必要であろ う。 それによって、 自律性 を高 めるよ うな依存の仕方 を具体的に提示す ることがで き、

教育場面や臨床場面 に有効 な示唆を与え ることが 可能 となると考え られ る。

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dents.Jαραんθsθ JoじrんαJ o/EdじcαιιοんαJ

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(Takahashi, K。 1968 b Dependent behav―

ior in female adolescents: Ⅱ o Ja/pαんθ sθ

」o膨rんαJ o/ EごじCαιjοんαι PsyθんοJogy,16,

216… 226。 )

高 橋恵子   1 9 7 0   依 存 性 の発達 的研 究 Ⅲ 一大 学生 ・高校生 との比較 における中学生女子の依 存 性 一  教 育 心 理 学 研 究 ,   1 8 , 6 5 ‑ 7 5 . (Takahashi, K.1970 E)ependent behaviOr in female adolescents:Ⅲ .J写 ,α んθ sθ」0じr―

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19)竹 澤 み ど り 0小 玉 正 博  2004b 依 存 す る こ とによ る影響 の検討 ― 質 的検 討 一  日 本心理学 会 第68回大会発表論文集,659.

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竹澤 み ど り ・小玉正博 2005 頼 りた くて も 頼 れ な い人 は どん な人 ?(2)一 対 人 関係 性 の観点 か ら一 日 本健康心理学会第 18回大会 竹澤 み ど り ・小玉正博 2006 適 応 的 な依存 とは ?:依 存概念 の再検討 筑 波大学心理学 研 究 ,   3 2 ,   7 3 ‑ 8 6 。 ( T a k e z a w a , M . &

Kodama,M. 2006 What is adaptive de―

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宅 香 菜子 2004 高 校生 にお ける 「ス トレ ス体験 と自己成長感 をつ な ぐ循環 モデル」 の 構 築 自我 の発 達 プ ロセスの さ らな る理 解 に む け て  臨 床 心 理 学 研 究 ,22,181‑186。

(Taku, K.2004 HCirculation model fo―

cused on the relationships between stress experience and a feeling of self― growth"

in high school students: Towards the further understanding of the process of

ego development.」oじrηαι o/Л ηαんθSθ

CJιんjcαι  Psycん οι ogy,22,181‑186.)

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