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M. laxa の 3 種が報告されている。このうち,各種殺菌

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(1)

は じ め に

オウトウ灰星病は,開花期の花腐症状から収穫期の実 腐症状まで長期にわたって被害をもたらす病害である が,特に栽培後期の実腐症状による被害は甚大で,防除 体系の中でも本病防除は重要な位置を占めている。我が 国では病原菌として, Monilinia fructicola M. fructigena

M. laxa の 3 種が報告されている。このうち,各種殺菌

剤に対して耐性菌の報告があるのは M. fructicola のみで ある。菌種によって薬剤耐性菌の発生頻度が異なる可能 性はあるが, M. fructicola 以外については分離頻度が低 く,詳細な調査は行われていない。

ジカルボキシイミド系薬剤はオウトウ病害の防除薬剤 として古くから使われており,北海道では近年まで重点 防除期に使用されてきた。Monilinia 属菌の本剤耐性菌 は米国で初確認( S

ZTEJNBERG

and J

ONES

, 1978 )されてから オーストラリア( P

ENROSE

et al., 1985 ) ,ニュージーラン ド(E

LMER

and G

AUNT

, 1994)等の各国で確認されてきた。

ま た,韓 国(L

IM

et al., 1998)で も 耐 性 菌 が 確 認 さ れ,

プロシミドンとイプロジオンの間の交差耐性や,本剤耐 性菌の生存適応性の低下が明らかにされている。日本で は, 2010 年に北海道で本病が多発した際に,本剤耐性 菌の発生が確認された(栢森ら, 2014)。本稿では,その 際に実施した検定法について紹介する。

I 耐性菌の現状

北 海 道 で は 2000 〜 03 年 に オ ウ ト ウ 灰 星 病 菌( M.

fructicola )について,ジカルボキシイミド剤感受性のモ

ニタリングを行った際,感受性の低下は確認されなかっ た。一方,2010 年にオウトウ灰星病が多発し,改めて モニタリングを行ったところ,この系統の薬剤に対する 耐性菌が全道のオウトウ栽培地域で広く確認された。以

後,ジカルボキシイミド系殺菌剤の使用は年 1 回以下と 現場で指導されており,オウトウ灰星病の多発に陥るこ とはなくなった。

II 検定材料の調製方法

1 病原菌の採取

罹病果実表面に形成された分生子をストレプトマイシ ン加用 PDA 平板培地に画線し,単胞子分離株を得た。

なお,調査対象薬剤の散布履歴のない園地から分離した ベースライン菌株を供試するのが望ましい。筆者は殺菌 剤を散布しない農試の予察果樹園より分離した菌株を供 試した(図― 4 の F201 株)。

2 菌種の同定

M. laxa は分生子の形態で容易に区別できるが,M.

fructicolaM. fructigena の分生子サイズは酷似してお り,検鏡のみで両者を区別することは難しい。菌種の同 定には① PDA 上の培養性状,②リンゴ果実への接種,

そして③遺伝子診断の三つの方法が用いられる。ジカル ボキシイミド系殺菌剤感受性菌は①や②のみで種の判別 は可能(H

ARADA

et al., 2004)であるが,薬剤耐性を獲得 した菌株では,分生子形成能の低下や生育遅延等の培養 特性が変化することがあり,判断に迷うことがある。そ

の際は, Monilinia 属菌内の種特異的プライマーの利用

が有効である(C

ÔTÉ

et al., 2004)。なお,筆者らが検定 した 2010 年北海道分離 96 菌株のうち,M. fructicola は

95 菌株, M. fructigena は 1 菌株であったため,前者の

95 菌株を対象に考察した。

( 1 ) PDA 培地での培養性状

PDA へ植菌したのち,20℃,暗黒下で 7 日間程度培

養すると 90 mm シャーレの縁にほぼ達する(図―1,口

絵①) ,さらに菌核形成まで観察する場合は 3 週間程度 培養する。

M. fructicola :植菌した部位から均等に同心円状に生

育する。PDA 上で容易に分生子を形成,分生子塊は粉 っぽい。ただし,ジカルボキシイミド系薬剤に対して耐 性を獲得した一部の菌株は分生子形成量が減少する。

M. fructigena :植菌した部位から均等には広がらず,

Methods for Testing Dicarboximide Resistance in Monilinia fructicola.  By Miyuki KAYAMORI

(キーワード:オウトウ,ジカルボキシイミド系薬剤,灰星病菌,

Monilinia fructicola)

( 17 )ジカルボキシイミド系薬剤耐性オウトウ灰星病菌

Monilinia fructicola

栢  森  美  如

道総研十勝農業試験場

植物防疫基礎講座:

植物病原菌の薬剤感受性検定マニュアル2016

(2)

A

D E F

B C

図−1 PDA培地上での菌叢(20℃暗黒下で7日間培養)

A〜D:ジカルボキシイミド耐性M. fructicola,E:感受性M. fructicola,

F:感受性M. fructigena.

A,Bは分生子形成量が少ない菌株.CはFのM. fructigenaのように菌 叢周縁部に切れ込みがあり,生育が遅延している.

接種6日目

接種8日目

A B C

A B C

図−2 リンゴ果実に対する有傷接種での分生子形成様式(20℃,暗黒下で 6日間および8日間培養)

A:ジカルボキシイミド耐性M. fructicola,B:感受性M. fructicola,

C:感受性M. fructigena.

上記は一例であるが,耐性菌には生育が遅い菌株や分生子形成量が少 ない菌株が散見される.

(3)

周縁部に切れ込みを生じる。寒天培地から墨汁に似た特 徴的な匂いを発する。M. fructicola と比較して菌糸生育 速度が若干遅く, PDA上では分生子形成はわずかである。

( 2 ) リンゴ果実への有傷接種

PDA 培地上で前培養した Monilinia 属菌をコルクボー ラーで打ち抜き,リンゴ果実表面に同じ大きさ(あるい はやや大きい)のコルクボーラーで穴をあけ,寒天ディ スクを埋め込む。20℃の湿室に静置し,約 1 週間後に分 生子塊の形成状況を観察する(図― 2 ,口絵②)。

M. fructicola :感染した部位は水浸状に変化することか

ら判断できるが,分生子塊は接種部位の周囲に局在する ことが多い。分生子塊は粉っぽく灰色を呈する。ただし,

ジカルボキシイミド系薬剤に対して耐性を獲得した一部 の菌株は分生子塊の形成が少なかったり遅れたりする。

M. fructigena :分生子塊は接種部位から遠く,水浸状

に変化した周辺部にも形成される。分生子塊はマット状 で,M. fructicola に比較して白い。

( 3 ) 遺伝子診断

C

ÔTÉ

et al. ( 2004 )が開発した種特異的プライマーが利 用できる(表― 1 )。プライマー配列のリバース側は 3 菌種 とも共通で,フォワード側が種ごとに異なるように設計

されている。原著によると primer MO368―8R/MO368―5 で 増 幅 さ れ る 種 は M. fructigenaM. polystoroma の 2 種となっているが,これらの増幅産物のサイズには

23 bp の違いしかないので,増幅断片のサイズから判別

するのは困難である。近年, M. fructigena の一部を独立

M. polystoroma に移すという提案があったが,日本国

内においては詳細に検討されておらず,本稿でも広義の

M. fructigena として扱っている。なお,増幅産物は M.

fructicola は 535 bp M. fructigena は 402 bp M. laxa は 351 bp であるので, multiplex ― PCR によって容易に識別 できる(図―3)。

III 感受性検定方法

1 寒天希釈平板法

検定培地には PDA 培地を用い,オートクレーブ後に 所定の濃度の薬液を加用する。薬剤は市販のプロシミド ン 水 和 剤,イ プ ロ ジ オ ン 水 和 剤 を 用 い る。供 試 菌 を

20℃,4 日間前培養したのち,菌叢周縁部を 4 mm のコ

ルクボーラーで打ち抜き,この菌叢表面が培地に接する ように置床する。その後, 20 ℃で 2 日間培養し,菌叢直 径を計測して,50%生育阻害濃度(EC

50

)を求める。

表−1 Monilinia属菌を同定する特異的プライマー

菌種 プライマー名 プライマー塩基配列

M. fructicola MO368―10R 5―AAG ATT GTC ACC ATG GTT GA―3

MO368―5 5―GCA AGG TGT CAA AAC TTC CA―3

M. fructigena MO368―8R 5―AGA TCA AAC ATC GTC CAT CT―3

MO368―5 5―GCA AGG TGT CAA AAC TTC CA―3

M. laxa Laxa―R2 5―TGC ACA TCA TAT CCC TCG AC―3

MO368―5 5―GCA AGG TGT CAA AAC TTC CA―3 反応条件は95℃2分,(95℃15秒,60℃15秒,72℃1分)×35サイクル,72℃3分.

リバース側プライマーは共通.

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

図−3 Multiplex PCRによる判別

Lane1〜18:検定サンプル(5がM. fructigena,ほかはM. fructicola)Lane19Control(M. fructicola)Lane20Control

M. fructigena2010年北海道分離96菌株のうち,Lane5の1菌株のみがM. fructigenaであった.

(4)

検定濃度は,モニタリングが目的の簡易検定であれば 幅を持たせた希釈段階でも問題はないが, EC

50

の精度を 上げるには 2 倍ごとの希釈が望ましい。筆者は MIC(最 小生育阻止濃度)も検討したため 0 1.0 2.0 3.9 7.8 15.6,31.2,62.5,125,250,500,1,000,2,000 mg/l で 実施したが, EC

50

だけを求めるのであれば 0 〜 125 mg/l

の間で十分である。

イプロジオンでは EC

50

が高い耐性菌でも MIC が低い 菌株が存在する(木曽・山田,1998)。このため,ジカ ルボキシイミド系薬剤耐性菌の判別に MIC は用いず,

EC

50

を用いることが適切とされる。

代表的な菌株の各濃度における生育割合を図―4 に示し

120 100 80 60 40 20 0

120 100 80 60 40 20 0 2 7.8 31.2 125 500 0

% %

EC50=0.16

EC50=8.22 EC50=3.73 EC50=0.11

0 2 7.8 31.2 125 500 120

100 80 60 40 20

0 0 2 7.8 31.2 125 500

% 120

100 80 60 40 20

0 0 2 7.8 31.2 125 500

120 100 80 60 40 20

0 0 2 7.8 31.2 125 500

% 120

100 80 60 40 20

0 0 2 7.8 31.2 125 500

EC50=3.81 EC50=2.36

プロシミドン濃度(mg/l) イプロジオン濃度(mg/l)

(S)F201

(M)M72

(R)M171

菌糸伸長率

図−4 薬剤添加培地上におけるオウトウ灰星病各菌株の反応

R=耐性菌,S=感受性菌(ベースライン菌株)

40 35 30 25 20 15 10 5 0

0.00―0.10 0.11―0.20 0.21―0.30 0.31―0.40 0.41―0.50 0.51―0.60 0.61―0.70 0.71―0.80 0.81―0.90 0.91―1.0 1.1―2.0 2.1―4.0 4.1―

40 35 30 25 20 15 10 5 0

0.00―0.10 0.11―0.20 0.21―0.30 0.31―0.40 0.41―0.50 0.51―0.60 0.61―0.70 0.71―0.80 0.81―0.90 0.91―1.0 1.1―2.0 2.1―4.0 4.1―

EC50(mg/l)

EC50(mg/l)

プロシミドン

(n=95)

イプロジオン

(n=95)

菌株数 菌株数

図−5 オウトウ灰星病菌(M. fructicola)に対するEC50の分布(2010年北海道分離株)

耐性菌はプロシミドンで16菌株(17%),イプロジオンで16菌株(17%)であり,

それぞれ同一の菌株であった.

(5)

た。 EC

50

に大きな違いはないものの, イプロジオンの MIC 値は,M72 株が 500 mg/l 以上,M171 株では 31.2 mg/l である。中には中程度の濃度で生育しないが,高濃度で 再び生育する菌株もあり,灰色かび病菌などでは,ポリ モーダル生育と呼ばれている(木曽・山田, 1998 )。

北海道で分離した菌株に対する EC

50

を並べると 2 峰 性を示した(図―5)。この結果から EC

50

が 1.0 mg/l 以上 を耐性菌とする。

一般に,ジカルボキシイミド系薬剤に属する薬剤に対 する耐性菌では交差耐性が認められると言われている。

本病原菌においてもプロシミドンとイプロジオン間にこ の現象が認められた(図―6)。2010 年の北海道分離株で はプロシミドンの EC

50

が最大で 8.22 mg/l,イプロジオ ンの EC

50

が最大で 11.56 mg/l と範囲が狭く,近似曲線 を引くことはできないが, プロシミドンの EC

50

が 1 mg/l 以上であれば,イプロジオンでも EC

50

が 1 mg/l を超え ており,対数グラフの右上に耐性菌がすべてプロットさ れてくる。このことから,耐性菌をモニタリングする際 は, いずれか 1 剤による検定が可能である。またその際,

ポリモーダル生育を起こさないプロシミドンで実施する と判定しやすい。

2 生物検定

オウトウ灰星病は防除回数・防除薬剤が多く,実用場 面で防除効果が低下していても原因薬剤を特定できない ため,生物検定による検証が必要となる。

( 1 ) 薬剤処理および接種用果実の準備

栽培中に散布される他の殺菌剤の影響を極力なくすた め,検定に用いる果実を生産する圃場では,薬剤散布を 制限する(筆者は幼果菌核病の防除も兼ねてフェンブコ ナゾール 22 %水和剤 5,000 倍液を接種の 46 日前に 1 回

のみ散布した)。なお,無処理区では健全果実の採取率 は著しく低いため,試験区の設定にあたり多めに樹数を 確保することが望ましい。

効果を判定する試験薬剤(プロシミドン 50%水和剤,

イプロジオン 50 %水和剤)は,登録倍率(両薬剤とも 1,000 倍)に希釈し, 1 週間間隔で 6 回散布した( 5/24 31, 6/7, 14, 21, 28) 。果実が熟すよりも早めに収穫(7/3)

し,収穫果実を水洗いすると裂果が生じやすくなるた め,そのまま以下の接種試験に用いた。

( 2 ) 接種方法

接種源として PDA 培地上に形成された分生子を用い る。PDA 上で分生子形成量が多い菌株を選ぶとよいが,

どうしても分生子が少ない菌株ではリンゴ果実上で培養 す る と 分 生 子 を 得 や す い。分 生 子 懸 濁 液 は 1 × 10

5

conidia/ml に調整した。

接種後,高湿度条件で密閉することから,プラスチッ ク箱(衣装ケース)の中で作業すると効率がよい(図―7,

口絵③)。果実同士が触れないよう網目の台(例:試験 官立て)に果実を置床し, 分生子懸濁液を噴霧接種する。

湿度が足りなければ霧吹きで加湿した後,密閉し, 15 ℃ で 7 日間静置する。高湿度状態を保つために,途中で何 度か霧吹きで加湿する。

7 日後に発病果数を調べ,発病果率,防除価を求める。

また,果実が圃場ですでに自然感染している可能性があ るため,菌の再分離を行い,改めて検定により薬剤の EC

50

を求める。

( 3 ) 結果と考察

本検定方法を用いた試験結果を図―8 に示した。プロ シミドンでは,M72,M171 の 2 菌株とも薬剤の効果が ほとんど認められない結果となった。一方,イプロジオ ン で は, MIC 値 が 異 な る 接 種 菌 株( M72 500 mg/l

0.01

0.10 1.00 10.00

0.01 0.10 1.00 10.00 100.00

S R

Iprodione EC50(mg/l)

Procymidone EC50(mg/l

図−6 プロシミドンとイプロジオン感受性の相関関係

図−7 試験管立てに果実を並べて静置した例(M171株接 種:左上/プロシミドン処理,右上/イプロジオン 処理,左下/無処理)

(6)

M171 31.2 mg/l )を用いたところ, M72 に対する防除

価は 0,M171 では 54 と差異が見られた。ただし,本病

害の実防除を考えると防除薬剤には防除価 90 以上が求 められる。したがって,防除価が 50 台では十分に実用 的な効果があるとは言えず,両者とも耐性菌として扱う のが妥当である。

IV 検定上の留意点

感受性菌であれば Monilinia 属菌の種は PDA 上での 培養性状や,リンゴへの有傷接種だけで同定が可能であ るが,ジカルボキシイミド系薬剤耐性菌は分生子形成能 が低いことがあるため,PDA 上あるいはリンゴ果実上 の培養性状だけでの判別は困難となる。分生子形成が少 ない菌株については遺伝子診断による同定を推奨する。

V  今 後 の 課 題

ジカルボキシイミド系殺菌剤は,オウトウ灰星病の防 除薬剤として長く使用されてきた。2001 年に実施した

耐性菌モニタリングで本剤に対する感受性低下が確認さ れなかったことから,重点防除時期で使用され,年に 2

〜 3 回以上散布されるケースもあった。本剤耐性菌の出 現以降は,作用機構の異なる新規薬剤の登録拡大が進め られ,ジカルボキシイミド剤に依存しない防除体系を組 むことが可能となっている。ただし,新規系統である QoI 剤や SDHI 剤は耐性菌リスクが高いことから,ロー テーション散布を正しく行うとともに,各種薬剤につい て耐性菌のモニタリングを継続する必要がある。

引 用 文 献

1) CÔTÉ, M. J. et al.(2004): Plant Dis. 88 : 1219〜1225.

2) ELMER, P. A. G. and R. E. GAUNT(1994): Plant Pathol. 43 : 130〜 137.

3) HARADA, Y. et al.(2004): J. Gen Plant Pathol. 70 : 297〜307.

4)栢森美如ら(2014): 北日本病虫研報 65 : 98〜100 5)木曽 皓・山田正和(1998): 植物防疫 52 : 28〜33.

6) LIM, T. H. et al.(1998): Korean J. Plant Pathol. 14 : 367〜370.

7) PENROSE, L. J. et al.(1985): Plant Pathol. 34 : 228〜234.

8) SZTEJNBERG, A. and A. L. JONES(1978): Phytopathology News 12 : 187〜188.

0 50 100

無散布 プロシミドン イプロジオン

F201(S)

0 50 100

M72(R)

0 50 100

M171(R)

図−8 感受性が異なるオウトウ灰星病菌に対するジカルボキシイミド系薬剤の防除効果(カラムは発病度)

参照

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