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アラブ諸国国際私法立法の現代化 : イエメン、カ タール、アルジェリアを中心として

著者名(日) 笠原 俊宏

雑誌名 東洋法学

巻 55

号 1

ページ 161‑191

発行年 2011‑07

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00000823/

(2)

 目次 緒言  イエメン国際私法の改正

 

  総説

 

  立法の全体的特徴

 

 カタール国際私法の立法化  各個規定の内容

 

 総説

 

 立法の全体的特徴

 

  アルジェリア国際私法の改正  各個規定の内容   総説

  立法の全体的特徴     各個規定の内容  若干の考察     アラブ諸国国際私法立法の概観   比較立法的考察   総括 結語(参考資料

(参考資料 1)イエメン国際私法

(参考資料 2)カタール国際私法

3)アルジェリア国際私法 《研究ノート》

アラブ諸国国際私法立法の現代化

―― イエメン、カタール、アルジェリアを中心として ――

笠   原    俊   宏

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一  緒言   二〇世紀末頃までのアラブ諸国における国際私法の概況については、既に、若干の論及が試みられ、その生成の

過程、及び、特に立法の面における現行実定法の特徴がある程度明らかにされている(拙稿「アラブ諸国の国際私法

立法に関する研究ノート」東洋法学四五巻二号一一一頁以下参照)。その後、一九九八年におけるチュニジア国際私法

の法典化は西欧化を志向するものではあり、必ずしもアラブ諸国における国際私法の系譜の潮流に沿ったものでは

ないが(拙稿「チュニジア国際私法の法典化について」東洋法学四四巻二号七九頁以下参照)、それが一つの節目とな

り、現在、アラブ諸国における国際私法立法の整備が顕著になっているように見受けられる。

  また、アラブ諸国は、政治的変動という面においても目まぐるしい。一九九〇年におけるイエメン両国の国家統

合、イラン、イラク、アフガニスタンにおける長年の国内的紛争、そして、近時、チュニジアに始まり、エジプ

ト、リビア、バーレーン他に拡散した民主化運動のうねりは、現在も継続している。この小稿は、正に、そのよう

な情況の下におけるアラブ諸国の国際私法立法の概況を鳥瞰しようとするものである。アラブ首長国連邦、シリ

ア、クウェート、ヨルダンの国際私法立法については、早くから邦訳が試みられたが(拙編訳『国際私法立法総覧』

(冨山房、一九八九年)一四頁以下、一二一頁以下、一〇一頁以下、三九二頁以下参照)、それに続いて、前記の研究ノー

トにおいては、イラク、バーレーン、スーダンの国際私法立法を中心として言及が試みられたところである。この

小稿は更にそれに続くものであり、統一後のイエメン及びアルジェリアの国際私法の改正、カタールのその法典化

を中心として、いま少し、アラブ圏内における国際私法秩序の実態、取り分け、西欧化という意味におけるその現

代化の動向の如何を明らかにすることを目論むものである。

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二  イエメン国際私法の改正

⑴  総説   現在のイエメン共和国は、一九九〇年五月二二日、アラブ・イエメン共和国とイエメン民主人民共和国とが合併

して成立した国家である。その後、一九九二年には、旧民法典(一九九二年法律第一九号)が制定されたが(一九九二

年三月三一日公布、イエメン官報第六号)、二〇〇二年法律第一四号による新民法典がそれに取って代わり(二〇〇二

年四月一〇日公布、イエメン官報第七号)、旧民法典は廃止された(新民法典第一三九二条参照)。その際、同法典中に

含まれていた国際私法に関する諸規定(以下、「旧法」とする)も、それに伴って改正されるに至った(Sven Klaiber,

Das neue Internationale Privat- und Zivilverfahrensrecht im Jemen, Praxis des Internationalen Privat-und Verfahrensrechts(以下、IPRaxとする)2007, S.369.)。この新民法典中の国際私法規定(以下、「新法」とする)がイエメンの現行国際

私法の法源である。以下においては、その内容について、若干、言及することとしたい。

⑵  立法の全体的特徴   アラブ・イエメン共和国とイエメン民主人民共和国とが合併する以前には、それぞれの国家がそれに独自の国際

私法規定を有していた(前者として、拙編訳・前掲書二九頁以下、後者として、同書三一頁以下参照)。合併後、統一的

に採用された規定は、アラブ・イエメン共和国のそれである(Hilmar Krüger, Allgemeiner Rechtszustand und inter-

nationales Privatrecht der Republik Jemen, Recht der internationalen Wirtschaft 1993, S.28ff.; Awad Aldeeb Abu-Salieh, République yéménite -Droit privé, Revue critique de droit international privé 1993, p.363 et suiv.)。その内容は新法によっ

て基本的に踏襲されているものであり、新法における改正は割と小幅な範囲に止まっているのが実情である(Klaib-

(5)

er, a. a. O., S.369.)。   イエメン国際私法の淵源は、旧法及び新法とも、一九四八年のエジプト国際私法(一九四八年法律第一三一号)第

一〇条ないし第二八条である(川上太郎「スイス・ギリシャ・エジプト・シリヤの国際私法規定とモンテヴィデオ条約」

神戸法学雑誌八巻四号六五八頁以下参照)。いわゆる「エジプトグループ」の国際私法規定を有する国々として、イ

エメンの他、シリア、イラク、リビア、スーダン、ソマリア、アルジェリア、ヨルダン、アフガニスタン、ク

ウェート、アラブ首長国連邦、カタール等がそれに属している(Klaiber, a. a. O., S.370.)。

⑶  各個規定の内容   空間的法律抵触に関する諸規定を構成しているのは新法第二三条ないし第三五条であるが、それらは、旧法中の 第二四条ないし第三六条に相当するものである(その法文については、Klaiber, a. a. O., S.369f.)。それらの中にあって

改正されたのは、新法第二五条及び第三四条の両条である。それらの規定は、それぞれ、旧法第二六条及び第三五

条に相当する規定である(Klaiber, a. a. O., S.372.)。それら旧法の前者において、両当事者が合意した場合において

のみ、イエメン法が適用されると定められていた規定は、新法上、「婚姻、離別、裁判上の別居及び扶養義務に関

する訴訟手続において、イエメン法が適用される。」と改訂され、両当事者が外国人である場合にも、イエメン法

の適用へと導く規定となっている(Klaiber, a. a. O., S.372(55).参照)。一方、後者の改訂は、語句の修正に止まるも のであり、実質的な内容の修正ではない(Klaiber, a. a. O., S.372(61).参照)。二〇〇二年のイエメン民法典の改正は

西欧化とは逆に、寧ろ、イスラム法への強い傾斜に彩られたものであるが(Hilmar Krüger, Neues Internationales

Privatrecht in der Republik Jemen, IPRax 2004, S.370.)、同法典中の国際私法規定自体には、それは反映されていない

(Klaiber, a. a. O., S.370.参照)。

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三  カタール国際私法の立法化

⑴  総説   一九一六年、カタールは英国との間にその保護領となる保護条約を取り交わしたが、一九七一年に独立し、国連

の一員となった。その後、現在に至るまで、同国の歴史は浅いが、その法制度は急速な発展を見せている。同国の

法源の特徴は、古代と近代の両側面を有している点にある(Marie-Claude Najm, Codification of private international

law in the civil code of Qatar, Yearbook of private international law 2006, p.250.)。カタール憲法第一条は、イスラム教 が国教であり、シャリア(Shari'a)が立法の主たる根源を成すことを宣言している。より端的には、サウジアラビ アの影響を受けたハンバリ(Hanbali)派によるイスラムの教義が支配的である(Najm, op. cit., p.250.参照)。その一

方、一九六一年以来、官報を発刊して、これまでに、特にフランス法制度からの影響を受けた数々の近代的な立法

を公布している。例えば、裁判所規則(一九七一年法律第一三号)、民商事法(一九七一年法律第一六号)、民商事訴

訟法(一九九〇年法律第一三号)等がある。一九九九年、一九七一年の裁判所規則に取って代わった裁判所組織法

(一九九九年法律第六号)は、伝統的な司法制度、すなわち、民事裁判所と宗教裁判所という二極の司法制度を一本

化しつつ、前者は、民事、刑事、商事を取り扱い、後者は、身分関係事件を担当するというものである(尚、民商

事訴訟法第四条に依れば、民事裁判所は非イスラム教との身分関係事件についても管轄することが定められている。Najm,

op. cit., p.250 et seq.参照)。   渉外的経済発展に伴い、二〇〇〇年には、カタールにおける経済活動への外国資本の参加に関する法律(二〇〇〇

年法律第一三号)が施行され、一九七一年に導入された民商事に関する法律は分離され、二〇〇四年八月八日から

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民法典(二〇〇四年法律第二二号)が施行されている。同法典は専ら財産法関係を規律しており、家族法に関する規

定を含んでいないが、その第一章第三節には、二九箇条(第一〇条ないし第三八条)から構成された時間及び空間に

おける法律の抵触に関する諸規定が置かれている。これはカタールにおける最初の国際私法の立法化であり、それ

により、前出民商事法(一九七一年法律第一六号)において欠缺していた規定、すなわち、渉外的要素を有する法律

関係を規律する抵触規定が補充されるに至った(Najm, op. cit., p.251.; Sven Klaiber/Hilmar Krüger, Internationales Pri-

vatrecht in Katar, IPRax 2007, S.149ff.参照)。

⑵  立法の全体的特徴   カタール民法典中の国際私法規定は、他の近隣諸国(シリア、イラク、クウェート、リビア、ヨルダン、バーレー

ン、アルジェリア等)と同様に、一九四八年のエジプト民法典中のそれの影響を受けて、殆ど、その写しであり、

包括的な国際私法典を形成しておらず、「時間的抵触」及び「空間的抵触」に関する諸規定を民事立法へ導入して

いるに止まることは、既に、早くから指摘されていたところである(Najm, op. cit., p.252.; Pierre Gannagé, Regards

sur le droit international privé des Etats du Proche-Orient, Revue international de droit comparé 2000, p.417.)。このよ

うに、抵触法制度の誕生が遅れた理由は、その法体系が有する宗教的性質に因るものにほかならない。オットーマ

ン帝国の衰退と西欧諸国の政治的進出により、漸く、国際私法の土壌が皆無なイスラム諸国に、西欧諸国の国際私

法が導入されるに至ったというのが実態である。最も早く国際私法規定を導入した一九四八年のエジプト民法典

は、フランス人研究者の助力を得て、フランス法の影響を受けながら、一九四二年のイタリア民法典第一七条ない

し第三一条の諸規定に倣ったものである。従って、二〇〇四年のカタール民法典の根源は、右イタリア民法典にあ

ることとなる。また、カタール裁判所による判決において、エジプト学説が、今なお、しばしば引用されることも

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あるというのが実状である(Najm, op. cit., p.252.参照)。   それでは、何故、カタールはエジプト法以外の法に倣わなかったのか。その理由として説かれているのは、次の

通りである。すなわち、カタール民法典の起草が、エジプト、そして、スーダンの法律家によって行なわれたから

にほかならない。また、カタール民事裁判所の裁判官も、その多くが、エジプトを始めとして、スーダン、ヨルダ

ン、シリア出身者によって占められている。そして、法律の面における伝統的な蓄積を欠いていることも、前述の

ごとく、国際私法を含め、カタールにおける立法及び裁判の現状を導いている素因の一つとなっている(Najm, op.

cit., p.253.参照)。

⑶  各個規定の内容   先ず、カタール民法典中の国際私法規定の範囲は、抵触規定に限られており、国籍、外国人の地位、国際民事訴

訟、国際商事仲裁等に関する規定は、別の法律に見い出される。近時、民法典中に、準拠法選定規定とともに、国

際民事訴訟法規定をも併せて定めている立法例は決して例外的ではない。例えば、カナダ・ケベック州民法典がそ

の一例として挙げられる(拙稿「ケベック民法典中の国際私法規定について」東洋法学四二巻二号一二一頁以下)。この

点についても、十分な検討が成されなかった理由は、やはり、一九四八年のエジプト国際私法に倣ったからであ

る。そして、その結果、総則規定についても、外国法の適用に関する数々の問題、例えば、国際私法の強行性の有

無、すなわち、外国法の適用の法的根拠や裁判官の役割、外国法の内容の確定、強行規定の適用、法律回避等に関

する諸規定を始めとして、カタール国際私法には、今なお、多くの規則が欠缺していると指摘されている(Najm,

op. cit., p.254.参照)。   カタール民法典中に定められている総則規定は、次の通りである。すなわち、法律関係の性質決定(第一〇条)、

(9)

反致(第三七条)、動的抵触(第一六条)、公序(第三八条)、不統一法国法の適用(第三六条)である。

  次に、各論規定としては、次に掲げる事項について定められている。すなわち、自然人(第一一条)、法人(第

一二条)、婚姻の実質的要件(第一三条)、その方式(第一四条)、婚姻の身分的及び財産的効力(第一六条)、婚姻の

解消(第一七条)、親子関係(第一九条)、後見及び監護(第二〇条及び第二二条)、扶養義務(第二一条)、相続(第

二三条)、遺言(第二四条)、物権(第二五条及び第二六条)、契約債務(第二七条及び第二八条)、契約の方式(第二九

条)、契約外債務(第三〇条及び第三一条)がそれらである。

四  アルジェリア国際私法の改正

⑴  総説   アルジェリアは、長年に亘る内戦及び経済的停滞を経て、近年、漸く、政治的、社会的、経済的安定の状態へ差

し掛かろうとする「慎重な継続」の最中において、数々の重要な法律が施行されている。具体的には、外国投資法

(二〇〇一年)、自由貿易地区の開設(二〇〇三年)、知的財産権法(二〇〇三年)、会社法(二〇〇四年)、刑事訴訟法

(二〇〇四年)、商法典(二〇〇五年)、家族法典(二〇〇五年)、国籍法(二〇〇五年)、裁判組織の改正(二〇〇五

年)、民法典改正(二〇〇五年)、そして、民事訴訟法へと続いている。民法典の改正の主たる目的は、国際的な法

的交流における契約自由の強化、正義及び社会的弱者の保護、並びに、国際貿易の推進のための現代的法制度の創

設である。それとともに、多くの抵触規定の改正も実施された(Dietrich Nelle, Neues Kollisionsrecht in Algerien, 

IPRax 2007, S.548.)。   アルジェリア抵触法は基本的にイスラムの伝統に根付いている。そのことを現代の抵触法のもとに表現すれば、

(10)

イスラム教徒と非イスラム教徒が関わる法律関係の場合には、いずれの場合にも、最も広汎にイスラム当事者の優 位を顧慮して当事者の法を適用するということである(Pierre Gannagé, L’influence du pluralisme des statuts person-

nels dans les droits internes des pays du Proche-Orient sur les règles de droit international privé, Journal de droit interna-

tional 1965, p.293.)。アラブ諸国にあって、最も早く、見せ掛けの現代化へ転換することを取り繕ったのは、フラン ス法に倣った一九四八年のエジプト民法典である(Nelle, a. a. O., S.548.)。それが瞬く間にアラブ諸国へ波及し、今

日、それに従っているアラブ諸国の国際私法が「エジプトグループ」と呼ばれていることは既に前述したところで

あり、アルジェリアもそのグループの一員である(Bernard Dutoit, Le droit international privé algérien dans le nou-

veau Code civil du 26 septembre 1975, in: Festschrift Beitzke, 1979, S.462.)。このグループの立法の特徴の一つは、夫の

本国法を保証して、それを優先適用する祖国法への可及的な連結を図っている点である。そして、アルジェリア国

際私法の本源は、エジプト法を模範とした一九七五年の民法である(Nelle, a. a. O., S.548. 一九七五年当時の旧規定に

ついては、拙編訳・前掲書一七頁参照)。

⑵  立法の全体的特徴   改正後のアルジェリア国際私法の特徴として指摘されるべきことは、それが規定する事項の範囲がかなり拡大さ

れていることであろう。先ず、管轄権及び手続規則に関する準拠法に関する第二一a条の規定が新設され、同条

は、「管轄権規則及び手続規則は、訴えが提起されたか、又は、手続が開始された国家の法に服する。」と定めてい

る。次に、住所及び居所に関する規定も特徴の一つを成すものであろう。第三六条第一項は、「何れのアルジェリ

ア人の住所も、その者の主たる居所が所在する場所とする。補助的に、常居所地がそれに代わる。」と定め、同条

第二項は、「何れの者も同時に多数の住所を有することはできない。」と定めている。また、第三七条は、「何れか

(11)

の者がその取引又はその職業を実行する場所は、その取引又は職業が関連する事項につき、特別住所と見做され

る。」と定めている。更に、第三八条は、「未成年者、禁治産者、浪費者又は不在者は、その法定代理人の住所をそ

の住所として有する。」とし(第一項)、但し、「親権解放された未成年者は、その者が、実行のための法的行為能

力を有する法律行為と関連する全てにつき、固有の住所を有する。」(第二項)と定めている。そして、第三九条

は、「一定の法律行為の実行につき、特別の選定住所が選択されることができる。」(第一項)とし、「住所の選択

は、書面によって指示されることができる。法律文書の記載のために選択された住所は、選択が明らかに一定の行

為に制限されていない限り、強制執行の手続を除いて、当該文書に関連する全てにつき、住所と見做される。」(第

二項)と定めている(Nelle, a. a. O., S.551.)。そして、時間的抵触に関する第六条ないし第八条の諸規定も、国際私

法に係わる場合に限られていないが、やはり、新設された規定である。旧法に従う行為能力に関する第六条第二

項、手続に関する新しい規定の優先的適用の原則及び例外に関する第七条、旧法に従う証拠の効力に関する第八条

がそれらの規定である(Nelle, a. a. O., S.551.)。

⑶  各個規定の内容   先ず始めに、改正された民法典中に場所的法律牴触に関する規定として置かれた諸規定の中、総則規定(第九条

及び第二一条ないし第二四条)について言えば、次のように定めている。第九条は、法律関係の性質決定について、

アルジェリア法に依るとする法廷地法説の立場を採用している。これは、従来から、エジプト民法典第一〇条にそ

のまま倣ったものである(Nelle, a. a. O., S.550.)。第二一条は国際条約の優先的適用について規定している。この規 定はエジプト民法典第二三条に倣ったものであり、従来のままの内容を有するものである(Nelle, a. a. O., S.550.)。

第二一a条については既に言及したところである。この規定は新規に導入されたものであるが、その内容はエジプ

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ト民法典第二二条の規定と同一であり、その意味において、特に新規性は存在しない。「手続は法廷地法に依る。」

とする普遍的な立場を明らかにしている。第二二条は多重国籍及び無国籍の場合について規定している。この規定

もエジプト民法典第二五条に倣うものである。但し、内国国籍の優先を定めながらも、重国籍の場合に、実効的国

籍の優先的適用を顧慮している点において、「現代化」の一端が窺われる(Nelle, a. a. O., S.550.)。第二三条は地域的

及び社会的(人的)不統一法国法の適用について規定している。同条第一項はエジプト民法典第二六条に倣って、

間接指定主義を採用している。それに対して、第二項は、直接指定の場合に、人的不統一法国法については「支配

的な法規」に依り、また、地域的不統一法国法については「首都の法」に依るとする規定を新規に導入している

(Nelle, a. a. O., S.551.)。第二三a条は外国法の証明について規定している。それが証明されない場合の補充法につい

ては、アルジェリア法に依るとする内国法適用説の立場である。この規定は新規に導入されたものである。第二三

b条は外国法の指定の意義、及び、狭義の反致について規定している。この規定は、基本的に、反致を否定するエ

ジプト民法典第二七条に倣っているが、狭義の反致のみを肯定する立場は、アルジェリア国際私法独自のものであ

る(Nelle, a. a. O., S.550f.)。第二三c条は準拠法選定規則を欠く場合について規定している。この規定は旧民法典に

は置かれていなかったが、エジプト民法典第二四条に倣い、牴触規定が欠缺している場合には、「国際私法の一般

原則」に依拠すべきと定めている(Nelle, a. a. O., S.551.)。そして、第二四条は公序良俗に反する外国法の適用につ

いて規定している。この規定は旧民法典における立場を踏襲したものであるが、新たに、「詐欺的な法律回避」の

場合についても、外国法の不適用を定めている(第一項)。そして、外国法の適用を排除した結果、その補充法と

されているのはアルジェリア法である(第二項)。これも新しい規定である(Nelle, a. a. O., S.551.)。   次に、各論規定について、就中、改正ないし新設された諸規定に言及することとしたい。先ず、人の身分及び能

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力に関する第一〇条は、改正前、フランス民法典第三条第三項に倣った一方的規定であったが、改正後の第一項 は、エジプト民法典第一一条第一項本文に倣い、双方的規定へと変更されている(Nelle, a. a. O., S.549.)。第一五条

は未成年者、行為無能力者、不在者等の保護に関する規定であるが、その第一項において、保護者の本国法主義を

原則としながら、第二項において、新たに、属地的保護のための規定が置かれている(Nelle, a. a. O., S.549.)。第

一六条は相続及び遺言に関する規定であるが、その第二項は、遺言の方式に関する規定から、贈与ないし寄付に関

する規定へと内容を変更している(Nelle, a. a. O., S.550.)。第一七条は、物権に関し、第二項において、物の所在地

法の同則主義を継続しつつ、第一項において、物の種類を確定するための性質決定の規定を新設し、また、第一七

a条は、無体財産に関して新設された規定である(Nelle, a. a. O., S.549f.)。第一八条は契約に関する規定であるが、

その第一項において、合意された法が契約当事者又は契約と実際的な関連性を有することが新たに条件とされるに

至った。第一次的補助準拠法も共通国籍国法又は共通住所地法とすることが第二項において新たに規定されている

(Nelle, a. a. O., S.549.)。第一九条は、法律行為の方式につき、従来からの行為地法及び共通国籍国法の他、共通住所 地法及び実質の準拠法をも加えて、連結の多元化を顧慮している(Nelle, a. a. O., S.549.)。 五  若干の考察

⑴  アラブ諸国国際私法立法の概観   この小稿において言及されたアラブ諸国の国際私法を見ると、チュニジア国際私法の場合を例外として、それが

イスラム法の拘束力の範疇に止まることが、アラブ諸国の国際私法の基本原則であることを否定する余地はない。

例えば、カタールにおいては、民法典第三三条のように、国内立法に対する国際条約の効力の優位を定め、そし

(14)

て、その憲法第六条が、「国際憲章及び条約を尊重し、当事国となる全ての国際的合意、憲章及び条約を遂行する

ことに努める」べきことが謳われていることも事実である。しかしながら、カタールによって署名、批准された国

際条約であっても、「イスラム法と両立しない」ということを理由として、その効力が減退させられることも珍し

くない。例えば、一九八九年一一月二〇日の「子の権利に関する国際連合条約」も、カタールにより、一九九二年

に署名され、一九九五年に批准されているが、イスラム法と矛盾する諸規定については、留保されている(Najm,

op. cit., p.255.参照)。   イスラム法の確たる優位の情況は、国際私法規定が欠缺している場合においても明白である。「国際私法の諸原

則が、前諸条において、規定が置かれていない法律抵触の場合に適用される。」という規定は、例えば、エジプト

民法典第二四条のほか、イエメン民法典第三四条、カタール民法典第三四条、シリア民法典第二六条、ヨルダン民

法典第二五条、リビア民法典第二四条、スーダン民法典第一三条、イラク民法典第三〇条、クウェート一九六一年

法律第五号第六九条にも見られるところである。その場合、果たして、補充規則としての「国際私法の諸原則」の

意義は如何ように解釈されるものであるか。この点に関連して言えば、例えば、カタール民法典第一条第二項は、

法規の序列につき、シャリア法、慣習、衡平の規則の序列を掲げている。しかし、国際私法の特性に着目する限

り、同条項は適切に機能するとは言えず、その場合、寧ろ、国際私法独自の視点から、それを判断すべきであるこ

とが指摘されている(Najm, op. cit., p.255 et seq.参照)。それでは、実際に、「国際私法の諸原則」は如何にして決定

されるべきであると考えられているか。それについては、エジプト学説によれば、比較法という方法によって導き

出されるべきであると唱えられている。すなわち、「諸原則は世界における様々な現行法制度に見い出されなけれ

ばならないが、しかし、法廷地の法制度の伝統及び顕著な性格を尊重する態度をもって行なわれなければならな

(15)

い。」(Mustafa Kamil Yasseen, Principes généraux du droit international privé, Recueil des Cours 1965-III, p.387, p.400.参

照)。かようにして、法廷地裁判官は、その者自身の法体系、すなわち、シャリアの教義の調和を乱すことが極め

て困難であるのが実情である。例えば、カタールについて言えば、その憲法第一条は、シャリアが「立法の主要な

法源」であることを規定している(Najm, op. cit., p.256.参照)。

⑵  比較立法的考察   諸国の国際私法立法を大別すれば、次のように、それらを分類することができる。すなわち、その一つは、

一八〇四年のフランス民法典を代表的な例として、民事立法中に国際私法に関する諸規定を統合するという立法形

式に服するものである。現在でも、ロシア連邦を始めとする独立国家共同体構成諸国の国際私法立法がこれに拠っ

ており(拙稿「ロシア連邦民法典第三部中の国際私法規定について」東洋法学四六巻一号六九頁以下)、その民法典及び

家族法典中に、国際私法私法規定がまとめて置かれるか、散在している。ベトナム国際私法(拙稿「外国国際私法

立法に関する研究ノート(8)―ベトナム民法典(一九九五年)中の国際私法規定―」大阪国際大学紀要国際研究論叢一二

巻四号六三頁以下、拙稿「ベトナム国際家族法立法に関する研究ノート」東洋法学四七巻一号一四一頁以下)、モンゴル国

際私法(拙稿「モンゴル民法典中の国際私法規定(二〇〇二年)」東洋法学四八巻一号六九頁以下、拙稿「モンゴル国際家

族法の現在」東洋法学本号所収)等についても、その立法の状況は同様である。

  そして、今一つは、国際私法典として、独立させた形式を採用するものである。わが国際私法の法源とされた

「法例」(現「法の適用に関する通則法」)、それが倣ったドイツ民法典施行法は夙に著名であり、殊更の言及を要しな

いが、その他、中華民国渉外民事法律適用法も、伝統的にその形式を採用してきた立法例である(拙稿「中華民国

国際私法(渉外民事法律適用法)の改正(上)、(中)、(下の一)、(下の二)、(下の三・完)」戸籍時報六五九号六三頁以下、

(16)

六六二号三五頁以下、六六四号二四頁以下、六六五号四七頁以下、六六六頁二八頁以下)。近時、このような立法例が優

勢になっており、かつて、民法典中に国際私法規定を置いていた諸国、例えば、スイス(拙編訳・前掲書一二四頁以

下、及び、一三一頁以下)、イタリア(拙稿「イタリア国際私法の改正とその特質について」比較法三四号一〇五頁以下)、

ベルギー(拙稿「ベルギー国際私法(二〇〇四年)の邦訳と解説(上)、(下)」戸籍時報五九三号二〇頁以下、五九四号

五七頁以下)、中華人民共和国(拙稿「中華人民共和国の新しい国際私法『渉外民事関係法律適用法』の解説(一)、(二)、

(三)、(四)」戸籍時報六六三号二頁以下、六六八号二頁以下、六六九号二頁以下、六七一号二頁以下)等も、その立法の

整備において、国際私法典として独立させている。

⑶  総括   改めて述べるまでもなく、この小稿において主として言及したイエメン、カタール、アルジェリアの三国の国際

私法は、伝統的に独立した国際私法典としてではなく、それぞれ、新たな民法典の改正に際し、やはり、その中に

それに関する諸規定が置かれるという立法形式が採用されている。その理由が一九四八年のエジプト国際私法に

倣っているからであることは、前述されたところである。このように、二〇世紀半ばにおける伝統的形態を固守し

ようとする姿勢は、それらの形式のみならず、それらの実質的な内容にも如実に反映されている。その意味におい

て、アラブ諸国の国際私法規則、曳いては、それらの法体系の全体が保守的であると言うに止まらず、更には、因

循でもあると言うことが許されるであろう。しかし、それと同時に、イスラム教の下におけるアラブ社会の法文化

の結束ないし連帯の強固さを改めて痛感させられるところであり、また、比較法的観点からして、その法文化の形

成に強い影響力を有するエジプト法の研究の重要性が極めて明瞭になったと言うことができるであろう。極く最

近、政治的民主化が大きく推進された同国における今後の動静が注目されるところである。

(17)

六  結語   前述のように、この小稿において言及されたイエメン、カタール、アルジェリアの三国の新しい国際私法につい

ては、そのいずれについても、規定の不足等が指摘されている。しかし、緩慢乍ら、抵触法の国際的水準へ接近し

てその基本的な要件を充足するに至っており、今後、更なる進展が期待されるところである。特にカタールのそれ

については、国際私法の現代化へ向けた着実な一歩であるという評価があることも無視されてはならないであろう

(Najm, op. cit., p.266.参照)。それとともに、やはり、影響力の大きいエジプト国際私法の現代化が最も決定的な推

進力を有することは否定できないと思われる。その意味において、現在、最も注視されるべきは同国国際私法の動

向であると言うべきであろう。

  以下において、参考資料として、イエメン、カタール、アルジェリアの三か国の国際私法立法の邦訳を掲げた。

それらの邦訳に際して依拠したのは、イエメン国際私法については、IPRax 2007, S.3722f. また、カタール国際私 法については、IPRax 2007, S.151ff.  更に、アルジェリア国際私法については、IPRax 2007, S.557ff. に掲載されて

いる独語訳である。

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(参考資料

1)イエメン国際私法

民法典

(二〇〇二年法律第一四号)

          第一篇  取引に関する総則         第一部  法律及びその適用

第一章  法律の適用に関する基本的、一般的かつ共通の原則 第一条  イスラムの法規範から導かれた本法は、全ての取引及びその規定の文書及び意味が関係する全ての事項に適用される。

  適用可能な規定がないときは、本法が導かれているイスラム法の原則に依って裁定される。この原則がないときは、裁判官は、イスラム法に従って許された慣習に依って裁定する。慣習がないときは、裁判官は、イスラム法の一般原則に従った衡平の規則に依拠する。

    ・・・・・・ 第二〇条  法律の文書の解釈及びその適用のため、イスラム法、説明的趣意書  並びに、所管の立法官庁に依って発行された註釈が依拠される。

第二章  法律の抵触     第一節  時間的法律抵触(省略)

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    第二節  空間的法律抵触 第二三条  ある一定の訴訟手続における諸法間の抵触の場合には、準拠法を指示するため、法律関係が属する種類を性質決定するにつき、イエメン法のみが権限を有する。

第二四条  人の身分及び能力は、その者の本国法によって支配される。但し、イエメン共和国において締結された財産的取引について、その効果が共和国において生じる前は、その本国法に依れば無能力であるが、イエメン法に依れば能力を有する外国人たる契約当事者の無能力は、その者の無能力が他方当事者によって容易に知られることができない不明瞭な原因に基づくとき、考慮されない。会社、社団、財団及びその他の外国法人の法的地位は、法人の主要かつ実効的な管理の本拠が所在する領域が属する国の法律に服する。但し、法人が共和国においてその主要な活動を行なうときは、イエメン法が適用される。

第二五条  婚姻、離別、裁判上の別居及び扶養義務に関する訴訟手続においては、イエメン法が適用される。

第二六条  法定管理、後見、保佐、並びに、その他の未成年者、無能力者及び不在者の保護の制度に関する実質の規則は、イエメン法に依って決定される。

第二七条  相続、遺言及びその他の死因処分は、イエメン法に依って支配される。

第二八条  占有、所有権、用益権及びその他の物権は、不動産については不動産所在地法、また、動産については、占有、所有権、用益権又はその他の物権を取得又は喪失させた原因が生じた当時、動産が所在した地の法律に服する。

第二九条  契約の効果は、住所地法が契約当事者に共通であるときは同法に依り、また、共通住所がないときは、契約が締結された地の法律に依って支配される。以上は、当事者が他の法律を適用することを合意しないか、又は、その意思を有した情況がないときに限る。但し、不動産に関する契約は、不動産所在地法に服する。

第三〇条  契約の方式は、それが締結された地の法律、又は、実質についてそれを支配する法律、又は、契約当事者の共通住所地法若しくは共通本国法に服する。

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第三一条  外国において行なわれる契約外の行為から生じる責任及び損害賠償は、イエメン法に服する。

第三二条  訴訟手続の管轄権及び方式は、訴訟が提起される地の法律に依って決定される。

第三三条  前条項は、特別法、国際的合意又はイエメンにおいて施行されている国際条約に依って定められた規範の適用を妨げることなく、また、同規範は、前条項の代わりに適用される。

  国際的次元から認められた国際私法の原則は、その原則がイスラム法の規範に反しないことを条件として、裁判所へ提出された法律抵触の問題を支配する文言が共和国の法律に存在しないとき、それに適用される。

第三四条  何れかの者の国籍が知られないか、又は、同時に、多数の国籍を保有する場合には、裁判官が適用すべき法を決定する。但し、多数の国籍の中の一つがイエメン国籍であるときは、イエメン法のみが適用される。

第三五条  前条項による外国法の適用は、それがイスラム法の規範及び共和国における善良の風俗に反することとなるとき、排除される。

    ・・・・・・ 第七八条  イエメン裁判所は、外国に所在する不動産に及ぶ訴えを除き、何れかのイエメン人がイエメンにいかなる住所又は居所をも有しないときであっても、その者に対して提起される訴えについて管轄権を有する。

第七九条  イエメン裁判所は、外国に所在する不動産に及ぶ訴えを除き、何れかの外国人がイエメンにおいて住所又は居所を有するとき、その者に対して提起される訴えについて管轄権を有する。

第八〇条  イエメン裁判所は、外国に所在する不動産に及ぶ訴えを除き、次に掲げるとき、イエメンに住所を有しない外国人に対して提起される訴えについて管轄権を有する。一  その者がイエメンに選択住所を有するとき二  訴えが、イエメンに所在する財産、イエメンにおいて成立して履行されているか、若しくは、履行されるべきである債務関係、又は、イエメンにおいて申し立てられた破産に及ぶとき

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三  訴えが、母、妻又は未成年の子がイエメンに滞在することを前提として、それらの者の扶養料請求権に及ぶとき四  訴えが、未成年者がイエメンに滞在する限り、その者に関する親子関係又は身上監護の問題を対象とするとき五  訴えが、属人法の問題に及び、かつ、イエメン法がそれについて適用されるとき六  訴えが、イエメンの遺言者に基づき、分割がイエメンにおいて開始された遺産、又は、全体若しくは一部がイエメンに所在する相続対象物に及ぶとき七  被告の一人がイエメンにその住所又は居所を有するとき 第八一条  イエメン裁判所は、それが前掲の諸規定に従って管轄権を有しないときであっても、被告が明示的又は黙示的にその管轄権を受諾する場合には、訴えについて裁判する権限を有する。

第八二条  イエメン裁判所は、それが先決問題及び付随的申立てと共に係属している本案事件について管轄権を有する場合には、それらについて裁判する権限を有する。

第八三条  イエメン裁判所は、それが本案事件について管轄権を有しない場合であっても、イエメンにおいて執行される権利の暫定的保護における命令について管轄権を有する。

第八四条  原告が管轄権を有しないイエメン裁判所へ提起し、かつ、被告が出廷していないときは、裁判所は職権をもって管轄権を有しないことを宣言される。

    ・・・・・・ 第四九一条  外国の債務名義の執行は、それが本法の意味における債務名義として認められるときにのみ、第四九四条の顧慮のもとに許される。

第四九二条  外国の債務名義は、イエメンにおいて、本法の諸規定に従い、管轄権を有する執行裁判所への申立てに基づいて執行される。

第四九三条  外国判決が執行力を有する債務名義と見做されることができるのは、確定力の成立の当時を基準とする。

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第四九四条  外国の債務名義の執行は、次に掲げる要件に結び付けられる。一  外国の債務名義が、イスラムのシャリア、イエメンにおける一般的風俗又は公序法規に反しないこと二  イエメン裁判所が、外国の債務名義が発布されている訴訟について管轄権を有せず、かつ、それを発布した外国裁判所がそれ自体の法の基準に従って国際的に管轄権を有したこと三  外国の債務名義の執行は、イエメンの債務名義について当該国において行なわれると同等の取扱いに基づき、同一の条件と結び付けられること四  債務名義が管轄権を有する裁判所又は裁判の審理機関によって発布されていること。判決又は命令が当該外国法秩序に従い、確定力が生じていること五  当事者が、判決が下されている訴訟へ召喚されており、かつ、裁判所において合法的に代理されていること六  外国の債務名義が、イエメン裁判所の先行する判決に反しないこと 第四九五条  外国において発行された執行可能な公的証書に関する執行命令は、当該国の規定の下に、イエメンからの執行可能な公的証書が執行能力を有すると同一の条件の下に許される。執行命令は、執行が意図されている管区の第一審裁判所の執行裁判官へ申し立てられなければならない。命令は、先ず、文書が発行された国家の法が求める要件が充たされること、及び、文書がイエメンにおける善良の風俗又は公の秩序の法規に全く反しないことが確認されたときにのみ下されなければならない。

第四九六条  執行命令に対する異議については、裁判所は略式手続によって裁判する。

第四九七条  前出の諸法規の適用は、イエメンがこの点について他の何れかの国家と締結した条約の規定を侵さない。

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(参考資料2)カタール国際私法

民法典

(二〇〇四年五月一〇日法律第一一号)

序章  総則     第一節  法律の適用並びに時間的及び場所的観点における適用範囲   第一款  場所的観点における法律の適用範囲 第一〇条  法律関係の手続における性質が争訟の裁決であり、かつ、そこに多数の相抵触する法秩序が存在するとき、準拠法の探知のために必要なその法律関係の性質決定の際には、カタール法が基準とされる。

第一一条  人の身分及び行為能力は、その者が帰属する国家の法に従って規律される。但し、カタールにおいて締結され、かつ、そこにおいて発効する財産法上の行為の場合には、当事者の一方が不完全能力者である外国人であり、かつ、行為能力の不足が他方当事者が直ちに知ることができない隠された原因に帰すべき場合には、そのことはその者の行為能力に影響を及ぼさない。

第一二条  組合、社団法人、財団法人、その他のような外国法人について基準となる規定は、その活動上の主たる管理の本拠が所在する国家の法に服する。但し、法人がカタールにおいてその主要な活動を実行しているときは、それがそこに活動上の主たる管理の本拠を有していなくとも、カタール法が適用される。

第一三条  婚姻能力、意思表示の有効性及び法定婚姻禁止の不存在のような婚姻挙行の実質的要件は、各の婚姻挙行当事者につき、その者が婚姻挙行の当時帰属する国家の法に服する。

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  婚姻挙行の両当事者の一方が婚姻挙行の当時カタール人であるときは、婚姻能力の要件に関しない限り、カタール法のみが適用される。

第一四条  登録又は宗教的儀式のような婚姻挙行の形式的要件は、婚姻が締結される国家の法、又は、各の婚姻挙行者について、その者が帰属するか、若しくは、それらの者が共通の国籍を有する場合には、双方が帰属する国家の法に服する。

第一五条  婚姻の存在の証明は、形式的婚姻挙行要件もまた服する国家の法に従って規律される。

第一六条  ⑴  同居の許容、服従、婚姻解消の際における妻の予めの待婚期間、扶養及び持参金のような婚姻の身分法的及び財産法的効力は、夫が婚姻挙行の当時帰属する国家の法に服する。⑵  但し、夫婦が、婚姻挙行後、共通の国籍を取得したときは、それらの者の共通本国法が婚姻の効力へ適用されるものとする。

第一七条  離別、裁判上の離婚及び別居は、夫婦が離別当時又は離婚若しくは別居の訴えの提起当時保有するそれらの者の共通本国法に服する。共通国籍がないときは、夫が婚姻挙行の当時帰属した国家の法が適用される。

第一八条  婚姻に関する前諸規定は、婚約へも準用される。

第一九条  親子関係、その認知及び否認の問題については、父が子の出生当時帰属する国家の法が適用される。父が子の出生前に死亡したときは、その者がその死亡の当時帰属した国家の法が適用されるものとする。

第二〇条  身上監護及びその他の親子関係の実質的問題については、父が帰属する国家の法が適用される。

第二一条  血族者及び姻族者の間の扶養義務については、義務者の本国法が適用される。

第二二条  親による財産監督、後見、保佐等の問題が関係する未成年者、行為無能力者及び不在者の保護のための実質法上の事項については、要保護者の本国法が適用される。

第二三条  ⑴  相続は、被相続人がその死亡の当時帰属した国家の法に服する。⑵  カタールに所在する遺産対象物であって、相続人がいないものについては、カタール法が適用される。

(25)

第二四条  ⑴  遺言及びその他の死因処分は、処分の作成者がその死亡の当時帰属した国家の法に服する。⑵  遺言及びその他の死因処分の方式は、処分者が処分の当時帰属した国家の法か、又は、処分が行なわれた国家の法に服する。

第二五条  ⑴  不動産の占有及び所有、それから派生した物権、その権利が取得される方法、並びに、その移転及び消滅は、不動産が所在する地の法に服する。⑵  物が所在する国家の法が、物が不動産であるか、それとも、動産であるかについて決定する。

第二六条  動産の占有及び所有、それから派生した物権、その権利が取得される方法、並びに、その移転及び消滅は、動産が、占有若しくは所有の取得又はその他の物権及びその取得若しくは消滅の法的原因が生じる当時所在する地の法に服する。

第二七条  契約の実質的有効要件及び法的効果に関しては、双方の契約締結者がその住所を有する国家の法が適用される。共通の住所国がないときは、契約が締結される国家の法が適用される。但し、これは、当事者が別段の合意をしないときか、又は、諸情況から、他の法秩序の適用が要望されていることが明らかにならないときに限る。

   但し、不動産を対象とする契約については、不動産が所在する地の法が適用されるものとする。

第二八条  使用者がその労働者又は被用者と締結する労働契約については、事業管理の本拠が所在する国家の法が適用される。事業の主たる本拠が外国に所在する場合に、かような契約がカタールにおける支店と締結されるときは、カタール法のみが適用される。

第二九条  契約の方式に関しては、契約が締結される国家の法が適用される。同様に、契約が服する実質規定が属する法、並びに、契約締結当事者の共通の住所国又は本国の法に依拠することも許される。

第三〇条  不法行為に因る債務関係は、債務関係の原因となる事実が発生した国家の法に服する。

   前項における規則は、外国において生起している事実であって、カタールにおいて合法的であるものについては、それ

(26)

がその生起する地において違法とされる場合であっても適用されない。

第三一条  不当利得及び委任のない事務管理に因る債務関係は、債務関係の原因となる事実が発生した国家の法に服する。

第三二条  渉外的関連性を有する法律関係の際には、カタール裁判所は、カタール法が決定する管轄権規定及び手続規定の全体を適用する。

第三三条  前条の規定は、特別の法律、又は、カタールにとって有効に施行されている国際条約が内容的にそれに反対するとき、適用されない。

第三四条  前諸条の規定における特別の法規が存在しない限り、二つの法秩序の抵触の場合には、国際私法の基本原則が依拠される。

第三五条  ⑴  人の国籍が知られないか、又は、多数の国籍が同時に探知されるときは、裁判官が適用する法を決定する。⑵  但し、何れかの者につき、カタール国籍、及び、同時に、他の何れかの国家の国籍又は多数の他の国家の国籍が探知されるときは、カタール法が適用されるものとする。

第三六条  前諸条に依り、多数の法秩序を有する国家の法が適用となるとき、当該国家の国内法が、何れの法秩序が適用されるべきかを決定する。

第三七条  外国法が適用すべきであるとき、それは実質規定のみが適用され、抵触法は適用されない。

第三八条  前諸条の規準に従って生じている外国法の適用は、その規定がカタールにおける公の秩序又は善良の風俗に違反するときは排除される。その場合においては、カタール法が適用されるものとする。

(27)

(参考資料3)アルジェリア国際私法

民法典

(一九七五年九月二六日法律第七五―五八号、二〇〇五年六月二〇日法律第〇五―一〇号改正)

          第一編  総  則

第一章  法律の効力及び適用     第一節  時間的法律抵触 第六条  ⑴  法的義務能力についての現行法は、前記の要件を満たす全ての者に適用される。⑵  何れかの者が旧法に従って行為能力を有し、かつ、当該行為能力が新法に従って喪失するとき、当該行為能力は、その者によって前に行なわれた法律行為に影響を及ぼさない。

第七条  ⑴  手続に関する新しい規定は直ちに適用される。但し、時効に関する限り、その始期、停止及び中断については、新しい規定の発効前に存在している期間の全体に亘り、旧法の規則が適用されるものとする。⑵  新しい規定が旧法と比べてより短い時効期間を定めるときは、古い期間が既に進行を開始している場合であっても、新しい規定の発効から、新しい期間が進行を開始する。⑶  但し、旧法によって定められた期間の残期間が新法によって定められた残期間よりも短いときは、時効は残期間の満了をもって完成される。⑷  手続期間についても、同様に適用される。

第八条  証拠が出されたか、又は、出されるべきであったとき、提出された証拠手段はそのまま現行法に従う。

(28)

    第二節  空間的法律抵触 第九条  法律の抵触の場合には、準拠法を決定するため、権利関係又は係争物が如何なる種類に属するかの性質決定について、アルジェリア法が適用されるものとする。

第一〇条  ⑴  人の身分及び行為は、その者が保有する国籍が帰属する国家の法に従って規律される。⑵  但し、アルジェリアにおいて行なわれ、かつ、そこにおいてその効力をもたらすべき金銭的取引の際に、当事者の一方が行為無能力の外国人であり、かつ、その制限に他方にとって見い出すことが容易でない隠された理由があったことが判明したとき、当該原因は行為能力及び取引の有効性へ影響を及ぼさない。⑶  法人、会社、団体、財団法人及び類似の法人は、その会社の本拠、主たる本拠又は活動上の本拠が所在する国家の法に依って規律される。⑷  活動がアルジェリアにおいて行なわれる外国法人は、アルジェリア法に服する。

第一一条  婚姻の有効な成立のための実質的要件は、婚姻当事者双方の各の本国法によって規律される。

第一二条  ⑴  婚姻の身分的及び財産上の効力は、婚姻挙行の当時における夫の本国法に服する。⑵  解消及び卓床の別居は、訴え提起の当時における夫の本国法によって規律される。

第一三条  第一一条及び第一二条に定められた場合において、婚姻挙行の際の当事者の一方がアルジェリア人であるときは、婚姻締結能力に関しない限り、アルジェリア法のみが適用されることができる。

第一三a条  ⑴  親子関係、父性の認知及び父性の否認は、子の出生時における父の本国法に服する。⑵  父が子の出生前に死亡したときは、父のその死亡時の本国法が適用される。

第一三b条  ⑴  法律上の里子(カファラ)の有効性は、その創設の当時における里親資格の保有者(カフィル)の本国法と里子(マクフォウル)のそれとへ同時に服する。法律上の里子の効力は、里親の資格者の本国法に依って規律される。

(29)

⑵  養子縁組は同一の規定に服する。

第一四条  親族間における扶養義務は、債務者の本国法に依って規律される。

第一五条  ⑴  後見、遺言上の後見、財産管理、並びに、未成年者、行為無能力者及び不在者の保護のための他の措置の分野における実質的要件は、保護者の本国法に依って規律される。⑵  但し、未成年者、行為無能力者又は不在者が、措置が講じられる当時、アルジェリアに在るか、又は、それがアルジェリアに所在する財産に関するときは、緊急措置として、アルジェリア法が適用される。

第一六条  ⑴  相続、遺言及び他の死因処分は、死亡の当時における被相続人、遺言者又は処分者の本国法に依って規律される。⑵  贈与又は慈善寄付(ワクフ)は、その実行の当時における贈与者又は寄付者の本国法に依って規律される。

第一七条  ⑴  財産の対象物が動産であるか、不動産であるかのようなその性質決定は、それが所在する国家の法に依って規律される。⑵  占有権、所有権及び他の物権は、不動産の所在地に従って規律される。有体的な動的対象物は、占有権、所有権又はその他の物権が取得されたか、又は、  喪失されたことへ導いた事実が発生した当時、それが所在した地の法に服する。

第一七a条  ⑴  無体の対象物は、占有権、所有権又は他の物権の取得又は喪失へ導いた事実が発生した当時、それが所在した地の法に服する。⑵  作品の最初の公表又は上演の地が、文学的又は芸術的な所有権の所在地と見做される。⑶  特許権の所在地として、交付する地が見做される。⑷  登録又は供託の地が、商標又は工業意匠の所在地と見做される。⑸  会社の主たる本拠地が商号の所在地と見做される。

第一八条  ⑴  契約上の義務は、自由に合意された法が契約当事者又は契約と実際的な結び付きを有する限り、それに依っ

(30)

て規律される。⑵  補助的に、共通国籍又は共通住所の法が適用される。⑶  補助的に、契約締結地法が適用されることができる。⑷  但し、不動産に関する契約は、不動産所在地法に依って規律される。

第一九条  ⑴  法律行為は、その方式につき、それが行なわれた地の法律に服する。⑵  それは、共通住所地法、共通国籍国法、又は、実質問題へ適用すべきである法に服することもできる。

第二〇条  ⑴  契約外の義務は、義務を生じる行為が発生する領域が帰属する国家の法に服する。⑵  加害行為に因る義務が問題であるとき、前項の規定は、外国において行なわれ、かつ、外国法に依れば不法であっても、アルジェリア法に依れば許されていると見做される行為には適用されない。

第二一条  前諸規定は、特別法、又は、アルジェリアにおいて施行されている国際的合意において、何か別段に定められていないときにのみ適用される。

第二一a条  管轄権規則及び手続規則は、訴えが提起されたか、又は、手続が開始された国家の法に服する。

第二二条  ⑴  多重国籍の場合には、裁判官が実効的な国籍を適用する。⑵  但し、何れかの者が、アルジェリアにつき、アルジェリア国籍を呈示し、かつ、何れかの外国又は多数の外国につき、他の何れかの国籍を呈示するときは、アルジェリア国籍が適用される。⑶  無国籍者の場合には、裁判官が適用すべき法を決定する。

第二三条  ⑴  前諸規定が、異なる法規が施行されている国家の法へ送致するとき、何れの法規が適用されるべきであるかは、当該国家の国内法が決定する。⑵  これに関する法が規則を定めていないときは、種々の共同体の場合には、支配的な法規が適用され、又、地域的な法の分断の場合には、首都の法が適用される。

(31)

第二三a条  外国法が証明されることができないときは、アルジェリア法が適用されることができる。

第二三b条  ⑴  外国法が適用されるときは、領域的抵触法を除くその国内規定のみが適用される。⑵  但し、当該外国法の抵触規則がアルジェリア法を管轄権を有するものと宣言するときは、それが適用される。

第二三c条  法文がないときは、国際私法の一般原則が依拠される。

第二四条  ⑴  前諸条に従って関連する外国法は、それがアルジェリアにおける公の秩序若しくは善良の風俗に違反するか、又は、それが単に詐欺的な法律回避に基づいて適用されたことが判明したとき、適用されることができない。⑵  外国法が公の秩序又は善良の風俗に違反して指定されるときは、アルジェリア法が適用される。

第二五条  ⑴  権利主体は、生存する子の完全な出生をもって開始し、かつ、その死亡をもって終了する。⑵  胎児は、それが生きて生まれることを条件として、法定された権利を享受する。

第二章  自然人及び法人 第三六条  ⑴  何れのアルジェリア人の住所も、その者の主たる居所が所在する場所とする。補助的に、常居所地がそれに代わる。⑵  何れの者も同時に多数の住所を有することはできない。

第三七条  何れかの者がその取引又はその職業を実行する場所は、その取引又は職業が関連する事項につき、特別住所と見做される。

第三八条  ⑴  未成年者、禁治産者、浪費者又は不在者は、その法定代理人の住所をその住所として有する。⑵  但し、親権解放された未成年者は、その者が法律上実行するための行為能力を有する法律行為と関連する全てにつき、固有の住所を有する。

第三九条  ⑴  一定の法律行為の実行につき、特別の選定住所が選択されることができる。

(32)

⑵  住所の選択は、書面によって指定されることができる。法律文書の記載のために選択された住所は、選択が明らかに一定の行為に制限されていない限り、強制執行の手続を除いて、当該文書に関連する全てにつき、住所と見做される。

―かさはら  としひろ・法学部教授―

参照

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