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映像作品による地域活性化に関する考察
-アニメ・ツーリズムの確立と持続可能性に対するアプローチ-
The Process of Regional Revitalize by Animation
-Approaches to Establishment of Anime Tourism-
1W153096-0 趙 宏毅 指導教員 土田 環 是枝 裕和 CHO Hiroki TSUCHIDA Tamaki KORE-EDA Hirokazu
概要:近年、映像作品の舞台である土地を訪れる観光行動が多くみられる。映画やテレビドラマに限らず、ア ニメ作品の舞台となった場所をその作品のファン達が訪れる聖地巡礼の流行もある。コンテンツ・ツーリズム は、映像作品の体験や視聴を契機として観光動機が形成されるため、地域に特別な観光資源を保有していない 場合でも、地域ブランドを創出し地域活性化を実現する可能性を持つ観光形態である。
本論では、コンテンツ・ツーリズムの中でも内閣府のクールジャパン戦略の一つとされているアニメ・ツー リズムを研究対象とした。アニメ・ツーリズムについては、成否の判断基準が明確ではなく、観光客の誘致と 効果の持続性が課題となっている。従って、本論ではこれまでの事例を総括し、アニメ・ツーリズムを分類比 較することで、地域活性化の確立及び持続性の要因を推論した。
キーワード:コンテンツ・ツーリズム、観光行動、聖地巡礼、発展持続性 Keywords: Contents tourism, Tourism Behavior, Pilgrimage, Durability
1 アニメ・ツーリズムによる地域活性化 アニメ・ツーリズムが意識され始めたのは近年に なってからだが、それまでは制作側および地域側は 意識していなかったといえる。アニメによる地域復 興に関心が寄せられはじめた背景には①制作側の需 要、②地域側の需要、③ファンの需要の 3 つのニー ズが関係していると考えられる。①は、作品の世界 観のリアリティ強化、メディアビジネスの収益向上 における需要。②は地域資源のアピール、地域のブ ランド力強化、地域復興や地域外との連携需要。③ は、新たな旅行目的や情報収集における需要。以上 3 点の需要からアニメ・ツーリズムが経済効果を起こ し世間の注目を浴びたと考えられる。そのため、ア ニメ・ツーリズム に関して言えば、「制作者」、「地 域」、「ファン」の 3 つのアクターを考える必要があ る。山村高淑(2011)は、アニメ・ツーリズムのマネ ジメントを考える際に「製作者」「地域」「ファン」
をアクターとしたトライアングルモデルを提唱した。
製作側と地域側の協働は、ブランド戦略上双方に利 点がある。よって、それぞれのアクターが互恵的な 関係性を築けるかが重要である。
2 コンテンツ・ツーリズム
2.1 コンテンツ・ツーリズムの経済効果
平成 22 年ではエンタテイメントに関わる観光は、
ニューツーリズムの中で体験率 15%とされており、こ れは全体の 3 位となっている。(経済広報センター平 成 22 年)コンテンツ・ツーリズムは日本だけでなく 海外にも有名であり、映像作品がロケ地にどれほど の経済効果をもたらしか計測されている。
しかし、正式に観光業というものは存在せず、映 像作品展開による直接的な経済効果を測ることは難
しい。よって、制作側と地域側の効果がどこにある のかを整理していく必要がある。
地域展開により制作側が直接的に計上されるのは 商品販売によるものと想定される。地域で販売され る商品のライセンス料が約 5%といわれている。(十六 総合研究所 2016)次に『君の名は。』(2016)を参考に して整理していく。『ルドルフとイッパイアッテナ』
(2016)、『聲の形』(2016)、『君の名は。』の3作品に よる岐阜県の訪問者による経済効果は 253 億円であ り、そのうち直接効果が約 163 億円、間接効果が約 90 億円となっている。内訳は、宿泊業・飲食サービ ス業が約 106 億円、運輸で 45 億円、商業が 22 億円 となっており、日帰りの一人当たりの消費額が約 1 万 3 千円となっている。前年度と比較して、観光客 数および観光者消費額が大幅に増加していることか らコンテンツ・ツーリズムは地域活性化に効果をも たらすと期待される。
2.2 アニメ・ツーリズムの分類
アニメ・ツーリズムが注目を浴び、地域活性化の一 つの策として導入された背景として、3 つのアクター のニーズがあることをこれまでに述べた。本論では、
どのアクターの力が作用しているかで、アニメ・ツー リズムの形態が異なると考えた。アニメ・ツーリズム の発生方法や目的の違いから特徴を見出すことで、ア ニメ・ツーリズムを①自発型、②地域引率型、③タイ アップ型、④その他の 4 種類に分類した。
アニメ・ツーリズムの事例を確認した結果から、以 下の 2 つの仮説を提示した。
ロケ地を観光地化して地域活性化を成功させ持続さ せるには、①地域側の住民が作品およびファンを受 容すること。②作品および地域のイベントが継続し て更新されること。
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ここでの成功は経済的発展・文化的発展の二面を指 すこととする。経済的発展を観光客増加による地域 での売上増加、文化的発展を、アニメを媒体として 地域のイメージをあげることと定義した。
第 2 章では、アニメ・ツーリズムの効果とそこか ら考察される成功への仮説と要件について述べた。
アニメ作品の一部の取り組みと分類をまとめたも のが以下の表である。
表 1 アニメコンテンツと舞台地域の取り組み(一部)
作品名 媒 体
公 開 年
主な出
演者 監督、脚本 主な撮
影地 取り組み ポイント 分類
耳をすませ ば
ア ニ メ 映 画
1 9 9 5
本名陽 子 高橋一
生
近藤喜文 監督 宮崎駿 脚本
東京都 多摩市
(聖蹟 桜ヶ丘)
願い事を投 函できる
「青春のポ スト」の設 置
コンテンツの 二次的利用と は別に派生し たテーマを軸 に新たな物語 の創造
自発型
ひぐらしの なく頃に
テ レ ビ ア ニ メ
2 0 0 8
保志総 一郎 中原麻 衣
今千秋 監督 竜騎士 07 脚本
岐阜県 大野郡
(白川 郷)
宣伝は特に 行っていな い
地域側がアニ メによる地域 活性化に対し て興味が薄か った
その他
らき☆すた テ レ ビ ア ニ メ
2 0 0 7
広橋涼 中原麻
衣
武本康弘 監督 美水かがみ 原
作
埼玉県 久喜市
「らき☆す た神輿」、
桐絵馬型携 帯ストラッ プの販売等
迅速かつ柔軟 な対応 ファンとのコ ミュニケーシ ョン
自発型
true tears テ レ ビ ア ニ メ
2 0 0 8
石井真 高垣彩
陽
西村純二 監督 La'cryma 脚本
石井 真 高垣 彩陽
コミュニケ ーションノ ート設置。
来年記念イ ベントの実 施
ファンが祭事 に参加するな ど、地域住民と の交流
自発型
花咲くいろ は
テ レ ビ ア ニ メ
2 0 1 1
伊藤か
な恵 安藤真裕 監督 石川県 金沢市 東京都 小平市
アニメ内の イベントを 本格的に催 行。伝統の 創造
地域側、製作側 が本業を認識 し協力関係を 構築
地域引 率型
あの日見た 花の名前を 僕達はまだ 知らない。
テ レ ビ ア ニ メ
2 0 1 1
入野自 由 茅野愛
衣
長井龍雪 監督 岡田麿里 脚本
埼玉県 秩父市
レンタルサ イクルとの コラボ、花 火大会、短 冊のポスタ ー掲載等
作品と現実世 界の融合 配慮ある作品
作り
地域引 率型
輪廻のラグ ランジェ
テ レ ビ ア ニ メ
2 0 1 2
石原夏 織 瀬戸麻
沙美
鈴木利正 監督 Production I.G
原作
千葉県 鴨川市
鴨川ジャー ジ部のエン バー募集、
ペナントや ステッカー 作成
地域先導型の 取り組み
地域引 率型
ガールズ&
パンツァー テ レ ビ ア ニ メ
2 0 1 2
渕上舞 茅野愛
衣
水島努 監督 吉田玲子 脚本
茨城県 大洗町
地元の「あ んこう祭 り」とのタ イアップ、
キャラクタ ーのラッピ ング列車等
権限と楽しさ の両立 地域住民のホ スピタリティ
地域引 率型
君の名は。
ア ニ メ 映 画
2 0 1 6
神木隆 之介 上白石 萌音
新海誠 監督・
脚本
岐阜県 飛騨高 山 長野県 諏訪湖 東京都
四谷
フォトラリ ー、展示会、
食事の割引 サービス、
記念撮影等
情報の受発信 の強化、継続し たプロモーシ
ョン
自発型
出典:地域の観光課資料を基に、筆者作成
ケーススタディより見えてくる要素について整理 し、地域の発展持続性に有効な要素を確認する。
1 点目は、作品自体の人気である。作品そのものが 人気であれば注目度は高くなるため、一定以上のヒ ットが前提となるだろう。ロケ地にファンが訪れる 要素として作品自体の知名度は大きく影響する。従 って、情報発信により作品の知名度を上げる必要が ある。2 点目は、作品の継続である。『あの日見た花 の名前を僕たちはまだ知らない。』(2011)や『ガール ズ&パンツァー』(2012)の例から、アニメの続編が登 場した時に来訪者数は増えていることがわかる。ま た、成功例では地域が継続的にイベントを開催して いることが多い。3 点目は、地域住民が作品を受け入 れる必要があることである。成功事例には、地元と の連携が図られ地域住民が作品を理解しているとい う共通点が確認できた。ファンが来訪するにあたり、
地域側が作品を受容することは必要不可欠であると
いえる。
3 アニメ・ツーリズムの可能性
前述した事例を参考に、可能性について考える。
アニメ・ツーリズムがもたらす経済効果の順序は
① 舞台となった地域が元から持つ観光資源
② 作品のイベントが短期的に作り出す観光資源
③ 地域と観光者の関係が定着する
の三点が挙げられる。漫画やアニメは日本の映像作 品の中でも世界的に圧倒的な競争力を持っている。
その点でアニメ・ツーリズムは、ロケ地の地域活性 化に圧倒的な影響をもたらし、観光資源を増加させ る役割を持つという点で大きな可能性を持っている。
世界的に競争力を持っているということは、経済的 に意味が大きい。つまり、アニメ産業は日本におい て、第一位の産業になる可能性を秘めているという ことになる。
4 結論
事例に基づいたアニメ・ツーリズムの分類と比較 により、アニメによる地域活性化の発展持続性に有 効な条件を確認した。
その条件を踏まえ、アニメ・ツーリズムを確立・
持続していくには①作品の情報付与、②地域の情報 付与、③地域ブランドの定着の3段階のプロセスが 重要であることを提示した。①に関しては、作品の ヒットが重要なポイントとなるため偶発的要素が大 きい。②と③の段階では、地域側のアニメ作品の理 解とそのプロモーションに対する積極的なサポート が望まれる。
アニメによる地域活性化を考えたとき「制作者」、
「地域」、「ファン」の三点のアクターが互恵的な関 係性を築けていることが重要であり、上記のプロセ スを反復することが、アニメ・ツーリズムの成功の 第一歩である。
主要・参考文献(抜粋)
岡本健(2019)『コンテンツ・ツーリズム研究』、福村 出版.
岡本健、(2018)『アニメ聖地巡礼の観光社会学』、法 律文化社.
山村高淑(2011)『アニメ。漫画で地域復興:まちの ファンを生むコンテンツ・ツーリズム開発法』、東京 法令出版.
大谷尚之、松本淳、山村高淑(2018)『コンテンツが 拓く地域の可能性』、岡文館出版.
後藤加子・勝浦正樹(2019)『文化経済学—理論と実際 を学ぶ-』、有斐閣.
木村めぐみ(2010)『フィルムツーリズムからロケー ションツーリズムへ-メディアが生み出した新たな 文化』、メディアと社会.