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学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項に該当

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Academic year: 2021

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ふ り が な

氏 名 的場

ま と ば

ひろし

学 位 の 種 類 博士(歯学)

学 位 記 番 号 甲 第 904 号 学 位 授 与 の 日 付 令和 3 年 3 月 5 日

学 位 授 与 の 要 件 学位規則第 4 条第 1 項に該当

学 位 論 文 題 目 Smoking cessation rescues tooth movement delays caused by tobacco smoke components

(タバコ煙成分によって引き起こされる歯の移動遅延に対す る禁煙効果)

学 位 論 文 掲 載 誌 Orthodontic Waves 第 80 巻 第 1 号 令和 3 年 3 月

論 文 調 査 委 員 主 査 松本 尚之 教授 副 査 合田 征司 教授 副 査 橋本 典也 教授

論文内容要旨

矯正歯科治療を希望する患者の数は年々増加しており、成人矯正患者数も増加している。

WHO の 2020 年の調査によると、世界人口の 22.8%(男性 37.5%、女性 8.0%)が喫煙者と報告されて いる。このことは、成人矯正治療を希望する、あるいは現在矯正治療中の患者の中にも一定数の喫煙者 がいることを示唆している。矯正歯科治療に関しては歯の移動とタバコ煙成分について調査を行った 研究は少ないが、ラットモデルにおけるタバコ煙成分が破骨前駆細胞の破骨細胞への形成を阻害し、

それにより歯の動きを遅らせることを実験的に証明した先行研究がある。本研究では、タバコ煙成分 を投与したラットに禁煙期間を設けることで、遅延した歯の移動速度が回復するかについて検討を行 った。

実験には 9 週齢 Wistar 系雄性ラット 48 匹を使用し、対照群・正常群・喫煙群・禁煙群の 4 群に分 類した。対照群と正常群には蒸留水を常飲させ、喫煙群と禁煙群には 0.13%に希釈したタバコ煙成分を 2週間経口投与した。その後、禁煙群には 10 日間の禁煙期間を設定し、この時点を 13 週齢となるよ うに実験を開始した。対照群を除いた 3 群を 13 週齢から 2 週間、Waldo 法に準じた歯の移動を行い、

実験終了後に安楽死させた。歯の移動距離の計測には、各群の矢状面観μCT 画像を使用し、M1 歯冠遠 心最大豊隆部と M2 歯冠近心最大豊隆部の歯間距離を歯の移動距離として計測した。組織学的評価には TRAP 染色した M1 の遠心舌側根圧迫側の TRAP 陽性細胞数をカウントした。

歯の移動距離の計測の結果、喫煙群と比較して正常群と禁煙群の歯の移動距離が有意に大きいこと を示し、正常群と禁煙群の間には有意差を認めなかった。TRAP 染色においては、正常群と比較して喫 煙群と禁煙群の TRAP 陽性細胞数は有意に少なかった。また、喫煙群と禁煙群にも有意差を認めた。

このことから、喫煙によって引き起こされた歯の移動遅延が、禁煙期間を設けることによって回復し

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たことが示された。しかしながら、禁煙群の破骨細胞数が正常群と同程度まで回復していないことか ら、歯の移動速度の回復に対する破骨細胞分化の関与は部分的であり、破骨細胞以外の要因も関与し ている可能性が示唆された。今後は

in vitro

研究を行っていくことで、禁煙による破骨前駆細胞から 破骨細胞分化の回復のメカニズムの解明と、破骨細胞形成能が回復するまでの禁煙期間の最適化を検 証する必要がある。

論文審査結果要旨

本研究は、μCT 画像と TRAP 染色を用いて、タバコ煙成分を投与したラットに禁煙期間を設けること で、遅延した歯の移動速度の回復について検討を行ったものである。

本研究は、大阪歯科大学の動物実験委員会(承認# 20-04002 号)の承認を得て行っている。

実験には 9 週齢 Wistar 系雄性ラット 48 匹を使用し、対照群・正常群・喫煙群・禁煙群の 4 群に分 類している。対照群と正常群には蒸留水を常飲させ、喫煙群と禁煙群には 0.13%に希釈したタバコ煙成 分を2週間経口投与している。その後、禁煙群には 10 日間の禁煙期間を設定し、この時点を 13 週齢 となるように実験を開始している。対照群を除いた 3 群を 13 週齢から 2 週間、Waldo 法に準じた歯の 移動を行っている。歯の移動距離の計測には正常群・喫煙群・禁煙群の矢状面観μCT 画像を使用して、

M1 歯冠遠心部と M2 歯冠近心部の最短距離を計測している。 組織学的評価にはμCT 撮影後に摘出した 上顎骨を、10%EDTA 溶液 (pH7.0) にて室温下で 27 日間脱灰した。脱灰したサンプルをパラフィン包埋 し、厚さ 3μm で薄切し、TRAP 染色し、M1 の遠心舌側根圧迫側の TRAP 陽性細胞の数をカウントしてい る。

歯の移動距離を計測した結果、喫煙群と比較して正常群と禁煙群の歯の移動距離が有意に大きく、

正常群と禁煙群の間に有意差を認めないという結果が得られている。TRAP 染色において M1遠心舌側 根圧迫測の TRAP 陽性細胞数を比較したところ正常群と比較し、喫煙群と禁煙群の TRAP 陽性細胞は有 意に減少しており、喫煙群と禁煙群でも有意差を認めるという結果が得られている。

以上の結果より、禁煙期間を設けることによって、禁煙群の歯の移動速度が正常群と同程度まで回 復することを示している。しかし TRAP 染色において、 正常群と比較して禁煙群の TRAP 陽性細胞数は 有意に少ないことを示している。

このことから、喫煙によって引き起こされた歯の移動遅延が、禁煙期間を設けることによって回復 したことが示されている。しかしながら、禁煙群の破骨細胞数が正常群と同程度まで回復していない ことから、歯の移動速度の回復に対する破骨細胞分化の関与は部分的であり、破骨細胞以外の要因も 関与している可能性が示唆されている。

今後は in vitro 研究を行っていくことで、禁煙による破骨前駆細胞から破骨細胞分化の回復のメカ ニズムの解明と、破骨細胞形成能が回復するまでの禁煙期間の最適化を検証する必要がある。これら を解明することで、明確な指針を持った禁煙指導を矯正治療を希望する喫煙患者に行うことができ、

喫煙患者が矯正治療を遅延なく進めるためには禁煙が不可欠であることの科学的根拠の一助となると 考えられる。また医療分野における全身的・局所的な禁煙研究の発展に寄与し健康科学に大きく貢献 することが期待される。

以上、タバコ煙成分を投与したラットに禁煙期間を設けることで、遅延した歯の移動速度が回復す

ることを証明した点において、本論文は博士(歯学)の学位を授与するに値すると判定した。

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