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(1)

Ⅰ.はじめに 

 日本の周産期医療は世界的に見ても高水準であり,

新生児の救命率は高い。新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit:以下 NICU)には,早産児や低 出生体重児,新生児に特有の疾患をもつ児が入院して おり,成長発達や治療に時間を要し,入院期間が長期 化することが多い。日本における NICU 長期入院児 の年間発生数は,一時減少傾向であったが,2012 年 は 261 件で NICU1000 床あたり 95 例となっている1)。 病院においては,入院患者に対する感染予防や安静保 持のために,子どもの面会は制限されていることが多 い。なかでも NICU は,免疫機能が非常に脆弱な児 の集中治療を行っている場であることから,一般的に 厳しい面会制限が行われており,きょうだい児が入院 児に面会することは難しい。家族の中でもきょうだい 児は認知機能の発達途上であることが多く,会ったこ とのない入院児の存在を理解することが困難な現状が ある。2)

 子どもにとってきょうだいは,ともに親の養育を受

けながら情緒的なきずなを結び,意見を主張し,ゆず り合い,たすけ合うことを学ぶ最も身近な存在である3)。 新谷ら4)は,母親が入院児の付き添いをすることに 伴い,きょうだい児が,それまでの生活様式や状況を お互いにあまり知らなかったり,信頼関係がより浅い ものが世話人となることがストレスになることが考え られることや,入退院を繰り返す都度変化していく家 庭内役割や状況への適応にストレスが高じていくこと が予想されると述べている。また,障害のある同胞を もつきょうだい児は,内向的な性格傾向や,身体症状 や行動上の問題が生じるという報告もある5)。  一方,病気をもつ子どものきょうだい児には,思い やりが育つとの見方もあり,そのような力が自然に育 まれるように支えながら,子どもが過剰な適応にい たっていないか,十分に注意をはらうことが大切であ るといわれている3)

 平谷ら6)は,入院中の子どもをもつ家族と地域で 生活する子どもをもつ家族の家族機能を比較し,入院 中の子どもをもつ家族に特徴的な困りごとに,病児の

病気や障害をもつ子どものきょうだい児への支援に関する 研究の動向と課題

黒 岩 めぐみ,金 泉 志保美

(2019 年9月 30 日受付,2020 年1月 24 日受理)

要旨

 本研究は,病気や障害をもつ子どものきょうだい児に対して行われている支援に関する研究 の動向を明らかにし,今後の研究課題を検討することを目的とした。医学中央雑誌 Web(Ver.5)

を用いて 2010 年~ 2019 年の文献を検索し,14 件を対象に分析した。研究対象は看護師が最 も多く,きょうだい児を直接対象として調査・分析している研究は3件と少なかった。NICU を対象とした研究は2件であった。対象文献の研究内容をコード化し,類似性に従って分類 した結果,【きょうだい児への具体的な介入の実施とその評価】【看護師をはじめとする医療 者が行っているきょうだい児への支援の現状】【家族からきょうだい児に対して行われた情報 提供に関する研究】【母親の認識するきょうだい児の面会により得られる効果】の 4 カテゴリ が形成された。今後の課題として,きょうだい児への直接的な支援が積極的に行われること,

NICU におけるきょうだい面会の推進およびきょうだい児の反応を明らかにすることの必要性 が示唆された。

キーワード:きょうだい , 子ども , 看護 , 支援

群馬大学大学院保健学研究科

(2)

きょうだいに関する心配事が上位にあがっていたこと を報告しており,きょうだいの健康状態やきょうだい の世話に関するサポート状況などの家族の周辺支援に 関する情報を収集し,きょうだい支援を含む家族支援 を行うことが家族の困りごとの解消につながる可能性 が示唆されると述べている。

 以上のように病気や障害をもつ子どものきょうだい 児への影響やきょうだい児を含めた家族支援の必要性 は明らかにされているが,具体的な支援方法について 述べられているものは少ない。今後,きょうだい児へ の支援を充実させるために,看護の現場におけるきょ うだい児への支援に関する研究の動向と課題を明らか にすることは重要である。

Ⅱ.研究目的

 本研究では,病気や障害をもつ子どものきょうだい 児に対して行われている支援に関する日本国内の研究 の動向を明らかにし,今後の研究課題を検討すること を目的とする。

Ⅲ.研究方法 1.用語の定義  きょうだい児

 兄弟姉妹を意味する用語として,「きょうだい」「きょ うだい児」「同胞」があるが,当事者を意味する場合と,

当事者からみたきょうだいを意味する場合など様々な 使われ方がされている。本研究では便宜上,疾病や障 害をもつ子どものきょうだいを「きょうだい児」と定

義する。

2.研究対象

 本研究における文献検索の過程を図1に示す。医学 中央雑誌 Web 版(ver.5)を用いて,キーワードはきょ うだい(TH/AL)and 看護(TH/AL)とし,検索対 象年を 2010 年~ 2019 年として 2019 年8月に検索を 行った。検索された 102 件の文献の題名と抄録を確認 し,成人領域や精神科領域を対象とした文献ときょう だい児への支援について記述のない文献 86 件を除い た。

 全文を入手し本文を確認し,きょうだい児への直接 的な支援について記述のない文献2件を除いた 14 件 を分析対象とした。(表1)

3.分析方法

 対象文献を精読し,文献の年次推移,研究の種類,

研究デザイン,対象者,対象の領域,記述内容を検討 項目として要約表を作成し分析した。記述内容につい ては,全ての文献について,記述内容を精読し,研究 テーマを表すよう1文献1コードに要約した。コード の類似性をもとに分類・抽象化し,カテゴリーとした。

分析にあたっては小児看護学研究者にスーパーバイズ を受けた。

Ⅳ.結果

1.対象文献の概要

 対象文献の概要を表2に示す。対象文献の年次推移 は,2010 年3件,2011 年 1 件,2012 年2件,2013 年 1件,2015 年1件,2016 年2件,2017 年3件,2019

データベース:医学中央雑誌Web版Ver.5

キーワード:きょうだい(TH/AL)and看護(TH/AL) 102件

*収載誌発行年:2010~2019 論文種類:原著論文を絞り込み条件とした

題名、抄録内容の確認 N=102

全文を入手し内容の確認 N=16

対象文献 N=14

成人領域・精神科領域についての文献または きょうだいへの支援について記述のない文献 N=86

きょうだいへの支援について記述のない 文献 N=2

図 1 本研究における文献検索の過程

(3)

年 1 件であった。研究対象は,母親が4件,きょうだ い児を含むものが3件,看護師が5件であった。対象 の領域は,小児科が9件,小児集中治療室(Pediatric Intensive Care Unit: 以 下,PICU) が 1 件,NICU が2件,在宅が2件であった。

2.研究テーマ(表3)

 分析の結果,研究テーマは【きょうだい児への具体 的な介入の実施とその評価】【看護師をはじめとする 医療者が行っているきょうだい児への支援の現状】【家 族からきょうだい児に対して行われた情報提供に関す る研究】【母親の認識するきょうだい児の面会により 得られる効果】の4カテゴリーに分類された。以下カ テゴリーを【 】,コードを< >で示す。

(1) 【きょうだい児への具体的な介入の実施とその評 価】

 このカテゴリーは,<知的障がい児のきょうだいに 対する家族支援プログラムを用いた介入がきょうだい

の心身にもたらす影響についての分析><健康障害を もち医療を受ける児のきょうだいに対して個別の絵本 作成を行った取り組みにおける両親の思いやきょうだ いの反応に関する分析>の2コードで構成された。

 これらは,実際に介入を行い,評価をしている研究 であった。前者では障がい児の家族に対して行われ る,生活力の活性と改善のためのプログラム(Program for Life Activation & Improvement: 以 下,PLAI)

をフィールドワークや家族への面接を基に分析し,

PLAI が障がい児のきょうだい児にとって,安心して 遊べる遊び場を保証し,心身の解放・休息を促す支援,

人との関係性・絆を形成する支援,一般的子ども体験 をつくる支援となっていることを明らかにしている。

 後者では,健康障害をもつ子どもときょうだい,家 族の状況をアセスメントした上で,個別の絵本を作成 し,読み聞かせを行う取り組みがされていた。きょう だい自身を絵本の主役とし,特別な存在であることや 表1 分析対象文献一覧

番号 著者/タイトル

1

香西早苗,二宮千春,中新美保子(2019).わが国の小児領域における病気をもつ子 どもの同胞に関する看護研究の動向.川崎医療福祉学会誌,28(2),475-483.

2西名諒平,戈木クレイグヒル滋子(2017).きょうだいを主役にする:小児集中治療 室入院児と面会するきょうだいへの働きかけ.日本看護科学会誌,37,244-253.

3笹尾由佳理,佐藤朝美,廣瀬幸美(2017).母子分離を体験しているNICU入院児の乳 幼児期のきょうだい児への看護支援.日本小児看護学会誌,26,97-103.

4

平田研人,前田貴彦(2017).急性疾患で入院中の患児ときょうだいとの面会が母親 にもたらす効果.日本小児看護学会誌,26,59-64.

5

平田研人,前田貴彦(2016).入院中の患児ときょうだいとの面会が患児にもたらす 効果ー付き添い中の母親の認識を通してー.三重県立看護大学紀要,20,55-61.

6吉田まち子,楢木野裕美(2016).NICUに入院している子どものきょうだいに対する 看護実践.日本新生児看護学会誌,22(1),12-19.

7

藤原紀世子(2015).熟練看護師による入院中の小児慢性疾患をもつ子どものきょう だい支援.日本小児看護学会誌,24(2),72-78.

8石川紀子,西野郁子,川上節子(2013).入院中の子どものきょうだいに対する情報 提供の実態と家族の思い.日本看護学会論文集小児看護,43,110-113.

9石川紀子,西野郁子,堂前有香(2012).小児医療専門施設におけるきょうだい支援 の現状.小児保健研究,71(2),289-293.

10古溝陽子(2012).長期療養が必要な病児をきょうだいにもつ子どもへの支援に関す る文献検討.福島県立医科大学看護学部紀要,14,23-34.

11

大力久美子,岩﨑麻利子,日野ゆかり(2011).小児がん患者の同胞への説明の現 状ー病状説明のツール作成についての検討ー.大阪府立母子保健総合医療センター 雑誌,27(1ー2),17-20.

12

網野裕子,小田慈(2010).入院している子どものきょうだいへの看護支援に関する 検討ー中国・四国地方における病院看護師の意識調査よりー.小児保健研究,

69(4),503-509.

13大脇万起子,鈴木育子,鳥居央子(2010).知的障がい児の家族支援プログラムにお ける同胞への支援.家族看護学研究,15(3),2-10.

14

山田咲樹子(2010).健康障害をもつ子どものきょうだいへの看護アプローチー絵本 による説明への反応からー.日本小児看護学会誌,19(1),65-72.

表 1 分析対象文献の一覧

(4)

家族の一員であること等が伝わるような内容としてお り,これは,きょうだいの発達段階に関わらず,効果 的なアプローチであったと述べられている。

(2) 【看護師をはじめとする医療者が行っているきょ うだい児への支援の現状】

 このカテゴリーは8つのコードから構成されてお り,看護師をはじめとする医療者が,きょうだい児に 対して行う支援に関する研究であった。対象の領域は NICU が2件,PICU が1件,小児科が3件であり,

そのほかに文献検討が2件あった。

 NICU における研究では,入院児のきょうだい児 への支援として,兄・姉としての自覚がもてるよう

に,きょうだい児を個人として尊重することや,きょ うだい面会の設定をしていることが述べられていた。

PICU におけるきょうだい面会に関する研究では,看 護師の働きかけとして,面会実施の促しや患児との対 面の促しがあり,両親と看護師の働きかけとしては,

きょうだいを主役にすることや患児に触れる促しが あったと述べられていた。小児医療専門施設を対象と した調査では,きょうだい支援として,現在行ってい る活動と今後推進していきたい活動のいずれでも,面 会時や受診時にきょうだいを預かる活動をあげている 施設が最も多かったとする報告や,親への声かけ,きょ うだい自身への声かけ,親の付き添いや面会日・時間 の調整,きょうだいと病児の面会調整が多かったとす る報告があった。また,きょうだいに対しての意識(存 在に対する意識,支援の必要性意識,看護対象として の意識)をもっている病院看護師は約8割,支援をし たことがある病院看護師は約6割であり,意識に比べ 支援の割合が低いことが示されていた。

(3)  【家族からきょうだい児に対して行われた情報 提供に関する研究】

 このカテゴリーは<小児専門病院に入院する子ども をもつ母親を対象としたきょうだいへ行った情報提供 の内容や医療者に希望する支援の内容に関する調査>

<母親を対象とした入院児のきょうだいへの病状説明 の有無や内容についての調査>の2コードで構成され た。

 家族からきょうだいへの情報提供は,実施率が高 かった。また医療者からきょうだいへの情報提供は,

希望が多くなかったと述べられていた。

(4) 【母親の認識するきょうだい児の面会により得ら れる効果】

 このカテゴリーは<短期入院中の児ときょうだいが 面会することで付き添いをする母親が得られる効果の 検討><母親の認識する短期入院中の児がきょうだい と面会することが患児にもたらす効果の検討>の2 コードで構成された。

 母親の認識として,面会によって,きょうだいに対 して,病気説明のしやすさが生まれ,現状を理解して もらう際の関わりやすさが得られたり,きょうだいと 患児のあいだに,普段見られないほどの親密さの出現 や普段の仲の良さの再現が得られたりしたことが述べ られていた。

Ⅴ.考察

1.きょうだい児支援に関する研究の動向

 対象となった文献数は 14 件であり,病気や障害を 表2  対象文献の概要

Ⅰ.文献の年次推移 文献数(件)

2010年 3

2011年 1

2012年 2

2013年 1

2015年 1

2016年 2

2017年 3

2019年 1

Ⅱ.研究の種類

1.質的研究 9

2.量的研究 1

3.量質併用 2

4.文献検討 2

Ⅲ.研究デザイン

1.面接調査 5

2.質問紙調査 3

3.参加観察法、面接調査 1

4.カルテからの情報収集・面接調査 1

5.介入研究 2

6.文献検索 2

Ⅳ.研究対象

1.母親 4

2.きょうだい児・入院児・両親・看護師 1

3.看護師 5

4.きょうだい児・保護者 1

5.きょうだい児・障害をもつ児・両親 1

6.その他 2

Ⅴ.対象の領域

1.小児科 9

2.PICU 1

3.NICU 2

4.在宅 2

表2 対象文献の概要

(5)

もつ子どものきょうだい児の支援についての研究はま だ少ないことがわかる。研究対象は,看護師が最も多 く,きょうだい児を直接対象として調査・分析してい る研究は,【きょうだい児への具体的な介入の実施と その評価】【看護師をはじめとする医療者が行ってい るきょうだい児への支援の現状】に含まれる3件のみ であった。以上のことから,きょうだい児に関する研 究は少なく,支援に対するきょうだい児の反応が明ら かにされていないことが示された。子どもは,認知の 発達の途上で正確な表現が難しいとされている。また,

子どもは弱い立場にあり,研究者からの影響を受けや すく,それに対処できない可能性が高い。子どもを対 象とした研究を行うためには,倫理的に十分な配慮を することが求められる。これらのことが,きょうだい 児の反応を明らかにする研究はほとんど行われていな い要因であると考えられる。「子どもの権利に関する 条約」には,子どもが子ども自身の意見を表明する権 利(第 12 条)が保障されており,7)研究対象とする 際には参加意思の確認など十分な配慮を行うことはも ちろんであるが,きょうだい児の発達段階に合わせて 可能な方法を用いて研究を行うことは重要である。子 どもが病気や障害をもったときに,きょうだい児がど のような発達段階にいるのかということを把握し,支 援を受けているきょうだい児がどのような反応であっ たのかを明らかにしていく必要性があると考える。

 【看護師をはじめとする医療者が行っているきょう だい児への支援の現状】に分類された文献の内容から わかるように,実際に行われている支援内容としては,

きょうだい児の預かり活動や親の面会調整,親やきょ うだい児への声かけなどの取り組みが多かった。

 網野は8)きょうだいに対する意識が支援に結びつ くことに影響する要因に「小児看護臨床経験年数」が あり,小児看護の経験年数が多くなれば,病児だけで なくその周囲も見え,支援する余裕が出てくることが 考えられ,「臨床経験年数」ではなく「小児看護の臨 床経験年数」が多いことが支援に結びつきやすいこと を示唆している。古溝は9),看護師は,病児をきょう だいにもつ子どもへの支援の必要性を認識していた が,具体的な方法がわからない状況であることが推察 され,病児をきょうだいにもつ子どもへの支援に関す る事例を積み重ねて支援の効果を明らかにし,具体的 な支援を提示していくことが求められると述べてい る。以上のことから,きょうだい児の存在を明確にと らえ,きょうだい児への直接の支援にも積極的に取り 組む必要があり,きょうだい児への支援を行うために システムを確立していくことが重要であると考える。

そのためには,保育士や臨床心理士などの子どもに関 わる多職種と協働することでよりよい支援につながる ものと考える。

表3 研究テーマ

カテゴリー コード(文献番号)

知的障がい児のきょうだいに対する家族支援プログラムを用いた介入がきょうだいの心身にもた らす影響についての分析(13)

健康障害をもち医療を受ける児のきょうだいに対して個別の絵本作成を行った取り組みにおける 両親の思いやきょうだいの反応に関する分析(14)

NICU看護師が入院児の乳幼児期のきょうだいに対して行っている支援の実際(3) NICU看護師が行っている入院児のきょうだいに対する看護実践に関する調査(6)

PICUのきょうだい面会の場における、両親と看護師のきょうだいへの関わりとその影響のプロセ ス(2)

小児看護の経験年数が6年以上ある熟練看護師が行っている小児慢性疾患をもつ子どものきょう だいに対する支援についての調査(7)

小児医療専門施設におけるきょうだい支援の有無・内容および今後の展望についての調査(9) 病児のきょうだいに対する病院看護師の意識および支援の現状と看護師の属性との関連について の検討(12)

病気をもつ子どもの同胞に関する《同胞自らの体験》、《家族が抱く同胞への思い》、《医療者 による同胞への支援》の3つの視点からの文献検討(1)

長期療養が必要な病児をきょうだいにもつ子どもの受ける影響と実際に行われている支援に関す る文献検討(10)

小児専門病院に入院する子どもをもつ母親を対象としたきょうだいへ行った情報提供の内容や医 療者に希望する支援の内容に関する調査(8)

母親を対象とした入院児のきょうだいへの病状説明の有無や内容についての調査(11) 短期入院中の児ときょうだいが面会することで付き添いをする母親が得られる効果の検討(4) 母親の認識する短期入院中の児がきょうだいと面会することが患児にもたらす効果の検討(5) きょうだい児への具体的な介入の実施

とその評価

看護師をはじめとする医療者が行って いるきょうだい児への支援の現状

家族からきょうだい児に対して行われ た情報提供に関する研究

母親の認識するきょうだい児の面会に より得られる効果

表 3 研究テーマ

(6)

2.NICU 入院児のきょうだい児への支援の課題  今回対象とした文献の中では,NICU を対象とした ものは2件のみであった。その中で,看護師の行って いる支援の一つとして,きょうだい面会の設定が挙げ られており,きょうだい児が実際に同胞を見て触れ,

同胞の存在が体感できるきょうだい面会によって,乳 幼児期にきょうだいでも同胞の存在を認識することが 可能になったと考察されている2)。NICU において,

きょうだい児の面会を可能にすることは,重要な家族 支援の一つであると考える。しかし,感染管理上の問 題から,NICU におけるきょうだい児面会の取り組み に関する報告はまだ少なく,今後推進の望まれる課題 である。

 また今回対象となった 2 件の NICU を対象とした 文献において,看護支援の一つとしてのきょうだい面 会の設定について触れられているが,看護師の視点か らのきょうだい面会についての記述であり,きょうだ い児自身の反応や面会したことによるきょうだい児の 変化は明らかにされていない。

 また,きょうだい面会の場には,きょうだい児,入 院児とともに両親や祖父母がいるため,それぞれの関 係性に影響を及ぼしていることが予想される。【母親 の認識するきょうだい児の面会により得られる効果】

では,きょうだい児と入院児が直接会うことで,情報 提供のしやすさが生まれたことが示されている。きょ うだい児の反応とともにきょうだい面会の場で起こる 家族間の関係性の変化を明らかにすることで,面会す る際やその前後における効果的な看護支援につながる と考えられる。

Ⅵ.研究の限界と今後の課題

 きょうだい児への直接的な支援に関する文献は少な く,その現状をとらえることは限界がある。また,今 回は日本国内の文献の検討を行ったため,海外の動向 について分析できていない。今後の課題として,海外 論文の文献検討を行い動向を明らかにしていくこと,

きょうだい児への直接的な支援が積極的に行われるこ と,また,NICU においては,きょうだい面会の推進 とともに,支援に対するきょうだい児の反応を明らか にしていく必要性が示唆された。

Ⅶ.文献

1) 厚生労働省.2016.医療的ケア児について.

 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000- S h a k a i e n g o k y o k u s h o u g a i h o k e n f u k u s h i b u - Kikakuka/0000117580.pdf(2019 年 9 月 24 日アクセス)

2)笹尾由佳理,佐藤朝美,廣瀬幸美.母子分離を体験し ている NICU 入院児の乳幼児期のきょうだい児への看護 支援.日本小児看護学会誌,2017;26:97-103.

3) 奈良間美保.きょうだいの支援.奈良間美保ほか.小児 看護学概論小児臨床看護総論.医学書院,2019:214 4)新谷一輝,藤原千惠子.小児の入院と母親の付き添い

が同胞に及ぼす影響.―同胞の情緒と行動の問題の程度 と属性・背景因子との関連性―.小児保健研究,2007;

66(4):561-567.

5)川上あずさ.障害のある児のきょうだいに関する研究 の動向と支援のあり方.小児保健研究,2009;68(5):

583-589.

6)平谷優子,法橋尚宏.入院中の子どもをもつ家族と地 域で生活する子どもをもつ家族の家族機能の比較研究.

家族看護学研究,2017;23(1):2-14 

7)益守かづき.「子どもの権利条約」の特徴.中野綾美,編.

ナーシング・グラフィカ小児看護学①小児の発達と看護  第5版.メディカ出版,2015:22-23

8)網野裕子,小田慈.入院している子どものきょうだい への看護支援に関する検討ー中国・四国地方における病 院看護師の意識調査よりー.小児保健研究,2010;69(4) 503-509.

9)古溝陽子.長期療養が必要な病児をきょうだいにもつ 子どもへの支援に関する文献検討.福島県立医科大学看 護学部紀要,2012;14:23-34.

(7)

Trends in research on support for the siblings of children with diseases/disabilities and related issues

Megumi Kuroiwa

a

,Shiomi Kanaizumi

a

Abstract

 The aims of this study were to explore the trends in research on support for the siblings of children with diseases/disabilities and discuss future challenges related to this topic. A literature review of articles published between 2010 and 2019 was conducted using the Japan Centra Revuo Medicina Web ver. 5 electronic database. Fourteen articles meeting the study objective were subjected to analysis. Study subjects were predominantly nurses and only three articles included the siblings of children with diseases/disabilities themselves as the study participants. Two studies examined the support provided at neonatal intensive care units (NICUs). Qualitative inductive analysis revealed the following four categories of research content: implementation and evaluation of a specific intervention for the siblings;

current state of provision of sibling support by nurses and other health care professionals;

research regarding the information provided to the siblings by their parents; and effects of sibling visits recognized by mothers. Improvement of active and direct support for the siblings of children with diseases/disabilities, facilitation of sibling visits to NICUs, and exploration of siblings’ reactions to those interventions are potential topics of future research.

Key words: siblings, children, nursing, support

a Gunma University Graduate School of Health Sciences

参照

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