微分状態拘束最適H2積分サーボ制御に関する研究
著者 小峰 憲行
発行年 2014‑12
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00008786
学 位 論 文 要 旨
専 攻: 情報科学専攻 氏 名:小峰 憲行
論文題目: 微分状態拘束最適H2積分サーボ制御に関する研究
論文要旨:
近年、コンピュータの高速化、小型化、および低価格化により高性能、多機能な制御技 術の実現が可能になっている。産業界における制御技術は、製品の品質、安全性、省エネ ルギー化、環境保全などあらゆる産業分野で不可欠な技術の一つである。特に、工作機械、
印刷機、ロボット機械などには、サーボモータ、サーボアンプなどサーボ系が組み込まれ、
生産性の向上と安全性に貢献している。工作機械の位置決め制御では、低剛性による機械 振動と同時に駆動モータ取付け台の振動の二つの制御量を抑制しながら高性能、高速な応 答制御が要求される。また、鉄鋼プロセス制御における圧延機械では、鋼板にかかる張力 の制御、板厚の制御など、複数の制御量の制御系設計が要求される。複数の制御入力によ って複数の制御量を求める、多入力多出力の制振制御技術に貢献するコントローラ設計法 が要求される。本論文では、従来の最適制御における振動抑制の効果が得られない弱点を 改善し、制振制御を行うための解析的な方法となる新しいサーボ系設計法を示した。提案 するサーボ系設計法によって次のことが期待される。(1)多入力多出力振動系の最適制御 の方向性が得られる。(2)最適性と振動抑制の制御系設計が実現できる。(3)振動抑制 のための一つの設計パラメータに指針を与える。
現代制御理論における最適H2制御は、状態観測器による出力フィードバック制御の基礎 となる重要な設計法である。制御対象が可制御、可観測であれば、最適状態フィードバッ クが得られる。しかしながら、可制御、可観測な制御対象が振動系である場合に対しては、
振動抑制を十分満たす最適状態フィードバックの解析的方法が見出していない。その理由 は次の通りである。(1)最適制御のための評価関数が振動抑制を満たさないためと(2)
閉ループ系の極を指定できないためである。振動系の制御系設計に対して、現代制御理論 による制御系設計の弱点を補強するために、本論文では、振動系の制振制御を行うための 解析的な方法となる設計理論を構築することを目的とする。制御系の出力応答の振動は状 態方程式の状態変数の振動に起因している。したがって、状態方程式の状態変数の制振を 目的とするために、制御系の評価関数に状態変数の振動項を抑制する微分状態拘束の設計 パラメータni を提案する。
本論文では、制振制御のため3つの制御器の設計法を提案する。
第1は、微分状態拘束最適H2制御器を提案する。振動系の最適制御問題に有効な制御器で あることを明らかにしている。第2は、最適H2積分サーボ制御器を提案する。第3は、微
分状態拘束最適H2積分サーボ制御器を提案する。第1,2の制御器は、振動系の最適サー ボ問題の解決に有効であることを明らかにする。また、提案した制御器の有効性を検証す るため、2慣性系実験装置により提案する制御器の有効性を示す。以上のことにより、2 慣性系を含む振動系の制御系設計において、線形2次形式最適レギュレータ問題における 振動抑制の効果が得られない弱点を改善し、制振制御を行うための解析的な方法となる新 しい制御器設計法の方向性を示した。
本論文は6章から構成されている。以下にその概要を述べる。
第1章は序論であり、本研究の背景、目的および方法論について述べた。第2章は、標 準システム構造における最適H2制御について述べる。最適制御における線形レギュレータ 問題と推定問題から最適H2制御の解を導出する。第3章では、振動制御を目的とした状態 微分拘束最適H2制御問題を提案し、この問題に対する解を提示した。状態微分方程式の状 態変数の微分を最適評価関数に含めることによって、制振制御を実現する。また、振動系 の数値例では、振動制御が可能であること確認した。第4章では、第3章で得られた結果 を最適サーボ系へ応用する設計理論を提案する。サーボ制御系では、システムを安定にし、
かつ、評価関数を最小にしながら観測出力を目標とする基準値に追従させる必要がある。
制振制御に有効な微分状態拘束最適H2積分サーボ制御系の問題を設定し、その解を主定理 を提示する。さらに、これらの最適サーボ系設計理論を2慣性系のモデルに応用し、その 結果が従来の最適H2積分サーボ系に比較し制振制御に極めて有効であることを数値例で明 らかにする。第5章では、2慣性実験装置を用いて、提案した状態微分拘束最適H2積分サ ーボ問題の解が振動抑制に有効であることを検証する。第6章は結論であり、本論文で得 られた結果を総括する。また今後の課題ついて述べる。