九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ダイコンの晩抽性について
藤枝, 國光
九州大学農学部
林田, 稔
熊本県農政部
https://doi.org/10.15017/12623
出版情報:九州大学農学部農場研究資料. 7, pp.81-87, 1984-10. 九州大学農学部附属農場 バージョン:
権利関係:
ダイコンの晩抽性について
藤枝 國光,林田 稔*
1 目 的
近年需要が伸びている春夏:ダイコンは不時抽苔を起こしやすい作型である。遺伝的晩抽性を有効に 利用し,抽苔制御を合理的に行うことが望ましい。本試験は晩抽性品種の感温性,感光性を解析し,
晩抽性の生態分化を明らかにする目的で行った。
2 材料及び方法
試験1)・2)晩抽性といわれている品種のなかから 花不知時無 四月早生 赤丸廿日大根 アルタリ大根 の4品種を選び,対照に 耐病総太り を加え,計5品種を供試した。それぞれ春 化処理区と無春化処理区を設け,後者は25。C下で24時間吸水させた催芽種子を播種したが,前者は 催芽種子を30Cで30日間低温処理したものを播種した。径12磁のポリポットに1株ずつ仕立て,ガ ラス温室内で砂耕法により肥培した。播種直後から日長操作を行い1自然光による8時間30分の短 日区と自然光8時間30分+白熱灯照明(220〜350幽)6時間30分一15時間の長日区を設けた。
試験1)は1983年1月12日から4月22日まで,試験2)は9月17日から12月26日まで,それ
ぞれ100日間栽培し,出蕾並びに開花反応を調査した。試験3) 花不知時無ダ 四月早生 アルタリ大根 の3品種を供試した。試験1)と同様な方 法で催芽種子の低温処理を行ったが,処理期間を8週間,6週間,4 T聞,2週聞とした。いずれも 1983年3月26日に無加温ビニールハウスの地床に直播して自然日長下で70日間栽培し,出蕾並 びに開花反応を調査した。
5 結果及び考察
試験1)対照品種の 耐病総太り は春化処理区では長日下で播種後22日,短日下で45日前後に 全株出蕾した。無春化処理区では短日,長日下とも花芽は未分化に終った(第1表,第1図)。これ にくらべ, アルタリ大根 はかなり晩生で春化処理区では長日下で45日)短日下で84日で出蕾し,
無春化処理区では花芽形成は認められなかった。 赤丸廿日大根 は春化処理長日区では全株出蕾し たが,出蕾日が大きく変異し,短日下では未出蕾,未分化株が8/12を占め,出蕾株の出蕾も88日 以降であった。一方無春化処理区でも長日下では2/12が出蕾, 4/12は出蕾には至らなかったが花
*熊本県農政部
第1表 春化・日長処理が出蕾に及ぼす影響(ユ月12日播)
区
品 種
耐病総太り アルタリ 赤丸廿日 四月早生
花不知時無春 化
22.3±1.86 長日 0/12 0/12
45.2± 2. 17 47. 3 ± 6.87
0/12 0/12 0/12 0/12
47.2±6.97 0/12 6/12
56.0圭0
0/12 11/12
44.6=と6.13 短日 0/12 0/12
84.3±5.04 91,0=と2.58 1/12 6/12
0/12 2/12
0/12 12/12
0/12
12/12
無春化
長日 0/12
12/12
0/12 12/12
96. 5 ± 4. 95
4/12 6/12
0/12
12/12
0/12
12/12
短日 0/12
12/12
0/12 12/12
2/12 10/12
0/12 12/12
Q/12
12−12
注) 上段数値:出蕾株の播種後出蕾までの日数の平均と標準偏差 中段数値:出芽分化はしているが出蕾に至らなかった株数/供試株数 下段数値:花芽文化が認められなかった株数/供試株数
出蕾株率︵%︶
100
〜0
O o
100
50
耐病総太り
=
ユ00
50
0 ●口
四月早生
O o アルタリ
」 100
50
=コ o●0 0
花不知時無
コ
0■一一一一一一廟
100
50
0
赤丸廿日 /
か
μ.・
!__」
80 100 *
20 40
播種後一日数
O春化・長日
●春化・短日
*顕微鏡観察 60
『___J 80 100 *
o 20 40 60
口三春化・長日
■無春化・短日
第1図 春化,日長処理による出蕾株率の経時変化(1月12日播)
一82一
芽を形成し,短日下でも2/12が花芽形成を終えていた。この品種も感温相を低温で経過することに よって花成が促進されるが,他の品種のように感温相の経過が花成の絶対条件ではなく,光条件など によって代替補完されやすいように思われる。 四月早生 は春化処理長日区の6/12だけが出蕾し た。低温要求性に遺伝変異があり,『 R0日聞の低温処理では感光相で長日下におかれても花芽分化に至
らない遺伝子型を包含したヘテロの集団と思われる。 花不知時無 は異型の1株を除き,全区とも 花芽を形成せず,低温要求度が深く,30日間の春化処理では充足されない品種であることが再確認された。
試験2)第2表,第2図のように,春化処理,日長処理に対する品種の出蕾反応は,試験1)とほ ぼ同じ傾向であった。ただし, 耐病総太り と アルタリ大根 は試験1)より春化処理区で出蕾が 若干早まり, 赤丸廿日大根 は逆に二成がおくれた。光条件や栄養条件の違いに基くものと思われ
る。
第2表 春化・日長処理が出蕾に及ぼす影響(9月17コ口)
区 品 種
耐病総太り アルタリ 赤鰯廿日 四月早生 花不知時無
春 化
日 日
21,3±2.00 40.4±3.34 長日 0/12 0/12 0/12 0/12
日 日 日 日 日 日 日 日 50.4±15.8 47.3±9。00
90.0±0
0/12 0/12 0/12
3/12 8/12 11/12 36.7±3.77 74.0±ユ6.6 74.3±13.40 72.0±0短日 0/12 0/12 0/12 0/12
0/12 0/12 6/12 11/12
96.0±0 0/12
11/12
無春化
長日 0/12
12/12
0/12 12/12
3/12 9/12
0/12 12/12
0/12 12/12
短日 0/12
12/12
0/12 12/12
0/12
1 Q/12
0/12 12/12
0/12 12/12 注)第1表に同じ。
なお抽苔始と開花始についての品種特性は出蕾日のそれとほぼ同様な傾向を示した(第3図,第4 図)。ただし 赤丸廿日大根 は無春化区において,未出蕾株や花芽未分化株1も抽苔した。この品種 では抽苔に花成は必須の条件ではなく,また春化処理や長日条件は抽苔を量的に促進するように思わ
れる。
花穂までの主茎の展開葉数は第3表のように各品種とも長日下よりも短日下で多くなった。このこ とは30日間の春化処理で低温要求度が充足されたと思われる 耐病総太り の場合も例外でなかっ た。春化処理で生理的に低温要求度が充足されても,花芽の形態形成には日長が量的に関与し,長日 条件が促進的に作用することを示唆している。
100
u
,。
註.
耐病総太り100
50
一_一。 0
一
口
四月早生
!ノー ===
100「
出 i蕾 i アルタリ 株 }
率,。1
− 1
色 1
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100
50
頃﹂0
0
…」
花不知時無
コ
0咽●圏一一一一
10Q
赤丸廿日 50
20 40
播種後日数
O
L
O. ノ!
乙__
一
100 *
O春化・長日
●春化・短日
*顕微鏡観察
20 40 60 80
60 80
口無春化・長日 厘無春化・短日
一
100 *
第2図 春化,日長処理による出門株率の経時変化(9月17日播)
100
50抽苔株率︵%︶
春化・長日
_一一一 t化・短日
_._ウ春化・長日 一一一一O春化。短日
φ6
ノ
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単ず
口・ノ!
,, 0 1・O O
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△一
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1・。
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/戸ゴ
20
○.耐病総太り
▲四月早生
40 60
播種後日数 ムアルタリ
■花不知時無
80 日赤丸廿日
100
第3図 春化,日長処理による抽苔株率の経時変化(1月12日播)
一84一
第3表 開花株*の主茎葉数,草丈に及ぼす日長の影響
品 種 日 長 開花株率 開 花 株
主茎葉詰
草 丈**耐病総太り
アルタリ大根
赤丸廿日大根
四 月 早 生
花不知時無
日日日日日日日日日日 長短長短長短長短長短
%100
100 100 67 75 42 33 0 0 0
8.5± 1.0 17.0 ± 1.3
14.1 ± 1.8 17.3 ± 2.8
20.9 ± 5.9 26.2± 4.3 20.8± 2.0
39.6 ± 8.2
4L8± 3.7
42.5± 7.2
46.9 ± 14.2 38.4 ± 16.0 36.6 ± 6,1 32.0 ± 9.4
o〃z
注) *9月17日播種,春化処理区 **開花始の草丈
100
50
開花株率︵%︶
!σ
!
3
96
ノ/ノノ4ダ
〆!
や4
!
■ト__4
20 ・ 40 60 80 100
播種後日数 ゾ ○耐病総太り ムァルタリ ロ赤丸廿日
▲四月早生 . ■花不知時無
第4図 春化,日長処理による開花株率の経時変化(1月12日播種)
試験3)本試験は無加温のビニールハウスで行ったために,初期生育期に凸凹が100Cを下がるこ とがあり,これが春化処理を追加する結果となった。また自然日長下の栽培で,光十分の長日条件が 低温充足度の不足を補ったことも考えられる。2:週間春化処理で出七十が発現したり,4週間処理区 の花成反応が30日間処理した試験1),2)より促進的であったのはそのためであろう。
アルタリ大根 は8週間処理区が29日,6週間処理区が32日,4週間処理区が36日,2週間 処理区が53日で出蕾し,低温処理期間が長いほど出蕾日が早まり,花穂までの主茎の葉数が少なか
った。第4表,第5図に示したように4週間処理区にくらべ2週間処理区の出蕾日のおくれが著しく,
6週間と8週間の処理区とは数値が近似しているので,4週間から6週間の問の低温処理でその要求 度が充足される品種と思われる。
四月早生 は8週間処理で全株出蕾し,開花した。6週間以下は処理期間が短くなるほど出蕾株 が少なくなった。しかし 花不知時無 にくらべると4週聞並びに6週間処理区の出蕾株が明らかに 多いので,4〜6週間の低温処理で低温要求度が充足される遺伝子型を包含する晩抽性品種と思われ
る。
花不知時無 は6週間処理では未出蕾株が多くて春化は不充分,8週問処理でほぼ充足される品 種のようである。
抽苔株率︵%︶
10G
50
0 100
アルタリ
50
0
100
」轟←一一一一一一」一一一一一一一一一」
》
四月早生
月︐︐︐
刃 9/鼻一
50
花不知時無
0 0 20
」
ノ 8
る
,
1
_∠:=ノ
》一」一一一一」」
30 40 50 60播種後日数
70 *
08週間 04週間
●6週間 □2週間
第5図 春化処理による出蕾株高の経時変化
一86一
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