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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名 吴 崇洋

授与した学位 博 士

専攻分野の名称 学 術

学位授与番号 博甲第 6200 号

学位授与の日付 2020年 3月25日

学位授与の要件 環境生命科学研究科 環境科学専攻

(学位規則第4条第1項該当)

学位論文の題目 西日本ブナ林における異なる樹種の林冠下に生育するチシマザサ(Sasa kurilensis Makino et Shibata)の生態的特性

論文審査委員 教授 坂本 圭児 教授 廣部 宗 准教授 三木 直子

学位論文内容の要旨

森林下層の矮性タケ類群落は森林の更新と森林の機能に大きな影響を与えるため,その生態的特性の理 解が不可欠である。矮性タケ類のチシマザサは落葉広葉樹林であるブナ林の閉鎖林冠下下層を優占する。ブ ナ林の閉鎖林冠下では林冠を構成する林冠樹種が異なることによって林内の光環境は異質であると考えら れるが,閉鎖林冠下における光環境の異質性に対してチシマザサの生態的特性を検討した例はない。そこ で,本研究はブナ林のブナ林冠下とホオノキ林冠下におけるチシマザサの群落構造と群落動態,および葉の 生産特性の違いを明らかにし,ブナ林閉鎖林冠下のチシマザサの群落維持機構を考察することを目的にし た。

林冠下の光環境については,ホオノキ林冠木の方がブナに比べ遅く展葉し早く落葉するため,ホオノキ林 冠下では春と秋にフェノロジカルギャップが生じると考えられた。群落の稈密度と地上部乾重を比較した ところ,ブナ林冠下よりホオノキ林冠下の方がチシマザサの稈密度が高く地上部乾重が大きかった。一方 で,ブナ林冠下でもホオノキ林冠下でも稈の密度と地上部乾重には年による差がなかった。また,ブナ林冠 下とホオノキ林冠下とで稈の死亡率および新規加入率に差はみられなかった。したがって,ホオノキ林冠下 とブナ林冠下とでは,稈密度と地上部乾重は異なるが,それらはそれぞれの林冠下で一定状態を保ち,稈の 入れ替わりの割合も林冠樹種による違いがなく,どちらの群落でも安定した定常状態にあると考えられる。

生産特性では,葉面積当たりの最大光合成速度と光環境の違いから,ホオノキ林冠下の方が葉面積当たり の生産量が大きいと考えられた。ホオノキ林冠下の方がブナ林冠下に比べて個葉の乾重が大きく,個葉の LMA が大きいうえに個葉の面積が大きかった。以上から,ホオノキ林冠下では個葉に大きなコストをかけ,

しかも面積が大きな個葉をつけるため個葉当たりの生産量が大きいのに対して,光資源に制限があるブナ 林冠下ではより低いコストで葉を拡げより効率的に生産する必要があるが,実際には葉面積が小さな葉し か付けられず個葉当たりの生産量が小さい。このため,稈当たりの生産量を考えると,稈 1 本当たりの葉数 と葉の入れ替わり速度には違いがなく,総葉面積が大きいホオノキ林冠下のほうがブナ林冠下に比べ生産 量が大きいと考えられる。

以上から,ホオノキ林冠下のほうがブナ林冠下より生産量が大きく,ブナ林冠下では十分稼ぐことができ ないほど光資源の制限を強く受けていると考えられる。したがって,ブナ林冠下で稈の密度と地上部乾重が 一定状態を保ちホオノキ林冠下と同様に稈を入れ替えて定常状態を維持しているのは,地下茎を介しブナ 林冠下へ生産物の転流があるためではないかと推察され,それによって群落が維持していると考えられる。

(2)

論文審査結果の要旨

森林下層の矮性タケ類群落は森林の更新と機能に大きな影響を与えるため,その生態的特性の理解が不可欠 である。ブナ林の閉鎖林冠下で優占するチシマザサでは,林冠樹種が異なることによる光環境の異質性に対す る生態的特性が未解明であった。そこで,本研究はブナ林のブナ林冠下とホオノキ林冠下におけるチシマザサ の群落構造と群落動態,および葉の生産特性の違いを明らかにし,ブナ林閉鎖林冠下のチシマザサの群落維持 機構を考察することを目的にした。

その結果,ホオノキ林冠下で春と秋に生じるフェノロジカルギャップによって,ブナ林冠下よりホオノキ林 冠下の方がチシマザサのバイオマスが大きい一方で,群落動態の年変動は小さく稈の入れ替わりの割合にも差 はなく,それぞれの林冠下で安定した定常状態で群落を維持していることを明らかにした。生産特性では,光 資源に制限があるブナ林冠下ではより低いコストで葉を拡げより効率的に生産する必要があるが,実際には葉 面積が小さな葉しか付けられず個葉当たりの生産量が小さいことを明らかにした。稈当たりの生産量では,ホ オノキ林冠下のほうがブナ林冠下に比べ生産量が大きいと推定できた。以上から,ホオノキ林冠下のほうがブ ナ林冠下より生産量が大きく,光資源の制限を強く受けているブナ林冠下では低い生産量で小さなバイオマス を維持するか,地下茎を介しブナ林冠下へ生産物が転流されることによって,群落が維持されていることを示 唆した。以上のように林冠樹種によってチシマザサに群落維持機構が異なることを明らかにし,ブナ林におけ るチシマザサの生態的特性を提示し,ブナ林保全のための有用な情報を提供した。

以上の成果の一部は,国内誌に1編の論文として公表され,その他に関連する論文が国際誌に1編公表されて いる。内容については学位論文,および公聴会の発表と質疑応答において学位論文の学術的基準を十分満たし た研究成果であると評価された。

以上から,本学位論文は岡山大学大学院環境生命科学研究科博士論文に値するものと認められた。

参照

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