博 士 ( 農 学 ) Than Than Win
学位論文題名
Studies on the Synthesis of Some Non‑reducing Saccharides Using Glycosidases
(グリコシダーゼを用いた非還元糖の合成に関する研究)
学位論文内容の要旨
糖 質 は 極 め て 重 要 な 栄 養 源 で あ る と 同 時 に 、 甘 味 料 な ど 食 品 添 加 物 と し て も 重 要 で あ る 。 さ ら に 近 年 は 、 小 腸 で 消化 さ れ にく い オ リ ゴ糖 は 、 ビフ ィ ズ ス菌 な ど の 腸 内 細 菌 の 増 殖 を 促 す 機 能 性 食 品 とし て 盛 んに 用 い ら れる よ う にな っ て きた 。 こ の よ う な 中 で 、 非 還 元 性 の 糖 質 は 、 医薬 、 農 薬、 食 品 、 化粧 品 等 の加 工 過 程に お い て 褐 変 反 応 を 抑 え る 物 質 と し て も 注 目さ れ て いる 。 従 来 の還 元 性 を有 す る 糖類 で は 、 反 応 性 の 高 い 還 元 性 の ア ル デ ヒ ド を持 っ た め、 ア ミ ノ 基を 持 っ た活 性 成 分と ヌ イ ラ ー ド 反 応 等 の 化 学 的 相 互 作 用 に よ ルア ミ ノ カル ポ ニ ル 結合 を 形 成し て 着 色す る す る ため、工業的利用範囲に制限があった。
本 研 究 で は 、 酵 素 を 用 い た 還 元 末 端 を 持 た な い オ リ ゴ 糖 の 合成 を 目 的と し 、p, galactosidaseを用いてlactoseとtrehaloseからgalactosyl trehhloseを、 l3―fructosidase を 用いてsucroseとcellobioseあ るいはcellotrioseか らcellobiosyl fructosideお よび cellotriosyl fructosideな ど 幾 っ か の 非 還 元 性 糖 質 の 酵 素 合 成 を 行 っ た 。
1.非 還 元 性 ガラ ク ト シル オ リ ゴ糖 の合 成
基 質 と して 用 い た3U/0 1actoseと3% trehaloseに対しBacillus circulans由来 のp― galactosidase (213U/530 ml)を0.04M酢 酸緩 衝 液 (pH6.O) , 中で 、37℃、3時間反 応 し た 。 反 応 生 成 物 を 全 糖 お よ び 還 元 性 糖 発 色 のTLCで 分 析 し た 後 、 非 還 元 性 の 生 成 物 を ゲ ル 濾 過 お よ び分 取 用 薄層 ク ロ マ トグ ラ フ イー を 用 い分 離 精 製し た 。 本化 合 物 はFDMSよ り 分 子 量527.4 [M+Na]+お よ び543.3 [M+Kl+を 与 え 、 この 結 果 から 、 分 子 量504の3糖 類 と 推 定 さ れ た 。 さ ら に13CーNMRス ベ ク ト ル に よ っ て 生 成 物 を 0‑p―Dーgalactosyl−(1,4)ーa,Q―trehalose (Gal―Tre))と同定し、この非還元性である3糖 類 の 温 度 耐 性 お よ び 酸 耐 性 を 調 べ た 。Gal―TreはpH 2.0、100℃、30分の 条 件 に お いて安定であることが確認された。
2. Arthrobacter globiformis IF0 3062由来3‑fructosidaseの精製
非 還 元 性 フ ラ ク ト オ リ ゴ 糖 を 酵 素 に よ り 合 成 す る こ と を 目 的 と し 、fructose転 移 活 性 の 高 い 酵 素 の 選 抜 を12種 のArthrobacter菌 株 を 用 い て 行 っ た 。4菌 株 に つ い て 目 的 の 酵 素 活 性 が 認 め ら れ た 。 調 べ た 菌 株 の 中 で 最 も 高 い 糖 転 移 活 性 を 持 つA 呂 めbiformis IF0 3062とA.aurescens IF0 12136に つ い て 、1ワ 。polypeptone、0.2uh酵 母 工 キ ス 卜 ラ ク ト 、0.1% MgS04.7H20、0.40/0 (NH4)2HP04お よ び3%sucroseの 培 地 を 用 . い て 詳 細 に 酵 素 活 性 を 調 べ た 。 得 ら れ た 結 果 か らA. globiformis IF0 3062が 酵 素 精 製 に 最 適 な 菌 株 と 判 断 し た 。
糖 転 移 活 性 を 持 つ 酵 素 は DEAE‑Toyopearl 650M、ToyopearlHW― 55お よ びMono Qを 用 い て 分 離 精 製 さ れ た 。 分 子 量 は60,Ooo、 温 度 に 対 し て は40℃ ま で 、pHに 関 し て は5.5―9.5の 範 囲 で 安 定 で あ っ た 。 ま た 反 応 の 最 適 温 度 お よ び 最 適pHは 、 そ れ ぞ れ37℃ 、6.8で あ っ た 。
3. 非 還 元 性 フ ラ ク ト シ ル オ リ ゴ 糖 の 合 成
sucroseを 基 質 、cellobioseあ る い はcellotrioseを 受 容 体 と し て 、 上 記 の 精 製 酵 素 を 反 応 さ せ た 。 反 応 生 成 物 よ り 非 還 元 性 の 生 成 オ リ ゴ 糖 を 分 取 用 薄 層 ク 口 マ 卜 グ ラ フ イ ー で 分 離 精 製 し た 。cellobioseを 受 容 体 基 質 と し た 場 合 、 非 還 元 性 化 合 物 は FDMSよ り 分 子 量528.2|M+Na]十 を 与 え 、cellotrioseを 受 容 体 基 質 と し た 場 合 、 分 子 量690.8 [M+Na]+を 与 え た 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 得 ら れ た 非 還 元 性 化 合 物 は そ れ ぞ れ 分 子 量 504の3糖 類 と 分 子 量666の4糖 類 と 推 定 さ れ た 。 さ ら に'3C― NMRス ペ ク ト ル に よ っ て 生 成 物 をcellobioseを 受 容 体 基 質 と し た 場 合 に はO‑a−D―cellobiosylー
(1,2)‑[3―fructoside (Glc―Glc―Fru)、cellotrioseを受 容体基質とした場合にはO‑a―D― cellotriosyl‑(l,2)‑p―fructoside (Glc‑GlcーGlc―Fru)であ ることを確認した。さらに後 者は 新 規 オ リ ゴ 糖 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。cellotetraoseやcellopentose等 さ ら に 重 合 度 の 高 い 基 質 を 受 容 体 と し た 場 合 に は 糖 転 移 反 応 は 認 め ら れ な か っ た 。
以上のように 、galactosyl trehalose、cellobiosyl fructoside、cellotriosyl fructosideなど の 非 還 元 性 オ リ ゴ 糖 を 酵 素 を 用 い て 合 成 す る こ と に 成 功 し た 。 こ れ ら は 末 端 に ア ミ ノ 基 を 持 つ 活 性 成 分 と 化 学 的 相 互 作 用 を 起 こ さ ず 、 安 定 に 組 成 物 と し て 配 合 で き る オ リ ゴ 糖 で あ る た め 添 加 物 と し て の 成 分 に お け る 機 能 低 下 の 問 題 が な く 、 さ ら に 酵 素を用いた合成 であるため、安全性の問題 もないと考えられる。
学位論文審査の要旨 主査 教授 松 井博和 副査 教授 横 田 篤 副査 教授 浅 野行蔵 副査 助教授 伊藤浩之
学位論文題名
Studies on the Synthesis of Some Non‑reducing Saccharides Using Glycosidases
(グリコシダーゼを用いた非還元糖の合成に関する研究)
本 論 文 は 序論 と 結 諭を 含 め て5章 で 構成 さ れ 、 図38、 表9、 引 用文 献111を 含 む104 頁 の 英 文 で あ る 。 別 に 参 考 文 献1編 が 添 え ら れ て い る 。
糖質は 極めて重 要な栄 養源であ ると同時 に、甘 味料など 食品添 加物とし ても重要であ り、中 でも小腸 で消化さ れにくいオリゴ糖は、ビフィズス菌などの腸内細菌の増殖を促す 機能性 食品とし て盛んに 用いられるようになってきた。このような中で、非還元性の糖質 は、医 薬、農薬 、食品、 化粧品等の固形製剤加工過程において褐変反応を抑える物質とし ても注 目されて いる。従 来の還元末端を持った糖類では、還元末端に反応性の高い還元基 であるアルデヒドを持っため、末端にアミノ基を持った活´陸成分とヌイラード反応等の化 学的相 互作用に よルアミ ノカルボニル結合を形成して着色する場合があり、そのような活 性成分を持った製剤中への糖添加を困難にしてきた。
本 研 究で は 、 酵素を 用いた還 元末端 を持たな いオリ ゴ糖の合 成を目的 とし、 市販のp galactosidaseを用いlactcseとtrehalcseからgalactosyl trehaloseを、新規に微生物より単 離精製 した[3‑fruc嚠daSeを用い9】ばC閉と葩めは〕既あるいはce帖晒C齶から(瑚泳】馴 釦】c矧deお よ び 葩nO咏 剛m】cぬ嗣eな ど幾 っかの 非還元 幽宿質の 酵素合 成を行っ た。
lI非還 元陸ガ ラクトシ ルオリ ゴ糖の合成
基 質 と し て 用 い た3%lacぬ 鷺 と3% 曲Ib記 に 対 し & 洫 お む 狽 出nS由 来 の市 販 のp gabcb嚠daSe(213U/530mDをO.04M酢 酸 緩 衝 液QH6.0) 中 で 、37℃ 、3時 間 反 応し た。 反 応 生成 物 を 全 糖お よ び 還元 性糖 発色のnCで分析し た後、非 還元性 の生成物 をゲ ル濾 過 お よび 分 取 用 薄層 ク 口 マト グラ フイーを 用い分 離精製し た。本 化合物はFDMSよ り分子量慶汀14mH小ぬ]゛および543.3瓜H―K]゛を与え、この結果から、分子量504の3糖 類と推 定された 。さらに1℃ 小JMRス ペクト ルによっ て生成物 を〇サDgねc晦dイ1,鈩a,
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a‑trehalcse (Gal‑I、re)と 同定 し、 こ の非 還元 性で ある3糖 類の 温度および酸耐I生性 質を調 べ た 。 〇 サD翻b曲 : お 切 イ1,4h, 甜 廿d切b託 はpH2.0、100℃ 、30分 の 条件 にお いて 安定 で あ るこ とが 確認 さ れた 。
2. AtthrDl:acterglobiform糾F03062由 来 帥 心 彁da艶 の 精 製
非 還 元 性 フ ラ ク 卜 オ リ ゴ 糖 を 酵 素 に よ り 合 成 す る こ と を 目 的 と し 、fructose転移 活 性の 高 い 酵 素 の 選 抜 を12種 のArカ 旧bcter菌 株 を 用 い て 行 っ た 。4菌 株 に つ い て 目 的 の 酵 素 活 性 が 認 め ら れ た 。 調 べ た 菌 株 の 中 で 最 も 高 い 糖 転 移 活 性 を 持 つAobifonnis lF0 3062 とA aurescens IF0 12136に つ い て 、1%polypepぬ1e、0.2%酵 母 エキ スト ラク ト、0.l% 眦 翁04・7ト 珂 コ、014%いH也Mて〕aお よび3%印a(體の培地を用い 詳細に酵素活性を調べた。
得 ら れ た ネ 吉 果 か らAdば ヵ a伽 丞 正03062カ ミ 酵 素 精 製 に 最 適 な 菌 株 と 判 断 し た 。 糖 転 移 活 性 を 持 つ 酵 素 はDI弧B協 ′ ( 職ad650M、 ′r( ゐ ′o閉adH册 モ5お よ びM〔mQを 用 い 分 離 晴 製 さ れ た 。 分 子 量 は60,000、 温 度 に 対 し て は40℃ ま で 、pHに 関 し て は5●5ー 9●5の 範 囲 で 安 定 で あ っ た 。 ま た 反 応 の 最 適 温 度 お よ 乙 黼pHは 、 そ れ ぞ 捫37℃ 、6.8 で あっ た。
3. 非 還 元 性 フ ラ ク ト シ ル オ リ ゴ糖 の合 成
sucrcニseを 基 質 、oeUobioseある い はoenotricseを 受容 体と して 、上 記 の精 製酵 素を 反応 さ せ た 。 反 応 生 成 物 よ り 非 還 元 性 の 生 成 オ リ ゴ 糖 を 分 取 用 薄 層 ク 口 マ ト グラ フイ ーで 分離 精 製 し た 。CeiU!obioseを 受 容 体 基 質 と し た 場 合 、 非 還 元 性 化 合 物 はFDMSよ り 分 子 量 528.2 [M+Nal+を 与 え 、oenotrioseを 受 容 体 基 質と し た場 合、 分子 量690.8 [M十Na]+を 与え た 。こ れら のネ 吉果 か ら、 得ら れた ヲE還元ピM匕′合物はそ れぞれtrj¥‑7‑量504の3糖類 と分子 量666の4糖 類 と 推 定 さ れ た 。 さ ら に13C̲NMRス ベ ク ト ル に よ っ て 生 成 物 を ( 瑚obiose を 受 容 体 基 質 と し た 場 合に は〇 弔‑D‑oenoljiosyr‑(i,2ーq(3‑fructoside (Glc‑GlcーFnD、 oeUotricseを受 容体基質とした場合には(:)弔‑D‑oenotncsyr‑cl,2)‑a,[3‑fructoside (Glc‑Glc‑
GlcFnDで あ る こ と を 確 認 し た 。 さ ら に 後 者 は 新 規 オ リ ゴ 糖 で あ る こ と が 確 認 さ れ た 。 く 畄ote田06eやCenq卿1に 齶 等 さ ら に 重 合 度 の 高 い 基 質 を 受 容 体 と し た 場 合 、 糖 転 移 反 応 は認められなか った。
以上のように、galactosyl rrehalose、oeUoljicyl伍ictcside、(郷otnosyl伍】ctcsideなどの 非 還 元 陸 オ リ ゴ 糖 を 酵 素 を 用 い 合 成 す る こ と に 成 功 し た 。 こ れら は末 端 にア ミノ 基を 持 つ 活J陸 成 分 と 化 学 的 相 互 作 用 を 起 こ さ ず、 安定 に組 成 物と して 配合 でき る オリ ゴ糖 であ る た め 添 加 物 と し て の 成 分 に お け る 機 能 低 下 の 問 題 が な く 、 さ ら に酵 素を 用 いた 合成 であ る た め 、安全陸に関しても何ら問 題がないと考えられる。
以 上 の 成 果 は 、 酵 素 を 用 い た 新 規 非 還 元 性 オ リ ゴ 糖 の 合 成 を 示 し た も の で 学 術 的 に 評 価 さ れ 、 ま た 今 後 、 工 業 的 に 広 く 利 用 さ れ る も の と 期 待 さ れ る 。 よ っ て 審 査 員 一 同 は 、 'Ihan'Ihan Wmが 博 士 ( 農 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。
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