博 士 ( 工 学 ) 坊 垣 和 明
学 位 論 文 題 名
公的集合住宅の室内気候の実態と地域性に 基づぃた温熱環境計画に関する研究
学位論文内容の要旨
快適性を維持しつつ省工ネルギーやニ酸化炭素の排出抑制を推進しなければならない地 球環境時代にあって、集合住宅もまたどの様な温熱環境形成がり―ズナブルか、そのため に は ど の 様 に 計 画 し 、 建 設 し て い かな け れ ばな ら ない の か 、が 問 わ れて い る。
本研究は、昭和
40年代以降の公営集合住宅を中心とした4 回にわたる全国規模での室 内温熱環境、エネルギー消費量、生活状態・暖冷房意識などに関する調査を通して、室内 気候やェネルギー消費量の実態とその変遷や地域特性を明らかにし、地域差や変化をもた らした要因を解明すると共にそれらの知見に基づいて、今後の我が国の住宅、特に公的な 住宅供給の側面の強い集合住宅の「温熱環境計画」のコンセプトを提示することを目的と している。
本論文の骨子となる
4回の調査は、昭和40 年代の初めを第1 回として、約10 年の間隔で、
全 国 の 主 要 都 市 の 公 営 集 合 住 宅 を 主 な 対 象 と し て 実 施 し た も の で あ る 。
本論文では、第1 章で研究の目的と背景を述べ、第2 章で、我が国における集合住宅の 成り立ちと普及の過程をまとめ、公的集合住宅の位置づけと主として戦後の住宅供給の面 で果たしてきた役割を明らかにした。次いで、第3 章で4 回の調査の目的と調査方法を示 し、第
4章から第
7章まで各章毎に4 回の調査結果をまとめた。
第
I期の調査(昭和
40年代初めの調査、第
4章)は、敗戦後
20年を経過しながら依然と して住宅の量的な充足が最優先であった時期に、建築研究所が開発し、全国的に建設され た薄肉コンクリートプレハブ型住宅を主対象に行われている。この種の住宅は、明け方の 室温低下が大きいなど現在の熱的な性能水準からは見劣りするものの、当時の一般的な木 造住宅に比べ室内温熱環境は向上しており、居住者の評価からも居住水準の底上げに一定 の役割を果たしたことを明らかにした。また、この当時において既に北海道では、明らか に 他 の 地 域 よ り も 高 い 室 温 で 生 活 し て い た こ と な ど も 分 か っ た 。
第
H期の調査 (昭和
50年代初めの調査、第5 章)は、第
1次オイルショック後の省エネ ルギーに極めて関心が高まった時代に行なわれている。断熱性能の向上に伴い、室温が上 昇する傾向を確認し、北海道以外の地域では地域内で暖かく住んでいる住戸とそうでない 住戸の差が大きく、室温形成には建物の断熱性能も関係するが、住まい方の影響の方が大 きいことを明らかにした。一方、北海道では住まい方や暖房方式よりも建物の保温性に影 響される傾向が強いことを示した。
第
m期の調査(昭和
60年代初めの調査、第
6章)は、長らく続いたオイルショックの影 響を脱して、より快適な環境が求められた時代に行なわれている。この時期には、画一的 な標準設計の普及で地域性を喪失してしまった公営住宅のあり方が問われ、建築計画の面 から地域性への再挑戦が数多く試みられた。全体としてより断熱化が進み、室温は上昇を 続け、暖房室内の上下温度分布は小さくなり、熱的な居住性が改善されていることなどを 明らかにした。しかしその一方で、建築計画の観点から高く評価された公営住宅の地域性 回復への試みは、熱環境計画への配慮の欠如から結露が多発するなど、居住水準の面では
― 244一
大きな課題を残してし丶ることも示した。
第IV期 調査 (平 成4から5 境意 識と エネ ルギ 一消費量 と実 際の 行動 (工 ネルギー
―消 費は 暖房 より も給湯の どを 明ら かに した 。また、
差 が あ る こ と を 示 し た 。
るエ ネルギー消費量 るこ とがわかった。
相殺 する程度まで、
方、 第IV期の対象住 よっ て、暖冷房用エ
タ イル に係 わる 要因 の効 果 に裏 付け られ るこ とを示 した。また、行政や環境工学の果たし て きた 役割 と課 題に つい て 、第6章 でも 地方 の公 営住 宅 にお ける 熱環 境計 画の欠如の実態 を 指摘 した が、 環境 性能 の 向上 が中 央の 行政 施策の 主導によるもので地域の伝統技術や気 候 風 土 な ど の 特 性が 反映 され てい ない こ とや 昭和60年 代に 至っ ても 結露 が頻 発す る実 態 を 示し 、公 営住 宅の 計画 に 環境 工学 的知 見が 活かさ れてこなかったことを明らかにした。
第11章 で は 、 快適 性と 住ま ぃ方 に触 れ 、快 適の 技術 化の 限界 を示 すと とも に、 地球 環 境 時代 の快 適性 を論 じ、 精 神的 快適 観の 重要 性を 示し た。
こ れか らの 公営 住宅 の計 画に は、 地域 の住 ま ぃ方や気候特性 を活かした環境計画の導入 必 要で あり 、そ れを 進め るた めに は、 環境 工 学的な知見の蓄 積と普及が不可欠になる。
ち 、そ れぞ れの 地域 に地 域性 を理 解し 、そ れ を具体化できる 人材と、それを受入れ支援
、 推進 して いく 体制 が整 えら れる 必要 があ る 。住宅行政は居 住者の視点で取り組むとと に 地方 主導 で行 われ るぺ きで あり 、環 境工 学 の教育は共通的 な一般原則を伝えるにとど ら ず、 地域 の特 性や それ を活 かす 技術 と考 え 方が教授されな ければならなぃ。また、環 工 学の 研究 も地 域住 民に 近い 視点 で行 われ る 必要があり、そ の成果をより積極的に地域 還 元す る努 カが 求め られ る。
環さ ギな の ヽ高 ルと 温 て の ネ こ 室 当 識 エ い 均 を 意 の 高 平 点 境 宅 が 日 焦 環 住 性 い に のヽ 要近 題 者 や 必
℃ 問 住 と の 5 境 居 こ 策 て 環
。 い 対 し の た な
― と 模 しし ギ然 規 と致 ル依 球 的一 ネは 地 目も エで ヽ を し 省 域 は 握 ず の 地
) 把必 での 章 態 が 面 外 7 実
) の 以 第 の ど こ れ ヽ 温な ヽそ 査 室 減 く と 調 び 節 多 道 の ょ 費 が 海 年 お消 方北
。 ね 方 あ し 東 明 た 概 地 で す に ヽ を し の北 後ご かが と 析 後東 前過 らる こ 分 前の
℃で 明き い を
℃期 鳩み をで 高 費 2 2 W
〜 の と摘 が 消 は 第 H
」 こ 指 性 ー で ヽ ヽ つ る と要 ギ 幌 し も た す る 必 ル 札昇 でこ 在あ の ネ ヽ 上 域
「 混 で 画 工 は に 地 ど に 要計 と 温 々 の ん 内 重 境 温 室徐 外と 域り 環 室 均 は 以 ほ 地 よ 熱 ヽ 平 で れ ヽ一 が の は 日域 そ面 同慮 宅 で ヽ 地
。 反 が 配住 章 しの たの 方の い 9 討他 しそ いへ し 第 検の 示。 ま差 応 と をそ をい 住戸 相 章 性 ヽ と 多 な 住 に 8 域が こも 様も 方 第 地る る宅 多り い ヽ の い い 住 ヽ よ ま て そて てる て差 住 い とき しえ つ域 な づ 遷 て 達 超 あ 地様 基 変し にを でヽ 多 に の移 温℃ 在は な 果 温 推 室 2 0 健 ら 様 結 室で いは もか の 査 は 準 近 に
」 とこ
。 調 で 水
℃ 時 方 こ
、 た の 章 い 2 0 房 いの め し 上 8 な ヽ 暖 ま こ含 に 以 第 ら は ヽ 住
。を か
けい を一 に。 おて 因。 化た にし 要 る熱 し 群少 加 あ断 に 宅減 増で のか 住ろ の の層 ら 象し ども 一明 対む なす もを 査は 昇示 後と 調用 上を 今こ
、房 温 と、 い し冷 室こ り高 討暖 やた あが 検ヽ 大し も性 をず 拡 上例 能 遷せ の向 事可 変加 積が ぃる の増 面性 なき 費ど 宅密 くで 消ん 住 気高 制 ーと の
・が 抑 ギほ 間性 準を ル間 期熱 水加 ネの の 断の 増 エル この 性の はま ヽ 宅熱 費 でぁ は 住断 消 章年 と 合、 ー 92 0こ 集も ギ 第ヽ の 営で ル 変 で り
「 た 北 ら は こ 公 戸 ネ
域ヽ らス 地し わフ の 討 か ィ そ 検 か ラ と を も の ン 響 に ら
〜影 るれ タ の あ こ パ 衣 で も 房着 様告 冷 や 多 申 暖 果 が ぃ
・効 温深 間 の 室 味 期 具
、 興 房 器 と ぅ 冷 房 こ い 暖暖 ると
、 助 い る し 補 て あ 及 の っ で 言 ど な 適 て な と 决 い つ 因 ね つ た 要 む に こ す ぉ ル、 出お イ に み に クも 生様 スと を} フ と 性 ぼ イる 様ほ ラ す 多 が は に の 応 で か 温 反 章 ら 室 の O 明 が 者 ーを ら住 第性 れ居 特 こ ず
に び ら な 場 現 政 行 の 方 地 び ょ お。 央た 中め
、と しま 及を 言言 に提 りな く様 づの い次 まて 住し のと ら割 か役 れき こべ ヽす はた で果 章が 2学 l工 第境
環 が 即 し も ま 境 に
通に 提 をび る 査並 え 調ヽ 応 た策 に し応 り 施対 く 実や づ に題 宅 々 課 住 折的 合 ら究 集 が研 営 な・ 公 し的 の 図政 ら 意行 か を・ れ 映 的 こ 反会 ヽ の社 き へる づ 策す 基 施対 に ヽに 果 し宅 結 属住 の に営 そ 端 公 ヽ 一の て の降 し 政 以 に
。 行 代 か る
、年 らい は 仙 明 て で 和 を め 文 昭 果 と 論、 効ま 本て のを し そ 言
学位論文審査の要旨
主 査 教 授 繪 内 正 道
副査 教授 落藤 副査 教授 持田
澄 徹 副 査 教 授 眞 嶋 二 郎
学 位 論 文 題 名
公的集合住宅の室内気候の実態と地域性に 基づぃた温熱環境計画に関する研究
本論文は、昭和40年代以降の公営の集合住宅を中心に、室内温熱環境、工ネルギー消費量、生活 状態や暖冷房意識に関する4次にわたる全国規模の調査を通して、室内気候やエネルギー消費量の実 態とその変遷や地域特性を明らかにし、その差異や変化の招来要因の解明及び将来の我が国の公的な 集合住宅の「温熱環境計画」理念の提示を目的としている。12章に纏められた成果は次の様に要約で きる。
1.住宅の量的充足が課題であった昭和40年代初期の薄肉コンクリートプレハブ住宅は、現在の熱的 性能水準から見ると見劣りするが、その室内環境は当時の一般的木造住宅よりも明かに改善されてお り、居住水準の向上に向けたその役割があったことを明かにした。
2.第1次石油危機を経過した昭和50年代初期の公営集合住宅の室温形成を見ると、北海道以外では、
同一地域でも住戸差が大きく、断熱性能よりは住まい方が影響していること、道内では住まい方や暖 房方式よりも建物の保温性能に影響されていることを明かにした。
3.建築設計面で地域性の回復に取り組んだ昭和60年代の公営集合住宅は、全体として断熱化が進み、
温度むらも減少し、熱的な居住性は向上したが、その一方で、建築環境的配慮の不足から結露が多発、
居住水準の面では課題を残していることを示した。
4.地球環境の関心が高まってきた平成4、5年の調査では、住宅のエネルギー消費量は暖房よりも給 湯が多し、こと、居住者の環境意識と消費行動が必ずしも一致しないことや、依然として道内と道外の 日平均室温は5℃近い差があることを明かにした。
5.調査対象住宅群のエネルギー消費量は、20年余りの間ほとんど増加せず、暖冷房用は減少傾向に ある。これは、住宅面積の拡大や室温上昇などの増加要因を相殺する程度まで、断熱性・気密性が向 上した結果であり、より一層の断熱化によって暖冷房用エネルギ一消費の増加を抑帯Uできる可能性が 高いことを明らかにした。
6.経年的、地域的調査を踏まえた地域毎のライフスタイルを見ると、補助暖房器具の使用や着衣が 室温の多様性を生み出す要因(地域特性)となっていること、環境性能の向上が中央の行政施策の主 導によるもので地域の伝統技術や気候風土などの特性が反映されていないことや、昭和60年代に至っ ても頻発する結露害は公営集合住宅計画における環境工学的知見の活用不足が原因であることを明ら かにした。
7.快適性と住まい方の問題では、快適さを技術で実現することの限界を示すと共に地球環境時代に 相応しい精神維持型快適観の重要性を示した。
8.今後の公的集合住宅の温熱環境計画には住戸間較差に向けた配慮がより重要であることや多様な 住まぃ方に相応しぃ計画の必要性が高いことを明らかにし、居住者の視点と地方主導が欠かせないこ
― 246―
とを示した。環境工学教育では、一般原則に加え、地域の特性やそれを活かす技術と考え方が教授さ れなければならないと総括した。
これを要するに、著者は、昭和40年代以降の公的な集合住宅に対する社会的、行政的、研究的な課 題や対応策、その効果や地域性の確立のための新知見を得たものであり、建築環境学及び建築計画学 の進展に寄与するところ大である。
よっ て 著 者は 、 北 海道 大 学 博士 ( 工 学 )の 学 位 を授 与 さ れる資 格ある ものと認 める。
― 247―