• 検索結果がありません。

博 士 ( 文 学 ) 山 越 康 裕

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "博 士 ( 文 学 ) 山 越 康 裕"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 文 学 ) 山 越 康 裕

学 位 論 文 題 名

シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 語 形 成 学 位 論 文 内 容 の 要 旨

1

)本論文の観点と方法

  

本論文は、モンゴル系のシネヘン・ブリヤート語について、5 年間にわたる現地調査で得 られた資料をもとに、語形成の観点から分析し記述したものである。具体的には、シネヘ ン・ブリヤート語の語形成の各手法について、それぞれの生産性や特徴のほか、「語」の単 位のとらえ方、統合度や緊密性などの諸問題について、類型論的パラメータを用いて網羅 的に分析・考察する。.そして、モンゴル諸語の語形成として認識されている各手法によっ て形成された「語」が、類型論的観点からどの程度「語」として認められるのかを明らか にする。その上で、シネヘン・ブリヤート語における「語」とはどのような単位であるの かについて論じている。あわせて、従来、記述が皆無に等しいシネヘン・ブリヤート語の 文法概略を付録として付している。

  

本論文は、現地で得た一次資料を記述言語学のオーソドックスな手法によって分析し、

記述するのみならず、他のモンゴル諸語に対する先行研究を批判的にふまえ、モンゴル諸 語研究に寄与しようとするものである。また「語」という単位をめぐる理論的・類型論的 研究をも視野に入れ、一般言語学や言語類型論に対しても、「アルタイ型j 語形成のーっの 類型を提示している点に特色がある。

2

)本論文の内容

  

本論 文 はA4 版 約

260

ページ

(400

字 詰め原 稿用紙換 算約880 枚)か らなり、 「序文 」に 続 く

6

つ の 章 と、 全 体 を受 け て の「 結 論 」、 お よ び「 付 録 」か ら 構 成 され て い る。

「序文」において、問題の所在と論文の構成を示し、さらに「はじめに」として本論文で 対象とする語形成手段の範囲を明確にしている。

  

第1 章「(語)の定義」では、シネヘン・ブリヤート語の「語」をまず定義する。モンゴ ル諸語においてこれまでparticle (小詞、小辞)とされてきた、語と接尾辞の中聞的存在で ある形式に焦点をあて、シネヘン・ブリヤート語の「語」(自立語、倚辞)と接尾辞の境界 を規定する。従来、モンゴル諸語研究において、「語」に対して明確な定義を与えた研究は 見あたらない。特に自立語と語尾・接尾辞との中間的な存在といえるparticle にっいては、

各研究者によって扱いが異なっていた。こうした現状をふまえて、類型論的パラメータを もとにシネヘン・ブリヤート語の非自立形式の再分類を行い、どのような形式を「語」と 見るべきかという見解が示されている。

  

続い て第

2

章以降 、語形成に関する「各論」に入る。著者によれば、従来のモンゴル諸 語研究における語形成に関する研究は、基本的に要素の羅列に終始しており、伝統的・規

‑ 26

(2)

範 的 文 法 研 究 の 域 を 出 な い と い う 。 さ ら に 通 時 態 ・ 共 時 態 の 区 別 が 明 確 で な ぃ 場 合 が 多 く 、 共 時 的 に ど の 程 度 生 産 性 が 高 い の か 、 ま た 実 際 に 使 用 さ れ て い る 形 式 な の か 、 と い う 点 に 関 し て も 記 述 が 不 十 分 で あ っ た 。 こ う し た 現 状 へ の 批 判 と し て 、 特 に い く っ か の ト ピ ッ ク に つ い て は 記 述 的 ・ 類 型 論 的 な 方 法 論 を も と に 分 析 ・ 考 察 し 、 今 後 の モ ン ゴ ル 諸 語 研 究 へ の 方 法 論 の 提 示 を 試 み て い る 。 そ う し た 目 論 見 の も と に 、 第2章 「 派 生 」 で は シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 派 生 法 に 関 し て 扱 っ て い る 。 お も に 変 化 詞 を 派 生 す る 接 尾 辞 の 一 覧 と 、 そ れ ら の 機 能 、 用 法 に つ い て 記 述 し て い る 。

  続 い て 第3章 「 モ ン ゴ ル 語 の 複 数 接 尾 辞 と 名 詞 旬 階 層 」 で は 、 語 形 成 の 手 段 と そ の 意 味 分 析 の 方 法 へ の 試 論 と し て 、 モ ン ゴ ル 諸 語 の 名 詞 の 複 数 表 現 に つ い て と り あ げ 、 接 尾 辞 の 意 味 ・ 機 能 に つ い て 論 じ る 。 こ の 章 で は 、 シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 と 比 べ て 類 型 論 的 に 、 よ り 興 味 深 い 特 徴 を 有 す る モ ン ゴ ル 語 ハ ル ハ 方 言 を 分 析 の 対 象 と し て い る 。 「 数 」 の 範 疇 は、

「 ア ル タ イ 型 」 言 語 に お い て は 、 「 派 生 」 に 関 わ る も の と と ら え ら れ る 。 そ こ で 派 生 接 尾 辞 の 意 味 分 析 へ の 試 論 と し て 、 「 複 数 」 を 意 味 す る 数 種 の 接 尾 辞 の 意 味 ・ 機 能 お よ び 選 択 制 限 に つ い て 分 析 ・ 考 察 す る 。 そ の 結 果 、 複 数 接 尾 辞 の 意 味 、 選 択 制 限 、 義 務 性 な ど に 、 言 語 普 遍 的 傾 向 で あ る 名 詞 の 有 生 性 に よ る 階 層 性 が か か わ っ て い る こ と を 論 じ 、 意 味 分 析 に お け る 類 型 論 的 な 分 析 方 法 の 導 入 が 有 効 で あ る こ と を 述 べ て い る 。

  4章 「 複 合 語 の 定 義 」 で は 、 シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 複 合 語 の 定 義 を 行 う 。 モ ン ゴ ル 諸 語 研 究 に お い て は 、 「 語 」 の 定 義 同 様 、 「 複 合 語 」 に つ い て も 明 確 な 定 義 が な か っ た 。 こ れ ま で 複 合 語 と さ れ て き た 形 式 が ど の よ う な 特 徴 を 有 す る の か 、 音 韻 面 、 形 態 ・ 統 語 面 の 双 方 か ら の 検 証 を も と に 、 あ ら た め て シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 複 合 語 の 定 義 を 試 み て い る 。

  5章 「 複 合 形 式 の 生 産 性 と 諸 特 徴 」 で は 第4章 の 定 義 に 基 づ き 、 シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 複 合 形 式 を 構 成 要 素 別 に 分 析 し 、 そ れ ら の 「 語 」 と し て の 資 格 や 意 味 、 機 能 面 で の 諸 特 徴 に つ い て 論 じ る 。 音 韻 面 、 形 態 面 双 方 か ら の 分 析 を お こ な ぃ 、 そ の 結 果 、 こ れ ま で

「 複 合 語 」 と 見 ら れ て い た 形 式 の 多 く が 、 実 際 に は よ り ゆ る や か な 結 合 で あ る こ と を 述 べ る 。 そ の 根 拠 と し て 、 音 韻 的 に は 構 成 要 素 が そ れ ぞ れ 独 立 し た か た ち で 複 合 体 を な し て い る 例 が 多 い こ と に 注 目 し 、 実 際 に 複 合 語 と し て 認 め ら れ る 形 式 は 非 常 に 少 な い と し て い る 。   6章 「 そ の 他 の 語 形 成 法 」 で は 、 シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 派 生 法 、 複 合 法 を 除 く そ の ほ か の 語 形 成 法 で あ る 、 重 複 や 音 交 替 、 借 用 に つ い て 、 そ れ ら の 生 産 性 や 機 能 に つ い て 概 観 し て い る 。

  以 上 の 考 察 を 総 合 し 、 さ ら に シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 の 語 形 成 に 影 響 を 与 え て い る と 考 え ら れ る 外 的 要 因 に つ い て 触 れ つ つ 、 「 結 論 」 を ま と め て い る 。 シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 に お け る 語 形 成 法 は 、 実 際 に は 派 生 法 を 除 く と 、 ほ と ん ど が 類 型 論 的 観 点 か ら は 「 語 」 形 成 と い う よ り は 「 複 合 体 」 形 成 と で も い う べ き カ テ ゴ リ ー に 属 す る と す る 。 日 本 語 と 同 じ ア ル タ イ 型 に 属 し て い な が ら 異 な る ふ る ま い を み せ る 要 因 と し て 、 近 隣 言 語 と の 接 触 の 影 響 や 、 地 理 類 型 と も 推 測 さ れ る 特 徴 が 確 認 さ れ る こ と に つ い て も 補 足 的 に ふ れ て い る 。   本 論 文 に は さ ら に 付 録 と し て 「 シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 概 略 」 が 付 さ れ て い る 。 本 論 文 の 対 象 で あ る シ ネ ヘ ン ・ ブ リ ヤ ー ト 語 は 、 移 住 者 の 言 語 と し て 近 隣 の モ ン ゴ ル 語 諸 方 言 、 も し く は 漢 語 ( 中 国 語 ) の 影 響 を 受 け 、 特 に 若 い 世 代 で は モ ン ゴ ル 語 、 漢 語 を 主 と し た 言 語 生 活 へ と 近 年 急 速 に 移 行 し つ っ あ る 点 で 、 い わ ゆ る 「 危 機 言 語 」 と 見 な す こ と が で き る 。 し か も 先 行 記 述 は 皆 無 に 等 し い 状 況 で あ り 、 こ う し た 点 で こ の 文 法 概 略 は 、 本 論 文 を 補 完 す る の み な ら ず 、 今 後 早 急 に 必 要 と な る 当 該 言 語 の 記 述 研 究 に と っ て 基 礎 と な る も の で あ

るといえる。 27

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

シネヘン・ブリヤート語の語形成

1

) 審 査 日 程

  

本 論 文 の 審 査 は 次 の よ う な 日 程 で 行 わ れ た 。 平 成

16

12

17

日 審 査 委 員 会 発 足

平 成

16

12

20

日 第

1

回 審 査 委 員 会 : 論 文 配 布 、 審 査 日 程 の 調 整 平 成

17

1

12

日 第

2

回 審 査 委 員 会 : 口 述 試 験 実 施 、 試 問 結 果 の 検 討 平 成

17

1

24

日 第

3

回 審 査 委 員 会 : 口 述 試 験 ( 第

2

回 ) 実 施 、 修 正 点 の 確 認 平 成

17

年1 月24 日 第4 回審 査委 員会 :学 位授 与 の判 定、 報告 書原 案の 作成 ・検 討 平 成

17

1

26

日 第

5

回 審 査 委 員 会 : 報 告 書 の 作 成 ・ 確 認 平 成

17

1

27

日 審 査 結 果 報 告 書 の 提 出

平 成

17

2

4

日 研 究 科 教 授 会 に お い て 審 査 報 告

平 成

17

2

11

日 研 究 科 教 授 会 に お い て 審 査 、 学 位 授 与 承 認

2

)審査経過概要

  

第2 回審査委員会において、論文提出 者から論文内容の概要について説明を受けた後、

各審査委員 から質疑がなされた。これにより、本論文の論点がいっそう明確になり、全体 として構成 ・内容とも高い水準にあることが確認された。ただし若干の軽微な不備が指摘 されたが、 次回審査委員会までに追加・修正が十分可能であるとみて、提出者に改善を求 めた。その 結果は第3 回審査委員会で本 人の補足説明とともに示され、これを受けて第4 回委員会に おいて、学位授与可との判定に至った。そこで主査を中心に審査報告書の作成 に 取 り か か り 、 第

5

回 委 員 会 に お い て 、 報 告 書 内 容 の 検 討 と 確 認 を 行 っ た 。

3

) 本論文の研究成果

  

審査委員の見解を総合すると、本論文の成果およぴ評価できる点は次のようにまとめら れる。   ・

  1

.モンゴル諸語研究において、従来、検証が不十分であった「語形成」および「語の単 位」 の 問題 を正 面か らと りあ げ、 その 全体 像を客観的基準によって 明らかにした点。

  2

.アルタイ型語形成のーつの類型を提示し、言語類型論に寄与しうるデータと分析方法 を示した点。

28

郎 孝

敏  

  誠

曲 本

津 煎

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

  3

.移住と他言語の影響による借用や語形成パターンの変化など、言語変化の動態論的側 面に貴重な実例を提示した点。

  4

.危機言語であるシネヘン・ブリヤート語を現地調査によルデータ収集・分析し、語形 成の問題にとどまらず、音韻・文法の全体像を記述した点。

4

)学位授与に関する委員会の所見

  

審査の過程において、データの分析と解釈や文章表現に関していくっかの改善すべき点 が見出されるとともに、章によって多少精度にバラツキが見られること(たとえば派生を 扱った 第2 章では接辞の意味記述が概略的に過ぎる点など)も指摘された。しかし細かな 誤りは十分修正可能な範囲であり、後者の問題にしても、未知のフイールドでーから取り 組んだことを考慮すると、むしろ今後の研究発展への基礎固めとしてとらえるべき部分で あると認識される。全体として本論文は、独自のデータと手堅い分析手法で貫かれており、

理論と記述の両面できわめて高い水準にあると判断される。

  

こうした点で、審査委員会は、本論文が博士(文学)を授与するに十分値する学問的価 値を有するものと、全員一致して認めるに至った。

29ー

参照

関連したドキュメント

第5章では、 「私たちの生のありよう」 「自己とは何か」 「 『人としての承認』のありよう」

「第Ⅰ部 『源氏物語』における異国」では、 『源氏物語』において異国をあらわす言葉を徹底的に検

   最後 に第 9 章は、 第 5 章、第8 章で提案されたラテイスフイルタを合成フイル タとして用いた場合のフイル夕係数感度について考察する。一般に、本論文で対象 として

   第

反面、従来の

この構文で接続法を用いることによって、話者は先行詞について「信じがたい」という

る見解を新たに提示している。 この「梅花落」には、江総の詩篇が

   近年、特に1990 年代に入ってからの