Vol. 43 (2006) 近畿大学原子力研究所年報
│論文│
熱時効処理による低合金銅中におけるリンの粒界偏析挙動
中 田 早 人
1+藤 井 克 彦
2福 谷 耕 司
2笠 田 竜 太
3木 村 晃 彦
3Grain Boundary Phosphorus Segregation under Thermal Aging in Low Alloy Steels
Hayato NAKATA, Katsuhiko FUJII, Koji FUKUYA, Ryuta KASADA, Akihiko KIMURA
Intergranular embrittlement due to grain boundary segregation of phosphorus is recognized as one of the potential degradation factors in irradiated reactor low alloy steels at high neutron fluence. In this study
,
low alloy steels thermally aged at 400‑500oC were investigated to evaluate the cor :
relation between phosphorus segregation and intergranular embrittlement. Phosphorus segregation determined using Auger electron spectroscopy increased after thermal aging above 4500C and was in good agreement with the calculated value based on McLean's model .No influence of thermal aging on tensile properties or hardness was observed. The ductile brittle transition temperature determined using a one‑third size Charpy impact test increased at a P/Fe peak ratio of 0.14. These results indicated that there is a threshold level of phosphorus segregation for non‑hardening embrittlement. DBTT increased with the proportion of intergranular fracture,
80 this result shows that there is a relationship between DBTT and the proportion of intergranular fracture. The fracture stress decreases due to non‑hardening embrittlement on the thermally aged material with high proportion of intergranular fracture.Keywords: reαctor pressure vessel steel, rαdiαtion embrittlement, grain boundαry segreg,αtion, phosphorus segregαtion
1近畿大学原子力研究所 Atomic Energy Research Institute
,
Kinki University +本研究は株)原子力安全システム研究所の客員研究員として実施したものである。2 ~株)原子力安全システム研究所 Institute of Nuclear Safety System
,
Incorporated3京都大学エネルギ一理工学研究所 Institute of Advanced Energy, Kyoto University
この論文はJournalof NUCLEAR SCIENCE and TECNOLOGY, 43 [7J, 785・793(2006)に掲載されたも ので、その和文版を掲載するものである。
円 ︒
'EA
中田他:熱時効処理による低合金鋼中におけるリンの粒界偏析挙動
1 . 緒 言
低合金鋼で作られた軽水炉の原子炉容器の照射脆 化は、硬化型と非硬化型の 2つの要因に分けられ る。長期間の運転中に不純物が結晶粒界に偏析する ことによって引き起こされる粒界脆化は通常硬化を 伴わないが、照射誘起硬化はしばしばへき開破壊を 示す脆化の要因となる。硬化は照射によるマトリッ クス損傷と銅主体の析出物が形成されることによっ て起こると考えられている1)。粒界脆化について は、リンの粒界偏析が低合金鋼の機械的特性に悪影 響をもたらすことがよく知られている。
リンの粒界偏析は、英国のマグノックス炉におい て照射後の溶接金属監視試験片の再照射後に観察さ れたことが報告されている2,3)。またロシアの
VVER
型原子炉容器の溶接金属においても粒界でリンの偏 析量が増加したことが観察されている4,5)。このた め、これらの原子炉容器鋼材については粒界破壊 に対するリン偏析の影響6,7)やリン偏析のモデリン グ8‑10)の研究が進められてきた。さらに、欧米型の 軽水型原子炉容器についても照射後の脆化回復熱処 理におけるリンの偏析挙動に関する研究ll)が進め られており、これまでのところ、リンの偏析量が多 いほど粒界破面の割合が多くなること、母材のリン の含有量が多いほど偏析量も多くなる傾向があるこ と、リンの偏析量と脆性選移温度
(DBTT)
に線型 の相関関係があることが報告されている。圏内の原子炉容器銅については、リンの含有量は 多いもので、0.015wt%程度で、あり、英国のガス冷却 型やロシアの
VVER
型原子炉容器鋼材のリンの含有 量と比べてかなり低いものの、リンの粒界偏析量は照射量とともにわずかに上昇する傾向が報告されて いる12)。しかしながら、次の点についてまだ明らか ではない。即ちこのような低いリン含有量の場合に おける長期運転に伴う粒界へのリンの偏析量や粒界 破壊が脆性遷移温度に及ぼす影響についてである。
さらに現在の原子炉容器鋼の脆化予測には粒界偏析 の影響は想定されていないので、これを考慮すべき か評価する必要があるO
照射脆化における非硬化メカニズムの影響を明ら かにするためには、硬化を伴わないリン偏析による 潜在的な脆化を測定する必要がある。照射による脆 化は硬化メカニズムによる脆化の原因となるマト リックス損傷や銅主体の析出物によっても起こるの で、熱時効の試験は照射脆化におけるリンの粒界偏 析の影響を評価する最も効果的な方法と考えられ る。
本研究の目的は、照射脆化における潜在的な非硬 化型脆化を評価するために熱時効した実用低合金鋼 の
DBTT
移行量に対する粒界脆化の寄与を明らかに すること、そして粒界におけるリン偏析量と粒界破 面率(IGFR)
との関係を把握することである。n .
試 験1 .供試材と熱時効処理条件
本 研 究 で 使 わ れ た 供 試 材 は 、 実 用 低 合 金 鋼 (A533B. cl1.)の二種類の圧延材である。各供試材 の化学組成を表1に示す。リン含有量が0.011%と 高い材料(以後HP材とする)を主な研究対象とし、
リン含有量が0.002%と少ない材料(以後
LP
材とす る)を比較材として用いた。供試材の熱処理は、約表
1
供試材の化学組成 (wt%)ウ ー 一 G o
e ‑ ‑
‑ 一
1 .
一n
U
一n
u
‑ ‑
‑ ‑
回一 直一
h r
ムL 一門 口一 Fi
no
‑‑
﹄
‑
‑
‑
Si 0.29 0.17
Mn P S Ni l.45 0.011 0.017 0.55 1.48 0.002 0.004 0.65
e一epu‑nu e一
n‑ n R
一 a 一 a
可E﹄
‑ 可
Ei‑司EA一
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一円
U
: E
・E
‑
a一
nU
一 ハ
υ
Cr 0.11 0.13
Mo 0.50 0.51
‑ 14 ‑
Vol. 43 (2006)
8700C X7時間のオーステナイト熱処理(水焼入れ)、
約6500CX 5.25時間後炉冷の焼戻し、約6150CX 24時 間後炉冷の応力除去焼鈍である。この熱処理により これらの材料の粒径は約15μmになるO
220mm厚さの母材の1I4tの位置からオージ、エ電 子分光測定 (AES)用試験片、シャルピー衝撃試 験片および引張試験片が切り出された。これらの試 験片は真空度1O‑4Paのガラス管に封入され表
2
に 示す条件で電気炉にて熱時効処理を施した。HP
表
2
熱時効処理条件Temperature (OC) Time (h) 1000 400 3000 16000 1000 450 3000 5000 15000 500 1000 14000 450 3000 LP
2 .
試験方法AES測定は、 ULVAC‑PHI社製SAM640の分析 装置を用いて1x10‑8paの真空、約一1900Cの温度の AESチャンバー内で破断させた試験片の破面に対 して電圧10kV、電流10nAの電子ビームを用いて行 われた。未時効材ではほとんど粒界破面が見られな かったので、粒界割れを促進させるために硫酸酸性 の水溶液中で、室温にて8時間水素チャージ、を行った。
P (l23eV) /Fe (703eV)とC (275e V) /Fe (703e V) のピーク比は試験片破面からの5から20点のデータ の平均値から求められた。
シャルビー衝撃試験は計装化落錘型衝撃試験機を 用いて行われた。試験片は図1(a)に示す113サイ ズ試験片を用い、試験温度は試験片の側面に点溶接 で取り付けた熱電対温度計によって測定され、温 風と液体窒素によって温度制御された。吸収エネ ルギーは、荷重一変位データから算出した。シャ
近畿大学原子力研究所年報
ルビーデータはDBTTと上部棚エネルギー (USE) を得るために次式の双曲線関数 (tanh)にフイツ テイングさせた。
日
+B 叫弓 T o )
( 4EEA )ここで、 Eは吸収エネルギー、 Tは試験温度で、 A、
B、Toは回帰係数であるD この研究ではあるエネ ルギー(例えば、 68或いは41J)でDBTTを特定す る従来の方法は小型試験片には採用できないので、
DBTTは上部棚エネルギーの112のエネルギーに対 応する温度を採用した。 USEはA+Bの値である。
引張試験は図 1(b)に示す試験片を用い、室温と
‑1960Cで、行った。歪速度は6.7X10‑4/8で、ある。硬 さ測定はシャルピー衝撃試験片に対して、ピッカー ス硬度計を用いて負荷荷重200gで、行った。
( a ) Charpy
(Thickness = O.25mm)
( b ) T e n s i l e
図
1
シャルビー衝撃試験片と引張試験片の形状‑1960Cで破断させたシャルビー衝撃試験片の破 断面に対して粒界破面率を測定した。 100倍程度の 低倍率では原子炉容器鋼の破壊様式を見極めること はできないので、走査型顕微鏡 (SEM)を用いて 全破壊表面に対して500倍の倍率で観察した。低倍
FO
熱時効処理による低合金鋼中におけるリンの粒界偏析挙動 中田他
へき開破面 率では粒界とへき開の見極めが困難なので、高倍率
試験片の粒界破面率を測定するのに約500枚の写真 での電子顕微鏡写真を撮影した。各1/3シャルピー
III. 試験結果
1 .オージ、工電子分光測定 (AES) が必要であった。
4500C 3000時間時効HP材破面のSEM像を図2に ここではへき開破面と粒界破面が見られる。 示す。
図2の白枠で囲んだ粒界破面での測定結果を図3に 粒界破面 示す。二次電子スペク トル上に鉄、炭素、酸素の
4500(3000時間時効HP材の破面のSEM像 図2
オージ、ェ電子ピークが見られる。リンのオージェ電 子ピークはへき開破面においては見られず、粒界破 面においてのみ見られた。モリブデン、ニッケルお
2.5x106
よび銅のわずかなピークが粒界破面に見られるが、
へき開破面には見られなかった。
各試験片におけるP/Feピーク高さ比とC/Feピー
‑
、
凶、
Z1.5x10‑
6ク高さ比の平均値および測定値の標準偏差を表3に 示す。水素チャージによりHP材の未時効材におい しかしなが て粒界破壊を引き起こすことができた。
100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000
K i n e t i c Energy ( e V )
(a) Direct Spectrum1.0x106
o
ら、
LP
材の未時効材では粒界破面は見られなかっ た。リンの粒界偏析に対する時効温度、時効時間の 影響を図4に示す。HP材は未時効材においてもリリンの偏析量は時効時聞が長い ンの偏析が見られ、
ほど多くなる傾向を示している。また図に見られる Fe ように、含有量が多いほどリンの偏析量は多くなる
凶‑ u
ニ 凶
)Z
司
ことがわかる。粒界偏析において炭素はリンと競合 し、粒界の炭素濃度が減少するとリン濃度が増加す るという研究報告がある13,14)。本研究対象の低合金 鋼では微細な粒界炭化物を多数含んでおり、 AES測
100 200 300 400 500 600 700 800 9001000
K i n e t i c Energy ( e V )
(b) Different spectrum
。
定データは粒界の炭化物と粒界面の固溶炭素を含め た総炭素量である。測定結果からは粒界における炭 素については、時効温度、時効時聞による有意な変 化は見られなかった。モリブデン、ニッケルおよび
4500ζ3000時間時効HP材の破面の2次 電子スペクトル
図3 銅の濃度には熱時効による変化は見られなかった。
円hu
Vol. 43 (2006) 近畿大学原子力研究所年報
表
3
AESによる粒界でのP/FeとC/Feのピーク高さ比Temperature (oC) Aging Time (h) P/Fe peak height ratio C/Fe peak height ratio Average Std Deviation Average Std Deviation as‑received 0.038 0.022 0.133 0.006
1000 0.051 0.028 0.342 0.036 400 3000 0.066 0.017 0.159 0.032 16000 0.107 0.020 0.117 0.016 1000 0.113 0.014 0.122 0.013
HP
3000 0.141 0.036 0.120 0.020 450 5000 0.166 0.028 0.133 0.013 15000 0.196 0.041 0.145 0.030 1000 0.120 0.021 0.130 0.032 500 14000 0.130 0.021 0.131 0.019as同received
LP
450 3000 0.064 0.014 0.160 0.047注)4000 C1000時間時効材のC/Feピーク比の高い値は汚染物の付着による
0.30│
1 1 .
as‑received│ 表4 HP材のDBTT
およびDBTT
移行量 .冒2』 0.25
DBTT (oC) LjDBTT (OC)
も
a@ 020
.450・c
.500.C as‑received ‑40
0.15 t.450・C(LP) 4000C, 3000h ‑43 ‑4
」
g
a g O‑lo 4500C, 3000h ‑28 12 遣~ 0.05 45050000CC, , 1000h 15000h ‑42 ‑7 ‑2 330.00
o 5000 10000 15000 20000 Aging time(h)
図
4
リンの粒界偏析に対する時効温度と時効時間 の影響20
q J A U q J A﹃}ha﹄020ha﹄何畠
ω
• as‑received
・
4000C,
3000 h企 4500C
,
3000 h D. 450oC,唱5000h・
500oC,唱OOOh。
同150 ‑100 ‑50 0 50 100 150
Temperature ("C)
図
5
熱時効前後のHP材のシャルビー選移曲線の 比較2 .
シャルビー衝撃試験結果HP
材の脆性遷移挙動に対する時効の影響を図5
に、得られたデータを表
4
に示す。 45000C3000時 間時効材の遷移曲線と4500C15000時間時効材のそ れを比較すると、後者の方がより高温側に移行し ておりかつ遷移領域の傾斜も緩やかになっている。DBTTは前者が120C、後者が330C高くなっている。
他の時効材の遷移曲線は未時効材の遷移曲線とほぼ 重なり合っており、DBTTの変化は見られなかった。
3.引張試験結果
引張試験結果を表5に示す。引張試験は未時効材 および1000時間と3000時間時効材について常温と液 体窒素温度で実施した。一般に降伏応力、引張強さ および伸びのような引張特性は液体窒素温度で引張
可t
中田他:熱時効処理による低合金鋼中におけるリンの粒界偏析挙動
表5
H P
材の引張試験結果Test temperature Aging condition RT ‑1960C
as‑received 485 891 Yield stress 4000C,3000h 487 895 (MPa) 4500C,3000h 480 860 5000C,l000h 477 868 as‑received 622 953 Ultimate tensile
4000C,3000h 617 953 strength
4500C,3000h 600 978 (MPa)
5000C,1000h 596 885 as‑received 7.3 8.4 Uniform
4000C,3000h 9.1 12.4 elongation
4500C,3000h 8.5 12.9 (%) 5000C,l000h 8.7 3.8
as‑received 14.9 8.5 Total elonga tion 4000C,3000h 13.8 14.5 (%) 4500C,3000h 19.8 16.4 5000C,1000h 16.5 4.3
強さと伸びが減少した5000C1000時間時効後の場合 を除いては熱時効によって大きな影響は受けない。
これは5000
C
でより長い時間時効することにより炭 化物が大きくなり局所的な変形が進むことによって 説明できる15)0BDTTの移行をもたらす時効は硬化 を伴わないことに注目すべきで、非硬化のメカニズ ムがこの研究で観察された時効脆化に作用したこと を示している。4.硬さ測定結果
硬さ測定結果を表6に示す。全ての条件での時効 後の硬さにはほとんど変化が見られなかった。硬さ 測定結果から、この研究で観察された時効脆化は非 硬化メカニズムによって起きたととが確認される。
5.粒界破面率測定結果
粒界破面率
( I G F R )
を測定するために液体窒素 温度で衝撃破壊させたシャルビー試験片の破面を観 察した。破壊モードが破面の場所にかなり依存して いたので、粒界破面の分布状況を調べるため破断面表6
H P
材のビ、ツ力一ズ硬度測定結果Average StdDeviation as‑received 217 8 4000C,3000h 217 7 4000 C, 16000h 214 10 4500C,3000 h 218 9 4500C,15000 h 214 6 5000C,l000 h 214 8 5000C,14000 h 211 8
を0.2XO.3mmの長方形に区切った。図6に最も遷 移混度移行の大きい値を示した4500
C
15000時間時 効材の粒界破面分布を示す。粒界破面は切欠き底か らO.4m m以内にあり、最大破面率は91%であった。IGFR
は切欠き近傍で特に高く、脆性破壊が粒界に 沿って発生していることを示している。同様の傾向 は多かれ少なかれ粒界脆化を示した他の時効条件の材料でも見られた。4500C3000時間時効材と5000C 1000時間時効材の最大
IGFR
はそれぞれ75%と20%であり、 4000C3000時間時効材では5%であった。
IGFR
の深さ方向の分布は図7
に示すように破面 の中央部113の領域について測定したものである。乙の図から粒界割れは切欠きの底から0.6mmの範 囲内にあり、破壊モードは切欠きから離れるにつれ 粒界破壊からへき開破壊へと変化していることが明
0.2 mrn
80 ‑100% 60‑80%
40‑60%
20‑40%
10‑20%
0‑10%
0.3 mrn
図6 4500(15000時間時効材の粒界破面分布
︒ ︒
近畿大学原子力研究所年報 Vol. 43 (2006)
一+一‑as‑received
一
ー
‑400・
C,
3000 h‑‑.‑450
・
C,
3000 h 一合‑450・
C,唱5000h‑‑500
・
C,唱000h 10080
40 20 60
AJ F}
区
M h o ‑
。
。
2 Measured areaDistance from the V‑notch root (mm) 切り欠き底からの距離と粒界破面率との関係
図7
ここで、 CZ と C~ は粒界での平衡偏析量とマト らかである。また有限要素法により応力分布を計算
リックス中のリン濃度、 kはボルツマン定数、 T L1Gpは偏析による自由エネル は絶対温度である。
した研究16)では、粒界割れが多く見られる切欠き 底近傍で主応力が最大となっている。
シャルビー衝撃試験における吸収エネルギーは破 ギ ー の 変 化 で 、 式 L1Gp=L1Hp‑T L1Spで表され、
L1Hpは偏析エネルギーを、 L1Spは偏析エンタルピー 壊に使われたエネルギーの合計値である。吸収エネ
を示す。また、温度Tにおいて平衡偏析量に到達す ルギーと粒界破面率の関係を評価するため、各試
るまでの粒界リン濃度の時間変化は時間tの関数と 験片の全体粒界破面率を求めた。表7に結果を示
して次式で表される。
す。最も粒界の多し'14500C15000時間時効材で約6%
C~B (t)
=
であった。
C~lþ- (C~lþ-C~:) exp (ω2(t))elプc(ω(t))
( 3 ) H P
材の全体粒界破面率表7
( 4 )
eげc(ω)=ト eげ(ω
)=f 九
xp(‑x
2)d x
叫す
IGFR (%) as‑received
4000C
,
3000h 4500C,
3000h 4500C,15000h 5000C,1000h0
.40.5 (5)
4.5
CGB ∞P
α=
で τ
6.2
(6) 1.
7
ここで、 CZ:時効前の粒界のリン濃度、 hは粒 界の厚さである。 Dはリンのバルクの拡散係数で
N.
考 察式D=Doexp(
‑QIRT)
で表され、 A533B鋼の偏析 の自由エネルギー変化とリンの拡散係数に関して 1 .熱偏析理論計算との比較、F
は、いくつかの値が報告されているが10,11,15,18)、」
鉄中におけるリンの熱平衡粒界偏析量は、次式に
のモデルではDo=7.12X 1Q‑3m2/s、Q= 253kJ I mol、 示すMcLeanモデ、ル10,15,17)を用いて計算により求め
L1Sp=‑26J/kmolとすると、
実験値と良い一致を示した。
HP
材についての計算 結果を実験値と合わせて図8
に示す。なお、粒界厚19 ‑
L1Hp=‑63kJ/mol、 (2)
c~ exp ( ‑LI Gp/kT) 1
+
C~ exp (‑LI Gp/kT) られる。C四国p
中田他:熱時効処理による低合金鋼中におけるリンの粒界偏析挙動
リンの粒界への偏析がDBTTにどの程度影響して リンの粒界偏析量とDBTTの いるかを調べるため、
関係を求めた。結果を図10に示す。 P/Feピーク高 さ比が0.14で遷移温度の移行が見られ、それ以上で はリン濃度の増加に比例するように遷移温度が高く なっている。一方、 0.12以下ではほとんど変化して
この近傍に関値が存在すると考え し1なし1ことカ、ら、
0.4
4000C
。
噛,
f
0.3噌d
a m
2 0 2
~ ca
3 0 1
l ! :
A.
られる。リンの粒界偏析量と遷移温度との関係につ
0.0 I.E+OO
いては、熱影響部の粗粒部を模擬したA533B鋼につ
I.E+06 I.E+02 I.E+03 I.E+04
Aging Time (h) リン偏析量の計算値と実測値の比較
l.E+05 I.E+OI
いて熱時効材で調べた例があり、 P/Feが0.1程度以 図8
上ではリン濃度に比例して遷移温度が上昇するとさ れているが15)、本研究の結果は母材でも同程度のリ ン偏析が遷移温度に影響することを示している。
とした口本研究の時効条 さは5X1O‑10m (0.5nm)
0.30
。
唱d
・ E
a急
0.202O
15 必a
ca O lo@
睦色
0.05 件範囲では4500Cで最も高い偏析量を示した。
平衡偏析量と60年後の偏析量に対する温度の影響
0.25 この図から本材料では軽水炉の運転
を図
9
に示す。温度である 290~3200C の場合、ほとんどリンの偏析 は進行していないことから、軽水炉の60年運転にお いて熱時効効果によるリンの偏析量は無視できるも のと考えられる。
O
‑10
‑30 ‑20 DBTT rC)
‑40 0.00
・50
DBTTに対するリン偏析量の影響 図10
• Equllibrium ロ60yearlater
リン偏析の影響は粒界破壊の感受性と関係してい 1.00
0.80
0.60 0.40
︒
z
e
﹄ 宮歯 切由︒
a M
‑ e o a
跡 ︑ @
0.20ると考えられるので、リンの粒界偏析量と粒界破壊 との関係および粒界破壊とDBTTとの関係を検討し 600
400 450 500 550 350
0.00
200 250 300
た。図11にリンの粒界偏析量と全体粒界破面率の Aging temperature (OC)
関係を示す。全体粒界破面率はリンの偏析量の増加 リンの熱平衡偏析量と
6 0
年後の偏析量図
9
とともに上昇しており、リンの偏析が粒界破面の増 加をもたらしていることがわかる口全体粒界破面率 は、 P/Feピーク高さ比が0.2でも高々6.2% (4500 リンの粒界偏析と破壊特性との関係 C
2 .
15000時間時効材)であるが、前述のように破壊の リンの偏析によりDBTTが上昇した時効材におい
起点付近では局所的に非常に高い割合で粒界破壊が ても降伏応力や硬さにほとんど変化は見られなかっ
起こっており、それがリンの粒界濃度に応じた全体 粒界破面率の増加を引き起こしていると考えられる。
‑ 20 ‑ これらの材料には非硬化型脆化が生じたも のと考えられる。
たので、
近畿大学原子力研究所年報
ルピー衝撃試験において、低温で破断させた各試 験片の試験温度と破壊応力O Fの関係を図14に示す。
破壊応力は、最大荷重による曲げモーメントと試験 片の断面係数から求めた。粒界破面率が小さい未 時効材、
5 0 0
0C. 1 0 0 0
時間時効材および4 0 0
0C3 0 0 0
時 これらはいず れもへき開破壊による破壊応力を示しているものと 閣時効材の破壊応力は直線上にあり、Vol. 43 (2006)
0.30
︒冒
g z m 3 a w
‑ ‑ o a 也 ︑ @
0.25 0.20 0.15 0.10 0.05
考えられる。一方起点での粒界割れが多く見られた 0.00
0.0
4 5 0
0C1 5 0 0 0
時間時効材においては、他の試験片の 8.06.0 4.0
IGFR(%)
2.0
値から推定したへき開破壊応力より約
500MPa
低下 リン偏析量と粒界破面率の関係図11
し、リンの偏析による非硬化型脆化が生じたことを 示している。
照射材の場合は、結晶粒内の硬化を伴うことから、
図
1 2
に全体粒界破面率とDBTTとの関係を示す。硬化型脆化が重畳して遷移温度の移行量は図
1 3
に DBTTの上昇が明瞭な4 5 0
0C3 0 0 0
時間時効材と4 5 0
0C1 5 0 0 0
時間時効材では両者に相闘がある。一方、全 体粒界破面率が2%以下の場合、 DBTTの移行は見 られない。5 0 0
0C 1 0 0 0
時間時効材はP/Feピーク高c F
U F OF
U Y
さ比が
0 . 1 2
であり、図1 1
のように粒界のリン濃度に 応じて粒界破壊の割合は増加しているが、ほとんど8.0
DBTTの移行は見られない。
Temperature ( C )
6.0
4.0
︽﹄
FV 出 削 圃
一 0
・
図1 3
降伏応力と破壊応力の温度依存性2.0
3 0 0 0
as‑received
L
山 3000h
行 : ; 。 ふ ‑
2 0 0 0
ハV
A υ
A
U
‑ ‑ ‑ a
宮島田昌
} g
窃
e
Z
品E s t
• •
0.0
‑50 ‑20 ‑10 O DBTT (OC)
‑30
‑40
DBTT
と粒界破面率の関係 図1 2
DBTTが変化する機構は、図
1 3
に示すように材料の降伏応力と破壊応力の関係で理解される。硬化
。
型の脆化では降伏応力Oyが上昇し、リンの偏析に
‑100
‑110
‑ 1 2 0
‑130 よる脆化では破壊応力O Fが下がる。図
1 3
においてTemperature( ・ C)
非硬化腕化による破壊応力の低下 図14
L1TT2が
‑ 2 1 ‑
L1TTlは硬化によるDBTT移行分であり、リンの偏析による移行分に相当する。本研究のシヤ
中国他:熱時効処理による低合金銅中におけるリンの粒界偏析挙動
おけるLlTT3となると考えられる。さらに粒内硬化 によって粒界破壊の感受性自体も変化する可能性が あり、リン偏析の影響を総合的に評価するためには 更に検討が必要である。
v .
結 論二種類の低合金鋼母材 (A533B)を熱時効処理し た供試材を用いて、リンの粒界への偏析量と脆性 遷移温度 (DBTT)の関係を調べ、以下の知見を得 た。
(1) 熱時効によりリンが粒界に偏析すること、また 母材のリン含有量が多いほどリンの偏析量が多く なることを確認した。偏析量は平衡偏析に関する McLeanモデ、ルによる計算結果とほぼ一致した。
(2) 脆性遷移温度が上昇した材料においても、降伏 応力や硬さに変化は見られなかったことから、こ れらの材料には非硬化型の脆化が生じたものと考 えられる。
(3) リンの偏析がP/Feピーク高さ比0.14付近で脆 性遷移温度が上昇したことから、リンの粒界偏析 によって脆化の生じることが確認され、また脆化 の起こる闇値のあることが示唆された。
( 4 )
破壊面全体での粒界破壊の割合は数%以下と小 さかったが、粒界破壊は切欠き底の破壊の起点に 生じ、リンの偏析量が増加すると局所的な粒界破 面率は数10%を超え高くなることがわかったD(5) 4500C 15000時間時効材においては、破壊応力 が低下し、非硬化型脆化が生じたことがわかっ た。
(6) 本研究に用いた材料では、軽水炉の運転温度に おいてリンの偏析はほとんど起こらないことか ら、 60年間運転しても熱時効によるリンの偏析は 無視できるものと考えられるが、照射によるリン の偏析の影響について更に検討が必要である。
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中田他:熱時効処理による低合金銅中におけるリンの粒界偏析挙動
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円ノ臼