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茶 浸 出液 中 に含 まれ る ポ リフ ェ ノー ル類 の リパ ー ゼ活 性 に及 ぼ す 影 響

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Academic year: 2021

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茶 浸 出液 中 に含 まれ る ポ リフ ェ ノー ル類 の リパ ー ゼ活 性 に及 ぼ す 影 響

石 井 智 恵 美 ・中 林 み ど り

茶 は 揚 子 江,メ コ ソ 川,イ ラ ワ ジ 川,プ ラ マ プ ト ラ 川 な ど が 集 ま る 中 国 西 南 部 の 雲 南 省 か ら,ビ ル マ 北 部,ア ッ サ ム 地 方 に わ た る 山 地 が 原 産 地1)と 考 え ら れ で い る が,現 在 は 東 南 ア ジ ア を 中 心 に 広 く栽 培 さ れ,様 々 に 加 工 さ れ て,世 界 の 人 口 の 約 半 分 は 茶 を 飲 ん で い る と 言 わ れ て い る.茶 に は 生 葉 を 発 酵 さ せ て .つ く る 紅 茶,発 酵 させ な い で つ く る 緑 茶,両

者 の 中 間 の 半 発 酵 茶(ウ ー ロ ソ茶)な ど が あ る が,我 国 に お け る茶 の 生 産 の ほ と ん ど は 緑 茶 で あ る.茶 に 含 ま れ る 主 要 な 化 学 成 分 の う ち,他 の 植 物 に 比 べ て 特 異2)な も の と し て は, テ ア ニ ソ,カ フ ェ イ ソ を 含 む こ と,カ テ キ ソ 類 の 含 有 量 が 多 い こ と が あ げ ら れ る.

カ テ キ ソ 類 は 茶 の 苦 渋 味 の 主 体 で あ り,一 般 に 総 称 し て タ ソ ニ ソ と 呼 ば れ て い る.茶 の

タ ソ ニ ソ が カ テ キ ソ 類 の 混 合 物 で あ る こ と は 辻 村 ら3)に よ っ て す で に 明 ら か に さ れ て お り, 煎 茶 の 乾 物100g中,粗 タ ソ ニ ソ と して12.9

g〜14.792)含 ま れ て い る.中 で も(一)一 エ ピ ガ ロ カ テ キ ソ'ガ レ ー ト4)5)6)の カ テ キ ソ 部 分 は 苦 味 を,そ の ガ レ ー ト部 分 は 渋 味 を 呈7) す る と 言 わ れ て い る.こ れ ら は す べ て 分 子 中 に 多 数 の フ ェ ノ ー ル 性 水 酸 基 を も っ て い る こ と か ら,ポ リ フ ェ ノ ー ル に 分 類 さ れ て い る.

カ フ ェ イ ソ は 核 酸 系 物 質(プ リ ソ 塩 基 の ひ と つ)で あ り,熱 水 に よ く溶 け て 苦 味 を 呈 す る(苦 味 閾 値0.0007M7)).茶 で の 含 有 量 は 乾 物100g中2.5〜5.5gで あ り,特 に 第 一, 二 葉 に そ の 存 在 が 集 中 し て い る.8)

テ ア ニ ソ は 玉 露 の 旨 味 の 本 体 で あ る と 言 わ

れ,1950年 に 酒 戸9)に よ っ て こ れ がL一 グ ル タ ミ ソ 酸 の γ一エ チ ル ア ミ ドで あ る こ と が 確 認 さ れ て い る,そ の 含 有 量 は 煎 茶(乾 物100g 中)で 平 均1.5g,全 遊 離 ア ミ ノ 酸 中 の50%

以 上 を 占 め て い る.10)

著 者 ら は す で に ス ク リ ー ニ ソ グ 試 験11)に お い て 緑 茶 浸 出 液 に リ パ ー ゼ 活 性 の 阻 害 作 用 の あ る こ と を 報 告 して い る が,今 回 は 茶 の 特 殊 成 分 の 中 で も特 に 含 有 量 の 多 い ポ リフ ェ ノ ー ル 類(エ ピ ガ ロ カ テ キ ソ ガ レ ー ト,エ ピ カ テ キ ソ ガ レ ー ト,エ ピ カ テ キ ソ,没 食 子 酸,タ

ソ ニ ソ 酸)に つ い て リパ ー ゼ 活 性 に 与 え る 影 響 を 検 討 した.ま た,こ れ ら ポ リ フ ェ ノ ー ル に つ い で 含 有 量 の 多 い カ フ ェ イ ソ に つ い て も あ わ せ て 試 験 し た.

1.試 料

実験方法

茶 葉 は狭 山 産 の煎 茶 を 用 い た.

2.試 薬

エ ピ カ テ キ ソ ガ レ ー トは 栗 田 工 業 ㈱ よ り, エ ピ ガ ロ カ テ キ ソ ガ レー ト,エ ピ カ テ キ ソ, 没 食 子 酸,タ ソ ニ ソ 酸,カ フ ェ イ ソ はSIGM A社 よ り購 入 した.

リ パ ー ゼ は ブ タ す い 臓 リ パ ー ゼ(SIGMA) を 用 い た.

3.茶 浸 出液 の 調製

一57一

(2)

『教:育学部 紀 要』文 教 大学 教 育学 部 第29号1995年 石 井 智 恵美 ・中 林 み ど り

茶 浸 出 液 は 「茶 の お い し い 入 れ 方 」12)に 従 っ て,茶 葉3g,湯 量80酩,湯 の 温 度80

℃ 抽 出 時 間1分(1人 分)で 得 た.

4.リ パ ー ゼ 活 性 の 測 定

前 報13)に 従 っ て リ パ ー ゼ 活 性 を 測 定 し, 計 算 に よ り阻 害 率 を 求 め た.リ パ ニ ゼ 添 加 量 は 反 応 混 合 液6認 中0.025㎎(550ユ ニ ッ ト),

と し た.

結果と考察

1.茶 浸 出 液 に よ る 影 響

反 応 混 合 液6m£ 中 に 茶 浸 出 液 が1,2, 3酩 入 る よ う に調 製 して リパ ー ゼ活 性 の 測 定 を 行 っ た.図1に 示 す よ うに,リ パ ー ゼ活 性 は 茶 浸 出 液1認 添 加 で は42%,2m£ 添 加 で は57%,3祕 添 加 で は67%阻 害 され た.

ま た,こ の茶 浸 出 液 を凍 結 し解 凍 す る操 作 を ・ 繰 り返 した場 合,そ の リパ ー ゼ 阻 害活 性 に影 響 を 与 え るか ど うか を観 察 した(図2).そ の 結 果,上 記 操 作 を2回 繰 り返 した後 の 浸 出 液 は 阻 害 活 性 を ほ とん ど失 った.

図1浸 出 孜 の リノ ー ゼ 活 性 に お よ ぼ す 影 響 反 応 条 件:温 度37℃,酵 素550units pH7.0,茶 浸 出 液 量 上 記

図2凍 結 ・解 凍操 作 が茶浸 出液 の リパ ーゼ 阻 害 活性 にお よぼ す影響

反 応条 件:温 度,酵 素,pHは 図1 に示 した 茶浸 出液0.5m2

.添 ロ物 量(mg)

図3り パ ー ゼ 活 性 に お よ ぼ す 添 加 物 の 影 響 反 応 条 件:温 度,酵 素,pHは 図1に.

示 した 添 加 物 量 上 記

2.ポ リフ ェ ノー ル 類 お よ び カ フ ェ イ ン に よ る 影 響

煎 茶 の 浸 出 液 に タ ソ ニ ソ は0.045%,カ フ ェ イ ソ は0.03%含 ま れ る14)こ と か ら リ パ ー ゼ の 反 応 混 合 液6m£ 中 に 添 加 物 が 各1,5,10

㎎ 入 る よ う に 調 製 し た.こ れ ら の 反 応 混 合 液 中 に 占 め る 濃 度 は0.017%,0.083%,0.17

一58一

(3)

茶 浸 出液 中 に含 まれ る ポ リフ ェ ノー ル類 の リパー ゼ 活 性 に及 ぼ す影 響

%と な る(タ ソニ ソ酸 が 重 合 度 の一 定 で な い 物 質 の混 合液 で あ っ た た め,図3の 横 軸 の 表 示 は モ ル あ る い は モ ル 濃 度 とせ ず 添 加 量 ㎎ の表 示 と した).本 実 験 で 茶 浸 出液 の主 要 成 分 で な い タ ソ ニ ソ酸 を用 い た の は,タ ソニ ソ 酸 が通 称 タ ソ ニ ソ と して 市 販 され て い るの で 参 考 と して 結 果 を 比 較 す るた め で あ る.

結 果 は 図 に示 す 通 り,タ ソ ニ ソ酸 は強 く リ パ ー ゼ活 性 を阻 害 した .そ の阻害率 は2.5㎎

添 加95%,5㎎ 添 加 で100%で あ っ た.タ ソ ニ ソ酸 に は タ ソパ ク質 の 凝 固 作 用 が あ る こ と か ら,リ パ ー ゼ が タ ソニ ソ酸 に よ っ て変 性 す る た め活 性 低 下 を 生 じた と思 われ る.

茶 浸 出液 に含 まれ るポ リフ ェ ノ ー ル類 の 基 本 的 構 造(フ ラ バ ソー3一オ ー ル)の2の 位 置 に カテ コール環 が結 合 した エ ピカテ キ ソは リパ ー ゼ活 性 を 阻 害 しな か っ た.し か し,エ ピカ テ キ ソの没 食 子 酸 エ ス テ ル で あ る エ ピカ テ キ ソ ガ レー トは5㎎ 添 加 で リパ ー ゼ 活 性 を65.5

%阻 害 した(詳 細 は省 く).

フ ラバ ソー3一オ ール の2の 位 置 に ピ ロガ ロー ル 環 が結 合 し,さ らに没 食 子 酸 が エ ス テ ル 結 合 し た エ ピ ガ ロ カ テ キ ソガ レ ー トも1㎎ 添 加 で40%,5㎎ 添 加 で64%,10㎎ 添 加 で75

%の 阻 害 率 を 示 した.そ こで や は りタ ンパ ク 質 凝 固 作 用 を 持 つ 没 食 子 酸 を 単 独 で 添 加 して み る と,1㎎ 添 加 で15%,5mg添 加}さ35%, 10㎎ 添 加 で40%の 比 較 的 弱 い 阻 害 率 を 示 し た.

カ フ ェイ ソ に は リパ ー ゼ の 阻 害 活 性 が認 め られ な か った.

これ らの結 果 に よ り,茶 浸 出 液 中 に含 まれ る ポ リ フ ェ ノ ー ル 類 の主 要 成 分 に リパ ー ゼ の 阻 害 活 性 が あ るか 否 か は,フ ラ バ ソー3一オ ー ル の2の 位 置 に カ テ コー ル環 が 結 合 す るか ピ ロ ガ ロー ル環 が 結 合 す るか と い うよ りは ,フ ラバ ソー3一オ ー ル の3の 位 置 の 水 酸 基 に没 食 子 酸 が エ ス テ ル 結 合 して い るか 否 か に よ る も の で は な い か と推 測 され る.し か し,没 食 子 酸 を 単 独 で添 加 した 場 合 に お け る リパ ー ゼ 活

性 の 阻 害 率 の低 さ と,全 く リパ ーゼ を 阻 害 し な い エ ピ カ チ キ ソ に こ の没 食 子 酸 が結 合 した 時 に 出 現 して くる強 い 阻 害効 果 と の 関 係 を 明 確 に す る に は,さ ら に詳 細 な検 討 が必 要 で あ る.ま た,茶 浸 出 液 を凍 結 ・解 凍 す る操 作 を 2度 繰 り返 す と リパ ー ゼ の 阻 害 活 性 が 消 失 す る の は 没 食 子 酸 部 分 に何 らか の 変 化 が 生 ず る た め と考 え られ る.

』要 約

1.茶 浸 出 液 に は リパ ー ゼ の 阻 害 活 性 が あ っ た.ま た,茶 浸 出 液 の 凍 結 ・解 凍 を 繰 り 返 す と リパ ー ゼ 阻 害 活 性 は 消 失 し た.

2.エ ピ ガ ロ カ テ キ ソ ガ レ ー ト,エ ピ カ テ キ ソ ガ レー トに は リパ ー ゼ の 阻 害 活 性 が あ っ た が,エ ピ カ テ キ ソ に は 認 め られ な か っ た.

3.タ ソ ニ ソ酸 に は 強 い リ パ ー ゼ 阻 害 活 性 が あ っ た.

4.没 食 子 酸 の 単 独 で の 添 加 で は 比 較 的 弱 い 阻 害 活 性 を 認 め た..

5.カ フ ェ イ ソ に は リパ ー ゼ 阻 害 活 性 は 認 め ら れ な か っ た.

1)

2) 3)

4) 5) 6) 7)

文 献

守 屋 毅:NHKブ ッ ク ス398「 お 茶 の き

た 道 」 日 本 放 送 出 版 協 会(1981) 村 松 敬 一 郎:茶 の 化 学,朝 倉 書 店(1992) M.Tsujimura:Pap.1.P.C.R.,10,

253(1929),一ZO,63(1930),15,155(1931), 24,149(1934),26,'186(1935) A.E.Bradfieldetal:J.Chem.Soc.,

32,(1947)

A.E.Bradfield:Chem,andInd., 28,242(1946)

A.E.Bradfieldetal:J.Chem.Soc.

2249(1948)

中 林 敏 朗 他:緑 茶 ・紅 茶 ・烏 龍 茶 の 化 学

一59一

(4)

『教 育 学 部 紀要 』文 教大 学 教 育学 部 第29号1995年 石 井 智 恵 美 ・中 林 み ど り

8)

9)

と 機 能,弘 学 出 版(1994) P.vanRomburghetal.:"AllAbout Tea"vol.1,TheTeaandCoffeeTrade JournalCompany,NewYork(1935) 酒 戸 弥 二 郎:農 化,23,262(1950)

10)池 ヶ谷 賢 二 郎 他:野 菜 茶試 験 報B(金 谷) 2,47(1988)

11)谷 口 宏 吉 他:明 大 農 研 報,69,15(1985) 12)池 ヶ 谷 賢 二 郎:食 の 科 学,117,29(1987) 13)石 井 智 恵 美 他:食 工 誌,35,430(1988) 14)志 賀 リ ツ 他:聖 心 ウ ル ス ラ 学 園 短 期 大 学

紀 要,21,20(1990)

一60一

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