• 検索結果がありません。

プロパルギルオキシ基を有する新規ベンゾオキサジンの合成とその硬化物の熱分解性の検証

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "プロパルギルオキシ基を有する新規ベンゾオキサジンの合成とその硬化物の熱分解性の検証"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.緒言

ネットワークポリマーの耐熱性の指標は,二つの分 類に大別できる。一つはガラス転移温度に代表される, 機械強度や熱膨張率などの物理特性の保持についての 物理的耐熱性,もう一つは長期的に何℃まで熱分解な どの化学劣化を生じることなく物性を保持できるかに ついての化学的耐熱性である1)。一般のパソコンなど に搭載される電子デバイスでは前者が重視されていた が,長期信頼性が重視される車載向けパワーデバイス などの用途には,物理的および化学的耐熱性の両者が 高いレベルで必要となる。 一方,ベンゾオキサジン類は,一つの酸素原子と一 つの窒素原子を含む 6 員環構造のオキサジン環と,そ れに縮環したベンゼン環からなる双環性化合物であ る。特に 1,3- ベンゾオキサジン(正式には,本来オキ サジン環が有する二つの二重結合のうち,一つが単結 合になっているため, 3,4- ジヒドロ -2H-1,3−ベンゾオ キサジン。以下,ベンゾオキサジンとする)は N,O− アセタール構造を有しており,加熱によって開環重合 が進行するモノマーである。硬化物はフェノール構造

【報 文】

プロパルギルオキシ基を有する新規ベンゾオキサジンの合成と

その硬化物の熱分解性の検証

有田 和郎*・下野 智弘・大津 理人・山口 純司・鈴木 悦子・小林 美佐江 概   要 ジヒドロキシ芳香族類を原料とし,1 分子中に 2 個のプロパルギルオキシ基を有する新規のモノベンゾオキサ ジンを合成した。これを用いた硬化物は,動的粘弾性試験において 350 ℃を超えるガラス転移点(Tg)を示す とともに熱重量測定試験においても優れた耐熱分解性を示し,次世代パワーデバイスが要求する物理的耐熱性と 化学的耐熱性を高次に兼備することが確認された。また,この硬化物は広い温度範囲で低熱膨張係数と高弾性率 を維持した。プロパルギルオキシ基を有する新規ベンゾオキサジンの優れた特性の理由について,モデル物質を 用いた反応挙動の調査や,熱分解ガスの組成を分析することで考察した。 * DIC 株式会社 R&D 本部 〒 285−0078 千葉県佐倉市坂戸 631 と第 3 級アミノ基(−CH2−N(R)−CH2−)を有して おり,これらの強固な分子内および分子間水素結合, 特に 6 員環の分子内水素結合から,高いガラス転移温 度や機械強度,低い吸湿率や熱膨張率などを発現する2) ただし課題として熱分解性が上げられる。ベンゾオキ サジンの硬化物の熱分解はアニリン成分の脱離がその主 要因となっているので3),アニリン成分に架橋性官能基を 導入すれば , 架橋によって分解生成物の揮発が抑えられ , 結果として熱安定性と力学特性の向上が期待できる4) 竹市らはアニリン成分にプロパルギル基を導入した ベンゾオキサジンを合成し,この硬化物の Tgと熱分 解 温 度 が 大 幅 に 向 上 す る こ と を 報 告 し て い る5) (Scheme 1 に提唱されている硬化機構を示す)。 著者らは,これらの報告をヒントに,1 分子中に 2 個のプロパルギル基を有する新規のモノベンゾオキサ ジンを合成し(Scheme 2),Tgおよび熱分解温度を 大幅に向上させたので,以下に詳細を報告する。

Scheme 1  Curing mechanism of benzoxazine having

(2)

2.実験

2.1 原料 合成には,工業品のフェノール,アニリン,炭酸カ リウム,エタノール,トルエン,35%塩酸,48%水酸 化ナトリウム水溶液,硫酸ナトリウムを用いた。また, パラホルムアルデヒドは和光純薬工業製を,p- ヒドロ キシアセトアニリドおよびプロパルギルブロミド (80%トルエン溶液)は東京化成工業製をそのまま用 いた。 反応挙動調査用には,モデル物質として和光純薬工 業製のフェノール(特級)を,東京化成工業製のプロ パルギルオキシフェノール,2- ジメチルアミノメチル フェノールをそのまま用いた。 硬化物作製には,促進剤としてフェノールノボラッ ク樹脂(DIC 株式会社製,PHENOLITE TD−2131, 水酸基当量 104 g/eq,軟化点 80 ℃)を使用した。 2.2 測定 2.2.1 構造解析と物理性状 合成した各ベンゾオキサジンの分子構造を,1H- NMR ス ペ ク ト ル(JEOL RESONANCE 製,JNM− ECA600,溶媒:CDCl3),13C-NMR スペクトル(JEOL RESONANCE 製,JNM−ECA600,溶媒:CDCl3)お よ び FD−MS ス ペ ク ト ル( 日 本 電 子 株 式 会 社 製, JMS−T100GC AccuTOF)を用いて同定し,溶融粘 度を ICI 粘度計(東亜工業株式会社製,CONEPLATE VISCOMETER CV−1S,測定温度:150 ℃)でそれ ぞれ測定した。 2.2.2 反応挙動と硬化物物性 組成物の反応挙動は示差走査熱量分析装置(メト ラー・トレド株式会社製,DSC1,昇温速度:5 ℃/分) により調査した。 ガラス転移温度(Tg)は,動的粘弾性測定装置(株 式会社日立ハイテクサイエンス製,DMS 7100,周波 数:1 Hz,昇温速度:3 ℃/分)を用いて測定した。 耐熱分解性の指標として 5%重量減少温度を IPC− TM−650 に準拠した方法で,示差熱−熱重量同時測 定装置(エスアイアイナノテクノロジー株式会社製, TG/DTA6200,昇温速度:5 ℃/分)を用いて測定した。 熱膨張係数(α1)は熱機械分析装置(株式会社日立 ハイテクサイエンス製,TMA/SS 7100,昇温速度:3 ℃/分)を用いて測定した。なお,硬化物中のオキサ ジン環およびプロパルギル基の残存の有無は,FT-IR スペクトル(日本分光株式会社製,FT/IR−4000, KBr 錠剤法)を用いて測定した。 2.2.3 硬化物の熱分解ガスの分析 ガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)は,島 津製作所社製の GCMS−QP2010plus を用いた。昇温 プログラミング機能を備えた自由落下方式のミクロ炉 を用いた熱分解装置はフロンティア ・ ラボ社製の PY −2020iD を用いた。秤量用のミクロ電子天秤は島津 製作所社製の AEM−5200 を用いた。 2.3 合成 2.3.1 p- プロパルギルオキシアニリンの合成 かくはん装置,加熱装置を装着した 200 cc 四つ口 フラスコに温度計,冷却装置,滴下ロートを取り付け, 窒素気流下,エタノール 20 ml および p- ヒドロキシ アセトアニリド 15.1 g(0.100 mol)を投入し,40 ℃ まで加熱し溶解した。溶解後,炭酸カリウム 16.6 g (0.120 mol)を添加し還流温度まで昇温した。ついで 還流を維持したままプロパルギルブロミド(80%トル エン溶液)16.2 g(0.110 mol)を 1 時間で滴下した。 滴下終了後に 20 時間かくはんを行った。反応終了後, 生成した塩などを吸引沪過で除去した。ついでかくは ん装置,加熱装置を装着した 300 cc 四つ口フラスコ に,この沪液を投入し,温度計,冷却装置,滴下ロー トを取り付け,氷浴および窒素気流下,35%塩酸 41.7 g(0.400 mol)を 1 時間で滴下した。滴下終了後に 60 ℃に昇温し,60 ℃で 20 時間かくはんし,アセトアミ ド基を加水分解した。ついで系内を氷浴および窒素気 流下,10%水酸化ナトリウム水溶液(48%水酸化ナト リウム水溶液をイオン交換水で希釈)を滴下すること で系内の pH を 11 に調整した。pH = 11 を確認後, フラスコ内液を分液ロートに移し,トルエン 30 ml を 用いて生成物を抽出し,イオン交換水で洗浄した。洗 浄後,トルエンを減圧留去することにより目的の p-プロパルギルオキシアニリンを得た。収率は 71.7%で あった。 Scheme 2 Synthesis of dipropargyloxy-monobenzoxazine.

(3)

2.3.2 p- プロパルギルオキシフェノールの合成 かくはん装置,加熱装置を装着した 200 cc 四つ口 フラスコに温度計,冷却装置,滴下ロートを取り付け, 窒素気流下,エタノール 20 ml およびハイドロキノン 11.0 g(0.100 mol)を投入し,40 ℃まで加熱し溶解 した。溶解後,炭酸カリウム 6.9 g(0.050 mol)を添 加し還流温度まで昇温した。ついで還流を維持したま まプロパルギルブロミド(80%トルエン溶液)7.4 g (0.050 mol)を 1 時間で滴下した。滴下終了後に 20 時間かくはんを行った。反応終了後,生成した塩など を吸引沪過で除去した。次いで反応終了後,カラムク ロマトグラフィー法にて p- プロパルギルオキシフェ ノールを分取した。収率はプロパルギルブロミドを基 準に算出した理論値に対して 36.1%であった。 2.3.3  ジプロパルギルオキシモノベンゾオキサジ ン(RUN-1,HQ)の合成 トルエンを溶媒に用い,2.3.1 項で得られた p- プロ パルギルオキシアニリンおよび 2.3.2 項で得られた p-プロパルギルオキシフェノールを原料として,パラホ ルムアルデヒドを用いてベンゾオキサジン化を行っ た。得られたジプロパルギルオキシモノベンゾオキサ ジン(Table 1 中の RUN-1,HQ)は褐色のアモルファ ス状で,半固形,150 ℃溶融粘度 0.08 dPa・s の物理性 状を有した。RUN-1,HQ の1H-NMR スペクトルを Fig. 1 に,13C-NMR スペクトルを Fig. 2 に,FD-MS スペクトルを Fig. 3 に,GPC チャートを Table 2 中 に示す。 2.3.4  比 較 検 討 用 の モ ノ ベ ン ゾ オ キ サ ジ ン (Control-1)の合成 トルエンを溶媒に用い,アニリンおよびフェノール を原料としてパラホルムアルデヒドを用いてベンゾオ キサジン化を行った。得られたモノベンゾオキサジン (Table 1 中の Control-1)は褐色半固形のアモルファ ス状で,150 ℃溶融粘度 0.05 dPa・s の物理性状を有し た。GPC チャートを Table 2 中に示す。 Table 1 Structures of benzoxazines used in this study Fig. 1 1H-NMR spectrum of RUN−1, HQ.

(4)

2.3.5  比較検討用のモノプロパルギルオキシモノ ベンゾオキサジン(Control-2)の合成 トルエンを溶媒に用い,2.3.1 項で得られた p- プロ パルギルオキシアニリンおよびフェノールを原料とし てパラホルムアルデヒドを用いてベンゾオキサジン化 を行った。得られたモノプロパルギルオキシモノベン ゾオキサジン(Table 1 中の Control-2)は褐色半固 形のアモルファス状で,150 ℃溶融粘度 0.05 dPa・s の 物理性状を有した。GPC チャートを Table 2 中に示す。 2.4 硬化物試験片の作製 2.3.3 項で得られたジプロパルギルオキシモノベン ゾオキサジン(RUN-1,HQ)および,2.3.4 項で得 られたプロパルギル基を有しないモノベンゾオキサジ ン(Control-1),2.3.5 項で得られたモノプロパルギ ルオキシモノベンゾオキサジン(Control-2)を用い て硬化物試験片を作製し,評価に使用した。促進剤と してはフェノールノボラック樹脂を樹脂全重量に対し て 1 重量%用いた。 まずベンゾオキサジンを 150 ℃で溶融した後に, 促進剤を添加して均一混合した。これを冷却後に粉砕 し,厚みが 2.5 mm となるような型枠に充填して,プ レス成形機を用いて 170 ℃で 2 時間,200 ℃で 2 時間, 次いで 250 ℃で 2 時間硬化(合計 6 時間)の条件で 熱硬化させた。なお,硬化物は全て FT-IR スペクト ルより,オキサジン環由来の 950 cm−1および 1342 cm−1の消失を,プロパルギル基由来の 2115 cm−1 よび 3290 cm−1の消失を確認した。 Fig. 2 13C-NMR spectrum of RUN−1, HQ. Table 2 GPC charts of benzoxazines used in this study GPC:TOSOH HLC-8220, columns:TSK-GEL G2000HXL+G2000HXL+G3 000HXL+G4000HXL, Solvent:THF, Flow rate:1ml/min, Detector: RI Fig. 3 Mass spectrum of RUN−1, HQ.

(5)

2.5 硬化物の熱分解ガスの分析 各成分が明確に識別できる温度範囲を決定するため に,Direct EGA にて,低温から高温領域までの発生 ガスの全体の分布を把握した。検出器に MS を使用し ていることから,特定のガス成分に注目して挙動を把 握することも可能である。 次いで,Direct EGA にて決定された,各成分が重 複しない温度範囲の発生ガスを Heart Cut EGA にて, 選択的に GC 分離カラムに導入して,各成分の構造の 詳細を決定した。 なお,今回は不活性ガス雰囲気として He ガス中で の測定を実施した。これは例えばパワー半導体の動作 時の発熱による封止材内部の熱分解が,酸素不足で加 熱が非常に早い状態であることから,これと相関をと るためである。

3.結果と考察

3.1  各種ジプロパルギルオキシモノベンゾオキサ ジンの合成 2.3.3 項で得られたハイドロキノンを出発原料にし たジプロパルギルオキシモノベンゾオキサジン(RUN -1,HQ)および,2.3.4 項で得られたプロパルギル 基を有しないモノベンゾオキサジン(Control-1), 2.3.5 項で得られたモノプロパルギルオキシモノベン ゾオキサジン(Control-2)の GPC チャート(Table 2)の比較から,目的物のピーク面積は何れも 78%前 後であり,オキサジン化率はプロパルギル基の有無や その数に影響を受けないと考えられる。また,このピー ク面積を簡易的に純度と考えると,これらの硬化物の 物性は,直接比較できる試料であると判断される。 3.2 反応挙動の調査 Fig. 4 に,①プロパルギル基を有しないモノベンゾ オキサジン(Control-1)と,②モノプロパルギルオ キシモノベンゾオキサジン(Control-2),および③ Control-2 の比較としてプロパルギル基を有しない モノベンゾオキサジン(Control-1)にプロパルギル オキシフェノールを同モル混合した組成物と,④ブラ ンクのプロパルギルオキシフェノール単独の DSC 測 定結果を示す。 プロパルギル基を有しないモノベンゾオキサジン (①)(Control-1)の発熱ピークトップは 219 ℃で, ブランクのプロパルギルオキシフェノール(④)の発 熱ピークは 260 ℃以降と,両者は明確に区別できる 温度差を有しており,それぞれを混合した組成物(③) には,二つの独立した発熱ピークが認められる。一方, 同一分子にプロパルギルオキシ基を有するモノプロパ ルギルオキシモノベンゾオキサジン(②)(Control- 2)からは,220 ℃付近にピークトップを有し,高温 側にショルダーを有する一つのピークが認められ, 260 ℃以降の発熱は認められない。 一方,開環後のオキサジン環のモデル物質として, 2- ジメチルアミノメチルフェノールを選定し,プロパ ルギルオキシフェノールに,これを同モル混合した組 成物(⑤)の DSC 発熱挙動を調査した結果を Fig. 5 に示す。Fig. 5 より,プロパルギルオキシフェノール (④)の 260 ℃以降の発熱が,2- ジメチルアミノメチ ルフェノールを添加することにより,ピークトップ 233 ℃まで低温側にシフトしたことから,(機構は不 明ながら)プロパルギルオキシ基は,オキサジン環そ のものではなく,オキサジン環の開環後の構造から何 らかの作用を受け,重合が促進されると考えられる。

Fig. 4  DSC charts of Control−1 and Control−2 and

reference as blanks.

(6)

ところで,プロパルギル基は塩基条件下でアレンに 異性化することが知られており6), 7),このアレン誘導 体はラジカル重合,双性イオンを経る重合,カチオン 重合などの重合性を有することが知られている8)-11) これらから著者らは,やや大胆ではあるが,オキサジ ン環が開環したことにより生成する双性イオン中間体 のフェノラートアニオンの塩基性で,プロパルギル基 がアレンに異性化し,このアレンが,同じく双性イオ ン中間体のイミニウムカチオンで活性化され,カチオ ン重合することで(次項に示す硬化物の耐熱性向上の 要因である)架橋密度を高めているとの仮説を立てて おり,この立証のために,3 級アミン存在下,170 ~ 250 ℃条件でのアレン構造の有無の確認や,更に詳し いモデル実験(例えば,比較用の N,N- ジメチルベン ジルアミンやフェノールなどと,プロパルギルオキシ フェノールを混合した組成の DSC 発熱挙動調査など) を計画中である。単にモノベンゾオキサジン(Control -1)を混合する場合(③)と異なり,プロパルギル オキシ基が同一分子中に存在することで,双性イオン 中間体のフェノラートアニオンやイミニウムカチオン とプロパルギルとの位置関係が立体的に近いのかもし れない。 3.3 硬化物の物理的耐熱性 3.3.1 ガラス転移温度 物理的耐熱性の指標として,プロパルギル基を有し ないモノベンゾオキサジン(Control-1)およびモノ プロパルギルモノベンゾオキサジン(Control-2)と, 合成したジプロパルギルオキシモノベンゾオキサジン (RUN-1,HQ)のガラス転移温度を比較評価した結

果を Table 3 に,DMA チャートを Fig. 6 示す。

1 分子中のプロパルギル基数をゼロ(Control-1) から 1(Control-2)に増加させることで,107 ℃の ガラス転移温度の上昇を,更にプロパルギル基数を 1 (Control-2)から 2(RUN-1,HQ)に増加させる ことで,100 ℃以上の向上となる 360 ℃以上のガラス 転移温度を示した。 また,熱変形の面から重要になる弾性率低下の開始 温度(Table 3 中の“On set temperature”)を比較 すると,1 分子中のプロパルギル基数をゼロ(Control -1)から 1(Control-2)に増加させることで,105 ℃の上昇を,更にプロパルギル基数を 1(Control-2) から 2(RUN-1,HQ)に増加させることで,97 ℃ の上昇を示した。 3.3.2 貯蔵弾性率 機械強度の面から重要になる貯蔵弾性率を比較する と,1 分子中のプロパルギル基数をゼロ(Control-1) から 1(Control-2)に増加させることで,70%向上 の 2.0G Pa から 3.4 GPa に上昇した。一方,プロパル ギル基数を 1(Control-2)から 2(RUN-1,HQ) に増加させても弾性率の上昇は認められなかった。す なわち,アニリン骨格へのプロパルギル基導入による 架橋密度の向上は,弾性率を上昇させるが,フェノー ル骨格へのプロパルギル基導入による架橋密度の向上 は,弾性率に影響を与えなかったことになる。ところ でプロパルギル基数がゼロの Control-1 は,理論的 にはモノベンゾオキサジンの開環重合により線状高分 子になるため,ガラス転移温度を超えた温度では可塑 的な挙動を示すと予想される。しかしながら Fig. 6 に示す DMA 測定結果では,ガラス転移温度を超えた Fig. 6  DMA charts of Control−1, −2 and RUN−1. HQ after cured. Table 3 Differences in physical thermostabilities *DMA:Heating rate 3℃/min, frequency=1Hz, under air **TMA: Heating rate 3℃/min, Under N2 250mL/min, Range 60℃ to 80℃, Load=88.8mN

(7)

ゴム領域が平坦であることから,本研究の硬化条件で は三次元構造を形成していると考えられ,その基点は フェノール骨格の o- 位に加え,置換基のない p- 位も 含めた複数の部位で第 3 級アミノ基が連結されている と推定している。ベンゾオキサジンに対してフェノー ルは古くから求核剤として反応することが知られてお り,この場合,フェノール性水酸基の o- 位が圧倒的 に高い反応性を示し,室温条件下では p- 位は殆ど反 応性を示さない12)。しかしながらフェノール性水酸 基の両 o- 位に置換基を有する化合物の加熱条件下で の p- 位反応の機構も提案されており13), 14),Control-1 のフェノール骨格も三次元構造を形成しているという 仮説を否定しない。この仮説を Control-2 にも適用 すると,Control-1 と同様にフェノール骨格に官能 基を有しない Control-2 も,フェノール骨格の複数 の部位が第 3 級アミノ基に連結されることで三次元化 構造を形成していると考えられる。以上よりフェノー ル骨格もアニリン骨格も共に三次元化していることか ら,Control-2 と RUN-1,HQ の架橋密度差は,ガ ラス領域での貯蔵弾性率を変化させる程大きなもので はないのかもしれない。著者らの経験からも,架橋を 形成する主な構成が同じ場合,ガラス転移温度に変化 を与えるほどに架橋密度を変化させても,ガラス領域 の貯蔵弾性率にはそれほど大きな変化が現れない場合 が多い。例えば,1 分子当たりの平均エポキシ基数の 異なるクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用い て,硬化物の架橋密度を 2.6 mmol/L から 5.4 mmol/ L まで変化させ,ガラス転移温度を 129 ℃から 178 ℃ まで向上させた著者らの実験15)のそれぞれの貯蔵弾 性率は 2.8 ± 0.1 GPa の範囲に収まり,実質的な変化 は観測されなかった。 3.3.3 熱膨張係数 ベンゾオキサジンの硬化物はエポキシ樹脂硬化物な どと比較して,低熱膨張係数を示すことが報告されて おり,フェノール性水酸基と第 3 級アミノ基の水素結 合によって物理的架橋が形成するためと考察されてい る16)。実際,著者らのデータでも,高耐熱性エポキ シ樹脂の代表のオルソクレゾールノボラック型エポキ シ樹脂の硬化物の α1 = 59 ppm17)と比較して,Table 3 に示す通り,Control-1 の α1 は 43 ppm と非常に 低い。 高橋らの研究13)では,オキサジン環の開環重合に より生じたフェノール性水酸基をエポキシ基と反応さ せることにより,低い熱膨張率の硬化物を得る検討が なされているが,フェノール性水酸基とエポキシ基を 当量比 1.0:1.0 で配合した場合,その硬化物の熱膨張 係数は増加したと報告されている。この理由として, ①水素結合に寄与しているフェノール性水酸基がエポ キシ樹脂との反応に消費されたため鎖中の分子間力が 弱まり,本体の低熱膨張率が失われた,②硬化物の密 度がベンゾオキサジン単独のそれと比較して低いこと から,分子間のパッキングがエポキシ樹脂との架橋に より阻害された,などと考察されている。これらを本 研究に当てはめると(①に関しては,オキサジン環の 開環重合とプロパルギル基の重合は独立しているた め,フェノール性水酸基の消費を伴わないが),②の 考え方と同様にプロパルギル基の重合による架橋密度 の向上は,フェノール性水酸基と第 3 級アミノ基の水 素結合による分子間パッキングを阻害し,自由体積を 膨張させることが十分予想された。しかしながら Table 3 に示す通り,意外にもプロパルギル基を有す るモノベンゾオキサジン(Control-2 および RUN-1, HQ)は,更に 6 ppm 低い 37 ppm の熱膨張率を示した。 メカニズムは不明ながら,Fig. 4に示すDSC測定より, プロパルギル基の重合はオキサジン環の開環の高温側 にショルダーとして現れていることから,前者と後者 は,ほぼ連続的に進行すると考えられる。即ち,オキ サジン環の開環により,フェノール性水酸基と第 3 級 アミノ基の水素結合の位置が固定されながら,プロパ ルギル基の重合が進行するため,物理的架橋(水素結 合)と化学的架橋がバランス良く組み込まれていると 推定される。 また,プロパルギル基の導入により,硬化物のガラ ス転移温度も高くなることから,実用範囲の 25−250 Fig. 7 TMA charts of Control−1 and RUN−1, HQ after cured.

(8)

℃ で 熱 膨 張 係 数 を 算 出 す る と,Control-1 が 147 ppm に対し,RUN-1,HQ は 42 ppm と,優位性が 拡大する(Fig. 7)。 3.4 硬化物の化学的耐熱性 熱分解性の指標として,プロパルギル基を有しない モノベンゾオキサジン(Control-1)およびモノプロ パルギルモノベンゾオキサジン(Control-2)と,合 成したジプロパルギルオキシモノベンゾオキサジン (RUN-1,HQ)の 5%および 10%重量減少温度を比 較評価した結果を Table 4 に,TGA チャートを Fig. 8 に示す。5%重量減少温度を比較すると,1 分子中 の プ ロ パ ル ギ ル 基 数 を ゼ ロ(Control-1) か ら 1 (Control-2)に増加させることで,39 ℃上昇した。 一方,プロパルギル基数を 1(Control-2)から 2(RUN -1,HQ)に増加させても,5%重量減少温度の向上 は 2 ℃に留まった。一方,10%重量減少温度を比較 すると,順列は 5%重量減少温度と変わらないものの, プロパルギル基数を 1(Control-2)から 2(RUN-1, HQ)に増加させた時の温度差が 10 ℃となり(5%重 量減少温度の 2 ℃向上と比較して),そのプロパルギ ル基数の増加の効果が明確になった。 3.5 硬化物の熱分解ガスの分析 Direct EGA による分解ガスの全イオン強度を加算し た値の時間変化を示す TIC(Total Ion Chromatogram) の結果を Fig. 9 に示す。プロパルギル基を有しない モノベンゾオキサジン(Control-1)が 150 ℃付近か ら分解ガス発生が認められるのに対して,モノプロパ ルギルモノベンゾオキサジン(Control-2)およびジ プロパルギルオキシモノベンゾオキサジン(RUN-1, HQ)は 300 ℃付近まで目立った分解ガスの発生は認 められなかった。また 360 ℃までの分解ガス発生量 は 5%重量減少温度の順列と一致した。360 ℃より高 温になると,モノプロパルギルモノベンゾオキサジン (Control-2)とジプロパルギルオキシモノベンゾオ キサジン(RUN-1,HQ)の分解ガス発生量の差が 顕著になり,これが 10%重量減少温度の 10 ℃差を生 じさせている原因と考えられる。 次いで,Heart Cut EGA 法にて,任意の温度領域 で発生ガスを,液体窒素を使用するコールドトラップ に捕集し,次に捕集成分を GC−MS に導入して分析 を行った。Direct EGA の結果から 150 ℃付近からガ ス成分が検出され始めることが分かったため,150 ℃ 以降の検出成分に注目することとし,サンプリング温 度領域を 150 ~ 300 ℃(A:低温域),300 ~ 360 ℃(B: 中温域),360 ~ 420 ℃(C:高温域)の三つの温度領 域とした。Fig. 10 に 300 ~ 360 ℃(B:中温域)で 発生するガスの GC−MS クロマトグラムを,Fig. 11 Table 4 Differences in chemical thermostabilities ***TGA:Heating rate 5℃/ min, under N2 200mL/min Fig. 8  TGA charts of Control−1, −2 and RUN−1, HQ after

(9)

Fig. 10 GC−MS charts by Heart Cut EGA method of Control−1, −2 and RUN−1, HQ after cured (300℃ to 360℃ range).

(10)

に 360 ~ 420 ℃(C:高温域)で発生するガスの GC −MS クロマトグラムを示す(図中の構造式は MS ス ペクトルからの推定したもの)。プロパルギル基を有 しないモノベンゾオキサジン(Control-1)は 150 ℃ ~ 420 ℃の全温度領域で,フェノール成分とアニリ ン成分および両者がメチレン結合した構造単位と考え られる成分が発生ガス中に認められた。これに対して, モノプロパルギルモノベンゾオキサジン(Control-2) およびジプロパルギルオキシモノベンゾオキサジン (RUN-1,HQ)は共に,150 ℃~ 420 ℃の全温度領 域でアニリン成分の発生はわずかであり,その差も顕 著ではなかった。しかしながら,モノプロパルギルモ ノベンゾオキサジン(Control-2)およびジプロパル ギルオキシモノベンゾオキサジン(RUN-1,HQ) の分解ガス中のフェノール成分量を比較すると,Fig. 11 に示す 360 ℃~ 420 ℃(C:高温域)の領域で, モノプロパルギルモノベンゾオキサジン(Control-2) からは(スケールアウトのため定量比較できないが) ジプロパルギルオキシモノベンゾオキサジン(RUN -1,HQ)と比較して大量のフェノール成分が分解 ガス中に認められた。 以上の検証から,ジプロパルギルオキシモノベンゾ オキサジン(RUN-1,HQ)に認められた硬化物の 熱分解性の向上は,アニリン成分およびフェノール成 分の両者に架橋性官能基を導入したことで , 期待通り 各成分が重合することにより分解生成物の揮発が抑え られた結果と考えられる。

4.結論

本研究では,1 分子中に 2 個のプロパルギル基を有 する新規のモノベンゾオキサジンを合成した。これを 用いて作製した硬化物は,350 ℃を超える Tgと,優 れた耐熱分解性を両立し,さらに室温から 250 ℃の 広い温度範囲で低い熱膨張率と高い弾性率を有してい ることが確認され,本研究の目的である物理的耐熱性 と化学的耐熱性を高次に兼備するものであった。これ らの優れた物性は,アニリン成分への架橋性官能基の 導入と,フェノール成分への架橋性官能基による,強 固な架橋構造形成によって,架橋密度の増強と,熱分 解生成物の揮発が抑制されたことに起因すると考えら れる。一方,低い熱膨張に関してはオキサジン環の開 環重合とプロパルギル基の重合が複雑に進行する中で も,パッキング性を阻害しない架橋構造を形成するこ とに起因するものと推定される。本研究で得られたジ プロパルギルオキシモノベンゾオキサジンは,パワー デバイスに代表される次世代デバイスを具現化できる エレクトロニクス材料として今後期待される。 参考文献 1) 竹市 力,“高機能デバイス用耐熱性高分子材料の最 新技術,第 1 章 第 1 節 耐熱性プラスチックの分 子設計”,シーエムシー出版 (2011) pp.7−8.

2) H. Ishida and T. Agag, Eds. “Handbook of Benzoxazine Resins,” Elsevier, Amsterdam(2011). 3) A. Sudo, S. L. Du, S. Hirayama, and T. Endo, J.

Polym. Sci. Part A, 48, 2777−2782 (2010).

4) H. Y. Low and H. Ishida, Polymer, 40, 4365−4376 (1999).

5) T. Agag and T. Takeichi, Macromolecules, 34, 7257 −7263 (2001).

6) L. Brandsma and H. D. Verkruijsse, “Studies in Organic Chemistry 8, “Synthesis of Acetylenes, Allenes and Cumulenes,” Elsevier Scientific Pub. Co., Amsterdam (1981).

7) G. Pourcelot and P. Cadiot, Bull Soc. Chim. Fr., 9, 3016−3024 (1966). 8) T. Yokozawa, N. Ito, and T. Endo, Chem. Lett., 1988, 1955. 9) N. Ito, T. Yokozawa, and T. Endo, Polym. Prep. Jpn., 37, 346 (1988). 10) T. Yokozawa, M. Tanaka, and T. Endo, Chem. Lett., 1987, 1831. 11) T. Takahashi, T. Yokozawa, and T. Endo, Polym. Prep. Jpn., 38, 193 (1989). 12) W. J. Burke, J. L. Bishop, E. L. M. Glennie, and W. N. Nauer, J. Org. Chem., 30, 3423−3427 (1965). 13) G. Riess, J. M. Schwob, G. Guth, M. Roche, and B.

Lande, “Advances in Polymer Synthesis,” B. M. Culbertson and J. E. McGrath, Ed., Plenum Press, New York (1985)pp.27−49.

14) M. Baqar, T. Agag, R. Huang, J. Maia, S. Qutubuddin, and H. Ishida, Macromolecules, 45, 8119−8125 (2012). 15) 有田和郎,ネットワークポリマー,36,255−264 (2015). 16) 賀川美香,大山俊幸,高橋昭雄,エレクトロニクス 実装学会誌,14,204−211 (2011). 17) 有田和郎,大山俊幸,ネットワークポリマー,35, 246−257 (2014).

(11)

Synthesis of Novel Benzoxazines Having Propargyl Groups and Verification

of Thermal Decomposition of Cured Products

Kazuo arita,* Tomohiro ShiMOnO,* Masato OOtSu,* Junji yaMaguchi,*

Etsuko SuzuKi,* and Misae KObayaShi*

* Corporate R&D Dept., DIC Corporation (631, Sakado, Sakura, Chiba 285−8668, Japan)

Synopsis

A novel monobenzoxazine having two propargyl groups in one molecule was synthesized from a dihydroxyaromatic compound as a raw material. In a dynamic viscoelasticity test, the glass transition point (Tg) of this cured resin exceeding 350 ℃. A thermogravimetry test yielded excellent thermal decomposition resistance. The cured resin therefor exhibits excellent physical and chemical properties required by a next generation power device. High levels of chemical and physical heat resistance were confirmed. In addition, this cured product maintained low a coefficient of thermal expansion and high modulus of elasticity over a wide temperature range. The reasons for the excellent properties of the novel benzoxazine having a propargyl group were examined by investigating the reaction behavior using the model substance and analyzing the composition of the pyrolysis gas.

(Received September 26, 2017 ; Accepted October 20, 2017)

[Original]

Key-words : Benzoxazine, Propargyl, Glass transition temperature, Thermogravimetric analysis, Thermal

properties

Table 1  Structures of benzoxazines used in this study
Fig. 2   13 C-NMR spectrum of RUN−1, HQ.
Fig. 4   DSC  charts  of  Control−1  and  Control−2  and  reference as blanks.
Table 3  Differences in physical thermostabilities
+4

参照

関連したドキュメント

名の下に、アプリオリとアポステリオリの対を分析性と綜合性の対に解消しようとする論理実証主義の  

Degradation mechanism of lignin model compound by ozonolysis l: veratrole, 2: guaiacol, 3: catechol, 4: quinone, 5: muconic acid dimethylester, 6: muconic acid monomethylester,

associatedwitllsideeffectssuchasgingivalhyperplasia,somnolencc,drymonth,andgcncral

しかしながら生細胞内ではDNAがたえず慢然と合成

 この論文の構成は次のようになっている。第2章では銅酸化物超伝導体に対する今までの研

Elemental color content maps of blackpree{pitates at Akam{ne, Arrows 1 and 2 in "N" hindieate. qualitative analytical points

Elemental color content maps of blackpree{pitates at Akam{ne, Arrows 1 and 2 in "N" hindieate. qualitative analytical points

19370 : Brixham Environmental Laboratory (1995): Sodium Chlorate: Toxicity to the Green Alga Scenedesmus subspicatus. Study No.T129/B, Brixham Environmental Laboratory, Devon,