組織行動と技能形成の関係に関する試論
著者
内田 智大
雑誌名
研究論集
巻
92
ページ
95-113
発行年
2010-09
URL
http://doi.org/10.18956/00006147
組織行動 と技能形成の関係 に関す る試論
内 田 智 大
要 旨 本 総 説 で は 、 労 働 者(ブ ル ー カ ラ ー)の 技 能形 成 の 内実 を説 明 した上 で 、組 織 行 動 の 分析 視 点 で あ る個 人 、 集 団、 組 織 が技 能 形 成 と どの よ うな 関 係 に あ るか を考 察 した。 本 研 究 で 明 らか に さ れ た第1の 点 は 、 個人 的 視 点 で あ る職 務 満 足 の 高 さや、 高 次 の 欲 求 に よ って 引 き出 され るモ チ ベ ー シ ョンは 技 能 形 成 の 一 つ の要 件 で あ る 労 働者 の 定 着 率 を 必 ず しも上 げ る こ とに つ な が らな い こ と で あ る。 ま た、 給 与 水準 とい った 低 次 の 欲 求 に 起 因 す るモ チ ベ ー シ ョンで あ って も、 生存 欲 求 が 充 足 され て いな い開 発 途 上 国 の 労働 者 に お い て は 、 定 着 率 を 高 め る誘 因 に な って い る。 第2に 、 集 団 的 視 点 で あ る コ ミ ュニ ケ ー シ ョン 、特 に 横 方 向 の コ ミュニ ケ ー シ ョン は組 織 成 員 の技 能 形 成 に と って は 重 要 で あ る。 第3に 、規 模 の 大 きな 企 業 は 労 働 者 に長 い キ ャ リアパ ス を提 供 で きる 可 能 性 を 高 め る こ とか ら、 規 模 の大 きな企 業 に 多 く見 られ る官 僚 構 造 は比 較 的規 模 の 小 さ な企 業 の 組 織形 態 で あ る単 純構 造 よ りも、 技 能 形 成 に お い て は 有 利 で あ る と推 察 され る。 キ ー ワ ー ド:組 織 行 動 、 技 能形 成 、 人 的 資 源 管 理 1.は じ め に 2008年 秋 に 起 きた ア メ リカ 発 の 金 融 危機 は 、 各国 の 政 府 の迅 速 、 且 つ 積極 的 な 財 政 出 動 政 策 や 金 融 緩 和 政 策 もあ って 、 世 界 経 済 は 差 し当 た り、 経 済 混 乱 を 回 避 で きた 。 しか し、 中 国 以 外 に 世 界 経 済 を 引 っ張 る機 関 車 的 役 割 を 果 た せ る国 は 見 当 た らな い 上 、 成 長 の 源 泉 を 米 国 の 消 費 に 依 存 す る世 界 経 済 の 不 均衡 は 解 消 され た とは 言 えず 、 世 界 経 済 は リセ ッシ ョンの 二 番 底 を 探 る展 開 を見 せ て い る。 特 に 、 国 内 総 生 産 世 界 第1位 、2位 を 占め る ア メ リカ、 日本 の 失 業 率 は こ こ数 十 年 の 中 で 高 い 水 準 に あ り、 消 費 や 投 資 に よ って 牽 引 され た 高 い 成 長 率 は 期 待 で きな い ま ま で あ る。 この よ うに 、 世 界 経 済 が 持 続 的 な 成 長 に 向 け て 試 練 に 直 面 す る中 、 企 業 が 市 場 に お け る競 争 優 位 の 地 位 を築 くた め に、 コ ス トや 品 質 は も ち ろ ん の こ と、 製 品 ・サ ー ビス の 差 別 化 や 付 加価 値 を 高 め て い くこ とが 求 め られ て い る。 そ れ に 応 じて 、 企 業 の採 る競 争 戦 略 も コス ト削 減 戦 略 や 高 品 質 戦 略 に 加 えて 、 イ ノベ ー シ ョン戦 略 の 重 要 性 が 高 ま って い る。 企 業 が 製 品 ・サ ー ビス の 差 別 化 や 高 付 加 価値 化 を 実 現 す る には 、 市 場 競 争 を 基 軸 として 製 品 ・サ ー ビス の コ ンセ プ トを 意 義 付 け る ブ ラ ン ド戦 略 や 研 究 開 発 戦 略 、 自社 の 製 品 を 他 社 の もの と差 別 化 す るの に 不 可 欠 な プ ロモ ー シ ョン戦 略 や チ ャネ ル ・物 流 戦 略 、 創 造 性 に 富 ん だ 人 材 を 育 成 す る事 を 目的 と した 人的 資 源 開 発 戦 略 は 重 要 な 役 割 を 担 って い る。 これ ら企 業 戦 略 の 複 合 性 が 製 品 ・サ ー ビス の 差 別 化 や 高 付 加 価 値 化 を 生 む こ とに な るが 、 中 で も 人的 資 源 開 発 戦 略 に よ って 生 み 出 され た 高 度 人 材 は 製 品 ・サ ー ビス の 価 値創 造 の 作 り込 み に お い て 重 要 な 役 割 を 果 た して い る。 そ れ で は 、 そ の 高 度 人 材 とは どの よ うな 要 件 を 持 った 人 材 を 指 す の で あ ろ うか 。 そ れ は 、 高 い 技 術 や 技 能 を 持 った 人 材 で あ る と想 定 され る。 技 術 と技 能 とい う用 語 は しば しば 混 同 され て使 わ れ るが 、 小 川(1990)は 、 技 術 が 工 学 的 側 面 と技 能 的 側 面 に 分 け られ る と述 べ た 。 工 学 的 側 面 とは 、 もの を 作 る上 で の 客 観 化 され た知 識 体 系 、 す な わ ち 文 言 化 、 数 式 化 され た もの を 指 す の に 対 し、 技 能 的 側 面 とは 、 もの を 作 る方 法 が 客 観 化 さ れ た 知 識 とは な らず 、 体 で 覚 えた 体 験 を 意 味 す る。 ま た 、 梅 谷(1996)は 、 技 能 が 技 術 的 技 能 と組 織 的 技 能 に 区 別 され る と述 べ た 。 技 術 的 技 能 は 職 務 を 遂 行 す るに あ た って 必 要 とされ る知 識 、 技 能 、 経 験 を 指 して い るの に 対 し、組 織 的 技 能 は 組 織 全 体 の 生 産 性 を 上 げ る集 団 の 規 律 、 チ ーム ワ ー クの 精 神 、 企 業 へ の 帰 属 意 識 を 指 して い る。 梅 谷 は 、 企 業 に とって 理 想 的 な 労働 力 とは 技 術 的 技 能 を 持 ち 、 そ れ が組 織 的 技 能 に よ っ て 裏 打 ち され た 集 団 で あ る と述 べ た 。 す な わ ち 、 持 って 生 まれ た 素 養 、 学校 教 育 に よ って培 わ れ た知 識 、 企 業 内訓 練 に よ って 蓄 積 され た 経 験 を 通 じて 形 成 され る技 能 は 、組 織 的 条 件 に よ っ て 大 きな 影 響 を 受 け る こ とが 示 唆 され る。 本 稿 の 目的 は 、 労働 者(ブ ル ー カ ラ ー)の 技 能 形 成 の 内 実 を 説 明 した 上 で 、組 織 行 動 の 分 析 視 点 で あ る個 人 、 集 団 、 組 織 が 技 能 形 成 と どの よ うな 関 係 に あ るか を 考 察 す る こ とで あ る。 本 稿 は 、5つ の 節 か ら構 成 され る。 ま ず第2節 で は 、 技 能 形 成 の 内実 を労 働 者 の キ ャ リア の概 念 を 用 い て 説 明す る。 第3節 で は 、 職 務 満 足 や モ チ ベ ー シ ョンな どの 個 人 的 視 点 、 コ ミュニ ケ ー シ ョンや リー ダ ー シ ッ プな どの 集 団 的 視 点 、 そ して 組 織 構造 や組 織 文 化 な どの組 織 的 視 点 か ら、 組 織 の 中 で働 く労働 者 の 行 動 分 析 を 行 う。 そ して 第4節 で 、 労働 者 の 技 能形 成 と組 織 行 動 との 関 係 を 考 察 した 上 で 、 最 後 の 第5節 で 本 稿 を ま とめ る こ と とした い 。 2.技 能 形 成 の 内実 小 池(1987)は 、機 械 設 備 に 体 化 され る(工 学)技 術 は 資 金 さ えあ れ ば 、 海 外 か ら購 入 で き るが 、 そ れ を 操 作 す る労働 者 の 技 能 形 成 は 自国 で 、 ま た は 自社 で 育 成 す る他 な い と述 べ た 。 ま た 、 小 池 は 経 済 学 が 技 能 形 成 の 数 量 化 を 重 視 す る余 り、 費 用 ・収 益 分 析 に 熱 中 し、 技 能形 成 の 内実 や 形 成 方 式 そ の もの に は 踏 み か まな か った と指 摘 して い る。 小 池 は 技 能形 成 を 数 量 化 す る の が 難 しい 上 に 、 熟 練 技 能 に な れ ば な るほ ど、 マ ニ ュア ル 化 や形 式知 化 が 不 可 能 で あ る と考 え
た')。小 池 は 、 技 能 の概 念 を 熟 練 と同義 と捉 え 、 技 能 形 成 方 式 を説 明 す るた め の 分 析 の枠 組 み と して 、 「縦 の 広 が り」 や 「横 の 広 が り」 とい うキ ャ リア(仕 事 経 験)の 積 み 方 、 熟 練 の程 度 を 表 わ す 「仕 事 の 深 さ」 を 用 い た 。 「縦 の 広 が り」 とは 、 従 業 員 が どの 職 位 か ら入 職 して 、 どの 職 位 ま で 昇 進 して い るか を 示 す キ ャ リア ル ー トで あ る。 例 えば 、 職 長 や 班 長 が 主 に 生 産 労働 者 か ら昇 進 して くるの か 、 そ れ と も外 部 労働 市 場 か ら採 用 され るの か とい った 、 企 業 組 織 の 昇 進 の し くみ を 明 らか に す る こ とで あ り、 昇 進 の 可 能 性 が 労働 者 の 技 能 形 成 の 大 きな 誘 因 に な る と想 定 して い る。 「横 の 広 が り」 とは 、 労働 者 が 幾 つ ぐらい の 持 ち 場 を こな せ るか 、 職 場 以 外 の 持 ち 場 も時 に は 担 当す る か(で き るか)、 労 働 者 が 休 ん だ と ぎ、 だ れ が そ の仕 事 を担 当 す るの か 、 職 場 に 新 人 が 入 った とき、 まず どの 持 ち 場 に つ き、 どの 持 ち 場 へ 移 って い くの か とい った 、 労 働 者 の 技 能 の 広 さ を示 して い る。 「横 の 広 が り」 は、 関連 す る仕 事 群 の 中 で どれ だ け の 仕 事 を経 験 す る か とい うこ とで あ り、 経 験 を 積 め ぱ 積 む ほ ど生 産 の 仕組 み に つ い て の 理 解 が 深 ま り、 技 能形 成 が 期 待 され る こ とを 想 定 して い る。 最 後 に、 「仕 事 の 深 さ」 とは 、 生 産 現 場 で起 こ る非 定 常 的 な 問題 を 処 理 で き る労 働 者 の 能 力 を 示 して い る。 具 体 的 に は 、 生 産 労働 者 が 検 査 や 不 良 品 の 取 り出 しを 行 って い るか 、 そ れ とも 検 査 部 門 の 専 門 の 労働 者 が 担 当 して い るの か 、 生 産 労働 者 が 小 さな トラ ブル の 原 因 推理 や 対 応 を 行 って い るの か 、 そ れ ともエ ン ジニ ア が そ れ を担 当 す るの か 、 製 品 変 更 に 伴 う機械 の 簡 単 な 段 取 り替 えは だ れ が 行 って い るの か とい った こ とか ら、 現 場 の 労働 者 の 技 能 水 準 を 考 察 して い る。 す な わ ち 、 技 能 形 成 は 配 置 転 換 を 通 じて 関 連 す る部 門 を 経 験 し、 そ の経 験 の 中 で 変 化 や 異 常 な どの 問 題 処 理 の 能 力 を 習 得 す る こ とを 意 味 して お り、 小 池(1999)は この 能 力 を知 的 熟 練 と呼 ん だ 。 この よ うに 、 小 池 は 現 代 の 熟 練 技 能 が 単 に数 量 化 で き る生 産 能 力 だ け に よ って 議論 され るの で は な く、 管 理 ・開 発 能 力 とい った も っ と広 い概 念 に よ って 扱 わ れ る必 要 が あ る と考 えた 。 す な わ ち 、 技 能 形 成 が 仕 事 の 範 囲 、 分 担 、 配 置 転 換 とい った 生 産 管 理 、 昇 進 ・昇 給 とい った 人 事 管 理 、 教 育 ・訓 練 とい った 人 材 開 発 に よ って 大 き く規 定 され る こ とを 示 唆 して い る。 小 池理 論 に は 、 労働 者 に 熟 練 技 能 を 習 得 させ るた め の 条 件 と して 、 労働 力 の 資 質 自体 よ りもむ しろ、 労 働 力 を 如 何 に して 効 率 的 に 組 織 す るか が 問 わ れ て い る。 高 度 な 労働 力 の組 織 化 が 、 作 業 現 場 で 頻 繁 に 起 こ る変 化 や 異 常 な 事 態 へ の 労働 者 へ の 対 応 能 力 、 言 い 換 えれ ば 、 高 い 水 準 の 技 能形 成 を 促 進 す る事 が で き る。 小 池 に よ る技 能 形 成 の 内 実 を 見 る方 法 論 は 他 の 研 究 の 分 析枠 組 み に も 用 い られ た2)。 そ れ で は 、 組 織 の 管 理 能 力 さ え し っか りして い れ ば 、 労働 者 の 技 能 形 成 が 円滑 に 進 む の で あ ろ うか 。 人事 管 理 や 人材 開 発 は あ くまで も熟 練 技 能 の 必 要 条 件 で あ って 、 十 分 条 件 で は な い 。 小 池(1987)は 技 能 を 向上 させ る要 件(お よび 有 利 な 条 件)と して4つ の こ とを 挙 げ て い る。
第1の 要 件 は 、 学 校 教 育 が きち ん と整 備 され て お り、 国 民 が 義 務 教 育 を 受 け て い る こ とで あ る。 労 働 者 が 高 い 技 能 を 習 得 す るた め に は 、 自主 学 習 が 必 要 で あ り、 そ の 条 件 と して 一 定 の知 的 水 準 が 要 求 され る。 高 度 成長 期 の 日本 の 経 験 を 踏 ま え た小 池 の仮 説 に依 れ ば 、9年 が そ の 最 低 の 修 学 年 数 で あ る。 日本 に お い て は 、 技 能 形 成 は 主 にOJTを 重 視 して 行 わ れ て きた が 、 日 本 の 労 働 者 が 技 術 変 化 に 上 手 く対 応 で き る理 由 として 、 彼 らが 学校 教 育 を 通 じて経 験 を 整理 で き るた め の 基 本 的 知 識 を 身 に 付 け て い るか らで は な い か と推 測 で き る。 但 し、 学校 教 育 で 習 得 され る能 力 は 、 方 法 、 手 続 き、 テ クニ ッ ク と言 った 特 定 の 活 動 に 対 す る技 術 的 技 能 だ け で は な く、 変 化 や 異 常 を 認 識 し、 そ の 状 況 に対 処 す る判 断 能 力 も含 まれ る。松 本(2003)は 技 能形 成 の 概 念 として 、 運 動 技 能 研 究 で 論 じ られ た 手 先 の 器 用 さ、 な め らか な 動 きで 測 られ る能 力 の 他 に 、 そ の 上 位 概 念 と して 変 化 す る状 況 を 理 解 ・推 論 して 判 断 す る 「メ タ能 力 」 を 指 摘 して い る。 尾 高(1989)も 、 学 校 教 育 で 得 た 基 礎 的 な 知 識 が 企 業 内 教 育 で の 効 率 性 を 高 め 、 知 的 熟 練 の 発 達 を促 す 土 台 を 作 る こ とに な る と指 摘 して い る。 「読 み 」、 「書 き」、 「計 算 」 に象 徴 され る基礎 教 育 を 通 じて 労働 者 間 の 情 報伝 達 を 容 易 に し、 仕 事 の 効 率 を 上 げ るネ ッ トワ ー ク外 部経 済 効 果 を 生 み 出 して い る と考 え られ る。 第2の 要 件 は 、 労働 者 の 離 職 率 が 低 い こ とで あ る。 戦 後 、 日本 の 労働 者 の 企 業 へ の 定 着 度 が 外 国 と比 較 して 高 か った こ とは 、 人 材 育 成 や 技 能 形 成 に ブ ラス の 影 響 を 与 えた と考 え られ て い る。 経 済 発 展 の 初 期(戦 後 復 興 期)に は 労働 市 場 が 逼 迫 し、 労働 力 の 流 動 性 が 大 き くな りが ち で あ り、 企 業 は 熟 練 労働 力 を 確保 す る こ とが 難 しい 。 しか し、 そ の 問 題 は 日本 に お い て 大 きな 問 題 に な らな か った 。 そ の 要 因 として 、 日本 社 会 の 特 性 で あ る儒 教精 神 に 基 づ く組 織 へ の 忠 誠 心 や 忠 孝 心 を 挙 げ る識 者 も多 い 。 しか し、 万 成 ・マ ーシ ュ(1976)は 日本 企 業 に お け る従 業 員 の 定 着 率 の 高 さが 日本 的 雇 用 制 度 の 通 説 で あ る企 業 へ の伝 統 的 忠 誠 心 とか に よ るの で は な く、 勤 続 に よ る賃 金 や 地 位 の 向上 とい った 累 積 的 利 益 に よ る もの で あ る と指 摘 して い る。 この こ と は 、 小 池(1987)に お い て も指 摘 され て い る。 第3に 技 能 形 成 に とって 有 利 な 条 件 として 、 企 業 規模 の 大 き さが 挙 げ られ る。 小 池 は 技 能形 成 に は 時 間 が か か る こ とか ら、倒 産 の 可 能 性 の 低 い 安 定 した 市 場 を 持 つ 大 企 業 の 方 が 技 能形 成 の 環 境 に お い て は 有 利 で あ る と指 摘 した 。90年 代 以 降 の グ ロ ーバ ル 化 に よ る大 競 争 時 代 に 入 っ て 、 規 模 の 大 きな 企 業 が破 綻 しな い とい う事 は 今 や 幻 想 に過 ぎな い が 、 中 小 企 業 と比較 す るな らば 、 内部 留保 の 大 き さ、 人 材 開 発 プ ロ グ ラム の 充 実 、 給 与 水 準 の 高 さ、 福 利 厚 生 の 充 実 、 人 的 資 源 管 理 制 度 の 整 備 とい った 要 素 が 労働 者 の 技 能 形 成 に とって 有 利 な 条 件 を 付 与 して い る。 第4の 有 利 な 条 件 として 、 企 業 の 操 業 年 数 の 長 さが 挙 げ られ る。 小 池 は 、 労働 者 の 技 能形 成 が 職 場 の 中 で様 々な 持 ち 場 を 変 えて い くこ と(時 に は 、 持 ち 場 を こ えて 他 の 職 場 へ の移 動)を 通 じて 実 現 され るた め 、 企 業 側 は 労働 者 に様 々な 職 務 を 経 験 させ る固 有 の キ ャ リア パ ス を 用 意 す る必 要 が あ る と述 べ た 。 す な わ ち 、 企 業 内部 で の キ ャ リア形 成 は 、 実 地 訓 練 を 中 心 とした 技
能 形 成 で あ る。 川 喜 多(1990(a))も 、 労 働 者 に 高 度 な能 力 を 要 す る仕 事 が 用 意 され て い る環 境 が 彼 らの 技 能 形 成 に 資 す る と述 べ た 上 で 、 職 務 内 容 の 平 準 化 は 彼 らの 技 能形 成 に はプ ラス に 働 か な い と指 摘 した 。 キ ャ リア パ ス が 短 い と、 昇 給 に関 して もす ぐに 頭 打 ち に な り、 労働 者 の 技 能 形 成 の 誘 因 に とって マ イナ ス に な る と考 え られ る。 ま た 、 この こ とは 小 池 に よ って 指 摘 さ れ て い な い が 、 操 業 年 数 の 長 さは 労働 者 間 の 顕 示 効 果 を 通 じ、 労働 者 の 労働 意 欲 を 掻 き立 て る こ とに もつ な が る とも考 え られ る。 な ぜ な らば 、 労働 者 は 自分 た ち の 先 輩 や 同 僚 が 通 った キ ャ リア パ ス を 見 る こ とで 、 昇 進 ・昇 給 へ の 期 待 を 抱 く事 が で き るか らで あ る。 これ ら小 池 の 挙 げ た4つ の 条 件 以 外 に、松 本(2003)は 技 能形 成 の 条 件 として 、組 織 学 習 の 重要 性 を指 摘 して い る。松 本 は 、組 織 内に存 在 す る上 司 や先 輩 、 同僚 、後 輩 の問 の コ ミ ュニケ ー シ ョンを 通 じて知 識 の 共 同 体 が 形 成 され 、 組 織 の 成 員 全 体 の 技 能 を 高 め る と主 張 した 。 あ る成 員 が 共 同体 に 身 を 置 く事 は 、 必 然 的 にそ の 共 同 体 の 仕 事 の 一 端 を担 う事 を 意 味 して お り、 技 能 を伝 達 して も ら う事 に な る。 そ して 、 学 習 者 の 技 能 の 習 得 が 軌 道 に 乗 れ ば 、 学 習 者 は 更 な る共 同体 へ の 参 加 も進 み 、 そ の 結 果 、 よ り高 度 な 技 能 形 成 が 可 能 に な って くる。 3.組 織 行 動 の 構 成 組 織 行 動 とは 簡 単 に 言 えば 、(企 業)組 織 の 中で 働 く人 々の 行 動 を研 究 す る学 問 分 野 で あ る。 現 代 的 な 組 織 行 動 の 分 析 は 、 個 人 、 集 団 、 組 織 の3つ の レベ ル か ら行 わ れ る事 が 一 般 的 で あ る。 個 人の レベ ル で は 、 人の 心 理 と行 動 との 関 係 に注 目して 分 析 が 行 わ れ る。 また 、 人 の 行 動 は 他 人 との 相 互 関 係 に 大 き く影 響 を 受 け る事 か ら、 集 団 や組 織 の レベ ル を 考 慮 す る必 要 が あ る。 集 団 と組 織 は 同義 に 解 釈 され る事 もあ るが 、 集 団 とは 直 接 的 に 影 響 を 与 え る少 人 数 の 集 ま り と定 義 し、 組 織 とは 区 別 す る事 も多 い(上 田、1995)。 本 章 で は 、 個 人 レベ ル の 分 析 要 素 として 、 態 度 とモ チ ベ ーシ ョンに 、 集 団 レベ ル で は コ ミュ ニ ケ ー シ ョン と リー ダ ー シ ップに 、 そ して 組 織 レベ ル で は組 織 構造 と組 織 文 化 に 、 そ れ ぞ れ 注 目して 組 織 の 中 で働 く労働 者 の 行 動 を 分 析 す る。 (D 個 人 レベ ル 1) 職 務 満 足 の 要 因 態 度 は 、 あ る具 体 的 な 対 象 感 情 で あ る事 か ら、 そ の 対 象 は 個 人 に 知 覚 され な け れ ば な らな い (上 田、1995)。 個 人 は様 々な 態 度 を とるが 、 組 織 行 動 は 仕 事 に関 連 した 態 度 として 、 職 務 満 足 、 職 務 へ の 参 画 、 組 織 へ の コ ミッ トメ ン トを 含 ん で い る。 中 で も職 務 満 足 は 企 業組 織 で 重 視 され る態 度 として 研 究 対 象 として 取 り上 げ られ る こ とが 多 く、 そ れ を 引 き起 こす 要 因 に つ い て の 研 究 が 行 われ て き た。Locke(1976)は 職 務 満 足 の組 織 的 要 因 として 、 監 督 者 との 関 係 、職 務 特 性 、
給 与 水準 、職 場 環 境 を 挙 げ た。 例 えば 、 監督 者 が労 働 者 に対 し、 単 に 合理 的 に標 準 作 業(課 業) を 行 う生 産 要 素 の 一 部 分 と して 見 るの で な く、 労働 者 も組 織 の 発 展 に 寄 与 す る重 要 な 意 思 決 定 者 として 評 価 す れ ば 、 労働 者 の 職 務 満 足 も高 ま る。 また 、 職 務 特 性 に 関 して は 、 労働 者 が繰 り 返 しの 単 純 作 業 を 課 せ られ るの で は な く、 技 能 の 多 様 性 が 要 求 され る変 化 に 富 ん だ 仕 事 が 与 え られ とき、 労 働 者 の 職 務 満 足 は 高 ま る。Lockeは そ の 他 の組 織 的 要 因 として 、 一 定 以 上 の給 与 水 準 、 職 場 か ら家 ま で の 距 離 の 近 さ、 衛 生 的 、 安 全 で 快 適 な 職 場 環 境 とい った物 理 的環 境 を 挙 げ て 、 そ れ らが 整 って い れ ば 、 職 務 満 足 は 高 ま る と結 論 付 け た 。 70年 代 の 後 半 に 入 る と、 組 織 的 要 因 よ りもむ し ろ、 労働 者 の 性 格 、 個 々の 職 位 、 個 人 の 生 活 全 体 に対 す る 満 足 度 とい った 個 人 特 性 説 を 支 持 す る論 者 が 出 て きた。Staw・Ross(1985)は40 代 か ら50代 の 男 性 従 業 員3,350人 の5年 に わ た る職 務 満 足 の 変 化 を 測 っ た と ころ 、 職 務 満 足 の 大 き さが 勤 務 先 や 仕 事 を 変 わ って も有 意 に変 化 しな い 事 を 発 見 した 。 す な わ ち 、 職 務 満 足 は 仕 事 内容 や 職 場 の 物 理 的 環 境 で は な く、 個 人 の 性 格 や 仕 事 観 に よ って 決 定 され る もの で あ る事 を 意 味 した 。 ま た、Taitら(1989)は 、 高 い職 位 に つ い て い る従 業 員 ほ ど、 職 務 満 足 が 高 くな る こ とに 加 えて 、 日常 生 活 一 般 に 満 足 して い る人 は 職 務 満 足 も高 い こ とを 発 見 し、 個 人特 性説 を 支 持 した 。 この よ うに 、 組 織 的 要 因 と個 人 的 要 因 の どち らが 職 務 満 足 に対 す る強 い 説 明 要 因 に な って い るか に 関 す る議 論 が そ の 後 も盛 ん に 行 わ れ た が 、 両 者 の 要 因 が 複 合 して い る事 もあ り、 明 確 な 結 論 を 出す に は 至 って い な い 。 2) 職 務 満 足 の 影 響 職 務 満 足 が 、 どの よ うな 影 響 を もた らす か に つ い て の 議 論 は 今 まで 多 く行 わ れ て きた 。特 に 、 職務 満 足 に よる欠 勤 ・離職 率 や 業 績(労 働 生産 性)へ の影 響 に関 す る研 究 は 多 い。 一般 的 に言 っ て 、 職 務 満 足 が 高 い ほ ど、 欠 勤 ・離 職 率 が 下 が る と推 察 され る3)。しか し、 この2つ の変 数 問 の 関 係 は そ れ ほ ど単 純 な もの で は な く、 労働 者 の 特 性 、 地 域 、組 織 文 化 な どの 条 件 が 両 者 の 関 係 に大 ぎな 影 響 を与 えて い る。Carsten・Spector(1987)は 、 労 働 市 場 が逼 迫 して 高 い 失 業 率 の 状 況 で は 、 労働 者 は 新 しい 雇 用機 会 が 少 な い と考 え る事 か ら、 職 務 満 足 と離 職 率 との 負 の 相 関 関 係 が 弱 くな る と主 張 した 。 この よ うに、 労働 者 の 定 着 率 が 単 に 職 務 満 足 に よ って 説 明 され る もの で は な く、 満 足 度 以 外 の 固 有 の 労働 市 場 とい った 要 素 に も影 響 を 受 け る こ とを 示 唆 して い る。 また 、 内 田(2007)は バ ン グ ラデ シ ュ人 労働 者 を 対 象 とした 実 証 分 析 の 中 で 、 彼 等 の 離 職 意 思 が 仕 事 の 達 成 感 や 能 力 の 活 用 とい った 内 発 的 満 足 に よ って 説 明 され て い るの で は な く、 賃 金 水 準 とい った 物 的 満 足 に よ って 説 明 され て い る事 を 発 見 した 。 内 田は この 実 証 結 果 を 、 バ ン グ ラデ シ ュの よ うな 後 発 途 上 国 の 労働 者 の 最 も強 い 就 業 動機 が 自分 の 家 族 や親 戚 を 養 う事 で あ る こ とか ら、 内発 的 満 足 が 離 職 意 思 を 低 め る要 因 には な って い な い と分 析 した 。
ま た 、 職 務 満 足 に よ る業 績(労 働 生 産 性)へ の 影 響 に 関 して の 研 究 も多 く行 わ れ て き た。 1950年 代 あ た りまで は 、 一 般 的 に 職 務 満 足 が 高 い ほ,ど、 業 績 も上 が る と考 え られ て きた 。 しか し、 上 田(1995)は 、 個 人の 業 績 に 関 し、 最 低 限 の 水 準 が組 織 内 で 公 式 的 に 決 め られ て い る場 合 や 、 職 場 の 同僚 間 で 非 公 式 な 規 範 が 存 在 して い る場 合 に は 、 職 務 満 足 と業 績 との 関 係 は 弱 い もの に な る と述 べ た 。 な ぜ な ら、 個 人 が 成 員 内 で 暗 黙 に 決 め られ た 規範 を 逸脱 す る よ うな 業 績 を 上 げ れ ば 、 グル ー プの 成 員 か ら仲 間 は ず れ に され る こ とを 恐 れ 、 個 人 は 業 績 を 一 定 以 下 に抑 え よ う とす るか らで あ るの。 3)モ チ ベ ー シ ョンの 基 本 的 コ ンセ プ ト とモ チ ベ ーシ ョン理 論 の 分 類 モ チ ベ ー シ ョンは 、 ラ テ ン語 の モ ベ ー レ(movere)に 起 源 を持 つ 「動 か す こ と」 を意 味 す る。 モ チ ベ ー シ ョンの プ ロセ ス とは 、 人 間 の 内 部 で 行 動 を 刺 激 す る動 因(=欲 求)が 存 在 して お り、そ れ が人 間の 行動 を引 き起 こ し、 そ の結 果 、 欲 求が 充 足 され る こ とで あ る。 モ チ ベ ー シ ョ ン には 、3つ の 側 面 が あ り、 第1に 行 動 を 方 向 付 け る事 、 第2に 行 動 に駆 り立 て る事 、 第3に 行 動 を 継 続 させ る事 で あ る。 モ チ ベ ー シ ョンは 直 接 観 察 す る こ とが で きな い が 、 これ ら3つ を 可 能 に す る 内的 な 力 として 定 義 され る。 モ チ ベ ーシ ョンは 仕 事 の 成 果 を 生 み 出 す の に 重 要 な 要 件 の 一 つ で あ るが 、 個 人の 能 力 、 モ チ ベ ーシ ョンを 発 揮 す るた め の 外 部 環 境 が 整 って は じめ て 、 そ れ は 大 きな 成 果 を 上 げ る事 に つ な が る(石 田、2005)。 モ チ ベ ー シ ョンに つ い て の 理 論 は 、1950年 代 以 降 に な って 多 く発 表 され た が 、 そ れ らを 大 き く2つ に 分 け る と、 古 典 的 モ チ ベ ー シ ョン論 と近 代 的 モ チ ベ ーシ ョン論 に 分 け られ る。 古 典 的 モ チ ベ ーシ ョン を 代 表 す る 理 論 と して 、Maslowの 欲 求 段 階 論(1954)、 McGregorのX理 論 とY理 論(1960)、Herzberg(1966)の 動 機 付 け ・衛 生 理 論 が挙 げ られ る。 Maslowは 人 間 の 欲 求 を 低 位 の 生 理 的 欲 求 、 安 全 的 欲 求 と、 中 高 位 の 社 会 的 欲 求 、 自尊 的 欲 求 、 自己 実 現 的 欲 求 の5つ の 欲 求 段 階 に 分 類 し、 低 位 の 欲 求 が 満 た され る と、 次 の 段 階 の 欲 求 が優 勢 に な る と述 べ た 。McGregorのX理 論 は 生 存 欲 求 の よ うな低 次 の 欲 求 を もつ 人 間 の行 動 モ デ ル で あ り、 人 間 は 生 来 仕 事 が 嫌 い で 、 出来 れ ば 仕 事 を した くな い とい う特 性 を 持 って い るの に対 し、Y理 論 は 成 長 欲 求 の よ うな 高 次 の 欲 求 を 持 つ 人 間 を想 定 して い る。Herzbergは 、 給 与 な,どの 生存 の 基 本 的 要 件 に 関 わ る よ うな 外 発 的 報 酬 は 職 務 不 満 の 発 生 を 防 止 す る要 因(=衛 生 要 因)に な っ て も、 仕 事 へ の 積 極 的 な 動機 付 け 要 因 に は な らな い と述 べ た 。 彼 は 労働 者 の 動 機 付 け を 強 め る た め に は 、 達 成 、 責 任 、 承 認 な どの 人 間 の 高 位 の 欲 求 を 満 た す 事 が 重 要 で あ る と主 張 した 。 これ ら3つ の 理 論 の 基 本 的 な 考 え方 は 、 人 間 が 内 発 的 要 因 に よ って 積極 的 に 仕 事 に 取 り組 む よ うに な る こ とを 示 唆 して い る。 しか し、 これ ら古 典 的 理 論 の 問 題 点 は 、 人 間 の 行 動 が 欲 求 に 注 目す る余 りに 、 行 動 が 個 人 の 置 か れ た 外 部 条 件 に よ って も影 響 を 受 け る こ とを 考 慮 して い な い 事 で あ る。 こ こに 、 近 代 的 理 論 は 人 間 の 外 的 条 件 に も 目を む け 、 欲 求 の よ うな 内 的 要 因 との
相 互 作 用 プ ロセ ス を 分 析 対 象 に した(上 田、1995)。 近 代 的 理 論 で 最 も有 力 な 理 論 は 、 期 待 理 論 で あ る。 期 待 理 論 は 、 努 力 を 通 じて どの よ うな 結 果 が 生 まれ るか を 期 待 で き る とき、 人 間 の や る気 が 高 ま る とい う動 機 付 け 理論 を表 わ して い る。 Vroom(1964)やPorter&Lawler(1968)の 期 待 理 論 が 最 も有 名で あ る。 Vroomは 動 機 付 け の 強 さを 決 め る要 素 として 、 第1に 期 待(努 力 に よ って どれ くらい の 業 績 が 上 げ られ るか と い う期 待)、 第2に 道 具 性(ど の 程 度 の 仕 事 をす れ ば、 どれ く らいの 報 酬 を達 成 で きるか)、 第 3に 誘 意1生(得 られ た報 酬 が どの程 度 の満 足 を もた らす か)が 存 在 して お り、 これ ら3つ の乗 数 が モ チ ベ ー シ ョンの 強 さに な る と述 べ た 。Porter&Lawlerの 期 待理 論 は 、 Vroomの 理 論 枠 組 み を 複 雑 に した もの で あ る。 具 体 的 に は 、 努 力 の 程 度 が 報 酬 の 価値 と努 力 が報 酬 に 結 び つ く と感 じられ る主 観 的 確 率 の2つ の 要 素 に よ って 決 ま る こ と、 報 酬 な どの 業 績 を 内 発 的報 酬 と 外 発 的 報 酬 に 分 け て 考 え る事 、 満 足 感 は 知 覚 され た 公 平 感 に よ って 決 ま る こ とな どの 条 件 を 、 期 待 理 論 の モ デ ル に 入 れ る こ とで 分 析 の 精緻 化 を 図 った 。 期 待 理 論 以 外 の 近 代 的理 論 として 、 Locke・Latham(1984)の 目標 設 定 理 論 が 挙 げ られ る。 この 理 論 で は モ チ ベ ー シ ョンが 高 い 業 績 に つ な が るに は 、 一 定 以 上 の 困 難 性 と明 確 さを 持 った 目標 を 個 人 に 設 定 させ る事 が 重 要 で あ る と述 べ て い る。 (2)集 団 の レベ ル 1) コ ミュニ ケ ー シ ョン コ ミュニ ケ ー シ ョン とは 、 二 者 以 上 の 成 員 の 問 で 情 報 交 換 を 交 換 し、 そ の 意 味 内 容 を 共 有 す る過 程 で あ る。Scott and Michell(1976)は 、 コ ミュニ ケ ー シ ョンが 組 織 の 中 で 果 たす 主 な 役 割 は4つ あ る と述 べ た 。 第1に コ ミュニ ケ ーシ ョンの 役 割 は 統 制 で あ り、 作 業 指 示 書 や 職 務 記 述 書 に よ って 、 組 織 の 成 員 の 行 動 を 統 制 す る。 第2の 役 割 は 動 機 付 け で あ り、 具 体 的 目標 の 設 定 、 目標 に 対 す る フ ィ ー ドバ ッ ク、 業 績 結 果 に 対 す る賞 賛 や 叱 責 は 人 の 動 機 を 刺激 す る。 第 3に 、 コ ミュニ ケ ー シ ョン は成 員 の 感情 を表 現 し、 社 会 的 欲 求 を満 たす 手 段 で あ る。 そ して 第 4の 役 割 は 、組 織 の成 員 が意 思決 定 す る た め に必 要 な情 報 を提 供 す る。 コ ミュニ ケ ー シ ョンの 方 法 は 、 文 書 や 会 話 に よ る言 語 的 コ ミュニ ケ ー シ ョン と、 身 体 動 作 や 言葉 の抑 揚 とい った非 言語 的 コ ミュニ ケ ー シ ョン に分 け られ る。特 に、 前者 の コ ミュニ ケ ー シ ョ ン方 法 で あ る文 書 で の や り と りは 労働 者 の 職 務 意 識 を 明 確 に し、 仕 事 へ の 責 任 感 を 高 め る こ と に 資 す る こ とか ら、 生 産 効 率 の 向 上 、 個 々の 責 任 の 明 確1生、 製 品 の 品 質 の維 持 ・向 上 に とって 重 要 で あ る。 但 し、 生 産 工 程 に 個 人 の 職 務 区 分 が 明 確 で は な い 協働 的 作 業 が 多 く含 まれ て い る 場 合 や 、 作 業 で 要 求 され る技 能 が 形 式知 化 しに くい 場 合 に は 、 個 人 の 職 務 内 容 や 作 業 指 示 を 完 全 に 文 書 化(マ ニ ュア ル 化)す る事 は 困 難 で あ る。 また 、 園 田(2001)も 文 書 化 に こだ わ り過 ぎ る と、 欧 米 諸 国 の 植 民 地 支 配 を 受 け て 文 面 上 で の 契 約 観 念 が 強 い 開 発 途 上 国 で は 、 労働 者 が
文 書 化 で 明示 され た 範 囲 だ け を 職 務 として 捉 え るた め に 、 職 務 拡 大 や 職 務 充 実 に 発 展 しな い と 指 摘 して い る。 そ うな れ ば 、 組 織 全 体 の 生 産 性 の 向 上 に 支 障 を きた す 恐 れ もあ る。 Robbins(1997)は コ ミ ュニ ケ ー シ ョンの 方 向性 を、 上 方 向 、 下 方 向 、 横 方 向 に分 け て 、 コ ミュニ ケ ー シ ョンの 組 織 構 造 へ の 影 響 に つ い て 説 明 した 。 コ ミュニ ケ ーシ ョンの 方 向 性 は 、組 織 の 規 模 に 影 響 を 受 け る。 規 模 が 小 さい と、 上 層 か ら下 層 に 向 か って の 情報 や 指 示 を 正 確 に 伝 達 しや す くな る。 企 業 理 念 や 方 針 の 周 知 、 生 産 目標 の 割 り当 て 、 職 務 上 の 指 示 、 問 題 点 の 指 摘 、 業 績 の フ ィ ー ドバ ッ クな どが 、 労働 者 へ伝 わ りや す くな る。 下 層 か ら上 層 へ の 上 方 向 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン も、 規 模 が 小 さい ほ ど、 生 産 の 進 捗 状 況 や 問 題 点 の 報 告 、 下 か らの 業 務 改 善 の 提 案 な どが 組 織 の 上 層 へ伝 わ りや す い 。 上 方 向 コ ミュニ ケ ーシ ョンが 機 能 す るた め の 条 件 として 、 労 働 者 が 率 直 に 組 織 の 上 層 部 へ 提 案 や 報 告 を 行 って も、 不 利 益 を 被 らな い よ うな組 織 文 化 が構 築 され て い る事 で あ る。 同 じ職 務 や 持 ち場 の 成 員 問 や、 同 じ職 位 の成 員 同士 で の コ ミュニ ケ ー シ ョン は横 方 向 の コ ミュ ニ ケ ー シ ョン と呼 ば れ る。Robbinsは 横 方 向の コ ミ ュニ ケ ー シ ョン の メ リ ッ トを 、 労 働 者 が 上 下 方 向の縦 構 造 の ヒエ ラル キ ーを 介 さず 迅 速 に行 動 で き る事 で あ る と述 べ て い る。 しか し、 人 事 考 課 に 協働 関 係 な どの 評 価 項 目が 含 ま れ て い な い な らば 、 た とえ組 織 全 体 に とって は 有 益 な 情 報 交 換 で あ って も、 情 報 の 出 し手 が 受 け 手 に情 報 を 出 し惜 しみ す る。 2) リー ダ ー シ ップ論 の 体 系 リー ダ ー シ ップ とは 、 組 織 や 集 団 に 目標 を 達 成 で き る よ うな 影 響 を 与 え る こ とが で き る個 人 の 能 力 を 指 す 。 リー ダ ー シ ッ プを 発 揮 す るに は 公 式 、 非 公 式 に 与 え られ た 権 限 を 与 え られ て い る こ とに 加 え、 組 織 の 成 員 か ら信 頼 を 得 て い る こ とが 重 要 で あ る。組 織 は 急 速 な グ ロ ーバ ル 化 に よ り、 そ の 革 新 的 な 変 化 を 求 め られ て い る状 況 にお い て 、 そ の 変 化 を 推 し進 め る役 割 を 果 た す リー ダ ーの 存 在 が 組 織 の 命 運 を 握 る重 要 な 要 素 の 一 つ で あ る。 リー ダ ー シ ップに 関 す る理 論 は 、 大 き く3つ に分 け られ る。 第1は 古 典 的特 性論 と呼 ば れ 、 歴 史上 の リー ダーの 特 性 に焦 点 を あ て 、彼 等 に共 通 す る 点 を発 見す る もの で あ る。 この ア プ ロ ー チ は 、1940年 代 以 前 か ら心 理 学 者 を 中 心 に 行 わ れ た 。 第2の 理 論 は 、 リー ダ ーが どの よ うな 行 動 を とるか を 明 らか に し よ う とす る行 動 理 論 が50年 代 か ら60年 代 に か け て 隆 盛 を極 め た 。 中 で も、 オ ハ イオ 州 立 大 学 のFleishman(1955)を 中心 とす る オハ イ オ学 派 、 ミシ ガ ン 州 立 大 学 の Likert(1961)を 中心 とす る ミシ ガ ン学 派 が 有 名 で あ る。 オ ハ イオ 学 派 で は、 リ ーダ ー シ ッ プ の 行 動 を 、 「構 造 作 り」 と 「配 慮 」 とい う2つ の 概 念 で 説 明 した。 「構 造 作 り」 とは 、 リ ー ダ ー が 目標 達 成 の た め に 部 下 の 役 割 を定 義 す る事 で あ るの に対 し、 「配 慮 」 とは 、 部 下 の考 え を 尊 重 す る事 で組 織 内 に 良 好 な 人 間 関 係 を構 築 す る事 で あ る。 オ ハ イ オ 学 派 で は、 「構 造 作 り」 と 「配 慮 」 の 両 方 の 能 力 を持 った リー ダ ーの 下 で働 い て い る部 下 は 、 業 績 や 満 足 度 が 高 い こ とを
示 した 。 一 方 ミシ ガ ン学 派 で は 有 能 な 監 督 者 の 行 動 が 「生 産 志 向 型 」 と 「従 業 員 志 向 型 」 の2つ の 基 本 的 な形 態 で あ る とした。 そ して 、 ミシガ ン学 派 は この2つ の 形態 の 内 「生産 志 向型 」の リー ダ ーの 行 動 は 生 産 性 の 向上 に は 寄 与 す る もの の 、 リー ダ ーか らの 圧 力 で 従 業 員 の 満 足 度 が 低 下 す るの に 対 し、 「従 業 員 志 向型 」 の 行 動 は生 産 性 と満 足 とを 同時 に達 成 で きる と主 張 した。 しか し、 組 織 に よ り望 ま しい リー ダ ーの 特 性 や 行 動 は 必 ず し も一 致 せ ず 、特 性論 や 行 動論 だ け か ら リー ダ ー シ ッ プを 説 明 す る こ とに は 限 界 が あ った 。70年 代 に 入 る と、 望 ま しい リー ダ ー シ ップは 組 織 そ れ ぞ れ の 状 況 に よ って 変 わ って くる とい う条 件 適 合 理論 が 有 力 に な った 。 中 で も、Fieldlerら(1976)の 研 究 は 最 も有 名 で あ り、彼 は 組 織 の 状 況 要 因 と リー ダー の特 性 との 適 合 関 係 を 調 べ た 。 状 況 の 評 価 基 準 と して 、 リー ダ ー と成 員 との 関 係 、 職 務 遂 行 の 明 確 さ、 公 式 的 な 権 力 の 程 度 を 設 定 し、 リー ダ ー に とって 能 力 が 発 揮 しや す い 状 況 を8段 階 で 分 類 した 。 リー ダ ー の特 性 に 関 して は 、 リー ダ ーが 仕 事 に対 す る志 向 性(低LPCリ ー ダ ー と呼 ぶ)が 強 い の か 、 人 間 関 係 に 対 す る志 向性(高LPCリ ー ダ ー と呼 ぶ)が 強 い の か を 調 べ た 。 そ の結 果 、 集 団 が 高 い業 績 を あ げ る た め に は 、 リー ダ ーの 能 力 が 発 揮 しやす い状 況(カ テ ゴ リー1か ら3 ま で)お よび 発 揮 しに くい 状 況(カ テ ゴ リー7お よび8)で は 仕 事 志 向型 の 低LPCリ ー ダ ー が 、 そ して 能 力 が 発 揮 しや す い 状 況 が 中 程 度(カ テ ゴ リー4か ら6ま で)で は 人 間 関 係 志 向 型 の 高LPCリ ー ダ ーが 、 それ ぞれ 望 ま しい とい う事 が わ か った。 (3)組 織 の レベ ル 1)組 織 構 造 組 織 構 造 は 、 一 般 的 に 単 純 構 造 、 官 僚 構 造 、 マ ト リ ックス 構造 の3つ に 分 類 され る(上 田、 1995)。 単純 構 造 は 規 模 の 小 さな 組 織 に多 く、 部 門 化 の 程 度 は低 く、組 織 系 統 が ほ とん ど公 式 化 され て い な い 。 そ の 構 造 の 強 み は 単 純 性 に あ り、迅 速 で 柔 軟 な 意 思 決 定 が 可 能 で あ る上 に 、 組 織 の 維 持 経 費 も少 な くて 済 み 、 責 任 の所 在 も明 確 で あ る。 しか し、 そ の組 織 が 大 き くな るに つ れ て 、 過 度 な 情 報 が 上 層 に い る一 部 の 成 員 に 集 中 す るた め 、 適 切 な 意 思 決 定 が 難 し くな り、 制 度 疲 労 を 起 こ しや す い 。 官 僚 構 造 で は 作 業 の 専 門 化 や 公 式 化 され た 規 則 が 確 立 され て お り、1950年 代 か ら1960年 代 に か け て 隆 盛 を 極 め た 。 この 構 造 形 態 を とって い る組 織 の 多 くは 、 規模 も大 き く、 操 業年 数 も長 い 。 この 構 造 の 特 徴 は 業 務 が 職 能 的 に 部 門 化 され て 、 管 理範 囲 が 狭 く、組 織 統 制 は 中 央 集 権 的 で あ る。 官 僚 構 造 を 持 った 組 織 の 利 点 は 、 効 率 化 され た 方 法 で 標 準 化 され た 活 動 を 進 め る こ と が で き る事 で あ る。 官 僚 構 造 の 問 題 点 として 、 そ れ は 変 化 に 乏 しい 安 定 的 な 環 境 で は 成 果 を 出 しや す い が 、 変 化 の 大 きい 環 境 で は 対 応 能 力 に劣 る。 また 別 の 問 題 点 として 、 官 僚構 造 の 成 員 に 求 め られ る資 質 の 一 つ は ル ーチ ン化 で あ るた め 、 自律 性 を 求 め る成 員 に とって は 職 務 満 足 が
低 くな る こ とが あ る。 加 えて 、 部 門 の 目標 が 組 織 全 体 の 目標 よ りも優 先 され る事 もあ り、部 門 間 の 対 立 が 起 き る可 能 性 も高 くな る。 マ ト リ ックス 構 造 とは 、 職 能 と製 品 の2つ の 部 門 化 の 形 態 を組 み 合 わ せ た構 造 で あ る。 そ の 構 造 の 大 きな 特 徴 は 、 職 能 部 門 と製 品 部 門 の 管 理 者 が併 存 して お り、 統 治 シ ス テ ム が 二 重 で あ る事 で あ る。 マ ト リ ックス 構 造 の 長所 は 、 専 門 家 同 士 の 接 触 が 頻 繁 に な る こ とで 、 多 くの 情報 が 組 織 の 成 員 で 共 有 され る事 で あ る。 ま た 、 そ れ は 専 門 家 を 効 率 的 に 配 置 す る事 に な るの で 、 対 応 で き る仕 事 の 幅 が 拡 大 す る。 上 に 挙 げ た3つ 以 外 の 組 織 構 造 として 、1980年 代 以 降 、 官 僚 構造 の 短所 を 補 完 す る形 で 少 人 数 の チ ーム を 編 成 す るチ ーム 構 造 、 組 織機 能 の 多 くを 外 注 し、 最 も得 意 とす る分 野 に だ け組 織 の 人 材 を 投 入 す るバ ーチ ャル 組 織 、 組 織 の 水 平 ・垂 直 の 境 界 を 排 除 す るだ け で は な く、 会 社 、 顧 客 、 業 者 とい う外 部 の 境 界 も取 り除 く事 で 、 強 力 な チ ーム を 編 成 し よ う とす るバ ウ ン ダ リ ー レス 組 織 な ども、 新 た な 組 織 構 造 の 形 態 として 注 目を 浴 び て い る。 2)組 織 文 化 組 織 文 化(ま た は 企 業 文 化)に は 決 ま った 定 義 は な い が 、 そ れ は 一 般 的 に組 織 の 成 員 が 持 っ て い る共 通 の 見 方 を 意 味 す る。 組 織 の 特 徴 は 、 設 立 当 初 か ら根 付 い て い る大 局 的 文 化 に 反 映 さ れ て い る。 同時 に 、 国 境 を 越 えて の 生 産 拠 点 や担 当 部 門 の違 い に よ り、 そ れ ぞ れ の 成 員 が 共 有 す るサ ブ カル チ ャ ーが 別 に 存 在 す る。 特 に90年 代 以 降 の グ ロ ーバ ル 化 の 中 で 、 本 国 で培 って き た 企 業 の 固 有 文 化 が 海 外 の 生 産 拠 点 で は 、 現 地 の 文 化 と融 合 して 変 化 し、 サ ブ カル チ ャ ー とし て の 新 た な 企 業 文 化 を 持 つ 事 例 が 増 えて い る。 強 い 組 織 文 化 の 性 質 とは 、 組 織 の 中 心 的 理 念 や 価 値 観 が 成 員 に 広 く浸透 して い る事 で あ る。 Robbins(1997)は 、 強 い文 化 の 具 体 的 な 結 果 が 従 業 員 の転 職 率 の 低 さで あ る と述 べ た。 そ の 理 由 として 、 依 拠 す る理 念 や 価値 観 が 組 織 の 成 員 に 共 有 され て い れ ば 、 忠 誠 心 や 結 束 が 強 ま り、 成 員 の離 職 率 が 低 くな る と考 え られ る か らで あ る 。 ま た 、Dea1・Kennedy(1982)は 、 強 い 文 化 は 高 い 業 績 と相 関 して い る と述 べ た 。 成 員 の 理 念 や 価値 観 の 一 致 は 彼 等 の 動 機 付 け を 強 化 す る と同時 に 、 積 極 的 な 仕 事 へ の 取 組 み が 管 理 コス トを 下 げ る事 に つ な が る。 組 織 文 化 に対 す るア プ ロ ーチ と して 、ouchi(1981)のz型 理 論 は 有 名 で あ る。 ouchiは 、 典 型 的 な 日本 企 業 、 典 型 的 な ア メ リカ 企 業 、 そ してZ型 と呼 ん だ 融 合 的 文 化 の特 徴 を 持 つ ア メ リカ企 業 に 類 型 化 して 、 文 化 的 価 値 観 の 比 較 分 析 を 行 った 。 そ の 結 果 、 従 業 員 の 雇 用 に 関 して は 日本 企 業 が 終 身 雇 用 、 ア メ リカ 企 業 が 短 期 雇 用 、Z型 企 業 が 長 期 雇 用 の 雇 用形 態 を とって お り、 キ ャ リア 形 成 に 関 して は 、 日本 企 業 お よびZ型 企 業 が 広 い の に 対 し、 ア メ リカ 企 業 は 狭 い 事 が わ か った 。 指 揮 系 統 は 日本 企 業 お よびZ型 企 業 が 暗 黙 的 で 非 公 式 で あ るの に 対 し、 ア メ リ カ企 業 は 明示 的 で 公 式 的 、 そ して 意 思 決 定 に関 して は 、 日本 企 業 お よびZ型 企 業 が 集 団 化 とコ
ンセ ンサ ス を 重 視 す るの に 対 し、 ア メ リカ 企 業 は 組 織 の トッ プに よ って 意 思 決 定 が 成 され て い る事 が わ か った 。 しか し、Z型 理 論 の 問 題 点 は 普 遍 的 に有 効 な 組 織 文 化 を 追 求 した 事 で あ り、 そ の後 、 状 況 に 応 じて 有 効 な 組 織 文 化 を 探 ろ う とす る条 件 適 合 理 論 が 有 力 な アプ ロ ーチ に な った 。Z型 理 論 が 発 表 され た の が80年 代 の 初 め で あ るが 、90年 代 以 降 に 急 増 した 企 業 活 動 の ボ ー ダ ー レス 化 は そ の 理 論 の 普 遍 的 な 有 効 性 を 難 し くして い る。 人 的 資 源 管 理 施 策 に関 して も、 現 地 に 適 応 した 施 策 が 策 定 、 実 施 され る必 要 が あ る。 例 えば 、 従 業 員 に 対 す る動 機 付 け に は 、 南 米 で は 家 族 を 大 変 重 視 す るが ゆ えに 、 金 銭 的 な 報 酬 よ りも長 期 休 暇 の 方 が 重 視 され るの に 対 し、 北 米 で は 金 銭 的 な イ ンセ ンテ ィブの 方 が 仕 事 へ の 動 機 付 け と して 作 用 す る(李 、1998)。 李 は 国 際 的 マ ネ ジ メ ン トを 成 功 させ るに は 、 先 入 観 を 持 た ず に複 数 的 か つ 多 元 的 な 視 点 に 立 って物 事 を 観 察 す る能 力 、 更 に は 異 な る社 会 ・文 化 の 中 に 固 有 の 理 論 を 探 し求 め る努 力 な どが 必 要 で あ る と述 べ て い る。 4.労 働 者 の 技 能 形 成 と組 織 行 動 との 関係 第2節 で も述 べ た よ うに、 小 池 は技 能 を 向 上 させ る要 件(お よび有 利 な条 件)と して 、 第1 に 学 校 教 育 が きち ん と整 備 され て い る事 、 第2に 労働 者 の 離 職 率 が 低 い 事 、 第3に 企 業 規模 が 大 きい 事 、 第4に 企 業 の 操 業年 数 が 長 い 事 を 挙 げ た 。 また 、松 本(2003)は 技 能形 成 の別 の 条 件 として 、 組 織 学 習 の 重 要 性 を 指 摘 した 。 更 に、 周 佐(1998)も 労働 者 の 技 能 水 準 を 向 上 させ るた めの 要 因 と して 、 労働 者 の 離職 率 の 低 さ と共 に、管 理 部 門 と生 産 部 門 との 問の コ ミ ュニケ ー シ ョンの 円滑 化 を 指 摘 して い る。 第4節 で は 、 これ ら技 能 形 成 の 要 件 が 第3節 で 述 べ た組 織 行 動 の 各要 素 と どの よ うに 関 係 して い るか を 検 討 す る。 (D 技 能 形 成 と個 人 レベ ル との関 係 技 能 形 成 の た め の 要 件 で あ る労働 者 の 定 着 率 と、 職 務 満 足 が 正 の 相 関 関 係 に あ る事 を 実 証 し た 研 究 は 多 い 。 労働 者 が 仕 事 に 満 足 して い れ ば 、 彼 らの 定 着 率 は 上 が り、 そ の 結 果 、 技 能形 成 の 機 会 は 増 え る事 が 推 察 され る。 しか し、Carsten・Spector(1987)も 指 摘 して い る よ うに 、 労 働 者 の 定 着 率 が 単 に 職 務 満 足 に よ って 説 明 され る もの で は な く、 職 務 満 足 以 外 の 労働 市 場 の 状 況 とい った 要 素 に も影 響 を 受 け る。 す な わ ち 、 労働 市 場 が 逼 迫 して 売 り手 市 場 で あ る場 合 、 定 着 率 と職 務 満 足 の 正 の 相 関 関 係 は 強 ま るが 、 逆 に、 失 業 率 が 高 い 買 い 手 市 場 で は 、 労働 者 は 転 職 が 難 しい と知 覚 す る事 か ら、 両 者 の 関 係 は 必 ず し も強 い 正 の 関 係 に は な らな い 。 す な わ ち 、 職 務 満 足 が 低 くて も、 労働 者 は 組 織 に留 ま ら ざ るを 得 な い とい う 「消極 的 な 定 着 率 の 高 さ」 が 起 き る。 この よ うな 状 況 で は 、 労働 者 の 技 能 習 得 の 意 欲 が 低 下 し、 高 い 水 準 の 技 能形 成 が 期 待
で き な い恐 れ が あ る。 実 際 に この よ うな事 例 は 、 内 田(2005(b))に よ るバ ン グ ラデ シ ュ人 労 働 者 を 対 象 と した 意 識 調 査 か ら も確 認 され て い る。 また 、 モ チ ベ ー シ ョン と定 着 率 の 関 係 も普 遍 的 に説 明 す る事 は 困 難 で あ る。 な ぜ な ら、 想 定 す る人 間 の行 動 モ デ ル が 生 産 立 地 に よ って 異 な って くるか ら で あ る 。Herzbergが 指 摘 した よ うに 、 達 成 、 責 任 、 承 認 な どの 人 間 の 高 次 の 欲 求 を 満 た す 仕 事 へ の 積極 的 な 動機 付 け 要 因 は 確 か に 定 着 率 を 高 め る と共 に 、 労働 者 は 職 務 拡 大 や 職 務 充 実 を 通 じて 高 い 水 準 の 技 能 を 習 得 す る 可 能 性 を高 め る。 これ は 、McreGregorがY理 論 で 述 べ た 高 次 の 成 長 欲 求 を持 つ 人 間 の行 動 モ デ ル を 想 定 して い る事 に 他 な らな い 。 しか し、Y理 論 の 行 動 モ デ ル は 低 次 の 生 存 欲 求 が 充 足 さ れ て い る事 を 前 提 条 件 に して い る。 そ れ ゆ え、 生 産 立 地 が 開 発 途 上 国 、 特 に経 済 発 展 の 水 準 が 初 期 の 後 発 開 発 途 上 国 に あ る場 合 、 給 与 水 準 とい った 生 存 の 基 本 的 要 件 が 十 分 に 満 た され て い な い 人間 の 行 動 モ デ ル を 想 定 す る必 要 が あ り、Y理 論 の 有 効 性 が 疑 わ れ る。 な ぜ な ら、 定 着 率 を 高 め る動 因 が 自己 実 現 の 欲 求 の 充 足 よ りも寧 ろ、 金 銭 的 な 欲 求 の 充 足 に 関 わ って くるか らで あ る。 (2)技 能 形 成 と集 団 レベ ル との関 係 労 働 者 が 技 能 形 成 を 図 るに は 、 個 人 の 努 力 や 意 欲 は 不 可 欠 で あ る。 また 、 高 い 水 準 の 技 能 を 効 率 的 に 習 得 す るに は 組 織 の 成 員 内の コ ミュニ ケ ーシ ョンを 強 化 す る こ とが 重 要 で あ る。 管理 者 は 作 業 指 示 書 を 作 成 す る事 で 、 労働 者 に 作 業 に 必 要 な ノ ウハ ウや 作 業 の 留 意 す べ き点 な どに 関 す る情 報 を 与 えて い る。 一 方 で 、 労働 者 は 作 業 報 告 書 の 提 出 を 通 じて 、 管 理 者 へ 作 業 の 進 捗 状 況 や 現 場 の 問 題 点 な どに 関 す る情 報 を知 らせ る事 が で き る。 この よ うな 文 書 を 通 じて の 上 向 き ・下 向 きの縦 方 向の コ ミュニ ケ ー シ ョンに よ り、 労働 者 は 職 務 に 必 要 な 技 能 を 習 得 して 、 生 産 性 を 向上 させ る こ とが で き る。 園 田(2001)も 日本 の 高 い 生 産 技 術 の 要 因 として 、 現 場 か ら の 情 報 を 管 理 部 門 が 絶 え間 な く吸 い 上 げ て い る こ とを 挙 げ て い る。 園 田は 現 場 か らの 情報 が 吸 い 上 げ られ な くな る と、 新 しい 知 の 創 造 も生 まれ な くな り、 現 場 労働 者 の 労働 意 欲 も低 下 す る と指 摘 して い る。 しか し、 急 を 要 す る よ うな 事 態 が 生 産 現 場 で 起 きた 場 合 、縦 方 向 の コ ミュニ ケ ー シ ョンで は 対 処 し きれ な い 場 合 もあ る。 また 、 生 産 現 場 にお い て は 非 定 常 的 な 問 題 が 頻 繁 に 起 こ るた め 、 そ の 問 題 の 解 決 方 法 を 全 て 文 書 化 す る こ とは 不 可 能 で あ る。 こ こに 、 同 じ グル ー プの 成 員 問 に よ る横 方 向の コ ミュニ ケ ー シ ョンを 通 じて 問 題 を 適 切 、 且 つ 早 急 に 対 応 す る必 要 が 出 て くる。 特 に、 「仕 事 の 深 さ」 に要 求 され る熟 練 技 能 は個 人 の 内 に 内面 化 され 、 文 書 化(形 式 知 化)で きな い もの(暗 黙知)が 多 く、 技 能 を 習 得 し よ う とす る者 は 、 傍 で働 い て い る先輩 や 同 僚 の 技 を 見 な が ら、 或 い は 彼 等 に 教 えて も らい な が ら習 得 せ ざ るを 得 な い 。 この よ うに 、 高 い 水 準 の 技 能 を 習 得 す るに は 横 方 向で の コ ミュニ ケ ーシ ョンの 強 化 が 重 要 に な って くる。
横 方 向の コ ミュニ ケ ー シ ョンは 自然 に 行 わ れ るわ け で は な い 。 横 方 向 の コ ミュニ ケ ーシ ョン の 円滑 化 を 図 るに は 、 成 員 の 協 力 的 な 人 間 関 係 の 構 築 と同 時 に 、 有 益 な 情報 の 出 し手 が 昇 進 や 昇 給 に よ って 評 価 され る よ うな 誘 因 が 組 織 の 制 度 の 中 に組 み 込 まれ て い な け れ ば な らな い 。 情 報 の 出 し手 は 他 の 成 員 に 技 能 に 関 わ る情 報 を 提 供 す る事 で 、 自分 の 権 限 や 金 銭 的報 酬 に 関 す る 優 位 性 が 脅 か され る と考 え る。 この こ とが コ ミュニ ケ ーシ ョンに よ る情報 の 共 有 化 を 妨 げ 、 成 員 問 の 相 互 作 用 を 通 じて の 教 育 効 果 を 弱 め る こ とにな る。 個 人 の 技 能 や 知 識 が組 織 で 共 有 化 さ れ るた め に は 、 個 人 の 利 益 と組 織 の 利 益 が 一 致 す る こ とが 必 要 で あ り、組 織 の 成 員 の協 働 関 係 を 促 進 す る よ うな 人的 資 源 管 理 制 度 が 確 立 され る必 要 が あ る。 次 に 、 リー ダー シ ップ との 関 係 に注 目 して みれ ば 、 労働 者 の 技 能形 成 の た め には 強 い リー ダ ー シ ップが 必 要 で あ る。 労働 者 の 人 材 開 発 を 労働 者 自 らの 負担 で 行 う事 に は 限 界 が あ り、 高 い 水 準 の 技 能 を 習 得 で き るか ど うか は 組 織 の 上 層 部(経 営 者 な ど)お よび 現 場 の リ ー ダ ー(職 長 な ど)の 支 援 や 資 質 に 依 拠 して い る。 オ ハ イオ 学 派 の リー ダ ーシ ッ プの概 念 で あ る 「構 造 作 り」 と 「配 慮 」、 ミシ ガ ン学 派 の リー ダ ー シ ップ の概 念 で あ る 「仕 事 志 向型 」 と 「従 業 員 志 向型 」 とい った リー ダ ー シ ップの 概 念 を 、 リー ダ ーが 組 織 の 置 か れ て い る状 況 に 合 わ せ て 上 手 く使 い 分 け る必 要 が あ る と考 え られ る。 な ぜ な ら、 生 産 立 地 、 労働 者 の 性別 比 率 、 企 業 の 規模 、 労 働 者 に 求 め られ て い る技 能 水 準 、 企 業 業 績 、 リー ダ ー と部 下 との 信 頼 関 係 な ど、組 織 の 置 か れ て い る状 況 に よ って 望 ま しい リー ダ ー シ ッ プの 概 念 が 変 わ って くるか らで あ る。 {3)技 能 形 成 と組 織 レベ ル との 関 係 第3節 で も述 べ た よ うに 、 組 織 構 造 の 類 型 の 一 つ で あ る官 僚 構造 を とって い る組 織 の 多 くは 規 模 も大 き く、 操 業 年 数 も長 い 。 小 池 は 、倒 産 の 可 能 性 の 低 い 安 定 した 市 場 を 持 つ 大 企 業 の 方 が 技 能 形 成 の 環 境 に お い て は 有 利 で あ る と指 摘 した 。90年 代 以 降 の グ ロ ーバ ル 化 に よ る大 競 争 時 代 に 入 って 、 規 模 の 大 きな 企 業 が破 綻 しな い とい う事 は 今 や 幻 想 に過 ぎな い が 、 中 小 企 業 と 比 較 す るな らば 、 内部 留保 の 大 き さ、 人 材 開 発 プ ロ グ ラム の 充 実 、 給 与 水 準 の 高 さ、 福 利厚 生 の 充 実 、 人 的 資 源 管 理 制 度 の 整 備 とい った 要 素 が 労働 者 の 技 能形 成 に とって 有 利 に働 く と考 え られ る。 また 、 規 模 の 大 き さや 操 業年 数 の 長 さは 労働 者 に 長 い キ ャ リア パ ス を 提 供 で き る可 能 性 を 高 め る。 長 い キ ャ リア パ ス は 、 小 池 が 述 べ た 「縦 の 広 が り」 と関 係 して お り、 技 能形 成 に とって は 重 要 な 要 素 で あ る。 これ らの 事 を 考 慮 す れ ば 、 規 模 の 大 きな 企 業 に 多 く見 られ る官 僚構 造 は 比較 的 規模 の 小 さな 企 業 の 組 織 形 態 で あ る単 純 構 造 よ りも、 成 員 の 技 能 形 成 にお い て は 有 利 で あ る と推 察 され る。 但 し、 官 僚 構 造 の 技 能 形 成 に とって の1つ の 問 題 点 は 、 官 僚 構造 を とって い る組 織 が 作 業 手 順 の 公 式 化 や 組 織 統 制 の 集 権 化 を 強 調 し過 ぎ る と、 生 産 現 場 の 労働 者 が迅 速 で 柔 軟 な 意 思 決 定 が 難 し くな る事 で あ る。 これ は 、McreGregorがY理 論 で 述 べ た 高 次 の 成 長 欲 求 を持 つ人 間 の 行
動 モ デ ル が 想 定 され な い 事 を 意 味 し、 労働 者 の 職 務 拡 大 や 職 務 充 実 を 通 じて 高 い 水 準 の 技 能 を 習 得 す る可 能 性 は 低 くな る。 この 問 題 を 打 開 す るた め に は 、 官 僚 構造 の 欠 点 を 補 完 す る形 で 少 人数 の チ ーム を 編 成 す るチ ーム 構 造 な どの 導 入 も考 え る必 要 が あ る。 ま た 、 技 能 形 成 と組 織 構 造 との 関 係 を 見 る際 に も う一 つ 留 意 す べ き点 は 、 生産 シ ス テ ム で あ る。Woodward(1965)は 生 産 シス テ ム の 型 を、 個 別 受 注 生 産 、 大 量 生 産 、 装 置 生産 に分 け て 、 そ の 生 産 シ ス テ ム と組 織 構 造 の 有 効 性 を 分 析 した。Woodwardに よる と、 個 別 生 産 と装 置 生 産 で は 専 門 化 や 公 式 化 の 程 度 が 低 く、 分 権 的 な 組 織 形 態 が 有 効 で あ る とした の に 対 し、 大 量 生 産 で は 専 門 化 や 公 式 化 の 程 度 が 高 く、 集 権 的 な 組 織 の 方 が 有 効 で あ る と主 張 した 。 大 量 生 産 に お い て は 労働 者 の 作 業 工 程 が あ らか じめ 標 準 化 され て い る場 合 が 多 く、 労働 者 に は 概 して 高 い 水 準 の 技 能 を 要 求 され る場 合 が 少 な い 。 一 方 で 、 個 別 受 注 生産 や 装 置 生産 で は 労 働 者 の 判 断 力 、 設 備 の トラ ブル の 処 理 能 力 、 熟 練 技 能 が 生 産 効 率 を 決 定 す る鍵 とな る。 小 池 が 技 能 形 成 方 式 の 「横 の 広 が り」 や 「仕 事 の 深 さ」 の概 念 を 説 明 す るた め に 事 例 で 用 い た 業種 の 生 産 シス テ ム も装 置 生 産 の 型 で あ る。 この よ うに 、 個 別 受 注 生 産 と装 置 生産 で は様 々な 予 測 で きな い 事 態 に 対 応 に 、 迅 速 且 つ 柔 軟 に対 応 で き る組 織 構 造 の 構 築 が 求 め られ る こ とか ら、 官 僚 構 造 を 持 った 組 織 で は 上 手 く対 応 で きな い 場 合 も 出て くる。 次 に 、 組 織 文 化 との 関 係 に 注 目して み る。 第3節 で 述 べ た よ うに 、 理 念 や 価 値 観 が 成 員 に 広 く浸 透 して い る強 い 組 織 文 化 を 持 った 組 織 は 成 員 の 忠 誠 心 や 結 束 が 強 ま り、 概 して 転 職 率 が 低 くな る(Robbins、1997)。 強 い組 織 文 化 を持 った 組 織 を 作 るた め に は 、 職 場 が 成 員 の 多様 な 欲 求 を 充 足 させ る場 で あ る共 同 体 志 向 で あ る こ と、 個 人 の 利 益 よ りも集 団 の 利 益 が優 先 され て い る こ と、 能 力 、 階 級 、 学 歴 に よ る報 酬 や 昇 進 の 差 別 化 を 比 較 的 小 さ くし、 長 期 的 雇 用 関 係 を 前 提 とした 平 等 主 義 で あ る こ と、 現 場 労働 者 の 情 報 の 共 有 と権 限 が 強 化 され て い る事 な どが 挙 げ られ る。 そ の 理 念 を 体 現 す る人 的 資 源 管 理 制 度 として 、 技 能 を 習 得 す るの に 有 利 な 新卒 採 用 制 度 や 内部 昇 進 制 度 、 潜 在 能 力 、 協 調 性 、 責 任 感 、 忠 誠 心 等 の 態 度 的 側 面 を 重 視 した 全 人 格 的 評 価 制 度 、 職 務 給 よ りも職 能 給 を 重 視 した 賃 金 制 度 、 弾 力 的 な 職 務 行 動 を 助 長 す るの に 資 す る 長 期 の 雇 用 保 障 制 度 な どが 挙 げ られ る。 これ らの理 念 や 制 度 は ま さ し く、Ouchiのz型 理 論 で 示 され た 日本 企 業 や ア メ リカのZ型 企 業 の 文 化 的 価 値 観 を 体 現 して い る5)。欧 米 企 業 は80年 代 まで 、 日本 企 業 の 国 際 競 争 力 の 源 泉 とも言 うべ き組 織 文 化 を 学 ん で 吸 収 す る試 み が 盛 ん に 行 わ れ た 。 しか し、90年 代 に 入 って の 日本 の バ ブル 経 済 の 崩 壊 と共 に 、 新 興 国 や 旧社 会 主 義 国 を 巻 き込 ん だ グ ロ ーバ ル 化 経 済 が 急 速 に 進 展 す る中 、 日本 企 業 は 競 争 力維 持 の た め に 生産 拠 点 を 国 内 か ら海 外 、 特 に 開 発 途 上 国 へ と移 転 せ ざ るを 得 な くな り、 本 国 で 培 って きた 企 業 の 固 有 文 化 も変 化 して い る。 企 業 は 現 地 人従 業 員 の 価 値 観 や 文 化 に適 合 した組 織 文 化 を 新 た に創 造 す る こ とを 迫 られ て お り、 そ の 成 否 そ の もの が 企 業 の 競 争 力 を 左 右 す る。 す な わ ち 、 労働 者 の 忠 誠 心 や 結
東 力 は 強 い 組 織 文 化 を 作 る うえで 、 そ して 高 い 水 準 の 技 能形 成 を 図 る上 で 重 要 な 事 に は 変 わ り は な い が 、 そ れ を 可 能 に す る人 的 資 源 管 施 策 の メ ニ ュ ーは 現 地 の 文 化 的 価 値 観 を 考 慮 した 多 様 な もの に な って い る。 5.結 語 本 総 説 で は 、 労働 者(ブ ル ーカ ラ ー)の 技 能 形 成 の 内 実 を 説 明 した 上 で 、組 織 行 動 の 分 析 視 点 で あ る個 人、 集 団 、 組 織 が 技 能 形 成 と どの よ うな 関 係 にあ るか を 考 察 した 。 本 研 究 で 明 らか に され た 第1の 点 は 、 個 人 的 視 点 で あ る職 務 満 足 の 高 さや 、 高 次 の 欲 求 に よ って 引 ぎ出 され る モ チ ベ ー シ ョンは 技 能 形 成 の 一 つ の 要 件 で あ る労働 者 の 定 着 率 を 必 ず しも上 げ る こ とに つ な が らな い こ とで あ る。 定 着 率 は 単 に 職 務 満 足 に よ って 影 響 を 受 け るの で は な く、 労働 市 場 とい っ た 職 務 満 足 以 外 の 要 素 も大 き く関 係 して い る。 ま た 、 給 与 水 準 とい った 低 次 の 欲 求 に 起 因 す る モ チ ベ ー シ ョンで あ って も、 生 存 欲 求 が 充 足 され て い な い 開 発 途 上 国 の 労働 者 に お い て は 、 定 着 率 を 高 め る誘 因 に な って い る。 第2に 、 集 団 的 視 点 で あ る コ ミュニ ケ ーシ ョン、特 に 横 方 向 の コ ミュニ ケ ー シ ョンは 組 織 成 員 の 技 能 形 成 に とって は 重 要 で あ る。 但 し、 横 方 向 の コ ミュニ ケ ー シ ョンの 円滑 化 は 自然 に 起 き る もの で は な く、 成 員 の 良 好 な 人 間 関 係 を構 築 す る よ うな 人 的 資 源 管 理 制 度 が 重 要 で あ る。 第3に 、 規模 の 大 きな 企 業 は 労働 者 に 長 い キ ャ リア パ ス を 提 供 で き る可 能 性 を 高 め る こ とか ら、 規模 の 大 きな 企 業 に 多 く見 られ る官 僚構 造 は 比較 的 規模 の 小 さな 企 業 の 組 織 形 態 で あ る単 純 構 造 よ りも、 技 能 形 成 にお い て は 有 利 で あ る と推 察 され る。 但 し、 官 僚 構 造 を とって い る組 織 が 作 業 手 順 の 公 式 化 や組 織 統 制 の 集 権 化 を 強 調 し過 ぎ る と、 生 産 現 場 の 労働 者 が 迅 速 で 柔 軟 な 意 思 決 定 を す る事 が 難 し くな るの で 、 労働 者 の 職 務 拡 大 や 職 務 充 実 を 通 じて 高 い 水 準 の 技 能 を 習 得 す る可 能 性 を 低 め る恐 れ が あ る。 この よ うに 、 労働 者 の 技 能 形 成 と有 効 な 組 織 行 動 を 普 遍 的 に 関 係 付 け る事 は 困 難 で あ る。 生 産 立 地 、 労働 者 の 教 育 水 準 や 所 得 水 準 、 企 業 規模 や 操 業 年 数 、 生産 シス テ ム の形 態 、 労働 者 の 宗 教 や 文 化 的 背 景 、 業 種 、 企 業 業 績 な どの 条 件 の違 い に よ り、 技 能形 成 に とって 有 効 な組 織 行 動 の 形 態 が 異 な って くる。 今 後 の 残 され た 研 究 課 題 は 、 これ ら企 業 を 取 り巻 く条 件 の違 い が 技 能 形 成 や 組 織 行 動 に 影 響 を 与 え る とい う想 定 の 下 、 技 能 形 成 に とって 有 効 な組 織 行 動 とは ど う い うもの で あ るか を 考 察 す る こ とで あ る。 そ の た め に は 、 企 業 の 事 例 研 究 を 積 み 重 ね て い くこ と共 に 、 比 較 分 析 の 視 点 が 求 め られ て い る。
注 1)但 し、 技 能 形 成 を定 量 化 し、 そ の説 明要 因 を 明 らか に し よ う とした 研 究 も幾 つ か 見 られ る。 例 え ば 、 大 田(2001)や 富 田(2001)な どの 研 究 が 挙 げ られ る 2)例 え ば 、 水 野(1989)、 山 本(1993)、 内 田(2005(a)、2005(b))な どの研 究 が 挙 げ られ る 。 3)大 澤 ・二 村(1982)は 、 企 業 組 織 で働 く個 人 の効 用(=個 人 の 満 足 度)が 仕 事 で犠 牲 に した機 会費 用 を 上 回 れ ば 、 個 人 は組 織 に 居 続 け る し、 マ イ ナ ス な らば組 織 を 脱 退 す る と述 べ た 。 4)川 喜 多(1990(b))も 、 職 務 満 足 と労 働 者 の 作 業 能 率 との正 の相 関 関係 に懐 疑 的 な考 え方 を持 って い る 。 彼 は 達 成 動 機 が 高 い こ と と、 満 足 度 が 高 い とい う こ とは 同 義 で は な い と した上 で、 仕 事 へ の 満 足 感 が 低 い と離 職 や 欠 勤 が 増 え るか も しれ な い が 、 仕 事 の 満 足 が あ れ ば 業 績 が 上 が る とは言 え な い と述 べ た 。 ま た 、 労 働 者 の 満 足 度 が 低 い ま ま 什 事 を 続 け て も、 能 率 が 下 が る とは 言 い 切 れ な い と主 張 した 。 5)市 村(1992)や 白木(1995)は 日本 企 業 の 人 的資 源 管 理 の 理 念 と、 そ れ を体 現 す る施 策 を ま とめ て い る。 外 国語引用文献
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