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学 位 の 種 類 博士 (医学) 報 告 番 号 乙第1903号 学 位 記 番 号 論第1665号 氏 名 鈴木 一孝 授 与 年 月 日 令和 2 年 3 月 25 日 学位論文の題名
Influence of percutaneous occlusion of atrial septal defect on left atrial function evaluated using 2D speckle tracking echocardiography (経皮的心房中隔欠損閉鎖術による左房機能への影響-2D speckle tracking echo を用いた評価-)
International Heart Journal 2020 Jan 20 Epub ahead of print
論文審査担当者 主査: 大手 信之 副査: 三島 晃, 芝本 雄太
論 文 内 容 の 要 旨
【背景】近年、心房中隔欠損(Atrial septum defect:ASD)に対するカテーテル治療は手術に代わ り広く普及されているが、カテーテル治療後の心房機能に関しては報告が少なく不明確な部分が 多い。心房粗動や肺高血圧等の疾患において局所心房機能を評価する目的でスペックルトラッキ ングエコー(2DE-ST)を用いたストレイン解析に関する報告があり、ASD治療後の心房機能評価にお いても同様に良い指標となる可能性がある。
【目的】ASD手術群(ASD-S群)とASDカテーテル治療群(ASD-D群)においてASD治療後の心房機能につ いて2DE-STを用いてストレイン値について比較検討すること。またASD device sizeによって心房 機能に差異が生じるか検証すること。
【方法】ASDに対し手術を受けた12例(ASD-S群)、カテーテル治療を受けた31例(ASD-D群)及び川 崎病患者13例をコントロール群とし、3群間において治療前および退院直前の心機能(LVEF, LVFS, LV-TEI, MVF, PVF, E/E’, 左房ストレイン)に関して、Kruskal-Wallis testsを用いて比較検討 した。局所左房ストレイン(longitudinal strain:LS)は、reservoir(LSs)、conduit(LSe)、booster pump(LSa)機能に分類して評価した。さらにASD-D群において、device size/BSAと左房機能の関係 について、Spearman’s rank correlation testを用いて相関係数を求めた。
【結果】治療前、3群間において、LVEF, LVFS, LV-TEI, MVF, PVF, E/E’, 左房ストレイン値に 有意差を認めなかった。ASD-S群では治療前後で左房ストレイン値の有意な低下は認めなかったが、 ASD-D群におけるLSs、LSe、LSaは、(治療後) 28%、21.7%、5.2%であり、(治療前) 43%、32.3%、 6%及び(コントロール群) 38%、30.1%、8.3%と比較して、いずれも有意な低下を認めた。また、ASD device size/BSAとLSs、LSe間で、それぞれρ=-0.52及びρ=-0.58と負の相関関係を認めた。 【考察】2DE-STによるストレイン解析は局所心房機能を評価するにあたり、従来の組織ドプラ法、 肺静脈血流パターン等の検査手法と比較して簡便かつ正確な指標となり得る。カテーテル治療後 における各ストレイン(LSs、LSe、LSa)の低下に関して下記の理由が考えられた。左房reservoir 機能低下の原因としては、device留置による左房compliance低下、左房conduit機能低下の原因と して、拡張早期左室への流入血流がdeviceにより阻害される可能性、左房booster pump機能低下 の原因に関しては、deviceによる直接的な心房収縮障害が影響していると考えられた。心房機能 低下は将来的な心房性不整脈のリスクを増加させる主旨の論文報告があり、ASDカテーテル治療後、 長期的な経過観察が望まれる。またASD device sizeが大きいほど、左房reservoir、conduit機能 が低下する傾向にあるため、大きなASD deviseを留置する場合には遠隔期左房機能に留意する必 要がある。
【結語】ASD device留置により、治療後左房reservoir、conduit、booster pump機能が低下する 可能性が示唆された。ASD device sizeと左房ストレイン値には負の相関関係があり長期的に留意 する必要がある。
論文審査の結果の要旨
【背景】近年、心房中隔欠損(Atrial septum defect: ASD)に対するカテーテル治療は手術に代わり広 く普及されているが、カテーテル治療後の心房機能に関しては報告が少なく不明確な部分が多い。心 房粗動や肺高血圧等の疾患において局所心房機能を評価する目的でスペックルトラッキングエコー (2DE-ST)を用いたストレイン解析に関する報告があり、ASD治療後の心房機能評価においても同様 に良い指標となる可能性がある。
【目的】ASD手術群(ASD-S群)とASDカテーテル治療群(ASD-D群)においてASD治療後の心房機能に ついて2DE-STを用いてストレイン値について比較検討すること。またASD device sizeによって心房 機能に差異が生じるか検証すること。
【方法】ASDに対し手術を受けた12例(ASD-S群)、カテーテル治療を受けた31例(ASD-D群)及び川 崎病患者13例をコントロール群とし、3群間において治療前および退院直前の心機能(LVEF, LVFS, LV-TEI, MVF, PVF, E/E’, 左房ストレイン)に関して、Kruskal-Wallis testsを用いて比較検討した。 局所左房ストレイン(longitudinal strain: LS)は、reservoir (LSs)、conduit (LSe)、booster pump (LSa)機能に分類して評価した。さらにASD-D群において、device size/BSAと左房機能の関係につ いて、Spearman’s rank correlation testを用いて相関係数を求めた。
【結果】治療前、3群間において、LVEF, LVFS, LV-TEI, MVF, PVF, E/E’, 左房ストレイン値に有意 差を認めなかった。ASD-S群では治療前後で左房ストレイン値の有意な低下は認めなかったが、 ASD-D群におけるLSs、LSe、LSaは、(治療後) 28%、21.7%、5.2%であり、(治療前) 43%、32.3%、 6%及び(コントロール群) 38%、30.1%、8.3%と比較して、いずれも有意な低下を認めた。また、 ASD device size/BSAとLSs、LSe間で、それぞれr=-0.52及びr=-0.58と負の相関関係を認めた。 【考察】2DE-STによるストレイン解析は局所心房機能を評価するにあたり、従来の組織ドプラ法、 肺静脈血流パターン等の検査手法と比較して簡便かつ正確な指標となり得る。カテーテル治療後にお ける各ストレイン(LSs、LSe、LSa)の低下に関して下記の理由が考えられた。左房reservoir機能低下 の原因としては、device留置による左房compliance低下、左房conduit機能低下の原因として、拡張 早期左室への流入血流がdeviceにより阻害される可能性、左房booster pump機能低下の原因に関し ては、deviceによる直接的な心房収縮障害が影響していると考えられた。心房機能低下は将来的な心 房性不整脈のリスクを増加させる主旨の論文報告があり、ASDカテーテル治療後、⾧期的な経過観察 が望まれる。またASD device sizeが大きいほど、左房reservoir、conduit機能が低下する傾向にある ため、大きなASD deviseを留置する場合には遠隔期左房機能に留意する必要がある。【結語】ASD device留置により、治療後左房reservoir、conduit、booster pump機能が低下する可能性が示唆され た。ASD device sizeと左房ストレイン値には負の相関関係があり⾧期的に留意する必要がある。 【学位審査の内容】主査の大手教授からは、device留置後における心房中隔自由壁側への影響、治療 後フォロー間隔、LA volume評価の有無、PV還流量の変化による左房前負荷の影響に関する質問等、 血行動態、心機能を中心に6項目の質問がなされた。第一副査の三島教授からは、中隔側心房機能評
価や心耳の影響、コントロール群を含め3群間で比較検討する意義、ASD device size比較の際にBSA で除した理由や治療後の心房機能を評価するタイミング等、研究デザインを含め、7項目の質問がな された。第二副査の芝本教授からは、合併症、適応等を含めた一般的なdevice治療に関する質問、心 房機能評価におけるスペックルトラッキング法の位置付け、また今回の結果を踏まえASD治療戦略に 関する質問等、9項目の質問がなされた。いずれに対しても概ね満足のいく回答が得られ、学位論文 の主旨を十分理解していると判断した。本研究は、新手法である2DE-STを用いたストレイン解析に より、ASD治療後の左房機能に関して詳細に検討した論文であり、臨床的に意義があると考えられ る。以上をもって本論文の筆頭著者には、博士(医学)の称号を与えるに相応しいと判断した。 論文審査担当者 主査 大手 信之 副査 三島 晃 芝本 雄太