防災対策活動とスポーツイベントのコラボレーションと今後の課題
―自然災害に強い街づくりをめざして―
橋本剛幸
Collaboration of disaster prevention measures activities and sports events and future tasks.
− Aiming to create a city that is resistant to natural disasters. −
Yoshiyuki Hashimoto
1.はじめに 2016 年、著者は、近畿大学生物理工学部に 「近大スポーツフェスティバル実行委員会」を学 生とともに立ち上げ、和歌山県岩出市において、 『自然災害に強い街づくりをめざして』をテーマ に、3 回のスポーツイベントを開催してきた(表 1参照)。これは、個人の体力を向上させ、地域 の人々とスポーツを楽しんで行うコミュニティ・ スポーツのめざす方向と、災害時における自助 (自分の命はまず自分で守ること)と共助(地域 の人々と協力をして避難すること)の観点でのめ ざす方向が一致しており、それらを融和させるこ とは、これからのまちづくりに重要であるという 考えから行ったものである。 また、もう一つのねらいとして大学や学生たち と地域の人々とのつながりがある。災害時、大学 が地域に対して何ができるのか、学生たちが地域 の人々と協力して避難生活を支えていけるのかと いうことも非常に重要なことであるが、起きる前 から地域の人々とのつながりを持っていること は、その力を何倍にもする原動力となりうるもの であろうと考える。学生を対象とした意識調査に おいても、付近の人々とのつながりが薄く、かか わりを持とうという意識も高くなく、そのうえ、 忙しさからか運動不足がちで、体力に対して自信 がない学生が少なくないことが明らかとなった (橋本、2016)。これは、地域の人同士でも同じこ とが表れており(橋本、2015)、地域に住む一人 一人が自らの健康や災害時の避難のために日頃か ら定期的に運動を行い、体力に自信が持てるよう に努めていくことがまず重要であり、その次に周 りの人々とつながりを持つようなスポーツ活動を 行い、スポーツの楽しさや仲間意識を共有し、そ の輪が広がっていくことが理想である。世代を超 えて多くの人々がいろいろなスポーツ活動やイベ ントに参加できる街づくりが重要であろう。それ らの観点から、まずスポーツイベントを開催し、 表1 スポーツフェスティバル 開催日 場所 一般 学生参加人数スタッフ合計 共催 備考 1.「ねごろスポーツフェスティバル」 平成 28 年8月 11 日(木)山の日 和歌山県岩出市立根来小学校 35名 4名 27名 66名 岩出市スポーツ推進委員会 2.「近大スポーツフェスティバル in 山崎北小」 平成 28 年12 月 11 日(日) 和歌山県岩出市立山崎北小学校 104名 名2 25名 131名 岩出市スポーツ推進委員会 テレビ、ラジオの取材 3.「第3回近大スポーツフェスティバル」 平成 29 年7月 16 日(日) 和歌山県岩出市民総合体育館 56名 名9 30名 95名 岩出市スポーツ推進委員会 体力テストを同時開催 近畿大学生物理工学部 〒 649-6493 和歌山県紀の川市西三谷 930General Education Division, Faculty of Biology-Oriented Science and Technology, Kindai University, 930 Nishimitani, Kinokawa City, Wakayama, Japan, 649-6493
学生と地域の人々の意識をスポーツや防災に向け ていくことをねらったものである(橋本、2017)。 地域の人々と大学とのつながりを作るスポーツイ ベント開催の試みは、福岡大学や早稲田大学、国 士舘大学など多くの大学で行われているが(注 1)、 防災への意識をテーマにし、岩出市スポーツ推進 委員会の共催に加え、岩出市教育委員会と岩出市 総務部危機管理課の協力も得ながら開催している 本スポーツイベントは他にはあまり見られない試 みである。実行委員会では、開催時期、開催場 所、実施種目などを検討し、3 回のスポーツイベ ントを行ってきたが、現在までのところ参加人数 が少なく、防災への意識やスポーツへの意識を高 めていくスポーツイベントとして満足のいく結果 は得られていない。 今後、さらに参加者の増加を目指し、また地域 の定着したスポーツイベントにしていくため、第 4回目の開催に向けて計画を進めているが、本研 究では、これまでの 3 回のスポーツイベントの実 施方法の変更が効果的であったかを明らかにする ため、参加者に対するアンケート調査やスタッフ の反省会などを細かく分析することにより検討 し、一般参加者の増加、一般参加者の年齢層拡大 に向けた課題を再検討することを目的とした。加 えて、防災への意識に向けた課題を明らかにする ことも目的とした。 写真1 募集用チラシ・ポスター 2.研究方法 これまでの3回のスポーツイベントにおいて、 受付の際、参加者にアンケート用紙を配布、閉会 式後に回収する方法により、無記名でイベント参 加の感想や防災の意識についてのアンケート調査 を行った(7.参考資料参照)。アンケートは「一 般参加者」と「学生参加者(スタッフも含む)」 とで「年齢」と「学年」、「このイベントを何で 知ったか」と「参加動機」という質問で一部内容 の異なるものを配布し、別々に回収を行った。ま た、スポーツイベントの実施に向けた実行委員会 およびそれに基づく準備行動、開催後のスタッフ による反省会については、すべての内容を音声と 映像による記録を行った。 本研究では、特にその中で一般参加者に対する アンケート結果に着目し、分析を行い、また実行 委員会の記録を分析し、これまでの 3 回のスポー ツイベントの実施方法の変更の効果も含め、一般 参加者の増加、一般参加者の年齢層拡大、さらに 防災への意識に向けた課題の検討を行った。 3.結果及び考察 ⑴ アンケート結果 一般参加者のアンケート回収率は、第1回ねご ろスポーツフェスティバル 60%(21 名 /35 名)、 第 2 回近大スポーツフェスティバル㏌山崎北小 54.8%(57 名 /104 名)、第 3 回近大スポーツフェ スティバル 57.1%(32 名 /56 名)であった。 ① 参加者の年齢構成、性別 図1 参加者における各年代の割合 参加者の年齢構成は図1のとおりである。第 2 回スポーツフェスティバル(以下、S.F とする) では、参加人数全体が最大になったが、10 歳未
満と 10 代の割合を加えると 63.1%になっており、 小学生の参加が増えたことを示している。また 第 1 回 S.F は逆に 40 代が 33.3%と最も多く、50 代 19%、60 代 14.3%となっている。第 3 回 S.F は 40 代 25%、10 代 21.9%、10 歳未満と 30 代が 18.8%とバランスよくなっているが、20 代が 0% であった。もう少し参加人数全体を増やし、年齢 構成もバランスよくするための方法を検討する必 要があるが、やはり募集の仕方にも問題があるよ うに考えられる。第 1 回、第 2 回 S.F では小学校 の体育館での開催であったため、その小学校の児 童全員にチラシを配ってもらうように学校へ依頼 し、校長の理解もあり、保護者とともに参加する 児童が多かった。第 1 回 S.F については、参加人 数が少なかったため、学童保育の児童やその指導 者にも参加を呼びかけたため、このような結果に なったと思われる。第 3 回 S.F については総合体 育館での開催であったため、市内の 6 小学校、2 中学校すべての児童生徒にチラシを配布するよう に教育委員会に依頼した。すべての印刷はこちら で行い、配るだけであったが、残念ながら一部の 学校では全員に配らず、教室に 1 枚を掲示する対 応の学校があった。ただ、小学校の開催でないた め広範囲からの参加があり、その保護者も多く参 加があった。また、岩出市スポーツ推進委員会が 行う体力テストも同時開催で行ったため、並行参 加もあり、年齢構成のややバランスよい結果に なったことが考えられる。 参加者を増やすための方策としてこれまでの開 催では、チラシとポスターによる広報を中心に行 い、ある程度の効果はあったと考えられる。た だ、小学校での開催では学校の全面的な協力でそ の学校の児童への広報はできたが、総合体育館 での開催では残念ながら協力が得られないこと もあった。できる限り学校の負担をなくすため に、印刷はこちらで行い、全生徒に配布をお願い したが、配っていただけない学校があった。著者 も長年、中学校、高等学校の教員を経験している ため、なかなか意図のわからないイベントのチラ シを単純に配るというのは難しいことは少し理解 できる。やはり各学校を回り、イベントの主旨や 重要性を説明する必要があったと考えられる。小 学生、中学生の参加は、災害が平日の昼に起こっ た場合を考えると意味がある。つまり、平日の昼 間はその地域にいるのは年配者と小学生、中学生 という状況になる。その時にお互いに協力して避 難することを考えると、そのことを常に意識して いることが必要になるからである。これらのこと を学校関係者にも十分な理解を図り、より多くの 参加が望まれる。特に中学生の参加がまだまだ少 なく、今後の課題であろう。中学校の場合、クラ ブ活動や定期考査など時期も考慮する必要はある が、先にも述べたように、平日の昼間に災害が発 生した場合、地域における中学生の役割は大き く、中学生が地域の人々とつながりを深くする必 要性をしっかり理解してもらうことが必要であろ う。校長・教頭などスクールリーダー(注 2)のリー ダーシップ(篠原ら、2006)のみならず、全ての 教員が理解することが望ましいと考える。災害時 において、学校の役割は非常に大きい。小学校、 中学校は地域とのつながりが重要で、避難場所に なるだけでなく、情報の発信や地域の人たちの活 動の拠点としての役割を果たす必要があるだろ う。和歌山県田辺市で平成 23 年に起きた台風 12 号災害で、本宮中学校は単なる避難所としての機 能のみにとどまらず、災害拠点として複合的に利 用されている。災害以前から学校と住民の距離を 縮めるべく、中学校と公民館との共同取り組みや 学校支援地域本部事業など、地域と学校をつなぐ 事業が積極的に行われてきた(五明ら、2012)。 地域での防災やスポーツなどの活動にとって、学 校を巻き込んでいくことは重要であると考えてい る。長期間、被災地の小学校が避難所として利用 され、運動環境の劣化による体力低下、抑うつ傾 向、肥満傾向が顕在化する児童についての報告 (征矢ら、2014)や、被災地の子供の体力・運動 能力について比較・検討を行い、運動不足の長期 化による児童の肥満傾向の高さ、体力・運動能力 の低下の指摘(中村、2014)が行われ、学校を避 難所として使用することの弊害も考えられるが、 やはり学校の役割は大きく、地域あってこその学 校であることに変わりはないだろう。
3 回のスポーツイベントの 20 代以上の一般参 加者の割合を図 2 に示した。40 代が最も多く、 次いで 30 代、50 代になっている。小学生を連れ てきている保護者が多いことが理由として考えら れるが、20 代の参加者が少ない結果となってい る。60 代が 14%、70 代が 1.8%の参加という結 果も併せて考えると、子供を連れて来たという理 由での参加が多く、一般成人のイベントへの積極 的な参加が少ないと考えられ、今後の課題であ る。その男女比を見ると、やはり小学生を連れて 来た保護者が多いこともあり女性が圧倒的に多い (図 3)。男性の参加を増やしていくことも大きな 課題である。学校の理解を得ながら小・中学生の 参加を増やし、また、年配者を含む一般成人の参 加も増やしていくことで、まち全体での意識を高 めることができ、人々のつながりの深い街づくり につながるであろう。 図2 20 代以上の一般参加者の割合 図3 参加者の性別の割合 ② スポーツイベントを何で知ったか このスポーツイベントを何で知ったかという問 いに対し、20 代以上の一般参加者の回答で多い のは、「学校で配られたチラシ」で、次いで「そ の他」となっている(図 4)。 図4 スポーツイベント開催の情報入手手段(%) 学校で配布されたチラシを子供たちが家に持ち帰 り、それを見て参加してくれた保護者が多いこと がよくわかる。チラシが直接手に渡ることはとて も重要な広報となっている。「その他」の回答で は具体的に記入をしてもらっているが、ほとんど が「友人からの誘い」である。中には具体的に 「SNS での誘い」と記入されているように、最近 では SNS を使った連絡で行動することも多く、 今後の参加者増加への大きなカギになるであろ う。一度参加していただいた人の評価は重要で、 その口コミがさらに参加者を増やしていくきっか けとなることが多い。参加者アンケートでは、イ ベントの趣旨の理解や楽しさが伝わっていること が表れており、そのことをまだ参加していない 人々に伝えることがまず必要である。そのために も、もっと情報発信する必要がある。第 3 回目の 開催に向けて、「近大スポーツフェスティバル」 のホームページを立ち上げ、問い合わせのメール 受付も開設をした(注 3)。今後、ホームページや問 い合わせメール受付の立ち上げだけでなく、その ほかの手段も検討し、参加者が少なくても継続し て開催していくことで、SNS やインターネット を利用したものも含め、口コミでの参加が増える ことを期待したい。実行委員会での反省において
も、一般だけでなく学生の参加者を増やすために も SNS の必要性が議論された。今後、一番大き な情報発信源として、SNS は不可欠なものであ ろう。 ③ スポーツイベントと人のつながりについて スポーツイベントが人のつながりに役立つか、 つながりを作るイベントについてあったほうがい いかという質問に対する回答が、図 5 および図 6 である。 図5 スポーツイベントが人のつながりに役立つか(%) 図6 つながりを作るイベントについて(%) 「スポーツイベントが人のつながりに役立つか」 について、「非常に役立つ」、「少しは役立つ」と 答えた、肯定的な回答は 100%であった。参加し てもらえればその意味を分かってもらえるという ことから考えると、とにかく継続していくことが 必要であろう。スポーツに限らず、つながりを作 るイベントについては、「たくさんあった方がい い」という意見が 91.2%であった。人のつながり が希薄になっていると言われてはいるが、岩出市 においても新興住宅地が増え、人口は増加してい るものの、人のつながりについて見ると、自治会 行事などが盛んであるとは言えない。今後世代交 代が進めば、「コミュニティの崩壊」が懸念され る状況ではあるが、婦人や若者の意見を反映した り、新旧住民の交流の機会を創造するなどして、 地域住民にコミュティを再評価させることや、既 に様々な面でコミュニティの柱の一つとなってい る町内会や自治会をうまく利用することが、今後 コミュニティ活動を推進させるためには重要だと 考えられる(栗原ら、2006)。「自治会行事で十 分」という意見が 5.3%あるが、やはり多くの参 加できる機会があり、気軽に人とのつながりが作 れることも必要であろう。自治会活動などを逆に 負担に感じる人も少なくない。災害に対する関心 や危機感の高さには、年齢の高さ、自治会活動な どの地域活動への参加の多さと被災経験を有する ことが関連していた。防災知識を有し防災の準備 行動ができていることには、年齢の高さ、地域活 動への参加の多さ及び防災イベントへの参加経験 が関連していた(廣中ら、2017)。興味のあるこ とに参加できる環境を作っていくことも街づくり の重要な課題であろう。 ⑵ スタッフ反省会 スタッフの反省会においては様々な意見が出た が、以下の項目にまとめられる。 〈良かった点〉 ▪ スタッフの意識の変化(スポーツを楽しむ⇒ 防災と人々のつながり) ▪開催場所の改善(小学校から総合体育館へ) ▪参加者の増加(リピーター、年配者の増加) ▪子供たちや年配者とのつながり ▪体力テストとの同時開催の効果 〈悪かった点〉 ▪参加人数の目標未達成 ▪ 災害にかかわる種目の検討(意識を高める効 果) ▪ 人数増加、場所の変更に伴う競技運営などス タッフの問題
写真2 KJ 法による反省会 ① スタッフの意識 スタッフの中には当初、スポーツイベントに 楽しく参加できれば良いという気軽な参加者が多 かったが、回を重ねていくごとに、このイベント の趣旨を理解し、重要性が徐々に浸透したと感じ られる。小学生と接する機会を得て、楽しくス ポーツをしていた学生たちが、年配の方々や小学 生の保護者に対して積極的に働きかけて、競技に 参加してもらおうとする姿は非常に印象的であっ た。このような学生たちの意識の変化も重要なこ とであり、本研究の狙いの一つでもある。開催場 所を小学校から総合体育館へ移し、並行して体力 テストを行うということで、戸惑いも多く、運営 面などで多少の失敗もあったが、体育館が大き く、多くの地域から参加してもらえること、ま た、体力テストを行うことでにぎやかさが増し、 お互いにいい影響が得られた。スポーツイベント を企画・開催するにあたり、様々な問題点が考え られるが、スタッフの意識の問題が重要である。 最初から高い意識で全員が望めるわけではないが、 少なくとも何人かの熱意のあるメンバーが必要で、 彼らの影響力が他のメンバーのやる気にかかわっ てくる。年度が替わるとメンバーも変わるので、 スタッフを育てていくことも重要なことである。 年度を超えて、3 回の開催でメンバー全体の意識 も少しずつ高くなり、新しく入ってきた 1 年生へ の指導も細部にわたるようになってきている。外 部での評価も高く、我々が企画するイベント以外 にも企画や運営の協力要請が増えてきている。こ れまでに行ったものは次の通りである(表 2)。 スポーツイベントの目的は、地域の人たちの体 力の向上とスポーツによって人のつながりを深め ていくことであるが、そのイベント以外でも地域 の人々と学生たちのつながりができることは重要 であり、今後もできる限り協力していきたいと考 えている。 写真3 シャトルランテスト 表2 参加協力要請 行事 開催日 内容 岩出市民運動会 2016. 10. 10(月 体育の日) 参加協力 ニュースポーツ体験会 2016. 11. 19(土) 岩出市スポーツ推進委員会主催参加協力 紀美野町立小川小学校 2017. 2. 13(月) キンボール講習会 岩出市民運動会 2017. 10. 9(月 体育の日) 参加協力及びドッヂビー講習会の開催依頼 ニュースポーツ体験会 2017. 11. 19(日) 岩出市スポーツ推進委員会主催参加協力 岩出市災害避難訓練 2017. 12. 3(日) 避難場所における避難のための体力と意識についての講習
② 開催場所 スタッフ反省会において、開催場所の変更はよ い点としてとらえている。 開催場所を小学校から 総合体育館にすることで、多くの参加者にも対応 ができ、岩出市全域からの参加も可能である。小 学校の体育館での開催であると、どうしても他の 校区の参加者が参加しにくいということも考えら れる。最終的には総合体育館での開催と小学校で の開催をどちらも定期的に行い、小学校について は 6 つの小学校を順に回っていくことが理想であ るが、しばらくは総合体育館で体力テストなどの 市主催のイベントと合同開催を行いながら、少し でも参加者を増やしていくことの方がよいのでは ないかと考える。また、体力テストについても一 般的なテストだけでなく、災害時を想定したもの (例えば自宅から避難場所までの実際の避難時間 の計測など)を取り入れ、医師の助言が得られる ような体制づくりも含め、防災の意識が高められ るものに改善し、スポーツイベントと体力テスト が同時に参加できるものに変えていくことが理想 であろう。緊急避難を想定した場合、最終的な段 階で頼ることができるのは、自らの体力である。 避難行動に直接結びつく筋力については、筋力発 揮の仕方や測定の条件などにいくつもの特異性が 考えられるので、今までの一般的な測定法をその まま用いてよいかどうかについても、改めて検討 を要する問題である(万井ら、1985)。そのため にも岩出市との連携をもっと深めていく必要があ る。 写真4 準備運動 ③ 実施種目 実施種目について、3 回の開催で行ってきたの は、以下の通りである。 ・ ディスクドッヂ(ドッヂビーを使ったドッヂ ゲーム)[3 回とも実施] ・ キンボール[第 1 回、第 2 回実施] ・ 台風の目(長い棒を 4 人で持ちまわりながら行 うリレー)[第 1 回実施] ・大縄跳び[第 1 回実施] ・ しっぽとり(ビニールロープをお尻につけて取 り合う鬼ごっこ) [第 2 回実施] ・ キンボールバレー(キンボールをさらに大人数 で行うオリジナル種目) [第 3 回実施] ・ 防災借り物リレー(災害時に必要なものなどを 運ぶ借り物リレー) [第 3 回実施] 写真5 キンボールバレー 写真6 防災借り物リレー 3 回のスポーツイベントのそれぞれの実行委員 会において、年齢を超えてみんなで楽しめるも の、みんなで協力して行えるもの、防災への意識
を高められるものという観点を考慮し、実施種 目を検討し、決定した。「ディスクドッチ」につ いては、参加者に好評なため、3 回とも実施して いる。「キンボール」については大きな柔らかい ボールを使用することから安全で年代を超えて楽 しめるのではないかという考えから実施したが、 1回でゲームを行える人数が 12 名と少なく、待 ち時間が長くなることから、第 3 回のイベントで は新たな「キンボールバレー」という種目を考案 し、実施した。ルールの徹底がうまくできず、課 題を残したが、改善していくことで定着した種目 となるのではないかと期待をしている。「台風の 目」「大縄跳び」「しっぽとり」については、年代を 超えてみんなで協力をして行う競技として、防災 の意識を高めるために実施したが、さらに防災 の意識を高めるという観点から「防災借り物リ レー」に変更して実施している。「ディスクドッ チ」と「キンボール」については、先にも述べた 岩出市などの主催行事への参加協力でも実施して いくようになり、定着した種目になりつつある。 そのほかの種目については防災の意識を高めるこ とと、年代を超えて楽しめることを考慮し、さら に検討をしていく必要があると考えられる。年代 や性別を超えてみんなで楽しめる種目、防災の意 識が高められる種目などの更なる開発が必要であ ろう。 4.まとめ 第 1 回から第 3 回までのスポーツフェスティバ ルのアンケート結果及びスタッフ反省会で検討し た内容をまとめると以下の通りである。 ・ 参加人数が当初目標としていた 100 人が安定し ておらず、また年齢層についても成人や年配者 の参加が少ないため、これまでの 3 回の実施の 中ではまだ募集方法などに問題があると考えら れる。開催場所を総合体育館に変え、体力テス トを同時開催することで参加者の増加、年配者 の参加の増加がみられるため、総合体育館で 体力テストを同時開催することを継続しつつ、 SNS の活用やチラシの配布方法など募集方法の 更なる改良が必要である。 ・ スタッフの意識の向上がみられ、地域とのつな がりも深くなってきている。今後もスポーツイ ベントの実施や地域の行事への学生の参加によ り、学生と地域の人々のつながりを深め、地域 の人々と学生の防災への意識を高めていくこと が重要である。 ・ スポーツイベントの企画については、実施種目 や防災にかかわる体力テストの検討などを行 い、多くの人々が参加しやすいイベントを定着 させていく。 第 1 回から第 3 回までのスポーツフェスティ バルの開催において、少しずつ変更を加え、改 善を重ねてきたが、参加人数やその年齢層、ま た参加者の防災への意識のさらなる啓発など課題 も多い。ただ、3 回とも参加してくださる方々も おり、リピーターも少しずつ増えてきている。岩 出市以外からの参加者もあり、ぜひ自分の家の近 くでも開催してほしいという意見も寄せられてい る。人とのつながりが広がっていくことがこのイ ベントの目的であり、可能な限り、開催場所や時 期を検討し、参加者を増やせればと考えている。 『自然災害に強い街づくりをめざして』をテー マに、地域の人々のつながりを深め、また学生と 地域の人たちとのつながりを深めていくために、 スポーツが役立てるのではないかとスタートした スポーツイベントであるが、まだまだスタートし たばかりで認知度も低い。自然災害に強い街づく りとは何か、物理的に倒れにくい建物を作り、道 を整備し、避難できる場所を確保し、いざ災害が 起こった時にいち早く知らせるシステムづくりや 避難方法の啓発など様々なことが考えられる。物 理的な被害はある程度仕方がないところもある が、人的被害をゼロにしていきたいと思うのは誰 もが同じであろう。そのためにどのように備えて いくかが重要であり、常に意識をして生活をする ことが大切である。自分の命はまず自分が守り、 手助けを必要とする人を日ごろから認識し、協力 する地域コミュニティを作ることが大切である。 そのことを多くの人々に知ってもらうための小さ なスポーツイベントを継続して実施し、地域に長
く根付いていくようなコミュニティ・スポーツの 提案へつなげていけるような取り組みに広げてい くことが必要であろう。 本研究は、近畿大学生物理工学部戦略的研究費 (No.16- Ⅲ -41,2017)により行われたものである。 5.注記 (注 1) 各大学のスポーツイベント 福岡大学 https://www.fukuoka-u.ac.jp/column_ list/student24/15/11/18160000.html 早稲田大学 https://www.waseda.jp/inst/ athletic/wasedasports/festa/higashifushimi/ 国士舘大学 https://www.kokushikan.ac.jp/ event/details_10971.html (注 2) 校長や教頭などは元来「管理職」として 捉えられているが、新しい学校経営(スクールマ ネジメント)では、「管理」だけではない学校づ くりが必要とされており、その学校のリーダー、 すなわちスクールリーダーとしての役割と力量が 必要であると考えられている。 ( 注 3 )「 近 大 ス ポ ー ツ フ ェ ス テ ィ バ ル 」 ホ ー ムページ http://www.waka.kindai.ac.jp/tea/ yoshiyuki8/kindaisportsfes.html 「近大スポーツフェスティバル」問い合わせ [email protected] 6.引用・参考文献 征矢英明・菊池章人・岡出美則(2014)学校体育 の復興と支援(筑波大学の取り組み).日本体 育学会第 65 回大会国際シンポジウム,14 栗原伸一・霜浦森平(2006)コミュニティ評価の 要因分析―千葉県における都市・農村比較―、 農業情報研究.15 ⑴ , 15-24 五明寛和・落合知帆・小林正美(2012)平成 23 年台風 12 号災害における田辺市立本宮中学校 の役割に関する研究.都市計画報告集,10-4 , 184-187 篠原清昭編著(2006)「スクールマネジメント」ミ ネルヴァ書房 中村和彦(2014)震災と児童の運動習慣と体力. 日本体育学会大会号 (65),10、2014 橋本剛幸(2015)アンケート調査から見たスポー ツ・健康への意識−スポーツへの意識と防災へ の意識の融和に向けて−.近畿大学生物理工学 部紀要,35, 51-61 橋本剛幸(2016)スポーツへの意識と防災への意 識の融和.日本体育学会大会第 67 回大会体育 社会学専門領域発表論文集,24, 160-165 橋本剛幸(2017)スポーツへの意識と防災への意 識の融和をめざしたコミュニティ・スポーツ形 成に向けての取り組み−和歌山県岩出市におけ るスポーツイベント実施から見えてきたこと−. 日本体育学会大会第 68 回大会体育社会学専門 領域発表論文集,25, 31-36 廣中あゆみ・田中和子・山根千絵・人見英里・中 村文哉・吉村耕一・田中マキ子(2017)山口県 民の自然災害に対する意識と防災行動に関連す る要因の検討.山口県立大学学術情報,10, 99-109 万井正人・八木保・井街悠・武内ひとみ・笹山哲 (1985)緊急避難能力からみた筋力の加齢に関 する基礎的研究 : 発育期の体力に関する基礎的 研究.体力科学 34(Supplement), 49-59 平成 29 年 9 月 30 日受付 平成 30 年 1 月 24 日受理
7.参考資料 【一般用アンケート】 近大スポーツフェスティバルおよび防災に関するアンケート 本日は、近大スポーツフェスティバルにご参加いただきありがとうございました。 このスポーツフェスティバルは「自然災害に強いまちづくりを目指して」をスローガンに、一人一人 の体力の向上とみんなで協力する意識を高めることにより、自然災害が起こった時に人的被害ゼロをめ ざして、スポーツが皆様のお役に立てるのではないかと計画して行いました。今後も改善をしながら続 けていけるように研究してまいりたいと考えております。答えていただいた内容については研究の目的 以外には利用をしません。どうぞよろしくお願いします。 近畿大学生物理工学部 橋本剛幸 ①年齢をお答えください。いずれかに○をつけてください。 1 10 歳未満 2 10 代 3 20 代 4 30 代 5 40 代 6 50 代 7 60 代 8 70 代 9 80 代 10 90 代 ②男女別をお答えください。いずれかに○をつけてください。 1 男性 2 女性 ③このフェスティバルを何でお知りになりましたか。いずれかに○をつけてください。 1 ポスター 2 学校で配られたチラシ 3 スーパーなどにおいてあったチラシ 4 地域の回覧板 5 その他 ( ) ④参加して、楽しかったですか。いずれかに○をつけてください。 1 非常に楽しかった 2 楽しかった 3 ふつう 4 あまり楽しくなかった 5 まったく楽しくなかった ⑤またあれば、参加したいですか。いずれかに○をつけてください。 1 また参加したい 2 種目が変われば参加したい 3 あまり参加したくない 4 もう参加しない 5 わからない ⑥やってみたい種目があればお書きください。 ( ) ⑦このフェスティバルの趣旨についてどう思われましたか。○をつけてください。 1 よくわかった 2 すこしわかった 3 あまりわからなかった 4 まったくわからなかった 5 どちらともいえない
⑧災害時に自分の居住地から一番近い避難場所を知っていますか。 1 知っている 2 知らない ⑨その場所(または安全な場所)まで逃げるための自分自身の体力に自信がありますか。 1 自信がある 2 少し自信がある 3 あまり自信がない 4 全く自信がない 5 わからない ⑩現在住んでいる家の付近の人々と、付き合いはありますか。○をつけてください。 1 よく知っており、話しをよくする 2 知っているが、あいさつする程度 3 あまり知らない 4 全く知らない 5 関心がない ⑪ もしも、地震や水害、または火災などが起こった時、周りの人たちと声をかけあったり、助け合って 避難することができますか。いずれかに○をつけてください。 1 必ずできる 2 あまり自信はないが、できると思う 3 あまり自信がなく、できないと思う 4 できない 5 わからない ⑫このようなスポーツイベントが人とのつながりに役立つと思いますか。 1 非常に役立つと思う 2 少しは役立つと思う 3 あまり役立たないと思う 4 まったく役立たないと思う 5 わからない ⑬人とのつながりを作るイベントについてどう思われますか。 1 たくさんあった方がいいと思う 2 地域の自治会などの行事があるから十分だと思う 3 あまりなくてもその時になればなんとかなるのでいらないと思う 4 わからない 5 その他 ( ) ⑭そのほか、ご意見がございましたらご自由にお書きください。 ( ) ご協力、ありがとうございました。
【学生用アンケート】 近大スポーツフェスティバルおよび防災に関するアンケート (学生用) 本日は、近大スポーツフェスティバルにご参加いただきありがとうございました。 このスポーツフェスティバルは「自然災害に強いまちづくりを目指して」をスローガンに、一人一人 の体力の向上とみんなで協力する意識を高めることにより、自然災害が起こった時に人的被害ゼロをめ ざして、スポーツが皆様のお役に立てるのではないかと計画して行いました。今後も改善をしながら続 けていけるように研究してまいりたいと考えております。答えていただいた内容については研究の目的 以外には利用をしません。どうぞよろしくお願いします。 近畿大学生物理工学部 橋本剛幸 ①学年をお答えください。いずれかに○をつけてください。 1 1年生 2 2年生 3 3年生 4 4年生 5 大学院生 ②男女別をお答えください。いずれかに○をつけてください。 1 男性 2 女性 ③このフェスティバルになぜ参加しようと思いましたか。いずれかに○をつけてください。 1 趣旨に賛同して 2 身体を動かすスポーツイベントだから 3 ボランティア活動と考えて 4 なんとなく 5 その他 ( ) ④参加して、楽しかったですか。いずれかに○をつけてください。 1 非常に楽しかった 2 楽しかった 3 ふつう 4 あまり楽しくなかった 5 まったく楽しくなかった ⑤またあれば、参加したいですか。いずれかに○をつけてください。 1 また参加したい 2 種目が変われば参加したい 3 あまり参加したくない 4 もう参加しない 5 わからない ⑥やってみたい種目があればお書きください。 ( ) ⑦このフェスティバルの趣旨についてどう思われましたか。○をつけてください。 1 よくわかった 2 すこしわかった 3 あまりわからなかった 4 まったくわからなかった 5 どちらともいえない
⑧災害時に自分の居住地から一番近い避難場所を知っていますか。 1 知っている 2 知らない ⑨その場所(または安全な場所)まで逃げるための自分自身の体力に自信がありますか。 1 自信がある 2 少し自信がある 3 あまり自信がない 4 全く自信がない 5 わからない ⑩現在住んでいる家の付近の人々と、付き合いはありますか。○をつけてください。 1 よく知っており、話しをよくする 2 知っているが、あいさつする程度 3 あまり知らない 4 全く知らない 5 関心がない ⑪ もしも、地震や水害、または火災などが起こった時、周りの人たちと声をかけあったり、助け合って 避難することができますか。いずれかに○をつけてください。 1 必ずできる 2 あまり自信はないが、できると思う 3 あまり自信がなく、できないと思う 4 できない 5 わからない ⑫このようなスポーツイベントが人とのつながりに役立つと思いますか。 1 非常に役立つと思う 2 少しは役立つと思う 3 あまり役立たないと思う 4 まったく役立たないと思う 5 わからない ⑬人とのつながりを作るイベントについてどう思われますか。 1 たくさんあった方がいいと思う 2 地域の自治会などの行事があるから十分だと思う 3 あまりなくてもその時になればなんとかなるのでいらないと思う 4 わからない 5 その他 ( ) ⑭そのほか、ご意見がございましたらご自由にお書きください。 ( ) ご協力、ありがとうございました。